(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106084
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】チャック装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230725BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230725BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20230725BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20230725BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01L21/304 622H
B24B41/06 L
B24B1/00 Z
B23Q3/08 A
H01L21/304 621B
H01L21/68 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007224
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 貫太郎
(72)【発明者】
【氏名】ソルタニ バーマン
(72)【発明者】
【氏名】青木 一史
(72)【発明者】
【氏名】丸野 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】山村 和也
(72)【発明者】
【氏名】楊 旭
【テーマコード(参考)】
3C016
3C034
3C049
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA01
3C034AA07
3C034BB73
3C049AA04
3C049AB04
5F057AA04
5F057AA31
5F057BA11
5F057BB09
5F057CA11
5F057DA04
5F057DA12
5F057DA34
5F057EB06
5F057EC24
5F057FA13
5F131AA02
5F131BA31
5F131CA31
5F131DB22
5F131EB03
5F131EB78
(57)【要約】
【課題】陽極酸化を援用したウェハ平坦化(すなわち研磨または研削)を安定的に行うことを可能とするャック装置を提供すること。
【解決手段】チャック装置(2)は、陽極酸化を援用したウェハ(W)の平坦化の際にウェハを保持するように構成されている。このチャック装置は、チャックカバー(22)と、吸着部(23)と、通電部(24)とを備えている。吸着部(23)は、ウェハ(W)を吸着する吸着面(20)を有する。通電部(24)は、吸着部(23)に吸着されたウェハ(W)と接触通電するように、吸着部(23)に設けられている。チャックカバー(22)は、吸着面(20)を露出させつつ吸着部(23)および通電部(24)を絶縁的に覆う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化を援用したウェハ(W)の平坦化の際に前記ウェハを保持するチャック装置(2)であって、
前記ウェハを吸着する吸着面(20)を有する吸着部(23)と、
前記吸着部に吸着された前記ウェハと接触通電するように前記吸着部に設けられた通電部(24)と、
前記吸着面を露出させつつ前記吸着部および前記通電部を絶縁的に覆うチャックカバー(22)と、
を備えたチャック装置。
【請求項2】
前記吸着部は、負圧により前記ウェハを前記吸着面に吸着するように構成された、
請求項1に記載のチャック装置。
【請求項3】
前記通電部は、前記吸着面にて露出するように前記吸着部に埋設された、
請求項1または2に記載のチャック装置。
【請求項4】
前記通電部は、前記吸着部に対して着脱可能に装着された、
請求項3に記載のチャック装置。
【請求項5】
前記通電部は、導体によりピン状に形成された、
請求項4に記載のチャック装置。
【請求項6】
前記通電部における前記吸着面にて露出する露出部(242)の、前記吸着面における面積割合は、0.00017~0.83である、
請求項1~5のいずれか1つに記載のチャック装置。
【請求項7】
前記吸着部は、前記通電部としても機能するように、導電性ポーラス体により形成された、
請求項2に記載のチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハを保持するチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の平板状の被加工物における表面を平坦化(すなわち研削あるいは研磨)する技術が、従来から種々知られている。例えば、特許文献1は、陽極酸化プロセスと研磨プロセスとを同時または交互に進行させる研磨方法を開示する。陽極酸化プロセスは、電解液の存在下で、被加工物を陽極として電圧を印加し、被加工物の表面を酸化させる。研磨プロセスは、所定の硬度および粒度の砥粒を基材に固定した固定砥粒研磨体で、被加工物の表面に形成された酸化物を研磨して除去する。かかる研磨方法は、ECMPと称される。ECMPはElectro-Chemical Mechanical Polishingの略である。
【0003】
具体的には、特許文献1は、SiCウェハを研磨するのに適した研磨装置を開示する。この研磨装置においては、回転可能な円盤の上に絶縁体を介して容器が固定され、容器底面に陰極となる金属板が敷設される。SiCウェハは、回転可能なウェハホルダーに保持され、電解液中で砥石に所定荷重で押圧される。ウェハホルダーは、回転ヘッドの下面に絶縁層を介して設けた真空チャックに吸着される。そして、SiCウェハを作用極として正電位を印加することでSiCウェハの表面を陽極酸化により改質し、改質層を砥石で除去することで、表面は徐々に平坦になり、ダメージのない表面が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、ECMP、すなわち、陽極酸化を援用した研磨を安定的に行うためには、ウェハを保持するチャック装置に対して、種々の機能が求められる。例えば、ウェハを保持する保持機能に加えて、ウェハに通電する通電機能や、研磨装置における他の部分との絶縁機能、等が挙げられる。この点、特許文献1には、このようなチャック装置に関する必要機能や、これを実現するための具体的な構造については、何ら開示されていない。
【0006】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、陽極酸化を援用したウェハ平坦化(すなわち研磨または研削)を安定的に行うことを可能とするチャック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のチャック装置(2)は、陽極酸化を援用したウェハ(W)の平坦化の際に前記ウェハを保持するように構成されている。
このチャック装置は、
前記ウェハを吸着する吸着面(20)を有する吸着部(23)と、
前記吸着部に吸着された前記ウェハと接触通電するように前記吸着部に設けられた通電部(24)と、
前記吸着面を露出させつつ前記吸着部および前記通電部を絶縁的に覆うチャックカバー(22)と、
を備えている。
【0008】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものである。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチャック装置を備えた表面加工装置の概略構成を示す側断面図である。
【
図2A】
図1に示されたチャック装置における通電部のサイズや形状と酸化速度のバラツキとの関係を評価した結果を示すグラフである。
【
図2B】
図1に示されたチャック装置における通電部のサイズや形状と酸化速度のバラツキとの関係を評価した結果を示すグラフである。
【
図2C】
図1に示されたチャック装置における通電部のサイズや形状と酸化速度のバラツキとの関係を評価した結果を示すグラフである。
【
図3】
図1に示されたコンタクト電極がピン状に形成された場合の面内方向におけるコンタクト電極の一配列例を示す底面図である。
【
図4】
図1に示されたコンタクト電極がピン状に形成された場合の面内方向におけるコンタクト電極の他の配列例を示す底面図である。
【
図5】一変形例に係るチャック装置を備えた表面加工装置の概略構成を示す側断面図である。
【
図6】他の一変形例に係るチャック装置を備えた表面加工装置の概略構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中には挿入せず、その後にまとめて説明する。
【0011】
(実施形態:全体構成)
図1を参照すると、表面加工装置1は、平板状の被加工物であるウェハWの主面である被加工面W1を平坦化するように構成されている。「主面」は、板状物における板厚方向と直交する表面であって、「板面」とも称される。すなわち、ウェハWは、一対の主面のうちの一方である被加工面W1と、他方すなわち裏面である被吸着面W2とを有している。本実施形態に係る表面加工装置1は、SiCウェハ等の半導体ウェハを被加工物として、その被加工面W1に対して陽極酸化を援用した研磨加工または研削加工を実施可能に構成されている。換言すれば、表面加工装置1は、ECMP装置またはECMG装置としての構成を有している。ECMGはElectro-Chemical Mechanical Grindingの略である。
【0012】
以下、本実施形態に係る表面加工装置1の概略構成について、
図1を参照しつつ説明する。ここで、説明の簡略化のため、図示の通りに、右手系XYZ座標系を設定する。本実施形態においては、Z軸正方向は、鉛直上方、すなわち、重量作用方向とは反対の方向を示すものとする。また、X軸方向およびY軸方向は、ともに、水平方向を示すものとする。以下、説明の便宜上、鉛直上方に対応するZ軸正方向側を単に「上方」と称したり、その逆を単に「下方」と称したりすることがある。なお、
図1は、本発明の内容を簡潔に説明するために簡略化された概略図であって、本発明の内容を何ら限定するものではない。このため、
図1と、実際に製造販売される具体的な構成を示す図とは、必ずしも一致しないことは、云うまでもない。上下方向や各構成要素間の上下位置関係等についても同様である。他の構成図についても同様である。
【0013】
表面加工装置1は、チャック装置2と、加工パッド3と、容器4とを備えている。チャック装置2は、陽極酸化を援用したウェハWの平坦化の際にウェハWを保持するように構成されている。具体的には、
図1に示されている例においては、チャック装置2は、ウェハWにおける被吸着面W2を吸着することで、ウェハWを、被加工面W1を下方に露出させつつ保持するように構成されている。また、チャック装置2は、保持しているウェハWを上下方向と平行な中心軸Lを中心として回転可能に構成されている。加工パッド3は、チャック装置2に保持されたウェハWにおける被加工面W1に対向配置されるように、チャック装置2の下方に設けられている。
【0014】
容器4は、上方に向けて開口するバスタブ状に形成されている。容器4は、加工パッド3および電解液Sを収容するように、チャック装置2および加工パッド3の下方に配置されている。本実施形態においては、電解液Sは、エッチャント成分を含まない溶液であって、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、あるいは硝酸ナトリウム等の水溶液である。エッチャント成分は、陽極酸化によって被加工面W1上に生成された酸化物膜の溶解能を有する溶解液を構成する成分(すなわち例えばフッ化水素酸等)である。チャック装置2および/または容器4は、不図示の昇降機構によって、上下に移動可能に設けられている。また、チャック装置2および/または容器4は、不図示の並進機構によって、図中XY方向に移動可能に設けられている。そして、表面加工装置1は、電解液Sの存在下で加工パッド3側を陰極としウェハW側を陽極として電流を印加することで被加工面W1上に酸化物膜を生成するとともに、生成した酸化物膜を加工パッド3により選択的に除去するように構成されている。
【0015】
(チャック装置)
チャック装置2は、下方に向けて露出した水平面状の吸着面20に、ウェハWにおける被吸着面W2を負圧により吸着することで、ウェハWを保持しつつウェハWに通電可能に構成されている。すなわち、チャック装置2は、負圧によりウェハWを吸着面20に吸着する真空チャック装置としての構成を有している。また、チャック装置2には、電極装着孔21が設けられている。電極装着孔21は、吸着面20にて開口する大径部21aと、この大径部21aと連通するように大径部21aよりも上方に設けられた小径部21bとを有する段付き形状に形成されている。電極装着孔21は、例えば、中心軸Lを囲むリング状に形成され得る。あるいは、段付き丸孔状に形成された複数の電極装着孔21が、面内方向に二次元配置され得る。「面内方向」とは、吸着面20に沿った方向であって、図中XY平面と平行な方向である。具体的には、例えば、複数の電極装着孔21が、中心軸Lを囲む円周上に配列され得る。
【0016】
チャック装置2は、チャックカバー22と、吸着部23と、コンタクト電極24とを備えている。チャックカバー22は、吸着部23に設けられた吸着面20を露出させつつ、吸着部23およびコンタクト電極24を絶縁的に覆うように構成されている。すなわち、チャックカバー22は、吸着部23の上方を覆う上方カバー部221と、吸着部23の側方を覆う側方カバー部222とを有している。チャックカバー22は、絶縁性材料(例えば絶縁性セラミックス)によって一体に形成されている。
【0017】
吸着部23は、ウェハWを負圧により吸着する吸着面20を有している。
図1に示された例においては、吸着部23は、ポーラスセラミック等の絶縁性ポーラス材料により、吸着面20を底面とし板厚方向に空気あるいは負圧が通過可能な内部通路を有する板状に形成されている。すなわち、吸着部23は、いわゆるポーラスチャックとしての構成を有している。吸着部23には、電極装着孔21における少なくとも大径部21aが設けられている。
【0018】
通電部としてのコンタクト電極24は、吸着部23すなわち吸着面20に吸着されたウェハWと接触通電するように、吸着部23に設けられている。
図1に示された例においては、コンタクト電極24は、吸着面20にて露出するように、吸着部23に埋設されている。具体的には、コンタクト電極24は、電極装着孔21に対応する外形形状を有し、電極装着孔21に嵌め込まれることで吸着部23に対して着脱可能に装着されている。すなわち、コンタクト電極24は、小径部21bに嵌め込まれる基部241と、大径部21aに嵌め込まれる露出部242とを有している。露出部242は、吸着面20にて露出することでウェハWにおける被吸着面W2に当接するコンタクト面243を有している。コンタクト面243は、被吸着面W2と当接した状態で吸着面20からのウェハWの浮き上がりが生じないように、吸着面20と面一に設けられている。コンタクト電極24は、銅等の低抵抗な導体によって一体に形成されている。電極装着孔21が中心軸Lを囲むリング状に形成されている場合、コンタクト電極24は、リング状に形成されている。一方、電極装着孔21が丸孔状に形成されている場合、コンタクト電極24は、ピン状に形成されている。
【0019】
加工パッド3は、その上面である加工面301が、チャック装置2に保持されたウェハWにおける被加工面W1に電解液Sを介して対向した状態で、ウェハWを陽極として電流を通流させつつ被加工面W1を平坦化するように設けられている。本実施形態においては、加工パッド3は、電解液Sの存在下で被加工面W1を陽極酸化しつつ、被加工面W1に生成した酸化物を選択的に除去するための構成を有している。すなわち、加工パッド3は、加工面301を有する砥石層302と、この砥石層302を担持する導体金属等の導体層である対向電極層303とを接合した、2層構造を有している。加工パッド3は、「研磨パッド」、あるいは「研削パッド」とも称され得る。
【0020】
(実施形態:作用・効果)
以下、本実施形態に係るチャック装置2を備えた表面加工装置1の動作概要について、かかるチャック装置2の有する構成により奏される効果とともに説明する。
【0021】
まず、加工パッド3を収容した容器4の内部空間に、電解液Sの液面が加工面301より上となるように、電解液Sが貯留される。また、
図1に示されているように、チャック装置2と加工パッド3および容器4とが上下方向について離隔した状態で、チャック装置2における吸着部23にウェハWが負圧により吸着される。続いて、ウェハWを吸着したチャック装置2と、加工パッド3および電解液Sを収容した容器4とが、電解液Sの存在下で被加工面W1と加工面301とが接触するまで接近させられる。そして、加工パッド3側を陰極としウェハW側を陽極として電流が印加される。また、チャック装置2と加工パッド3とが相対的に回転される。これにより、陽極酸化された被加工面W1を加工パッド3により研削または研磨することで被加工面W1上の酸化物膜(すなわち膜状に生成された酸化物)が選択的に除去され、以て被加工面W1が良好に平坦化され得る。
【0022】
ここで、上記のようなECMPやECMG、すなわち、陽極酸化を援用したウェハWの平坦化を安定的に行うためには、ウェハWを保持するチャック装置2に対して、種々の機能が求められる。例えば、ウェハWを保持する保持機能に加えて、ウェハWに通電する通電機能や、表面加工装置1における他の部分との絶縁機能、等が挙げられる。これらの機能を実現することで、高効率且つ高品質のウェハ加工を実現することが可能となる。
【0023】
この点、ECMPやECMGにおける加工中は、被加工物であるウェハWと加工パッド3とが接触状態である。このため、ECMPやECMGとは異なる、物理研磨やCMPにて用いられていた、従来の真空チャック機構を単に流用した場合、かかる従来の真空チャック機構の外部からウェハWに通電することは困難である。CMPはChemical Mechanical Polishingの略である。
【0024】
そこで、本実施形態においては、チャック装置2は、チャックカバー22と、吸着部23と、コンタクト電極24とを備えている。吸着部23は、ウェハWを負圧により吸着する吸着面20を有する。コンタクト電極24は、吸着部23に吸着されたウェハWと接触通電するように吸着部23に設けられている。チャックカバー22は、ウェハWを保持すなわち吸着可能に吸着面20を露出させつつ、吸着部23およびコンタクト電極24を絶縁的に覆う。このように、吸着部23に通電部としてのコンタクト電極24を埋設しつつこれらをチャックカバー22により絶縁的に覆うことで、保持機能と通電機能と絶縁機能とが良好に奏され、以てECMPやECMGを安定的に行うことを可能となる。
【0025】
また、被加工面W1における酸化物膜の均一性を確保することで、研削後あるいは研磨後における良好な表面状態が得られる。酸化物膜の均一性は、ウェハWに対する通電状態の面内方向における均一性の影響を受けるものと考えられる。ウェハWに対する通電状態の面内方向における均一性は、コンタクト電極24における、吸着面20にて露出する露出部242すなわちコンタクト面243の、配置状態(例えば面積割合等)の影響を受ける。
【0026】
図2A~
図2Cは、コンタクト面243のサイズや形状と酸化速度のバラツキとの関係を評価した結果を示す。
図2A~
図2Cにおいて、縦軸は、酸化速度のバラツキを示す。
図2Aは、コンタクト面243の面積と酸化速度のバラツキとの関係を示す。
図2Aにおける横軸は、電極面積すなわちコンタクト面243の面積を示す。また、
図2Aにおける各プロットの脇には、コンタクト面243の面内形状が示されている。
図2Bは、電極面積の吸着面20における面積割合と酸化速度のバラツキとの関係を示す。なお、
図2Bにおける水平な一点鎖線は、ECMP成立条件の境界を示す。すなわち、
図2Bにおける水平な一点鎖線よりも下側の条件で、ECMP加工が可能である。また、
図2Bにおける垂直な一点鎖線は、ウェハ保持限界を示す。すなわち、
図2Bにおける垂直な一点鎖線よりも左側の条件、すなわち、面積割合が0.83以下で、吸着面20におけるウェハWの安定的な保持が可能である。
図2Bにおける最も左側のプロットにおける面積割合の値は、0.00017である。
図2Cは、電極形状すなわちコンタクト面243の形状と酸化速度のバラツキとの関係を示す。
【0027】
原理的には、吸着面20における外形形状を一定とした場合、電極面積が大きくなるほど、通電状態の面内方向における均一性が向上するものと考えられる。但し、電極面積が大き過ぎると、逆に吸着状態すなわちコンタクト面243と被加工面W1との接触状態が不安定化することで、通電状態の面内方向における均一性が悪化することが想定される。このため、横軸を電極面積とし縦軸を酸化速度のバラツキとした場合のグラフは、中間部が低くなる略V字あるいは略U字型となることが想定される。すなわち、電極面積の上昇に伴う、通電面積上昇と吸着力低下とのトレードオフの関係から、最適な電極面積が求められる。そして、電極面積は、吸着力を損なわない範囲の最大限の面積で最適化される。
図2Aに示されたグラフは、かかる想定と合致している。面積割合を種々変更して酸化速度のバラツキ評価したところ、
図2Bに示されているように、電極面積の吸着面20における面積割合は、好適には、0.00017~0.83(すなわち0.017~83%)であり、より好適には、0.2~0.75(すなわち20~75%)である。すなわち、電極面積をS1とし、電極面積と吸着面20の面積との総和をS2とすると、面積割合DS=S1/S2=0.00017~0.83であることが好適であり、0.2~0.75であることがより好適である。S2は、略円形状の吸着面20における半径をRとすると、S2=πR
2である。
【0028】
図2Cにおいて、形状例1は、電極形状が、吸着面20を含む平面と中心軸Lとの交点を中心とし外径が吸着面20の外径の半分である円形状である。形状例2は、形状例1と外径が同一の円環状である。形状例1と形状例2とを対比すると、形状例2は、電極面積については形状例1よりも小さいものの、中心部に吸着面20を設けることで吸着状態すなわちコンタクト面243と被加工面W1との接触状態が安定化する。このため、形状例2においては、酸化速度のバラツキは、形状例1とほぼ同等、あるいは、これよりも若干向上する。形状例3は、形状例2と電極面積が同一で、電極形状を単環状から二重環状に変更したものである。形状例3によれば、形状例2よりも、酸化速度のバラツキが大幅に向上する。このように、電極面積が同一であっても、コンタクト面243を面内方向についてより均一に分散することで、酸化速度のバラツキを向上することが可能である。具体的には、例えば、コンタクト電極24を略円柱形状のピン状に形成した場合、
図3に示されているように、1つのコンタクト電極24を吸着面20における中心に配置するとともに、かかる中心を囲む円周上に複数のコンタクト電極24を等間隔に配置することが可能である。かかる円周状の複数のコンタクト電極24の配列は、同心円状に複数列設けられ得る。あるいは、
図4に示されているように、複数のコンタクト電極24を、面内方向について可能な限り均等になるように分散配置することが可能である。
【0029】
コンタクト電極24は、酸化や消耗により劣化し得る。また、酸化条件すなわち陽極酸化電流密度を変更するため、コンタクト電極24の抵抗率を変更したい場合があり得る。この点、コンタクト電極24を吸着部23に対して着脱可能すなわち交換容易とすることで、これらのような要求に的確に対応することが可能となる。
【0030】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0031】
本発明は、上記実施形態にて示された例示的な装置構成に限定されない。すなわち、
図1は、本発明に係るチャック装置2の概要を簡易に説明するための、簡素化された概略図である。したがって、実際に製造販売される表面加工装置1の構成は、必ずしも、
図1に示された例示的な構成と一致するとは限らない。また、実際に製造販売される表面加工装置1の構成は、
図1に示された例示的な構成から適宜変更され得る。
【0032】
電解液Sは、エッチャント成分を含んでいてもよい。すなわち、本発明に係る表面加工装置1、および、これにより実施可能な表面加工方法は、陽極酸化により生じた酸化物膜をエッチャントおよび加工パッド3の双方を用いて選択的に除去することで、被加工面W1を研磨あるいは研削するものであってもよい。
【0033】
上記実施形態においては、表面加工装置1は、電解液Sの液面が加工パッド3における加工面301より上となるように電解液Sを容器4の内部空間に貯留した状態で、被加工面W1の平坦化を実行する構成を有していた。しかしながら、本発明は、かかる構成に限定されない。すなわち、例えば、電解液Sは、不図示のノズルにより噴射されてもよい。
【0034】
例えば、
図1に示された例示的な構成においては、チャック装置2が加工パッド3の上方に位置していた。しかしながら、本発明は、かかる構成に限定されない。すなわち、例えば、チャック装置2が加工パッド3の下方に位置していてもよい。この場合、上記実施形態における上下関係の記述は、逆転される。吸着面20および加工面301は、水平面あるいは鉛直面と平行ではなくてもよく、これらに対して傾斜していてもよい。
【0035】
上記実施形態においては、チャック装置2は、チャックカバー22および吸着部23が中心軸Lを中心として回転可能に構成されている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、加工パッド3は、不図示の回転機構によって、図中Z軸と平行な回転中心軸を中心として回転可能に設けられていてもよい。
【0036】
図5に示されているように、電極装着孔21における大径部21aは、中心軸Lと平行な軸方向に沿って吸着面20に向かうにつれて面内方向における幅が広がるテーパ孔として形成されていてもよい。これに対応して、コンタクト電極24も、軸方向に沿ってコンタクト面243に向かうにつれて面内方向における幅が広がる錐台状に形成されていてもよい。
【0037】
電極装着孔21は、大径部21aと小径部21bとを有する形状に限定されない。すなわち、例えば、電極装着孔21は、面内方向における幅が一定となるように形成されていてもよい。これに対応して、コンタクト電極24も、面内方向における幅が一定となるように形成されていてもよい。
【0038】
吸着部23は、通電部と不可分一体に形成されていてもよい。
図6は、かかる態様に対応する構成を示す。すなわち、吸着部23は、被吸着面W2との接触によりウェハWと導通する導電体によって形成されている。具体的には、吸着部23は、板厚方向に空気が通流可能な多孔質金属焼結体板あるいは多孔質カーボン板(すなわち導電性ポーラス体)としての構成を有している。あるいは、吸着部23は、ブロック状あるいは板状の電極体の底面上に導電性の接着層または粘着層を形成した構成を有していてもよい。このように、吸着部23を、電極あるいは通電部を兼ねた構造(すなわち通電部としても機能する構造)とすることで、チャック装置2の構成を簡略化することが可能となる。また、ウェハWに対する通電状態を、面内方向について均一化することで、被加工面W1の良好な平坦化を実現することが可能となる。
【0039】
「陽極酸化を援用した」は、「陽極酸化を利用した」とも表現することが可能である。
【0040】
上記の説明において、互いに継ぎ目無く一体に形成されていた複数の構成要素は、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されてもよい。同様に、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されていた複数の構成要素は、互いに継ぎ目無く一体に形成されてもよい。また、上記の説明において、互いに同一の材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに異なる材料によって形成されてもよい。同様に、互いに異なる材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに同一の材料によって形成されてもよい。
【0041】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0042】
変形例も、上記の例示に限定されない。すなわち、例えば、上記に例示した以外で、複数の実施形態同士が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。同様に、複数の変形例が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0043】
1 表面加工装置
2 チャック装置
20 吸着面
21 装着孔
22 チャックカバー
23 吸着部
24 通電電極(通電部)
241 軸部
242 露出部
W ウェハ