(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106120
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】農薬組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/58 20060101AFI20230725BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230725BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A01N43/58 A
A01P3/00
A01N25/04 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007261
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒石 尚男
(72)【発明者】
【氏名】寺本 崇
(72)【発明者】
【氏名】植田 展仁
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BA06
4H011BB09
4H011DA15
4H011DG11
4H011DG16
(57)【要約】
【課題】農薬活性成分として式(I)で表される化合物を含有し、該化合物の粒子が水に懸濁している組成物であって、水中における該化合物の経時的な粒子サイズの成長を抑制することができる組成物を提供する。
【解決手段】式(I)で表される化合物、式(II)で表される少なくとも一つの化合物(ただし、式(I)で表される化合物は除く。)、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、及び水を含有し、式(II)で表される化合物の含有量が、式(I)で表される化合物100質量部に対して0.02質量部以上2.2質量部以下である組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
で表される化合物、式(II)
【化2】
〔式中、
-T-L-は、-C(X)=N-*又は-C(O)-NH-*を表し、
*は、Lが結合する窒素原子との結合位置を表し、
Xは、塩素原子又は[4-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-フェニル-6-メチルピリダジン-3-イル]オキシ基を表し、
R
1は、フェニル基、2-フルオロフェニル基、又は2,6-ジフルオロフェニル基を表し、
R
2は、水素原子又はフェニル基を表し、
R
3は、メチル基又はベンゾイル基を表す。〕
で表される少なくとも一つの化合物(ただし、前記式(I)で表される化合物は除く。)、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、及び水を含有し、
前記式(II)で表される化合物の含有量が、前記式(I)で表される化合物100質量部に対して0.02質量部以上2.2質量部以下である組成物。
【請求項2】
前記組成物100質量部に対して、前記式(I)で表される化合物を5質量部以上60質量部以下、前記界面活性剤を1質量部以上20質量部以下、前記増粘剤を0.01質量部以上1質量部以下、前記防腐剤を0.01質量部以上1質量部以下、及び前記水を15質量部以上90質量部以下含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物100質量部に対して、前記式(I)で表される化合物を15質量部以上45質量部以下、前記界面活性剤を5質量部以上15質量部以下、前記増粘剤を0.1質量部以上0.5質量部以下、前記防腐剤を0.1質量部以上0.5質量部以下、及び前記水を35質量部以上79質量部以下含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)
【化3】
で表される化合物、及び式(II-1)
【化4】
で表される化合物を含有する組成物。
【請求項5】
界面活性剤、増粘剤、防腐剤、及び水をさらに含有する請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬活性化合物を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2005/121104号(特許文献1)には、植物病害防除活性を有するピリダジン化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農薬製剤の形態の一つとして、固体の農薬活性成分の粒子が水に懸濁している水性懸濁製剤(aqueous suspension concentrate、SCとも呼ばれる)が知られている。
【0005】
本発明の目的は、農薬活性成分として後述する式(I)で表されるピリダジン化合物を含有し、該ピリダジン化合物の粒子が水に懸濁している組成物であって、水中における該ピリダジン化合物の経時的な粒子サイズの成長を抑制することができる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す組成物を提供する。
[1] 式(I)
【化1】
で表される化合物、式(II)
【化2】
〔式中、
-T-L-は、-C(X)=N-*又は-C(O)-NH-*を表し、
*は、Lが結合する窒素原子との結合位置を表し、
Xは、塩素原子又は[4-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-フェニル-6-メチルピリダジン-3-イル]オキシ基を表し、
R
1は、フェニル基、2-フルオロフェニル基、又は2,6-ジフルオロフェニル基を表し、
R
2は、水素原子又はフェニル基を表し、
R
3は、メチル基又はベンゾイル基を表す。〕
で表される少なくとも一つの化合物(ただし、前記式(I)で表される化合物は除く。)、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、及び水を含有し、
前記式(II)で表される化合物の含有量が、前記式(I)で表される化合物100質量部に対して0.02質量部以上2.2質量部以下である組成物。
[2] 前記組成物100質量部に対して、前記式(I)で表される化合物を5質量部以上60質量部以下、前記界面活性剤を1質量部以上20質量部以下、前記増粘剤を0.01質量部以上1質量部以下、前記防腐剤を0.01質量部以上1質量部以下、及び前記水を15質量部以上90質量部以下含有する[1]に記載の組成物。
[3] 前記組成物100質量部に対して、前記式(I)で表される化合物を15質量部以上45質量部以下、前記界面活性剤を5質量部以上15質量部以下、前記増粘剤を0.1質量部以上0.5質量部以下、前記防腐剤を0.1質量部以上0.5質量部以下、及び前記水を35質量部以上79質量部以下含有する[1]に記載の組成物。
[4] 式(I)
【化3】
で表される化合物、及び式(II-1)
【化4】
で表される化合物を含有する組成物。
[5] 界面活性剤、増粘剤、防腐剤、及び水をさらに含有する[4]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
農薬活性成分として式(I)で表される化合物を含有し、該化合物の粒子が水に懸濁している組成物であって、水中における該化合物の経時的な粒子サイズの成長を抑制することができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、
(a)上記式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)、
(b)上記式(II)で表される化合物(以下、「化合物(II)」ともいう。)の少なくとも一つ、
(c)界面活性剤、
(d)増粘剤、
(e)防腐剤、及び
(f)水
を含有する。本組成物において農薬活性成分である化合物(I)は、好ましくは、固体状態で水中に分散されている。化合物(II)もまた、好ましくは、固体状態で水中に分散されている。
【0009】
本組成物は、化合物(I)の経時的な粒子サイズの成長を抑制することができ、経時安定性に優れる。粒子サイズの成長は、結晶成長によるものである。
以下、本組成物が含有する又は含有し得る成分について詳細に説明する。
【0010】
(a)化合物(I)
化合物(I)は、例えば特許文献1に記載される公知の化合物であり、同文献に記載の方法により製造することができる。
【0011】
化合物(I)の含有量は、本組成物100質量部に対して、通常1質量部以上60質量部以下、好ましくは5質量部以上60質量部以下、より好ましくは10質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは15質量部以上45質量部以下である。化合物(I)の含有量が上記範囲内であると、十分な植物病害防除効力と高い経時安定性とを両立させやすい。
【0012】
(b)化合物(II)
化合物(II)は、化合物(I)とは異なる化学構造を有する化合物であって、式(II)
【化5】
で表される化合物である。
本組成物は、化合物(II)を1種又は2種以上含有することができる。
【0013】
式(II)中、-T-L-は、-C(X)=N-*又は-C(O)-NH-*を表し、*は、Lが結合する窒素原子との結合位置を表す。Xは、塩素原子又は[4-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-フェニル-6-メチルピリダジン-3-イル]オキシ基を表す。
R1は、フェニル基、2-フルオロフェニル基、又は2,6-ジフルオロフェニル基を表す。
R2は、水素原子又はフェニル基を表す。
R3は、メチル基又はベンゾイル基を表す。
【0014】
化合物(II)の具体例を表1~表3に示す。表中、X1は、[4-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-フェニル-6-メチルピリダジン-3-イル]オキシ基を表す。また、-CH3はメチル基、-C6H5はフェニル基、-C6H4Fは2-フルオロフェニル基、-C6H3F2は2,6-ジフルオロフェニル基、-C(O)-CH3はベンゾイル基を表す。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
化合物(I)の経時的な粒子サイズの成長を抑制する観点から、1つの好ましい実施形態において、本組成物は、化合物(II-1)、化合物(II-5)、化合物(II-9)、化合物(II-16)、化合物(II-20)、化合物(II-24)、化合物(II-28)及び化合物(II-32)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する。
同観点から、他の好ましい実施形態において、本組成物は、化合物(II-1)、化合物(II-16)、化合物(II-20)及び化合物(II-24)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する。
【0019】
化合物(II-1)、化合物(II-16)、化合物(II-20)及び化合物(II-24)は、それぞれ、式(II-1)、式(II-16)、式(II-20)及び式(II-24)で表される化合物である。
【0020】
【0021】
なお、化合物(II-24)には互変異性体が存在する。本明細書において、化合物(II-24)とは、下記式で表されるエノール体も包含されるものとする。
【化8】
【0022】
化合物(II)は、特許文献1に記載の方法により又はそれに準じて製造することができる。化合物(II-1)については、例えば特開2020-66608号公報に記載の方法により製造することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、本組成物は、化合物(II)として下記化合物を含有する。
実施形態A:化合物(II-1)
実施形態B:化合物(II-20)
実施形態C:化合物(II-24)
実施形態D:化合物(II-1)及び化合物(II-20)
実施形態E:化合物(II-1)及び化合物(II-24)
実施形態F:化合物(II-1)、化合物(II-20)及び化合物(II-24)
実施形態G:化合物(II-1)、化合物(II-16)、化合物(II-20)及び化合物(II-24)
【0024】
本組成物における化合物(II)の含有量は、化合物(I)の経時的な粒子サイズの成長を抑制する観点から、化合物(1)100質量部に対して0.02質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上、さらに好ましくは0.15質量部以上、なおさらに好ましくは0.18質量部以上である。
化合物(II)の含有量は、本組成物の植物病害防除効力等を考慮して、2.2質量部以下とされ、好ましくは2.1質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下であり、1.9質量部以下、1.8質量部以下、1.5質量部以下、1.2質量部以下、1.0質量部以下、0.8質量部以下、0.6質量部以下、0.4質量部以下又は0.3質量部以下であってもよい。
【0025】
化合物(II)の含有量とは、2種以上の化合物(II)が本組成物に含有される場合には、それらの合計含有量である。本組成物が含有する又は含有し得る、後述する他の成分についても同様であり、該成分の含有量は、2種以上を含有する場合には、特記しない限りそれらの合計含有量である。
【0026】
(c)界面活性剤
本組成物は、1種又は2種以上の界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。本組成物は、好ましくは、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群より選択される界面活性剤を含有し、より好ましくはアニオン性界面活性剤を含有する。
【0027】
好ましいアニオン性界面活性剤は、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、カルボン酸塩及びこれらの混合物である。
スルホン酸塩としては、例えば、ナフタレンスルホン酸塩及びそのホルムアルデヒド縮合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩並びにジアルキルスルホコハク酸塩が挙げられる。
硫酸エステル塩としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
リン酸エステル塩としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸塩としては、例えば、脂肪酸塩及びポリカルボン酸塩が挙げられる。
【0028】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルポリグコシド及びアクリル共重合体が挙げられる。
【0029】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩及び第四級アンモニウム塩が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタインが挙げられる。
【0030】
界面活性剤の含有量は、本組成物100質量部に対して、通常0.5質量部以上30質量部以下、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは3質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
【0031】
(d)増粘剤
本組成物は、1種又は2種以上の増粘剤を含有する。増粘剤としては、例えばザンサンガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナン、ウェランガム、アルギン酸、アルギン酸塩、トラガントガム等の天然多糖類;アルミニウムシリケート、マグネシウムアルミニウムシリケート、スメクタイト、ベントナイト、ヘクライト、合成含水珪酸、乾式シリカ等の鉱物質粉末;およびアルミナゾルを挙げることができる。これらの増粘剤として市販品をそのまま使用することができる。かかる市販品としては、例えば、ザンサンガムであるケルザン(CP Kelco社商品名)やケルザン S PLUS(CP Kelco社商品名)、アルミニウムシリケートであるビーガム R(バンダービルト社商品名)、及び乾式シリカであるアエロジル200(日本アエロジル社商品名)が挙げられる。
【0032】
増粘剤の含有量は、本組成物100質量部に対して、通常0.01質量部以上1質量部以下、好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
【0033】
(e)防腐剤
本組成物は、1種又は2種以上の防腐剤を含有する。防腐剤としては、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エステル、サリチル酸誘導体、イソチアゾリノン系防腐剤が挙げられる。
【0034】
防腐剤の含有量は、本組成物100質量部に対して、通常0.01質量部以上1質量部以下、好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
【0035】
(f)水
本組成物は、水を含有する。水としては、イオン交換水、水道水及び地下水が挙げられる。
【0036】
水の含有量は、本組成物100質量部に対して、通常15質量部以上98質量部以下、好ましくは15質量部以上90質量部以下、より好ましくは25質量部以上85質量部以下、さらに好ましくは35質量部以上79質量部以下である。
【0037】
(g)その他の成分
本組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分を含有することができる。
他の成分としては、例えば、上記以外の農薬活性成分、凍結防止剤、消泡剤、その他の製剤用補助剤が挙げられる。
【0038】
凍結防止剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、尿素及びグリセリンが挙げられる。凍結防止剤を2種以上用いてもよい。凍結防止剤の含有量は、本組成物100質量部に対して、通常1質量部以上10質量部以下、好ましくは2質量部以上8質量部以下である。
【0039】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤が挙げられる。消泡剤を2種以上用いてもよい。消泡剤の含有量は、本組成物100質量部に対して、通常0.01質量部以上1質量部以下、好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下である。
【0040】
本組成物は、化合物(I)、化合物(II)、界面活性剤、増粘剤、防腐剤及び水を合計で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、なおさらに好ましくは85質量%以上含有する。
【0041】
(h)本組成物の調製方法
本組成物は、SCの調製方法として従来公知の方法により所定の成分を混合することによって調製できる。調製方法の例を以下に示す。
【0042】
まず、化合物(I)、化合物(II)、界面活性剤、水、及び必要に応じて製剤用補助剤(消泡剤等)を混合し、得られた懸濁液に対して粉砕処理を行って粉砕懸濁液を得る(第1工程)。ついで、得られた粉砕懸濁液に増粘剤、防腐剤、並びに必要に応じて他の製剤用補助剤(凍結防止剤等)及び水を添加、混合して本組成物を得る(第2工程)。第2工程において、増粘剤、防腐剤、並びに必要に応じて他の製剤用補助剤(凍結防止剤等)及び水をあらかじめ混合して増粘液を調製し、この増粘液と粉砕懸濁液とを混合して本組成物を得てもよい。
【0043】
調製直後の本組成物において、固体粒子の粒子径は、通常0.1μm以上であり、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。該粒子径は、通常5μm以下であり、4μm以下又は3μm以下であってもよい。
【0044】
ここでいう粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により測定される体積中位径(体積基準の頻度分布において累積頻度で50%となる粒子径)を意味する。湿式測定は、本組成物サンプルを水中に分散させて測定することをいう。
【0045】
本組成物によれば、化合物(I)の経時的な粒子サイズの成長を抑制することができる。本組成物によれば、温度40℃で1ヶ月間保存したときの下記式で表される粒子成長率を、例えば40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下、なおさらに好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下に抑えることができる。
粒子成長率(%)=100×(40℃1ヶ月間保存後の粒子径-調製直後の粒子径)/調製直後の粒子径
【0046】
本組成物は、水中における化合物(I)の経時的な粒子サイズの成長を抑制することができ、経時安定性に優れることから、水性懸濁製剤として好適に使用できる。
【0047】
本発明は、化合物(I)及び化合物(II-1)を含有する組成物にも関する。該組成物は、例えば本組成物(水性懸濁製剤)又は他の製剤形態の農薬製剤の調製に用いることができる。該組成物に含有される化合物(I)、化合物(II-1)及びそれらの含有量比については上述の記載が引用される。
【0048】
化合物(I)及び化合物(II-1)を含有する組成物は、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、及び水をさらに含有していてもよい。該組成物は、凍結防止剤、消泡剤等の他の製剤用補助剤をさらに含有していてもよい。界面活性剤、増粘剤、防腐剤、凍結防止剤、消泡剤、水、及びこれらの含有量については上述の記載が引用される。これらを含有する組成物は、製剤化することにより農薬製剤として使用できる。
【0049】
(i)本組成物の使用
本組成物を、植物又はその生育環境に施用することにより、植物病原性微生物が引き起こす植物病害を防除することができる。使用者は、本組成物を、通常、背負式散布機(knapsack sprayer)、スプレータンク(spray tank)、散布航空機(spray plane)、又は灌漑システム(irrigation system)から施用する。通常、本組成物は所望の施用濃度になるように水で希釈され、散布液とする。通常、1ヘクタールあたり、20~2000L、好ましくは50~400Lの散布液が施用される。
【0050】
本組成物の施用量は、本組成物に含有される農薬活性成分の含有率、植物の種類、植物病害の種類や発生頻度、施用時期、施用方法、施用場所、気象条件等によって適宜調整される。
【0051】
本組成物の施用により防除し得る植物病害としては、以下のものが挙げられる。括弧内は、その病害を引き起こす病原性微生物の学名を示す。
【0052】
イネの病害:いもち病(Pyricularia oryzae)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、黄化萎縮病(Sclerophthora macrospora)、にせいもち病及び穂枯病(Epicoccum nigrum)、苗立枯病(Trichoderma viride、Rhizopus oryzae);
コムギの病害:うどんこ病(Blumeria graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum、Microdochium nivale)、黄さび病(Puccinia striiformis)、黒さび病(Puccinia graminis)、赤さび病(Puccinia recondita)、紅色雪腐病(Microdochium nivale、 Microdochium majus)、雪腐小粒菌核病(Typhula incarnata、Typhula ishikariensis)、裸黒穂病(Ustilago tritici)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries、 Tilletia controversa)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Stagonospora nodorum)、黄斑病(Pyrenophora tritici-repentis)、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、いもち病(Pyricularia graminis-tritici);
オオムギの病害:うどんこ病(Blumeria graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum、Microdochium nivale)、黄さび病(Puccinia striiformis)、黒さび病(Puccinia graminis)、小さび病(Puccinia hordei)、裸黒穂病(Ustilago nuda)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、網斑病(Pyrenophora teres)、斑点病(Cochliobolus sativus)、斑葉病(Pyrenophora graminea)、ラムラリアリーフスポット病(Ramularia collo-cygni)、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani);
トウモロコシの病害:さび病(Puccinia sorghi)、南方さび病(Puccinia polysora)、すす紋病(Setosphaeria turcica)、熱帯性さび病(Physopella zeae)、ごま葉枯病(Cochliobolus heterostrophus)、炭疽病(Colletotrichum graminicola)、グレーリーフスポット病(Cercospora zeae-maydis)、褐斑病(Kabatiella zeae)、ファエオスファエリアリーフスポット病(Phaeosphaeria maydis)、Diplodia病(Stenocarpella maydis、Stenocarpella macrospora)、ストークロット病(Fusarium graminearum、Fusarium verticilioides、Colletotrichum graminicola)、黒穂病(Ustilago maydis)、フイソデルマ病(Physoderma maydis);
ワタの病害:炭疽病(Colletotrichum gossypii)、白かび病(Ramularia areola)、黒斑病(Alternaria macrospora、Alternaria gossypii)、Black root rot病 (Thielaviopsis basicola);
コーヒーの病害:さび病(Hemileia vastatrix)、リーフスポット病(Cercospora coffeicola);
ナタネの病害:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、黒斑病(Alternaria brassicae)、根朽病(Phoma lingam)、light leaf spot病(Pyrenopeziza brassicae);
サトウキビの病害:さび病 (Puccinia melanocephela、Puccinia kuehnii)、黒穂病 (Ustilago scitaminea);
ヒマワリの病害:さび病 (Puccinia helianthi)、べと病(Plasmopara halstedii);
カンキツ類の病害:黒点病(Diaporthe citri)、そうか病(Elsinoe fawcetti)、緑かび病(Penicillium digitatum)、青かび病(Penicillium italicum)、疫病 (Phytophthora parasitica、Phytophthora citrophthora)、こうじかび病(Aspergillus niger);
リンゴの病害:モニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、斑点落葉病(Alternaria alternata apple pathotype)、黒星病(Venturia inaequalis)、炭疽病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、褐斑病(Diplocarpon mali)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、疫病 (Phytophtora cactorum)、赤星病(Gymnosporangium juniperi-virginianae、Gymnosporangium yamadae);
ナシの病害:黒星病(Venturia nashicola、Venturia pirina)、黒斑病(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum);
モモの病害:灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、ホモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、縮葉病(Taphrina deformans);
ブドウの病害:黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、うどんこ病(Uncinula necator)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、ブラックロット病(Guignardia bidwellii)、べと病(Plasmopara viticola);
カキの病害:炭疽病(Gloeosporium kaki、Colletotrichum acutatum)、落葉病(Cercospora kaki、Mycosphaerella nawae);
ウリ類の病害:炭疽病(Colletotrichum lagenarium)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Didymella bryoniae)、褐斑病(Corynespora cassiicola)、つる割病(Fusarium oxysporum)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、疫病(Phytophthora capsici)、苗立枯病(Pythium sp.);
トマトの病害:輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、すすかび病(Pseudocercospora fuligena)、疫病(Phytophthora infestans)、うどんこ病(Leveillula taurica);
ナスの病害:褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum);
アブラナ科野菜の病害:黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cercosporella brassicae)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora parasitica)、白さび病(Albugo candida);
ネギの病害:さび病(Puccinia allii);
ダイズの病害:紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum var. sojae)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、褐色輪紋病(Corynespora cassiicola)、炭疽病(Colletotrichum glycines、Colletotrichum truncatum)、葉腐病(Rhizoctonia solani)、褐紋病(Septoria glycines)、斑点病(Cercospora sojina)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、うどんこ病(Microsphaera diffusa)、茎疫病 (Phytophthora sojae)、べと病(Peronospora manshurica)、突然死病(Fusarium virguliforme)、黒根腐病(Calonectria ilicicola)、Diaporthe/Phomopsis complex(Diaporthe longicolla);
インゲンの病害:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、さび病(Uromyces appendiculatus)、角斑病(Phaeoisariopsis griseola)、炭疽病(Colletotrichum lindemuthianum)、根腐病(Fusarium solani);
ラッカセイの病害:黒渋病(Cercospora personata)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、黒根腐病(Calonectria ilicicola);
エンドウの病害:うどんこ病(Erysiphe pisi)、根腐病(Fusarium solani);
ジャガイモの病害:夏疫病(Alternaria solani)、疫病(Phytophthora infestans)、緋色腐敗病 (Phytophthora erythroseptica)、粉状そうか病(Spongospora subterranea f. sp. subterranea)、半身萎凋病(Verticillium albo-atrum、Verticillium dahliae、Verticillium nigrescens)、乾腐病(Fusarium solani)、がん腫病(Synchytrium endobioticum);
イチゴの病害:うどんこ病(Sphaerotheca humuli);
チャの病害:網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、輪斑病(Pestalotiopsis sp.)、炭疽病(Colletotrichum theae-sinensis);
タバコの病害:赤星病(Alternaria longipes)、炭疽病(Colletotrichum tabacum)、べと病(Peronospora tabacina)、疫病(Phytophthora nicotianae);
テンサイの病害:褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)、黒根病(Aphanomyces cochlioides)、さび病(Uromyces betae);
バラの病害:黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa);
キクの病害:褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana);
タマネギの病害:白斑葉枯病(Botrytis cinerea、Botrytis byssoidea、Botrytis squamosa)、灰色腐敗病(Botrytis allii)、小菌核性腐敗病(Botrytis squamosa);
種々の作物の病害:灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、苗立枯病(Pythium aphanidermatum、Pythium irregulare、Pythium ultimum);
ダイコンの病害:黒斑病(Alternaria brassicicola);
シバの病害:ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)、ブラウンパッチ病、ラージパッチ病(Rhizoctonia solani)、赤焼病(Pythium aphanidermatum);
バナナの病害:シガトカ病(Mycosphaerella fijiensis、Mycosphaerella musicola);
レンズマメの病害:Ascochyta病(Ascochyta lentis);
ヒヨコマメの病害:Ascochyta病(Ascochyta rabiei);
ピーマンの病害:炭疽病(Colletotrichum scovillei);
マンゴーの病害:炭疽病(Colletotrichum acutatum);
果樹の病害:白紋羽病(Rosellinia necatrix)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa);
収穫後のリンゴ、ナシ等の果実の病害:ムコールロット病(Mucor piriformis);
Aspergillus属、Penicillium属、Fusarium属、Gibberella属、Tricoderma属、Thielaviopsis属、Rhizopus属、Mucor属、Corticium属、Phoma属、Rhizoctonia属、Diplodia属等によって引き起こされる種子病害又は生育初期の病害;
ウイルス病:Olpidium brassicaeによって媒介されるレタスのビッグベイン病、Polymyxa属(例えば、Polymyxa betae及びPolymyxa graminis)によって媒介される各種作物のウイルス病;
細菌(bacteria)が引き起こす病害:イネの苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、キュウリの斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv. Lachrymans)、ナスの青枯病(Ralstonia solanacearum)、カンキツのかいよう病(Xanthomonas citri)、ハクサイの軟腐病(Erwinia carotovora)、ジャガイモのそうか病(Streptomyces scabiei)、トウモロコシのGoss's wilt病(Clavibacter michiganensis)、ブドウ、オリーブ、モモ等のピアス病(Xylella fastidiosa)、リンゴ、モモ、サクランボ等のバラ科植物の根頭がんしゅ病(Agrobacterium tumefaciens)。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0054】
<比較例1>
化合物(I) 35.0質量部、界面活性剤(有効成分40質量%) 10.0質量部、消泡剤 0.2質量部、及びイオン交換水 34.8質量部を混合して得られた混合物にガラスビーズを入れてスリーワンモーター(ヤマト科学社製)を用いて攪拌することによって湿式粉砕し、粉砕懸濁液(80質量部)を得た。
また、増粘剤1 1.2質量部、増粘剤2 2.4質量部及び防腐剤 2.0質量部をイオン交換水 194.4質量部に加え、2時間撹拌を継続して増粘液(200質量部)を得た。
ついで、粉砕懸濁液 80質量部と、増粘液 20質量部とを混合して組成物を得た。
【0055】
<比較例2、3及び実施例1~9>
表4に示す組成になるように、比較例1に記載の方法に準じて粉砕懸濁液及び増粘液をそれぞれ調製し、これらを混合することにより、それぞれの組成物を得た。なお、化合物(II-1)、化合物(II-16)、化合物(II-20)、化合物(II-24)、化合物(III)及びキシレンは、粉砕懸濁液に含まれるように調製した。表4において、各配合成分の量の単位は質量部である。
【0056】
(粒子成長率の評価)
各組成物について、調製直後及び40℃1ヶ月間保存後のそれぞれの粒子径(上述の定義に従う)測定を行い、下記式により粒子径成長率を算出した。粒子径の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー2000、マルバーン社製)を用いた湿式測定により行った。結果を表4に示す。同表中の「保存後」とは、40℃1ヶ月間保存後の意味である。
粒子成長率(%)=100×(40℃1ヶ月間保存後の粒子径-調製直後の粒子径)/調製直後の粒子径
【0057】
【0058】
表4に記載の配合成分の詳細は次のとおりである。
〔1〕界面活性剤:ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステルカリウム塩 40質量%及びプロピレングリコール 60質量%の混合物(ソプロフォールFLK、ソルベイ日華社製)
〔2〕消泡剤:シリコーン系消泡剤(KS-538、信越化学社製)
〔3〕増粘剤1:キサンタンガム(ケルザンS Plus、CP Kelco社製)
〔4〕増粘剤2:ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガムR、バンダービルト社製)
〔5〕防腐剤:有効成分として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンを含む防腐剤(プロキセルGXL(S)、Lonza社製)
〔6〕化合物(III):下記式で表される化合物
【化9】