(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106324
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂及び活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物、並びにその硬化物及び物品
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20230725BHJP
C09D 175/14 20060101ALI20230725BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D175/14
C09D133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002996
(22)【出願日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2022007017
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁馬
(72)【発明者】
【氏名】岡 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】出口 義信
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰廣
【テーマコード(参考)】
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J038FA071
4J038FA282
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4J038NA06
4J038PA17
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4J127DA52
4J127DA53
4J127DA54
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、高温環境下において、防曇性及び密着性の低下を防ぎ、外観が損なわれない硬化塗膜を形成できる活性エネルギー線硬化型樹脂及び活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物、並びにその硬化物及び物品を提供する。
【解決手段】本発明は、水酸基を有する共重合体(A)と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物(B)とを必須の反応原料とする活性エネルギー線硬化型樹脂であり、前記共重合体(A)が、N-アクリロイルモルホリン、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を必須の共重合成分とすることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂;前記活性エネルギー線硬化型樹脂と、(メタ)アクリレート化合物(C)とを含有する活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物;前記活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の硬化物;前記硬化物からなる塗膜を有することを特徴とする物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する共重合体(A)と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物(B)とを必須の反応原料とする活性エネルギー線硬化型樹脂であり、
前記共重合体(A)が、N-アクリロイルモルホリン、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A-1)を必須の共重合成分とすることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂。
【請求項2】
前記共重合体(A)が、さらに、下記一般式(1)で表される化合物(A-2)を必須の共重合成分とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表す。R
2は炭素原子数1~20の炭化水素基、又は連続しない限りにおいて前記炭化水素基中の-CH
2-が酸素原子もしくは-NH-に置換した官能基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)中、R2は炭素原子数1~6の炭化水素基である請求項2記載の活性エネルギー線硬化型樹脂。
【請求項4】
前記N-アクリロイルモルホリン由来の構造の含有量が、前記共重合体(A)中に20~65質量%の範囲であり、前記化合物(A-2)由来の構造の含有量が、前記共重合体(A)中に20~65質量%の範囲である、請求項2記載の活性エネルギー線硬化型樹脂。
【請求項5】
前記イソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の物質量が、前記化合物(A-1)の水酸基1モルに対して、0.2モル以上である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂と、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上である(メタ)アクリレート化合物(C)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート化合物(C)が、1分子中にポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、前記(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量が固形分中に1~50質量%の範囲である、請求項6記載の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリカーボネートポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び水酸基を有する(メタ)アクリレートの反応生成物であり、
前記ポリカーボネートポリオール化合物が1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオールのいずれか一方又は両方を必須の反応成分として得られるポリカーボネートポリオール化合物であり、
前記イソシアネート化合物は、イソホロンジイソシアネート及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)のいずれか一方又は両方であり、
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのいずれか一方又は両方である、請求項7記載の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、非反応性界面活性剤(D)を含有するものである、請求項6記載の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6記載の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
請求項10記載の硬化物からなる塗膜を有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物、硬化物、及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用ヘッドランプ、バーチャルリアリティ(VR)のディスプレイ等には、曇りを防止する高い防曇性が求められている。ここでの曇りとは、表面に付着した水滴が光の乱反射を起こすことにより発生する現象である。このような曇りを防止する防曇方法としては、一般に、水の接触角を小さくする方法、表面に付着する水分を吸水する方法、表面に撥水性を付与して水を撥水する方法等が知られている。このうち、簡便かつ防曇性能が良好であることから、水の接触角を小さくする方法がよく用いられている。
【0003】
前記水の接触角を小さくする方法としては、基材であるガラスやプラスチックの表面に防曇性樹脂組成物を塗布し、防曇性塗膜を形成する試みがなされている。そこで、防曇性に優れ、かつ水垂れ跡が残りにくい塗膜を形成できる防曇塗料用樹脂として、複数種のアクリルアミド単量体を含む混合物をリビングラジカル重合したものが知られている(例えば、特許文献1)。
また特許文献2には、短時間且つ低温条件下で硬化可能な防曇剤組成物として、複数種のアクリルアミド系単量体、複数種の(メタ)アクリル酸エステル、及び水酸基を有する(メタ)アクリレートの混合物から得られる共重合体と、酸触媒と界面活性剤を含む組成物が開示されている。
一方、防曇性樹脂組成物は、長期の使用により界面活性剤がブリードアウトし、防曇性の低下や塗膜外観の劣化が起こることがある。したがって、長期の使用にも耐えうる耐熱性の高い防曇性樹脂又は組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-266669号公報
【特許文献2】特開2019-6881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の発明では、100度以上の超高温で長時間加熱後の防曇性、密着性、及び黄色度に関する試験は行われておらず、特許文献1及び2に記載の組成物は耐熱性を十分に確認できるものではなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、高温加熱後における防曇性及び密着性の低下を防ぎ、且つ外観が損なわれない硬化塗膜を形成できる活性エネルギー線硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物、硬化物、及び物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは検討の結果、水酸基を有する共重合体(A)と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物(B)とを必須の反応原料とする活性エネルギー線硬化型樹脂(I)が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち本発明は、以下の発明を提供するものである。
[1]水酸基を有する共重合体(A)と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物(B)とを必須の反応原料とする活性エネルギー線硬化型樹脂であり、共重合体(A)が、N-アクリロイルモルホリン、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A-1)を必須の共重合成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂。
[2]共重合体(A)が、さらに、下記一般式(1)で表される化合物(A-2)を必須の共重合成分とする[1]の活性エネルギー線硬化型樹脂。
【0009】
【0010】
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素原子数1~20の炭化水素基、又は連続しない限りにおいて炭化水素基中の-CH2-が酸素原子もしくは-NH-に置換した官能基を表す。)
[3]一般式(1)中、R2は炭素原子数1~6の炭化水素基である[2]の活性エネルギー線硬化型樹脂。
[4]N-アクリロイルモルホリン由来の構造の含有量が、共重合体(A)中に20~65質量%の範囲であり、化合物(A-2)由来の構造の含有量が、共重合体(A)中に20~65質量%の範囲である、[2]又は[3]の活性エネルギー線硬化型樹脂。
[5]イソシアネート化合物(B)のイソシアネート基の物質量が、化合物(A-1)の水酸基1モルに対して、0.2モル以上である[1]~[4]の何れかの活性エネルギー線硬化型樹脂。
[6][1]~[5]の何れかの活性エネルギー線硬化型樹脂と、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上である(メタ)アクリレート化合物(C)とを含有する活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
[7](メタ)アクリレート化合物(C)が、1分子中にポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量が固形分中に1~50質量%の範囲であることを特徴とする[6]の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
[8]ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリカーボネートポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び水酸基を有する(メタ)アクリレートの反応生成物であり、
ポリカーボネートポリオール化合物が1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオールのいずれか一方又は両方を必須の反応成分として得られるポリカーボネートポリオール化合物であり、
イソシアネート化合物は、イソホロンジイソシアネート及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)のいずれか一方又は両方であり、
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのいずれか一方又は両方である[7]の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
[9]さらに、非反応性界面活性剤(D)を含有する[6]~[8]の何れかの活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物。
[10][6]~[9]の何れかの活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の硬化物。
[11][10]の硬化物からなる塗膜を有する物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂(I)及び活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物は、優れた防曇性を有し、且つ、高温加熱後における防曇性及び密着性の低下を防ぎ、外観が損なわれない硬化塗膜を形成できる。この硬化塗膜は、高温環境下にさらされたとしても優れた防曇性を発揮することから、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂(I)及び活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物は、自動車用途やディスプレイ用途における樹脂材料のハードコートとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、前記共重合体(A)を「(A)成分」といい、他の(B)~(D)成分も同様にいう。さらに「アクリレート」と「メタクリレート」とを総称して「(メタ)アクリレート」といい、「アクリロイル」と「メタクリロイル」とを総称して「(メタ)アクリロイル」という。
【0013】
<活性エネルギー線硬化型樹脂(I)>
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂(I)(以下、単に「樹脂(I)」ということがある。)は、水酸基を有する共重合体(A)と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物(B)とを必須の反応原料として合成される。また、(A)成分に該当しない水酸基を有する化合物を樹脂(I)の任意の反応原料としても構わない。
【0014】
[(A)成分]
(A)成分は、水酸基を有する共重合体であり、具体的にはN-アクリロイルモルホリン、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A-1)を必須の共重合成分とする共重合体である。
通常、防曇性の発現には、基材表面に付着する水滴の表面張力を下げ、きれいな水膜を形成する必要がある。そこで水酸基を有する共重合体(A)のように親水性を有する樹脂を含む塗膜を基材表面に形成することで、短時間で水膜を形成できる。中でもN-アクリロイルモルホリンを構成単位とする共重合体を含む組成物は、剛直な塗膜を形成でき、高温加熱後の劣化を防ぐことができる。
【0015】
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、具体的には、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性されたヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール変性されたヒドロキシモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの市販品としては、東亜合成社製の商品名「アロニックス」(登録商標)各種(M-400、M-403、M-404、M-405、M-406、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450等)、ダイセル製の商品名「プラクセル(登録商標) FA-2D」、「プラクセル(登録商標) FA-4DT」、ダイセル製の商品名「HEMAC」(登録商標)、日油社製の商品名「ブレンマー(登録商標)AE-200」、「ブレンマー(登録商標)AE-400」、「ブレンマー(登録商標)AP-400」等を使用できる。
【0016】
上述した中でも、防曇性の観点から1分子内に1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0017】
(A)成分は、N-アクリロイルモルホリン及び化合物(A-1)に加え、下記一般式(1)で表される化合物(A-2)を必須の共重合成分とする共重合体としてもよい。ただし、化合物(A-2)は化合物(A-1)に該当しない化合物である。
【0018】
【0019】
式中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。或いはR2は、炭化水素基中の-CH2-が酸素原子もしくは-NH-に置換した官能基でも良いが、窒素原子同士、酸素原子同士、及び窒素原子と酸素原子とが連続しないものとする。
【0020】
化合物(A-2)として具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも高温加熱後の防曇性、基材への密着性の観点から、一般式(1)中のR2が炭素原子数1~6の炭化水素基である化合物がより好ましく、R2が炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基である化合物がさらに好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0021】
以上をまとめると、(A)成分は、N-アクリロイルモルホリン、化合物(A-1)として2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び化合物(A-2)としてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、又はn-ブチル(メタ)アクリレートを必須の共重合成分とする共重合体であることが最も好ましい。ただし、他の化合物を必須の共重合成分とした共重合体や、化合物(A-2)を必須の共重合成分としない共重合体でも本発明の課題を解決することができ、これに限定されるものではない。
【0022】
上記共重合体(A)の合成方法は特に限定されず、ラジカル重合法、カチオン重合法、カチオンリビング重合法、アニオンリビング重合法等の公知の製造方法が例示される。特に工業的な生産性の観点からラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が例示され、特に溶液重合法が好ましい。
【0023】
具体的には、例えば、ラジカル重合開始剤、上記必須の共重合成分、及び任意成分として各種単量体の混合物を有機溶媒に滴下し、100℃にて重合反応をすることで合成することができる。ラジカル重合開始剤は、一般に使用される有機過酸化物、アゾ化合物等の公知のものを用いることができる。前記、有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエートレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレートなどが挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリルなどが挙げられる。前記ラジカル重合開始剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記重合溶剤としては、アルコール系溶剤を除く一般に使用される有機溶剤を用いることができ、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤や、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、その他にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が使用される。前記重合溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
すなわち(A)成分は、N-アクリロイルモルホリン由来の構造、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A-1)由来の構造、及び化合物(A-2)由来の構造をそれぞれ有していても構わない。その場合、防曇性及び密着性の観点から、N-アクリロイルモルホリン由来の構造の含有量は前記共重合体(A)中に5~90質量%の範囲であることが好ましく、10~80質量%の範囲がより好ましく、20~65質量%の範囲であることが特に好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A-1)由来の構造の含有量は前記共重合体(A)中に1~50質量%の範囲であることが好ましく、5~30質量%の範囲がより好ましく、10~20質量%の範囲であることが特に好ましい。
化合物(A-2)由来の構造の含有量は前記共重合体(A)中に5~90質量%の範囲であることが好ましく、10~80質量%の範囲であることがより好ましく、20~65質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0025】
(A)成分は、1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
[(B)成分]
(B)成分は、1分子内にアクリロイル基を有するイソシアネート化合物である。例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-([1'-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート、及び2-(2-(メタ)アリロイルオキシエチル)エチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイル基含有モノイソシアネート;2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジメチレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネートの一方のイソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリレートとがウレタン結合したもの(ウレタン化反応したもの)等が挙げられる。中でも高温加熱による黄変抑制の観点から、脂肪族イソシアネート化合物がより好ましく、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アリロイルオキシエチル)エチルイソシアネートがさらに好ましく、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0027】
(B)成分は、1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上述の通り、(A)成分、(B)成分、及び任意で(A)成分以外の水酸基を有する化合物が反応して本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂(I)が得られる。具体的には、(A)成分及び任意の成分が有する水酸基と、(B)成分が有するイソシアネート基が反応してウレタン結合を有する活性エネルギー線硬化型樹脂(I)が合成される。よって、活性エネルギー線硬化型樹脂(I)の原料における、(A)成分及び任意の成分に含まれる水酸基と、(B)成分に含まれるイソシアネート基とのモル比(OH:NCO)は、特に限定されないが、防曇性及び耐熱性の観点から、1:0.05~1:1.5程度が好ましく、1:0.2~1:1程度が特に好ましい。(A)成分以外の水酸基を有する化合物(任意成分)が樹脂(I)の反応原料として含まれない場合であって、(A)成分の共重合成分のうち、水酸基を有する化合物が化合物(A-1)のみである場合、(A)成分に含まれる水酸基の物質量は、化合物(A-1)に含まれる水酸基の物質量に等しい。
【0029】
上記ウレタン結合を有する活性エネルギー線硬化型樹脂(I)の製造方法は、水酸基を有する共重合体である(A)成分、イソシアネート化合物である(B)成分及び必要に応じて(A)成分以外の水酸基を有する任意成分を反応させる方法であれば特に限定はされず、各種公知の製造方法が例示される。具体的には、例えば、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて(A)成分以外の水酸基を有する任意成分を、触媒存在下で、適切な反応温度(例えば60~90℃等)で反応させる方法等が挙げられる。また、(A)成分、(B)成分及び水酸基を有する任意成分を反応させる場合の順序は特に限定されず、それぞれを任意で混合させて反応させる方法、全成分を一括で混合させて反応させる方法等が挙げられる。
【0030】
<活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある。)は、上述の活性エネルギー線硬化型樹脂(I)を少なくとも含有し、任意でその他化合物を適宜含有した組成物である。組成物が樹脂(I)以外の化合物を含有する場合、組成物における樹脂(I)の含有量は、50~99.9質量%の範囲が好ましく、60~95質量%の範囲がより好ましく、75~90質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0031】
組成物中の樹脂(I)以外の化合物は本発明の課題解決を阻害しないものであればいかなるものでも構わないが、例えば後述の(C)成分が挙げられる。
【0032】
[(C)成分]
(C)成分は、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上である(メタ)アクリレート化合物である。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えばポリカーボネートポリオール又はポリアルキレングリコールのいずれか一方、イソシアネート化合物、及び水酸基を有する(メタ)アクリレートを原料として合成される化合物が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの市販品として、例えば宇部興産社製の商品名「ETERNACOLL」(登録商標)シリーズ各種(UH-50、UH-100、UH-200、UH-300、PH-50、PH-100、PH-200、PH-300、UC-100、UM-90、UHC50-100、UP-50、UP-100及びUP-200等)、三菱ケミカル社製の商品名「BENEBiOL」(登録商標)の各グレード(NL1010DB、NL2010DB、NL3010DB、NL1005B、NL2005B、NL1030B、HS0830B、HS0840B、HS0840B及びHS0850H等)、クラレ製の商品名「クラレポリオール」の各銘柄(C-590、C-1090及びC-2090等)等が使用できる。中でも、分岐型ポリカーボネートポリオールよりも、直鎖型ポリカーボネートポリオールの方が、ポリカーボネートポリオール同士が凝集し易いため、それらを原料として合成したウレタン(メタ)アクリレートの耐熱性及び基材密着性が向上する。したがって、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物(宇部興産社製の商品名「ETERNACOLL」(登録商標)シリーズ UH-50、UH-100、UH-200、UH-300)、及び1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールと炭酸エステルとの反応生成物(宇部興産社製の商品名「ETERNACOLL」シリーズ PH-50、PH-100、PH-200、PH-300)がより好ましい。
ポリアルキレングリコールの市販品として、例えば三洋化成工業社製の商品名「PEG」シリーズ(PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-1000、PEG-2000、PEG-4000)、「ニューポール」PPシリーズ(PP-200、PP-400、PP-600、PP-1000及びPP-2000)、三菱ケミカル社製の商品名「PTMG」の各グレード(PTMG-650、PTMG-1000、PTMG-2000等)等が使用できる。中でも、数平均分子量200~4000のポリエチレングリコール(三洋化成工業社製の商品名「PEG」シリーズ PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-1000、PEG-2000、PEG-4000がより好ましい。
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1、6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1、4-ブタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、2-メチル-1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、2-メチル-1,5-ジイソシアナトシクロヘキサン等の脂環式イソシアネート等が挙げられる。或いは、これらイソシアネート化合物の2量体や3量体(イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート等)を使用しても構わない。これらの中でもイソホロンジイソシアネート、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)がより好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性されたヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール変性されたヒドロキシモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの市販品としては、東亜合成社製の商品名「アロニックス」(登録商標)各種(M-400、M-403、M-404、M-405、M-406、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450等)、ダイセル製の商品名「プラクセル(登録商標) FA-2D」、ダイセル製の商品名「HEMAC」(登録商標)、日油社製の商品名「ブレンマー(登録商標)AE-200」、「ブレンマー(登録商標)AP-400」等を使用できる。これらの中でも2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0034】
エステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。
ポリエステルポリオールは、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸又はその無水物、及び環状エステルの3種類の成分による反応物などが挙げられる。
多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。
上記多価カルボン酸又はその無水物は、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸、又はその無水物等が挙げられる。
上記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが挙げられる。
エステル(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば東亜合成社製の商品名「アロニックス」(登録商標)各種(M6100、M6250、M6500、M7100、M7300K、及びM-8030等)等が挙げられる。中でも本発明においては二官能のポリエステルアクリレート(市販品の場合、東亜合成社製の商品名「アロニックス」(登録商標)各種(M6100、M6250、及びM6500等)等)がより好ましく、「アロニックス(登録商標)M6250」が特に好ましい。
【0035】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。エポキシアクリレートの市販品としては、例えばDIC社製の商品名「LUXYDIR(登録商標) V-5500」等が挙げられる。
【0036】
上述した中でも、高温加熱後の密着性の観点から、(C)成分はポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましく、具体的には下記一般式(2)で表される化合物を用いることがより好ましい。
【0037】
【0038】
上記式中、Xはポリカーボネートポリオール由来の構造を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構造を表し、αはイソシアネート化合物由来の構造を表し、式中の複数のαは互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、平均繰り返し数n1は1~10の整数である。本明細書における「ポリカーボネートポリオール由来の構造」とはポリカーボネートポリオール化合物から末端水素原子を除いた構造のことであり、「水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構造」とは水酸基を有する(メタ)アクリレートから水酸基を除いた構造であり、「イソシアネート化合物由来の構造」とはイソシアネート化合物からイソシアネート基を全て除いた構造のことを指す。
【0039】
したがって、(C)成分の反応原料は特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネートポリオール化合物、イソシアネート化合物、及び水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、反応原料としてのポリカーボネートポリオール化合物の数平均分子量は500~1000の範囲であることがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールと炭酸エステルとの反応生成物(例えば、宇部興産社製の商品名「ETERNACOLL(登録商標) PH50」及び「ETERNACOLL(登録商標) PH-100」等)が特に好ましい。
反応原料としてのイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネート化合物が好ましく、イソホロンジイソシアネート又は4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)がより好ましい。
反応原料としての水酸基を有する(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0040】
また入手容易の観点から(C)成分は市販品のポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いても良く、例えば三菱ケミカル社製の商品名「紫光(登録商標)UV-3310B」等を使用しても良い。
【0041】
(C)成分の含有量は、防曇性及び耐熱性の観点から、前記組成物に含有される全固形分中に0.1~90質量%の範囲であることが好ましく、0.5~70質量%の範囲であることがより好ましく、1~50質量%の範囲であることがさらに好ましく、5~30質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0042】
(C)成分は、1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物は、例えば後述の(D)成分をさらに含有してもよい。
【0044】
[(D)成分]
(D)成分は、非反応性界面活性剤であり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤から選ばれる界面活性剤である。ここでの「非反応性」とはビニルモノマーの重合反応による付加重合を起こさないことを指し、「非反応性界面活性剤」とは分子内に(メタ)アクリロイル基を有しない界面活性剤を指す。
本発明において、(D)成分を添加することで基材表面により好適な親水性を付与することができ、防曇性及び耐熱性が向上する。
【0045】
アニオン性界面活性剤としては、従来公知のものを全て使用することができるが、例えば、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどの脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどの高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ジアルキルホスフェート塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンサルフェート塩が挙げられる。また、前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのフッ素含有アニオン系界面活性剤などが挙げられる。前記アニオン系界面活性剤は、防曇性能に優れるという観点から、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルホスフェート塩が好ましい。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては、従来公知のものを全て使用することができるが、例えば、エタノールアミン類、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノ蟻酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩などのアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジセチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。また、前記カチオン系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのフッ素含有カチオン系界面活性剤が挙げられる。前記カチオン系界面活性剤は、防曇性能という観点から、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0047】
非イオン性界面活性剤としては、従来公知のものを全て使用することができるが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノールなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレングリコールモノステアレートなどのポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのリン酸エステル類;シュガーエステル類、セルロースエーテル類などが挙げられる。また、前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親水性基および親油性基を有するオリゴマーなどのフッ素含有非イオン系界面活性剤が挙げられる。前記非イオン性界面活性剤は、防曇性能という観点から、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類が好ましい。
【0048】
(D)成分は特に限定されるものではないが、防曇性及び耐熱性の観点からエーテル型の非イオン性界面活性剤(例えば、第一工業製薬社製の商品名「ノイゲン(登録商標) XL-140」及び商品名「DKS(登録商標) NL-30」等)、第四級アンモニウム塩(例えば、三洋化成社製の商品名「レボン(登録商標)TM-16」、三洋化成社製の商品名「レボン(登録商標)TM-18」、ライオンスペシャリティケミカルズ社製の商品名「リポカード(登録商標)12W-37」、三洋化成社製の商品名「カチオンDSV」、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド等)、またはステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(例えば、第一工業製薬社製の商品名「カチオーゲン(登録商標)TMP」等)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはアルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(例えば、第一工業製薬社製の商品名「ネオゲン(登録商標)S-20F」等)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(例えば、ソルベイ社製の商品名「エアロゾル(登録商標)OT-100」)、フッ素含有界面活性剤(例えば、ネオス社製の商品名「フタージェント(登録商標)100」、AGCセイケミカル社製の商品名「サーフロン(登録商標)211」、AGCセイケミカル社製の商品名「サーフロン(登録商標)221」等)を用いることが好ましい。
【0049】
(D)成分は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0050】
防曇性及び耐熱性の観点から、(D)成分の配合量は、前記活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.1~30質量部の範囲が好ましく、0.3~20質量部の範囲がより好ましく、0.5~15質量部の範囲が特に好ましい。
【0051】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0052】
[光重合開始剤]
前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0053】
上述の光重合開始剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0054】
光重合開始剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが特に好ましい。光重合開始剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化反応が好適に進行し、高い硬度を有する硬化物が得られうることから好ましい。一方、光重合開始剤の含有量が10質量部以下であると、黄変等が生じにくく、高い透明性を有する硬化物が得られうることから好ましい。
【0055】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒を含むことで、前記組成物の粘度を調整することができる。
【0056】
[溶媒]
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、カルビトール、セロソルブ等のアルコールエーテル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;トルエン、キシレン、ジブチルヒドロキシトルエン等の芳香族溶媒などが挙げられる。
【0057】
上述の溶媒は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0058】
前記溶媒の含有量は、前記活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0~300質量部であることが好ましく、0~150質量部であることがより好ましい。前記溶媒の含有量が300質量部以下であると、膜厚を制御しやすいことから好ましい。なお、溶媒の含有量が10質量部以上であると、スプレー塗装、フローコート等種々塗工方式が採用できることから好ましい。
【0059】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物は、必要に応じて他の添加物を含んでいてもよい。
【0060】
[その他成分]
その他成分の代表的なものとしては例えば、反応性化合物、各種樹脂、フィラー、紫外線吸収剤、レベリング剤が挙げられる。また、さらに無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、触媒、(D)成分以外の界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、可塑剤等を含有していてもよい。
【0061】
反応性化合物として、(A)~(C)成分以外の(メタ)アクリレート化合物やビニル基等の2重結合を有する化合物を配合しても構わない。(メタ)アクリロイル系化合物としては、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0062】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばアクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば株式会社ダイセル製の商品名「プラクセル」(登録商標))、無水フタル酸または無水コハク酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応物、コハク酸とエチレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、コハク酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アミノ(メタ)アクリレート、スルホン酸基や第4級アンモニウム塩等のイオン性基を含有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0063】
多官能(メタ)アクリレートとしては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたグリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたグリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたリン酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物とアルコール系化合物を反応させたウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0064】
また、粘度調整のために液状有機ポリマーを使用してもよい。液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG-900、NC-500:共栄化学社製)、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄化学社製)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD(登録商標) ED-251:楠本化成社製)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK(登録商標)2000;ビックケミー社製)などが挙げられる。
【0065】
各種樹脂としては、熱硬化型樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱硬化型樹脂とは、加熱又は放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、熱硬化型樹脂とは、加熱又は放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、などが挙げられる。これらの熱硬化型樹脂は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0066】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0067】
フィラーとしてはたとえば、ハードコート性の向上を目的として、シリカを配合することができる。
シリカとしては、限定は無く、粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製アエロジル(登録商標)50、200、AGC社製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業社製E220A、E220、富士シリシア社製SYLYSIA470、日本板硝子社製SGフレ-ク等を挙げることができる。
また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業社製メタノ-ルシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、PGM-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
【0068】
シリカは、反応性シリカを用いてもよい。反応性シリカとしては、例えば反応性化合物修飾シリカが挙げられる。反応性化合物としては、例えば疎水性基を有する反応性シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物、グリシジル基を有する化合物が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル社製アエロジル(登録商標)RM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業社製MIBK-SD、MIBK-SD-L、MIBK-AC-2140Z、MEK-AC-2140Z等が挙げられる。また、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシジル基で修飾した後に、アクリル酸を付加反応させたシリカや、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランと水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物をウレタン化反応させたもので修飾したシリカも反応性シリカとして挙げられる。
【0069】
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状のものを用いることができる。例えば、市販の中空状シリカ微粒子としては、日鉄鉱業社製シリナックス(登録商標)等を用いることができる。
また一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。5nm以上であると、組成物中の無機微粒子の分散が十分となり、200nmを以下では、硬化物の十分な強度が保持できる。
【0070】
シリカ以外のフィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。フィラー形状に限定はなく、粒子状や板状、繊維状のフィラーが挙げられる。
耐熱性に優れるフィラーとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
【0071】
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
【0072】
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
【0073】
フィラーの配合量は、組成物100質量%中、0~60質量%が好ましい。
【0074】
本発明の組成物には、耐光性の向上を目的に紫外線吸収剤を添加しても構わない。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系、シアノアクリレート系、ポリマー型紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物には、耐光性の向上を目的に光安定剤を添加しても構わない。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等が挙げられる。
【0076】
本発明の組成物には、塗布時のレベリング性を高める目的や、硬化膜の滑り性を高めて耐擦傷性を高める目的等のため、各種表面改質剤を添加してもよい。表面改質剤としては、表面調整剤、レベリング剤、スベリ性付与剤、防汚性付与剤等の名称で市販されている、表面物性を改質する各種添加剤を使用することができる。それらのうち、シリコーン系表面改質剤およびフッ素系表面改質剤が好適である。
具体的には、シリコーン鎖とポリアルキレンオキサイド鎖を有するシリコーン系ポリマーおよびオリゴマー、シリコーン鎖とポリエステル鎖を有するシリコーン系ポリマーおよびオリゴマー、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖を有するフッ素系ポリマーおよびオリゴマー、パーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキサイド鎖を有するフッ素系ポリマーおよびオリゴマー、等が挙げられる。これらのうちの一種以上を使用すればよい。滑り性の持続力を高めるなどの目的で、分子中に(メタ)アクリロイル基を含有するものを使用してもよい。具体的な表面改質剤としては、EBECRYL(登録商標)350(ダイセル・オルネクス社製)、BYK(登録商標)-333(ビックケミー・ジャパン社製)、BYK-377(ビックケミー・ジャパン社製)、BYK-378(ビックケミー・ジャパン社製)、BYK-UV3500(ビックケミー・ジャパン社製)、BYK-UV3505(ビックケミー・ジャパン社製)、BYK-UV3576(ビックケミー・ジャパン社製)、メガファック(登録商標)RS-75(DIC社製)、メガファック(登録商標)RS-76-E(DIC社製)、メガファック(登録商標)RS-72-K(DIC社製)、メガファック(登録商標)RS-76-NS(DIC社製)、メガファック(登録商標)RS-90(DIC社製)、メガファック(登録商標)RS-91(DIC社製)、メガファック(登録商標)RS-55(DIC社製)、オプツール(登録商標)DAC-HP(ダイキン製)、ZX-058-A(T&K TOKA製)、ZX-201(T&K TOKA製)、ZX-202(T&K TOKA製)、ZX-212(T&K TOKA製)、ZX-214-A(T&K TOKA製)、X-22-164AS(信越化学工業社製)、X-22-164A(信越化学工業社製)、X-22-164B(信越化学工業社製)、X-22-164C(信越化学工業社製)、X-22-164E(信越化学工業社製)、X-22-174DX(信越化学工業社製)、等を挙げることができる。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物は、各種材料の少なくとも1面に塗工した後に活性エネルギー線を照射することにより、基材に防曇性を付与する硬化塗膜として好適に使用することができる。本発明の組成物からなる硬化塗膜は、高温環境下の防曇性及び密着性の低下を抑制しつつ、外観が損なわれないことから、過酷な高温高湿環境下や屋外で長期間使用される材料の防曇塗膜として使用した際に優れた効果を発揮する。
【0078】
<硬化物・物品>
(構成・材料)
本発明の物品は、本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の硬化物からなる塗膜と、基材とを有する。
基材に特に限定はなく、用途に応じて適宜選択すればよく、例えばプラスチック、ガラス、木材、金属、金属酸化物、紙、シリコーン又は変性シリコーン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよい。
基材の形状も特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等、目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0079】
プラスチック基材としては、樹脂からなるものであれば特に限定なく、例えば前述した熱硬化型樹脂や熱可塑性樹脂を用いればよい。機材としては、樹脂が単独でも複数種を配合した基材であってもよく、単層又は2層以上の積層構造を有するものであってもよい。また、これらのプラスチック基材は繊維強化(FRP)されていてもよい。
【0080】
また、基材は、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー、光安定剤、結晶核剤、滑剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0081】
本発明の物品は、基材及び硬化塗膜の上に、さらに第二基材を有していても良い。第二基材としては材質に特に限定は無く、ガラス、木材、金属、金属酸化物、プラスチック、紙、シリコン又は変性シリコン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよい。基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0082】
本発明の硬化塗膜は、プラスチックに対しても無機物に対しても密着性が高いため、異種材料の層間材としても好ましく利用可能である。特に好ましくは、基材がプラスチックであり、第二基材が無機層の場合である。無機層としては、例えば、石英、サファイア、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、無機酸化物、蒸着膜(CVD、PVD、スパッタ)、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Fe,ステンレス等の金属、紙、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、ポリエステル・ポリカーボネート・ポリイミド等のプラスチック層、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ITOや金属等の導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系基板等が挙げられる。
【0083】
(製造方法)
本発明の物品は、基材表面に本発明の組成物を塗布した後に硬化することで得られる。
基材への塗布は、基材に対し組成物を直接塗工又は直接成形して硬化させる方法により行うことができる。
直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定はなく、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。
また、組成物の硬化物を基材上に積層することにより本発明の物品を得てもよい。組成物の硬化物を積層する場合、半硬化の硬化物を基材上に積層してから完全硬化させてもよく、完全硬化済の硬化物を基材上に積層してもよい。
【0084】
本発明の組成物は、重合性不飽和基を有する化合物が含まれていることから、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)が好ましい。
ここで、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀-キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。これらを用いて、約180~400nmの波長の紫外線を、塗工又は成形された組成物に照射することによって、硬化塗膜や硬化物を得ることが可能である。紫外線の照射量としては、使用される光重合開始剤の種類及び量によって適宜選択される。
【0085】
(用途)
本願の組成物の硬化物は、優れた防曇性と耐熱性を有することから、安全防具関係では、ヘルメットバイザー、フェイスシールド、ゴーグル、自動車用関係ではヘッドランプ、フロントガラス、ガラス、サイドミラー、カメラ、キャノピー、ルーフ、コックピット計器等の用途に好適に使用されうる。また、その他にも、窓ガラス、プラスチックミラーや洗面化粧台等用の種々ミラー、ライト、デジタルサイネージ、ヘッドアップディスプレイ、バーチャルリアリティ(VR)のディスプレイ、GPSナビデバイス、電子制御パネル、食品用冷凍ケース、業務用冷凍庫、双眼鏡、監視カメラ、手術用カメラ、サングラス、眼鏡、自動車用ガラス飛散防止用や窓ガラスや鏡やショーケース用の防曇フィルム、感染症対策のパーテーション、モニターカバー、センサーカバー等の用途にも好適に使用することができる。
【実施例0086】
以下、実施例、比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。また、本実施例において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0087】
(合成例1:活性エネルギー線硬化型樹脂(1)の合成)
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(50質量部)を加え、110℃に昇温した。アクリロイルモルホリン(商品名「ACMO」(登録商標)、KJケミカルズ社製)(80質量部)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(20質量部)、ターシャリーブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(3質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(30質量部)の混合物を滴下漏斗に加え、窒素雰囲気下で4時間かけて滴下した。滴下後、110℃に保ったまま、8時間攪拌し、70℃へ冷却した。空気雰囲気に切り替え、ターシャリーブチルヒドロキシトルエン(0.28質量部)、メトキシハイドロキノン(0.028質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.028質量部)、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(24.3質量部)を加え、85℃に昇温した。イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで85℃で攪拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂(1)を得た。
【0088】
(合成例2~21:水酸基を有するアクリル樹脂(2)~(21)の合成)
表1及び2に示した原料に変更した以外は合成例1と同様にして、各例の活性エネルギー線硬化型樹脂(2)~(21)を得た。
【0089】
表1及び2中に記載の各数字は各化合物の質量部を表す。
また表1及び2における「OH:NCO=1:x」は、樹脂(I)の原料の(A)成分に含まれる水酸基と、樹脂(I)の原料の(B)成分に含まれるイソシアネート基とのモル比を表したものであり、表中の値はxに対応する。
【0090】
【0091】
【0092】
上記表1及び2に示す略語は下記の化合物を示す。
アクリレート1:アクリロイルモルホリン、商品名「ACMO」(登録商標)、KJケミカルズ社製
[水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A-1)]
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート、商品名「HEA」、大阪有機化学工業社製
[一般式(1)で表される化合物(A-2)]
MMA:メチルメタクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数1の炭化水素基
EA:エチルアクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数2の炭化水素基
nBA:n-ブチルアクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数4の炭化水素基
nBMA:n-ブチルメタクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数4の炭化水素基
iBMA:イソブチルメタクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数4の炭化水素基
tBMA:t-ブチルメタクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数4の炭化水素基
CHA:シクロヘキシルアクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数6の炭化水素基
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数8の炭化水素基
LA:ラウリルアクリレート、式(1)におけるR2が炭素原子数12の炭化水素基
[その他(A)成分の共重合成分]
アミド1:ジメチルアクリルアミド、商品名「DMAA」(登録商標)、KJケミカルズ社製
アミド2:ヒドロキシエチルアクリルアミド、商品名「HEAA」(登録商標)、KJケミカルズ社製
[(B)成分]
AOI:2-イソシアナトエチルアクリレート、商品名「カレンズ(登録商標)AOI」、昭和電工社製
【0093】
(合成例22:ウレタンアクリレート化合物UA1(PC)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート(商品名「IPDI」、コベストロポリマー社製)189.11質量部、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1質量部、メトキシハイドロキノン0.10質量部、ジブチル錫ジアセテート(0.10質量部)を加え、70℃に昇温し、大阪有機化学工業社製「HEA」98.79質量部とポリカーボネートポリオール(1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールと炭酸エステルとの反応生成物、数平均分子量:約500、商品名「ETERNACOLL PH-50」、宇部興産社製)210.90質量部を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで80℃で反応を行い、ポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物UA1(PC)を得た。本明細書での「ポリカーボネートポリオール由来の構造」とは、ポリカーボネートポリオールから末端水素原子を除いた構造を示す。
【0094】
(合成例23:ウレタンアクリレート化合物UA2(PC)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート(商品名「IPDI」、コベストロポリマー社製)133質量部、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1質量部、メトキシハイドロキノン0.10質量部、ジブチル錫ジアセテート(0.10質量部)を加え、70℃に昇温し、大阪有機化学工業社製「HEA」70質量部とポリカーボネートポリオール(1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールと炭酸エステルとの反応生成物、数平均分子量:約1000、商品名「ETERNACOLL PH-100」、宇部興産社製)295質量部を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで80℃で反応を行い、ポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物UA2(PC)を得た。
【0095】
(合成例24:ウレタンアクリレート化合物UA3(PC)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート(商品名「IPDI」、コベストロポリマー社製)60.31質量部、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1質量部、メトキシハイドロキノン0.10質量部、ジブチル錫ジアセテート(0.10質量部)を加え、70℃に昇温し、大阪有機化学工業社製「HEA」31.51質量部とポリカーボネートポリオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物、数平均分子量:約3000商品名「ETERNACOLL UH-300」、宇部興産社製)407.00質量部を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで80℃で反応を行い、ポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物UA3(PC)を得た。
【0096】
(合成例25:ウレタンアクリレート化合物UA4(PEG)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、イソホロンジイソシアネート(商品名「IPDI」、コベストロポリマー社製)133質量部、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1質量部、メトキシハイドロキノン0.1質量部、ジブチル錫ジアセテート0.1質量部を加え、70℃に昇温し、ヒドロキシエチルアクリレート(商品名「HEA」、大阪有機化学工業社製)70質量部と、ポリエチレングリコール(商品名「PEG-1000」、三洋化成工業社製)296質量部を1時間にわたって加えた。イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで80℃で撹拌を行い、ポリエチレングリコール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物UA4(PEG)を得た。本明細書での「ポリエチレングリコール由来の構造」とは、ポリエチレングリコールから末端水素原子を除いた構造を示す。
【0097】
(実施例1)
活性エネルギー線硬化型樹脂(1)100質量部、光重合開始剤3質量部(Omnirad2959(IGM社製)1.5質量部、Omnirad819(IGM社製)1.5質量部))、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル154.5質量部を配合し、固形分が40wt%になるように均一に混合して、活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物(1)を調整した。
【0098】
(実施例2~35、比較例1~5)
表3~6に示した組成に変更した以外は実施例1と同様にして、各例の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物(2)~(35)、(R1)~(R5)を得た。
【0099】
[評価サンプルの作製]
各例の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物を、ポリカーボネート基材(AGC社製「カーボグラス(登録商標)ポリッシュクリア」 厚さ:2mm、面積:10cm×10cm)に、膜厚が5μmとなるように塗布し、80℃で4分乾燥し、高圧水銀ランプにて200mW/cm2、1000mJ/cm2の条件で紫外線照射をし、得られるポリカーボネート基材と硬化物との積層体を試験片とした。
【0100】
[初期防曇性の評価]
80℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの位置に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続で10秒間照射し、水膜を形成するまでの時間を測定した。10秒以下を合格とする。
【0101】
[高温加熱後の防曇性の評価]
試験片を120℃の条件で240時間静置した後、50℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの位置に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続で60秒間照射し、水膜を形成するまでの時間を測定した。60秒以下を合格とした。また一定時間経過後にも水膜が形成されない場合は×とする。
【0102】
[高温加熱後の密着性の評価]
試験片の硬化物に1mm幅で10×10の碁盤目状にカッターで切れ目を入れた塗板を120℃の条件で静置した。一定時間経過後、碁盤目状の部分にセロハンテープ(ニチバン社製「CT-24」)を貼り付け、剥がす操作を実施し、剥離するまでの時間を測定した。120時間以上を合格とする。
【0103】
[高温加熱後の外観の評価]
試験片の黄色度(YI値)が小さいほど、透明性が高い積層体であり、例えば表示装置の前面板に使用した場合に視認性を高めやすい。よって、黄色度が小さいほど外観が優れているものとして評価した。
具体的には、試験片を120℃の条件で240時間静置した後、試験片の黄色度(YI値)を、JIS K 7373:2006に準拠して、日本電色工業株式会社製の色差計「Color meter ZE6000」を用いて測定した。試験片がない状態でバックグランド測定を行った後、光学フィルムをサンプルホルダーにセットして、透過測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、下記式に基づいてYI値を算出した。YI値が3以下を合格とする。
YI=100×(1.2985X-1.1335Z)/Y
【0104】
実施例1~35で得られた活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物(1)~(35)、及び比較例1~5で得られた活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物(R1)~(R5)の組成及び評価結果を表3~6に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
表3~6中に示す略語は下記の化合物を示す。
UA1(PC):合成例22で合成したポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物
UA2(PC):合成例23で合成したポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物
UA3(PC):合成例24で合成したポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物
UA4(PEG):合成例25で合成したポリエチレングリコール由来の構造を有するウレタンアクリレート化合物
UA5(PC):ポリカーボネートポリオール由来の構造を有するウレタンアクリレート、数平均分子量:約5000、商品名「紫光(登録商標) UV-3310B」、三菱ケミカル社製
M6250:二官能のポリエステルアクリレート、商品名「アロニックス(登録商標) M6250」、東亜合成社製
V-5500:エポキシアクリレート、商品名「LUXYDIR(登録商標) V-5500」、DIC社製
XL140:エーテル型の非イオン性界面活性剤、商品名「ノイゲン(登録商標) XL-140」、第一工業製薬社製
NL-30:エーテル型の非イオン性界面活性剤、商品名「DKS(登録商標) NL-30」、第一工業製薬社製
TM-16:塩化セチルトリメチルアンモニウム、商品名「レボン(登録商標) TM-16」、三洋化成工業社製
OT-100: ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、商品名「エアロゾルOT-100」、ソルベイ社製
光重合開始剤:1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(商品名「Omnirad2959」、IGM社製)及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名「Omnirad819」、IGM社製)をそれぞれ50%ずつ含有した混合物
【0110】
本発明の活性エネルギー線硬化型防曇性樹脂組成物の硬化塗膜は、高温加熱後の防曇性及び密着性の低下を防ぎ、外観が損なわれない(黄色度が小さい)ことを確認できた。
一方、活性エネルギー線硬化型樹脂(I)の反応原料として(B)成分を使用しない比較例1及び比較例2では、高温加熱後の防曇性、基材への密着性、及び外観が損なわれた。活性エネルギー線硬化型樹脂(I)の反応原料としてN-アクリロイルモルホリンを共重合成分に有しない(A)成分を使用した比較例3及び4では、高温加熱後の防曇性及び外観が損なわれた。同様に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂(I)を使用せず、代わりにポリカーボネート構造を有するウレタンアクリレート及びポリエチレングリコール由来の構造を有するウレタンアクリレートの両方を使用した比較例5においても、高温加熱後の防曇性及び外観が損なわれた。