(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106525
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】組織再生を誘導するためのペプチドとその利用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230725BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230725BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230725BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230725BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N15/62 Z
C07K14/47
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084251
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2021129955の分割
【原出願日】2012-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2011098270
(32)【優先日】2011-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2011219454
(32)【優先日】2011-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成23年4月4日、http://www.pnas.org/content/early/2011/03/30/1016753108.full.pdf+html、http://www.pnas.org/content/early/2011/03/30/1016753108/suppl/DCSupplemental、http://www.pnas.org/content/suppl/2011/03/31/1016753108.DCSupplemental/pnas.201016753SI.pdf、http://www.pnas.org/content/early/2011/03/30/1016753108.abstract、http://www.pnas.org/content/early/2011/03/30/1016753108.full.pdfを通じて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成23年4月19日、National Academy of Sciences発行の刊行物「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, April 19,2011 vol.108 no.16 6337-6690」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成23年4月19日、http://www.pnas.org/content/108/16/6609.full.pdf+html、http://www.pnas.org/content/108/16/6609/suppl/DCSupplemental、http://www.pnas.org/content/suppl/2011/03/31/1016753108.DCSupplemental/pnas.201016753SI.pdf、http://www.pnas.org/content/108/16/6609.abstract、http://www.pnas.org/content/108/16/6609.figures-only、http://www.pnas.org/content/108/16/6609.full.pdf、http://www.pnas.org/content/108/16/6609.fullを通じて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506364400
【氏名又は名称】株式会社ステムリム
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】玉井 克人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 尊彦
(72)【発明者】
【氏名】金崎 努
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 滋
(72)【発明者】
【氏名】野口 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真弓
(72)【発明者】
【氏名】濱渕 夏美
(72)【発明者】
【氏名】内藤 佳奈
(57)【要約】
【課題】骨髄間葉系幹細胞等のPDGFRα陽性細胞の刺激に伴う、血中動員、損傷組織への集積を促進し、体内での組織再生を誘導する治療薬の提供。
【解決手段】細胞遊走刺激活性を有し、HMGB1タンパク質の一部からなる特定のアミノ酸配列を有する、合成されたペプチド又は細胞を用いて製造されたペプチドであって、タグが付加されている及び/又はタグ由来のペプチド断片が付加されているペプチド、ペプチドをコードするDNA、DNAを有するベクター、並びに、ベクターを有する形質転換細胞。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織再生を誘導するためのペプチドとその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の各臓器、組織には、その構造や機能の恒常性を維持している組織幹細胞が存在していることが明らかになりつつある。例えば心臓には心筋幹細胞が、脳には神経幹細胞が、皮膚には表皮幹細胞や毛包幹細胞が存在し、生涯にわたり心筋細胞、神経細胞、表皮細胞や毛包上皮細胞を供給して心臓、脳、皮膚の構造・機能を維持している。一方、骨髄の中には赤血球、白血球、血小板といった血液細胞へと分化する造血幹細胞が存在する。これら造血幹細胞に由来する血液細胞は、血流を介して体内のあらゆる臓器や組織を循環し、酸素供給、免疫反応、止血・損傷組織修復など生命維持に不可欠な機能を果たしている。即ち、骨髄造血幹細胞はその局在する組織である骨髄や骨組織の恒常性維持というよりもむしろ、末梢循環を介して生体内すべての組織の恒常性維持に寄与していると言える。
【0003】
近年、骨髄内に、造血幹細胞に加えて、骨、軟骨、脂肪などの中胚葉組織、さらには神経や表皮など外胚葉組織にも分化可能な間葉系幹細胞が存在していることが明らかにされたものの、その生体内における存在意義は未だ不明な点が多い。しかし、末梢循環を介して血液細胞を供給することによりすべての組織、臓器の恒常性を維持している造血幹細胞が骨髄内に存在しているのであれば、同様に骨髄内に存在する間葉系幹細胞も、末梢循環を介して骨、軟骨、脂肪、神経、上皮などに分化可能な細胞を、必要とする生体内組織・臓器に提供することにより、生体組織の恒常性維持に寄与している可能性が予想される。
【0004】
現在、骨髄間葉系幹細胞を骨髄血採血により採取し、細胞培養により増殖させた後、難治性組織損傷部位あるいは末梢循環血中に移植して、損傷組織の再生を誘導する再生医療が精力的に開発されつつある。既に脳梗塞、心筋梗塞、難治性皮膚潰瘍などの再生医療において、骨髄間葉系幹細胞移植の臨床応用が進められている。さらに、移植した骨髄間葉系幹細胞は生体内局所で炎症・免疫反応抑制作用、線維性瘢痕形成抑制作用を発揮することが明らかとなり、骨髄移植や輸血後の重篤な副作用である移植片対宿主反応(graft versus host disease, GVHD)や自己免疫疾患である強皮症に対する新しい治療法として、骨髄間葉系幹細胞移植療法の臨床試験が開始されている。しかし、骨髄間葉系幹細胞を含有する骨髄血は、腸骨に太い針を何度も刺入するという観血的手法でのみ採取される。また、骨髄間葉系幹細胞は体外で継代培養を続けると次第に増殖能力や多分化能を失ってしまう。さらに、生体内移植の安全性を保証する高品質管理に基づいた骨髄間葉系幹細胞培養はCPC(cell processing center)等の特殊培養設備を必要とするため、現時点では極めて限られた大学や企業でのみ実施可能である。即ち、骨髄間葉系幹細胞を用いた再生医療を難治性組織損傷に苦しんでいる世界中の多くの患者に届けるためには、あらゆる医療施設で実施可能な間葉系幹細胞再生医療のための技術開発が喫緊の課題である。
【0005】
HMGB1(High mobility group box 1:高移動性グループ1タンパク質)は、約30年前に核内クロマチン構造を制御して遺伝子発現やDNA修復を制御する非ヒストンクロマチンタンパク質として同定された。HMGB1タンパク質の構造は主に二つのDNA結合ドメインから構成され、N末端側にあるDNA結合ドメインをA-box、C末端側のDNA結合ドメインをB-boxと呼ぶ。過去の研究により、HMGB1分子内でTLRと結合して炎症反応を喚起するドメインはB-box内に存在することが明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008/053892
【特許文献2】WO2007/015546
【特許文献3】WO2009/133939
【特許文献4】WO2009/133943
【特許文献5】WO2009/133940
【特許文献6】特表2005-537253
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bustinら、 Mol Cell Biol、19:5237-5246、1999年
【非特許文献2】Horiら、J. Biol. Chem.、270、25752-25761、1995年
【非特許文献3】Wangら、Science、 285:248-251、1999年
【非特許文献4】Mullerら、EMBO J、20:4337-4340、2001年
【非特許文献5】Wangら、Science、 285:248-251、1999年
【非特許文献6】Germaniら、J Leukoc Biol. Jan;81(1):41-5、2007年
【非特許文献7】Palumboら、J. Cell Biol.、164:441-449、2004年
【非特許文献8】Merenmiesら、J. Biol. Chem.、266:16722-16729、1991年
【非特許文献9】Wu Yら、Stem cells、25:2648-2659、2007年
【非特許文献10】Tamaiら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Apr 4. [Epub ahead of print]、 108:6609-6614、2011年
【非特許文献11】Yangら、J Leukoc Biol. Jan;81(1):59-66、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近本発明者らは、皮膚基底膜領域の接着分子遺伝子異常により、生下時より全身皮膚が剥離して全身熱傷様の症状を呈する遺伝性皮膚難病「表皮水疱症」における剥離表皮の再生機序の解明を目的とする研究を進め、剥離表皮から血中に放出されるHMGB1(High mobility group box 1:高移動性グループ1タンパク質)が骨髄中に存在するPDGFRα(platelet-derived growth factor receptor alpha)陽性細胞を刺激して血中に動員し、剥離表皮部への集積を誘導していること、さらに剥離表皮部に集積したPDGFRα陽性細胞は線維芽細胞や表皮細胞に分化して損傷皮膚の再生に強く寄与していることを、GFP(green fluorescent protein)トランスジェニック骨髄細胞を移植した表皮水疱症モデルマウスを用いることにより明らかにした。さらに、マウスに皮膚潰瘍や脳梗塞を作成した後に組み換えHMGB1タンパク質を尾静脈から投与することにより、骨髄よりPDGFRα陽性細胞が血中動員され、さらに皮膚潰瘍部や脳梗塞部に集積して皮膚潰瘍や脳梗塞の再生を強く誘導することを明らかにした。骨髄内PDGFRα陽性細胞は骨、軟骨、脂肪、さらには神経や上皮にも分化可能な間葉系幹細胞であることが既に報告されている。即ち、HMGB1投与により骨髄内PDGFRα陽性間葉系幹細胞を末梢循環に動員することにより、体外に取り出して特殊な培養をすることなく生体内で損傷組織に多くの間葉系幹細胞を集積させることが可能になった。
【0009】
HMGB1を生体内骨髄間葉系幹細胞血中動員による損傷組織再生誘導医薬として開発することにより、あらゆる医療機関で骨髄間葉系幹細胞による再生誘導医療が実施できるようになる。その結果、上述した現在の骨髄間葉系幹細胞を用いた再生医療が直面している多くの課題が解決される。
【0010】
上述したように、HMGB1医薬は骨髄間葉系幹細胞の血中動員、損傷組織への集積を促進し、体内での組織再生を誘導する画期的な治療薬である。本発明者らのこれまでの研究では、高濃度の組み換えHMGB1タンパク質をマウスやラットに投与しても全く副作用は観察されなかった。また、表皮剥離以外に重篤な症状の無い表皮水疱症患者末梢血中に極めて高濃度のHMGB1が存在しているという本発明者らの観察事実と併せて、HMGB1投与の安全性は高いと予測されるが、HMGB1には炎症性の作用があるという報告もある。このようにHMGB1については複数の知見があるが、HMGB1タンパク質の断片の間葉系幹細胞に対する作用や組織再生における役割に関する知見は何ら得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、HMGB1タンパク質の1から84番目までのアミノ酸からなるペプチド、85から169番目までのアミノ酸からなるペプチドとして、それぞれの組み換えタンパク質をHEK293細胞の培地中に分泌させた。培地中の目的タンパク質をカラムクロマトグラフィー法によってそれぞれのタンパク質を精製し、PDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞株(MSC-1)に対するマイグレーション活性を確認した。その結果、本発明者らは、1から84番目までのアミノ酸からなるペプチドにマイグレーション活性を認めることが出来た。
【0012】
次に本発明者らは、MSC-1に対するマイグレーション活性が認められた1から84番目のアミノ酸からなるペプチドのうち、さらに1から44番目のアミノ酸からなるペプチド、45から84番目のアミノ酸からなるペプチドを作製し、それぞれマイグレーション活性を調べた。その結果、作製したいずれのペプチド断片もPDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞株(MSC-1)に対してマイグレーション活性を示すことを確認した。
【0013】
そこで、それぞれの断片部分を中心に少しずつオーバーラップするさまざまなペプチド断片を化学合成し、PDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞株(MSC-1)に対するマイグレーション活性の評価を試みた。その結果本発明者らは、マイグレーション活性を示す複数のペプチドの同定に成功した。
【0014】
さらに本発明者らは、同定したペプチドがPDGFRα陽性細胞である皮膚線維芽細胞に対してもマイグレーション活性を有することや、脳梗塞モデルマウスの脳梗塞巣のサイズを縮小させる効果があることを確認した。
【0015】
本発明者らは、HMGB1タンパク質の2から84番目までのアミノ酸からなるペプチド、89から215番目までのアミノ酸からなるペプチドとして、それぞれの組み換えタンパク質を大腸菌に発現させた。発現させたタンパク質をカラムクロマトグラフィー法によって精製し、PDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞株(MSC-1)およびヒト骨髄間葉系幹細胞に対するマイグレーション活性を確認した。その結果本発明者らは、2から84番目までのアミノ酸からなるペプチド、89から215番目までのアミノ酸からなるペプチドにマイグレーション活性を認めることが出来た。
【0016】
次に本発明者らは、MSC-1およびヒト骨髄間葉系幹細胞に対するマイグレーション活性が認められた2から84番目のアミノ酸からなるペプチドのうち、さらに2から44番目のアミノ酸からなるペプチド、45から84番目のアミノ酸からなるペプチドを作製し、それぞれ、マイグレーション活性を調べた。その結果、作製したいずれのペプチド断片もPDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞株(MSC-1)およびヒト骨髄間葉系幹細胞に対してマイグレーション活性を示すことを確認した。
【0017】
次に本発明者らは、MSC-1およびヒト骨髄間葉系幹細胞に対するマイグレーション活性が認められた89から215番目のアミノ酸からなるペプチドのうち、C末を徐々に短く削った89から205番目のアミノ酸からなるペプチド、89から195番目のアミノ酸からなるペプチド、89から185番目のアミノ酸からなるペプチドを作製し、それぞれ、マイグレーション活性を調べた。その結果、作製したペプチド断片のうちC末を削るほどPDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞株(MSC-1)およびヒト骨髄間葉系幹細胞に対してマイグレーション活性が増強された。
【0018】
また、2から84番目のアミノ酸からなるペプチドにC末端のアスパラギン酸、グルタミン酸からなるAcidic tail の全部もしくは一部(10もしくは20もしくは30アミノ酸配列)を付加した3種類の融合ペプチドを作成したところ、驚くべきことに、いずれにおいても2-84のペプチドのマイグレーション活性が極めて減弱することが明らかになった。このことは、Acidic tail の全体もしくは一部が、全長のHMGB1においてマイグレーション活性を抑制性に制御していることを示している。今回、断片化によって少なくとも3か所以上のマイグレーション活性ドメインが明らかになり、いずれのドメインも全長の状態ではacidic tail によって抑制されている可能性が示唆された。
【0019】
さらに本発明者らは、同定したペプチドが皮膚損傷モデルの治療効果があることを確認した。
【0020】
本願は、この知見に基づき、以下の発明を提供するものである。
〔1〕
以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質を含有する、細胞遊走を刺激するために用いられる組成物;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター。
〔2〕
以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質を含有する、細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いられる組成物;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター。
〔3〕
以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質を含有する、組織を再生するために用いられる組成物;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター。
〔4〕
遊走が刺激される、または骨髄から末梢血に動員される細胞がPDGFRα陽性細胞である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕
遊走が刺激される、または骨髄から末梢血に動員される細胞が幹細胞である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕
遊走が刺激される、または骨髄から末梢血に動員される細胞が骨髄細胞である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕
遊走が刺激される、または骨髄から末梢血に動員される細胞が骨髄間葉系幹細胞である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕
細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドが、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列もしくは1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕
細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドが、以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔10〕
細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドが、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列もしくは1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔11〕
以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドを含有する、細胞遊走を刺激するために用いられる組成物;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔12〕
以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドを含有する、細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いられる組成物;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔13〕
以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドを含有する、組織を再生するために用いられる組成物;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔14〕
ペプチドが、合成されたペプチドである、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の組成物。
〔15〕
ペプチドが、細胞を用いて製造されたペプチドである、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の組成物。
〔16〕
ペプチドが、タグが付加されているペプチドである、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の組成物。
〔17〕
ペプチドが、タグ由来のペプチド断片が付加されているペプチドである、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の組成物。
〔18〕
細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド。
〔19〕
配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列もしくは1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドである、〔18〕に記載のペプチド。
〔20〕
以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドである、〔18〕に記載のペプチド;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔21〕
配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列もしくは1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドである、〔18〕に記載のペプチド;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔22〕
以下のいずれかのアミノ酸配列を含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド;
(1)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
(5)配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
〔23〕
ペプチドが、合成されたペプチドである、〔18〕~〔22〕のいずれかに記載のペプチド。
〔24〕
ペプチドが、細胞を用いて製造されたペプチドである、〔18〕~〔22〕のいずれかに記載のペプチド。
〔25〕
ペプチドが、タグが付加されているペプチドである、〔18〕~〔22〕のいずれかに記載のペプチド。
〔26〕
ペプチドが、タグ由来のペプチド断片が付加されているペプチドである、〔18〕~〔22〕のいずれかに記載のペプチド。
〔27〕
〔18〕~〔26〕のいずれかに記載のペプチドをコードするDNA。
〔28〕
〔27〕に記載のDNAを有するベクター。
〔29〕
〔27〕に記載のDNAまたは〔28〕に記載のベクターを有する形質転換細胞。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】HEK293細胞を利用してペプチドおよびタンパク質を生産するための発現ベクターを示す図である。
【
図2】
図2Aは、PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞のペプチドに対するマイグレーション活性を示す写真である。陽性コントロールである全長のHMGB1(1-215)、1から84番目のアミノ酸からなるペプチド(1-84)、85から169番目のアミノ酸からなるペプチド(85-169)、1から44番目のアミノ酸からなるペプチド(1-44)、45から84番目のアミノ酸からなるペプチド(45-84)を比較した。これらのペプチドはいずれもHEK293を利用して生産した。
図2Bは、ヒト骨髄間葉系幹細胞のPDGFRαの発現の有無をウエスタンブロットで確認した図である。ヒトの骨髄間葉系幹細胞におけるPDGFRαの発現が確認された。
【
図3】PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞のペプチドに対するマイグレーション活性を示す写真である。HMGB1の45から215番目のアミノ酸からなるペプチド(45-215)、および63から215番目のアミノ酸からなるペプチド(63-215)を比較した。これらのペプチドはいずれもHEK293を利用して生産した。
【
図4】PDGFRα-GFPマウスから骨髄細胞を採取し、一定期間接着細胞培養皿を使用して培養後、MACSを使用してCD11b陽性細胞とCD11b陰性細胞を分離し、それぞれの細胞のGFP蛍光を観察した写真である。
【
図5】HMGB1_1-44ペプチドの、骨髄間葉系幹細胞の初代培養細胞に対するマイグレーション活性を示した写真である。
【
図6】骨髄間葉系幹細胞の初代培養細胞(PDGFRα陽性、Lin陰性、c-kit陰性)の骨分化能(A)、脂肪細胞分化能(B)を示す写真である。
【
図7】PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞の、各種合成ペプチドに対するマイグレーション活性を示す写真である。
【
図8】
図8Aは、PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞の、各種合成ペプチドに対するマイグレーション活性を示す写真である。
図8Bは、
図8Aにおける左下の写真のマイグレーション活性を定量化したグラフである。それぞれの合成ペプチド及びネガティブコントロールに向かって遊走した細胞数を顕微鏡下で計測した。ネガティブコントロールの平均値を100とした場合のそれぞれの値をグラフにした。
図8Cは、骨髄間葉系幹細胞(MSC-1)に対する各種ペプチドのマイグレーション活性の結果を示す写真である。グラフは写真のスポットについてそれぞれの細胞数を計測し平均化し、ネガティブコントロールに対する(%)比として示した。
【
図9】PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞の、各種合成ペプチドに対するマイグレーション活性を示す写真である。
【
図10】PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞の各種ペプチドに対するマイグレーション活性を示す写真および図である。恒常的にペプチドを分泌するHEK293細胞由来、一過性にプラスミドをトランスフェクションしてペプチドを分泌するHEK293細胞由来、大腸菌由来、合成ペプチドそれぞれの生産系を利用して製造した各HMGB1_1-44ペプチド(1-44)を、陽性コントロールである全長HMGB1と比較した。
【
図11】PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞のPDGFRα、Lineage marker、CD44に対するFACS解析の図である。
【
図12】Aは、マウスケラチノサイトにおけるHMGB1_1-34ペプチド(1-34)に対するマイグレーション活性を示す写真である。Bは、PDGFRα-GFPマウスの皮膚におけるケラチン5の免疫組織化学像写真である。ケラチン5陽性細胞であるケラチノサイトはPDGFRαを発現しない。
【
図13】Aは、マウス皮膚線維芽細胞におけるHMGB1_1-34ペプチド(1-34)に対するマイグレーション活性を示す写真である。Bは、PDGFRα-GFPマウスの皮膚におけるビメンチンの免疫組織化学像写真である。ビメンチン陽性細胞である皮膚線維芽細胞の一部はPDGFRαを発現している。
【
図14】PDGFRα-GFPマウスの皮膚線維芽細胞と野生型マウス(C57/Bl6 mouse)の線維芽細胞のFACS解析の図である。マウス皮膚線維芽細胞のほぼ98%以上においてPDGFRαが発現している。
【
図15】合成ペプチド(1-44)による血中へのPDGFRα陽性CD44陽性細胞の動員をFACSで示した図である。
【
図16】合成ペプチド(1-44)および陰性コントロールのPBSを投与したラット脳梗塞モデルの脳の断面写真である。合成ペプチド(1-44)において脳梗塞サイズの縮小が観察された。
【
図17】合成ペプチド(1-44)および陰性コントロールのPBSを投与したラット脳梗塞モデルの脳の右脳面積に対する脳梗塞巣面積の割合を示した図および写真である。同一脳から4つの断面を作製しそれぞれの面積を計測している。
【
図18A】ヒトHMGB1のN末側に6XHis tag とTEV protease 切断配列を付加した図である。このタンパクを発現するcDNAを新たに作製し大腸菌発現ベクターに挿入した。
【
図18B-D】
図18Bは、PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞のHMGB1断片に対するマイグレーション活性を示す写真である。これらの断片はいずれも大腸菌を利用して生産した。
図18Cは、PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞のHMGB1断片に対するマイグレーション活性を定量し、それぞれの活性の平均値をグラフ化した図である。
図18Dは、PDGFRα陽性株化骨髄間葉系幹細胞のHMGB1断片に対するマイグレーション活性を定量し平均値を示した表である。
【
図19】
図Aは89番目のアミノ酸から215番目のアミノ酸からなるHMGB1断片を、大腸菌を用いて生産し、ニッケルアフィニティー精製したもの(I: input)を陰イオン交換カラムでさらに精製し各フラクションをSDS-PAGEした写真である。Mは分子量マーカーである。低い塩濃度では15.5kDaの断片(*3)が溶出され、塩濃度が高くなるにつれて16kDa(*2)、17kDa(*1)の断片が順次溶出されている。(*3)および(*2)は(*1)の分解産物であると予想される。
図Bは
図Aで分取したフラクションのPDGFRα株化骨髄間葉系幹細胞に対するマイグレーション活性を示す写真である。NCはネガティブコントロール、2-215はポジティブコントロールである。切断片と思われるもっとも低分子の断片(*3)がより長い断片(*1)(*2)よりも強い活性を認める。この活性は2-215よりも強い。
図Cは89番目のアミノ酸から205番目のアミノ酸からなるHMGB1断片を、大腸菌を用いて生産し、ニッケルアフィニティー精製したものを陰イオン交換カラムでさらに精製し各フラクションをSDS-PAGEした写真である。低い塩濃度ではもっとも短い断片(*4)が溶出され、塩濃度が高くなるにつれて(*5)、(*6)と長い断片が溶出されている。(*5)および(*6)は(*4)の分解産物であると予想される。さらに、精製したHMGB1断片89-195、および89-185を同時にSDS-PAGEしている。Mは分子量マーカーである。
図Dは、
図Cで分取したフラクションのPDGFRα株化骨髄間葉系幹細胞に対するマイグレーション活性を示す写真である。NCはネガティブコントロールであり、切断片と思われるもっとも低分子の断片(*4)が、より長い断片(*5)または(*6)よりも強い活性を認める。なお、あらかじめC末をさらに短くしたHMGB1断片89-195および89-185にはよりいっそう強い活性が認められた。
【
図20】
図AはHMGB1断片85-169のマイグレーション活性を示した写真である。ポジティブコントロールであるHMGB1断片2-215以上の活性を認める。
図Bは、
図Aのマイグレーション活性を定量化し平均値をグラフとしたものである。
図Cは、
図Bの平均値を示した表である。
【
図21-1】
図Aは、骨髄間葉系幹細胞の細胞株(MSC-1)の大腸菌で作成したHMGB1の断片、2-215、2-205、2-195、2-185に対するマイグレーション活性を示した図である。
図Bは、大腸菌で生産したHMGB1の断片のヒト骨髄間葉系幹細胞に対するマイグレーション活性を示す写真である。
【
図21-2】
図Cは、精製したヒトHMGB1の断片(2-84)にヒトHMGB1のAcidic tail の断片(186-215),(186-205),(186-195)を付加した融合断片「(2-84)+(186-215), (2-84)+(186-205), (2-84)+(186-195)」それぞれに対しSDS-PAGEを行いさらに泳動ゲルに対しCBBを用いタンパク染色を行った図である。精製されたそれぞれの断片が確認できた。
図Dは、精製した断片を使用してMSC-1に対するマイグレーション活性を確認した図である。2-84の断片にAcidic tail の配列を付加した融合断片はいずれもマイグレーション活性を示さなかった。一方2-84の断片そのものはマイグレーション活性を示した。
【
図22】ラット背部に作製した皮弁の1週間後の写真である。PBSはネガティブコントロール群である。さらに、HEK293細胞で生産した全長を含むHMGB1(1-215(HEK))および、1番目から44番目までのアミノ酸を合成したペプチド(1-44(合成ペプチド))投与群を比較した。矢印は壊死した皮膚組織である。
【
図23】ラット背部に作製した皮弁の5週間後の写真である。PBSはネガティブコントロール群である。さらに、HEK293細胞で生産した全長を含むHMGB1(1-215(HEK))および、1番目から44番目までのアミノ酸を合成したペプチド(1-44(合成ペプチド))投与群を比較した。赤く変色している部分は皮膚潰瘍形成部分である。
【
図24】ラット背部に作製した皮弁の7週間後の写真である。 PBSはネガティブコントロール群である。さらに、HEK293細胞で生産した全長を含むHMGB1(1-215(HEK))および、1番目から44番目までのアミノ酸を合成したペプチド(1-44(合成ペプチド))投与群を比較した。
【
図25】ラット背部に作製した皮弁に発生した創傷部分(壊死部分)の面積を定量化したグラフである。皮弁作製1から3週間後はHEK293細胞で生産した全長を含むHMGB1(1-215(HEK))および、1番目から44番目までのアミノ酸を合成したペプチド(1-44(合成ペプチド))投与群がネガティブコントロール群に比較して創傷部分の縮小効果が認められた。4週間後以降では1-44(合成ペプチド)が他の2群に比較してさらに縮小効果が認められた。
【
図26】化学合成したHMGB1ペプチド(1-44)と(17-25)を、皮膚損傷を作製したラットの尾静脈から投与した。皮膚損傷作成後2週間後、6週間後のそれぞれの皮弁全体の面積に対する皮膚損傷部位の面積の比率(%)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質を含有する、細胞遊走を刺激するために用いられる組成物を提供する。
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
本発明の細胞遊走を刺激するために用いられる組成物には、試薬組成物および医薬組成物が含まれる。本明細書において、試薬組成物は試薬とも表現され、医薬組成物は医薬、薬剤または薬学的組成物とも表現される。
【0023】
本発明の細胞遊走を刺激するために用いられる試薬組成物は、例えば、再生医療、再生誘導医療開発のための基礎研究および臨床研究に必要な試薬として使用することができる。例えば、該試薬組成物を使用することにより、実験動物における生体組織に細胞を動員し、組織修復、組織機能再建の程度を検討することが可能になる。また例えば、該試薬組成物を使用することにより、試験管内で細胞の動員による組織再生誘導研究を行うことができる。
【0024】
また本発明の細胞遊走を刺激するために用いられる医薬組成物は、例えば、再生医療、再生誘導医療における医薬として使用することができる。例えば、該医薬組成物を使用することにより、組織を再生することができる。また例えば、該医薬組成物は、いわゆる予防医薬として組織幹細胞の減少による組織・臓器機能の低下を予防することができ、あるいは、抗加齢医薬として加齢性変化の進行を遅延させることができる。
【0025】
なお、本明細書において、細胞遊走を刺激するために用いられる組成物は、細胞遊走を刺激するために用いられる剤、細胞遊走の刺激剤、細胞遊走を誘導するために用いられる組成物、細胞遊走を誘導するために用いられる剤、細胞遊走の誘導剤、または細胞の誘導剤とも表現される。
本発明において、細胞遊走刺激活性とは、細胞遊走を刺激する活性を意味する。本明細書において、細胞遊走刺激活性は、細胞遊走誘導活性または細胞誘導活性とも表現される。
【0026】
本発明は、以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質を含有する、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いられる組成物を提供する。
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
本発明の骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いられる組成物には、試薬組成物および医薬組成物が含まれる。
【0027】
本発明の組織を再生するために用いられる試薬組成物は、例えば、再生医療、再生誘導医療開発のための基礎研究および臨床研究に必要な試薬として使用することができる。また本発明の組織を再生するために用いられる医薬組成物は、例えば、再生医療、再生誘導医療における医薬として使用することができる。例えば、該医薬組成物を使用することにより、末梢循環中に骨髄組織幹細胞を動員し、組織を再生することができる。また例えば、該医薬組成物を利用して末梢血中に動員させた細胞を体外へ回収後、濃縮して組織に投与して治療することも可能である。従来の方法では体内深部にある骨髄から細胞を回収するため、生体に対して侵襲があるが、本発明の医薬組成物を用いれば、低侵襲に骨髄細胞を末梢血から回収し、骨髄細胞移植等に利用できる。なお、本明細書において、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いられる組成物は、骨髄細胞を骨髄から末梢血に誘導するために用いられる組成物とも表現される。
【0028】
本発明は、以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質を含有する、組織を再生するために用いられる組成物を提供する。
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
本発明の組織を再生するために用いられる組成物には、試薬組成物および医薬組成物が含まれる。
【0029】
本発明の組織を再生するために用いられる試薬組成物は、例えば、再生医療、再生誘導医療開発のための基礎研究および臨床研究に必要な試薬として使用することができる。また本発明の組織を再生するために用いられる医薬組成物は、例えば、再生医療、再生誘導医療における医薬として使用することができる。
【0030】
なお、本明細書において、組織を再生するために用いられる組成物は、組織再生を誘導または促進するために用いられる組成物、組織再生を誘導または促進するために用いられる剤、組織再生誘導剤または組織再生促進剤とも表現される。また組織再生には、組織修復も含まれる。
【0031】
本発明の組織を再生するために用いられる組成物は、投与・添加部位を選ばない。すなわち、該組成物は、再生が必要な組織、再生が必要な組織とは異なる組織、血中など、いずれの組織に投与されても、その効果を発揮することができる。例えば、該組成物を投与・添加することにより、投与・添加部位またはその近傍の組織に細胞が動員され、組織再生が誘導または促進される。また例えば、該組成物を損傷組織部位またはその近傍に投与・添加することにより、該損傷組織に細胞が動員され、組織再生が誘導または促進される。また例えば、該組成物を再生が必要な組織とは異なる組織に投与・添加することにより、骨髄から再生が必要な組織に末梢循環を介して骨髄細胞が動員され、組織再生が誘導または促進される。ここで、「末梢循環」とは、「血液循環」、「末梢循環血流」とも称される。
【0032】
再生が必要な組織としては、損傷している組織、壊死している組織、術後組織、機能が低下している組織、線維化している組織、老化した組織、病気の組織等が例示でき、例えば、生体皮膚組織、体内生検(手術)組織(脳、肺、心臓、肝臓、胃、小腸、大腸、膵臓、腎臓、膀胱、脾臓、子宮、精巣や血液など)が例示できる。
【0033】
再生が必要な組織とは異なる組織への投与とは、再生が必要な部位以外の部位(再生が必要な部位とは異なる部位)に投与することを意味する。したがって、「再生が必要な組織とは異なる組織」は、再生が必要な組織とは異なる部位、再生が必要な部位とは異なる部位、再生が必要な組織から離れた部位、再生が必要な部位から離れた部位、再生が必要な部位から遠位にある部位、再生が必要な組織から遠位にある組織、遠位部、遠位組織と表現することもできる。すなわち、本発明の組成物は、体外から直接薬剤を投与することが困難な組織(脳、心臓など)を再生するために、有効に利用される。
【0034】
再生が必要な組織に動員された細胞は、種々の細胞に分化し、再生が必要な組織の機能的再生および機能維持、機能強化に寄与する。本発明において、再生が必要な組織としては、虚血、疎血・低酸素状態に起因する種々の病態、外傷、熱傷、炎症、自己免疫、遺伝子異常などによって損傷した組織が挙げられるが、これら原因に限定されるものではない。
【0035】
本発明における組織としては、骨髄由来細胞が分化可能な組織である限り、特に制限はないが、例えば皮膚組織、骨組織、軟骨組織、筋組織、脂肪組織、心筋組織、神経系組織、肺組織、消化管組織、肝・胆・膵組織、泌尿・生殖器など、生体内のすべての組織が例示できる。また、上記組成物を用いることで、難治性皮膚潰瘍、皮膚創傷、水疱症、脱毛症などの皮膚疾患はもとより、脳梗塞、心筋梗塞、骨折、肺梗塞、胃潰瘍、腸炎、などの再生が必要な組織において、機能的組織再生を誘導する治療が可能となる。上記組成物が投与される動物種としては特に制限はなく、哺乳類、鳥類、魚類等が挙げられる。哺乳類としては、ヒト又は非ヒト動物が挙げられ、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ウマ、ヒツジ、クジラなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、再生が必要な組織とは異なる組織としては、血液組織、筋肉組織、皮下組織、皮内組織、腹腔等が例示できる。
【0037】
神経組織としては、中枢神経組織が挙げられるが、これに限定されない。また、神経組織を再生するために用いられる組成物は、例えば、脳梗塞、脳出血、脳挫傷等の治療に使用できるが、これらに制限されない。また骨組織を再生するために用いられる組成物は、例えば、骨折の治療に使用できるが、これに限定されない。また皮膚組織を再生するために用いられる組成物は、例えば、皮膚潰瘍、手術創の縫合不全、熱傷、切傷、挫傷、皮膚びらん、擦過傷等の治療に使用できるが、これらに制限されない。
【0038】
また、本発明において、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、未分化な細胞、種々の分化段階にある細胞が挙げられるが、これらに制限されない。また、本発明において、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、幹細胞、非幹細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。幹細胞には、循環性の幹細胞、または非循環性の幹細胞が含まれる。非循環性の幹細胞としては、組織に常在している組織幹細胞が例示できる。循環性の幹細胞としては、血中循環性の幹細胞が例示できる。
【0039】
また、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、骨髄由来細胞または造血系幹細胞が挙げられるが、これに制限されない。本明細書において「造血系幹細胞」とは好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、マクロファージなどの白血球の他、赤血球、血小板、肥満細胞、樹状細胞などの血球系の細胞に分化可能な幹細胞であり、マーカーとしてヒトではCD34陽性、CD133陽性、マウスではCD34陰性、c-Kit陽性、Sca-1陽性、Lineage marker 陰性であることが知られている。また、造血系幹細胞は、培養皿で培養する場合、単独で培養することが困難であり、ストローマ細胞との共培養が必要であることが特徴である。
【0040】
本明細書において、「骨髄細胞」とは、骨髄内に存在する細胞を意味し、一方、「骨髄由来細胞」とは、骨髄から骨髄外に動員された「骨髄細胞」を意味する。「骨髄細胞」は骨髄中に存在する組織前駆細胞集団を含む細胞を含む。また「骨髄由来細胞」はmesoangioblastを含む細胞であってもよく、mesoangioblastを除く細胞であってもよい。
【0041】
組織前駆細胞は、血液系以外の特定組織細胞への一方向性分化能を持つ未分化細胞と定義され、上述した間葉系組織、上皮系組織、神経組織、実質臓器、血管内皮への分化能を有する未分化細胞を含む。
【0042】
「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」は、造血系幹細胞及びこれに由来する白血球、赤血球、血小板、骨芽細胞、ファイブロサイトなどの分化細胞、または、これまで骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞と呼ばれている細胞に代表される幹細胞である。本明細書において、「骨髄幹細胞」とは、骨髄内に存在する幹細胞を意味し、一方、「骨髄由来幹細胞」とは、骨髄から骨髄外に動員された「骨髄幹細胞」を意味する。本発明において、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、「骨髄由来幹細胞」が挙げられるが、これに制限されない。「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」は、骨髄採取(骨髄細胞採取)、あるいは末梢血採血により単離することができる。造血系幹細胞は非付着細胞であるが、「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」の一部は、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血により得られた血液中の単核球分画細胞培養により、付着細胞として得られる。
【0043】
また、「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」は、間葉系幹細胞を含み、骨芽細胞(分化を誘導するとカルシウムの沈着を認めることで特定可能)、軟骨細胞(アルシアンブルー染色陽性、サフラニン-O染色陽性などで特定可能)、脂肪細胞(ズダンIII染色陽性で特定可能)、さらには線維芽細胞、平滑筋細胞、ストローマ細胞、腱細胞、などの間葉系細胞、さらには神経細胞、上皮細胞(たとえば表皮角化細胞、腸管上皮細胞はサイトケラチンファミリーを発現する)、血管内皮細胞への分化能力を有することが好ましい。分化後の細胞は上記細胞に限定されるものではなく、肝臓、腎臓、膵臓などの実質臓器細胞への分化能も含む。
【0044】
本明細書において、「骨髄間葉系幹細胞」、「骨髄間質多能性細胞」、あるいは「骨髄多能性幹細胞」とは、骨髄内に存在する細胞であって、骨髄から直接あるいはその他の組織(血液や皮膚、脂肪、その他の組織)から間接的に採取され、培養皿(プラスチックあるいはガラス製)への付着細胞として培養・増殖可能であり、骨、軟骨、脂肪などの間葉系組織(間葉系幹細胞)、あるいは骨格筋、心筋、さらには神経組織、上皮組織(多能性幹細胞)への分化能を有するという特徴を持つ細胞であり、骨髄細胞採取によって取得することができる細胞である。
【0045】
一方、また、骨髄から骨髄外に動員された「骨髄由来骨髄間葉系幹細胞」、「骨髄由来骨髄間質多能性細胞」、あるいは「骨髄由来骨髄多能性幹細胞」は、末梢血採血、さらには脂肪など間葉組織、皮膚などの上皮組織、脳などの神経組織からの採取によって取得することができる細胞である。
【0046】
また、これら細胞は、採取後直接、あるいは一度培養皿へ付着させた細胞を生体の損傷部に投与することにより、例えば皮膚を構成するケラチノサイトなどの上皮系組織、脳を構成する神経系の組織への分化能も有するという特徴も持つ。
【0047】
骨髄間葉系幹細胞、骨髄間質多能性幹細胞、骨髄多能性幹細胞、あるいは骨髄から骨髄外へ動員されたこれら細胞は、骨芽細胞(分化を誘導するとカルシウムの沈着を認めること等で特定可能)、軟骨細胞(アルシアンブルー染色陽性、サフラニン-O染色陽性等で特定可能)、脂肪細胞(ズダンIII染色陽性等で特定可能)の他に、例えば線維芽細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ストローマ細胞、腱細胞などの間葉系細胞、神経細胞、色素細胞、表皮細胞、毛包細胞(サイトケラチンファミリー、ヘアケラチンファミリー等を発現する)、上皮系細胞(たとえば表皮角化細胞、腸管上皮細胞はサイトケラチンファミリー等を発現する)、内皮細胞、さらに肝臓、腎臓、膵臓等の実質臓器細胞に分化する能力を有することが好ましいが、分化後の細胞は上記細胞に限定されるものではない。
【0048】
ヒト骨髄細胞、ヒト骨髄由来細胞としては、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血、脂肪採取によって取得し、直接あるいは単核球分画を分離後に培養して付着細胞として取得できる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。ヒト骨髄細胞、ヒト骨髄由来細胞のマーカーとしては、PDGFRα陽性、Lin陰性、CD45陰性、CD44陽性、CD90陽性、CD29陽性、Flk-1陰性、CD105陽性、CD73陽性、CD90陽性、CD71陽性、Stro-1陽性、CD106陽性、CD166陽性、CD31陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0049】
また、マウス骨髄細胞、マウス骨髄由来細胞としては、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血、脂肪採取によって取得し、直接あるいは単核球分画を分離後に培養して付着細胞として取得できる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。マウス骨髄細胞、マウス骨髄由来細胞のマーカーとしては、CD44陽性、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、CD45陰性、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陰性、CD90陽性、CD29陽性、Flk-1陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0050】
本発明において、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、PDGFRα陽性細胞が挙げられるが、これに制限されない。また、PDGFRα以外のマーカーとしてはCD29陽性、CD44陽性、CD90陽性、CD271陽性、CD11b陰性、Flk-1陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。PDGFRα陽性細胞としては、PDGFRα陽性の骨髄由来細胞、PDGFRα陽性の骨髄由来骨髄間葉系幹細胞、PDGFRα陽性の組織に常在している組織細胞(例えば、線維芽細胞などが例示できる)、PDGFRα陽性の骨髄由来細胞であって、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血により得られた血液中の単核球分画細胞培養により、付着細胞として得られる細胞などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0051】
本発明の組成物には、上記(a)から(c)に記載の物質のうちの少なくとも1つの物質以外に別の物質が含まれてもよい。本発明の組成物において、上記(a)から(c)に記載の物質のうちの少なくとも1つの物質以外の物質としては、細胞遊走刺激活性、細胞動員活性、または組織再生促進活性を阻害しない限り、特に制限はない。例えば、本発明の組成物には、上記(a)から(c)に記載の物質のうち少なくとも1つの物質に加え、上記(a)から(c)に記載の物質の機能を強化する関連分子(群)、上記(a)から(c)に記載の物質の期待される効果以外の作用を抑制する分子(群)、細胞の増殖や分化を制御する因子、これら因子あるいは細胞の機能を強化・維持するその他の因子を含むことが可能である。
【0052】
本発明におけるHMGB1タンパク質としては、ヒト由来のHMGB1タンパク質として配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質、当該タンパク質をコードするDNAとして、配列番号:2に記載の塩基配列を含むDNAが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
また、マウス由来のHMGB1タンパク質として配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質、当該タンパク質をコードするDNAとして、配列番号:4に記載の塩基配列を含むDNAが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
さらに、ラット由来のHMGB1タンパク質として配列番号:5に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質、当該タンパク質をコードするDNAとして、配列番号:6に記載の塩基配列を含むDNAが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の組成物は、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドを含有する。本発明のHMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、細胞遊走刺激活性を有するドメインを含んでいる限り、特に制限されない。
【0056】
HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドの細胞遊走刺激活性は、例えば実施例の記載の方法の他、以下に示す方法によって確認することができるが、これに限定されず、その他の試験管内あるいは生体内細胞遊走能測定方法で測定することもできる。
・ HMGB1タンパク質やペプチドを挿入したシリコンチューブを皮下などに埋め込み、一定時間後に取り出してチューブ内に遊走した細胞を確認する方法。
・ HMGB1タンパク質やペプチドを樹脂ビーズなどに結合させ生体組織内に埋め込み、一定時間後に取り出してビーズに遊走した細胞を確認する方法。
・ ゼラチン、ヒアルロン酸などの徐放作用のある高分子体にHMGB1タンパク質やペプチドをしみこませ生体組織内に埋め込み、一定時間後に取り出して高分子体に遊走した細胞を確認する方法。
【0057】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、以下のペプチドを例示することが出来るが以下に限定されない。
【0058】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、細胞を骨髄から末梢血に動員する活性、または組織再生促進活性を有するペプチドがあげられる。
【0059】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列もしくは1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。
【0060】
また本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、以下のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(1)17番目から25番目のアミノ酸配列
(2)45番目から74番目のアミノ酸配列
(3)55番目から84番目のアミノ酸配列
(4)85番目から169番目のアミノ酸配列、
(5)89番目から185番目のアミノ酸配列、および
(6)93番目から215番目のアミノ酸配列。
【0061】
また本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列もしくは1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、以下のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(1)17番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
(2)45番目から74番目のアミノ酸配列を含むペプチド
(3)55番目から84番目のアミノ酸配列を含むペプチド
(4)85番目から169番目のアミノ酸配列を含むペプチド、および
(5)89番目から185番目のアミノ酸配列を含むペプチド。
【0062】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。このようなペプチドの例として、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は195以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は185以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から170番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は170以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から84番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は84以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、または1番目から44番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は44以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)であって、該アミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられるが、これに制限されない。
【0063】
以下に「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」について記載するが、該ペプチドに包含される「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」などの他のペプチドについても同様に記載しうる。
【0064】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」は、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列から選択される連続したアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」とも表現しうる。
【0065】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(1)~(60)のいずれかのアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0066】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において下記(1)~(57)および(59)~(61)のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0067】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において17番目から25番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(1)~(61)のいずれかのアミノ酸配列からなる細胞遊走刺激活性を有するペプチド含まれる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(1)1番目から44番目のアミノ酸配列
(2)1番目から25番目のアミノ酸配列
(3)1番目から34番目のアミノ酸配列
(4)1番目から42番目のアミノ酸配列
(5)1番目から43番目のアミノ酸配列
(6)1番目から45番目のアミノ酸配列
(7)1番目から46番目のアミノ酸配列
(8)1番目から47番目のアミノ酸配列
(9)1番目から48番目のアミノ酸配列
(10)1番目から49番目のアミノ酸配列
(11)1番目から50番目のアミノ酸配列
(12)1番目から51番目のアミノ酸配列
(13)1番目から52番目のアミノ酸配列
(14)1番目から62番目のアミノ酸配列
(15)1番目から84番目のアミノ酸配列
(16)10番目から25番目のアミノ酸配列
(17)11番目から25番目のアミノ酸配列
(18)11番目から27番目のアミノ酸配列
(19)11番目から28番目のアミノ酸配列
(20)11番目から29番目のアミノ酸配列
(21)11番目から30番目のアミノ酸配列
(22)11番目から34番目のアミノ酸配列
(23)11番目から44番目のアミノ酸配列
(24)12番目から25番目のアミノ酸配列
(25)12番目から30番目のアミノ酸配列
(26)13番目から25番目のアミノ酸配列
(27)13番目から30番目のアミノ酸配列
(28)14番目から25番目のアミノ酸配列
(29)14番目から30番目のアミノ酸配列
(30)15番目から25番目のアミノ酸配列
(31)15番目から30番目のアミノ酸配列
(32)16番目から25番目のアミノ酸配列
(33)16番目から30番目のアミノ酸配列
(34)17番目から30番目のアミノ酸配列
(35)1番目から70番目のアミノ酸配列
(36)1番目から81番目のアミノ酸配列
(37)1番目から170番目のアミノ酸配列
(38)2番目から25番目のアミノ酸配列
(39)2番目から34番目のアミノ酸配列
(40)2番目から42番目のアミノ酸配列
(41)2番目から43番目のアミノ酸配列
(42)2番目から44番目のアミノ酸配列
(43)2番目から45番目のアミノ酸配列
(44)2番目から46番目のアミノ酸配列
(45)2番目から47番目のアミノ酸配列
(46)2番目から48番目のアミノ酸配列
(47)2番目から49番目のアミノ酸配列
(48)2番目から50番目のアミノ酸配列
(49)2番目から51番目のアミノ酸配列
(50)2番目から52番目のアミノ酸配列
(51)2番目から62番目のアミノ酸配列
(52)2番目から70番目のアミノ酸配列
(53)2番目から81番目のアミノ酸配列
(54)2番目から84番目のアミノ酸配列
(55)2番目から170番目のアミノ酸配列
(56)17番目から44番目のアミノ酸配列
(57)1番目から185番目のアミノ酸配列
(58)1番目から195番目のアミノ酸配列
(59)2番目から185番目のアミノ酸配列
(60)2番目から195番目のアミノ酸配列、および
(61)17番目から25番目のアミノ酸配列。
【0068】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。このようなペプチドの例として、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は195以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は185以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から170番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は170以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から84番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は84以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、または45番目から84番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は40以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)であって、該アミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられるが、これに制限されない。
【0069】
以下に「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」について記載するが、該ペプチドに包含される「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」などの他のペプチドについても同様に記載しうる。
【0070】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」は、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列から選択される連続したアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」とも表現しうる。
【0071】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(a)~(k)のいずれかのアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0072】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において下記(a)~(h)および(j)~(l)のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0073】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において45番目から74番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(a)~(l)のいずれかのアミノ酸配列からなる細胞遊走刺激活性を有するペプチド含まれる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(a)1番目から84番目のアミノ酸配列
(b)45番目から84番目のアミノ酸配列
(c)1番目から81番目のアミノ酸配列
(d)1番目から170番目のアミノ酸配列
(e)2番目から81番目のアミノ酸配列
(f)2番目から84番目のアミノ酸配列
(g)2番目から170番目のアミノ酸配列
(h)1番目から185番目のアミノ酸配列
(i)1番目から195番目のアミノ酸配列
(j)2番目から185番目のアミノ酸配列
(k)2番目から195番目のアミノ酸配列、および
(l)45番目から74番目のアミノ酸配列。
【0074】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。
【0075】
このようなペプチドの例として、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は195以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は185以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から170番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は170以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から84番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は84以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、または45番目から84番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は40以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)であって、該アミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられるが、これに制限されない。
【0076】
以下に「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」について記載するが、該ペプチドに包含される「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」などの他のペプチドについても同様に記載しうる。
【0077】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」は、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列から選択される連続したアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」とも表現しうる。
【0078】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(A)~(J)のいずれかのアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0079】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において下記(A)~(G)および(I)~(K)のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0080】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において55番目から84番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(A)~(K)のいずれかのアミノ酸配列からなる細胞遊走刺激活性を有するペプチド含まれる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(A)1番目から84番目のアミノ酸配列
(B)45番目から84番目のアミノ酸配列
(C)1番目から170番目のアミノ酸配列
(D)2番目から84番目のアミノ酸配列
(F)2番目から170番目のアミノ酸配列を含むペプチド
(G)1番目から185番目のアミノ酸配列
(H)1番目から195番目のアミノ酸配列
(I)2番目から185番目のアミノ酸配列
(J)2番目から195番目のアミノ酸配列、および
(K)55番目から84番目のアミノ酸配列。
【0081】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。
【0082】
このようなペプチドの例として、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は195以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は185以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から170番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は170以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、または89番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は101以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)であって、該アミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられるが、これに制限されない。
【0083】
以下に「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」について記載するが、該ペプチドに包含される「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」などの他のペプチドについても同様に記載しうる。
【0084】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」は、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列から選択される連続したアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」とも表現しうる。
【0085】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(i)~(vi)のいずれかのアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0086】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において下記(i)~(iii)および(v)~(vii)のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0087】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において85番目から169番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(i)~(vii)のいずれかのアミノ酸配列からなる細胞遊走刺激活性を有するペプチド含まれる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(i)1番目から170番目のアミノ酸配列
(ii)2番目から170番目のアミノ酸配列
(iii)1番目から185番目のアミノ酸配列
(iv)1番目から195番目のアミノ酸配列
(v)2番目から185番目のアミノ酸配列
(vi)2番目から195番目のアミノ酸配列、および
(vii)85番目から169番目。
【0088】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられる。このようなペプチドの例として、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は195以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は185以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)であって、該アミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられるが、これに制限されない。
【0089】
以下に「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」について記載するが、該ペプチドに包含される「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から185番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」などの他のペプチドについても同様に記載しうる。
【0090】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」は、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列から選択される連続したアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」とも表現しうる。
【0091】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(I)~(VI)のいずれかのアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0092】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において下記(I)および(III)~(V)のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0093】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における1番目から195番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において89番目から185番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(I)~(V)のいずれかのアミノ酸配列からなる細胞遊走刺激活性を有するペプチド含まれる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(I)1番目から185番目のアミノ酸配列
(II)1番目から195番目のアミノ酸配列
(III)2番目から185番目のアミノ酸配列
(IV)2番目から195番目のアミノ酸配列、および
(V)89番目から185番目のアミノ酸配列。
【0094】
本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとしては、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部からなる、細胞遊走刺激活性を有するペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における93番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられる。
【0095】
このようなペプチドの例として、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において45番目から215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は171以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、63番目か215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は153以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)、または89番目から215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチド(該ペプチドのアミノ酸数は123以下の自然数から選択されるアミノ酸数である)であって、該アミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが挙げられるが、これに制限されない。
【0096】
以下に「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目か215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」について記載するが、該ペプチドに包含される「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における63番目か215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において89番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」などの他のペプチドについても同様に記載しうる。
【0097】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」は、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から215番目のアミノ酸配列から選択される連続したアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」とも表現しうる。
【0098】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(W)~(Y)のいずれかのアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0099】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列において下記(X)~(Z)のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドが含まれる。
【0100】
本発明において、「配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から215番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、該アミノ酸配列において93番目から215番目のアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチド」には、下記(W)~(Z)のいずれかのアミノ酸配列からなる細胞遊走刺激活性を有するペプチド含まれる。なお、以下のアミノ酸配列は、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部である。
(W)45番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド
(X)63番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド
(Y)89番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド、および
(Z)93番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド。
【0101】
すなわち本発明において細胞遊走刺激活性を有するHMGB1タンパク質の一部からなるペプチドとして次のペプチドを例示することが出来るがこれらに限定されない。
<1>1番目から44番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<2>1番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<3>1番目から34番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<4>1番目から42番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<5>1番目から43番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<6>1番目から45番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<7>1番目から46番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<8>1番目から47番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<9>1番目から48番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<10>1番目から49番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<11>1番目から50番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<12>1番目から51番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<13>1番目から52番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<14>1番目から62番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<15>1番目から84番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<16>10番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<17>11番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<18>11番目から27番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<19>11番目から28番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<20>11番目から29番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<21>11番目から30番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<22>11番目から34番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<23>11番目から44番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<24>12番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<25>12番目から30番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<26>13番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<27>13番目から30番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<28>14番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<29>14番目から30番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<30>15番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<31>15番目から30番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<32>16番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<33>16番目から30番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<34>17番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<35>17番目から30番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<36>45番目から74番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<37>45番目から84番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<38>45番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<39>55番目から84番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<40>63番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<41>1番目から70番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<42>1番目から81番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<43>1番目から170番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<44>2番目から25番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<45>2番目から34番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<46>2番目から42番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<47>2番目から43番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<48>2番目から44番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<49>2番目から45番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<50>2番目から46番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<51>2番目から47番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<52>2番目から48番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<53>2番目から49番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<54>2番目から50番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<55>2番目から51番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<56>2番目から52番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<57>2番目から62番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<58>2番目から70番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<59>2番目から81番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<60>2番目から84番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<61>2番目から170番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<62>85番目から169番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<63>89番目から185番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<64>89番目から195番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<65>89番目から205番目のアミノ酸配列を含むペプチド
(66)89番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<67>93番目から215番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<68>17番目から44番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<69>1番目から185番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<70>1番目から195番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<71>1番目から205番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<72>2番目から185番目のアミノ酸配列を含むペプチド
<73>2番目から195番目のアミノ酸配列を含むペプチド、および
<74>2番目から205番目のアミノ酸配列を含むペプチド。
【0102】
さらに本発明においては、次のように規定されるペプチドも、細胞遊走刺激活性を有するペプチドとして例示することができる:
配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列の一部を含む、細胞遊走刺激活性を有するペプチドであって、以下の条件を満たすペプチド:
上記<1>から<74>の群より2つのペプチドを選択し、短い方をAとし、長い方をBとし、ここで、
Aを少なくとも含み、かつBの全部または一部からなるペプチド。
【0103】
また本発明は、以下のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドとその用途も提供する。このようなペプチドには、例えば、以下のいずれかのアミノ酸配列に対して、1または複数(例えば200個以下、100個以下、50個以下、40個以下、30個以下、20個以下、10個以下、5個以下、3個以下、2個以下が挙げれれるが、これらに限定されない)のアミノ酸配列が付加された細胞遊走刺激活性を有するペプチドも含まれる。なお、以下のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドには、配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチドは含まれない。
「1」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
「2」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
「3」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
「4」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
「5」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
【0104】
マウス、ラットおよびヒトのHMGB1は1番目から85番目までのアミノ酸配列をA-box、86番目から169番目までのアミノ酸配列をB-boxとして知られている。マウス、ラットおよびヒトの1番目から169番目までのアミノ酸配列はすべて一致し、100%相同性を保っている。また、マウス、ラットおよびヒトのHMGB2においても、14番目から25番目のアミノ酸配列はHMGB1と一致している。
【0105】
本発明は、上述の、細胞遊走刺激活性を有するペプチドを提供する。また、本発明は、該ペプチドをコードするDNA、該DNAが挿入されたベクター、及び該ベクターが導入された形質転換細胞を提供する。本発明のペプチドをコードするDNA、該DNAが挿入されたベクター、及び該ベクターが導入された形質転換細胞は公知の技術を用いて作成される。上記DNAは、本発明のペプチドをコードする限り、例えば、人工的に合成されたDNA(例えば縮重変異体)であってもよい。
【0106】
本発明は、本発明のペプチドであって細胞を用いて製造されたペプチド、本発明のペプチドであって人工的に合成されたペプチドも提供する。本発明のペプチドは、該ペプチドをコードするDNAを適当な発現系に組み込んで遺伝子組換え体(recombinant)として得ることができるし、または、人工的に合成することもできる。本発明のペプチドを遺伝子工学的な手法によって得るためには、該ペプチドをコードするDNAを適当な発現系に組み込んで発現させれば良い。
【0107】
したがって、本発明は、以下の(a)および(b)の工程を含む、本発明のペプチドの製造方法を提供する:
(a)本発明のペプチドをコードするDNAを細胞に導入し、該ペプチドを発現させる工程、
(b)細胞から該ペプチドを回収する工程。
【0108】
また本発明は、以下の(a)および(b)の工程を含む、HMGB1タンパク質と比較して高い細胞遊走刺激活性を有する、本発明のペプチドの製造方法を提供する。
(a)本発明のペプチドをコードするDNAを細胞に導入し、該ペプチドを発現させる工程、および、
(b)細胞から該ペプチドを回収する工程。
当該製造方法は、さらに次の工程を含むことが出来る。
(c)HMGB1タンパク質と比較して高い細胞遊走刺激活性を有する、該ペプチドを選択する工程。
【0109】
本発明に応用可能なホストとしては、原核生物の細胞、真核生物の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明に応用可能なホストとしては、細菌(例えば大腸菌)、酵母、動物細胞(例えばHEK293細胞やCHO細胞などの哺乳動物細胞、カイコ細胞などの昆虫細胞)、植物細胞などもまた挙げられるが、これらに制限されない。
【0110】
本発明に応用可能なホスト/ベクター系としては、例えば、発現ベクターpGEXと大腸菌を示すことができる。pGEXは外来遺伝子をグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることができる(Gene, 67:31-40, 1988)ので、本発明のペプチドをコードするDNAを組み込んだpGEXをヒートショックでBL21のような大腸菌株に導入し、適当な培養時間の後に isopropylthio-β-D-galactoside(IPTG)を添加してGST融合ペプチドの発現を誘導する。本発明によるGSTはグルタチオンセファロース4Bに吸着するため、発現生成物はアフィニティークロマトグラフィーによって容易に分離・精製することが可能である。
【0111】
本発明のペプチドの遺伝子組換え体を得るためのホスト/ベクター系としては、この他にも次のようなものを応用することができる。まず細菌をホストに利用する場合には、タグ等を利用した融合タンパク質の発現用ベクターが市販されている。また、本発明の遺伝子組換え体には、タグやその一部のペプチドが付加した状態のものも含まれる。
【0112】
本発明のペプチドに付加されるタグとしては、本発明のペプチドの活性に影響しない限り、特に制限はなく、例えば、ヒスチジンタグ(例えば6×His、10×His)、HAタグ、FLAGタグ、GSTタグ、T7-タグ、HSV-タグ、E-タグ、lckタグ、B-タグなどが挙げられる。
【0113】
酵母では、Pichia属酵母が糖鎖を備えたタンパク質の発現に有効なことが公知である。糖鎖の付加という点では、昆虫細胞をホストとするバキュロウイルスベクターを利用した発現系も有用である(Bio/Technology, 6:47-55, 1988)。更に、哺乳動物の細胞を利用して、CMV、RSV、あるいはSV40等のプロモーターを利用したベクターのトランスフェクションが行われており、これらのホスト/ベクター系は、いずれも本発明のペプチドの発現系として利用することができる。また、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターセンダイウイルスベクター、センダイウイルスエンベロープベクター、パピローマウイルスベクター等のウイルスベクターを利用して遺伝子を導入することもできるが、これらに限定されるものではない。該ベクターには、遺伝子発現を効果的に誘導するプロモーターDNA配列や、遺伝子発現を制御する因子、DNAの安定性を維持するために必要な分子が含まれてもよい。
【0114】
得られた本発明のタンパク質は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一なタンパク質として精製することができる。タンパク質の分離、精製は、通常のタンパク質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればタンパク質を分離、精製することができる。
【0115】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Marshak et al., Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0116】
また、本発明のペプチドは、実質的に精製されたペプチドであることが好ましい。ここで「実質的に精製された」とは、本発明のペプチドの精製度(タンパク質成分全体における本発明のペプチドの割合)が、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、100%若しくは100%に近いことを意味する。100%に近い上限は当業者の精製技術や分析技術に依存するが、例えば、99.999%、99.99%、99.9%、99%などである。
【0117】
また、上記の精製度を有するものであれば、如何なる精製方法によって精製されたものでも、実質的に精製されたタンパク質に含まれる。例えば、上述のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、または組み合わせることにより、実質的に精製されたタンパク質を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
本発明における本発明のペプチドを分泌する細胞としては、該ペプチドをコードするDNAに分泌シグナルをコードするDNA(例えば、ATG GAG ACA GAC ACA CTC CTG CTA TGG GTA CTG CTG CTC TGG GTT CCA GGT TCC ACT GGT GAC;配列番号:10)を結合させたDNAを、公知の発現ベクターや遺伝子治療用ベクターに挿入することで作製されたベクターを、線維芽細胞(例えば正常皮膚線維芽細胞およびそれに由来する株化細胞)などの哺乳類細胞や昆虫細胞、その他の細胞に導入することによっても作製することができる。分泌シグナルをコードするDNAとしては上述の配列を有するDNAが例示されるが、これに限定されない。また、これら細胞が由来する動物種に特に制限はないが、ベクターが投与される対象動物種の細胞、対象自身の細胞、あるいはベクターが投与される対象の血縁にあたる者に由来する細胞を使用することが好ましい。
【0119】
一方HMGB1の一部からなるペプチドを人工的に合成することも出来る。本発明におけるペプチド合成法では、ペプチド液相合成法およびペプチド固相合成法のいずれの方法によってペプチドを化学合成することができる。本発明においてはペプチド固相合成法によって合成したペプチドが好ましい。ペプチド固相合成法はペプチドを化学的に合成する際に、一般的に用いられる方法のひとつである。表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズなどを固相として用い、ここから脱水反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長していく。目的とするペプチドの配列が出来上がったら固相表面から切り出し、目的の物質を得る。固相合成法により、バクテリア中で合成させることの難しいリボソームペプチドの合成や、D体や重原子置換体などの非天然アミノ酸の導入、ペプチド及びタンパク質主鎖の修飾なども可能である。固相法において70から100個を超える長いペプチド鎖を合成する場合、ネイティブケミカルライゲーション法を用いて、2つのペプチド鎖を結合させる事により合成することが可能である。
【0120】
本発明の組成物の投与方法は、経口投与または非経口投与が挙げられ、非経口投与方法としては具体的には、注射投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられるが、これらに限定されない。注射投与の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などによって本発明の組成物を全身または局部的(例えば、皮下、皮内、皮膚表面、眼球あるいは眼瞼結膜、鼻腔粘膜、口腔内および消化管粘膜、膣・子宮内粘膜、または損傷部位など)に投与できる。
【0121】
また、本発明の組成物の投与方法としては、例えば、血管内投与(動脈内投与、静脈内投与等)、血液内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与が例示されるが、これらに限定されない。
【0122】
また投与部位に制限はなく、再生が必要な組織部位もしくはその近傍、再生が必要な組織とは異なる部位、または、再生が必要な組織に対して遠位かつ異所である部位が例示できる。例えば、血中(動脈内、静脈内等)、筋肉、皮下、皮内、腹腔内が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。本発明のペプチドを投与する場合、例えば、一回の投与につき、体重1 kgあたり0.0000001mgから1000mgの範囲で投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.00001から100000mg/bodyの範囲で投与量が選択できる。本発明のペプチドを分泌する細胞や該ペプチドをコードするDNAが挿入された遺伝子治療用ベクターを投与する場合も、該ペプチドの量が上記範囲内となるように投与することができる。しかしながら、本発明の医薬組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。
【0124】
本発明の医薬組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
【0125】
本発明はまた、以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質を含有するキットを提供する。
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
該キットは、細胞遊走を刺激するために、骨髄細胞を骨髄から末梢血に動員するために、あるいは、組織を再生するために使用できる。該キットとしては、(1)フィブリノゲンに溶解した上記物質、および(2)トロンビンを含むキット、または、(1)上記物質、(2)フィブリノゲン、および(3)トロンビンを含むキットが例示できる。本発明においては、市販のフィブリノゲンやトロンビンを使用することができる。例えば、フィブリノゲンHT-Wf(ベネシスー三菱ウェルファーマー)、ベリプラスト(ZLBベーリング)、ティシール(バクスター)、ボルヒール(化血研)、タココンブ(ZLBベーリング)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0126】
また、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド、該ペプチドを分泌する細胞、該ペプチドをコードするDNAが挿入されたベクターの用途は、以下(1)~(9)のように表現することもできる。
(1)以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質の有効量を投与する工程を含む、細胞遊走を刺激する方法;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(2)以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質の有効量を投与する工程を含む、細胞を骨髄から末梢血に動員する方法;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(3)以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質の有効量を投与する工程を含む、組織を再生させる方法;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(4)細胞遊走を刺激するために用いられる組成物の製造における以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質の使用;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(5)細胞を骨髄から末梢血に動員するために用いられる組成物の製造における以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質の使用;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(6)組織を再生するために用いられる組成物の製造における以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質の使用;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(7)細胞遊走を刺激する方法に使用するための、以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(8)細胞を骨髄から末梢血に動員する方法に使用するための、以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
(9)組織を再生する方法に使用するための、以下の(a)から(c)のいずれかに記載の物質;
(a)細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチド
(b)(a)に記載のペプチドを分泌する細胞
(c)(a)に記載のペプチドをコードするDNAが挿入されたベクター
【0127】
また以下のいずれかのアミノ酸配列を少なくとも含む細胞遊走刺激活性を有するペプチドの用途についても上記と同様に言い換えることができる。
「1」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列
「2」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列
「3」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列
「4」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における85番目から169番目のアミノ酸配列、および
「5」配列番号:1、3、5のいずれかに記載のアミノ酸配列における89番目から185番目のアミノ酸配列。
【0128】
なお本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0129】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例0130】
HEK293を利用したHMGB1およびHMGB1由来ペプチドの精製
新生マウス皮膚からTrizol (invitrogen) を用いてRNAを抽出し、SuperScript III cDNA synthesis kit(Invitrogen)を用いてcDNAを合成した。このcDNAをテンプレートとしてHMGB1のcDNAをPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて増幅した。分泌シグナルとしてIgG κ鎖signal 配列、精製のためにアミノ酸配列のN末端にHA tag、GST tagおよび6XHis tagの配列を付加したタンパク質を発現するように、哺乳類細胞でタンパク質を発現させるプラスミドベクターpCAGGSに挿入した(
図1)。さらにHis tagと目的タンパク質およびペプチドの間にHRV3Cで切断される配列を挿入した。HRV3C切断後は目的タンパク質およびペプチドのN末端側にGly Pro Gly Thy Gln(配列番号:7)のペプチド断片が付加される。なお全長HMGB1およびペプチドのcDNAはPCR法を用いて制限酵素サイトを付加しベクターのKpnIおよびEcoRI部分に挿入した。
【0131】
ヒト胎児腎細胞由来HEK293培養細胞株にポリエチレンイミン(PEI)を用いて上記で作製したpCAGGS発現ベクターをトランスフェクションし、48時間後細胞及び培養上清を回収した。細胞及び培養上清は、4℃で4400g・5分間遠心を行うことにより、上清と細胞を分離して、それぞれ回収した。回収した上清は、さらに直径0.8μm孔をもつセルロースアセテートフィルターを通過させ、次に0.45μmの孔を持つニトロセルロースフィルターを通過させることによって、不溶画分を除去したサンプルを調製した。本サンプルを、50mM NaCl含50mM Tris HCl pH8.0 (50mL)で平衡化した5 mL HisTrap FF(GE)に挿入し、吸着成分をさらに10mM イミダゾール含有50mM NaCl 50mM Tris HCl pH8.0で洗浄して、非特異的吸着成分を除去した。特異的吸着成分を、カラムから、100mM イミダゾール含有50mM NaCl 50mM Tris HCl pH8.0で溶出した。吸着画分はそれぞれ、500μLずつシリコンコートしたプラスチックチューブに分画し、タンパク質含有フラクションをまとめた。その後、脱塩カラムPD10(GE)を用いてイミダゾールを除去し、50mM Tris HCl pH. 7.5, 150mM NaCl を用いて溶出した。溶出したサンプルにHRV3C(Novagen)を添加し、4℃、8時間反応させた。タグの切断後、サンプルを50mM Tris HCl pH.7.5,150 mM NaClで平衡化したHiTrap Heparin 1 mL カラム(GE)に結合させ、50mM Tris HCl pH.7.5,150 mM NaClでカラム内部を洗浄後、50mM Tris HCl pH.7.5,1000 mM NaClで結合タンパク質もしくはペプチドを溶出した。
【0132】
マイグレーションアッセイ
マウス骨髄間葉系幹細胞株(MSC-1細胞、大阪大学玉井ら作製(PDGFRα-positive cells in bone marrow are mobilized by high mobility group box 1 (HMGB1) to regenerate injured epithelia.(tamai et. al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Apr 4.)))をディッシュからトリプシンを使用して4℃、1200rpm、10分の遠心により回収した。ペレットをほぐし、細胞濃度が2.0~3.0×106個/mlになるように、10%FBS(Fetal bovine serum)含D-MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)を加え混濁した。HEK293にて生産した組み換えタンパク質およびペプチドを10%FBS 含D-MEMに希釈した。陰性コントロールとしてはPBS(Phosphate buffered saline)を使用した。アクリル製ボイデンチャンバーを使用し、上層には、3X106個/mlに調製されたマウス骨髄間葉系幹細胞株を、下層には希釈したタンパク質もしくはペプチドを入れた。より詳細には、48穴ケモタキシスチャンバー(NEURO PROBE 48WELL CHEMOTAXIS CHAMBER)の底板穴にタンパク質またはペプチド溶解液を28μlずつ入れ、底板の上に8μm 孔のポリカーボネートメンブレン(Neuro Probe, Inc, Cat: 866-417-0014)を載せて、さらに上板を載せてネジでしっかり止めた。上板穴に細胞濃度調整をすませたマウス骨髄間葉系幹細胞株を50μl入れた。チャンバーは37℃、5%CO2のインキュベーター内で静置した。4時間後チャンバーのメンブレンを回収し、Diff-Quik(Sysmex, Cat: 16920)を用いて、膜の孔を通り抜け下層に向かってマイグレーションした細胞を染色により検出した。
【0133】
結果
マウス全長HMGB1(1-215)および1番目から84番目までのペプチド(1-84)、85番目から169番目までのペプチド(85-169)、1番目から44番目までのペプチド(1-44)、45番目から84番目までのペプチド(45-84)および陰性コントロール(PBS)のマイグレーション活性の有無を確認した。タンパク質およびペプチドはそれぞれ50μg/mlの濃度で使用した。85-169においてはマイグレーション活性を検出しなかったが、他の1-215、1-84、1-44、45-84においてマイグレーション活性を示した(
図2)。
【0134】
更に45番目から215番目までのペプチド(45-215)、63番目から215番目までのペプチド(63-215)をそれぞれ5、15、25μg/mlの濃度で使用し、マイグレーション活性を確認した(
図3)。
【0135】
考察
マウス、ラットおよびヒトのHMGB1(それぞれ配列番号:3、5および1)は1番目から85番目までのアミノ酸配列はA-box、86番目から169番目までのアミノ酸配列はB-boxとして知られている。マウス、ラットおよびヒトの1番目から185番目までのアミノ酸配列はすべて一致し、100%相同性を保っている。186番目から215番目までのアミノ酸配列はグルタミン酸およびアスパラギン酸の繰り返し配列であり、マウスとラットでは100%一致するがヒトとは2アミノ酸のみ異なる。85-169はマイグレーション活性が検出されず、この断片には活性がないか、或いは活性が今回の実験条件では検出限界以下であったものと考えられる。一方で1-84、1-44、45-84では、いずれにも良好なマイグレーション活性を認めることから、1番目から44番目までのアミノ酸配列の間と45番目から84番目までのアミノ酸配列の間の少なくとも2カ所にマイグレーション活性を有するドメインが存在することが予想された。HMGB1は樹状細胞などの細胞をマイグレーションさせることが知られているが、RAGEと呼ばれるレセプターをHMGB1が刺激することで誘発されると考えられている。HMGB1の中に存在するRAGE 結合 ドメインは150から181番目のアミノ酸に相当する部分に存在することが知られている。今回骨髄間葉系幹細胞をマイグレーションさせたドメインがRAGE結合ドメインと異なる部位でありなおかつ少なくとも2か所も発見したことは驚くべきことである。
【0136】
45-215、63-215いずれにも濃度依存的にマイグレーション活性を認めた。なお63-215に比較して45-215に強い活性を認めた。そのため、少なくとも63番目から84番目までのアミノ酸の間にマイグレーション活性を有するドメインが1カ所存在することが予想された。さらに、以下のHEK293を用いて生産したペプチドについても、骨髄間葉系幹細胞株MSC-1に対するマイグレーション活性を示した:
1番目から42番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-42)、
1番目から43番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-43)、
1番目から45番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-45)、
1番目から46番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-46)、
1番目から47番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-47)、
1番目から48番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-48)、
1番目から49番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-49)、
1番目から50番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-50)、
1番目から51番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-51)、
1番目から52番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-52)、
1番目から62番目のアミノ酸配列を含むペプチド(1-62)。