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特開2023-106633非水二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シート、及び非水二次電池、並びに、これら電極シート及び非水二次電池の製造方法
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  • 特開-非水二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シート、及び非水二次電池、並びに、これら電極シート及び非水二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106633
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】非水二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シート、及び非水二次電池、並びに、これら電極シート及び非水二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20230726BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230726BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20230726BHJP
   H01G 11/38 20130101ALN20230726BHJP
   H01G 11/06 20130101ALN20230726BHJP
   H01G 11/50 20130101ALN20230726BHJP
   H01G 11/86 20130101ALN20230726BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/058
C08F220/26
H01G11/38
H01G11/06
H01G11/50
H01G11/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020073022
(22)【出願日】2020-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(72)【発明者】
【氏名】三村 智則
(72)【発明者】
【氏名】木下 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】森 歌穂
(72)【発明者】
【氏名】河野 景
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 一樹
【テーマコード(参考)】
4J100
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J100AJ02Q
4J100AL08P
4J100AL09R
4J100AM21P
4J100BA03P
4J100BA04P
4J100BA37P
4J100BA38P
4J100BC43P
4J100BC73P
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA37
4J100JA43
5E078AA03
5E078AB06
5E078BA41
5E078BA71
5E078BA73
5E078BB31
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK15
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ11
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA06
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA19
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA11
5H050EA10
5H050EA23
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA11
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】固体粒子の分散性に優れた組成物(スラリー)を得られ、この組成物を用いて電極活物質層を形成すれば、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性を十分に高められ、この電極活物質層に充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも、得られる非水二次電池を十分に低抵抗化でき、更に、そのサイクル寿命を十分に長期化できる、非水二次電池用のバインダー組成物を提供する。
【解決手段】ベタイン構造を含む構成成分を有するポリマーで構成されたバインダーを含有してなる非水二次電池用バインダー組成物、このバインダー組成物と電極活物質を含む電極用組成物、この電極用組成物で構成した層を有する電極シートとその製造方法、正極活物質層と負極活物質層の少なくとも1つの層が、この電極用組成物で構成した層である非水二次電池とその製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベタイン構造を含む構成成分を有するポリマーで構成されたバインダーを含有してなる、非水二次電池用バインダー組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩及びアンモニウム塩の少なくとも1種の塩構造を有する構成成分を有する、請求項1に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【請求項3】
前記塩構造がカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、及び硝酸塩の少なくとも1種であり、該塩構造が多価アミン由来の対イオンを有する、請求項2に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【請求項4】
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを質量比で、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2として混合した溶媒に対する、前記ポリマーの膨潤率が1%以上200%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが下記式(O-31)で表される構成成分を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【化1】
式中、R31~R33は各々独立に水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又は炭素数1~24のアルキル基を示す。
34は水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基、脂肪族環基又はハロゲン原子を示す。
21はイミノ基又は酸素原子を示す。
41は炭素数1~16のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。ただし、L41のR34と結合する側が炭素数1~16のアルキレン基である場合、R34は水素原子、ヒドロキシ基、フェニル基、脂肪族環基又はハロゲン原子を示す。
【請求項6】
前記式(O-31)で表される構成成分が、ガラス転移温度が60℃以下の構成成分を含む、請求項5に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【請求項7】
前記ポリマーの重量平均分子量が100000以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【請求項8】
前記バインダー組成物中の水の含有量が10質量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の非水二次電池用バインダー組成物と、周期律表第一族又は第二族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な電極活物質とを含む電極用組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の電極用組成物で構成した層を有する電極シート。
【請求項11】
正極活物質層とセパレータと負極活物質層とをこの順で有する非水二次電池であって、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも1つの層が、請求項9に記載の電極用組成物で構成した層である、非水二次電池。
【請求項12】
請求項9に記載の電極用組成物を用いて成膜する工程を含む、電極シートの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法により得られた電極シートを非水二次電池の電極に組み込むことを含む、非水二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シート、非水二次電池、電極シートの製造方法、及び非水二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水二次電池は、パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等のポータブル電子機器の動力源として用いられている。最近では、二酸化炭素排出量削減という地球規模の環境課題を背景に、自動車等の輸送機器の動力電源として、また、夜間電力、自然エネルギー発電による電力等の蓄電用途としても普及してきている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の電極(正極及び負極)は電極活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)を有し、この電極活物質層は、充放電時にリチウムイオンを吸蔵ないし放出可能な電極活物質粒子を含む。また、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間では電子輸送も行われるため、電子伝導性を確保することが要求される。この電子伝導の効率化には電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性が重要であり、電極活物質層は通常、バインダーを有している。しかし、バインダーそれ自体は電子輸送能が低く、結着性の向上と電子伝導性の向上とは、通常、互いにいわゆるトレードオフの関係にある。
【0004】
リチウムイオン二次電池の電極は通常、電極形成用の組成物(スラリー)を集電体上に塗布し、乾燥して形成される。したがって、電極形成のためのスラリーは、電極活物質とバインダーとを液媒体中に分散して調製される。近年の環境問題への関心の高まりを背景に、液媒体として水系のものが求められるようになっており、水系スラリーに適した水系バインダーが開発されている。
例えば特許文献1には、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を50~80質量%含み、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を20~50質量%含み、特定の粘度を有する水溶性高分子を、二次電池用水系電極バインダーとして用いることが記載されている。
また、特許文献2には、リン酸基含有エチレン性不飽和単量体を含んでいてよいエチレン性不飽和単量体、リン酸基含有界面活性剤を含んでいてよい界面活性剤、ならびに、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の中和剤を含む組成物を乳化重合してなる、水分散系の非水系電池電極用バインダーが記載されている。
【0005】
リチウムイオン二次電池の更なる高容量化を実現するために、負極活物質としてケイ素系活物質を用いる検討が盛んに行われている。負極にケイ素系活物質を用いると高エネルギー密度化が可能となる。しかし、ケイ素系活物質は充電時にはリチウムイオンを多量に吸蔵して大きく膨張し、その分、放電時におけるケイ素系活物質の収縮幅も大きくなる。したがって、負極活物質としてケイ素系活物質を用いたリチウムイオン電池は充放電時の負極活物質の体積変化が大きく、充放電の繰り返しにより電池性能が低下しやすい。つまり、サイクル寿命の向上には制約がある。
このような問題に対処した技術として、例えば特許文献3には、メジアン径が0.1~2μmであるシリコン粒子を20質量%以上含む負極活物質と、(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマー及びスルホン酸基置換不飽和炭化水素基含有モノマーを含むモノマー群のラジカル共重合物であり、特定濃度の水溶液状態で特定の粘度を示すポリ(メタ)アクリルアミドと、水とを含む、リチウムイオン電池負極用スラリーが記載されている。特許文献3記載の技術によれば、スラリーの分散性を高めることができ、このスラリーにより形成した電極は柔軟性に優れ、サイクル寿命の長いリチウムイオン二次電池が得られるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-18776号公報
【特許文献2】特許第6462125号公報
【特許文献3】特開2018-6334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非水二次電池の用途の拡大に伴い、非水二次電池には高エネルギー密度化、低抵抗化、及びサイクル寿命の更なる向上が求められている。しかし、本発明者らが上記各特許文献に記載された電極用バインダーを含む従来の電極用バインダーについて検討した結果、負極活物質としてケイ素系活物質を用いて非水二次電池の高エネルギー密度化を図った場合に、電池抵抗を十分に抑えることは難しく、また、サイクル寿命についても目的の高いレベルへと導くには至っていないことが明らかとなってきた。
【0008】
本発明は、電極活物質、導電助剤等の固体粒子と混合することにより、これらの固体粒子の分散性に優れた組成物(スラリー)を得ることができ、この組成物を用いて電極活物質層を形成すれば、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性を十分に高めることができ、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を電極活物質層に用いた場合でも得られる非水二次電池を十分に低抵抗化でき、かつこの非水二次電池のサイクル寿命も十分に長期化することができる、非水二次電池用のバインダー組成物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、上記バインダー組成物と電極活物質とを組合せた電極用組成物、上記電極用組成物を用いた電極シート及び非水二次電池を提供することを課題とする。さらに本発明は、上記電極シート及び非水二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題に鑑み、バインダーを構成するポリマー構造について種々の検討を重ねた。その結果、ベタイン構造を含む構成成分を有する水性ポリマーを水性媒体中に含有してなるバインダー組成物が、電極活物質、導電助剤等の固体粒子と混合した際には固体粒子の凝集を抑えて固体粒子を十分に小粒径に分散した組成物が得られること、この組成物を用いて電極活物質層を形成すれば電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性を十分に高めることができること、この電極活物質層を含む電極を非水二次電池に組み込むことにより、得られる非水二次電池の抵抗を効果的に抑えることができ、またサイクル寿命を十分に長期化できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0010】
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>
ベタイン構造を含む構成成分を有するポリマーで構成されたバインダーを含有してなる、非水二次電池用バインダー組成物。
<2>
上記ポリマーが、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩及びアンモニウム塩の少なくとも1種の塩構造を有する構成成分を有する、<1>に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
<3>
上記塩構造がカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、及び硝酸塩の少なくとも1種であり、該塩構造が多価アミン由来の対イオンを有する、<2>に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
<4>
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを質量比で、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2として混合した溶媒に対する、上記ポリマーの膨潤率が1%以上200%未満である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の非水二次電池用バインダー組成物。
<5>
上記ポリマーが下記式(O-31)で表される構成成分を有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の非水二次電池用バインダー組成物。
【化1】
式中、R31~R33は各々独立に水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又は炭素数1~24のアルキル基を示す。
34は水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基、脂肪族環基又はハロゲン原子を示す。
21はイミノ基又は酸素原子を示す。
41は炭素数1~16のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。ただし、L41のR34と結合する側が炭素数1~16のアルキレン基である場合、R34は水素原子、ヒドロキシ基、フェニル基、脂肪族環基又はハロゲン原子を示す。
<6>
上記式(O-31)で表される構成成分が、ガラス転移温度が60℃以下の構成成分を含む、<5>に記載の非水二次電池用バインダー組成物。
<7>
上記ポリマーの重量平均分子量が100000以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の非水二次電池用バインダー組成物。
<8>
前記バインダー組成物中の水の含有量が10質量%以上である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の非水二次電池用バインダー組成物。
<9>
<1>~<8>のいずれか1つに記載の非水二次電池用バインダー組成物と、周期律表第一族又は第二族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な電極活物質とを含む電極用組成物。
<10>
<9>に記載の電極用組成物で構成した層を有する電極シート。
<11>
正極活物質層とセパレータと負極活物質層とをこの順で有する非水二次電池であって、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の少なくとも1つの層が、<9>に記載の電極用組成物で構成した層である、非水二次電池。
<12>
<9>に記載の電極用組成物を用いて成膜する工程を含む、電極シートの製造方法。
<13>
<12>に記載の製造方法により得られた電極シートを非水二次電池の電極に組み込むことを含む、非水二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非水二次電池用バインダー組成物は、電極活物質、導電助剤等の固体粒子と混合することにより、これらの固体粒子の分散性に優れた組成物(スラリー)を得ることができる。本発明の非水二次電池用バインダー組成物、電極用組成物、電極シートは、これらを用いて電極を作製した非水二次電池において、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性を十分に高めることができ、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも非水二次電池の低抵抗化を実現でき、かつ非水二次電池のサイクル寿命も十分に長期化することができる。
本発明の非水二次電池は、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性が十分に高められ、電極活物質として充放電時の体積変化の大きなものを採用した場合にも電池駆動時の低抵抗化を実現でき、かつ十分に長いサイクル寿命を有する。
本発明の電極シートの製造方法によれば、本発明の上記電極シートを得ることができる。また、本発明の非水二次電池の製造方法によれば、本発明の上記非水二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、非水二次電池の基本的な積層構成を模式化して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、置換基を導入するなど構造の一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換基が解離性の水素原子(水素原子が塩基の作用により解離する基)を有する場合、この置換基にはイオンないし塩の形態が含まれる。
本明細書において置換又は無置換を明記していない置換基、連結基等(以下、置換基等という。)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。よって、本明細書において、単に、「~基」(例えば「アルキル基」)と記載されている場合であっても、この「~基」(例えば「アルキル基」)は、置換基を有しない態様(例えば「無置換アルキル基」)に加えて、更に置換基を有する態様(例えば「置換アルキル基」)も包含する。これは置換又は無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、後記する置換基Tが挙げられる。
本明細書において単に「置換基」という場合、後記する置換基Tから選ばれる置換基が好ましく適用される。
本明細書において、特定の符号で示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本明細書において、ポリマーが同一表示の(同一の一般式で表示された)複数の構成成分を有する場合は、各構成成分は互いに同一でも異なっていてもよい。
本発明において「非水二次電池」とは、非水電解液二次電池と全固体二次電池とを含む意味である。「非水電解液」とは、水を実質的に含まない電解液を意味する。すなわち、「非水電解液」は本発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよい。本発明において「非水電解液」は、水の濃度が1000ppm(質量基準)以下であり、100ppm以下が好ましく20ppm以下がより好ましい。なお、非水電解液を完全に無水とすることは現実的に困難であり、通常は水が1ppm以上含まれる。「全固体二次電池」とは、電解質として液を用いず、無機固体電解質、固体状ポリマー電解質等の固体電解質を用いた二次電池を意味する。
【0014】
[非水二次電池用バインダー組成物]
本発明の非水二次電池用バインダー組成物(「本発明のバインダー組成物」とも称す。)は、非水二次電池を構成する部材ないし構成層の形成材料として好適なバインダー組成物である。典型的には、本発明のバインダー組成物を電極活物質(正極活物質又は負極活物質、これらを合わせて、単に「活物質」とも称す。)と混合して非水二次電池の電極(正極及び/又は負極)活物質層の形成に用いることができる。なお、本発明のバインダー組成物は、耐熱層を形成するために非水電解液二次電池のセパレータ表面に塗布するなどして用いたり、集電体のコート用のバインダーとして用いたりすることもできる。
本発明のバインダー組成物は、バインダー成分としてベタイン構造を含む構成成分を有するポリマーを含有する。また、本発明のバインダー組成物は上記ポリマーを溶解ないし分散する液媒体を含有する。液媒体は通常は水を含む水性媒体である。本発明において「水を含む水性媒体」とは、水、又は、水と水溶性有機溶媒との混合液であり、後述する中和剤を含有することもできる。また、「水溶性有機溶媒」とは、水と混合したときに相分離せずに混じり合う有機溶媒であり、例えばN-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
バインダー成分である上記ポリマーは液媒体中に溶解していることが好ましい。
【0015】
<ポリマー>
本発明のバインダー組成物は、ベタイン構造を含む構成成分(ベタイン構造を含むモノマー由来の構成成分、以下、「構成成分(a)」とも称す。)を有するポリマーを含む。「ベタイン構造」とは、正電荷と負電荷とを同一分子内の隣り合わない位置に有し、正電荷を有する原子には解離できる水素原子が結合しておらず、分子全体としては無電荷である構造を意味する。
ベタイン構造を含む構成成分を有するポリマーは、電極活物質、導電助剤等の固体粒子が有し得る正電荷に対しても、負電荷に対しても親和的に作用することができ、電極活物質層を形成した状態において、固体粒子間の結着性をより高めることができる。他方、後述する電極用組成物(スラリー)を調製した際には、正電荷同士又は負電荷同士の反発性が固体粒子の分散性の向上に寄与し、スラリー中における固体粒子の凝集を効果的に抑えることができる。
したがって、ポリマーの構成成分がベタイン構造を有していれば、上述した目的の作用を発現することができる。
【0016】
構成成分(a)が有するベタイン構造としては、例えば、カルボベタイン構造、スルホベタイン構造又はホスホベタイン構造が挙げられる。ここで、カルボベタイン構造とは解離したカルボキシ基がベタイン構造の負電荷を構成し、スルホベタイン構造とは解離したスルホ基がベタイン構造の負電荷を構成し、ホスホベタイン構造とは解離したリン酸基がベタイン構造の負電荷を構成するベタイン構造である。
また、構成成分(a)が有するベタイン構造は、正電荷として通常は、アンモニウムカチオン構造、スルホニウムカチオン構造又はホスホニウムカチオン構造を有し、第四級アンモニウムカチオン構造を有することがより好ましい。
構成成分(a)は、固体粒子との結合効率をより高める観点からは、ベタイン構造を側鎖に有することが好ましい。この場合、ポリマーの主鎖はエチレン性不飽和基(炭素-炭素二重結合)の重合反応により形成されたものとすることができる。
【0017】
構成成分(a)は、例えば、下記式(J-1)~(J-4)のいずれかで表されるものとすることができる。
【0018】
【化2】
【0019】
式中、R11~R13、R16~R18、R21~R23、及びR26~R28は各々独立に水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。R14、R15、R19、R20、R24、R25、R29、R30、及びR31は各々独立に水素原子又は置換基を表す。L11~L18は2価の連結基を示す。
【0020】
11~R13、R16~R18、R21~R23、及びR26~R28としてとりうるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R11~R13、R16~R18、R21~R23、及びR26~R28としてとりうるハロゲン原子はフッ素原子、又は塩素原子が好ましい。
【0021】
11~R13、R16~R18、R21~R23、及びR26~R28としてとりうるアルキル基は直鎖でもよく、分岐を有してもよい。R11~R13、R16~R18、R21~R23、及びR26~R28としてとりうるアルキル基の炭素数は1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~4であることが特に好ましい。このアルキル基の特に好ましい具体例はメチル又はエチルであり、なかでもメチルが好ましい。
11、R12、R16、R17、R21、R22、R26、R27は水素原子であることが好ましい。また、R13、R18、R23、及びR28は水素原子又はアルキル基が好ましい。
【0022】
14、R15、R19、R20、R24、R25、R29、R30、及びR31は後述する置換基Tから選択される基が好ましく、アルキル基又はアリール基がより好ましい。
14、R15、R19、R20、R24、R25、R29、R30、及びR31としてとりうるアルキル基の好ましい形態は、上記R11としてとりうるアルキル基の好ましい形態と同じである。また、R14、R15、R19、R20、R24、R25、R29、R30、及びR31としてとりうるアリール基は、炭素数が6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~12が更に好ましく、6~10が特に好ましい。このアリール基の特に好ましい具体例はフェニルである。
【0023】
11~L18は2価の連結基を示す。L11~L18は、ベタイン構造をポリマー側鎖に導入できればその構造は特に制限されない。L11~L18の化学式量は14~2000が好ましく、14~200がより好ましく、14~100であることが更に好ましい。
11~L18としてとりうる2価の連結基は、例えば次の構造とすることができる。
炭素数1~16のアルキレン基、芳香族基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基(-N(R)-)、カルボニル基、又はこれらの2つ以上を組合せた基。
本発明において「イミノ基(-N(R)-)」のRは水素原子又は置換基である。Rとしてとりうる置換基は、特に限定されないが、後述する置換基Tから選択される基が挙げられ、その中でも水素原子又はアルキル基が好ましい。
【0024】
11~L18に含まれうる炭素数1~16のアルキレン基は、直鎖でもよく、分岐を有してもよい。L11~L18に含まれうるアルキレン基は、炭素数が1~12がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~6が特に好ましい。
11~L18に含まれうる芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよく、環構成原子にヘテロ原子を有する複素芳香族基であってもよい。また、この芳香族基は縮合環であってもよい。L11~L18に含まれうる芳香族基を構成する芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環などが挙げられ、これらの環の2つ以上(好ましくは2つ又は3つ)が縮合した縮合環でもよい。なかでもL21に含まれうる芳香族基はフェニレン基が好ましい。
【0025】
11、L13、L15、及びL17は、エステル結合(-C(=O)O-)又はアミド結合(-C(=O)NR-、Rはイミノ基における上記Rと同義)を有することが好ましい。これらのエステル結合及びアミド結合は、それぞれ、モノマーの(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリルアミド基に由来することが好ましい。本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルとアクリロイルの両方を包含する意味である(「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリルアミド」についても同様である)。
また、L11、L13、L15、及びL17は、上記芳香族基を有することも好ましい。また、L11、L13、L15、及びL17は、アルキレン基を有することも好ましく、酸素原子(-O-、エステル結合を構成しない酸素原子)を有することも好ましい。
11、L13、L15、及びL17は、エステル結合とアルキレン基との組み合わせ、アミド結合とアルキレン基との組み合わせ、エステル結合とアルキレン基と酸素原子との組み合わせ、又は、アミド結合とアルキレン基と酸素原子との組み合わせが好ましい。これらの場合、アルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~6が更に好ましく、1~4とすることが特に好ましい。
11、L13、L15、及びL17が有しうる上記アミド結合(-C(=O)NR-)において、Rがベタイン構造を有してもよい。例えば、Rがアルキル基であり、このアルキル基が有する置換基中にベタイン構造を有することができる。
また、式(J-1)、(J-2)及び(J-3)においては、L11、L13、及びL15が有しうる上記アミド結合において、アミド結合が有する各Rは、それぞれR14、R19、及びR24と結合した形態とすることもできる。
【0026】
12、L14、L16、及びL18は、アルキレン基を有することが好ましく、アルキレン基と酸素原子との組み合わせであってもよく、アルキレン基又はオキシアルキレン基であることがより好ましい。このアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~6が更に好ましく、1~4とすることが特に好ましい。
【0027】
構成成分(a)の好ましい具体例を以下に示すが、本発明において上記構成成分はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0028】
【化3】
【0029】
バインダー成分を構成する上記ポリマーは、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硝酸塩及びアンモニウム塩の少なくとも1種の塩構造を有する構成成分(以下、構成成分(b)とも称す。)を有することが好ましい。この構成成分(b)は構成成分(a)とは異なる構成成分である。
上記塩構造は、主鎖に含まれていても、側鎖に含まれていてもよいが、側鎖に含まれることが好ましい。上記塩構造を有する構成成分を含むことにより、その含有量を調整し、ポリマーの水溶性を所望のレベルへと高めることができる。また、活物質ないし集電体の表面との相互作用性も高められ、結着性の向上にも寄与し得ると考えられる。
【0030】
構成成分(b)は、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリアミド基を有する化合物に由来することが好ましい。
構成成分(b)の化学式量は60~60000が好ましく、70~20000がより好ましい。また二価以上の金属や多官能の有機塩基の中和により、架橋構造が形成されている形態も好ましい。本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルとアクリロイルの両方を包含する概念である。
構成成分(b)は、カルボン酸塩、スルホン酸塩及びリン酸塩の少なくとも1種の塩構造を有する構成成分であることが好ましい。
【0031】
塩構造を形成するための対イオンとしては、通常のカチオン又はアニオンを用いることができる。対イオンとしてのカチオンの例としては、金属のカチオンが挙げられ、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンなどを挙げることができる。また、アミン由来のカチオンを有することも好ましい。かかるアミンとしてポリエチレンイミン等の多価アミン、ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、エタノールアミン等のアルコールアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミノピリジン等の芳香環含有アミン、ジアザビシクロウンデセン等の多環式アミンを好ましく用いることができる。
対イオンとしてのアニオンの例としては、例えばハロゲンアニオンが挙げられる。
塩構造の形成のために、2種以上の対イオンを用いてもよい。例えば、金属カチオンとアミン由来のカチオン(好ましくはポリエチレンイミン等の多価アミン由来のカチオン)とを併用することも好ましい。
【0032】
上記ポリマーは、構成成分(b)が塩構造をとらずに、末端に水素原子が結合している形態の構成成分(b-H)を有していてもよい。すなわち、構成成分(b-H)を有するポリマーが中和剤の存在下で、構成成分(b-H)の一部又は全部が塩構造を形成し、構成成分(b)として存在する。構成成分(b-H)と構成成分(b)のモル量の合計(Q)に占める構成成分(b)のモル量(Z)の割合(100×Z/Q)を上記ポリマーの中和度(モル%)とする。上記ポリマーの中和度は30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、60モル%以上とすることが更に好ましく、70モル%以上とすることが特に好ましい。上記ポリマーの中和度は100モル%でもよく、95モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましい。
中和剤として、例えば、周期律表第一族に属する金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、周期律表第二族に属する金属の水酸化物、炭酸塩等の無機塩基、ポリエチレンイミン等の多価アミン、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、エタノールアミン、ヒスチジン等の有機塩基、塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸などが挙げられる。中和剤は1種単独、又は2種以上で使用されてよく、2種以上を併用することが好ましい。好ましい中和剤は、対イオンとなるカチオンの供給原としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、ポリエチレンイミン及びジアザビシクロウンデセンが挙げられ、対イオンとなるアニオンの供給原としては塩酸が挙げられる。
【0033】
構成成分(b)の具体例を以下に示すが、本発明において構成成分(b)はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0034】
【化4】
【0035】
構成成分(b)として、(メタ)アクリル酸の塩を好適に用いることができる。
【0036】
バインダー成分を構成する上記ポリマーは、下記式(O-31)で表される構成成分(以下、構成成分(c)とも称す。)を有することが好ましい。式(O-31)で表される構成成分(c)は、構成成分(a)、構成成分(b)、及び構成成分(b-H)とは異なる構成成分である。
【0037】
【化6】
【0038】
式(O-31)中、R31~R33は各々独立に水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。R31~R33としてとりうるアルキル基は式(J-1)のR11~R13としてとりうるアルキル基と同義であり、好ましい形態も同じである。
【0039】
34は水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~12であるアルキル基、フェニル基、脂肪族環基又はハロゲン原子を示す。
34としてとりうる炭素数1~12のアルキル基は直鎖でも分岐を有してもよい。このアルキル基の炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
34としてとりうる脂肪族環基は5員環又は6員環が好ましい。また、脂肪族複素環基であることが好ましい。脂肪族複素環基が有する環構成ヘテロ原子は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
34はヒドロキシ基がより好ましい。
【0040】
21はイミノ基又は酸素原子を示す。
【0041】
41は炭素数が1~16であるアルキレン基、炭素数が6~12であるアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。ただし、L41のR34と結合する側が炭素数1~16のアルキレン基であるとき、R34は水素原子、ヒドロキシ基、フェニル基、脂肪族環基又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、又は塩素原子)を示す。炭素数1~16のアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~6が特に好ましい。
41の化学式量は14~2000が好ましく、28~500がより好ましく、40~200が更に好ましい。
41が有しうる炭素数1~16のアルキレン基は直鎖でも分岐を有してもよい。このアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~6が特に好ましい。
【0042】
41としては、炭素数1~16のアルキレン基、アルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の炭素数は1~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4が更に好ましい)、ポリアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の繰り返し数(平均繰り返し数)が好ましくは2~10、より好ましくは2~5、更に好ましくは2又は3;アルキレンオキシ基の炭素数は1~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4が更に好ましい)又は炭素数6~12のアリーレン基が好ましい。なかでも炭素数1~16のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~12のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1~10のアルキレン基が特に好ましく、炭素数1~8のアルキレン基がより特に好ましく、炭素数1~6のアルキレン基とすることが最も好ましい。
【0043】
構成成分(c)は、ガラス転移温度(Tg)が60℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることが更に好ましく、0℃以下であることが特に好ましい。
上記構成成分(c)のTgは、構成成分(c)単独で構成されるポリマーのTgであり、POLYMER HANDBOOK fourth edition VI章のテーブル記載のTgを採用する。上記表に記載されていないポリマーのTgは実測で決定する。すなわち、ポリマーの乾燥試料を調製し、示差走査熱量計:X-DSC7000(商品名、SII・ナノテクノロジー社製)を用いて下記の条件で測定する。測定は同一の試料で二回実施し、二回目の測定結果を採用する。
測定室内の雰囲気:窒素ガス(50mL/分)
昇温速度:5℃/分
測定開始温度:-80℃
測定終了温度:250℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
構成成分(c)のTgは、-45℃以上が好ましい。
【0044】
構成成分(c)の具体例を以下に示すが、本発明において構成成分(c)はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0045】
【化5】
【0046】
上記ポリマーは、構成成分(c)として、アルキレン基の鎖長が異なる2種以上のアクリル酸ヒドロキシアルキル成分を有する形態とすることも好ましい。
【0047】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ペンチル、ヘプチル、1-エチルペンチル、ベンジル、2-エトキシエチル、1-カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2~20であるアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2~20であるアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数が3~20であるシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数が6~26であるアリール基、例えば、フェニル、1-ナフチル、4-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、3-メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数が2~20であるヘテロ環基で、より好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5又は6員環のヘテロ環基である。ヘテロ環基には芳香族ヘテロ環基及び脂肪族ヘテロ環基を含む。例えば、テトラヒドロピラン環基、テトラヒドロフラン環基、2-ピリジル、4-ピリジル、2-イミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、2-チアゾリル、2-オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1~20であるアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6~26であるアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、3-メチルフェノキシ、4-メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(上記ヘテロ環基に-O-基が結合した基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数が2~20であるアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2-エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数が6~26であるアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、3-メチルフェノキシカルボニル、4-メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数が0~20であるアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ(-NH)、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N-エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数が0~20であるスルファモイル基、例えば、N,N-ジメチルスルファモイル、N-フェニルスルファモイル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数が1~20であるアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ヘキサデカノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル等)、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数が1~20であるアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、オクタノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素数が7~23であるアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数が1~20であるカルバモイル基、例えば、N,N-ジメチルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数が1~20であるアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6~26であるアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ等)、ヘテロ環チオ基(上記ヘテロ環基に-S-基が結合した基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数が6~22であるアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素数が6~42であるアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素数が0~20であるリン酸基、例えば、-OP(=O)(R)、ホスホニル基(好ましくは炭素数が0~20であるホスホニル基、例えば、-P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数が0~20であるホスフィニル基、例えば、-P(R)、スルホ基(スルホン酸基)、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。Rは、水素原子又は置換基(好ましくは置換基Tから選択される基)である。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記置換基Tを更に置換基として有していてもよい。
【0048】
バインダー成分である上記ポリマー中、式(J-1)で表される上記構成成分(a)の含有量は、2~60質量%が好ましく、3~25質量%がより好ましく、4~20質量%が更に好ましく、5~15質量%が特に好ましい。
また、上記ポリマーが式(J-1)で表される構成成分(a)とは別に構成成分(b)及び/又は構成成分(b-H)を有する場合、上記ポリマー中の構成成分(b)及び/又は構成成分(b-H)の含有量の合計は、2~95質量%が好ましく、3~70質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましく、5~30質量%が特に好ましい。構成成分(b)及び/又は構成成分(b-H)の含有量の合計は、6~95質量%でもよく、7~95質量%でもよく、7~90質量%でもよい。構成成分(b)と構成成分(b-H)のモル量の合計に占める構成成分(b)のモル量の割合は、上述したポリマーの中和度で説明した通りである。
また、上記ポリマーが式(O-31)で表される構成成分(c)を有する場合、ポリマー中の式(O-31)で表される構成成分(c)の含有量は、2~90質量%が好ましく、5~90質量%がより好ましく、10~90質量%とすることが更に好ましく、20~90質量%とすることが特に好ましく、40~85質量%とすることがより特に好ましく、60~85質量%とすることが最も好ましい。
【0049】
本発明のバインダー組成物を構成するバインダー成分であるポリマーは、非水電解液二次電池に使用することを想定した場合、活物質の膨潤と収縮の繰り返しに追従可能な特性と、所望の結着性とを発現してサイクル寿命をより長期化する観点から、電解液に対してある程度の膨潤性を示すことが好ましい。例えば、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを質量比で、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2として混合した溶媒(疑似電解液)に対する、上記ポリマーの膨潤率は1%以上200%未満であることが好ましく、7%以上150%未満がより好ましく、8%以上150%未満が更に好ましく、10%以上150%未満が特に好ましい。ここで、上記溶媒中においてポリマーが膨潤しない場合、膨潤率は0%である。膨潤率は後述する実施例に記載の方法により決定される。
【0050】
上記ポリマーの重量平均分子量は100000以上であることが好ましい。上記ポリマーの重量平均分子量が十分に大きいと、上記ポリマーの結着性作用が大きくなり、上記ポリマーを含む上記バインダー組成物が用いられた非水二次電池のサイクル寿命が長期化される。
【0051】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリアクリル酸ナトリウム換算の重量平均分子量であり、下記条件で決定することができる。
測定器:HLC-8220GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TOSOH TSKgel 5000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G4000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G2500PWXL(商品名、東ソー社製)をつなげる。
キャリア:200mM 硝酸ナトリウム水溶液
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.2%
検出器:RI(屈折率)検出器
【0052】
上記ポリマーが架橋されているなど、上記測定条件で重量平均分子量が測れない場合、下記条件で静的光散乱により、重量平均分子量を測定する。
測定器:DLS-8000(商品名、大塚電子社製)
測定濃度:0.25、0.50、0.75、1.00mg/ml
希釈液:0.1M NaCl水溶液
レーザー波長:633nm
ピンホール:PH1=Open、PH2=Slit
測定角度:60、70、80、90、100、110、120、130度
解析法:Zimm平方根プロットより、分子量を測定した。解析に必要なdn/dcはAbbe屈折率計で実測する。
【0053】
本発明のバインダー組成物は、上記ポリマーを1種単独で、又は2種以上含有していてよい。
【0054】
上記ポリマーは、上記各構成成分を導くモノマーを目的に応じて組み合わせ、必要により触媒(重合開始剤、連鎖移動剤等を含む。)の存在下、付加重合させることで、合成することができる。付加重合させる方法及び条件は、特に限定されず、通常の方法及び条件を適宜に選択できる。
【0055】
本発明のバインダー組成物は、水を好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%、特に好ましくは40質量%以上含有する。本発明のバインダー組成物は、水を50質量%以上含有してもよく、60質量%以上含有してもよく、70質量%以上含有してもよく、80質量%以上含有してもよい。
本発明のバインダー組成物中、上記ポリマーの含有量は目的に応じて適宜に設定すればよい。例えば、バインダー組成物中のポリマーの含有量を2~50質量%とすることができ、好ましくは4~30質量%、更に好ましくは6~20質量%とすることができる。本発明のバインダー組成物中、上記ポリマーを除いた残部は水、中和剤、及び水溶性有機溶媒で構成されていることが好ましく、上記ポリマーを除いた残部が水及び中和剤であることがより好ましい。
【0056】
[電極用組成物]
本発明の電極用組成物は、上記バインダー組成物のほか、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有する。必要に応じてさらに導電助剤、他の添加剤を含むことができる。活物質は正極活物質でもよく、負極活物質でもよい。電極用組成物が正極活物質を含む場合、電極用組成物を、非水二次電池の正極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。また、電極用組成物が負極活物質を含む場合、電極用組成物を負極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。上記バインダー組成物は正極、負極どちらの電極用組成物にも適用できるが、負極に用いることが好ましく、特にケイ素原子含有活物質を有する負極の電極用組成物に用いることが好ましい。
上記活物質、導電助剤、及び他の添加剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の非水二次電池に用いられるものから目的に応じて適宜選択して用いればよい。
【0057】
(正極活物質)
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0~30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3~2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
【0058】
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn及びLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO及びLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類並びにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩及びLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO及びLiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
【0059】
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の平均粒径(球換算平均粒子径)は特に制限されない。例えば、0.1~50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機又は分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
【0060】
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0061】
正極活物質の、電極層用組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10~99質量%が好ましく、30~98質量%がより好ましく、50~97質量が更に好ましく、55~95質量%が特に好ましい。
【0062】
(負極活物質)
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを吸蔵及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、ケイ素系材料、金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金形成可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、炭素質材料またはケイ素系材料が信頼性の点から好ましく用いられる。
【0063】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂若しくはフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。更に、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー並びに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0064】
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な酸化物であれば特に制限されず、非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく挙げられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°~40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及び上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族~15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBiの1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、GeO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Sb、Bi、Bi、GeS、PbS、PbS、Sb及びSbが好ましく挙げられる。
【0065】
金属(複合)酸化物及び上記カルコゲナイドは、構成成分として、チタン及びリチウムの少なくとも一方を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。リチウムを含有する金属複合酸化物(リチウム複合金属酸化物)としては、例えば、酸化リチウムと上記金属(複合)酸化物若しくは上記カルコゲナイドとの複合酸化物、より具体的には、LiSnOが挙げられる。
【0066】
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはTiNb(チタン酸ニオブ酸化物[NTO])、LiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制され、リチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
【0067】
負極活物質としてのリチウム合金としては、二次電池の負極活物質として通常用いられる合金であれば特に制限されず、例えば、リチウムアルミニウム合金が挙げられる。
【0068】
リチウムと合金形成可能な負極活物質は、二次電池の負極活物質として通常用いられるものであれば特に制限されない。このような活物質は、充放電による膨張収縮が大きく、上述のように固体粒子の結着性が低下するが、本発明では上記バインダーにより高い結着性を達成できる。このような活物質として、ケイ素原子若しくはスズ原子を有する負極活物質、Al及びIn等の各金属が挙げられ、より高い電池容量を可能とするケイ素原子を有する負極活物質(ケイ素原子含有活物質)が好ましく、ケイ素原子の含有量が全構成原子の40mol%以上のケイ素原子含有活物質がより好ましい。
一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(例えば、ケイ素原子含有活物質を含有するSi負極、スズ原子を有する活物質を含有するSn負極)は、炭素負極(黒鉛及びアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量(エネルギー密度)を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
ケイ素原子含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅若しくはランタンを含む合金(例えば、LaSi、VSi)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi/Si)、他にも、SnSiO、SnSiS等のケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
スズ原子を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO、SnS、SnS、更には上記ケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOも包含される。
【0069】
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の平均粒子径は、0.1~60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、通常の粉砕機若しくは分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミル若しくは篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては、特に限定はなく、篩、風力分級機などを所望により用いることができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。
【0070】
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その中でケイ素原子含有活物質と炭素質材料の組み合わせが好ましく、SiOx(0<x≦1)と黒鉛の組み合わせが特に好ましい。SiOx(0<x≦1)と黒鉛を組み合わせる際の質量比率(SiOx/黒鉛)は2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0071】
負極活物質の、電極層用組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10~98質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましい。
【0072】
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
【0073】
本発明において、負極活物質層を電池の充電により形成する場合、上記負極活物質に代えて、全固体二次電池内に発生する周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンを用いることができる。このイオンを電子と結合させて金属として析出させることで、負極活物質層を形成できる。
【0074】
(活物質の被覆)
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、Li、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiO、SiO、TiO、ZrO、Al、B等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
【0075】
(導電助剤)
本発明の電極用組成物は、導電助剤を含有することもでき、特に負極活物質としてのケイ素原子含有活物質は導電助剤と併用されることが好ましい。
導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いてもよい。
本発明において、活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
【0076】
導電助剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
導電助剤の、電極層用組成物中の含有量は、固形分100質量%に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0077】
導電助剤の形状は、特に制限されないが、粒子状が好ましい。導電助剤のメジアン径D50は、特に限定されず、例えば、0.01~50μmが好ましく、0.02~10.0μmがより好ましい。
【0078】
(他の添加剤)
本発明の固体電解質組成物は、上記各成分以外の他の成分として、所望により、リチウム塩、イオン液体、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。また、上記ポリマーを化学架橋するための、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、更には重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)を含有していてもよい。
非水二次電池に用いられる上記活物質、導電助剤、及び他の添加剤に関し、例えば、国際公開2019/203334号、特開2015-46389号公報等を参照することができる。
【0079】
本発明の電極用組成物中、活物質の含有量を、例えば50~99質量%に調整することができる。また、本発明の電極用組成物中、活物質の含有量とポリマー(バインダー成分)との質量比は、活物質/ポリマー=1/1~200/1とすることができ、活物質/ポリマー=1/33~5/1とすることがより好ましい。
【0080】
[電極シート]
本発明の電極シートは、本発明の電極用組成物を用いて構成された層(活物質層、すなわち、負極活物質層又は正極活物質層)を有する。本発明の電極シートは、活物質層を有する電極シートであればよく、活物質層が基材(集電体)上に形成されているシートでも、基材を有さず、(負極又は正極)活物質層だけで形成されているシートであってもよい。この電極シートは、通常、集電体上に活物質層を積層した構成のシートである。本発明の電極シートは保護層(剥離シート)、コート層等の他の層を有してもよい。
本発明の電極シートは、非水二次電池の負極活物質層又は正極活物質層を構成する材料として好適に用いることができる。
【0081】
[電極シートの製造方法]
本発明の電極シートは、本発明の電極用組成物を用いて活物質層を形成することにより得ることができる。例えば、集電体等を基材として、その上(他の層を介していてもよい)に本発明の電極用組成物を塗布して塗膜を形成し、これを乾燥して、基材上に活物質層(塗布乾燥層)を有する電極シートを得ることができる。
【0082】
[非水二次電池]
本発明において非水二次電池とは、充放電により非水媒体を介して正負極間をイオンが通過し、正負極においてエネルギーを貯蔵、放出するデバイス全般を意味する。すなわち、電池とキャパシタ(リチウムイオンキャパシタ)の両方を包含する意味である。エネルギー貯蔵量の観点から、本発明の非水二次電池は電池用途に用いること(キャパシタでないこと)が好ましい。
本発明の非水二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配されたセパレータとを含む構成を有する。無機固体電解質を用いる全固体二次電池では、上記セパレータは無機固体電解質層とすることができる。
正極は、正極集電体と、この正極集電体に接する正極活物質層とを有し、負極は、負極集電体と、この負極集電体に接する負極活物質層とを有する。本発明の非水二次電池は、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の少なくとも1つの層が、本発明の電極用組成物を用いて構成されている。
【0083】
図1は、一般的な非水二次電池10の積層構造を、電池として作動させる際の作動電極も含めて、模式化して示す断面図である。非水二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、セパレータ3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する積層構造を有している。
非水二次電池10が非水電解液二次電池である場合、負極活物質層と正極活物質層との間は非水電解液(図示せず)で満たされ、かつセパレータ3で分断されている。この場合、セパレータ3は空孔を有し、通常の電池の使用状態では電解液及びイオンを透過しながら正負極間を絶縁する正負極分離膜として機能する。
非水二次電池10が全固体二次電池である場合、負極活物質層と正極活物質層との間は固体電解質層3で分断されている。
このような構造により、例えばリチウムイオン二次電池であれば、充電時には外部回路を通って負極側に電子(e)が供給され、同時に電解液を介して正極からリチウムイオン(Li)が移動してきて負極に蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が電解液又は固体電解質層を介して正極側に戻され、作動部位6には電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
本発明において、負極集電体1と負極活物質層2とを合わせて負極と称し、正極活物質層4と正極集電体5とを合わせて正極と称している。
【0084】
本発明の非水二次電池に用いる各材料、非水電解液、固体電解質、部材等は、本発明のバインダー組成物ないし電極用組成物を用いて特定の層を形成すること以外は特に制限されない。これらの材料、部材等は、通常の非水二次電池に用いられるものを適宜に適用することができる。また、本発明の非水二次電池の作製方法についても、本発明のバインダー組成物ないし電極用組成物を用いて特定の層を形成すること以外は、電極シートの製造を介する通常の方法を適宜に採用することができる。例えば、特開2016-201308号公報、特開2005-108835号公報、特開2012-185938号公報、等を適宜に参照することができる。
非水電解液の好ましい形態について、より詳しく説明する。
【0085】
(電解質)
非水電解液に用いる電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属イオンの塩が好ましい。使用する金属イオンの塩は非水電解液の使用目的により適宜選択される。例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、非水電解液二次電池などに使用される場合には、出力の観点からリチウム塩が好ましい。本発明の非水電解液をリチウムイオン二次電池用非水電解液として用いる場合には、金属イオンの塩としてリチウム塩を選択すればよい。リチウム塩としては、リチウムイオン二次電池用非水電解液の電解質に通常用いられるリチウム塩が好ましく、例えば、以下に述べるものが好ましい。
【0086】
(L-1)無機リチウム塩:LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩、LiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩、LiAlCl等の無機塩化物塩等
【0087】
(L-2)含フッ素有機リチウム塩:LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO)(CF9SO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩、LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩、Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF5(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のパーフルオロアルキルフッ化リン酸塩等
【0088】
(L-3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等
【0089】
これらのなかで、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、Li(Rf1SO)、LiN(Rf1SO、LiN(FSO、及びLiN(Rf1SO)(Rf2SO)が好ましく、LiPF、LiBF、LiN(Rf1SO、LiN(FSOおよびLiN(Rf1SO)(Rf2SO)などのリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、Rf1、Rf2はそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
なお、非水電解液に用いる電解質は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
【0090】
非水電解液における電解質(好ましくは周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンもしくはその金属塩)の塩濃度は非水電解液の使用目的により適宜選択されるが、一般的には非水電解液全質量中10質量%~50質量%であり、さらに好ましくは15質量%~30質量%である。モル濃度としては0.5M~1.5Mが好ましい。なお、イオンの濃度として評価するときには、その好適に適用される金属との塩換算で算定すればよい。
【0091】
(非水溶媒)
本発明の非水電解液は、非水溶媒を含有する。
本発明に用いられる非水溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、なかでも炭素数が2~10の非プロトン性有機溶媒が好ましい。
このような非水溶媒としては、鎖状もしくは環状のカーボネート化合物、ラクトン化合物、鎖状もしくは環状のエーテル化合物、エステル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、オキサゾリジノン化合物、ニトロ化合物、鎖状または環状のスルホンもしくはスルホキシド化合物、リン酸エステルが挙げられる。
なお、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合またはカーボネート結合を有する化合物が好ましい。これらの化合物は置換基を有していてもよく、例えば上述の置換基Tが挙げられる。
【0092】
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、フッ化エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、N-メチルオキサゾリジノン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、リン酸トリメチル、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルスルホキシドリン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)とジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。このような組み合わせの混合溶媒とすることで、電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上する。
なお、本発明に用いられる非水溶媒は、これらに限定されるものではない。
【0093】
本発明の非水二次電池は、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどの電子機器に搭載することができる。また、民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などに搭載することができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0094】
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【実施例0095】
<ポリマーB-1を含むバインダー組成物の調製>
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、蒸留水260.0gを加えた。流速200mL/分にて窒素ガスを60分間導入した後に、75℃に昇温した。別容器にて調製した液(アクリル酸(富士フイルム和光純薬社製)6.0g、ヒドロキシエチルアクリレート(富士フイルム和光純薬社製)48.0g、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート(東京化成社製、上記式a-3で表される繰り返し単位を与えるモノマー)6.0g、蒸留水80.0g、VA-057(商品名:富士フイルム和光純薬社製)0.46gを撹拌して混合した液)を1時間かけて滴下した。滴下完了後、75℃で3時間撹拌を続けた。その後氷浴で冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬社製)5.6g加えた。その後蒸留水240.0gを加え、バインダーB-1の水溶液を得た。固形分濃度は10.0%、重量平均分子量は243000であった。ポリマーの中和度は80モル%である。
なお、下表中のモノマーの使用量(質量%)は、全モノマーの使用量を100質量%としたときの各モノマーの割合である。また、構成成分(a)のカラムには、上記した構成成分そのものの符号(「a-1」等)を記載しているが、その質量%は当該構成成分を導くモノマーの使用量を示すものである。
【0096】
<ポリマーB-2~B-14を含むバインダー組成物の調製>
表1に示される構成成分(a)を導くモノマー(上記式a-1又はa-3で表される)、中和剤、別のモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(分子量約2000)、アクリル酸4-ヒドロキシブチル)を使用し、ポリマーB-1と同様にしてポリマーB-2~B-14をバインダー成分とする各水溶液(バインダー組成物)を得た。いずれの水溶液も固形分濃度は10.0%であった。なお、ポリマーの中和度はいずれも80モル%である。
【0097】
ポリマーB-1~B-14の構造を下記に示す。
【化7】
【0098】
(重量平均分子量の測定)
ポリマーB-1~B-8、B-10、及びB-12~B-14の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリアクリル酸ナトリウム換算の重量平均分子量であり、下記条件で測定した値である。
測定器:HLC-8220GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TOSOH TSKgel 5000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G4000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G2500PWXL(商品名、東ソー社製)をつなげた。
キャリア:200mM 硝酸ナトリウム水溶液
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/分
試料濃度:0.2%
検出器:RI(屈折率)検出器
【0099】
ポリマーB-9及びB-11の重量平均分子量(Mw)を、下記条件で静的光散乱により測定した。
測定器:DLS-8000(商品名、大塚電子社製)
測定濃度:0.25、0.50、0.75、1.00mg/ml
希釈液:0.1M NaCl水溶液
レーザー波長:633nm
ピンホール:PH1=Open、PH2=Slit
測定角度:60、70、80、90、100、110、120、130度
解析法:Zimm平方根プロットより、分子量を測定した。解析に必要なdn/dcはAbbe屈折率計で実測した。
【0100】
(ガラス転移温度の決定)
上述した方法でポリマーの構成成分のTgを決定した。
【0101】
[試験例1]模擬電解液に対する膨潤率の評価
表面疎水化PET(NP75C、商品名、パナック社製)シートの上に上記で調製した各バインダー組成物5gを載せ、50℃で6時間乾燥した後、疎水化PETから各バインダー膜を剥離した。得られた各バインダー膜を150℃、真空で6時間乾燥した。乾燥後の各バインダー膜をガラス瓶中に0.10g秤量し、そこに質量比でエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2で混合した溶媒(模擬電解液)1.90gを加え、60℃で24時間加熱した。加熱後、各バインダー膜を取り出し質量(Ws)を計った。各バインダー膜を150℃の真空で5時間乾燥した後、再度質量(Wd)を計った。得られたWsとWdの値を下記式に当てはめ、膨潤率を算出した。結果を表1に示す。
膨潤度(%)=[(Ws-Wd)/Wd]×100
【0102】
【表1】
【0103】
[試験例2]固体粒子の分散性の評価
60mLの軟膏容器(馬野化学社製)にアセチレンブラック(商品名:デンカブラック、デンカ社製、導電助剤)0.30g、各バインダー水溶液2.50g(固形分量0.25g)を加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて2000rpmで10分間分散した。分散した液に蒸留水2.5gを加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて、2000rpmで3分間分散した。分散した液に蒸留水2.5gを加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて、2000rpmで3分間分散した。得られた液3.2gを60mLの軟膏容器(馬野化学社製)に加え、更に蒸留水7.2gを加え、2000rpmで3分間分散した。得られた液0.1gと、水14.5gを30mLサンプル瓶に加え、希釈した。希釈した液をELSZ-1000S(商品名:大塚電子社製)で散乱強度平均粒径を測定した。上記測定を5回繰り返し、平均値を、下記評価ランクを基に評価した。結果を表2に示す。
-分散性の評価ランク-
6: 1.9μm未満
5: 1.9μm以上、2.2μm未満
4: 2.2μm以上、2.7μm未満
3: 2.7μm以上、3.3μm未満
2: 3.3μm以上、4.0μm未満
1: 4.0μm以上
【0104】
[電極シートの調製]
60mLの軟膏容器(馬野化学社製)に一酸化ケイ素(粒径:5μm、大阪チタニウム社製)1.35g、黒鉛(商品名:MAG-D、日立化成社製)3.15g、アセチレンブラック(商品名:デンカブラック、デンカ社製)0.25g、各バインダー組成物2.50g(固形分量0.25g)、蒸留水1.6gを加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて2000rpmで10分間分散した。分散した液に蒸留水を1.3g加え、泡取り練太郎(THINKY社製)を用いて2000rpmで10分間分散した。
得られた各電極(負極)用組成物(一酸化ケイ素27%、黒鉛63%、アセチレンブラック5%、バインダー5%を含む)を厚み20μmの銅箔上にアプリケーターにより塗布し、80℃で1時間乾燥させた。その後、プレス機を用いて加圧したのちに150℃の真空で6時間乾燥し、負極活物質層の厚さが25μmの各電極(負極)シートを得た。
【0105】
[試験例3]結着性の評価
幅10mm、長さ50mmに切り出した各電極シート全体に粘着テープを貼り、90°の角度で100mm/分で長さ方向に引き剥がした際の平均応力を測定した。上記測定を8回繰り返し、平均値を下記評価ランクに基づいて評価した。結果を表2に示す。
-結着性の評価ランク-
6: 0.6N以上
5: 0.4N以上、0.6N未満
4: 0.2N以上、0.4N未満
3: 0.1N以上、0.2N未満
2: 0.05N以上、0.1N未満
1: 0.05N未満
【0106】
[非水二次電池(2032型コイン電池)の作製]
上記各電極シートを直径13.0mmの円板状に切り出し、負極として用いた。リチウム箔(厚み50μm、14.5mmφ)、ポリプロピレン製セパレータ(厚み25μm、16.0mmφ)、の順番に重ね1M LiPFのエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(体積比1対2)電解液を200μLセパレータにしみこませた。セパレータの上に更に電解液200μLを加えて、負極を活物質層面がセパレータに接するように重ねた。その後、2032型コインケースをかしめ、各コイン電池(Li箔-セパレータ-負極活物質層-銅箔からなる積層体)を作製した。
【0107】
[試験例4]抵抗の評価
各コイン電池の放電容量維持率を、充放電評価装置:TOSCAT-3000(商品名、東洋システム社製)により測定した。充電は、Cレート0.2C(5時間で満充電になる速度)で電池電圧が0.02Vに達するまで行った。放電は、Cレート0.2Cで電池電圧が1.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして3サイクル充放電を繰り返して、各コイン電池を初期化した。なお、負極のハーフセルであるため、充電時に電圧が下がり、放電時に電圧が上昇する。
初期化後、Cレート0.2Cで電池電圧が0.02Vに達するまで行い、放電を2Cで1.5Vに達するまで行った。この際の放電容量を、初期化時の3サイクル目の放電容量を100%としたときの放電容量(放電容量維持率)と比較し、下記評価ランクに当てはめ抵抗を評価した。放電容量維持率が小さいほど、抵抗が高いことを示す。結果を表2に示す。
-放電容量維持率(抵抗)の評価ランク-
6: 96%以上
5: 94%以上、96%未満
4: 92%以上、94%未満
3: 87%以上、92%未満
2: 80%以上、87%未満
1: 80%未満
【0108】
[試験例5]サイクル特性の評価
各コイン電池の放電容量維持率を、充放電評価装置:TOSCAT-3000(商品名、東洋システム社製)により測定した。充電は、Cレート0.2C(5時間で満充電になる速度)で電池電圧が0.02Vに達するまで行った。放電は、Cレート0.2Cで電池電圧が1.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして3サイクル充放電を繰り返して、各コイン電池を初期化した。
初期化後、充電を0.5Cで0.02Vに達するまで行った。放電を0.5Cで1.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回を充放電1サイクルとして、50サイクル充放電を繰り返すことでサイクル特性の評価を行った。初期化後1サイクル目の放電容量(初期放電容量)を100%としたとき、50サイクル目の放電容量(放電容量維持率)初期放電容量に対する放電容量)を測定し、下記評価ランクに当てはめサイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
-放電容量維持率(サイクル特性)の評価ランク-
6: 92%以上
5: 87%以上、92%未満
4: 80%以上、87%未満
3: 70%以上、80%未満
2: 50%以上、70%未満
1: 50%未満
【0109】
[比較例1及び2]
バインダー成分として、比較例1では特開2015-18776号公報の実施例1に記載のポリマーBC-1(メタクリル酸/アクリル酸エチル/1,6-ヘキサンジオールアクリレート共重合体)を、比較例2では特開2018-6334号公報の製造例3に記載のポリマーBC-2(アクリルアミド/N-メチロールアクリルアミド/アクリルアミドt-ブチルスルホン酸/メタクリルスルホン酸ナトリウム/アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリロニトリル共重合体)を使用してバインダー組成物(固形分濃度10%)を調製し、各コイン電池BC-1、BC-2を作製したこと以外は、上記と同様にして結着性、抵抗、及びサイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
酸性基を有しているが、ポリマー側鎖に本発明で規定するベタイン構造を含む構成成分を有していないポリマーBC-1及びBC-2を負極活物質層のバインダーとして用いた各電極シートは、結着性をある程度高めることがでるものの、固体粒子の分散性は低く、得られる電池の抵抗は高く、サイクル特性にも劣る結果となった。つまり、固体粒子の分散性、結着性、電池抵抗、サイクル特性のすべてを十分な特性へと導くことができなかった。
一方、本発明で規定するベタイン構造を含む構成成分を有するポリマーB-1~B-14を負極活物質層のバインダーとして用いた各電極シートは、いずれも固体粒子の分散性、結着性に優れ、得られる電池の抵抗は十分に低く、サイクル寿命も十分に長期化されることがわかった。
【符号の説明】
【0112】
10 非水電解質二次電池
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 セパレータ
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位(電球)
図1