(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106778
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】応力測定装置及びその操作用具
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20230726BHJP
G01L 1/04 20060101ALI20230726BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G01L1/00 D
G01L1/04
G01L5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007708
(22)【出願日】2022-01-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月26日に第31回トンネル工学研究発表会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】595005905
【氏名又は名称】株式会社エーティック
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 奈央
(72)【発明者】
【氏名】村山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】福田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】児玉 淳一
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB09
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】正確に応力を計測することのできる応力測装置を提供することを目的とする。
【解決手段】応力測定装置は、細長形状を有する第1筐体と、第1筐体の長手方向の第1端部の側に配置され第1歪みゲージを含む少なくとも1つの第1センサと、第1筐体の第1端部とは反対側の第2端部の側に配置され第2歪みゲージを含む少なくとも1つの第2センサと、第1筐体に連結される第2筐体とを含む。第1センサは、第1筐体の長手方向と平行な方向に延伸し第1歪みゲージが取り付けられた弾性板と、弾性板に連結された接触ピンと、弾性板と同じ方向に伸び、弾性板が取り付けられるセンサ支持部材とを有する。センサ支持部材は、後端が回転可能な継手で第1筐体に連結され、先端が第1筐体の断面中心方向に変位可能に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状を有する第1筐体と、
前記第1筐体の長手方向の第1端部の側に配置され第1歪みゲージを含む少なくとも1つの第1センサと、
前記第1筐体の前記第1端部とは反対側の第2端部の側に配置され第2歪みゲージを含む少なくとも1つの第2センサと、
前記第1筐体に連結される第2筐体と、を含み、
前記第1センサは、
前記第1筐体の長手方向と平行な方向に延伸し前記第1歪みゲージが取り付けられた弾性板と、
前記弾性板に連結された接触ピンと、
前記弾性板と同じ方向に伸び、前記弾性板が取り付けられるセンサ支持部材と、を有し、
前記センサ支持部材は、後端が回転可能な継手で前記第1筐体に連結され、先端が前記第1筐体の断面中心方向に変位可能に設けられている
ことを特徴とする応力測定装置。
【請求項2】
前記センサ支持部材の先端部分と前記第1筐体との間に間隙を有し、前記間隙に、前記先端の前記断面中心方向への変位に対して反力を作用する弾性体が設けられている、請求項1に記載の応力測定装置。
【請求項3】
前記第1筐体の第1端部側に、前記センサ支持部材の先端の外側への変位の範囲を規制するストッパが着脱可能に設けられている、請求項2に記載の応力測定装置。
【請求項4】
前記センサ支持部材の先端にテーパー部を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の応力測定装置。
【請求項5】
前記センサ支持部材は、前記先端と前記後端との間に長手方向に延びるスリットを有し、前記接触ピンが前記スリットに沿って一軸方向に変位可能に設けられている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の応力測定装置。
【請求項6】
前記弾性板が湾曲部を有し、前記第1歪みゲージが前記湾曲部に設けられている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の応力測定装置。
【請求項7】
前記第1センサが、測定孔の孔長方向の変位を測定し、前記第2センサが、測定孔の孔径方向の変位を測定する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の応力測定装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1センサが複数の第1センサからなり、前記複数の第1センサが前記第1筐体の周囲を囲むように配置され、前記第1筐体の前記断端部から外側に伸びる把持棒を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の応力測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の応力測定装置を把持して扱う操作用具であって、
前記第1筐体に配置された前記複数の第1センサの前記センサ支持部材の先端に嵌合し、開口部を有するキャップと、
前記把持棒を把持する把持器具と、を有し、
前記把持棒が前記開口部から挿通されて前記把持器具に達するように、前記キャップと把持器具とが隣合わせで配置されている、
ことを特徴とする応力測定装置の操作用具。
【請求項10】
前記キャップの前記センサ支持部材の先端に嵌合する部分にテーパー面を有する、請求項9に記載の応力測定装置の操作用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は応力解放法を用いた応力測定装置の構造、応力測定装置を扱う操作用具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルを設計する際には数値解析的な手法が用いられる。数値解析を行うに当たっては、地山の初期応力状態が解析結果に重大な影響を与える。そのため、地山の初期応力状態を正確に捉えることが重要である。地山の応力を測定する方式の一つとしてオーバーコアリング法が知られている。オーバーコアリング法では、地山に形成した測定孔(「ボーリング孔」とも呼ばれる。)に応力を測定する装置を挿入し、さらに測定孔の外周を削孔することで生じる測定孔の変形を測定することで初期応力状態の評価が行われている。
【0003】
測定孔の変形量を測定する装置としては、例えば、長尺状の本体部と、本体部から突き出るように設けられた測定用リング部材と、この測定用リング部材を前後から挟むように本体部の前後に設けられた支持用リング部材と、本体部の先端側に設けられた第1孔内支持部と、本体部の基端側に設けられた第2孔内支持部と、本体部の各孔内支持部の間に設けられた計測部とを備えた応力測定装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される応力測定装置は、測定孔の孔径変位を測定するための測定用リング部材が外側に大きく突出した構造を有する。しかし、測定用リング部材が大きく突出していると、応力測定装置を測定孔に挿入する際に測定用のリング部材が内壁面を摺動するため、測定前から歪みゲージに孔長方向の歪みがかかることが問題となる。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明の一実施形態は、正確に応力を計測することのできる応力測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る応力測定装置は、細長形状を有する第1筐体と、第1筐体の長手方向の第1端部の側に配置され第1歪みゲージを含む少なくとも1つの第1センサと、第1筐体の第1端部とは反対側の第2端部の側に配置され第2歪みゲージを含む少なくとも1つの第2センサと、第1筐体に連結される第2筐体とを含む。第1センサは、第1筐体の長手方向と平行な方向に延伸し第1歪みゲージが取り付けられた弾性板と、弾性板に連結された接触ピンと、弾性板と同じ方向に伸び、弾性板が取り付けられるセンサ支持部材とを有する。センサ支持部材は、後端が回転可能な継手で第1筐体に連結され、先端が第1筐体の断面中心方向に変位可能に設けられている。
【0008】
本発明の一実施形態において、センサ支持部材の先端部分と第1筐体との間に間隙を有し、間隙に先端の断面中心方向への変位に対して反力を作用する弾性体が設けられていてもよい。第1筐体の第1端部側に、センサ支持部材の先端の外側への変位の範囲を規制するストッパが着脱可能に設けられていてもよい。センサ支持部材の先端にテーパー部を有していてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態において、第1センサのセンサ支持部材は、先端と後端との間に長手方向に延びるスリットを有し、接触ピンがスリットに沿って一軸方向に変位可能に設けられていることが好ましい。第1センサの弾性板が湾曲部を有し、第1歪みゲージが湾曲部に設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態において、第1センサが、測定孔の孔径方向の変位を測定し、第2センサが、測定孔の孔長方向の変位を測定するように設けられていてもよい。少なくとも1つの第1センサが複数の第1センサからなり、複数の第1センサが第1筐体の周囲を囲むように配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る応力測定装置を把持して扱う操作用具は、第1筐体に配置された複数の第1センサのセンサ支持部材の先端に嵌合し、開口部を有するキャップと、応力測定装置の第1筐体に設けられた把持棒を把持する把持器具とを有し、把持棒が開口部から挿通されて把持器具に達するようにキャップと把持器具とが隣合わせで配置されている。
【0012】
本発明の一実施形態において、キャップのセンサ支持部材の先端に嵌合する部分がテーパー形状を有していてもよい。キャップは、把持器具に伸びる把手部を有していてもよい。操作用具は、把持器具を囲む筐体を有し、キャップと筐体が一体化されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態に係る応力測定装置によれば、測定孔の孔長方向の歪みを計測するセンサを、蝶番で本体に連結し、内壁面に接触する接触ピンを挿入時に沈み込む構成とすることで、本体を測定孔に挿入する際に歪みが生じないないようにすることができ、測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る応力測定装置の構成を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る応力測定装置の第1センサ部の構造を示し、(A)はその断面構造、(B)は第1センサの平面図、(C)はA1-A2間に対応する断面構造、(D)はB1-B2間に対応する断面構造を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る応力測定装置の第1センサ部の構造を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る応力測定装置の第2センサ部の構造を示し、(A)はその断面構造、(B)はC1-C2間に対応する断面構造を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る応力測定装置を扱う操作用具の構造を示し、(A)はその側面構造、(B)はその正面構造、(C)はキャップの側面構造、(D)は筐体の側面構造、(E)は把持器具の側面構造を示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係る応力測定装置を測定孔に挿入するときの段取りを説明する図であり、(A)は挿入前の状態、(B)は挿入中の状態、(C)は挿入後の状態を示す。
【
図7】本発明の一実施形態に係る応力測定装置を測定孔に挿入した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の長さ、幅、高さ、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA、B、又はa、bなどを付した符号)を付して詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る応力測定装置100の構成を示す。本実施形態に係る応力測定装置100は、オーバーコアリング法による初期応力の評価に用いることができ、ボーリングで形成された測定孔において応力解放に伴う孔径方向及び孔長方向の変位量を測定することができる。応力測定装置100は、測定孔の孔長方向の変位量を測定する第1センサ部1001と測定孔の孔径方向の変位量を測定する第2センサ部1002とを含む。応力測定装置100は筒形状の外観形状を有し、測定孔の孔径方向及び孔長方向はそれぞれ、応力測定装置100の軸径及び軸長方向に略一致するため、応力測定装置100の軸径方向の変位量は測定孔の孔径方向の変位量に相当し、応力測定装置100の軸長方向の変位量は測定孔の孔長方向の変位量に相当する。応力測定装置100は、さらに第1センサ部1001及び第2センサ部1002で測定されたデータを収集するデータロガー124を含む。
【0017】
図1に示すように、応力測定装置100は、第1筐体102と第2筐体104とから構成される。第1筐体102及び第2筐体104は測定孔に挿入可能なように縦長であり、長手方向に直列に配置される。第1筐体102及び第2筐体104は、測定孔の中で位置を安定化させるために円筒状の形状を有していることが好ましい。第1筐体102及び第2筐体104は個別の筐体であり、自在継手122によって連結されている。第1筐体102には第1センサ部1001及び第2センサ部1002が設けられ、第2筐体104にはデータロガー124、バッテリ126などが収納されている。第1センサ部1001には第1センサ106が設けられ、第2センサ部1002には第2センサ108が設けられる。
【0018】
応力測定装置100は、測定孔に対し、
図1に示すX1方向に挿入され、X2方向に抜き出される。すなわち、応力測定装置100は、第2筐体104を先頭にして測定孔に挿入され、それに続いて第1筐体102が挿入される。第1筐体102は、ロッド1023と、第1筐体102の第1端部R1の側に設けられた第1支持部材1021と、第2端部L1の側に設けられた第2支持部材1022とを含む。ロッド1023は、例えば、材軸方向に直線状に延びる筒状又は棒状の部材で構成される。また、第1筐体102の第1端部R1の側には、応力測定装置100の軸長方向に沿って外側に突出する把持棒105が設けられる。
【0019】
第1支持部材1021には第1センサ106が取り付けられ、第2支持部材1022には第2センサ108が取り付けられる。第1センサ106は、第1弾性板114に第1歪みゲージ110が取り付けられ、接触ピン118が連結される構造を有する。第2センサ108は、第2弾性板116に第2歪みゲージ112及び接触ローラ120が取り付けられる構造を有する。接触ピン118及び接触ローラ120は、第1筐体102の外側に突出するように配置され、応力測定装置100が測定孔の内部に配置されたとき内壁内に接する構造を有する。
【0020】
第2筐体104には、データロガー124、バッテリ126などが収納されている。データロガー124は、図示されない配線によって第1歪みゲージ110及び第2歪みゲージ112と接続される。また、データロガー124は、無線によって第1歪みゲージ110及び第2歪みゲージ112と接続されていてもよい。データロガー124は、バッテリ126から電力が供給されることにより有線又は無線による遠隔操作を必要とせずにデータの収集をすることができる。すなわち、応力測定装置100は測定孔の中で単独で自立的に動作することができる。
【0021】
第2筐体104には触接ピン130が設けられる。触接ピン130は、第2筐体104の第1端部R2の側(第1筐体102と連結される側)に設けられた第1触接ピン1301と、第1端部R2とは反対側の第2端部L2に設けられた第2触接ピン1302とが含まれてもよい。第1触接ピン1301及び第2触接ピン1302は、第2筐体104の外周に沿って複数箇所に設けられることが好ましい。第1触接ピン1301及び第2触接ピン1302は、第2筐体104から突き出るように設けられる。第1触接ピン1301及び第2触接ピン1302は弾性を有し、第2筐体104から突き出る高さは適宜調整することができる。
【0022】
第1筐体102は、接触ピン118及び接触ローラ120が外側に突き出ていることにより、第1筐体102の胴体部分が測定孔の内壁面に直接的に接触しないようにされている。第2筐体104には、弾性を有する触接ピン130(第1触接ピン1301、第2触接ピン1302)を設けることで、同様に胴体部分が測定孔の内壁面に直接的に接触しないようにされている。第2筐体104を測定孔内に設置したとき、触接ピン130(第1触接ピン1301、第2触接ピン1302)を内壁面の2か所で接触させることが可能であり、確実に応力測定装置100を固定させることができる。第1筐体102と第2筐体104とが自在継手122で連結され、第1筐体102においては接触ピン118及び接触ローラ120が、第2筐体104においては弾性を有する触接ピン130(第1触接ピン1301、第2触接ピン1302)が設けられることで、それぞれの筐体が測定孔の内壁面を直接摺動しないようにすることができ、第1筐体102と第2筐体104とが自在継手122で連結されていることで応力測定装置100を測定孔に挿入する際に生じる孔径方向に発生するぶれを吸収し、応力測定装置100の直進性を高めることができる。
【0023】
なお、第1筐体102は、
図1に示される構造に限定されず、応力測定装置100の挿入方向X1に沿って第1センサ部1001及び第2センサ部1102を配置できるものであれば異なる形状を有していてもよい。例えば、ロッド1023に相当する部材が、第1支持部材1021及び第2支持部材1022の機能を兼ねる形状を有していてもよい。
【0024】
図2(A)は第1センサ部1001の側面図を示す。第1センサ部1001には第1センサ106が設けられる。
図2(A)は、第1筐体102を構成するロッド1023の一部、及び第1支持部材1021、並びに第1センサ106の構造を示す。
図2(B)は、第1センサ106の平面図を示す。また、
図2(A)に示す、A1-A2間に対応する断面構造を
図2(C)に示し、B1-B2構造に対応する断面構造を
図2(D)に示す。
【0025】
図2(A)に示すように、第1支持部材1021はロッド1023に取り付けられる。第1支持部材1021はロッド1023の外径より大きい外径を有し、第1センサ106が取り付けられる。第1センサ106は、第1歪みゲージ110、第1弾性板114、及び接触ピン118を含む。第1弾性板114はロッド1023の軸長方向と平行な方向に延伸する板状の部材である。第1弾性板114は軸長方向の一端と他端の間に平板状の部分が湾曲した湾曲部1141を有する。
【0026】
第1センサ106は、第1弾性板114が第1支持部材1021に直接取り付けられるのではなく、センサ支持部材132を介して第1支持部材1021に取り付けられる。第1弾性板114は、一端がセンサ支持部材132に固定され、湾曲部1141がセンサ支持部材132から突出するように設けられる。第1弾性板114の他端は、固定具1324に取り付けられる。固定具1324は、センサ支持部材132に摺動可能に取り付けられる部材であり、第1弾性板114の一端と他端の高さが水平になるようにするスペーサとしての機能を有する。固定具1324には接触ピン118が取り付けられる。すなわち、第1弾性板114には、固定具1324を介して接触ピン118が取り付けられる。固定具1324は、第1弾性板114に接触ピン118を連結し、接触ピン118の変位が第1弾性板114に伝達するようにする機能を有する。
【0027】
図2(B)に示すように、センサ支持部材132にはスリット1321が設けられる。スリット1321には接触ピン118が挿通され、下側から固定具1324が当てられる。接触ピン118がスリット1321を挿通する箇所ではセンサ支持部材132及び固定具1324が上下から締結具(ボルト)で挟まれている。接触ピン118の動きは、スリット1321及び締結具(ボルト)によって規制されている。接触ピン118は、スリット1321の長手方向には変位可能であるが、スリット1321の幅方向及びセンサ支持部材132の厚さ方向への変位が出来ないようにされている。
【0028】
応力測定装置100が測定孔に挿入されたとき、接触ピン118が測定孔の内壁面に当接する。接触ピン118の先端は先細りの形状を有していることが好ましい。第1センサ106がこのような形状の接触ピン118を有することで、測定孔の孔長方向の変位を正確に測定することが可能となる。
【0029】
第1センサ106は平面視で長方形状を有し、長手方向がロッド1023の軸長方向と平行な方向に向けて配置される。接触ピン118は、軸長方向と平行な方向に変位可能に設けられているので、第1センサ106は測定孔の孔長方向の変位を測定可能となる。
【0030】
第1センサ106は、接触ピン118が軸長方向に変位することによって第1弾性板114が軸長方向に変形し、第1歪みゲージ110の抵抗値が変化することで測定孔の孔長方向の変位を測定する。データロガー124は第1歪みゲージ110の電気抵抗の変化を電気的に検出し、歪みの時間変化を記録する。
【0031】
センサ支持部材132は、継手134(蝶番又は自在継手)を介して第1支持部材1021に取り付けられる。センサ支持部材132の先端(継手134が取り付けられる側とは反対側の端部)は、内側面が第1支持部材1021と間隙を有するように配置され、上部が庇状に突出したストッパ138が挿通される。ストッパ138は、第1支持部材1021の軸径方向と平行な方向に立てられている。センサ支持部材132と第1支持部材1021との間隙には弾性体136が介在するように設けられる。弾性体136は、例えば、バネである。センサ支持部材132は、先端が第1筐体102の外側へ大きく開かないようにストッパ138で規制され、内側へは弾性体136の反力を受けながら継手134を支点として先端が第1筐体102の中心方向へ沈み込むように変位する。
【0032】
センサ支持部材132の先端部分はテーパー形状に成形されたテーパー部1322を有する。後述されるように、応力測定装置100を測定孔に挿入する際に操作用具が用いられる。操作用具の先端にはセンサ支持部材132の先端に嵌め込まれるキャップが設けられている。センサ支持部材132にキャップが嵌め込まれると先端が第1筐体102の中心方向へ沈み込み、接触ピン118の高さを低くすることができ、第1歪みゲージ110に歪みが生じないようにして応力測定装置100を測定孔に挿入することができる。
【0033】
図2(C)に示すように、第1センサ106は、第1支持部材1021の周囲を囲むように複数個取り付けられる。第1センサ106の数に限定はないが、例えば、
図2(C)に示すように、第1支持部材1021の回りに90度の角度差をつけて4個設けられていてもよい。
図2(D)は、センサ支持部材132の先端部の断面形状を示す。先端部では、センサ支持部材132にストッパ138が挿通され、センサ支持部材132の先端の可動範囲が、ストッパ138と第1支持部材1021で形成される床面との間になるように規制されている。センサ支持部材132は、ストッパ138による押さえ込みと弾性体136の反発力によって振動で簡単に揺れ動かないようにされている。
【0034】
なお、
図3に示すように、ストッパ138を外すと、継手134を支点としてセンサ支持部材132を外側に大きく開くことができる。第1歪みゲージ110及び第1弾性板114はセンサ支持部材132の下側に設けられているので、センサ支持部材132が外側に開くことよって、これらの部材のメンテナンスが容易となる。
【0035】
第1センサ106は、接触ピン118が測定孔の内壁面に接触可能なように設けられる。そして、第1センサ部1001では、第1センサ106が、第1筐体102の外周に沿って複数個設けられることで、測定孔の孔長方向の変形を正確に測定することができる。
【0036】
図4(A)は第2センサ部1002の側面図を示し、
図4(B)は、
図4(A)に示すC1-C2間に対応する断面構造を示す。
図4(A)は、第1筐体102の構成として、ロッド1023及び第2支持部材1022と、第1支持部材1021の一部の構成を示す。第1筐体102の第2端部L1(ロッド1023の一端)には自在継手122が取り付けられる。自在継手122は第2筐体104に連結されている。
【0037】
図4(A)に示すように、第1筐体102の第2端部L1と、これに近接する第2筐体104の端部(第1端部R2側)との間には間隙G1が設けられる。第1筐体102と第2筐体104とは自在継手122で連結されるため、この連結部で屈曲可能とされているが、第1筐体102と第2筐体104が間隙G1を有するように近接して配置されることにより屈曲する範囲が規制される。間隙G1の範囲は適宜設定可能であるが、0.5mm~2mm、例えば1mmの間隔を有するように設けられる。上記で述べたように、第1筐体102と第2筐体104とが間隙G1を有して配置されることにより、応力測定装置100を測定孔に挿入及び引き抜く際に生じる測定孔の孔径方向に発生するぶれを吸収することができる。
【0038】
第2支持部材1022が第1筐体102の第2端部L1の側(別言すれば、ロッド1023の第2端部L1の側)に設けられる。第2支持部材1022はロッド1023に取り付けられる。また、第1支持部材1021が第1筐体102の第1端部R1の側に設けられる。
図4(A)に示すように、第1筐体102は、第1支持部材1021、第2支持部材1022、及びロッド1023が個別の部品で形成され組み立てられた構造を有していてもよい。また、図示されないが、第1筐体102は、第1支持部材1021、第2支持部材1022、及びロッド1023に相当する部分が一体成形された構造を有していてもよい。
【0039】
第2弾性板116が第2支持部材1022に取り付けられる。第2弾性板116は第2支持部材1022の外周部に取り付けられる。第2弾性板116の取り付け方法に限定はないが、例えば、ネジなどの締結具で留められていればよい。第2弾性板116はロッド1023の軸長方向と平行な方向に延伸する板状の部材で形成される。第2弾性板116は、一端が第2支持部材1022に固定され、他端が第1筐体102から離れた状態に取り付けられる。別言すれば、第2弾性板116は一端が固定端となり、他端が自由端となるように片持ち支持される状態で第2支持部材1022に取り付けられる。片持ち支持された第2弾性板116は、自由端がロッド1023の軸径方向に変位可能となっている。
【0040】
第2支持部材1022には第2歪みゲージ112が取り付けられる。第2歪みゲージ112は、第2弾性板116の固定端と自由端との間に取り付けられる。第2歪みゲージ112は、第2弾性板116の少なくとも一方の面に取り付けられ、好ましくは両方の面に取り付けられる。第2歪みゲージ112は、第2弾性板116の自由端が軸径方向に変位することに伴って変形し、抵抗値が変化する。データロガー124は第2歪みゲージ112の電気抵抗の変化を電気的に検出し、歪みの時間変化を記録する機能を有する。
【0041】
第2弾性板116の他端(自由端)には、接触ローラ120が取り付けられる。接触ローラ120は、ローラの転がり方向が応力測定装置100の軸長方向と平行になるように取り付けられる。
図4(A)及び
図4(B)に示すように、第2弾性板116に取り付けられる接触ローラ120は、第2支持部材1022から突出するように設けられる。接触ローラ120が第2支持部材1022から突出していることにより、応力測定装置100を測定孔に挿入したときに接触ローラ120が測定孔の内壁面に接触する。接触ローラ120が測定孔の内壁面に接触しても、軸長方向の変位に対してはローラの回転により摩擦がほとんど生じないので、第2弾性板116の軸長方向には変形しない。一方、接触ローラ120は、第2弾性板116の弾性力により測定孔の内壁面に押し付けられるので、測定孔の孔径方向の変形に追従し第2弾性板116を変形させることができる。
【0042】
図4(B)に示すように、第2歪みゲージ112及び接触ローラ120が取り付けられた第2弾性板116を含んで構成される第2センサ108は、第2支持部材1022の周囲を囲むように複数個取り付けられる。第2センサ108の数に限定はないが、例えば、
図4(B)に示すように、ロッド1023の回りに45度の角度差をつけて8個が設けられていてもよい。各方向に向けて取り付けられた接触ローラ120は、全て測定孔の内壁面に接触するように設けられる。このように各方向に向けて第2センサ108を設けることにより、測定孔の孔径方向の変位を正確に測定することができる。
【0043】
第1センサ106及び第2センサ108は、形状が異なるものの共通する部材が用いられる。第1弾性板114及び第2弾性板116は、例えば、板ばねが使用される。板ばねは、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル鋼、又はチタン合金のような金属を材質としていてもよいし、ゴム、プラスチック、又はセラミックのような非金属を材質としていてもよい。なお、第2弾性板116は、歪みゲージを取り付けるために板状の部材を用いることが好ましいが、歪みゲージとしてワイヤ状のもの(ワイヤストレインゲージ)を用いる場合にはピアノ線のような弾性を有する線材が用いられてもよい。
【0044】
第1歪みゲージ110及び第2歪みゲージ112は、例えば、薄い絶縁体上にジグザグ形状にレイアウトされた金属の抵抗体が形成された金属歪みゲージが用いられる。
【0045】
図1、
図2、及び
図4を参照して説明したように、第1センサ106は、接触ピン118が第1筐体102の第1端部R1側に配置されている。第2センサ108は、接触ローラ120が第2弾性板116の固定端より第1筐体102の第1端部R1側に配置されている。接触ピン118及び接触ローラ120がこのような配置を有することで、応力測定装置100を測定孔へスムーズに挿入することができる。そして、応力測定装置100を測定孔に挿入するときに、第1センサ106及び第2センサ108に軸長方向のストレス(歪み)が与えられないようにすることができ、地山の初期応力を正確に計測することができる。
【0046】
図5(A)及び
図5(B)は、応力測定装置100を測定孔に挿入するときに用いる操作用具200の構造の一例を示す。
図5(A)は操作用具200の側面構造を示し、
図5(B)はその正面構造を示す。
【0047】
操作用具200は、第1キャップ202、第2キャップ203、把持器具204、筐体206を含む。把持器具204は筐体206に収納され、把持器具204を挟むように第1キャップ202及び第2キャップ203が筐体206に取付られる。筐体206に取り付けられる2つのキャップのうち、第1キャップ202は応力測定装置100の側に取り付けられ、第2キャップ203はその反対側に取り付けられる。操作用具200は、応力測定装置100を測定孔に挿入するときに、第1筐体102の第1端部R1の側に取り付けられた把持棒105を把持して操作するために用いられる。
【0048】
図5(C)に示すように、第1キャップ202は第1開口部2021を有する。第1キャップ202は、外側から筐体206側(内側)に向けて孔径が小さくなる第1開口部2021を有する。すなわち、第1開口部2021の内面は、センサ支持部材132の先端部に設けられたテーパー部1322と嵌合するように第1テーパー面2022を有する。第1キャップ202は、応力測定装置100を測定孔に挿入するときに、把持棒105が挿通され、第1開口部2021の内側面にセンサ支持部材132のテーパー部1322が嵌められる。第1キャップ202の第1テーパー面2022を有する第1開口部2021がセンサ支持部材132の先端のテーパー部1322と嵌合することで、操作用具200を応力測定装置100に連結することができる。第2キャップ203は、第2開口部2031を有する。第2開口部2031は、筐体206側(内側)から外側に向けて孔径が小さくなる第2テーパー面2032を有する。第2キャップ203は、応力測定装置100を測定孔に挿入するときに、把持棒105が挿通される、このとき、第2開口部2031が第2テーパー面2032を有していることで、把持棒105を第2開口部2031の中央に誘導させることができる。すなわち、操作用具200が把持棒105の軸中心を掴むことができる。
図5(D)に示すように、筐体206は、例えば、筒形の形状を有し、一方の側から第1キャップ202が装着され、他方の側から第2キャップ203が装着される構造を有している。
【0049】
図5(E)に示すように、把持器具204は、中空構造を有する本体部2041と、本体部2041の中空部分に設けられた把持部2042とを有する。把持部2042は弾性材で形成され、例えば、空気圧の制御により把持部2042の膨らみを制御して、中空部分の断面積が変化するように構成されている。把持部2042は、例えば、ゴム材で形成される。把持器具204は筐体206の内部に固定される。把持器具204は、把持部2042の状態を制御することにより、応力測定装置100に取り付けられた把持棒105を掴み、また、離すことができる。操作用具200は、把持器具204を挟んで第1キャップ202及び第2キャップ203が配置される構造を有することで、第1センサ106の先端(すなわち、センサ支持部材132の先端)を押さえつつ、応力測定装置100の中心軸上で把持棒105を掴むことができる。
【0050】
なお、
図5(A)乃至(E)に示す操作用具200の構成は一例であり、図示される構造に限定されない。
【0051】
図6(A)乃至(C)は、応力測定装置100を測定孔300に挿入するときの、第1センサ部1001の状態の変化を示す。
図6(A)は、センサ支持部材132の先端に操作用具200を取り付ける前の状態を示す。
図6(A)に例示するように、操作用具200を取り付ける前の状態において第1センサ106は第1筐体102に水平に配置されている。操作用具200の方では把持器具204の把持部2042が開いた状態になっており、応力測定装置100を測定孔300に挿入するに当たって操作用具200が把持棒105に挿通される。
【0052】
図6(B)は、第1筐体102に操作用具200をセンサ支持部材132に取り付けて、応力測定装置100を測定孔300に挿入する段階を示す。
図2(A)乃至(D)を参照して説明したように、第1筐体102には、第1支持部材1021の外周に沿って複数の第1センサ106が設けられ、第1端部R1にセンサ支持部材132の先端が突き出るように配置されている。操作用具200の第1キャップ202は、第1開口部2021が第1テーパー面2022を有しており、この第1テーパー面2022とセンサ支持部材132の先端のテーパー部1322が嵌合するように操作用具200が取り付けられる。
【0053】
第1キャップ202をセンサ支持部材132の先端のテーパー部1322に嵌合するように取り付けることで、センサ支持部材132の先端が沈み込み、接触ピン118が測定孔300の内壁面に接触しない状態となる。これにより、接触ピン118が内壁面を摺動しない状態で応力測定装置100を測定孔300に挿入することができる。その結果、第1歪みゲージ110に、測定孔300の孔長方向(測定孔300の深さ方向)の歪みが生じないようにすることができる。
【0054】
このようにして操作用具200を第1筐体102に取り付けた後、把持器具204により把持棒105を把持する。例えば、把持器具204の本体部2041には、空気送入する管(図示していない)が接続されており、当該管を介して把持部2042に空気を送り込むことができ、空気圧を高めて把持部2042を膨らませることにより把持棒105を把持する。操作用具200は、図示されない挿入棒に連結されており、挿入棒を測定孔300に押し込むことにより、応力測定装置100が挿入される。操作用具200は第1キャップ202がセンサ支持部材132の先端に嵌合し、把持器具204によって把持棒105を把持した状態で第1筐体102に取り付けられるので、外れることなく安定した状態で応力測定装置100を測定孔300に挿入することができる。
【0055】
図6(C)は、応力測定装置100が測定孔300の測定位置に配置された段階を示す。応力測定装置100が測定孔300の測定位置に配置されると、操作用具200が取り外される。操作用具200は、把持器具204の把持部2042を開くことにより把持棒105を離すことができる。例えば、把持部2042の空気を抜く(又は空気圧を下げる)ことにより、掴んでいた把持棒105を離すことができる。挿入棒を引き抜くことにより操作用具200を第1筐体102から外すことができる。操作用具200を応力測定装置100から離すことにより、センサ支持部材132の先端が弾性体136の作用により持ち上がり、接触ピン118を測定孔300の内壁に接触させることができる。
【0056】
なお、操作用具200の第1キャップ202の第1テーパー面2022及びセンサ支持部材132の先端のテーパー部1322の一方又は両方の表面に、凹凸部を設けるか、又は表面を粗面化することが好ましい。この結果、第1テーパー面2022とセンサ支持部材132の先端において摩擦が生じるため、応力測定装置100を測定孔300に挿入する際に操作用具200から応力測定装置100がはずれることを防ぐことができる。
【0057】
図7は、応力測定装置100が測定孔300に挿入され、第1キャップ202が外された状態を示す。第1キャップ202が外れたことにより、第1センサ部1001では、接触ピン118が測定孔300の内壁面に接触した状態となる。第1センサ106は、応力測定装置100が測定位置に置かれ第1キャップ202が外されたとき、接触ピン118が弾性体136の反力で押し上げられ測定孔300の内壁に当接する。具体的には、継手134の位置を回転中心にしてセンサ支持部材132の先端が外側に開くように変位して、接触ピン118が測定孔300の内壁面に当接する。
図2(A)及び
図2(B)を参照して説明したように、接触ピン118はセンサ支持部材132に取り付けられ、スリット1321の方向にのみ変位可能とされているので、第1センサ106は測定孔300の孔径方向の変位の影響を受けずに孔長方向の変位を測定することができる。
【0058】
図6(A)乃至(C)では示されないが、応力測定装置100は、第2筐体104を先頭にして、第1筐体102が続くように測定孔300に挿入される。第2筐体104にはデータロガー124、バッテリ126が内蔵されていて重心がしっかりしているので、操作用具200を使って第1筐体102を押しながら測定孔300に挿入しても、応力測定装置100がブレないように挿入することができる。
【0059】
第1センサ106では、前述のように第1キャップ202によって接触ピン118の位置を低くすることができるので、応力測定装置100を測定孔300に挿入する際に接触ピン118が内壁面を擦らないようにすることができ、それにより第1歪みゲージ110に、測定孔300の孔長方向の歪みが生じないようにすることができる。
【0060】
第2センサ108側では、接触ローラ120が内側に押し込まれ、初期状態の位置から測定状態の位置へ変位する。第2弾性板116は弾性を有するので、接触ローラ120の変位に伴って撓んだ状態となる。このとき、接触ローラ120とロッド1023との間には、接触ローラ120がさらに内側に変位することが可能なように間隙が残されていることが好ましい。接触ローラ120が測定孔300の内壁面に接触していることにより、応力測定装置100を測定孔300に挿入する際、及び測定位置に配置された際にも孔長方向にかかる変位を接触ローラ120の回転で逃がすことができ、孔長方向の変位が第2弾性板116に作用しないようにすることができる。このような構成により、第2センサ108は、挿入時に生じる孔長方向の歪みの影響を受けずに、測定孔300の孔長方向の変位を測定することができる。また、第2センサ108は、孔長方向に生じる変位の影響を受けずに、測定孔300の孔径方向におけるプラスの変位及びマイナスの変位を正確に測定することができる。
【0061】
第1センサ106の接触ピン118、及び第2センサ108の接触ローラ120が、第1筐体102の周囲を囲むように複数個配置され、弾性力を伴って測定孔300の内壁面に当接することにより、第1筐体102は測定孔300の中心に配置される(センタリングされる)。第2筐体104は、弾性を有する触接ピン130(第1触接ピン1301、第2触接ピン1302)が周囲を囲むように複数個配置されている。この触接ピン130が測定孔300の内壁面に弾性力を伴って当接することにより、第2筐体104は測定孔300の中心に配置される(センタリングされる)。このように、第1筐体102及び第2筐体104が一方向に偏らず測定孔300の中心に配置されるため、応力測定装置100を測定孔300の中に安定した状態でスムーズに挿入することができる。また、応力測定装置100を測定孔300に挿入する際及び抜き出す際に測定孔300の中心軸と応力測定装置100と中心軸とを一致させることができ、測定精度を向上させることができる。
【0062】
本実施形態の応力測定装置100は、オーバーコアリング法を用いて地山の初期応力を測定することができる。本実施の形態の応力測定装置は、孔径変化法を用いて地山の初期応力を測定することができる。応力測定装置100は、地山を掘削して設けられた測定孔300に挿入し、その後測定孔の外周を掘削して応力を開放させた測定孔300の変位を測定する。測定後、応力測定装置100は測定孔300から抜き出され、測定されたデータをデータロガー124から読み出して地山の初期応力が算出される。
【0063】
図7には示されないが、オーバーコアリング法では応力測定装置100が測定孔300に挿入された後に、測定孔300の外周をボーリング削孔される。応力測定装置100は、ボーリング削孔に伴う測定孔300の孔長方向の変形を第1センサ106で検出し、孔径方向の変形を第2センサ108で検出する。前述のように、第1センサ106は、第1弾性板114が湾曲部を有し、接触ピン118が弾性体136の作用で内壁面に押し付けられていることにより、測定孔300の孔長方向の変形を測定することができる。第2センサ108は接触ローラ120が内壁面に接しているため測定孔300の孔長方向の変形を受け流し孔径方向の変形を精度よく測定することができる。第1センサ106及び第2センサ108は、第1筐体102の外周に沿って複数個設けられていることにより、測定孔300の孔径方向及び孔長方向の任意の方向の変位を測定することができる。
【0064】
データロガー124は、第1歪みゲージ110及び第2歪みゲージ112により測定された測定孔300の変位を所定間隔で時系列に記録する機能を有する。データロガー124に記録された測定孔300の変位は、応力測定装置100が測定孔300から抜き出された後に、コンピュータなどに読み出され、測定孔300の変位から地山の応力が算出される。第2筐体104にはバッテリ126が内蔵されているため、データロガー124を駆動するための電力を有線で供給する必要がなく、データロガー124は測定孔300の中で自立した状態でデータを収集することができる。
【0065】
図示されないが、第2筐体104にはカメラ及び照明が搭載され、カメラにより撮像された映像を見ながら応力測定装置100を測定孔に挿入および抜き出しする構成を有していてもよい。これにより、作業者の目視のみに頼ることなく、応力測定装置100の態勢や状態などを確認しながら円滑に挿入作業及び抜き出し作業を行うことができる。
【0066】
以上、説明したように、本発明の一実施形態に係る応力測定装置100によれば、測定孔300の孔長方向の変位を検出する第1センサ106の接触ピン118の先端の位置が、挿入時に操作用具200によって沈み込む構造を有することで、挿入時に生じる第1センサ106の孔長方向の歪みの影響を受けないようにすることができる。また、第2センサ108では、測定孔の内壁面に接触する接触ローラ120を設けることで、挿入孔への挿入時、及び測定時(オーバーコアリング時)に生じる孔長方向の変位を受け流し、孔径方向の変位を精度良く測定することができる。応力測定装置100がこのような構成を有することで、オーバーコアリング法によって地山の初期応力を正確に評価することができる。
【0067】
なお、本実施形態は地山の初期応力を測定する場合に基づいて説明したが、応力測定装置100は、既設のトンネル、地下空洞の背面地山、既設コンクリート構造物に対する応力測定に適用することもできる。
【符号の説明】
【0068】
100:応力測定装置、1001:第1センサ部、1002:第2センサ部、102:第1筐体、1021:第1支持部材、1022:第2支持部材、1023:ロッド、104:第2筐体、105:把持棒、106:第1センサ、108:第2センサ、110:第1歪みゲージ、112:第2歪みゲージ、114:第1弾性板、1141:湾曲部、116:第2弾性板、118:接触ピン、120:接触ローラ、122:自在継手、124:データロガー、126:バッテリ、130:触接ピン、1301:第1触接ピン、1302:第2触接ピン、132:センサ支持部材、1321:スリット、1322:テーパー部、1324:固定具、134:継手、136:弾性体、138:ストッパ、200:操作用具、202:第1キャップ、2021:第1開口部、2022:第1テーパー面、第2キャップ203、2031:第2開口部、2032:第2テーパー面、204:把持器具、2041:本体部、2042:把持部、206:筐体、300:測定孔