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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106879
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】基板洗浄方法および基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
H01L21/304 644C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007863
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】半田 直廉
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 聡美
(72)【発明者】
【氏名】西 智也
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA15
5F157AA70
5F157AA96
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC02
5F157AC25
5F157BA07
5F157BA14
5F157BB73
5F157BB79
5F157CB04
5F157CF06
5F157DB22
(57)【要約】
【課題】より洗浄力が高い基板洗浄方法および基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】基板の下面に薬液を供給する第1ステップと、その後、前記基板の下面に気泡含有液体を供給する第2ステップと、を備える基板洗浄方法が提供される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の下面に薬液を供給する第1ステップと、
その後、前記基板の下面に気泡含有液体を供給する第2ステップと、を備える基板洗浄方法。
【請求項2】
前記第1ステップによって、前記基板の下面に薬液の液膜が形成され、
前記第2ステップによって、前記液膜が前記気泡含有液体に置換される、請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記第2ステップの前に、前記気泡含有液体を生成するステップを備える、請求項1または2に記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記気泡含有液体を生成するステップでは、超音波によって洗浄液に気泡を発生させて前記気泡含有液体を生成する、請求項3に記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記第1ステップにおける薬液の供給流速より、前記第2ステップにおける気泡含有液体の供給流速が速い、請求項1乃至4のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記第1ステップでは、第1ノズルから薬液を供給し、
前記第2ステップでは、前記第1ノズルとは異なる第2ノズルから前記気泡含有液体を供給する、請求項1乃至5のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
前記第2ステップでは、単管ノズルから前記気泡含有液体を供給する、請求項1乃至6のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項8】
前記第2ステップでは、前記基板の下面の中心近傍と、前記基板の周縁部と、に前記気泡含有液体を供給する、請求項1乃至7のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
前記第2ステップでは、前記基板の下面に前記気泡含有液体および超音波洗浄液を供給する、請求項1乃至8のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
前記第2ステップでは、前記基板の下面に前記気泡含有液体および2流体を供給する、請求項1乃至8のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項11】
前記気泡含有液体は、気泡を含有した純水である、請求項1乃至10のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記気泡含有液体に含まれる気泡の径は、1μm以上500μm以下である、請求項1乃至11のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記気泡含有液体に含まれる気泡は、窒素、水素、オゾン、二酸化炭素および酸素の1以上の気泡である、請求項1乃至12のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
前記基板の上面には金属膜が形成されており、
前記気泡含有液体に含まれる気泡は、窒素および/または水素の気泡を含む、請求項13に記載の基板洗浄方法。
【請求項15】
前記第1ステップの前に、前記基板の下面をスクラブ洗浄するステップを備える、請求項1乃至14のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項16】
前記第1ステップでは、気泡を含有する薬液を供給する、請求項1乃至15のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項17】
基板を保持する基板保持部と、
保持された前記基板の下面に薬液を供給する第1ノズルと、
保持された前記基板の下面に気泡含有液体を供給する第2ノズルと、
前記第1ノズルが薬液を供給した後に前記第2ノズルが気泡含有液体を供給するよう制御を行う制御部と、を備える基板洗浄装置。
【請求項18】
前記第2ノズルは、
ガス供給部と、
液体供給部と、
前記ガス供給部からのガスと、前記液体供給部からの液体と、を混合して前記気泡含有液体を生成する気泡含有液体生成部と、
生成された気泡含有液体を前記基板の下面に噴射する単管ノズルと、を有する、請求項17に記載の基板洗浄装置。
【請求項19】
前記第2ノズルは、
ガス供給部と、
液体供給部と、
前記ガス供給部からのガスと、前記液体供給部からの液体と、を混合して前記気泡含有液体を生成する気泡含有液体生成部と、
生成された気泡含有液体が噴射される噴射孔が形成された筐体と、を有する、請求項18に記載の基板洗浄装置。
【請求項20】
前記筐体の上面は、前記噴射孔から斜め下方に延びる傾斜面を有する、請求項19に記載の基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄方法および基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、保持された基板の上下面にエッチング液を供給して化学的洗浄を行い、その後、純水を供給してエッチング液を除去する基板洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-176386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、より洗浄力が高い基板洗浄方法および基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、基板の下面に薬液を供給する第1ステップと、その後、前記基板の下面に気泡含有液体を供給する第2ステップと、を備える基板洗浄方法が提供される。
【0006】
前記第1ステップによって、前記基板の下面に薬液の液膜が形成され、前記第2ステップによって、前記液膜が前記気泡含有液体に置換されるのが望ましい。
【0007】
前記第2ステップの前に、前記気泡含有液体を生成するステップを備えてるのが望ましい。
【0008】
前記気泡含有液体を生成するステップでは、超音波によって洗浄液に気泡を発生させて前記気泡含有液体を生成するのが望ましい。
【0009】
前記第1ステップにおける薬液の供給流速より、前記第2ステップにおける気泡含有液体の供給流速が速いのが望ましい。
【0010】
前記第1ステップでは、第1ノズルから薬液を供給し、前記第2ステップでは、前記第1ノズルとは異なる第2ノズルから前記気泡含有液体を供給するのが望ましい。
【0011】
前記第2ステップでは、単管ノズルから前記気泡含有液体を供給するのが望ましい。
【0012】
前記第2ステップでは、前記基板の下面の中心近傍と、前記基板の周縁部と、に前記気泡含有液体を供給するのが望ましい。
【0013】
前記第2ステップでは、前記基板の下面に前記気泡含有液体および超音波洗浄液を供給するのが望ましい。
【0014】
前記第2ステップでは、前記基板の下面に前記気泡含有液体および2流体を供給するのが望ましい。
【0015】
前記気泡含有液体は、気泡を含有した純水であるのが望ましい。
【0016】
前記気泡含有液体に含まれる気泡の径は、1μm以上500μm以下であるのが望ましい。
【0017】
前記気泡含有液体に含まれる気泡は、窒素、水素、オゾン、二酸化炭素および酸素の1以上の気泡であるのが望ましい。
【0018】
前記基板の上面には金属膜が形成されており、前記気泡含有液体に含まれる気泡は、窒素および/または水素の気泡を含むのが望ましい。
【0019】
前記第1ステップの前に、前記基板の下面をスクラブ洗浄するステップを備えるのが望ましい。
前記第1ステップでは、気泡を含有する薬液を供給するのが望ましい。
【0020】
本発明の別の態様によれば、基板を保持する基板保持部と、保持された前記基板の下面に薬液を供給する第1ノズルと、保持された前記基板の下面に気泡含有液体を供給する第2ノズルと、前記第1ノズルが薬液を供給した後に前記第2ノズルが気泡含有液体を供給するよう制御を行う制御部と、を備える基板洗浄装置が提供される。
【0021】
前記第2ノズルは、ガス供給部と、液体供給部と、前記ガス供給部からのガスと、前記液体供給部からの液体と、を混合して前記気泡含有液体を生成する気泡含有液体生成部と、生成された気泡含有液体を前記基板の下面に噴射する単管ノズルと、を有するのが望ましい。
【0022】
前記第2ノズルは、ガス供給部と、液体供給部と、前記ガス供給部からのガスと、前記液体供給部からの液体と、を混合して前記気泡含有液体を生成する気泡含有液体生成部と、生成された気泡含有液体が噴射される噴射孔が形成された筐体と、を有するのが望ましい。
【0023】
前記筐体の上面は、前記噴射孔から斜め下方に延びる傾斜面を有するのが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
洗浄力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】従来の基板洗浄方法の一例を説明する図。
図1B】従来の基板洗浄方法の一例を説明する図。
図2A】本発明の一実施形態に係る基板洗浄方法の概要を説明する図。
図2B】本発明の一実施形態に係る基板洗浄方法の概要を説明する図。
図2C】本発明の一実施形態に係る基板洗浄方法の概要を説明する図。
図3】一実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図。
図4】純水供給ノズル5の一例を示す模式図。
図5A】純水供給ノズル5の別の例を示す模式図。
図5B】純水供給ノズル5の別の例を示す模式図。
図6A】別の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図。
図6B】また別の実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図。
図7】基板洗浄の手順を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
本発明は、主に基板の下面の洗浄に関する。まずは本発明の概要を説明する。
【0027】
図1Aおよび図1Bは、従来の基板洗浄方法の一例を説明する図である。まず、基板Wの上面をロールスポンジ21で、同下面をロールスポンジ22でスクラブ洗浄する(図1A)。なお、基板Wの上面とは、保持された状態で鉛直方向上向きの面(通常はデバイスが形成された面)である。また、基板Wの下面とは、保持された状態で鉛直方向下向きの面(通常はデバイスが形成されていない面)である。
【0028】
スクラブ洗浄が完了すると、ロールスポンジ21,22を基板Wから離間させる。そして、薬液供給ノズル4から基板Wの下面に薬液を供給し、薬液リンスを行う(図1B)。図示のように、薬液の供給により、基板Wの下面に薬液の液膜100が形成される。この液膜100には、基板Wの下面から除去された異物等が含まれている。
【0029】
次いで、純水供給ノズル(不図示)から基板Wの下面に純水を供給し、純水リンスを行って液膜100を除去する。
【0030】
図2A図2Cは、本発明の一実施形態に係る基板洗浄方法の概要を説明する図である。まず、基板Wの上面および下面をスクラブ洗浄し、次いで基板Wの下面に薬液を供給して薬液リンスを行う点は従来と同様であり、基板Wの下面に薬液の液膜100が形成される(図2A)。
【0031】
次いで、純水供給ノズル5から基板Wの下面に気泡を含む純水(以下「気泡含有純水」という。)を供給する。薬液の液膜100の下部に到達した気泡含有純水101内の気泡は、その浮力によって気泡含有純水101中を上昇し、基板Wの下面と液膜100との境界に入り込む(図2B)。それにより、液膜100が基板Wの下面から脱離して落下し、液膜100が効率よく除去される(図2C)。
【0032】
このように、気泡含有純水を供給することで、薬液の液膜100が気泡で置換され、基板Wの下面に液膜100が残存するのを抑制でき、洗浄力が向上する。
【0033】
以下、詳細に説明する。
図3は、一実施形態に係る基板洗浄装置の概略斜視図である。基板洗浄装置は、ほぼ同一水平面上に配置された4つのローラ11~14(基板保持部)と、洗浄部である2つの円柱状のロールスポンジ21,22と、ロールスポンジ21,22をそれぞれ回転させる回転機構31,32と、薬液供給ノズル4と、純水供給ノズル5と、制御部6とを備えている。
【0034】
ローラ11は保持部11aおよび肩部(支持部)11bの2段構成となっている。肩部11bの直径は保持部11aの直径よりも大きく、肩部11bの上に保持部11aが設けられている。ローラ12~14もローラ11と同様の構成を有している。ローラ11~14は不図示の駆動機構(例えばエアシリンダ)によって、互いに近接および離間する方向に移動可能となっている。ローラ11~14が互いに近接することで、保持部11a~14aは基板Wをほぼ水平に保持することができる。また、ローラ11~14のうちの少なくとも1つは不図示の回転機構によって回転駆動される構成となっており、これにより基板Wを水平面内で回転させることができる。
【0035】
ロールスポンジ21は水平面内に延びており、ローラ11~14によって保持された基板Wの上面に接触してこれをスクラブ洗浄する。ロールスポンジ21は回転機構31によってロールスポンジ21の長手方向を軸として回転される。また、回転機構31は、その上下方向の動きをガイドするガイドレール33に取り付けられ、かつ、昇降駆動機構34に支持されている。昇降駆動機構34により、回転機構31およびロールスポンジ21はガイドレール33に沿って上下方向に移動する。
【0036】
ロールスポンジ22は水平面内に延びており、ローラ11~14によって保持された基板Wの下面に接触してこれをスクラブ洗浄する。ロールスポンジ22はロールスポンジ21の下方に配置され、回転機構32によってロールスポンジ22の長手方向を軸として回転される。昇降駆動機構などの図示を省略しているが、ロールスポンジ21と同様、回転機構32およびロールスポンジ22も上下方向に移動する。
【0037】
薬液供給ノズル4は基板Wの下方(直下または斜め下)に位置し、基板Wの下面に薬液を供給する。
【0038】
純水供給ノズル5は基板Wの下方(直下または斜め下)に位置し、基板Wの下面に純水を供給する。本実施形態の特徴の1つとして、純水供給ノズル5は気泡含有純水を供給する。
【0039】
制御部6は基板洗浄装置の全体を制御する。本実施形態の特徴の1つとして、制御部6は、薬液供給ノズル4を制御して薬液を供給させ、その後、純水供給ノズル5を制御して気泡含有純水を供給させる。
【0040】
純水供給ノズル5の具体的な構成例を示す。
図4は、純水供給ノズル5の一例を示す模式図である。この純水供給ノズル5は、純水供給部51と、ガス供給部52と、筐体53と、気泡含有純水生成部54と、単管ノズル55とを有する。純水供給部51から純水が、ガス供給部52から所定のガスが、筐体53内に配置された気泡含有純水生成部54に供給される。気泡含有純水生成部54には微細孔が形成されており、純水とガスとが混合されて気泡含有純水が生成される。生成された気泡含有純水は、筐体53の上面から突出した単管ノズル55から斜め上方に噴射される。噴射された気泡含有純水は基板Wの下面の中心近傍に到達する。
【0041】
純水供給ノズル5は所定の位置に固定配置されていてもよいし、直線的に移動可能であってもよいし、揺動可能であってもよい。揺動する場合、気泡含有純水が基板Wの下面の中心近傍に噴射される位置と、基板Wの周縁部に噴射される位置と、の間を純水供給ノズル5が揺動するのが望ましい。
【0042】
また、基板Wの下面に対する気泡含有純水の供給角度に特に制限はない。ただし、基板Wの下面の中心にのみ気泡含有純水を供給した場合、基板Wの周縁部まで気泡含有純水が到達しないことも考えられる。よって、純水供給ノズル5を2以上設け、その一部は基板Wの下面の中心近傍に気泡含有純水を供給し、他の一部は基板Wの下面の周縁部に気泡含有純水を供給するようにしてもよい。
【0043】
図5Aおよび図5Bは、純水供給ノズル5の別の例を示す模式図である(図5Aは側面図であり、図5Bは模式的な断面図である)。この純水供給ノズル5は、純水供給部51と、ガス供給部52と、筐体53と、気泡含有純水生成部54とを有する。純水供給部51から純水が、ガス供給部52から所定のガスが、円筒形の筐体53内に配置された気泡含有純水生成部54に供給される。気泡含有純水生成部54には微細孔が形成されており、純水とガスとが混合されて気泡含有純水が生成される。生成された気泡含有純水は、筐体53の上面に形成された1または複数の噴射孔531から上方に噴射される。噴射された気泡含有純水は基板Wの下面に到達する。
【0044】
噴射孔531を多数設けることで、基板Wの広い領域に気泡含有純水を噴射できる。噴射孔531の一部は基板Wの下面の中心近傍の下方に、他の一部は基板Wの下面の周縁部の下方に配置されているのが望ましい。
【0045】
また、筐体53の上面に気泡が溜まらないような工夫がなされているのが望ましい。一例として、図示のように、噴射孔531から斜め下方に延びる傾斜面532が設けられる。これにより、傾斜面532に沿って気泡が上昇し、筐体53の上面に溜まることなく、噴射孔531に導かれる。
【0046】
ここで、気泡含有純水における気泡の径(直径)は、気泡の浮力を稼ぐという観点から、破裂しない範囲で大きい方が望ましい。ただし、気泡の径は基板Wの下面に形成される薬液の液膜よりは小さいのが望ましい。具体的には、液膜の厚さは200~500μm程度であるので、気泡の径は1μm以上500μm、より好ましくは、100μm以上500μm以下であるのが望ましい。そして、図4の単管ノズル55の径あるいは図5Aおよび図5Bの噴射孔531の径は気泡の径より大きいのが望ましい。
【0047】
また、気泡含有純水における気泡の密度ができるだけ高いのが望ましく、特に気相率が80%以上であると洗浄効果は高くなる。
【0048】
気泡の大きさや密度は、例えば図4および図5Bに示す気泡含有純水生成部54の微細孔の大きさによって調整可能である。また、気泡含有純水生成部54は純水に超音波を与えることで純水中に気泡を発生させてもよく、超音波の周波数によっても気泡の大きさや密度を調整可能である。
【0049】
気泡の浮力を稼いで効率よく薬液の液膜を除去するためには、気泡が破裂しない程度において気泡含有純水の供給流速が速いのが望ましい。具体的には、薬液供給ノズル4からの薬液の供給流速より、純水供給ノズル5からの気泡含有純水の供給流速が速いのが望ましい。
【0050】
また、薬液供給ノズル4および純水供給ノズル5に加え、基板Wの下面に超音波洗浄液を供給する超音波ノズル61を設けてもよい(図6A参照)。あるいは、薬液供給ノズル4および純水供給ノズル5に加え、基板Wの下面に2流体を供給する2流体ジェットノズル62を設けてもよい(図6B参照)。2流体とは、例えば液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体である。
【0051】
また、気泡のガス種は、窒素、水素、オゾン、二酸化炭素および酸素の1つ、または、2以上の混合であってよい。すなわち、これらのガスが図4または図5Bのガス供給部52から供給されてよい。
【0052】
気泡が窒素を含む場合、窒素の気泡が基板W近傍の溶存酸素量を低減するとともに、純水に溶存した窒素が機能水として酸素の溶存を抑制する。これにより、金属膜の腐食(特に酸化)を抑制できる。また、気泡が水素を含む場合も同様に金属膜の腐食(特に酸化)を抑制でき、かつ、セリア砥粒(基板研磨に用いられる研磨液)の再付着を抑制できる。気泡がオゾン含む場合、基板Wを親水化できるとともに、基板Wに付着した有機物および無機物を酸化させて溶出させることができる。気泡が二酸化炭素を含む場合、基板の帯電を抑制できる。複数のガスの気泡を混合することにより、それぞれの効果が得られる。
【0053】
含有する気泡のガス種によって効果が異なるため、洗浄対象となる基板Wに応じたガス種の気泡を含有する気泡含有純水を供給するのが望ましい。例えば、基板の上面に銅膜などの金属膜が形成されている場合、その酸化を抑制すべく、窒素または水素を用いるのが望ましい。
【0054】
また、純水に代えて他の液に気泡を含有させた液体を供給してもよい。薬液供給ノズルから供給される薬液が気泡を含有していてもよく、これにより洗浄力がさらに向上する。
【0055】
図7は、基板洗浄の手順を示す工程図である。なお、基板Wの洗浄前、すなわち基板Wの搬入時には、ローラ11~14は互いに離間した位置にある。また、ロールスポンジ21は上昇しており、ロールスポンジ22は下降している。
【0056】
そして、ロールスポンジ21,22が基板保持位置から離間した状態において、不図示の搬送ユニットにより(例えば研磨処理された後に)搬送されてきた基板Wは、ローラ11~14の肩部11b~14bの上に載置される。その後、ローラ11~14が互いに近接する方向すなわち基板Wに向かう方向に移動することにより、基板Wは保持部11a~14aによってほぼ水平に保持される。これにより、基板Wはローラ11~14によって概略水平方向に保持される(ステップS1)。
【0057】
なお、洗浄対象の基板Wが研磨処理されたものである場合、研磨屑や研磨液が基板Wの上面および下面に付着していることがある。
【0058】
次いで、ロールスポンジ21が下降して基板Wの上面に接触するとともに、ロールスポンジ22が上昇して基板Wの下面に接触する。そして、ローラ11~14によって基板Wが水平面内で回転しつつ、ロールスポンジ21,22がその軸心周りに回転しながら基板Wの上下面にそれぞれ接触することによって、基板Wの上下面がスクラブ洗浄される(ステップS2)。スクラブ洗浄が完了すると、ロールスポンジ21が上昇して基板Wの上面から離間するとともに、ロールスポンジ22が下降して基板Wの下面から離間する。
【0059】
その後、薬液供給ノズル4から基板Wの下面に薬液を供給する(ステップS3)。言い換えると、制御部6は、薬液供給ノズル4が基板Wの下面に薬液を供給するよう、制御を行う。これにより、基板Wの下面に薬液の液膜が形成され、基板Wの下面の薬液リンスが行われる。
【0060】
薬液リンスの後、純水供給ノズル5から基板Wの下面に気泡含有純水を供給する(ステップS4)。言い換えると、制御部6は、純水供給ノズル5が基板Wの下面に気泡含有純水を供給するよう、制御を行う。これにより純水リンスが行われ、図2A図2Cを用いて説明したように、基板Wの下面に形成された薬液の液膜(の少なくとも一部、望ましくは大部分、より望ましくは全部)が気泡含有純水によって置換され、基板Wの下面から除去される。
【0061】
なお、基板洗浄装置が超音波ノズル61を有する場合、ステップS4において超音波洗浄液を合わせて供給してもよい。また、基板洗浄装置が2流体ジェットノズル62を有する場合、ステップS4において2流体を合わせて供給してもよい。
【0062】
このように、本実施形態では、基板Wの下面の洗浄において、薬液リンスの後、気泡含有純水を供給する。そのため、気泡が薬液の液膜を基板Wの下面から脱離させ、基板Wの下面に液膜が残存するのを抑制する。結果として、洗浄力が向上する。
【0063】
なお、気泡を発生させる手法は図4図5Aおよび図5Bで例示したものに限らず、公知の手法を用いてもよい。
【0064】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0065】
11~14 ローラ
21,22 ロールスポンジ
31,32 回転機構
4 薬液供給ノズル
5 純水供給ノズル
51 純水供給部
52 ガス供給部
53 筐体
531 噴射孔
532 傾斜面
54 気泡含有純水生成部
55 単管ノズル
6 制御部
61 超音波ノズル
62 2流体ジェットノズル
100 液膜
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7