(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106923
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】欠陥判定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20230726BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007936
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】古川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】門田 圭二
(72)【発明者】
【氏名】新田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】浅井 知
(72)【発明者】
【氏名】野村 和史
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB07
2G047BC07
2G047CA04
2G047EA13
2G047GA04
2G047GD01
2G047GG06
2G047GG20
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】レーザ超音波法の測定結果に基づいて溶接のビードに関する欠陥の有無を自動判定する際に、欠陥のある測定結果の教師データを準備することが困難であった。
【解決手段】欠陥判定装置1は、溶接のビードに関するレーザ超音波法の測定結果を受け付ける受付部11と、受け付けられた測定結果に基づいて、その測定結果に対応する位置に隣接する位置の測定結果を予測する予測部13と、予測結果と、その予測結果に対応する位置の測定結果とを比較する比較部14と、比較結果に応じてビードに欠陥が存在するかどうかを判定する判定部15とを備える。このようにして、欠陥のある測定結果の教師データを準備することなく、予測を行うことができ、欠陥の有無を判定することができるようになる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接のビードに関するレーザ超音波法の測定結果を受け付ける受付部と、
前記受付部によって受け付けられた測定結果に基づいて、当該測定結果に対応する位置に隣接する位置の測定結果を予測する予測部と、
前記予測部による予測結果と、当該予測結果に対応する位置の測定結果とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に応じて前記ビードに欠陥が存在するかどうかを判定する判定部と、を備えた欠陥判定装置。
【請求項2】
前記受付部は、前記ビードの長手方向の測定位置ごとに、前記ビードの短手方向の複数の測定結果を受け付け、
前記予測部は、1以上の測定位置の複数の測定結果に基づいて、当該1以上の測定位置に隣接する測定位置の複数の測定結果を予測することを、測定位置ごとに行い、
前記比較部は、測定位置ごとに、複数の測定結果と、当該複数の測定結果に対応する複数の予測結果とを比較し、
前記判定部は、測定位置ごとに、前記ビードに欠陥が存在するかどうかを判定する、請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項3】
前記受付部は、前記ビードの長手方向の測定位置ごとに、前記ビードの短手方向の複数の測定結果を受け付け、
前記予測部は、ある測定位置における1以上の測定結果から、当該1以上の測定結果に対応する照射位置に隣接する照射位置の測定結果を予測することを、当該測定位置における複数の照射位置ごとに行い、
前記比較部は、測定位置ごとに、複数の測定結果と複数の予測結果とを比較し、
前記判定部は、測定位置ごとに、前記ビードに欠陥が存在するかどうかを判定する、請求項1記載の欠陥判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記ビードに欠陥が存在すると判定した場合に、当該判定に用いた比較結果に対応する測定位置に応じて欠陥位置を特定する、請求項2または請求項3記載の欠陥判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記ビードに欠陥が存在すると判定した場合に、当該判定に用いた比較結果に対応する予測結果と測定結果との相違に応じた欠陥の大きさを取得する、請求項1から請求項4のいずれか記載の欠陥判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ超音波法の測定結果を用いて溶接のビードにおける欠陥の有無を判定する欠陥判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ超音波法(Laser Ultrasonic Technique)を用いて、溶接の検査を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。レーザ超音波法を用いることによって、非接触で溶接部の状態を測定することができるため、例えば、溶接直後のビードについても測定が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ超音波法による測定結果を、ニューラルネットワークなどの学習器に適用することによって、自動的に溶接の欠陥を見つけたいという要望がある。しかしながら、そのような学習器の学習を行うためには、欠陥のない箇所の測定結果と、欠陥の箇所の測定結果とを教師データとして用意する必要があるが、溶接の欠陥の箇所の測定結果を学習に必要な量だけ用意することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、欠陥の箇所に関する教師データを用意することなく、レーザ超音波法の測定結果に基づいて溶接のビードに関する欠陥の有無を自動的に判定することができる欠陥判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による欠陥判定装置は、溶接のビードに関するレーザ超音波法の測定結果を受け付ける受付部と、受付部によって受け付けられた測定結果に基づいて、測定結果に対応する位置に隣接する位置の測定結果を予測する予測部と、予測部による予測結果と、予測結果に対応する位置の測定結果とを比較する比較部と、比較部による比較結果に応じてビードに欠陥が存在するかどうかを判定する判定部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様による欠陥判定装置によれば、溶接のビードに関するレーザ超音波法の測定結果に基づいた予測結果と、その予測結果に対応する測定結果との比較結果に応じて欠陥の有無を自動的に判定することができる。このようにして、溶接の欠陥の箇所に関する教師データを用意することなく、欠陥の有無を判定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態によるロボット制御システムの構成を示す模式図
【
図2】同実施の形態による欠陥判定装置の構成を示すブロック図
【
図3A】同実施の形態による欠陥判定装置の動作を示すフローチャート
【
図3B】同実施の形態による欠陥判定装置の動作の他の一例を示すフローチャート
【
図4】同実施の形態におけるレーザの照射点の一例を示す図
【
図5A】同実施の形態における測定結果に基づいた予測について説明するための図
【
図5B】同実施の形態における測定結果に基づいた予測について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による欠陥判定装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による欠陥判定装置は、レーザ超音波法の測定結果を用いて予測された予測結果と、その予測結果に対応する測定結果との比較結果に応じて、溶接の欠陥の有無を判定するものである。
【0010】
図1は、本実施の形態によるロボット制御システム100の構成を示す模式図であり、
図2は、本実施の形態による欠陥判定装置1の構成を示すブロック図である。
図1で示されるように、ロボット制御システム100は、欠陥判定装置1と、マニピュレータ2と、ロボット制御装置3と、溶接電源4とを備える。なお、
図1では、欠陥判定装置1を独立した装置として示しているが、欠陥判定装置1は、例えば、ロボット制御装置3等の他の装置に組み込まれていてもよい。
【0011】
欠陥判定装置1は、レーザ超音波法の測定結果を用いて溶接部の欠陥の有無を判定するものであり、
図2で示されるように、受付部11と、記憶部12と、予測部13と、比較部14と、判定部15と、出力部16とを備える。欠陥判定装置1は、例えば、マニピュレータ2のレーザ超音波測定装置2aや、ロボット制御装置3に接続されていてもよい。なお、欠陥判定装置1の各構成については後述する。
【0012】
マニピュレータ2は、モータによって駆動される関節によって連結された複数のアームを有している。マニピュレータ2の先端には溶接トーチが装着されている。なお、溶接に溶接ワイヤが用いられる場合には、マニピュレータ2には、溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給装置が装着されていてもよい。また、マニピュレータ2には、レーザ超音波測定装置2aが装着されている。なお、マニピュレータ2におけるレーザ超音波測定装置2aの装着位置は特に限定されないが、レーザ超音波測定装置2aによって、溶接箇所を所望の方向からセンシングできる位置に装着されていることが好適である。そのため、レーザ超音波測定装置2aは、例えば、マニピュレータ2の先端側に装着されていてもよい。マニピュレータ2の先端側とは、例えば、
図1で示されるように溶接トーチの基端側の位置であってもよい。マニピュレータ2は特に限定されないが、例えば、垂直多関節ロボットであってもよい。
【0013】
レーザ超音波測定装置2aは、レーザ超音波法によって溶接のビードに関する測定を行うものである。レーザ超音波測定装置2aは、例えば、超音波発生部2b、及び超音波検出部2c等を備えていてもよい。レーザ超音波測定装置2aでは、超音波発生部2bから出射されたパルスレーザ光を測定対象に集光させることによって、測定対象に超音波を発生させてもよい。そして、例えば、レーザ干渉計である超音波検出部2cは、超音波検出用のレーザ光を測定対象に照射し、発生された超音波が検出用のレーザ光の照射位置に到達する際に生じる表面振動によって生じるドップラー効果をレーザ干渉計で捉えることによって超音波を検出してもよい。なお、レーザ干渉計を用いる以外の方法、例えば、ナイフエッジ法などによって超音波を検出してもよい。
【0014】
本実施の形態では、
図4で示されるように、複数の箇所に超音波発生用のレーザ光を照射し、それに応じて発生した超音波を、レーザ光を1箇所に照射することによって検出する場合について主に説明する。
図4は、重ね継手の隅肉溶接の結果、すなわち上板のワーク5aと下板のワーク5bとの間の接合部分が溶接された結果を示す図である。
図4では、ビード6の長手方向に、x軸が設けられている。そして、xの値がB1,B2,B3…の各位置において、レーザ超音波法を用いた測定が行われている。以下、xの値がB1,B2等である各位置を測定位置B1,B2等と呼ぶこともある。なお、溶接は、x軸の方向、すなわち
図4における右に向かう方向に行われるものとする。また、ビード6の長手方向に沿った測定位置は、例えば、均等な間隔で設けられてもよい。本実施の形態では、例えば、1つの測定位置B1について、複数の照射位置T1-1~T1-8に超音波発生用のレーザ光が順次、照射され、そのレーザ光によって発生された超音波が、1つの照射位置R1に超音波検出用のレーザ光が照射されることによって検出されるものとする。レーザ超音波測定装置2aによる測定は、例えば、欠陥判定装置1からの測定指示に応じて行われてもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、レーザ超音波測定装置2aは、例えば、ビード6の長手方向に沿って、所定の間隔で(例えば、測定位置B1,B2ごとに)複数の照射位置に超音波発生用のレーザ光を照射することによって、複数の測定結果を取得することを繰り返してもよい。なお、
図4で示されるように、レーザ光は、例えば、ビード6上に照射されてもよく、または、ワーク5a,5bに照射されてもよい。また、本実施の形態では、レーザ超音波法による測定対象のビード6が1つの溶接パスに対応するビードである場合について主に説明するが、測定対象のビードは、例えば、多層盛溶接などにおける複数の溶接パスに対応するビードの集合であってもよい。
【0015】
なお、レーザ超音波法におけるレーザ光の照射位置は、上記説明に限定されるものではない。例えば、1箇所に超音波発生用のレーザ光を照射し、それに応じて発生した超音波を、複数箇所にレーザ光を照射することによって検出してもよい。このように、超音波を発生させるためのレーザ光の照射位置は、例えば、1箇所であってもよく、複数箇所であってもよく、また、超音波を検出するためのレーザ光の照射位置は、例えば、1箇所であってもよく、複数箇所であってもよい。結果として、ビード6の長手方向に垂直な方向の複数の測定結果を、測定位置ごとに取得できるのであれば、レーザ超音波法による測定方法は問わない。なお、レーザ超音波測定装置2aは、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0016】
ロボット制御装置3は、マニピュレータ2を制御し、例えば、ワーク5a,5bの溶接線に沿った溶接が行われるように、マニピュレータ2や溶接電源4を制御してもよい。なお、ロボット制御装置3の構成はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0017】
溶接電源4は、溶接で用いられる高電圧を溶接トーチとワーク5a,5bとに供給する。また、溶接に溶接ワイヤが用いられる場合には、溶接電源4は、溶接ワイヤの送給に関する制御を行ってもよい。なお、溶接電源4の構成はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0018】
欠陥判定装置1の受付部11は、溶接のビードに関するレーザ超音波法の測定結果を受け付ける。受付部11は、例えば、ある箇所に超音波発生用のレーザ光が照射されている際に、別の箇所に照射された超音波検出用のレーザ光によって測定された超音波を、1個の測定結果として受け付けてもよい。本実施の形態では、この場合について主に説明する。受付部11は、例えば、溶接が行われている際に、もしくは溶接が完了した後に、溶接によって形成されたビードに関する測定結果をレーザ超音波測定装置2aからリアルタイムで受け付けてもよく、または、あらかじめレーザ超音波測定装置2aによって測定された複数の測定結果を、一括して受け付けてもよい。一括した測定結果の受け付けは、例えば、記録媒体からの複数の測定結果の読み出しであってもよく、複数の測定結果の受信であってもよい。
【0019】
受付部11は、ビードの長手方向の測定位置ごとに、ビードの短手方向の複数の測定結果を受け付けてもよい。例えば、
図4で示される測定位置B1について、受付部11は、照射位置T1-1~T1-8にそれぞれ超音波発生用のレーザ光が照射された際の8個の測定結果を受け付けてもよい。なお、1つの測定位置について受け付ける測定結果の個数は問わない。そのような測定位置に応じた複数の測定結果の受け付けが、各測定位置について順次、繰り返されてもよい。受付部11は、受け付けた測定結果を記憶部12に蓄積してもよい。その蓄積の際に、受付部11は、例えば、測定位置や、レーザ光の照射位置を示す情報に対応付けて、測定結果を記憶部12に蓄積してもよい。
【0020】
受付部11は、例えば、超音波検出部2cから測定結果を受け付けてもよく、有線または無線の通信回線を介して送信された測定結果を受信してもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)から読み出された測定結果を受け付けてもよい。受付部11は、測定結果以外の情報を受け付けてもよい。受付部11は、例えば、ロボット制御装置3から、レーザ超音波測定装置2aの測定位置を受け付けてもよい。また、測定結果は、欠陥判定装置1から測定指示をレーザ超音波測定装置2aに出力することに応じて受け付けられてもよい。その測定指示は、例えば、ロボット制御装置3から受け付けられた測定位置が、あらかじめ決められた値(例えば、B1やB2など)となった場合に、出力されてもよい。その測定指示に応じて、レーザ超音波測定装置2aは、その測定位置における複数の照射点にレーザ光を照射することによって、その複数の照射点に対応する複数の測定結果を取得して欠陥判定装置1に送信してもよい。そして、その複数の測定結果が受付部11で受け付けられてもよい。なお、受付部11は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受付部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、または所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0021】
記憶部12では、上記のように、測定結果が記憶されてもよい。また、記憶部12では、予測部13による予測結果が記憶されてもよい。また、それら以外の情報が記憶部12で記憶されてもよい。なお、記憶部12は、不揮発性の記録媒体によって実現されることが好適であるが、揮発性の記録媒体によって実現されてもよい。記録媒体は、例えば、半導体メモリや磁気ディスクなどであってもよい。
【0022】
予測部13は、受付部11によって受け付けられた測定結果に基づいて、その測定結果に対応する位置に隣接する位置の測定結果を予測する。この予測は、欠陥がない場合における予測である。例えば、欠陥のない位置の測定結果を用いて、その位置に隣接する位置の欠陥のない測定結果が予測されることになる。したがって、欠陥のある位置の測定結果に基づいて、その位置に隣接する位置の測定結果を予測することによって得られた予測結果は、欠陥のない場合における予測結果とは異なるものとなる。予測部13は、例えば、ある測定位置における複数の測定結果から、その測定位置に隣接する測定位置の複数の測定結果を予測してもよい。より具体的には、
図5Aで示されるように、照射位置T1-1~T1-8と、照射位置R1とを用いて測定された8個の測定結果から、照射位置T2-1~T2-8と、照射位置R2とを用いて測定される8個の測定結果が予測されてもよい。この場合には、8個の測定結果を用いて、8個の予測結果が取得されることになる。本実施の形態では、このような予測が行われる場合について主に説明し、その他の予測については後述する。予測部13によって予測された予測結果は、例えば、記憶部12に蓄積されてもよい。
【0023】
予測部13は、例えば、ニューラルネットワーク、GBDT(Gradient Boosting Decision Tree)、または重回帰モデルなどのモデルを用いて予測を行ってもよく、その他の方法で予測を行ってもよい。なお、GBDTや重回帰モデルを用いて予測が行われる場合には、測定結果に加えて、測定結果の統計データ(例えば、平均や分散など)がモデルに入力されることもある。また、GBDTや重回帰モデルを用いて予測する場合には、測定結果から取得された特徴情報も予測に用いられてもよい。その特徴情報は、例えば、測定位置ごとに複数の測定結果から取得されたBスコープやCスコープの画像について取得されるHOG(Histogram of Oriented Gradients)やSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)などの特徴量を有していてもよい。
【0024】
予測部13による予測で用いられるモデルは、例えば、少なくとも欠陥なしの教師データを用いて学習されたものであってもよい。すなわち、そのモデルは、欠陥なしの教師データを用いて学習されてもよく、欠陥の有無を問わない教師データを用いて学習されてもよい。通常、ビードに欠陥が存在する可能性は少ないため、後者の場合であっても、教師データの大部分は欠陥なしのデータとなり、前者と同様の学習を行うことができると考えられる。上記のように予測が行われる場合には、例えば、測定位置BNの複数の測定結果である学習用の入力データと、測定位置B(N+1)の複数の測定結果である学習用の出力データとの組である複数の学習データを用いて学習が行われてもよい。なお、Nは1以上の整数である。この場合には、例えば、ある測定位置の8個の測定結果を入力すると、その測定位置に隣接する測定位置の8個の測定結果を出力するモデルが学習されることになる。
【0025】
ニューラルネットワークは、特に限定されないが、例えば、RNN(Recurrent Neural Network)であってもよい。また、RNNは特に限定されないが、例えば、LSTM(Long Short-Term Memory)ネットワークが用いられてもよい。また、GBDTは、特に限定されないが、例えば、LightGBMや、XGBoostが用いられてもよい。
【0026】
比較部14は、予測部13による予測結果と、その予測結果に対応する位置の測定結果とを比較する。この比較は、例えば、1個の予測結果と1個の測定結果との比較であってもよく、複数の予測結果と複数の測定結果との比較であってもよい。後者の場合には、通常、予測結果の個数と測定結果の個数とは同じである。本実施の形態では、複数の予測結果と複数の測定結果との比較が行われる場合について主に説明する。比較部14は、予測結果と測定結果との相違を示す情報を算出してもよい。両者の相違を示す情報(すなわち、後述する評価関数)は、例えば、MSE(Mean Squared Error:平均二乗誤差)やRMSE(Root Mean Squared Error)、PSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio:ピーク信号対雑音比)、SSIM(Structural Similarity Index Measure)などであってもよい。なお、MSEやRMSEは、比較対象が似ているほど小さな値となり、PSNRやSSIMは、比較対象が似ているほど大きな値となる。このように、比較部14は、例えば、1以上の測定結果と、1以上の予測結果とを、両者を比較するための評価関数に入力することによって、その関数の値である比較結果を取得してもよい。評価関数は、上記以外の関数であってもよい。例えば、複数の予測結果と複数の測定結果とを比較するための評価関数は、予測結果と、その予測結果に対応する測定結果との差に関する分散や標準偏差を含む関数であってもよい。
【0027】
比較部14は、例えば、測定位置ごとに、複数の測定結果と、その複数の測定結果に対応する複数の予測結果とを比較してもよい。
図5Aで示されるように予測が行われる際には、比較部14は、例えば、測定位置ごとに、8個の予測結果と8個の測定結果とを比較してもよい。すなわち、比較部14は、例えば、予測結果と、その予測結果に対応する位置の測定結果との8個の組について、MSEやPSNRなどを算出してもよい。より具体的には、MSEやPSNR等を算出する際には、照射位置T2-Mを用いた測定で取得される測定結果と、照射位置T2-Mを用いた測定結果を予測した予測結果との差が算出されてもよい。なお、
図4、
図5Aで示される場合には、Mは1から8の整数である。
【0028】
評価関数がMSEである場合には、比較部14は、例えば、ある測定位置について、次式を用いてMSEの値を算出してもよい。ここで、dp
i,jは予測結果であり、dg
i,jは測定結果である。また、iはレーザ光の照射位置を示すインデックスであり、jは受信時間を示すインデックスである。また、i
maxはレーザ光の照射位置の個数であり、j
maxは受信時間の最大値である。例えば、
図4で示される場合には、i
max=8である。また、各照射位置iについて、j
max個の時間方向のデータが測定されることになる。
【数1】
【0029】
判定部15は、比較部14による比較結果に応じてビードに欠陥が存在するかどうかを判定する。なお、予測結果の取得に用いられた測定結果が取得された位置、及びその予測結果と比較される測定結果が取得された位置の両方に欠陥が存在しない場合には、予測結果と測定結果とは近似した情報になる。一方、両位置の少なくともいずれかに欠陥が存在する場合には、予測結果と測定結果とは乖離した情報になる。したがって、判定部15は、比較結果によって、測定結果と予測結果とが近似していることが示される場合に、欠陥が存在しないと判定し、測定結果と予測結果とが乖離していることが示される場合に、欠陥が存在すると判定してもよい。そのため、判定部15は、例えば、比較部14によって取得された評価関数の値を、あらかじめ決められた閾値と比較することによって、欠陥が存在するかどうかを判定してもよい。より具体的には、判定部15は、MSEやRMSEである評価関数の値が閾値未満である場合に、欠陥が存在しないと判定し、その評価関数の値が閾値を超えている場合に、欠陥が存在すると判定してもよい。また、判定部15は、PSNRやSSIMである評価関数の値が閾値を超えている場合に、欠陥が存在しないと判定し、その評価関数の値が閾値未満である場合に、欠陥が存在すると判定してもよい。なお、いずれの評価関数であっても、評価関数の値が閾値と等しい場合には、判定部15は、例えば、欠陥が存在すると判定してもよく、欠陥が存在しないと判定してもよい。また、測定位置ごとに比較部14による比較が行われる場合には、判定部15は、測定位置ごとに、ビードに欠陥が存在するかどうかを判定してもよい。なお、
図4の空洞Vで示されるように、欠陥が局所的である場合には、上式の2乗の部分が大きな値になるのは一部のiのみになり、i
maxが大きい値であるとすると、欠陥の有無に応じた評価関数の違いがそれほど大きくならないこともあり得る。そのため、評価関数において、予測結果と測定結果との差の部分のうち、大きい方から所定の個数だけを評価関数の算出に用いるようにしてもよい。例えば、評価関数が上式の場合には、2乗の部分のうち、値の大きい方からあらかじめ決められた個数(例えば、10個など)だけを用いてMSEを算出してもよい。
【0030】
また、判定部15は、ビードに欠陥が存在すると判定した場合に、その判定に用いた比較結果に対応する測定位置に応じて欠陥位置を特定してもよい。このようにして特定される欠陥位置は、例えば、判定に用いられた比較対象の測定結果に対応する位置、及び予測結果の取得に用いられた測定結果に対応する位置の少なくとも一方であってもよい。例えば、測定位置B5の複数の測定結果に基づいて、測定位置B6の複数の予測結果が取得され、測定位置B6の複数の予測結果と複数の測定結果との比較結果に応じて欠陥が存在しないと判定された場合には、測定位置B5及び測定位置B6の両方に欠陥が存在しないと考えられる。一方、上記の状況において、測定位置B6の複数の予測結果と複数の測定結果との比較結果に応じて欠陥が存在すると判定された場合には、測定位置B5,B6の少なくとも一方に欠陥が存在することによって、測定結果と予測結果の乖離が大きくなったと考えられる。したがって、この場合には、判定部15は、欠陥位置として測定位置B5,B6を特定してもよい。なお、その判定の以前に、測定位置B4の測定結果に基づいて予測された測定位置B5の予測結果と、測定位置B5の測定結果との比較結果に応じて欠陥が存在しないと判定されていたとすると、測定位置B5には欠陥が存在しないと考えられる。したがって、この場合には、判定部15は、欠陥位置として測定位置B6を特定してもよい。このように、欠陥がないと判定された第1の測定位置の測定結果を用いて予測された第2の測定位置の予測結果を用いた比較結果に応じて欠陥が存在すると判定された場合には、その第2の測定位置に欠陥が存在することが特定されてもよい。なお、第1の測定位置と第2の測定位置とは隣接しているものとする。
【0031】
また、判定部15は、ビードに欠陥が存在すると判定した場合に、その判定に用いた比較結果に対応する予測結果と測定結果との相違に応じた欠陥の大きさを取得してもよい。判定部15は、例えば、予測結果と測定結果との乖離が大きいほど、より大きい欠陥の大きさを取得してもよい。より具体的には、判定部15は、ビードに欠陥が存在すると判定した場合において、評価関数の値と閾値との差の絶対値が大きいほど、より大きい欠陥の大きさを取得し、両者の差の絶対値が小さいほど、より小さい欠陥の大きさを取得してもよい。欠陥の大きさは、例えば、評価関数の値と閾値との差の絶対値と、欠陥の大きさとを対応付けるテーブルなどの情報を用いて取得されてもよく、評価関数の値と閾値との差の絶対値を引数とする増加関数の値を計算することによって取得されてもよい。
【0032】
出力部16は、判定結果を出力してもよい。出力部16は、欠陥が存在する旨の判定結果を出力する際には、その判定結果と共に、欠陥の大きさを出力してもよく、欠陥位置を出力してもよい。なお、リアルタイムでの判定が繰り返して行われる場合には、出力部16は、例えば、判定結果の出力を繰り返してもよい。この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部16は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスや通信デバイスなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部16は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0033】
次に、欠陥判定装置1の動作について
図3Aのフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受付部11は、レーザ超音波測定装置2aから測定結果を受け付けたかどうか判断する。そして、受け付けた場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、測定結果を受け付けるまでステップS101の処理を繰り返す。なお、受け付けられた測定結果は、記憶部12に蓄積されてもよい。
【0034】
(ステップS102)予測部13は、1列の探査が完了したかどうか判断する。そして、1列の探査が完了した場合には、ステップS103に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、予測部13は、ある測定位置について、すべての照射位置の測定結果が受け付けられた場合に、1列の探査が完了したと判断してもよい。例えば、
図4で示されるように測定が行われる場合には、画像変換部12は、ある測定位置(例えば、測定位置B1など)について8個の測定結果が受け付けられたときに、1列の探査が完了したと判断してもよい。
【0035】
(ステップS103)予測部13は、受け付けられた1列の探査に応じた測定結果を用いて、その測定結果に対応する測定位置に隣接する測定位置の測定結果を予測することによって予測結果を取得する。なお、その予測結果は、記憶部12に蓄積されてもよい。
【0036】
(ステップS104)比較部14は、測定結果と予測結果との比較を行うかどうか判断する。そして、比較を行う場合には、ステップS105に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、比較部14は、例えば、1列の探査に応じた測定結果が受け付けられた最新の測定位置について、すでに予測結果が存在する場合には、比較を行うと判断してもよい。
【0037】
(ステップS105)比較部14は、ある測定位置に対応する測定結果と予測結果との比較を行う。例えば、最新の測定位置の予測結果と測定結果とが比較されてもよい。
【0038】
(ステップS106)判定部15は、ステップS105の比較結果を用いて、ビードに欠陥があるかどうかを判定する。より具体的には、比較結果によって測定結果と予測結果との乖離が大きいと判断された場合には、ビードに欠陥があると判定され、そうでない場合には、欠陥がないと判定されてもよい。また、欠陥がある場合に、例えば、欠陥の大きさや、欠陥の位置が特定されてもよい。
【0039】
(ステップS107)出力部16は、判定部15による判定結果を出力する。なお、判定結果と共に、欠陥の大きさや、欠陥の位置が出力されてもよい。
【0040】
(ステップS108)予測部13は、予測の処理を終了するかどうか判断する。そして、予測の処理を終了する場合には、溶接の欠陥を判定する一連の処理は終了となり、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、ビードの端部まで予測が完了した場合に、予測の処理を終了すると判断されてもよい。
【0041】
なお、
図3Aのフローチャートにおいて、欠陥が存在すると判定された場合には、測定結果の受け付けや予測等の一連の処理を終了してもよい。また、レーザ超音波測定装置2aが測定指示に応じて測定を行う場合には、
図3Aのフローチャートに、測定指示をレーザ超音波測定装置2aに出力する処理が含まれてもよい。この測定指示は、例えば、欠陥判定装置1の図示しない指示部が出力してもよい。この場合には、受付部11は、その測定指示の出力に応じて、測定結果を受け付けてもよい。また、
図3Aのフローチャートにおいて、判定結果の出力は、一連の処理を終了する際に、1回のみ行われてもよい。また、
図3Aのフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。
【0042】
次に、本実施の形態による欠陥判定装置1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、マニピュレータ2による溶接を行いながら、順次、レーザ超音波測定装置2aによる測定結果を用いた欠陥の有無の判定を欠陥判定装置1によって行う場合について説明する。また、この具体例では、比較で用いる評価関数がMSEであるとする。
【0043】
まず、受付部11は、測定位置B1に対応する照射位置T1-1~T1-8のそれぞれについての測定結果を順次、受け付ける(ステップS101,S102)。そして、受け付けられた測定結果の個数が1列の探査に相当する8個になると、予測部13は、記憶部12で記憶されている測定位置B1の8個の測定結果を用いて、測定位置B2の8個の予測結果を取得して記憶部12に蓄積する(ステップS103)。なお、この時点では、測定位置B1の予測結果は存在しないため、比較は行われないと判断される(ステップS104)。
【0044】
次に、測定位置B2の各測定結果の受け付けや、それらの測定結果を用いた測定位置B3の予測結果の取得が行われる(ステップS101~S103)。この時点では、測定位置B2の予測結果が記憶部12で記憶されているため、比較部14は、測定位置B2の予測結果と測定結果との比較を行うと判断し、MSEの値を算出する(ステップS104、S105)。この場合には、MSEの値が、あらかじめ決められている閾値よりも小さかったとする。すると、判定部15は、ビードに欠陥が存在しないと判定し、その判定結果が出力される(ステップS106,S107)。
【0045】
その後、測定位置B3各測定結果の受け付けや、それらの測定結果を用いた予測結果の取得が行われる(ステップS101~S103)。この時点では、測定位置B3の予測結果が記憶部12で記憶されているため、比較部14は、測定位置B3の予測結果と測定結果との比較を行うと判断し、MSEの値を算出する(ステップS104、S105)。この場合には、
図4で示されるように、測定位置B3に空洞Vが存在しているため、測定位置B3に対応する予測結果と測定結果との乖離が大きく、MSEの値が閾値を超えていたとする。すると、判定部15は、ビードに欠陥が存在すると判定する(ステップS106)。そして、出力部16は、その判定結果を出力する(ステップS107)。例えば、その出力に応じて溶接が中断されてもよい。なお、本具体例では、欠陥が空洞である場合について説明したが、欠陥は空洞以外のビード下割れなどのその他の欠陥であってもよい。
【0046】
以上のように、本実施の形態による欠陥判定装置1によれば、溶接の欠陥について十分な量の教師データを用意できなくても、ある位置の測定結果から、その位置に隣接する位置の測定結果を予測することによって、溶接の欠陥の有無を判定することができるようになる。また、判定部15が、欠陥が存在すると判定した場合であって、比較結果に応じて欠陥の大きさを取得した場合には、欠陥の大きさについても知ることができるようになる。さらに、欠陥の判定で用いられた比較結果に対応するビードの位置である欠陥位置を特定することによって、欠陥の位置も知ることができるようになる。また、溶接中にリアルタイムで受け付けられた測定結果に応じて、予測や比較等の処理を行うことによって、溶接を行っている途中に、欠陥の有無について知ることができ、例えば、欠陥が存在する場合には、溶接を中断することによって、それ以降の不必要な作業を行わないようにすることもできる。
【0047】
また、本実施の形態では、1つの測定位置における複数の測定結果を用いて、その測定位置に隣接する測定位置の複数の測定結果を予測した複数の予測結果が取得される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、2以上の測定位置における複数の測定結果を用いて、その2以上の測定位置に隣接する測定位置の複数の測定結果を予測した複数の予測結果が取得されてもよい。この場合に、2以上の測定位置は、例えば、連続した測定位置であってもよい。また、この場合には、予測で用いられるモデルを作成するために、2以上の測定位置における複数の測定結果を入力として、その2以上の測定位置に隣接する測定位置の複数の測定結果を出力とする学習が行われてもよい。
図4で示される場合には、例えば、2つの測定位置B1,B2の16個の測定結果を用いて、測定位置B3の8個の測定結果を予測した8個の予測結果が取得されてもよい。また、予測に用いられる測定結果に対応する2以上の測定位置は、例えば、連続していなくてもよい。この場合には、例えば、2つの測定位置B1,B3の16個の測定結果を用いて、測定位置B2の8個の測定結果を予測した8個の予測結果が取得されてもよい。これらの説明から明らかなように、2以上の測定位置に隣接する測定位置とは、例えば、2以上の連続した測定位置(例えば、B1,B2)に隣接する測定位置(例えば、B3)であってもよく、2以上の連続していない測定位置(例えば、B1,B3)のそれぞれに隣接する測定位置(例えば、B2)であってもよい。
図5Bで示されるように予測が行われる場合にも同様であるとする。このように、予測部13は、1以上の測定位置の複数の測定結果に基づいて、その1以上の測定位置に隣接する測定位置の複数の測定結果を予測してもよい。また、予測部13は、その予測を測定位置ごと行ってもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、溶接が行われる方向に応じた予測が行われる場合、すなわち、測定位置B1の測定結果を用いて測定位置B2の測定結果が予測される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、測定位置B2の測定結果を用いて測定位置B1の測定結果が予測されてもよい。このように、予測が行われる向きは問わない。なお、溶接と逆の方向に予測が行われる場合には、それに応じたモデルが用いられてもよい。例えば、測定位置B(N+1)の複数の測定結果である学習用の入力データと、測定位置BNの複数の測定結果である学習用の出力データとの組である複数の学習データを用いて学習を行うことによって生成されたモデルが、溶接と逆の方向の予測で用いられてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、ある測定位置の測定結果を用いて、その測定位置と異なる測定位置の測定結果を予測した予測結果が取得される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、ある測定位置において、ある照射位置に対応する測定結果から、その照射位置に隣接する照射位置の測定結果を予測した予測結果が取得されてもよい。この場合には、例えば、
図5Bで示されるように、照射位置T1-1と照射位置R2とを用いて測定される1個の測定結果から、照射位置T1-2と照射位置R2とを用いて測定される測定結果を予測した予測結果が取得されてもよい。また、同様の予測が、照射位置T1-2~T1-7を用いた各測定結果に基づいて行われてもよい。このようにすることで、照射位置T1-2~T1-8のそれぞれについて、測定結果と予測結果との組を得ることができる。そのため、
図5Aの場合と同様に、比較結果を取得することができ、その比較結果を用いて欠陥の有無について判定することもできる。このように、予測部13は、ある測定位置における1以上の測定結果から、1以上の測定結果に対応する照射位置に隣接する照射位置の測定結果を予測することを、その測定位置における複数の照射位置ごとに行ってもよい。この場合には、例えば、
図3Bのフローチャートで示されるように判定の処理が行われてもよい。
図3Bのフローチャートにおいて、ステップS201~S204以外の処理は、
図3Aのフローチャートと同様であるとする。
図4で示される場合には、ステップS201では、照射位置TN-8を用いた測定結果が受け付けられたとき以外は、予測を行うと判断してもよい。なお、Nは1以上の整数である。また、ステップS202では、照射位置TN-Mを用いた測定結果から、照射位置TN-(M+1)を用いた測定結果が予測されてもよい。なお、Mは、1から8までの任意の整数である。また、ステップS203では、1列の探査が完了したかどうかが判断され、1列の探査が完了した場合には、ステップS204に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。また、ステップS204では、照射位置TN-2~TN-8を用いた7個の測定結果と、その7個の測定結果にそれぞれ対応する7個の予測結果との比較が行われる。
【0050】
この場合には、例えば、照射位置TN-1を用いて測定される測定結果から、照射位置TN-2を用いて測定される測定結果を予測した予測結果を取得する際に用いられるモデルと、照射位置TN-2を用いて測定される測定結果から、照射位置TN-3を用いて測定される測定結果を予測した予測結果を取得する際に用いられるモデルとは、例えば、同じであってもよく、または、異なっていてもよい。特に限定されるものではないが、例えば、ニューラルネットワークのモデルでは前者のようにしてもよく、GBDTや重回帰モデルなどのモデルでは後者のようにしてもよい。後者の場合には、例えば、
図5Bにおいて、7個のモデルが用いられて照射位置ごとの予測がそれぞれ行われてもよい。
【0051】
なお、
図5Bで示されるように予測が行われる場合にも、1つの照射位置を用いた測定結果から、その照射位置に隣接する照射位置を用いた測定結果を予測した予測結果を取得してもよく、2つ以上の照射位置を用いた測定結果から、その2つ以上の照射位置に隣接する照射位置を用いた測定結果を予測した予測結果を取得してもよい。この場合にも、2つ以上の照射位置は連続した照射位置であってもよく、そうでなくてもよい。また、予測が行われる方向も、
図5Bの逆であってもよい。例えば、照射位置T1-8を用いて測定される測定結果から、照射位置T1-7を用いて測定される測定結果を予測した予測結果が取得されてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、1つの測定位置における複数の測定結果について、複数の予測結果との比較を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。比較する対象は、複数の測定位置を横断していてもよく、また、1個の測定結果と、1個の予測結果とを比較してもよい。前者の場合には、例えば、照射位置T1-2~T20-2を用いて測定される複数の測定結果と、その複数の測定結果に対応する複数の予測結果とが比較され、欠陥の有無に関する判定が行われてもよい。また、1個の測定結果と1個の予測結果とが比較される場合には、例えば、1個の測定結果から1個の予測結果が取得されてもよく、または、複数の測定結果から、1個の予測結果が取得されてもよく、複数の測定結果から、複数の予測結果が取得されてもよい。1個の測定結果から1個の予測結果が取得される場合には、例えば、
図5Bで示されるように予測が行われてもよく、または、ある測定位置の1個の測定結果から、その測定位置に隣接する測定位置の1個の測定結果を予測した1個の予測結果が取得されてもよい。後者の場合には、例えば、照射位置T1-1を用いて測定される測定結果から、照射位置T2-1を用いて測定される測定結果を予測した予測結果が取得されてもよい。
【0053】
上記説明のように、測定結果から予測結果を予測する方法、比較の方法などについては、種々の任意性がある。なお、予測においては、1以上の測定結果に基づいて、その1以上の測定結果に対応する位置に隣接する位置の1以上の測定結果が予測されることが好適である。その位置は、例えば、測定位置であってもよく、レーザ光の照射位置であってもよく、その他の位置であってもよい。また、ある位置に隣接する位置は、例えば、その位置に隣接している測定位置や照射位置などであってもよい。また、比較においては、1以上の測定結果と、その1以上の測定結果に対応する1以上の予測結果とが比較されることが好適である。ある測定結果に対応する予測結果とは、その測定結果に対応する位置の予測結果であってもよい。例えば、照射位置T1-2を用いて測定された測定結果に対応する予測結果は、照射位置T1-1を用いて測定された測定結果から、照射位置T1-2を用いて測定される測定結果を予測した予測結果であってもよい。
【0054】
また、溶接と測定を並行して行った場合には、
図4において、例えば、ある測定位置で複数の照射位置に順次、レーザ光を照射している間に、レーザ光の照射位置がx軸方向に少しずつずれることもあり得る。この場合には、例えば、レーザ光の複数の照射位置T1-1~T1-8がx軸に対して垂直ではない方向に並ぶことになり、照射位置R1もx軸方向に並ぶ複数の点となり得る。このように、ビード6の長手方向に垂直ではない方向の複数の測定結果が、測定位置ごとに取得されて、予測や比較、判定の処理が行われてもよい。この場合には、その測定位置は、例えば、所定の幅を有する測定位置(例えば、x軸の値がB1
SからB1
Eまでの測定位置など)であってもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、溶接トーチを有しているマニピュレータ2によって溶接が行われる場合について主に説明したが、マニピュレータ2は、レーザ超音波測定装置2aを移動させるためのものであり、溶接を行わなくてもよい。この場合には、マニピュレータ2は、溶接トーチを備えていなくてもよく、ロボット制御システム100は、溶接電源4を備えていなくてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、またはソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0057】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 欠陥判定装置、11 受付部、12 画像変換部、12 記憶部、13 予測部、14 比較部、15 判定部、16 出力部