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特開2023-107000チタン酸ストロンチウム粒子、光触媒材、積層セラミックスコンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107000
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】チタン酸ストロンチウム粒子、光触媒材、積層セラミックスコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20230726BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230726BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20230726BHJP
   H01G 4/10 20060101ALI20230726BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20230726BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C01G23/00 C
B01J35/02 J
H01G4/12 270
H01G4/10
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
B01J23/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008072
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】八久保 鉄平
【テーマコード(参考)】
4G047
4G169
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
4G047CA07
4G047CB06
4G047CC02
4G047CC03
4G047CD04
4G047CD07
4G169BB04C
4G169BB20A
4G169BB20B
4G169BC12A
4G169BC12B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BE08C
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC27
4G169FB10
4G169FB30
4G169FB63
4G169HB10
4G169HD03
4G169HD11
5E001AB03
5E001AE01
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH05
5E001AH09
5E082AB03
5E082FG26
5E082FG54
5E082LL02
5E082MM24
(57)【要約】
【課題】結晶性が高く、かつ分散性に優れるチタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子を含む光触媒材、チタン酸ストロンチウム粒子を含む積層セラミックスコンデンサを提供する。
【解決手段】格子定数が3.902以上3.908以下、純水中における平均分散粒子径が5μm以下である、チタン酸ストロンチウム粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子定数が3.902以上3.908以下、純水中における平均分散粒子径が5μm以下である、チタン酸ストロンチウム粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のチタン酸ストロンチウム粒子を含む、光触媒材。
【請求項3】
請求項1に記載のチタン酸ストロンチウム粒子を含む、積層セラミックスコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子を含む光触媒材、チタン酸ストロンチウム粒子を含む積層セラミックスコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
形状が制御され、分散性が優れるセラミックス粒子の合成方法としては、例えば、液体媒体中でセラミックス粒子の前駆体を反応させて、セラミックス粒子を得る湿式法が知られている。湿式法により合成されたセラミックス粒子(以下、「湿式法セラミックス粒子」と言う。)は、原料粉末同士を混合して高温で熱処理する固相法により合成されたセラミックス粒子(以下、「固相法セラミックス粒子」と言う。)と比較して、加熱処理が不充分であるために結晶性が低い。具体的には、湿式法セラミックス粒子は、結晶子径が小さく、格子定数の理論値との乖離が大きいため、光吸収係数や誘電率等の材料固有の値が充分なサイズを有する単結晶の値(以下、「バルク値」と言う。)と異なり、材料本来の機能発現を妨げる場合がある。湿式法セラミックス粒子は、高温で熱処理することにより、結晶性を向上させることが可能であるが、粒子同士の焼結により分散性が低下することがある。
【0003】
湿式法セラミックス粒子の特長と固相法セラミックス粒子の特長とを両立することができれば、これまで相反するとされてきた様々な機能を有するセラミックス粒子を得ることができると考えられる。湿式法セラミックス粒子の特長としては、例えば、制御された粒子形状や、高い分散性等が挙げられる。固相法セラミックス粒子の特長としては、例えば、高い結晶性等が挙げられる。
【0004】
高い分散性と高い結晶性を両立したセラミックス粒子は、光触媒粒子、高誘電率粒子、蛍光体粒子等に適用することにより、高い性能が得られることが期待できる。光触媒粒子は、太陽光エネルギーにより、水を水素と酸素に分解する。高誘電率粒子は、積層セラミックスコンデンサに用いられる。
【0005】
光触媒粒子を用いた水分解法としては、例えば、水中で、水素発生用光触媒粒子と酸素発生用光触媒粒子の混合物を固定したシートに太陽光を照射することにより、水を水素と酸素に分解する方法が知られている。水分解効率を高めるためには、水素発生用光触媒粒子と酸素発生用光触媒粒子の結晶性が高いことと、相互に良く分散、混合されていることが必要である。
【0006】
特許文献1には、(100)面が露出したロジウムを含むチタン酸ストロンチウム微粒子を、湿式法で合成し、高温で熱処理することにより、メタノール水溶液中で高い水素発生効率が得られることが示されている。
【0007】
積層セラミックスコンデンサでは、小型化と高容量化を達成するために、電極間の狭小化と、電極間に配置する高誘電率粒子の微細化および高充填化とが必要となる。特許文献2には、高誘電率粒子として用いられるチタン酸バリウムを高充填化するために、湿式法により立方体形状のチタン酸バリウム微粒子を製造する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6211499号公報
【特許文献2】特許第6757940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、水分解を実用化するために必要なチタン酸ストロンチウム微粒子の分散性については検討されていない。そのため、特許文献1では、高温での熱処理によってチタン酸ストロンチウム微粒子同士が焼結していると考えられる。
また、特許文献2では、チタン酸バリウム微粒子の熱処理を行っていない。そのため、特許文献2におけるチタン酸バリウム微粒子は、固相法により合成された粒子と比較して結晶性が低い。したがって、特許文献2におけるチタン酸バリウム微粒子は、積層セラミックスコンデンサの製造における高温熱処理によって格子定数が変化するため、積層セラミックスコンデンサが膨張または収縮により変形することがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、結晶性が高く、かつ分散性に優れるチタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子を含む光触媒材、チタン酸ストロンチウム粒子を含む積層セラミックスコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明のチタン酸ストロンチウム粒子は、格子定数が3.902以上3.908以下、純水中における平均分散粒子径が5μm以下である。
【0012】
本発明の光触媒材は、本発明のチタン酸ストロンチウム粒子を含む。
【0013】
本発明の積層セラミックスコンデンサは、本発明のチタン酸ストロンチウム粒子を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、結晶性が高く、かつ分散性に優れるチタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子を含む光触媒材、チタン酸ストロンチウム粒子を含む積層セラミックスコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図2】実施例2で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図3】比較例1で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図4】比較例2で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図5】比較例3で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図6】比較例4で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のチタン酸ストロンチウム粒子、光触媒材、積層セラミックスコンデンサの実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明は趣旨を逸脱しない範囲において、数値、量、材料、種類、時間、温度、順番等について、変更、省略、置換、追加等が可能である。
【0017】
[チタン酸ストロンチウム粒子]
本実施形態のチタン酸ストロンチウム(SrTiO)粒子は、格子定数が3.902以上3.908以下、純水中における平均分散粒子径が5μm以下である。
【0018】
本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子は、格子定数が3.902以上3.908以下であり、3.903以上3.907以下であることが好ましく、3.903以上3.906以下であることがより好ましい。格子定数が上記範囲であることにより、チタン酸ストロンチウムの格子定数の理論値である3.905との差異が小さく、チタン酸ストロンチウムの結晶欠陥が少ないと言え、光吸収係数や電気特性等の本来の機能が十分に発現する。
【0019】
本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子は、純水中における平均分散粒子径が5μm以下であり、4.8μm以下であることが好ましい。前記平均分散粒子径の下限は、1μmであってもよく、2μmであってもよく、3μmであってもよく、3.5μmであってもよい。前記平均分散粒子径が5μmを超えると、チタン酸ストロンチウムを使用した誘電体層の密度が低下したり、塗料とした場合の塗膜が不均一になるなど、本来の機能が十分に発現しないため好ましくない。
【0020】
純水中におけるチタン酸ストロンチウム粒子の平均分散粒子径は、以下の手順で求められる。
レーザー回折粒度分布計(商品名:マスターサイザー3000、マルバーン社製)で、超音波分散機付き循環式セルに純水を約100mL、チタン酸ストロンチウム粒子を相対散乱強度が20から30となるように適量投入し、10分間超音波分散させて懸濁液を作製する。この懸濁液の粒度分布の累積体積百分率が50%の場合の値(D50)を平均分散粒子径とする。
【0021】
本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子のBET比表面積は、用途に応じて適宜決定すればよい。例えば、光触媒用途で用いる場合は、1m/g以上50m/g以下であることが好ましく、3m/g以上40m/g以下であることがより好ましく、5m/g以上30m/g以下であることがさらに好ましく、10m/g以上25m/g以下であることがよりさらに好ましい。
【0022】
BET比表面積の測定方法としては、例えば、全自動比表面積測定装置(商品名:BELSORP-MiniII、マイクロトラック・ベル社製)を用い、BET多点法による窒素吸着等温線から測定する方法が挙げられる。
【0023】
なお、本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子は、製造時に混入する不可避的不純物を含んでいてもよい。
【0024】
本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子によれば、結晶性が高く、かつ分散性に優れるチタン酸ストロンチウム粒子を提供することができる。
【0025】
[チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法]
本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子の製造方法は、次のとおりである。まず、水熱合成法等の湿式法でチタン酸ストロンチウム粒子を作製し、得られたチタン酸ストロンチウム粒子を十分な量の溶媒と混合してスラリーとする。このスラリーを、噴霧器を用いて1個の液滴の大きさが10μm程度となるように、シリコンウエハ上に噴霧する。この液滴が形成されたシリコンウエハをチタン酸ストロンチウムの結晶性が向上する800℃以上で熱処理する。この熱処理時に、液滴同士の距離を十分に保持することで、チタン酸ストロンチウム粒子同士の焼結が抑制される。熱処理時に液滴同士が結合して基板上に膜が形成されなければ、液滴同士の距離が十分に保持されている。このように、チタン酸ストロンチウム同士の接触によるネッキング形成が回避された状態で熱処理することで、チタン酸ストロンチウム粒子の分散性を維持したまま、結晶性も向上したチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。
【0026】
熱処理の温度が高すぎると、チタン酸ストロンチウム粒子の分散性が悪くなるため、熱処理温度の上限は950℃程度である。
熱処理時間は特に限定されず、チタン酸ストロンチウム粒子の所望の結晶性が得られればよい。例えば、10時間程度熱処理すればよい。
【0027】
上記の加熱処理後にシリコンウエハからチタン酸ストロンチウム粒子を剥離し、回収する。以上の工程により、本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を得ることができる。
本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子の製造方法によれば、結晶性と分散性に優れるチタン酸ストロンチウム粒子を得ることができる。
【0028】
[光触媒材]
本実施形態の光触媒材は、上述の本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を含む。本実施形態の光触媒材は、例えば、基材と、基材上に設けられた光触媒層とを含み、光触媒層が上述の本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を含む。
【0029】
「基材」
基材としては、その表面に光触媒層を固定化できるものであれば特に限定されない。このような基材としては、例えば、プラスチック基材、セラミックス基材、ガラス基材、石英基材、金属基材等が挙げられる。
プラスチック基材の材質としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
セラミックス基材の材質としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
ガラス基材の材質としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
金属基材の材質としては、例えば、チタン、アルミニウム、鉄、ステンレス等が挙げられる。
【0030】
基材は、その表面に光触媒層を固定化できる形状を有するものであればよい。このような基材としては、例えば、平滑表面を有する平板体、表面が多数の細孔を有する多孔性の平板体、多孔体、繊維体等が挙げられる。
【0031】
「光触媒層」
光触媒層は、緻密な連続層であってもよい。光触媒層は、不連続な部分を有していてもよい。光触媒層は、基材の表面に島状に離散していてもよい。
【0032】
光触媒層は、上述の本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子以外に、前記チタン酸ストロンチウム粒子を基材に固定化するための結着剤(バインダー)を含んでいてもよい。
バインダーとしては、チタン酸ストロンチウム粒子を基材に固定化することができるものであれば、特に限定されない。バインダーとしては、例えば、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の無機酸化物の微粒子や、アクリル、ポリプロピレン等のポリマー等が挙げられる。
【0033】
「光触媒材の製造方法」
本実施形態の光触媒材の製造方法は、基材の表面に光触媒層を形成する工程を有する。
【0034】
光触媒層を形成するには、まず、上述の本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を含む光触媒層形成用組成物を調製する。光触媒層形成用組成物を調製するには、溶媒に、チタン酸ストロンチウム粒子と、必要に応じて結着剤とを添加して、これらを充分に撹拌、混合する。このようにして得られた混合物が、光触媒層形成用組成物である。
【0035】
光触媒層形成用組成物に用いられる溶媒としては、チタン酸ストロンチウム粒子や結着剤を分散または溶解することができるものであれば、特に限定されない。溶媒としては、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、アセトン等が挙げられる。
【0036】
得られた光触媒層形成用組成物を、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法で基材の表面に、所定の膜厚となるように塗布し、その塗膜を乾燥させることにより、基材の表面に光触媒層を形成する。
【0037】
本実施形態の光触媒材によれば、本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を含むため、光触媒活性に優れる光触媒材を提供することができる。
【0038】
[積層セラミックスコンデンサ]
本実施形態の積層セラミックスコンデンサは、上述の本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を含む。本実施形態の光触媒材は、例えば、内部電極とセラミックス誘電体とを交互に層状に重ねて圧着し、焼成して一体化されたものである。本実施形態の光触媒材は、セラミックス誘電体が上述の本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を含む。
【0039】
内部電極とセラミックス誘導体の層数は、特に限定されないが、例えば、数層以上1000層以下であることが好ましい。
【0040】
「セラミックス誘電体」
セラミックス誘電体は、緻密な連続層であってもよい。セラミックス誘電体は、不連続な部分を有していてもよい。セラミックス誘電体は、基材の表面に島状に離散していてもよい。
【0041】
セラミックス誘電体は、上述の本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子以外に、前記チタン酸ストロンチウム粒子を基材に固定化するための結着剤(バインダー)を含んでいてもよい。
バインダーとしては、上記の光触媒層と同様のものが用いられる。
【0042】
本実施形態の積層セラミックコンデンサは、はんだ付等によりプリント基板上等に実装され、各種電子機器等に用いられる。
【0043】
本実施形態の積層セラミックスコンデンサによれば、セラミックス誘電体が高誘電率粒子である本実施形態のチタン酸ストロンチウム粒子を含むため、静電容量に優れる。
【実施例0044】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
チタンテトライソプロポキシド(関東化学社製)50gを、純水200gに撹拌しながら投入して、チタンテトライソプロポキシドを含むスラリーを調製した。
次いで、直径90mmのろ紙(型式名:5A、アドバンテック社製)で減圧ろ過して、白色ケーキを得た。
次いで、容量500mLの金属容器に、チタンに換算して0.063モルの前記白色ケーキを投入し、さらに、ストロンチウムに換算して0.069モルの水酸化ストロンチウム8水和物(関東化学社製)を投入し、全量が250gとなるように純水を投入した。
白色ケーキおよび水酸化ストロンチウム8水和物を投入した金属容器を、オートクレーブユニット(東洋高圧社製)で200℃まで昇温して3時間保持し、上記金属容器を室温まで自然冷却し、チタン酸ストロンチウム粒子を含むスラリーを調製した。
その後、チタン酸ストロンチウム粒子を含むスラリーを直径90mmのろ紙(商品名:定量濾紙No.5A、アドバンテック社製)で減圧濾過して、濾紙上の固形物(チタン酸ストロンチウム粒子)を純水で洗浄した。
次いで、この洗浄物に全量が63Lとなるように純水を加えてスラリーを作製した。このスラリーを噴霧器(商品名:ガラス製噴霧器 白30mL、アズワン社製)に入れてシリコンウエハ上に噴霧した。このシリコンウエハ上の液滴を光学顕微鏡で確認したところ、液滴同士は結合しておらず、液滴1個の粒子径はおよそ10μmであった。
このようにして得られた液滴が付いたシリコンウエハをマッフル炉(商品名:KDF-S80、デンケン社製)で800℃まで昇温して10時間保持した。
次いで、室温まで自然冷却し、シリコンウエハ上の固形物を剥離して回収することで実施例1のチタン酸ストロンチウム粒子を得た。
【0046】
[実施例2]
マッフル炉で800℃まで昇温する替わりに900℃まで昇温した以外は実施例1と同様にして、実施例2のチタン酸ストロンチウム粒子を得た。
【0047】
[比較例1]
実施例1と同様にして調製したチタン酸ストロンチウム粒子を含むスラリーを、直径90mmのろ紙(商品名:定量濾紙No.5A、アドバンテック社製)で減圧ろ過して、濾紙上の固形物を純水で洗浄し、固形物を回収した。
得られた固形物を150℃で1時間乾燥させて、比較例1のチタン酸ストロンチウム粒子を得た。
実施例1と比較して、比較例1では、チタン酸ストロンチウム粒子を含むスラリーをシリコンウエハ上に噴霧しておらず、かつ、マッフル炉(型式名:KDF-S80、デンケン社製)で800℃まで昇温して10時間保持していない。
【0048】
[比較例2]
150℃で1時間乾燥する替わりに、マッフル炉(型式名:KDF-S80、デンケン社製)で900℃まで昇温して10時間保持した後、室温まで自然冷却した以外は比較例1と同様にしてチタン酸ストロンチウム粒子を得た。
実施例2と比較して、比較例2では、チタン酸ストロンチウム粒子を含むスラリーをシリコンウエハ上に噴霧していない。
【0049】
[比較例3]
酸化チタン(TiO)(商品名:酸化チタン、アナターゼ型(粉末)、関東化学社製)と、炭酸ストロンチウム(SrCO)(商品名:炭酸ストロンチウム、3N、関東化学社製)とを、モル比で1:1、全量が10gとなるようにアルミナ製乳鉢で混合した。この混合物をアルミナ製坩堝に投入し、マッフル炉で1000℃まで昇温して10時間保持した。
次いで、室温まで自然冷却することで、比較例3のチタン酸ストロンチウム粒子を得た。
【0050】
[比較例4]
比較例3で得られたチタン酸ストロンチウム粒子5gと、直径3mmのアルミナ製ボール(ニッカトー社製)200gを混合した。この混合物を容器に入れ、卓上型ボールミル(商品名:小型ボールミル回転架台AV-2、アズワン社製)に設置し、10時間回転させることでチタン酸ストロンチウム粒子を粉砕し、比較例4のチタン酸ストロンチウム粒子を得た。
【0051】
[評価]
(チタン酸ストロンチウム粒子の観察)
実施例1、2および比較例1~4で得られたチタン酸ストロンチウム粒子を、走査型電子顕微鏡(商品名:JSM-7200F、日本電子社製)で観察した。実施例1のチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像を図1に示す。実施例2のチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像を図2に示す。比較例1のチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像を図3に示す。比較例2のチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像を図4に示す。比較例3のチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像を図5に示す。比較例4のチタン酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡像を図6に示す。
図1図2に示す結果から、実施例1、2のチタン酸ストロンチウム粒子は、比較的粒子径が小さく、かつ比較的粒子径が揃っていることが確認された。一方、図4図5に示す結果から、比較例2、3のチタン酸ストロンチウム粒子は、比較的粒子径が大きく、かつ比較的粒子径が不揃いであることが確認された。
【0052】
(チタン酸ストロンチウム粒子の結晶性評価)
実施例1、実施例2および比較例1~比較例4で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の結晶性を、X線回折(X-ray diffraction、XRD)により評価した。詳細には、まず、X線回折装置(商品名:卓上型X線回折装置(XRD) Aeris、Malvern Panalytical社製)を用いて、X線源としてCuKα線(波長λ=0.154nm)を用い、出力は45kV、40mAで、回折角2θが20°から80°の範囲でX線強度を測定した。その結果、結晶相はいずれも立方晶であった。得られたX線回折パターンを解析して、下記一般式(1)、(2)により格子定数を得た。結果を表1に示す。
2dsinθ=nλ (1)
d=a/(h+k+l1/2 (2)
d:面間隔、a:格子定数、θ:回折角、λ:X線の波長
固相法で作製した比較例3のチタン酸ストロンチウム粒子の格子定数は理論値との差異が小さかったが、粒子径が大きくて不揃いだった。そこで比較例3のチタン酸ストロンチウム粒子を粉砕した比較例4のチタン酸ストロンチウム粒子を作製した。しかし、比較例4のチタン酸ストロンチウム粒子は、粒子径が小さくなり、粒子径も比較的揃ったが、格子定数は理論値との差異が大きくなった。
【0053】
(チタン酸ストロンチウム粒子の分散性評価)
実施例1、2および比較例1~4で得られたチタン酸ストロンチウム粒子について、レーザー回折粒度分布計(商品名:マスターサイザー、Malvern Panalytical社製)で超音波分散機付き循環式セルを用いて、純水中での分散粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す結果から、実施例1、2で得られたチタン酸ストロンチウム粒子は、結晶性が高く、かつ分散性に優れていることが分かった。
一方、比較例1~4のチタン酸ストロンチウム粒子は、結晶性や分散性において、実施例のチタン酸ストロンチウム粒子よりも劣ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のチタン酸ストロンチウム粒子は、格子定数が3.902以上3.908以下、純水中における平均分散粒子径が5μm以下であるであるため、結晶性が高く、かつ分散性に優れる。そのため、本発明のチタン酸ストロンチウム粒子は、光触媒材や、積層セラミックスコンデンサのセラミックス誘電体に好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6