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特開2023-107093ガス分析装置、ガス分析用プログラム、及びガス分析方法
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  • 特開-ガス分析装置、ガス分析用プログラム、及びガス分析方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107093
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ガス分析装置、ガス分析用プログラム、及びガス分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20230726BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008201
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】仲 翔太
(72)【発明者】
【氏名】志水 徹
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG01
2G059HH01
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM04
2G059MM14
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】測定中に変化したバックグラウンド信号の影響を取り除けるようにする。
【解決手段】チャンバCHに光を射出する光源10と、チャンバCHを通過した光を検出する光検出器20と、光検出器20により得られた光スペクトルに基づいて、対象成分の濃度を算出する濃度算出部31と、濃度算出部31による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するバックグラウンドデータ作成部32とを備え、バックグラウンドデータ作成部32が、バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで光検出器20により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいてバックグラウンドデータを作成するようにした。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバに光を射出する光源と、
前記チャンバを通過した光を検出する光検出器と、
前記光検出器により得られた光スペクトルに基づいて、対象成分の経時的に変化する濃度を連続的に算出する濃度算出部と、
前記濃度算出部による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するバックグラウンドデータ作成部とを備え、
前記バックグラウンドデータ作成部が、
バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで前記光検出器により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいて前記バックグラウンドデータを作成する、ガス分析装置。
【請求項2】
前記バックグラウンドデータ作成部が、経時的に変化する複数の前記バックグラウンドデータを作成する、請求項1記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記バックグラウンドデータ作成部が、前記異なるタイミングで取得した前記光スペクトルそれぞれの二次微分波形に基づいて、前記バックグラウンドデータを作成する、請求項1又は2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記バックグラウンドデータ作成部が、
前記異なるタイミングで取得した前記光スペクトル、又は、前記光スペクトルそれぞれの二次微分波形から離散的な波長に対応する強度を抽出して、前記バックグラウンドデータにおける前記離散的な波長の強度を算出するとともに、それらの離散的な波長の間の強度をスプライン補間により算出する、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記バックグラウンド信号を取得可能な状態は、前記チャンバに不活性ガスが満たされている状態又は前記チャンバが真空引きされている状態である、請求項1記載のガス分析装置。
【請求項6】
赤外吸光法を用いて前記対象成分の濃度を算出するものである、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項7】
チャンバに光を射出する光源と、前記チャンバを通過した光を検出する光検出器とを備えるガス分析装置に用いられるプログラムであり、
前記光検出器により得られた光スペクトルに基づいて、対象成分の経時的に変化する濃度を連続的に算出する濃度算出部と、
前記濃度算出部による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するバックグラウンドデータ作成部としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、
前記バックグラウンドデータ作成部が、
バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで前記光検出器により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいて前記バックグラウンドデータを作成する、ガス分析用プログラム。
【請求項8】
チャンバに光を射出する光源と、前記チャンバを通過した光を検出する光検出器とを備えるガス分析装置を用いたガス分析方法であって、
前記光検出器により得られた光スペクトルに基づいて、対象成分の経時的に変化する濃度を連続的に算出する濃度算出ステップと、
前記濃度算出部による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するバックグラウンド作成ステップとを備え、
前記バックグラウンド作成ステップにおいて、
バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで前記光検出器により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいて前記バックグラウンドデータを作成する、ガス分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析装置、ガス分析用プログラム、及びガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造ラインに組み込まれて成膜装置のプロセスチャンバ等へ供給されるガスの濃度を測定する装置として、吸光分光法を用いたもの(以下、吸光分光装置という)がある(特許文献1)。
【0003】
前記吸光分光装置は、ガスが吸収する波長(以下、測定波長とする)を含んだ光を照射する光源と、光源から射出された光の強度を検出する受光部とを備えた構造である。
【0004】
ところで、従来の吸光分光装置を使用する場合は、測定対象のガスが存在しない状態を作り出し、バックグラウンド信号を取得する必要がある。このため、従来の吸光分光装置においては、真空引きをしたり、測定波長の光を吸収しないガス(例えば、N2ガス)によってパージすることにより、前記状態を作り出してバックグラウンド信号の取得を行っている。
【0005】
しかし、従来の吸光分光装置では、周囲温度等の変化により、測定中にバックグランド信号が変化してしまうと、測定値にバックグラウンド信号の変化分が重畳し、測定精度が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3274656号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、測定中に変化したバックグラウンド信号の影響を取り除くことを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るガス分析装置は、チャンバに光を射出する光源と、前記チャンバを通過した光を検出する光検出器と、前記光検出器により得られた光スペクトルに基づいて、対象成分の経時的に変化する濃度を連続的に算出する濃度算出部と、前記濃度算出部による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するバックグラウンドデータ作成部とを備え、前記バックグラウンドデータ作成部が、バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで前記光検出器により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいて前記バックグラウンドデータを作成することを特徴とするものである。
【0009】
このように構成されたガス分析装置によれば、濃度算出に用いられるバックグラウンドデータが、バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで光検出器により得られる光スペクトルに基づいて作成されるので、例えば周囲温度やフリンジの影響などによるバックグラウンド信号のシフトを加味したデータとすることができ、このバックグラウンドデータを用いて対象成分の濃度を算出することで、測定中に変化したバックグラウンド信号の影響を取り除くことができる。なお、具体的な実験データは後述する。
【0010】
前記バックグラウンドデータ作成部が、経時的に変化する複数の前記バックグラウンドデータを作成することが好ましい。
これならば、経時的に変化する中の複数のタイミングにおけるバックグラウンドデータを用いて濃度算出することができ、測定中に変化したバックグラウンド信号の影響をより確実に取り除くことができる。
【0011】
対象成分が極微量である場合、僅かな変動を検出できるようにする実施態様として、二次微分波形に基づいて対象成分の濃度を算出する態様が挙げられる。
この場合において、極微量な対象成分の濃度を精度良く算出するためには、前記バックグラウンドデータ作成部が、異なるタイミングで取得した前記光スペクトルそれぞれの二次微分波形に基づいて、前記バックグラウンドデータを作成することが好ましい。
【0012】
前記バックグラウンドデータ作成部が、前記異なるタイミングで取得した前記光スペクトル、又は、前記光スペクトルそれぞれの二次微分波形から離散的な波長に対応する強度を抽出して、前記バックグラウンドデータにおける前記離散的な波長の強度を算出するとともに、それらの離散的な波長の間の強度をスプライン補間により算出することが好ましい。
これならば、バックグラウンドデータを作成するうえでの計算量を減らすことができる。
【0013】
前記バックグラウンド信号を取得可能な状態の具体的な実施態様としては、前記チャンバに不活性ガスが満たされている状態又は前記チャンバが真空引きされている状態を挙げることができる。
【0014】
本ガス分析装置の具体的な態様としては、赤外吸光法を用いて前記対象成分の濃度を算出するものを挙げることができる。
【0015】
また、本発明に係るガス分析用プログラムは、チャンバに光を射出する光源と、前記チャンバを通過した光を検出する光検出器とを備えるガス分析装置に用いられるプログラムであり、前記光検出器により得られた光スペクトルに基づいて、対象成分の経時的に変化する濃度を連続的に算出する濃度算出部と、前記濃度算出部による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するバックグラウンドデータ作成部としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、前記バックグラウンドデータ作成部が、バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで前記光検出器により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいて前記バックグラウンドデータを作成することを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明に係るガス分析方法は、チャンバに光を射出する光源と、前記チャンバを通過した光を検出する光検出器とを備えるガス分析装置を用いたガス分析方法であって、前記光検出器により得られた光スペクトルに基づいて、対象成分の経時的に変化する濃度を連続的に算出する濃度算出ステップと、前記濃度算出部による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するバックグラウンド作成ステップとを備え、前記バックグラウンド作成ステップにおいて、バックグラウンド信号を取得可能な状態において、異なるタイミングで前記光検出器により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいて前記バックグラウンドデータを作成することを特徴とする方法である。
【0017】
このようなガス分析用プログラム及びガス分析方法であれば、上述したガス分析装置と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べた本発明によれば、測定中に変化したバックグラウンド信号の影響を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るガス分析装置の全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態の情報処理装置の機能を示す機能ブロック図。
図3】同実施形態の吸光度スペクトルの二次微分波形の一例を示すグラフ。
図4】バックグラウンド信号のシフトを説明するための実験データ。
図5】同実施形態のバックグラウンドデータ作成部の動作を説明するための表。
図6】同実施形態のガス分析装置の作用効果を示す実験データ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態に係るガス分析装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
このガス分析装置100は、図1に示すように、チャンバCHに光を射出する光源10と、チャンバCHを通過した光を検出する光検出器20と、光検出器20からの信号を取得する情報処理装置30とを備えている。なお、チャンバCHは、ここでは配管が接続されるガス導入ポート及びガス導出ポートを有するものであり、ガス分析装置100を構成するガスセルであっても良いし、半導体製造プロセスに用いられるプロセスチャンバであっても良く、さらにはガスが流れる配管そのものであっても良い。
【0022】
光源10は、赤外光を射出するものであり、具体的にはレーザ光源である。ただし、光源10としては、これに限らず、紫外光、X線、又は放射線などを射出するものであっても良い。
【0023】
光検出器20は、分析対象ガスを透過した光を検出するとともに、その検出された光の強度に応じた光強度信号を後述の情報処理装置30に出力するものである。
【0024】
情報処理装置30は、CPU、メモリなどを備えた汎用乃至専用のコンピュータであり、前記メモリの所定領域に格納したガス分析用プログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することによって、図2に示すように、濃度算出部31及びバックグラウンドデータ作成部32としての機能を少なくとも発揮するものである。
【0025】
濃度算出部31は、上述した光検出器20により検出される光の波長ごとの光強度を示す光スペクトルに基づいて、チャンバCH内のガスに含まれる対象成分の経時的に変化する濃度(分圧)を連続的に算出し、例えばディスプレイ等に連続的に出力するものである。
【0026】
ここでの光スペクトルは、赤外光の吸光度スペクトルであり、本実施形態の濃度算出部31は、対象成分の濃度を赤外吸光法により算出するものである。
【0027】
より具体的に説明すると、この濃度算出部31は、例えばロックインアンプを用いて、上述した吸光度スペクトルから図3に示すような二次微分波形を得ることで、この二次微分波形を用いて対象成分の濃度を算出するものである。より詳細には、吸光度スペクトルより得られる二次微分波形からバックグラウンド信号の影響分を差し引いた補正後の二次微分波形に基づいて対象成分の濃度を算出するように構成されている。なお、二次微分波形とは、ロックイン周波数を変調周波数の2倍に選ぶことで、吸光度スペクトルの二次微分により近似された波形であり、図3に示すように、横軸を波長、縦軸を強度として表される波形である。
【0028】
バックグラウンドデータ作成部32は、上述した濃度算出部31による濃度算出に用いられるバックグラウンドデータを作成するものである。
【0029】
このバックグラウンドデータは、本ガス分析装置100により分析するガスに対象成分が実質的に含まれていない状態において、濃度算出部31により出力される信号であるバックグラウンド信号の大きさを示すデータ、又は、そのバックグラウンド信号に基づいて算出されるデータである。
【0030】
ここで、図4に示すグラフは、チャンバCHに対象成分を含むガスを所定時間に亘り供給した場合に、その供給時及び供給前後に濃度算出部31から出力される濃度の挙動を示している。
ここでは、チャンバCHを真空引きしており、チャンバCHへの前記ガスの供給前と、その供給の停止後とでは、チャンバCHに設けた真空計(不図示)の計測値(全圧)は概ね0であり、対象成分の濃度、すなわち対象成分の分圧も、チャンバCHへのガスの供給前と、その供給の停止後とでは、概ね0となるはずである。
【0031】
そうすると、ガスの供給前及びそのガスの供給の停止後は、どちらも対象成分の濃度は出力されないはずであり、かかる現象に鑑みれば、ガスの供給前に現れるバックグラウンド信号の大きさと、そのガスの供給の停止後に現れるバックグラウンド信号の大きさとは概ね一致するはずである。
【0032】
しかしながら、図4に示すように、濃度算出部31による出力の実際の挙動を見ると、ガスの供給前に現れるバックグラウンド信号の大きさに対して、そのガスの供給の停止後に現れるバックグラウンド信号の大きさがシフトしている。この現象は、周囲温度やフリンジの影響などに起因したものと推測される。
【0033】
そこで、バックグラウンドデータ作成部32は、バックグラウンド信号を取得可能な状態における異なるタイミングで光検出器20により得られる光スペクトルを取得し、これらの光スペクトルに基づいてバックグラウンドデータを作成するように構成されている。
なお、バックグラウンド信号を取得可能な状態とは、上述したようなチャンバCHが真空引きされている状態に限らず、例えばチャンバCHが不活性ガスで満たされている状態など、チャンバCHに対象成分が実質的に存在していない状態である。
【0034】
本実施形態のバックグラウンド作成部32は、チャンバCHに対象成分を含むガスを供給する前においてバックグラウンド信号を取得可能な状態で取得した吸光度スペクトル(以下、供給前スペクトルともいう)と、その測定対象成分を含むガスの供給を停止した後においてバックグラウンド信号を取得可能な状態で取得した吸光度スペクト(以下、停止後スペクトルともいう)とを取得して、これらの供給前スペクトル及び停止後スペクトルに基づいてバックグラウンドデータを作成する。
【0035】
本実施形態のバックグラウンドデータ作成部32は、供給前スペクトルの二次微分波形である供給前二次微分波形と、停止後スペクトルの二次微分波形である停止後二次微分波形とに基づいて、バックグラウンドデータを作成する。
【0036】
ここで、図5に示すように、上述した供給前スペクトルが現れた時刻を第1時刻t1、停止後スペクトルが現れた時刻を第2時刻t2、これらの第1時刻t1から第2時刻t2までの間におけるプロセス中の時刻を第3時刻t3として、第3時刻における濃度の算出に用いられるバックグラウンドデータの作成方法について説明する。
【0037】
バックグラウンドデータ作成部32は、まず、供給前二次微分波形及び停止後二次微分波形に含まれる多数のプロットの中から、離散的な波長それぞれに対する強度を抽出し、次いで、バックグラウンドデータにおける前記離散的な波長に対する強度を算出する。なお、離散的な波長としては、等間隔な波長であっても良いし、波形の極大値及び極小値に対応する波長などであっても良い。
【0038】
より具体的に説明すると、バックグラウンドデータ作成部32は、供給前二次微分波形に含まれる離散的な波長に対する強度それぞれと、停止後二次微分波形に含まれる前記離散的な波長に対する強度それぞれとの差分を算出する。そして、この差分と、例えば、第1時刻t1から第2時刻t2までの時間及び第1時刻t1から第3時刻t3までの時間の比率kとを用いて、第3時刻におけるバックグラウンドデータにおける前記離散的な波長に対する強度を算出する。
【0039】
そして、バックグラウンドデータ作成部32は、離散的な波長それぞれに対して算出された強度の間をスプライン補間していくことで、第3時刻t3における濃度の算出に用いられるバックグラウンドデータを作成する。
【0040】
そして、バックグラウンドデータ作成部32は、経時的に変化する複数のバックグラウンドデータを作成するように構成されており、具体的には、チャンバCHへのガスの供給を開始してから、その供給を停止するまでの間における複数の時刻におけるバックグラウンドデータを作成する。
【0041】
このように作成された複数のバックグラウンドデータは、バックグラウンドデータ作成部32から濃度算出部31に出力され、濃度算出部31は、これら複数のバックグラウンドデータを用いて対象成分の濃度を算出する。
【0042】
これにより、図6に示すように、ガスの供給後からその供給を停止するまでの亘る対象成分の濃度の経時的な変化を得ることができる。
【0043】
<本実施形態の効果>
このように構成されたガス分析装置100によれば、バックグラウンドデータ作成部32が、供給前スペクトル及び停止後スペクトルに基づいてバックグラウンドデータを作成するので、例えば周囲温度やフリンジの影響などによるシフトを加味したバックグラウンドデータを得ることができる。
そして、このバックグラウンドデータを用いて対象成分の濃度を算出することで、図6に示すように、測定中に変化したバックグラウンド信号の影響を取り除くことができる。
【0044】
さらに、バックグラウンドデータ作成部32が、経時的に変化する中の複数の時刻におけるバックグラウンドデータを作成するので、バックグラウンド信号の影響をより適切に取り除くことができる。
【0045】
加えて、濃度算出部31及びバックグラウンドデータ作成部32が、吸光度スペクトルの二次微分波形を用いて濃度算出及びバックグラウンドデータの作成をするので、対象成分が極微量である場合であっても、僅かな変動を検出することができ、対象成分の濃度を精度良く算出することができる。
【0046】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態の濃度算出部31は、二次微分波形に基づいて濃度算出するものであったが、光検出器20により得られる光スペクトルから該光スペクトルに含まれるバックグラウンド信号の影響分を差し引いた補正後の光スペクトルを用いて対象成分の濃度を算出するものであっても良い。
この場合のバックグラウンドデータ作成部32としては、供給前スペクトル及び停止後スペクトルから、二次微分波形を算出することなく、バックグラウンドデータを作成する態様を挙げることができる。
【0047】
バックグラウンド信号を取得可能な状態として、前記実施形態ではチャンバCHが真空引きされている状態やチャンバCHが不活性ガスで満たされている状態などを例示したが、その他、チャンバCHの全圧、チャンバCHに流入するガスの流量(ゼロも含む)、又は、チャンバCHから流出するガスの流量(ゼロも含む)が、互いに同じになる状態も挙げることができる。
【0048】
ガス分析装置100としては、バックグラウンド信号を取得可能な状態であることを検知できるように構成されており、検知した場合に、バックグラウンドデータ作成部32がバックグラウンドデータを自動的に作成するように構成されていても良い。
【0049】
濃度算出部31としては、前記実施形態では赤外吸光法を用いて濃度を算出するものであったが、例えば、ガスを透過させた紫外線、X線、又は放射線などを検出し、これにより得られる光スペクトルに基づいて対象成分の濃度を算出するものであっても良い。
【0050】
前記実施形態のバックグラウンドデータ作成部32は、チャンバCHに対象成分を含むガスを供給する前後それぞれにおいて取得した光スペクトルに基づいてバックグラウンドデータを作成していたが、チャンバCHにガスを供給することなく、例えばチャンバCH内に含まれる対象成分を熱やプラズマなどを用いて反応させる態様において、バックグラウンドデータ作成部32は、そのチャンバCH内における反応の前後それぞれにおいて取得した光スペクトルに基づいてバックグラウンドデータを作成するように構成されていても良い。
【0051】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0052】
100・・・ガス分析装置
CH ・・・チャンバ
10 ・・・光源
20 ・・・光検出器
30 ・・・情報処理装置
31 ・・・濃度算出部
32 ・・・バックグラウンドデータ作成部

図1
図2
図3
図4
図5
図6