(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107154
(43)【公開日】2023-08-02
(54)【発明の名称】インク組成物及び当該インク組成物を用いた光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20230726BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20230726BHJP
C07D 495/04 20060101ALI20230726BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20230726BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H01L31/08 T
H01L31/04 112A
H01L31/04 152B
H01L31/04 152G
C07D495/04 101
C07D519/00
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008297
(22)【出願日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 顕
(72)【発明者】
【氏名】石飛 昌光
(72)【発明者】
【氏名】平岡 諒一
【テーマコード(参考)】
4C071
4C072
4J032
5F151
5F849
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB02
4C071CC11
4C071CC22
4C071DD40
4C071EE13
4C071FF17
4C071GG01
4C071JJ01
4C071KK14
4C071LL04
4C071LL10
4C072MM08
4C072UU04
4C072UU10
4J032BA02
4J032BB04
4J032BC03
4J032BC12
4J032CG01
4J032CG08
5F151AA11
5F151DA07
5F151FA04
5F151FA06
5F849AA03
5F849AB11
5F849FA04
5F849FA05
5F849XA02
5F849XA13
5F849XA35
5F849XA39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光電変換素子の特性を向上させる。
【解決手段】少なくとも1種のp型半導体材料及び少なくとも1種のn型半導体材料を含む半導体材料と、第1溶媒及び該第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する第2溶媒を含む2種以上の溶媒とを含み、p型半導体材料及びn型半導体材料のうちのいずれか一方が下記式(I)で表される非フラーレン化合物であり、下記式(I)で表される非フラーレン化合物のうちのA
1とB
1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB
1を含む化合物のハンセン溶解度パラメータの極性項P(B
1)(MPa
0.5)と前記第2溶媒のハンセン溶解度パラメータの極性項P(S2)(MPa
0.5)とが下記式(III)で表される条件を満たす、インク組成物。
A
1-B
1-(A
1)n(I)
|P(B
1)-P(S2)|>3.2(MPa
0.5)(III)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のp型半導体材料及び少なくとも1種のn型半導体材料を含む半導体材料と、
第1溶媒及び該第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する第2溶媒を含む2種以上の溶媒とを含み、
前記p型半導体材料及び前記n型半導体材料のうちのいずれか一方が下記式(I)で表される非フラーレン化合物であり、
下記式(I)で表される非フラーレン化合物のうちのA1とB1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB1を含む化合物のハンセン溶解度パラメータの極性項P(B1)(MPa0.5)と前記第2溶媒のハンセン溶解度パラメータの極性項P(S2)(MPa0.5)とが下記式(III)で表される条件を満たす、インク組成物。
A1-B1-(A1)n (I)
|P(B1)-P(S2)|>3.2(MPa0.5) (III)
(式(I)中、
A1は、電子吸引性の基を表し、
B1は、1以上の構成単位を含み、π共役系を構成している基を表し、
nは、0又は1であって、nが1である場合、2つあるA1は、同一であっても異なっていてもよく、
A1とB1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA1を含む化合物とB1を含む化合物とは、下記式(II)で表される条件を満たす。
EHOMO(B1)-EHOMO(A1)>2.0(eV) (II)
(式(II)中、
EHOMO(B1)(eV)は、A1とB1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表し、
EHOMO(A1)(eV)は、A1とB1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表す。))
【請求項2】
前記第2溶媒が、前記第1溶媒の沸点よりも30℃以上高い沸点を有する溶媒である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記第2溶媒が、エーテル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒又はエステル溶媒である、請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記式(I)で表される非フラーレン化合物が、n型半導体材料である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記式(I)中、B
1に含まれる前記1以上の構成単位のうちの少なくとも1つである第1の構成単位は下記式(IV)で表される構成単位であり、かつ該第1の構成単位以外の残余の第2の構成単位は不飽和結合を含む2価の基、2価の芳香族炭素環基又は2価の芳香族複素環基であって、前記第1の構成単位が2つ以上ある場合、2つ以上ある第1の構成単位は、同一であっても異なっていてもよく、前記第2の構成単位が2つ以上ある場合、2つ以上ある第2の構成単位は、同一であっても異なっていてもよい、請求項1~4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化1】
(式(IV)中、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、
Yは、直接結合、-C(=O)-で表される基又は酸素原子を表し、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいアシル基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-R
aで表される基、又は
-SO
2-R
bで表される基を表し、
R
a及びR
bは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記第1の構成単位が、下記式(V)で表される構成単位である、請求項5に記載のインク組成物。
【化2】
(式(V)中、
Y及びRは、前記定義のとおりであり、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子を表し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、=C(R)-で表される基又は窒素原子を表す。)
【請求項7】
前記第1の構成単位が、下記式(V-1)で表される構成単位である、請求項6に記載のインク組成物。
【化3】
(式(V-1)中、
Yは、-C(=O)-で表される基又は酸素原子を表し、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいアシル基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-R
aで表される基、又は
-SO
2-R
bで表される基を表し、
R
a及びR
bは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
B1が、下記式(VII-1)~式(VII-16)で表される構造からなる群から選択されるいずれか1つの構造を有する2価の基である、請求項6又は7に記載のインク組成物。
―CU1- (VII-1)
-CU1-CU1- (VII-2)
-CU1-CU2- (VII-3)
-CU1-CU1-CU1- (VII-4)
―CU1-CU2-CU1- (VII-5)
―CU1-CU1-CU2- (VII-6)
-CU1-CU2-CU2- (VII-7)
―CU2-CU1-CU2- (VII-8)
-CU1-CU1-CU1-CU1- (VII-9)
-CU1-CU1-CU1-CU2- (VII-10)
-CU1-CU1-CU2-CU1- (VII-11)
-CU1-CU1-CU2-CU2- (VII-12)
-CU1-CU2-CU1-CU2- (VII-13)
-CU1-CU2-CU2-CU1- (VII-14)
-CU1-CU2-CU2-CU2- (VII-15)
-CU2-CU1-CU2-CU2- (VII-16)
(式(VII-1)~式(VII-16)中、
CU1は、前記第1の構成単位を表し、
CU2は、前記第2の構成単位を表す。
CU1が2つ以上ある場合、2つ以上あるCU1は、同一であっても異なっていてもよく、CU2が2つ以上ある場合、2つ以上あるCU2は、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記p型半導体材料が共役高分子化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のインク組成物を固化させた固化膜。
【請求項11】
第1電極と、第2電極と、該第1電極及び第2電極の間に設けられている活性層を含み、該活性層が請求項10に記載の固化膜である、光電変換素子。
【請求項12】
光検出素子である、請求項11に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物及びこれを用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、例えば、省エネルギー、二酸化炭素の排出量の低減の観点から極めて有用なデバイスであり、注目されている。
【0003】
光電変換素子とは、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に設けられる活性層とを少なくとも備える素子である。光電変換素子においては、上記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極を透明又は半透明の材料から構成し、透明又は半透明とした電極側から活性層に光を入射させる。活性層に入射した光のエネルギー(hν)によって、活性層において電荷(正孔及び電子)が生成し、生成した正孔は陽極に向かって移動し、電子は陰極に向かって移動する。そして、陽極及び陰極に到達した電荷は、素子の外部に取り出される。
【0004】
近年、活性層に有機半導体材料を含む有機光電変換素子は、軽量で大面積化が容易などの特徴から、種々応用が検討されている。そして、有機光電変換素子においてはさらなる特性の向上が求められている。そのために、さらなる種々の有機半導体材料が開発され、報告されている。
また、有機光電変換素子の活性層は、有機半導体材料を含むインク組成物を塗布して乾燥させることにより形成される。このようなインク組成物に添加物(第2溶媒)を加えることで活性層内の構造を制御し、高い光電変換特性を得る方法が検討されている。例えば、非特許文献1では、n型半導体材料にフラーレン誘導体を用いた活性層において、主溶媒(第1溶媒)に比べて沸点が高く、フラーレン誘導体を選択的に溶解する添加物として1,8-ジヨードオクタン(DIO)を加えることで、光電変換特性が向上することが報告されている。さらには同じ技術が、n型半導体材料として非フラーレン化合物(NFA)を用いた活性層においても適用されている。(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc, 2008, 130, 3619-3623
【非特許文献2】J. Mater. Chem. A, 2020, 8, 23628-23636
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非フラーレン化合物は、分子設計次第で吸収波長範囲の調整が可能であり、最近では近赤外領域に吸収を有する非フラーレン化合物も多数報告されており、近赤外線に対応できる化合物として注目されている。しかしながら、非フラーレン化合物を含む光検出素子である光電変換素子において要求される特性については未だ十分であるとは言い難い。
【0007】
よって、光電変換素子の特性をさらに向上させることができる手段が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、特に所定の溶媒を組み合わせて光電変換素子を製造することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
よって、本発明は、下記〔1〕~〔12〕を提供する。
〔1〕 少なくとも1種のp型半導体材料及び少なくとも1種のn型半導体材料を含む半導体材料と、
第1溶媒及び該第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する第2溶媒を含む2種以上の溶媒とを含み、
前記p型半導体材料及び前記n型半導体材料のうちのいずれか一方が下記式(I)で表される非フラーレン化合物であり、
下記式(I)で表される非フラーレン化合物のうちのA
1とB
1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB
1を含む化合物のハンセン溶解度パラメータの極性項P(B
1)(MPa
0.5)と前記第2溶媒のハンセン溶解度パラメータの極性項P(S2)(MPa
0.5)とが下記式(III)で表される条件を満たす、インク組成物。
A
1-B
1-(A
1)n (I)
|P(B
1)-P(S2)|>3.2(MPa
0.5) (III)
(式(I)中、
A
1は、電子吸引性の基を表し、
B
1は、1以上の構成単位を含み、π共役系を構成している基を表し、
nは、0又は1であって、nが1である場合、2つあるA
1は、同一であっても異なっていてもよく、
A
1とB
1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA
1を含む化合物とB
1を含む化合物とは、下記式(II)で表される条件を満たす。
E
HOMO(B
1)-E
HOMO(A
1)>2.0(eV) (II)
(式(II)中、
E
HOMO(B
1)(eV)は、A
1とB
1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB
1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表し、
E
HOMO(A
1)(eV)は、A
1とB
1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA
1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表す。))
〔2〕 前記第2溶媒が、前記第1溶媒の沸点よりも30℃以上高い沸点を有する溶媒である、〔1〕に記載のインク組成物。
〔3〕 前記第2溶媒が、エーテル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒又はエステル溶媒である、〔1〕又は〔2〕に記載のインク組成物。
〔4〕 前記式(I)で表される非フラーレン化合物が、n型半導体材料である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のインク組成物。
〔5〕 前記式(I)中、B
1に含まれる前記1以上の構成単位のうちの少なくとも1つである第1の構成単位は下記式(IV)で表される構成単位であり、かつ該第1の構成単位以外の残余の第2の構成単位は不飽和結合を含む2価の基、2価の芳香族炭素環基又は2価の芳香族複素環基であって、前記第1の構成単位が2つ以上ある場合、2つ以上ある第1の構成単位は、同一であっても異なっていてもよく、前記第2の構成単位が2つ以上ある場合、2つ以上ある第2の構成単位は、同一であっても異なっていてもよい、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のインク組成物。
【化1】
(式(IV)中、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、
Yは、直接結合、-C(=O)-で表される基又は酸素原子を表し、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいアシル基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-R
aで表される基、又は
-SO
2-R
bで表される基を表し、
R
a及びR
bは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
〔6〕 前記第1の構成単位が、下記式(V)で表される構成単位である、〔5〕に記載のインク組成物。
【化2】
(式(V)中、
Y及びRは、前記定義のとおりであり、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子を表し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、=C(R)-で表される基又は窒素原子を表す。)
〔7〕 前記第1の構成単位が、下記式(V-1)で表される構成単位である、〔6〕に記載のインク組成物。
【化3】
(式(V-1)中、
Yは、-C(=O)-で表される基又は酸素原子を表し、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいアシル基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-R
aで表される基、又は
-SO
2-R
bで表される基を表し、
R
a及びR
bは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。)
〔8〕 B
1が、下記式(VII-1)~式(VII-16)で表される構造からなる群から選択されるいずれか1つの構造を有する2価の基である、〔6〕又は〔7〕に記載のインク組成物。
―CU1- (VII-1)
-CU1-CU1- (VII-2)
-CU1-CU2- (VII-3)
-CU1-CU1-CU1- (VII-4)
―CU1-CU2-CU1- (VII-5)
―CU1-CU1-CU2- (VII-6)
-CU1-CU2-CU2- (VII-7)
―CU2-CU1-CU2- (VII-8)
-CU1-CU1-CU1-CU1- (VII-9)
-CU1-CU1-CU1-CU2- (VII-10)
-CU1-CU1-CU2-CU1- (VII-11)
-CU1-CU1-CU2-CU2- (VII-12)
-CU1-CU2-CU1-CU2- (VII-13)
-CU1-CU2-CU2-CU1- (VII-14)
-CU1-CU2-CU2-CU2- (VII-15)
-CU2-CU1-CU2-CU2- (VII-16)
(式(VII-1)~式(VII-16)中、
CU1は、前記第1の構成単位を表し、
CU2は、前記第2の構成単位を表す。
CU1が2つ以上ある場合、2つ以上あるCU1は、同一であっても異なっていてもよく、CU2が2つ以上ある場合、2つ以上あるCU2は、同一であっても異なっていてもよい。)
〔9〕 前記p型半導体材料が共役高分子化合物である、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載のインク組成物。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載のインク組成物を固化させた固化膜。
〔11〕 第1電極と、第2電極と、該第1電極及び第2電極の間に設けられている活性層を含み、該活性層が〔10〕に記載の固化膜である、光電変換素子。
〔12〕 光検出素子である、〔11〕に記載の光電変換素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光電変換素子の製造方法において所定の溶媒を組み合わせて用いることにより特性がより向上した光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、光電変換素子の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明し、特に光電変換素子については、図面を参照して説明する。なお、図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図面に示された配置で、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0013】
以下の説明において共通して用いられる用語についてまず説明する。
【0014】
「非フラーレン化合物」とは、フラーレン及びフラーレン誘導体のいずれでもない化合物をいう。
【0015】
「π共役系」とは、π電子が複数の結合に非局在化している系を意味している。
【0016】
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103以上1×108以下である重合体を意味する。なお、高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0017】
「構成単位」とは、本実施形態の化合物、及び高分子化合物中に1個以上存在している、原料化合物(モノマー)に由来する残基を意味する。
【0018】
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0019】
「ハロゲン原子」の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0020】
「置換基を有していてもよい」態様には、化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様が含まれる。
【0021】
「置換基」の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、及びニトロ基が挙げられる。なお、本明細書において炭素原子数という場合には、通常、当該炭素原子数には置換基の炭素原子数は含まれない。
【0022】
本明細書において、特に特定しない限り、「アルキル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐状又は環状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
【0023】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、アダマンチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基が挙げられる。
【0024】
アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基を有するアルキル基は、例えば、上記例示のアルキル基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基で置換された基である。
【0025】
置換基を有するアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基が挙げられる。
【0026】
「シクロアルキル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0027】
シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基などの置換基を有しないアルキル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0028】
置換基を有するシクロアルキル基の具体例としては、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0029】
「p価の芳香族炭素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子p個を除いた残りの原子団を意味する。p価の芳香族炭素環基は、置換基をさらに有していてもよい。なお、「芳香族炭素環」には、2以上の炭素環(芳香環)同士を、例えばヘテロ原子を含む基(置換基)により渡環した構造が含まれる。
【0030】
「アリール基」は、1価の芳香族炭素環基であって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。
【0031】
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0032】
「アルキルオキシ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状又は環状のアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0033】
アルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。アルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、3-ヘプチルドデシルオキシ基、ラウリルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などで置換された基が挙げられる。
【0034】
「シクロアルキルオキシ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0035】
シクロアルキルオキシ基の例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基などの、置換基を有しないシクロアルキルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、フッ素原子、アルキル基などで置換された基が挙げられる。
【0036】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0037】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0038】
「アルキルチオ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状及び環状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0039】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0040】
「シクロアルキルチオ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0041】
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基の例としては、シクロヘキシルチオ基が挙げられる。
【0042】
「アリールチオ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0043】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基(C1~C12は、その直後に記載された基の炭素原子数が1~12であることを示す。以下も同様である。)、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0044】
「p価の複素環基」とは、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。
【0045】
p価の複素環基は、置換基をさらに有していてもよい。p価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは2~6である。
【0046】
複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。p価の複素環基には、「p価の芳香族複素環基」が含まれる。
【0047】
「p価の芳香族複素環基」は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の芳香族複素環基は、置換基をさらに有していてもよい。
【0048】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
【0049】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、及びジベンゾホスホールが挙げられる。
【0050】
芳香族複素環式化合物のうち、芳香族複素環自体が芳香族性を示さず、複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、及びベンゾピランが挙げられる。
【0051】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは4~20である。
【0052】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、1価の複素環基の具体例としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基等で置換された基が挙げられる。
【0053】
「置換アミノ基」は、置換基を有するアミノ基を意味する。アミノ基が有する置換基の例としては、アルキル基、アリール基、及び1価の複素環基が挙げられ、アルキル基、アリール基、又は1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、通常2~30である。
【0054】
置換アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0055】
「アシル基」は、置換基を有していてもよい。アシル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0056】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例として、アルジミン、ケチミン、及びアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基等で置換された化合物が挙げられる。
【0057】
イミン残基は、通常、炭素原子数が2~20であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0058】
【0059】
「アミド基」は、アミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20であり、好ましくは1~18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0060】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常4~20である。酸イミド基の具体例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0061】
【0062】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又は1価の複素環基を表す。
【0063】
置換オキシカルボニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは2~48である。
【0064】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0065】
「アルケニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐状又は環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
【0066】
アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、及び、これらの基における水素原子がアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0067】
「シクロアルケニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルケニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0068】
シクロアルケニル基の例としては、シクロヘキセニル基などの、置換基を有しないシクロアルケニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0069】
置換基を有するシクロアルケニル基の例としては、メチルシクロヘキセニル基、及びエチルシクロヘキセニル基が挙げられる。
【0070】
「アルキニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐状又は環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
【0071】
アルキニル基は置換基を有していてもよい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、及び、これらの基における水素原子がアルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0072】
「シクロアルキニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは12~19である。
【0073】
シクロアルキニル基の例としては、シクロヘキシニル基などの置換基を有しないシクロアルキニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0074】
置換基を有するシクロアルキニル基の例としては、メチルシクロヘキシニル基、及びエチルシクロヘキシニル基が挙げられる。
【0075】
「アルキルスルホニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルキルスルホニル基は、置換基を有していてもよい。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、及びドデシルスルホニル基が挙げられる。
【0076】
化学式に付されうる符合「*」は、結合手を表す。
【0077】
「インク組成物(以下、単にインクという場合もある。)」は、塗布法に用いられる液状体を意味しており、着色した液に限定されない。また、「塗布法」は、液状物質を用いて膜(層)を形成する方法を包含し、例えば、スロットダイコート法、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットコート法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、及びキャピラリーコート法が挙げられる。
【0078】
インク組成物は、溶液であってよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)などの分散液であってもよい。
【0079】
「吸収ピーク波長」とは、所定の波長範囲で測定された吸収スペクトルの吸収ピークに基づいて特定されるパラメータであり、吸収スペクトルの吸収ピークのうちの吸光度が最も大きい吸収ピークの波長をいう。
【0080】
「外部量子効率」とは、EQE(External Quantum Efficiency)とも称され、光電変換素子に照射された光子の数に対して発生した電子のうち光電変換素子の外部に取り出すことができた電子の数を比率(%)で示した値をいう。
【0081】
本実施形態のインク組成物は、少なくとも1種のp型半導体材料及び少なくとも1種のn型半導体材料を含む半導体材料と、
第1溶媒及び該第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する第2溶媒を含む2種以上の溶媒とを含み、
該p型半導体材料及び該n型半導体材料のうちのいずれか一方が下記式(I)で表される非フラーレン化合物であり、
下記式(I)で表される非フラーレン化合物のうちのB1とA1との結合を切断してできる末端を水素原子で終端したB1を含む化合物のハンセン溶解度パラメータの極性項P(B1)(MPa0.5)と前記第2溶媒のハンセン溶解度パラメータの極性項P(S2)(MPa0.5)とが下記式(III)で表される条件を満たす、インク組成物である。
A1-B1-(A1)n (I)
|P(B1)-P(S2)|>3.2(MPa0.5) (III)
(式(I)中、
A1は、電子吸引性の基を表し、
B1は、1以上の構成単位を含み、π共役系を構成している基を表し、
nは、0又は1であって、nが1である場合、2つあるA1は、同一であっても異なっていてもよく、
A1とB1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA1を含む化合物とB1を含む化合物とは、下記式(II)で表される条件を満たす。
EHOMO(B1)-EHOMO(A1)>2.0(eV) (II)
(式(II)中、
EHOMO(B1)(eV)は、B1とA1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB1を含む化合物(以下、単にB1を含む化合物という場合がある。)の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表し、
EHOMO(A1)(eV)は、A1とB1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA1を含む化合物(以下、単にA1を含む化合物という場合がある。)の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表す。))
【0082】
以下、本実施形態のインク組成物が含みうる半導体材料である化合物について詳細に説明する。
【0083】
1.非フラーレン化合物
まず、本実施形態のインク組成物において、半導体材料として用いられうる化合物について説明する。本実施形態の非フラーレン化合物は、光電変換素子の特に活性層のn型半導体材料として好適に用いることができる。
【0084】
なお、既に説明したとおり、活性層において、非フラーレン化合物が、p型半導体材料及びn型半導体材料のうちのいずれとして機能するかは、選択された化合物の最高占有軌道(HOMO)のエネルギーレベルの値又は最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルの値から相対的に決定することができる。
【0085】
活性層に含まれるp型半導体材料のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値と、n型半導体材料のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値との関係は、光電変換素子(光検出素子)を機能させることができる範囲に適宜設定することができる。
【0086】
本実施形態の非フラーレン化合物は、下記式(I)で表される化合物である。
A1-B1-(A1)n (I)
【0087】
式(I)中、
A1は、電子吸引性の基を表し、
B1は、1以上の構成単位を含み、π共役系を構成している基を表し、
nは、0又は1であって、nが1である場合、2つあるA1は、同一であっても異なっていてもよく、
A1とB1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA1を含む化合物とB1を含む化合物とは、下記式(II)で表される条件を満たす。
EHOMO(B1)-EHOMO(A1)>2.0(eV) (II)
【0088】
式(II)中、
EHOMO(B1)(eV)は、B1とA1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表し、
EHOMO(A1)(eV)は、B1とA1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したA1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値を表す。
【0089】
本実施形態の非フラーレン化合物は、上記式(I)で表される非フラーレン化合物であって、電子求引性の1価の基であるA1が、1価又は2価の基であるB1の一端又は両端に結合した化合物である。
【0090】
本実施形態の非フラーレン化合物においては、B1のみならず、A1を含め非フラーレン化合物の全体にわたってπ共役系が構成されていることが好ましい。
【0091】
本実施形態の上記式(I)で表される非フラーレン化合物において、A1を含む化合物とB1を含む化合物とは、上記式(II)で表される条件を満たす。換言すると、上記式(I)で表される非フラーレン化合物は、B1を含む化合物の最高占有軌道(HOMO)のエネルギーレベルの値(EHOMO(B1))とA1を含む化合物の最高占有軌道(HOMO)のエネルギーレベルの値(EHOMO(A1))との差が2.0eVよりも大きくなるように構成されている。
【0092】
本実施形態の非フラーレン化合物において、B1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値(EHOMO(B1))とA1を含む化合物の最高占有軌道のエネルギーレベルの値(EHOMO(A1))との差は、基底状態における電荷の偏りを大きくすることができ、分子間に強い相互作用を生じさせることができるので、電荷輸送性を向上させ、ひいてはEQEをより向上させる観点から、2.0eVよりも大きいことが好ましく、2.2eVよりも大きいことがより好ましい。
【0093】
最高占有軌道(HOMO)のエネルギーレベルの値は、従来公知の任意好適な計算科学的手法、例えば、Gaussian社製の量子化学計算プログラムであるGaussian16を用いて算出することができる。具体的には、B1の末端を水素原子で終端した化合物及び/又はA1の末端を水素原子で終端した化合物について、当該量子化学計算プログラムを用いてB3LYPレベルの密度汎関数法により構造最適化を行い、基底関数として6-31Gを用いて算出された値を、最高占有軌道のエネルギーレベルの値(単位:eV)とすることができる。
【0094】
前記式(I)において、nが1である場合であって、2つあるA1が互いに異なっている場合には、2つのA1をそれぞれ切り出して生じた末端を水素原子で終端した2つの化合物における最高占有軌道のエネルギーレベルの値の平均値を、A1を含む化合物の最高占有軌道エネルギーの値とすることができる。
【0095】
EHOMO(A1)とEHOMO(B1)の算出例を下記表1~3に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
以下、本実施形態の非フラーレン化合物を構成しうるA1及びB1、並びに非フラーレン化合物の具体例について説明する。
【0100】
(1)A1について
本実施形態の非フラーレン化合物において、A1は、電子求引性の1価の基である。A1が2つある場合、2つあるA1は、同一であっても異なっていてもよい。2つあるA1は、非フラーレン化合物の合成をより容易にする観点から、同一の基であることが好ましい。
【0101】
A1の例としては、-CH=C(-CN)2で表される基、及び下記式(a-1)~式(a-9)で表される基が挙げられる。
【0102】
【0103】
式(a-1)~式(a-7)中、
Tは、置換基を有していてもよい炭素環、又は置換基を有していてもよい複素環を表す。炭素環及び複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。これらの環が置換基を複数有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0104】
Tで表される置換基を有していてもよい炭素環の例としては、芳香族炭素環が挙げられ、好ましくは芳香族炭素環である。Tで表される置換基を有していてもよい炭素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、及びフェナントレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、及びフェナントレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0105】
Tで表される置換基を有していてもよい複素環の例としては、芳香族複素環が挙げられ、好ましくは芳香族炭素環である。Tで表される置換基を有していてもよい複素環の具体例としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環が挙げられ、好ましくはチオフェン環、及びピリジン環、ピラジン環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環であり、より好ましくはチオフェン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0106】
Tで表される炭素環又は複素環が有しうる置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、シアノ基及び1価の複素環基が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子、炭素原子数1~6のアルキルオキシ基及び/又は炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0107】
X4、X5、及びX6は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキリデン基、又は=C(-CN)2で表される基を表し、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、又は=C(-CN)2で表される基である。
【0108】
X7は、水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表す。X7は、好ましくはシアノ基である。
【0109】
Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0110】
【0111】
式(a-8)及び式(a-9)中、
Ra6及びRa7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表し、複数あるRa6及びRa7は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
A1で表される電子求引性の1価の基の具体例としては、下記式(a-1-1)~式(a-1-4)、並びに式(a-5-1)、式(a-6-1)、式(a-6-2)及び式(a-7-1)で表される基が挙げられる。
【0113】
【0114】
式(a-1-1)~式(a-1-4)、並びに式(a-5-1)、式(a-6-1)、式(a-6-2)及び式(a-7-1)中、
複数あるRa10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、
Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、前記と同義である。
【0115】
Ra10は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、シアノ基又はアルキル基である。Ra1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0116】
A1及びA2は、それぞれ独立して、シアノ基、カルボニル基及びチオカルボニル基からなる群から選択される1種以上を含む電子求引性の基であることが好ましい。
【0117】
A1で表される電子求引性の1価の基の好ましい例としては、下記式で表される基が挙げられる。
【0118】
【0119】
【0120】
(2)B1について
B1は、具体的には、互いにπ結合している一対以上の原子を含んでおり、π電子雲がB1の全体に広がっている基である。
【0121】
B
1は、下記式で表される構造を有することが好ましい。
【化11】
【0122】
前記式中、
Ara、Arb及びArcは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよく複数の環構造を含んでいてもよく複数の環構造が縮環していてもよい芳香族炭素環又は置換基を有していてもよく複数の環構造を含んでいてもよく複数の環構造が縮環していてもよい芳香族複素環を表し、
Ard及びAreは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよく複数の環構造を含んでいてもよく複数の環構造が縮環していてもよい2価の芳香族炭素環基又は置換基を有していてもよく複数の環構造を含んでいてもよく複数の環構造が縮環していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、
Ara、Arb、Arc、Ard及びAreそれぞれが複数個存在する場合には、複数個存在するAra、Arb、Arc、Ard及びAreそれぞれは同一であっても異なっていてもよく、
x、y、zは0、1、2又は3であり、
iは0、1、2又は3であり、
kは0又は1~10の整数であり、
mは0又は1~10の整数である。
【0123】
B1は、より具体的には、1以上の構成単位を含み、π共役系を構成している1価又は2価の基であることが好ましい。ここで、1価の基であるB1とは、2価の基であるB1の末端のうちの一端が水素原子で終端されている基である。
【0124】
B1に含まれる1以上の構成単位のうちの少なくとも1つである第1の構成単位(以下、第1の構成単位CU1ともいう。)は下記式(IV)で表される構成単位であることが好ましく、かつ該第1の構成単位以外の残余の第2の構成単位(以下、第2の構成単位CU2ともいう。)は不飽和結合を含む2価の基、2価の芳香族炭素環基又は2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
【0125】
式(I)中、第1の構成単位が2つ以上ある場合、2つ以上ある第1の構成単位は、同一であっても異なっていてもよく、第2の構成単位が2つ以上ある場合、2つ以上ある第2の構成単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0126】
【0127】
式(IV)中、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、
Yは、直接結合、-C(=O)-で表される基又は酸素原子を表し、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいアシル基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Raで表される基、又は
-SO2-Rbで表される基を表し、
Ra及びRbは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0128】
式(IV)中、Ar1及びAr2を構成しうる芳香族炭素環は、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0129】
Ar1及びAr2を構成しうる芳香族複素環は、好ましくはオキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、チオフェン環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ホスホール環、フラン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、及びジベンゾホスホール環、並びに、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ジベンゾボロール環、ジベンゾシロール環、及びベンゾピラン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0130】
Rで表されるハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。
【0131】
Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~15のアルキル基であり、さらに好ましくは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基であり、さらにまた好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基である。
【0132】
Rで表されるアルキル基が有していてもよい置換基は、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくはフッ素原子及び/又は塩素原子である。
【0133】
Rで表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数5~6のシクロアルキル基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよいシクロヘキシル基である。
【0134】
Rで表される置換基を有していてもよいアリール基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数6~15のアリール基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基である。
【0135】
Rで表されるアリール基が有していてもよい置換基は、好ましくはハロゲン原子(例、塩素原子、フッ素原子)、炭素原子数1~12のアルキル基(例、メチル基、トリフルオロメチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基)、炭素原子数1~12のアルキルオキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、オクチルオキシ基)、炭素原子数1~12のアルキルスルホニル基(例、ドデシルスルホニル基)、及び/又はシアノ基である。
【0136】
Rで表される置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキルオキシ基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~8のアルキルオキシ基であり、さらに好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、3-メチルブチルオキシ、又は2-エチルヘキシルオキシ基であって、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0137】
Rで表される置換基を有していてもよいアリールオキシ基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数6~15のアリールオキシ基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいフェニルオキシ基又はアントラセニルオキシ基である。
【0138】
Rで表されるアリールオキシ基が有していてもよい置換基は、好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0139】
Rで表される置換基を有していてもよいアルキルチオ基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~6のアルキルチオ基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~3のアルキルチオ基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよいメチルチオ基又はプロピルチオ基である。
【0140】
Rで表される置換基を有していてもよいアリールチオ基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のアリールチオ基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいフェニルチオ基である。
【0141】
Rで表されるアリールチオ基が有していてもよい置換基は、好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0142】
Rで表される置換基を有していてもよい1価の複素環基は、好ましくは置換基を有していてもよい5員又は6員である1価の複素環基である。5員である1価の複素環基の例としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、及びピロリジニル基が挙げられる。6員である1価の複素環基の例としては、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、及びテトラヒドロピラニル基が挙げられる。
【0143】
Rで表される置換基を有していてもよい1価の複素環基は、より好ましくはチエニル基、フリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、又はピラジル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0144】
Rで表される1価の複素環基が有していてもよい置換基は、好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基(例、メチル基、トリフルオロメチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基)である。
【0145】
Rで表される置換基を有していてもよいアルケニル基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数2~10のアルケニル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数2~6のアルケニル基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい2-プロペニル基又は5-ヘキセニル基である。
【0146】
Rで表される置換基を有していてもよいシクロアルケニル基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルケニル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数6~7のシクロアルケニル基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよいシクロヘキセニル基又はシクロヘプテニル基である。
【0147】
Rで表されるシクロアルケニル基が有していてもよい置換基は、好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基である。
【0148】
Rで表される置換基を有していてもよいアルキニル基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数2~10のアルキニル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数5~6のアルキニル基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい5-ヘキシニル基又は3-メチル-1-ブチニル基である。
【0149】
Rで表される置換基を有していてもよいシクロアルキニル基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のシクロアルキニル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数7~8のシクロアルキニル基であり、さらに好ましくは、置換基を有していてもよいシクロヘプチニル基又はシクロオクチニル基である。
【0150】
Rで表されるシクロアルキニル基が有していてもよい置換基は、好ましくはC1~C12アルキル基である。
【0151】
複数あるRは、それぞれ独立して、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~15のアルキル基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基であり、さらにまた好ましくは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基である。複数あるRが、いずれも置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキル基であることが特に好ましい。
【0152】
Rで表される-C(=O)-Raで表される基及び-SO2-Rbで表される基において、Raは、好ましくは、水素原子であり、Rbは、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキルオキシ基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数1~12のアルキルオキシ基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数1~6のアルキルオキシ基であり、さらにまた好ましくは、メチル基、エチル基、2-メチルプロピル基、オクチル基、ドデシル基、又はエトキシ基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0153】
式(IV)で表される構成単位の例としては、下記式で表される構成単位が挙げられる。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
前記式中、Rは既に説明したとおりである。
【0158】
B1を構成しうる前記式(IV)で表される構成単位は、下記式(V)で表される構成単位であることが好ましい。
【0159】
【0160】
式(V)中、Y及びRは、既に説明したとおりである。X1及びX2は、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子を表し、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、=C(R)-で表される基又は窒素原子を表す。
【0161】
式(V)で表される構成単位の例としては、下記式で表される構成単位が挙げられる。
【0162】
【0163】
B1を構成しうる前記式(V)で表される構成単位は、チオフェン環を2以上含み、かつ構成元素としてsp3炭素原子を含む、置換基を有していてもよい2価の多環式縮合環基下記式(V-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0164】
【0165】
式(V-1)中、Y及びRは、前記定義のとおりである。
【0166】
前記式(V-1)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式で表される構成単位が挙げられる。
【0167】
【0168】
B1を構成しうる式(V)で表される好適な構成単位の例としては、下記式(V-2)で表される構成単位も挙げられる。
【0169】
【0170】
式(V-2)中、X1及びX2、Z1及びZ2並びにRは、既に説明したとおりである。
【0171】
式(V-2)で表される構成単位の例としては、下記式(V-2-1)~式(V-2-16)で表される構成単位が挙げられる。
【0172】
【0173】
式(V-2)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式で表される構成単位が挙げられる。
【0174】
【0175】
本実施形態において、B1は、上記式(IV)又は式(V)で表される第1の構成単位(第1の構成単位CU1)を1つ含むことが好ましい。
【0176】
上記式(IV)又は式(V)で表される構成単位以外のB1が含みうる第2の構成単位(第2の構成単位CU2)としては、例えば、不飽和結合を含む2価の基、2価の芳香族炭素環基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。
【0177】
第2の構成単位CU2である「不飽和結合を含む2価の基」とは、例えば、-(CR=CR)n-で表される基(Rは前記定義のとおりであり、nは1以上の整数である。nの値は、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。)、-C≡C-で表される基、及びフェニレン基である。
【0178】
「不飽和結合を含む2価の基」の具体例としては、エテン-1,2-ジイル基、1,3-ブタジエン-1,4-ジイル基、アセチレン-1,2-ジイル基、及びフェニレン基が挙げられる。
【0179】
第2の構成単位CU2である「2価の芳香族複素環基」の具体例としては、下記式(101)~式(191)で表される基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
式(101)~式(191)中、Rは前記と同義である。
【0185】
第2の構成単位CU2である「2価の芳香族炭素環基」の具体例としては、フェニレン基(例えば、下記式1~式3)、ナフタレン-ジイル基(例えば、下記式4~式13)、アントラセン-ジイル基(例えば、下記式14~式19)、ビフェニル-ジイル基(例えば、下記式20~式25)、ターフェニル-ジイル基(例えば、下記式26~式28)、縮合環化合物基(例えば、下記式29~式35)、フルオレン-ジイル基(例えば、下記式36~式38)、及びベンゾフルオレン-ジイル基(例えば、下記式39~式46)が挙げられる。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
式1~式46中、Rは前記と同義である。
【0195】
本実施形態の化合物において、第2の構成単位CU2は、不飽和結合を含む2価の基及び下記式(VI-1)~式(VI-12)で表される基からなる群から選択される構成単位であることが好ましく、中でも、式(VI-10)~式(VI-12)で表される基からなる群から選択される構成単位であることがより好ましい。
【0196】
【0197】
式(VI-1)~式(VI-12)中、X1、X2、Z1、Z2及びRは前記定義のとおりである。
Rが2つある場合、2つあるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0198】
第2の構成単位CU2のより具体的な好ましい例としては、下記式で表される構成単位が挙げられる。これらの構成単位は、さらに置換基を有していてもよい。
【0199】
【0200】
本実施形態の化合物において、B1は、1以上の構成単位を含み、当該1以上の構成単位のうちの少なくとも1つが第1の構成単位CU1であり、かつ該第1の構成単位CU1以外の残余の構成単位が第2の構成単位CU2である。
【0201】
B1に含まれる第1の構成単位CU1及び第2の構成単位CU2の組合せ及びその配列の態様は、π共役系を構成することができることを条件として、特に制限されない。
【0202】
B1は、下記式(VII-1)~式(VII-16)で表される構造からなる群から選択されるいずれか1つの構造を有する2価の基であることが好ましい。
―CU1- (VII-1)
-CU1-CU1- (VII-2)
-CU1-CU2- (VII-3)
-CU1-CU1-CU1- (VII-4)
―CU1-CU2-CU1- (VII-5)
―CU1-CU1-CU2- (VII-6)
-CU1-CU2-CU2- (VII-7)
―CU2-CU1-CU2- (VII-8)
-CU1-CU1-CU1-CU1- (VII-9)
-CU1-CU1-CU1-CU2- (VII-10)
-CU1-CU1-CU2-CU1- (VII-11)
-CU1-CU1-CU2-CU2- (VII-12)
-CU1-CU2-CU1-CU2- (VII-13)
-CU1-CU2-CU2-CU1- (VII-14)
-CU1-CU2-CU2-CU2- (VII-15)
-CU2-CU1-CU2-CU2- (VII-16)
【0203】
式(VII-1)~式(VII-16)中、
CU1は、第1の構成単位CU1を表し、
CU2は、第2の構成単位CU2を表す。
CU1が2つ以上ある場合、2つ以上あるCU1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、CU2が2つ以上ある場合、2つ以上あるCU2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0204】
前記式(VII-1)~式(VII-16)のうちでは、式(VII-1)から式(VII-8)、式(VII-15)及び式(VII-16)で表される構造を有する2価の基が好ましく、式(VII-1)、式(VII-3)、式(VII-7)、式(VII-8)、式(VII-15)及び式(VII-16)で表される構造を有する2価の基がより好ましい。
【0205】
B1に含まれうる第1の構成単位CU1及び第2の構成単位CU2の個数の総和は、通常1以上であり、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、通常7以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。
B1に含まれうる第1の構成単位CU1の個数は、通常5以下であり、好ましくは3以下であり、より好ましくは1である。
B1に含まれうる第2の構成単位CU2の個数は、通常5以下であり、好ましくは3以下であり、より好ましくは1以下である。
【0206】
B1の具体的な好ましい例としては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
式中、Rは前記定義のとおりである。
【0214】
(3)非フラーレン化合物の具体例
本実施形態の式(I)で表される非フラーレン化合物の具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
本実施形態の式(I)で表される非フラーレン化合物のより具体的な好ましい例としては、下記式N-1~式N-7で表される化合物が挙げられる。
【0222】
【0223】
【0224】
2.非フラーレン化合物の製造方法
本実施形態の非フラーレン化合物は、後述する合成例にも示されるとおり、例えば、既に説明したA1、B1を構成することができる2以上の原料化合物を用いて、従来公知の任意好適な方法により製造(合成)することができる。
【0225】
本実施形態において、光電変換素子の活性層は、特にn型半導体材料として本実施形態の非フラーレン化合物のみを含んでいてもよく、本実施形態の非フラーレン化合物以外の化合物を、さらなるn型半導体材料として含んでいてもよい。さらなるn型半導体材料として含まれうる本実施形態の非フラーレン化合物以外の化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0226】
低分子化合物である「本実施形態の非フラーレン化合物」以外のn型半導体材料(電子受容性化合物)の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0227】
高分子化合物である「本実施形態のフラーレン化合物」以外のn型半導体材料の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0228】
「本実施形態の非フラーレン化合物」以外のn型半導体材料である化合物には、フラーレン誘導体が含まれうる。
【0229】
ここで、フラーレン誘導体とは、フラーレン(C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、及びC84フラーレン)のうちの少なくとも一部が修飾された化合物をいう。換言すると、フラーレン骨格に付加された1つ以上の基を有する化合物をいう。以下、特にC60フラーレンのフラーレン誘導体を「C60フラーレン誘導体」といい、C70フラーレンのフラーレン誘導体を「C70フラーレン誘導体」という場合がある。
【0230】
「本実施形態の非フラーレン化合物」以外のn型半導体材料として用いられうるフラーレン誘導体は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されない。
【0231】
「本実施形態の非フラーレン化合物」以外のn型半導体材料として用いられうるC60フラーレン誘導体の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0232】
【0233】
式中、Rは前記定義のとおりである。Rが複数ある場合、複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0234】
C70フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0235】
【0236】
3.光電変換素子
本実施形態にかかる光電変換素子は、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられており、p型半導体材料及びn型半導体材料を含む活性層とを含み、該n型半導体材料として、既に説明した本実施形態の化合物を含む、光電変換素子である。
【0237】
本実施形態の光電変換素子によれば、上記の構成を有することにより、光電変換素子の外部量子効率、光電変換効率といった特性を効果的に向上させることができる。
【0238】
ここで、本実施形態の光電変換素子が取りうる構成例について説明する。
図1は、本実施形態の光電変換素子の構成を模式的に示す図である。
【0239】
図1に示されるように、光電変換素子10は、支持基板11に設けられている。光電変換素子10は、支持基板11に接するように設けられている陽極12と、陽極12に接するように設けられている正孔輸送層13と、正孔輸送層13に接するように設けられている活性層14と、活性層14に接するように設けられている電子輸送層15と、電子輸送層15に接するように設けられている陰極16とを備えている。この構成例では、陰極16に接するように封止部材17がさらに設けられている。
以下、本実施形態の光電変換素子に含まれうる構成要素について具体的に説明する。
【0240】
(基板)
光電変換素子は、通常、基板(支持基板)上に形成される。また、さらに基板(封止基板)により封止される場合もある。基板には、通常、陽極及び陰極からなる一対の電極のうちの一方が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。
【0241】
基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板が用いられる場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(換言すると、不透明な基板から遠い側の電極)が透明又は半透明の電極とされることが好ましい。
【0242】
(電極)
光電変換素子は、一対の電極である陽極及び陰極を含んでいる。陽極及び陰極のうち、少なくとも一方の電極は、光を入射させるために、透明又は半透明の電極とすることが好ましい。
【0243】
透明又は半透明の電極の材料の例としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明である電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、陽極であっても陰極であってもよい。
【0244】
一対の電極のうちの一方の電極が透明又は半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料の例としては、金属、及び導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びこれらのうちの2種以上の合金、又は、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、及びカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0245】
(活性層)
本実施形態の光電変換素子が備える活性層は、バルクヘテロジャンクション型の構造を有することが想定されており、p型半導体材料と、n型半導体材料とを含み、該活性層が、n型半導体材料として、本実施形態の非フラーレン化合物を含む(詳細については後述する。)。
【0246】
本実施形態において、活性層の厚さは、特に限定されない。活性層の厚さは、暗電流の抑制と生じた光電流の取り出しとのバランスを考慮して、任意好適な厚さとすることができる。活性層の厚さは、特に暗電流をより低減する観点から、好ましくは100nm以上であり、より好ましくは150nm以上であり、さらに好ましくは200nm以上である。また、活性層の厚さは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。
【0247】
ここで、本実施形態にかかる活性層の材料として、既に説明した本実施形態の非フラーレン化合物であるn型半導体材料と組み合わせて好適に用いることができるp型半導体材料について説明する。
【0248】
p型半導体材料は、所定のポリスチレン換算の重量平均分子量を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0249】
ここで、ポリスチレン換算の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンの標準試料を用いて算出した重量平均分子量を意味する。
【0250】
p型半導体材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、3000以上500000以下であることが好ましい。
【0251】
本実施形態において、p型半導体材料は、ドナー構成単位(D構成単位ともいう。)とアクセプター構成単位(A構成単位ともいう。)とを含むπ共役高分子化合物(D-A型共役高分子化合物ともいう。)であることが好ましい。なお、いずれがドナー構成単位又はアクセプター構成単位であるかは、HOMO又はLUMOのエネルギーレベルから相対的に決定しうる。
【0252】
ここで、ドナー構成単位はπ電子が過剰である構成単位であり、アクセプター構成単位はπ電子が欠乏している構成単位である。
【0253】
本実施形態において、p型半導体材料を構成しうる構成単位には、ドナー構成単位とアクセプター構成単位とが直接的に結合した構成単位、さらにはドナー構成単位とアクセプター構成単位とが、任意好適なスペーサー(基又は構成単位)を介して結合した構成単位も含まれる。
【0254】
高分子化合物であるp型半導体材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を含むポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0255】
本実施形態のp型半導体材料は、下記式(VIII)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。下記式(VIII)で表される構成単位は、本実施形態においては、通常、ドナー構成単位である。
【0256】
【0257】
式(VIII)中、Ar5及びAr6は、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基を表し、Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)で表される基を表す。
【0258】
【0259】
式(Z-1)~(Z-7)中、
Rは、前記定義のとおりである。
式(Z-1)~式(Z-7)のそれぞれにおいて、Rが2つある場合、2つのRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0260】
Ar5及びAr6を構成しうる芳香族複素環には、複素環自体が芳香族性を示す単環及び縮合環に加えて、環を構成する複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮合している環が包含される。
【0261】
Ar5及びAr6を構成しうる芳香族複素環は、それぞれ単環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族複素環が縮合環である場合、縮合環を構成する環の全部が芳香族性を有する縮合環であってもよく、一部のみが芳香族性を有する縮合環であってもよい。これらの環が複数の置換基を有する場合、これらの置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0262】
Ar5及びAr6を構成しうる芳香族炭素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、及びフェナントレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0263】
芳香族複素環の具体例としては、芳香族複素環式化合物として既に説明した化合物が有する環構造が挙げられ、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、チオフェン環、ピロール環、ホスホール環、フラン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、及びジベンゾホスホール環、並びに、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ジベンゾボロール環、ジベンゾシロール環、及びベンゾピラン環が挙げられる。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0264】
式(VIII)で表される構成単位は、下記式(VIII-1)、(VIII-2)又は(VIII-3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0265】
【0266】
式(VIII-1)、(VIII-2)及び(VIII-3)中、Ar5、Ar6及びRは、前記定義のとおりである。
【0267】
式(VIII)で表される好適な構成単位の具体例としては、下記式で表される構成単位が挙げられる。
【0268】
【0269】
前記式中、Rは前記定義のとおりである。
Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。
【0270】
式(VIII)で表されるより具体的な好ましい構成単位の例としては、下記式で表される構成単位が挙げられる。
【0271】
【0272】
本実施形態においてp型半導体材料である高分子化合物は、下記式(IX)で表される構成単位を含むことが好ましい。下記式(IX)で表される構成単位は、本実施形態においては、通常、アクセプター構成単位である。
【0273】
【0274】
式(IX)中、Ar7は2価の芳香族複素環基を表す。
【0275】
Ar7で表される2価の芳香族複素環基の炭素原子数は、通常2~60であり、好ましくは4~60であり、より好ましくは4~20である。
【0276】
Ar7で表される2価の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。Ar7で表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、置換基を有していてもよい置換アミノ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいイミン残基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよい酸イミド基、置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
【0277】
式(IX)で表される構成単位としては、下記式(IX-1)~式(IX-10)で表される構成単位が好ましい。
【0278】
【0279】
式(IX-1)~式(IX-10)中、
X1、X2、Z1、Z2及びRは前記定義のとおりである。
Rが2つある場合、2つあるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0280】
式(IX-1)~式(IX-10)中のX1及びX2は、原料化合物の入手性の観点から、いずれも硫黄原子であることが好ましい。
【0281】
なお、式(IX-1)~式(IX-10)で表される構成単位は、上記のとおり、通常、アクセプター構成単位として機能しうる。しかしながらこれに限定されず、特に式(IX-4)、式(IX-5)及び式(IX-7)で表される構成単位は、ドナー構成単位としても機能しうる。
【0282】
本実施形態において、p型半導体材料は、チオフェン骨格を含む構成単位を含み、π共役系を含むπ共役高分子化合物であることが好ましい。
【0283】
Ar7で表される2価の芳香族複素環基の具体例としては、上記式(101)~式(191)で表される基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0284】
本実施形態のp型半導体材料である高分子化合物は、ドナー構成単位として式(VIII)で表される構成単位を含み、かつアクセプター構成単位として式(IX)で表される構成単位を含むπ共役高分子化合物であることが好ましい。
【0285】
本実施形態のp型半導体材料である高分子化合物において、p型半導体材料である高分子化合物は、既に説明した式(VIII)で表される構成単位と下記式(IX)で表される構成単位とが連結した構造を構成単位として含んでいてもよい。
【0286】
本実施形態p型半導体材料である高分子化合物は、2種以上の式(VIII)で表される構成単位を含んでいてもよく、2種以上の式(IX)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0287】
例えば、溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、本実施形態のp型半導体材料である高分子化合物は、下記式(X)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0288】
【0289】
式(X)中、Ar8はアリーレン基を表す。
【0290】
Ar8で表されるアリーレン基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子を2個除いた残りの原子団を意味する。芳香族炭化水素には、縮合環を有する化合物、独立したベンゼン環及び縮合環からなる群から選ばれる2個以上が、直接的に又はビニレン基などの2価の基を介して結合した化合物も含まれる。
【0291】
芳香族炭化水素が有していてもよい置換基の例としては、複素環式化合物が有していてもよい置換基として例示された置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0292】
Ar8で表されるアリーレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで通常6~60であり、好ましくは6~20である。置換基を含めたアリーレン基の炭素原子数は、通常6~100である。
【0293】
Ar8で表されるアリーレン基の例としては、フェニレン基(例えば、下記式1~式3)、ナフタレン-ジイル基(例えば、下記式4~式13)、アントラセン-ジイル基(例えば、下記式14~式19)、ビフェニル-ジイル基(例えば、下記式20~式25)、ターフェニル-ジイル基(例えば、下記式26~式28)、縮合環化合物基(例えば、下記式29~式35)、フルオレン-ジイル基(例えば、下記式36~式38)、及びベンゾフルオレン-ジイル基(例えば、下記式39~式46)が挙げられる。
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
式中、Rは前記定義のとおりである。複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0303】
式(X)で表される構成単位は、下記式(X-1)及び式(X-2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0304】
【0305】
式(X-1)中、Rは、前記定義のとおりである。2つあるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0306】
p型半導体材料である高分子化合物を構成する構成単位は、上記の構成単位から選択される2種以上の構成単位が2つ以上組み合わされて連結された構成単位であってもよい。
【0307】
p型半導体材料としての高分子化合物が、式(VIII)で表される構成単位及び/又は式(IX)で表される構成単位を含む場合、式(VIII)で表される構成単位及び式(IX)で表される構成単位の合計量は、高分子化合物が含むすべての構成単位の量を100モル%とすると、通常20モル%~100モル%であり、p型半導体材料としての電荷輸送性を向上させる観点から、好ましくは40モル%~100モル%であり、より好ましくは50モル%~100モル%である。
【0308】
本実施形態のp型半導体材料である高分子化合物の具体例としては、下記式(P-1)~(P-18)で表される高分子化合物が挙げられる。
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
前記式中、Rは、前記定義のとおりである。複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0317】
p型半導体材料として、上記例示の高分子化合物を用いれば、光電変換素子の製造工程又は光電変換素子が適用されるデバイスへの組み込み工程などにおける加熱処理に対EQEの低下を抑制するか又はEQEをより向上させることができ、光電変換素子の耐熱性を向上させることができる。
【0318】
(中間層)
図1に示されるとおり、本実施形態の光電変換素子は、光電変換効率などの特性を向上させるための構成要素として、例えば、電荷輸送層(電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層)などの中間層(バッファー層)を備えていることが好ましい。
【0319】
また、中間層に用いられる材料の例としては、カルシウムなどの金属、酸化モリブデン、酸化亜鉛などの無機酸化物半導体、及びPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4-スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)が挙げられる。
【0320】
図1に示されるように、光電変換素子は、陽極と活性層との間に、正孔輸送層を備えることが好ましい。正孔輸送層は、活性層から電極へと正孔を輸送する機能を有する。
【0321】
陽極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。陽極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、陽極への正孔の注入を促進する機能を有する。正孔輸送層(正孔注入層)は、活性層に接していてもよい。
【0322】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、酸化タングステン(WO3)及び酸化モリブデン(MoO3)が挙げられる。
【0323】
中間層は、従来公知の任意好適な形成方法により形成することができる。中間層は、真空蒸着法や活性層の形成方法と同様の塗布法により形成することができる。
【0324】
本実施形態にかかる光電変換素子は、中間層が電子輸送層であって、基板(支持基板)、陽極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層、陰極がこの順に互いに接するように積層された構成を有することが好ましい。
【0325】
図1に示されるように、本実施形態の光電変換素子は、陰極と活性層との間に、中間層として電子輸送層を備えていることが好ましい。電子輸送層は、活性層から陰極へと電子を輸送する機能を有する。電子輸送層は、陰極に接していてもよい。電子輸送層は活性層に接していてもよい。
【0326】
陰極に接して設けられる電子輸送層を、特に電子注入層という場合がある。陰極に接して設けられる電子輸送層(電子注入層)は、活性層で発生した電子の陰極への注入を促進する機能を有する。
【0327】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、ポリアルキレンイミン及びその誘導体、フルオレン構造を含む高分子化合物、カルシウムなどの金属、金属酸化物が挙げられる。
【0328】
ポリアルキレンイミン及びその誘導体の例としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミンといった炭素原子数2~8のアルキレンイミン、特に炭素原子数2~4のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られるポリマー、ならびにそれらを種々の化合物と反応させて化学的に変性させたポリマーが挙げられる。ポリアルキレンイミン及びその誘導体としては、ポリエチレンイミン(PEI)及びエトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)が好ましい。
【0329】
フルオレン構造を含む高分子化合物の例としては、ポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9’-ジオクチルフルオレン)](PFN)及びPFN-P2が挙げられる。
【0330】
金属酸化物の例としては、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化ニオブが挙げられる。金属酸化物としては、亜鉛を含む金属酸化物が好ましく、中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0331】
その他の電子輸送性材料の例としては、ポリ(4-ビニルフェノール)、ペリレンジイミドが挙げられる。
【0332】
(封止部材)
本実施形態の光電変換素子は、封止部材をさらに含み、かかる封止部材により封止された封止体とすることが好ましい。
封止部材は任意好適な従来公知の部材を用いることができる。封止部材の例としては、基板(封止基板)であるガラス基板とUV硬化性樹脂などの封止材(接着剤)との組合せが挙げられる。
【0333】
封止部材は、1層以上の層構造である封止層であってもよい。封止層を構成する層の例としては、ガスバリア層、ガスバリア性フィルムが挙げられる。
【0334】
封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)又は酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することが好ましい。封止層の材料として好適な材料の例としては、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの有機材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの無機材料などが挙げられる。
【0335】
封止部材は、通常、光電変換素子が適用される、例えば下記適用例のデバイスに組み込まれる際において実施される加熱処理に耐え得る材料により構成される。
【0336】
(光電変換素子の用途)
本実施形態の光電変換素子の用途としては、光検出素子、太陽電池が挙げられる。
より具体的には、本実施形態の光電変換素子は、電極間に電圧(逆バイアス電圧)を印加した状態で、透明又は半透明の電極側から光を照射することにより、光電流を流すことができ、光検出素子(光センサー)として動作させることができる。また、光検出素子を複数集積することによりイメージセンサーとして用いることもできる。このように本実施形態の光電変換素子は、特に光検出素子として好適に用いることができる。
【0337】
また、本実施形態の光電変換素子は、光が照射されることにより、電極間に光起電力を発生させることができ、太陽電池として動作させることができる。光電変換素子を複数集積することにより太陽電池モジュールとすることもできる。
【0338】
(光電変換素子の適用例)
本実施形態にかかる光電変換素子は、光検出素子として、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、入退室管理システム、デジタルカメラ、及び医療機器などの種々の電子装置が備える検出部に好適に適用することができる。
【0339】
本実施形態の光電変換素子は、上記例示の電子装置が備える、例えば、X線撮像装置及びCMOSイメージセンサーなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(例えば、X線センサーなどのイメージセンサー)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部及び虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する生体情報認証装置の検出部(例えば、近赤外線センサー)、パルスオキシメータなどの光学バイオセンサーの検出部などに好適に適用することができる。
【0340】
本実施形態の光電変換素子は、固体撮像装置用のイメージ検出部として、さらにはTime-of-flight(TOF)型距離測定装置(TOF型測距装置)に好適に適用することもできる。
【0341】
4.光電変換素子の製造方法
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、特に限定されない。本実施形態の光電変換素子は、構成要素を形成するにあたり選択された材料に好適な形成方法を組み合わせることにより製造することができる。
【0342】
本実施形態の光電変換素子の製造方法には、100℃以上の加熱温度で加熱される処理を含む工程が含まれうる。より具体的には、活性層が、100℃以上の加熱温度で加熱される処理を含む工程により形成され、及び/又は活性層が形成される工程よりも後に、100℃以上の加熱温度で加熱される処理を含む工程が含まれうる。
【0343】
以下、本発明の実施形態として、基板(支持基板)、陽極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層、陰極がこの順に互いに接する構成を有する光電変換素子の製造方法について説明する。
【0344】
(基板を用意する工程)
本工程では、例えば陽極が設けられた支持基板を用意する。また、既に説明した電極の材料により形成された導電性の薄膜が設けられた基板を市場より入手し、必要に応じて、導電性の薄膜をパターニングして陽極を形成することにより、陽極が設けられた支持基板を用意することができる。
【0345】
本実施形態にかかる光電変換素子の製造方法において、支持基板上に陽極を形成する場合の陽極の形成方法は特に限定されない。陽極は、既に説明した材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、塗布法などの従来公知の任意好適な方法によって、陽極を形成すべき構成(例、支持基板、活性層、正孔輸送層)上に形成することができる。
【0346】
(正孔輸送層の形成工程)
光電変換素子の製造方法は、活性層と陽極との間に設けられる正孔輸送層(正孔注入層)を形成する工程を含んでいてもよい。
【0347】
正孔輸送層の形成方法は特に限定されない。正孔輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、従来公知の任意好適な塗布法によって正孔輸送層を形成することが好ましい。正孔輸送層は、例えば、既に説明した正孔輸送層の材料と溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法や真空蒸着法により形成することができる。
【0348】
(活性層の形成工程)
本実施形態の光電変換素子の製造方法においては、正孔輸送層上に活性層が形成される。主要な構成要素である活性層は、任意好適な従来公知の形成工程により形成することができる。本実施形態において、活性層は、インク組成物(インク、塗布液)を用いる塗布法により製造することが好ましい。
【0349】
以下、本発明の光電変換素子の主たる構成要素である活性層の形成工程が含む工程(i)及び工程(ii)について説明する。
【0350】
工程(i)
インク組成物を塗布対象に塗布する方法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。塗布法としては、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、又はキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、又はバーコート法がより好ましく、スリットコート法、又はスピンコート法がさらに好ましい。
【0351】
本実施形態の光電変換素子の製造方法に用いられるインク組成物は、少なくとも1種のp型半導体材料と、少なくとも1種のn型半導体材料とを含む。
【0352】
よって、本実施形態のインク組成物は光電変換素子の活性層形成用のインク組成物であることが好ましい。以下、本実施形態の活性層形成用のインク組成物について説明する。なお、本実施形態の活性層形成用のインク組成物は好ましくはバルクヘテロジャンクション型活性層の形成用のインク組成物である。よって、活性層形成用のインク組成物は、既に説明したp型半導体材料又はn型半導体材料として、既に説明した本実施形態の非フラーレン化合物を含む組成物を含む。本実施形態の活性層形成用のインク組成物は、当該組成物と、第1溶媒及び該第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する第2溶媒を含む2種以上の溶媒とを含む。
【0353】
本実施形態の活性層形成用のインク組成物によれば、p型半導体材料と、n型半導体材料と、第1溶媒及び該第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する第2溶媒を含む2種以上の溶媒とを含むことにより、より良好な相分離構造を形成することができ、結果として外部量子効率(EQE)といった特性をより向上させることができる(詳細については後述する。)。
【0354】
本実施形態にかかる活性層形成用のインク組成物には、第1溶媒と第2溶媒とが組み合わされた混合溶媒が用いられる。具体的には、本実施形態のインク組成物は、主たる成分である主溶媒(第1溶媒)と、添加溶媒(第2溶媒)とを含む。
【0355】
ここで、本実施形態の活性層形成用のインク組成物に好適に用いることができる第1溶媒及び第2溶媒とこれらの組合せ、さらにはインク組成物の調製について説明する。
【0356】
(1)第1溶媒
第1溶媒としては、本実施形態のp型半導体材料とn型半導体材料の両方を、且ついずれか一方の半導体材料が式(I)で表される非フラーレン化合物を、溶解させることができる良溶媒を用いることが好ましい。本実施形態の第1溶媒は、芳香族炭化水素であることが好ましい。
【0357】
第1溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、o-ジクロロベンゼン、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、テトラリン及びインダンが挙げられる。
【0358】
第1溶媒は、1種の溶媒のみから構成されていても、2種以上の溶媒から構成されていてもよい。インク組成物の調製をより容易にできるので、第1溶媒としては1種の溶媒のみを用いることが好ましい。
【0359】
第1溶媒は、好ましくはトルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン及びインダンからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはトルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、o-ジクロロベンゼン、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、又はインダンである。
【0360】
(2)第2溶媒
本実施形態において、第2溶媒は、既に説明した第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する溶媒である。また、第2溶媒は、既に説明した式(I)で表される非フラーレン化合物のうちのB1とA1との結合を切断してできた末端を水素原子で終端したB1を含む化合物のハンセン溶解度パラメータの極性項P(B1)と第2溶媒のハンセン溶解度パラメータの極性項P(S2)とが下記式(III)で表される条件を満たす溶媒である。
|P(B1)-P(S2)|>3.2(MPa0.5) (III)
【0361】
換言すると、第2溶媒は、第1溶媒の沸点よりも高い沸点を有する溶媒であって、極性項P(B1)と極性項P(S2)との差の絶対値が3.2(MPa0.5)よりも大きくなるように選択される溶媒である。
【0362】
ここで、第2溶媒にかかる指標として用いられるハンセン溶解度パラメータ(HSP)について説明する。
【0363】
(i)ハンセン溶解度パラメータ
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)とは、溶解度パラメータの1種であって、有機化合物における溶媒探索、複数の有機化合物を混合する場合の溶解性の検討、添加剤の処方設計などに利用されている。なお、当該有機化合物には、多分散の高分子化合物も含まれる。
【0364】
ハンセン溶解度パラメータは、ファンデルワールス相互作用に起因し、分散力の指標となりうる分散項D、静電相互作用に起因し、双極子間力の指標となりうる極性項P、水素結合に起因し、水素結合力の指標となりうる水素結合項Hの3成分を含み、これらは3次元的に表すことができる。
【0365】
ハンセン溶解度パラメータにかかる定義及び計算方法などについては、例えば、Charles M.Hansen、Hansen Solubility Parameters:A Users Handbook、及びB,John、Solubility parameters:theory and application,The Book and paper group annual Vol.3により周知であり、本実施形態においても当該計算方法を適宜適用することできる。
【0366】
また、ハンセン溶解度パラメータ(分散項D、極性項P及び水素結合項H)は、例えば、Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)などの市販のコンピュータソフトウェアを用いて、化合物の化学構造に基づいて算出することができる。算出方法の詳細については後述する。
【0367】
本実施形態のインク組成物は、上記のとおり、少なくとも1種のp型半導体材料と、少なくとも1種のn型半導体材料と、2種以上の溶媒とを含むインク組成物である。
【0368】
光電変換素子の製造方法において、特にバルクヘテロジャンクション型構造の活性層を形成する場合には、活性層中において良好な相分離構造を形成させる観点から、活性層形成用のインク組成物を調製するにあたっては、p型半導体材料とn型半導体材料とを好適に混合させるための溶媒を選定する必要がある。
【0369】
ここで、選定されるべき溶媒は、通常、p型半導体材料とn型半導体材料とに対して溶解度の高い良溶媒である。しかしながら、本実施形態では、良溶媒である第1溶媒に加えて、当該第1溶媒に比べて、既に説明した式(I)で表される半導体材料の溶解度がより小さく、より高い沸点を有する第2溶媒が併せて用いられる。
【0370】
活性層を形成するにあたり本実施形態のインク組成物を塗布した後に、活性層を完成させるためには、塗布後に溶媒の除去が必要である。
【0371】
本実施形態によれば、この溶媒が除去される過程において、溶解度がより大きく、沸点がより低い良溶媒である第1溶媒が先に蒸発し、第1溶媒が蒸発した時点では、第1溶媒に対して式(I)で表される非フラーレン化合物の溶解度がより小さく沸点がより高い第2溶媒が主に残存する。このように、沸点がより低い良溶媒である第1溶媒がまず除去された後に、式(I)で表される非フラーレン化合物の溶解度がより小さく沸点がより高い第2溶媒が残存し、その後第2溶媒も除去されることが良好な相分離構造の形成に大きく影響すると考えられる。つまり、第1溶媒に対して式(I)で表される非フラーレン化合物の溶解度がより小さく、沸点がより高い第2溶媒を適切に選定することで良好な相分離構造の形成が可能になると考えられる。
【0372】
本実施形態によれば、ハンセン溶解度パラメータの3成分のうち、双極子間力の指標となりうるハンセン溶解度パラメータの極性項(P)に着目して第1溶媒及び第2溶媒を選定することにより、良好な相分離構造を形成することができ、光電変換素子の特性、特にEQEを向上させることができる。
【0373】
(ii)ハンセン溶解度パラメータの算出方法
ここで、本実施形態にかかるハンセン溶解度パラメータの極性項(P)、さらには式(III)にかかる|P(B1)-P(S2)|を、コンピュータソフトウェア HSPiPを用いて算出する算出方法について説明する。
【0374】
まず、算出対象の化合物の化学構造を特定した後、以下の手順1)~3)を行う。ここでは、既に説明した式(I)にかかる非フラーレン化合物のうち、「A1-B1」の構造を有する化合物を例にとって説明する。
【0375】
1) まず、特定された化合物の化学構造のうち、A1とB1との結合を切断して、A1部位とB1部位とを切り出し、これによりB1部位の末端に生じた結合手にそれぞれ水素原子を付加して終端した「B1を含む化合物」を想定する。
【0376】
2) 次いで、想定されたB1を含む化合物のハンセン溶解度パラメータの極性項であるP(B2)を、コンピュータソフトウェア HSPiPを用いて算出する。
【0377】
3) 次に、算出されたP(B1)から第2溶媒のハンセン溶解度パラメータの極性項P(S2)を減じた値の絶対値である|P(B1)-P(S2)|を算出する。
【0378】
ここで、第2溶媒にかかるP(S2)の値は、「Hansen solubility parameters in practice 4th edition」に記載の値を使用すればよい。
【0379】
例えば、第2溶媒がアセトフェノンである場合には、P(S2)の値は9.0(MPa0.5)である。
【0380】
なお、第2溶媒として2種類以上の溶媒が使用されている場合は、最も沸点が高い溶媒についての値を用いればよい。
【0381】
ここで、化合物N-1を具体例に用いて、極性項P(B1)の算出について説明する。
【0382】
まず、上記ステップ1)のとおり、化合物N-1についてA1とB1との2つの結合を切断したときにB1に生じる結合手にそれぞれ水素原子を付加して終端した下記式で表されるB1を含む化合物(B1)を想定する。
【0383】
【0384】
次に、上記ステップ2)のとおり、化合物B1について極性項P(B1)を算出する。実際に上記のとおり計算を行ったところ、P(B1)は、1.7(MPa0.5)であった。
【0385】
よって、第2溶媒が例えばアセトフェノンである場合には、上記ステップ3)にしたがって算出できる|P(B1)-P(S2)|の値は、7.3と算出することができる。
【0386】
特に光電変換素子のバルクヘテロ接合型の活性層形成用のインク組成物に適用される第2溶媒については、既に説明した式(I)で表される非フラーレン化合物(が溶解しにくい溶媒、すなわち、式(I)で表される非フラーレン化合物に対する貧溶媒であることが好ましい。より具体的には、第2溶媒は式(I)で表される非フラーレン化合物の溶解度が、1g/Lよりも低い貧溶媒であることが好ましい。加えて、B1を含む化合物のハンセン溶解度パラメータの極性項と第2溶媒のハンセン溶解度パラメータの極性項との差が、前記式(III)で表される関係を満足する第2溶媒を用いることができる。
【0387】
第2溶媒は、上記の要件を満たすことを条件として特に限定されない。第2溶媒としては、選択される第1溶媒の特性を考慮して、従来公知の溶媒の中から適宜選択することができる。第2溶媒は、1種のみならず2種以上を用いてもよい。
【0388】
第2溶媒として上記の要件を満たす溶媒を用いれば、より良好な相分離構造を形成させることができ、ひいては製造される光電変換素子のEQEといった特性を向上させることができる。
【0389】
本実施形態において、|P(B1)―P(S2)|の値は、良好な相分離構造を形成して、EQEといった特性を向上させる観点から、3.2より大きいことが好ましく、3.3より大きいことがより好ましい。
【0390】
本実施形態において、第2溶媒は、良好な相分離構造を形成して、EQEといった特性を向上させる観点から、既に説明した第1溶媒の沸点よりも30℃以上高い沸点を有する溶媒であることが好ましい。
【0391】
第2溶媒は、エーテル溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒又はエステル溶媒であることが好ましい。
【0392】
第2溶媒としては、例えば、1,2-ジメトキシベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテルなどのエーテル溶媒、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1-メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン及びプロピオフェノンなどのケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、安息香酸ブチル及び安息香酸ベンジルなどのエステル溶媒が挙げられる。
【0393】
本実施形態のインク組成物に適用することができる第2溶媒とハンセン溶解度パラメータの極性項P(S2)(単位:MPa0.5)の値とを下記表4に示す。
【0394】
【0395】
第2溶媒としては、より良好な相分離構造を形成してEQEといった特性をより向上させる観点から、例えば、アセトフェノン、安息香酸ブチル、安息香酸メチル、1,2-ジメトキシベンゼンを用いることが好ましい。
【0396】
(3)第1溶媒及び第2溶媒の組合せ
第1溶媒及び第2溶媒の好適な組合せの例を沸点(℃)と併せて下記表5に示す。
【0397】
【0398】
上記のとおり、本実施形態のインク組成物においては、第1溶媒及び第2溶媒の好適な組合せの例としては、テトラリン(第1溶媒)と安息香酸ブチル(第2溶媒)との組合せ、o-キシレン(第1溶媒)と安息香酸メチル(第2溶媒)との組合せ、o-キシレン(第1溶媒)とアセトフェノン(第2溶媒)との組合せ及びプソイドクメン(第1溶媒)と1,2-ジメトキシベンゼン(第2溶媒)との組合せが挙げられる。
【0399】
(4)第1溶媒及び第2溶媒の体積比
主溶媒である第1溶媒の添加溶媒である第2溶媒に対する体積比(第1溶媒:第2溶媒)は、より良好な相分離構造を形成してEQEといった特性を向上させる観点から、85:15~99:1の範囲とすることが好ましく、90:10~98:2の範囲とすることがより好ましく、93:7~97:3の範囲とすることがさらに好ましい。
【0400】
(5)任意の他の溶媒
溶媒は、既に説明した第1溶媒及び第2溶媒以外の任意の他の溶媒を含んでいてもよい。インク組成物に含まれる全溶媒の合計質量を100質量%としたときに、任意の他の溶媒の含有率は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。任意の他の溶媒としては、第2溶媒より沸点が高い溶媒であることが好ましい。
【0401】
(6)任意の成分
インク組成物には、第1溶媒、第2溶媒、p型半導体材料及びn型半導体材料の他に、本発明の目的及び効果を損なわない限度において、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、紫外線からの安定性を増すための光安定剤といった任意の成分が含まれていてもよい。
【0402】
(7)p型半導体材料及びn型半導体材料の濃度
インク組成物におけるp型半導体材料及びn型半導体材料の濃度は、溶媒に対する溶解度なども考慮して、本発明の目的を損なわない範囲で任意好適な濃度とすることができる。
【0403】
インク組成物における「p型半導体材料」の「n型半導体材料」に対する質量比(重合体/非フラーレン化合物)は、通常1/0.1から1/10の範囲であり、好ましくは1/0.5から1/2の範囲であり、より好ましくは1/1.5である。
【0404】
インク組成物における「p型半導体材料」及び「n型半導体材料」の合計の濃度は、通常0.01質量%以上であり、0.02質量%以上がより好ましく、0.25質量%以上がさらに好ましい。また、インク組成物における「p型半導体材料」及び「n型半導体材料」の合計の濃度は、通常20質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましく、7.50質量%以下であることがより好ましい。
【0405】
インク組成物における「p型半導体材料」の濃度は、通常0.01質量%以上であり、0.02質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。また、インク組成物における「p型半導体材料」の濃度は、通常10質量%以下であり、5.00質量%以下がより好ましく、3.00質量%以下がさらに好ましい。
【0406】
インク組成物における「n型半導体材料」の濃度は、通常0.01質量%以上であり、0.02質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましい。また、インクにおける「n型半導体材料」の濃度は、通常10質量%以下であり、5質量%以下がより好ましく、4.50質量%以下がさらに好ましい。
【0407】
(8)インク組成物の調製
本実施形態において、インク組成物は、従来公知の任意好適な方法により調製することができる。例えば、第1溶媒、又は第1溶媒及び第2溶媒を混合して混合溶媒を調製し、得られた混合溶媒に(共役)高分子化合物(p型半導体材料)及び式(I)で表される化合物(n型半導体材料)を添加する方法、第1溶媒にp型半導体材料を添加し、第2溶媒にn型半導体材料を添加してから、各材料が添加された第1溶媒及び第2溶媒を混合する方法などにより調製することができる。
【0408】
第1溶媒及び第2溶媒とp型半導体材料及びn型半導体材料とを、溶媒の沸点以下の温度まで加温して混合してもよい。
【0409】
第1溶媒及び第2溶媒とp型半導体材料及びn型半導体材料とを混合した後、得られた混合物をフィルターを用いてろ過し、得られたろ液をとして用いてもよい。フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂で形成されたフィルターを用いることができる。
【0410】
活性層形成用のインク組成物は、光電変換素子及びその製造方法に応じて選択された塗布対象に塗布される。活性層形成用のインク組成物は、光電変換素子の製造工程において、光電変換素子が有する機能層であって、活性層が存在し得る機能層に塗布されうる。よって、活性層形成用のインク組成物の塗布対象は、製造される光電変換素子の層構成及び層形成の順序によって異なる。例えば、光電変換素子が、基板、陽極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層、陰極が積層された層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、活性層形成用のインク組成物の塗布対象は、正孔輸送層となる。また、例えば、光電変換素子が、基板、陰極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、陽極が積層された層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、活性層形成用のインク組成物の塗布対象は、電子輸送層となる。
【0411】
工程(ii)
インク組成物の塗膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗膜から溶媒を除去して固化する方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でホットプレートを用いて直接的に加熱する方法、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0412】
本実施形態の光電変換素子の製造方法においては、工程(ii)は、溶媒を揮発させて除去するための工程であって、プリベーク工程(第1の加熱処理工程)とも称される。
【0413】
プリベーク工程及びポストベーク工程の実施条件、すなわち加熱温度、加熱処理時間などの条件については、用いられるインクの組成、溶媒の沸点などを考慮して、任意好適な条件とすることができる。
【0414】
本実施形態の光電変換素子の製造方法においては、具体的には、例えば、窒素ガス雰囲気下でホットプレートを用いて、プリベーク工程及びポストベーク工程を実施することができる。
【0415】
プリベーク工程及びポストベーク工程における合計の加熱処理時間は、例えば1時間とすることができる。
【0416】
プリベーク工程における加熱温度とポストベーク工程における加熱温度とは同一であっても異なっていてもよい。
【0417】
加熱処理時間は例えば10分間以上とすることができる。加熱処理時間の上限値は特に限定されないが、タクトタイム等を考慮し、例えば4時間とすることができる。
【0418】
活性層の厚さは、インク組成物中の固形分濃度、上記工程(i)及び/又は工程(ii)の条件を適宜調整することにより、任意好適な所望の厚さとすることができる。
【0419】
活性層を形成する工程は、前記工程(i)及び工程(ii)以外に、本発明の目的及び効果を損なわないことを条件としてその他の工程を含んでいてもよい。
【0420】
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、複数の活性層を含む光電変換素子を製造する方法であってもよく、工程(i)及び工程(ii)が複数回繰り返される方法であってもよい。
【0421】
(電子輸送層の形成工程)
本実施形態の光電変換素子の製造方法は、活性層上に設けられた電子輸送層(電子注入層)を形成する工程を含んでいる。
【0422】
電子輸送層の形成方法は特に限定されない。電子輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、従来公知の任意好適な真空蒸着法によって電子輸送層を形成することが好ましい。
【0423】
(陰極の形成工程)
陰極の形成方法は特に限定されない。陰極は、例えば、上記例示の電極の材料を、塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法など従来公知の任意好適な方法によって、電子輸送層上に形成することができる。以上の工程により、本実施形態の光電変換素子が製造される。
【0424】
(封止体の形成工程)
封止体の形成にあたり、本実施形態では、従来公知の任意好適な封止材(接着剤)及び基板(封止基板)を用いる。具体的には、製造された光電変換素子の周辺を囲むように、支持基板上に、例えばUV硬化性樹脂などの封止材を塗布した後、封止材により隙間なく貼り合わせた後、UV光の照射などの選択された封止材に好適な方法を用いて支持基板と封止基板との間隙に光電変換素子を封止することにより、光電変換素子の封止体を得ることができる。
【0425】
5.イメージセンサー、生体認証装置の製造方法
本実施形態の光電変換素子である特に光検出素子は、上記のとおり、イメージセンサー、生体認証装置(指紋認証装置、静脈認証装置)に組み込まれて機能しうる。
【実施例0426】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示す。本発明は以下に説明する実施例に限定されない。
【0427】
本実施例においては、下記表6に示される高分子化合物をp型半導体材料(電子供与性化合物)として使用し、下記表7及び8に示される化合物をn型半導体材料(電子受容性化合物)として使用した。
【0428】
【0429】
【0430】
【0431】
p型半導体材料である高分子化合物P-1は、国際公開第2011/052709号に記載の方法を参考にして合成して使用した。
【0432】
n型半導体材料である化合物N-1~化合物N-7は、後述の合成例のとおり合成して使用した。
【0433】
<合成例1>(化合物2の合成)
下記式で表される化合物1を用いて下記式で表される化合物2を合成した。
【0434】
【0435】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL四つ口フラスコに、文献(Dyes and Pigments, 2015,112,145.)に記載の方法により合成した化合物1を4.00g(7.77mmol)、テトラヒドロフランを78mL入れ、-30℃まで冷却した。
【0436】
次に、四つ口フラスコに、N-ブロモスクシンイミドを1.31g(7.38mmol)加え、-30℃で6時間攪拌した。
【0437】
次いで、得られた溶液を常温まで昇温し、常温でさらに3時間攪拌して反応させた後、さらに3%亜硫酸ナトリウム水溶液を加えることで反応を停止させた。
【0438】
得られた反応液をヘキサンで抽出したのち、水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して有機層を得た。
【0439】
次に、得られた有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥して、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0440】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムにて精製することにより、化合物2を薄黄色のオイルとして4.16g(7.01mmol、収率94.9%)得た。
【0441】
得られた化合物2について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.16 (d, JHH=8.4Hz, 4H),7.10 (d, JHH=8.4Hz, 4H), 6.98 (d, JHH=4.8Hz, 1H),6.75 (d, JHH=4.8Hz, 1H), 6.42 (s, 1H), 2.58 (t, 4H), 1.63―1.57(m, 4H), 1.36―1.27 (br, 12H), 0.87 (t, 6H).
【0442】
<合成例2>(化合物3の合成)
下記式で表される化合物2を用いて下記式で表される化合物3を合成した。
【0443】
【0444】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL三つ口フラスコに、化合物2を4.13g(6.96mmol)、脱水テトラヒドロフランを70mL加え、得られた溶液を-70℃まで冷却した後、n-ブチルリチウム溶液(1.64mol/L、ヘキサン溶液)を4.13mL加え、1時間攪拌を行った。
【0445】
次に、反応液を-70℃で保持したまま、トリメトキシボランを1.01g(9.74mmol)を加え、2時間攪拌を行った。
【0446】
次いで、得られた反応液に10質量%酢酸水溶液(30mL)を入れ、酢酸エチルを用いて分液操作を行い、有機層を抽出した。得られた有機層に対し、トルエン(20mL)、2-ヒドロキシメチレン-2-メチル-1,3-プロパンジオール1.25g(10.4mmol)を加え、ディーンスターク管を用いた脱水操作を30分間行った。さらに溶媒をロータリーエバポレーターで除き、化合物3の粗生成物4.47gを緑色オイルとして取得した。
【0447】
<合成例3>(化合物5の合成)
下記式で表される化合物3及び化合物4を用いて下記式で表される化合物5を合成した。
【0448】
【0449】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL四つ口フラスコに、特開2013-43818号公報に記載の方法により合成した化合物4を1.00g(1.43mmol)、化合物3を2.20g(3.43mmol)、テトラヒドロフランを14mL入れ、30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで脱気した。
【0450】
次いで、四つ口フラスコに、Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)を0.105g(0.11mmol、8mol%)、Tri-tert-butylphosphonium Tetrafluoroborateを0.070g(0.23mmol、16mol%)、テトラヒドロフランを5mL入れ、5分間攪拌した。
【0451】
次に、4つ口フラスコに、3.0Mリン酸カリウム水溶液を14mL加え、反応液を設定温度50℃のオイルバスで3時間、加熱しつつ攪拌した。
【0452】
反応液を冷却後、4つ口フラスコに、水を100mL、ヘキサンを100mL加え、有機層を水で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回、分液洗浄を行った。
【0453】
得られた溶液を、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、ろ過し、減圧下で溶媒を留去した。
【0454】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物5を赤色オイルとして1.74g(1.11mmol、収率78%)得た。
【0455】
得られた化合物5について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.38 (s, 1H), 7.23―7.18 (m, 8H),7.14―7.10 (m, 8H),7.03―7.00 (m, 2H),6.92 (s, 1H),6.79―6.77 (m, 2H), 6.58 (s, 1H), 6.53 (s, 1H),2.62―2.57 (m, 8H), 2.19―2.11 (m, 2H), 1.71―1.56 (m, 10H), 1.37―1.25 (m, 28H), 1.25―1.08 (br, 36H), 0.89―0.83 (m, 18H).
【0456】
<合成例4>(化合物6の合成)
下記式で表される化合物5を用いて下記式で表される化合物6を合成した。
【0457】
【化81】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL三つ口フラスコに、化合物5を1.74g(1.11mmol)、クロロホルムを12mL入れ、常温で10分間攪拌して化合物5を溶解させた。
【0458】
次に、三つ口フラスコに、(Chloromethylene)dimethyliminium Chlorideを0.43g(3.33mmol)入れ、設定温度65℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0459】
次いで、反応液を冷却後、水を20mL加え、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で2回分液洗浄を行った。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥して、ろ過を行い、減圧下で溶媒を留去した。
【0460】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物6を濃赤色オイルとして1.63g(1.01mmol、収率90.6%)得た。
【0461】
得られた化合物6について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 9.76 (s, 1H), 9.75 (s, 1H), 7.46 (s, 1H), 7.37 (s, 1H), 7.36 (s, 1H), 7.21―7.12 (m, 16H), 7.00 (s, 1H), 6.61 (s, 1H), 6.58 (s, 1H), 2.63―2.58 (m, 8H), 2.21―2.13(m, 2H), 1.73―1.57 (m, 10H), 1.37―1.26 (m, 28H), 1.24―1.09 (br, 36H), 0.89―0.83 (m, 18H).
【0462】
<合成例5>(化合物N-1の合成)
下記式で表される化合物6及び化合物7を用いて下記式で表される化合物N―1を合成した。
【0463】
【0464】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物6を0.57g(0.35mmol)、化合物7を0.28g(1.05mmol)、クロロホルムを10mL、ピリジンを0.003g(0.04mmol)入れ、65℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0465】
得られた溶液を常温まで冷却し、水を加えることで反応を停止させた。得られた溶液をクロロホルムで抽出したのち、水で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄して有機層を得た。
【0466】
次に、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0467】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物N-1を濃青緑色の固体として0.64g(0.30mmol、収率86.3%)得た。
【0468】
得られた化合物N-1について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 8.74 (s, 1H), 8.73 (s, 1H), 8.69 (s, 1H), 8.68 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.90 (s, 1H), 7.49 (s, 2H), 7.46 (s, 1H), 7.21-7.14 (m, 16H), 7.03 (s, 1H), 6.67 (s, 1H), 6.64 (s, 1H), 2.64-2.59 (m, 8H), 2.24-2.17(m, 2H), 1.99-1.86 (m, 8H), 1.76-1.59 (m, 10H), 1.38-1.26 (m, 28H), 1.24-1.12 (br, 36H), 0.89-0.83 (m, 18H).
【0469】
<合成例6>(化合物9の合成)
下記式で表される化合物8から下記式で表される化合物9を合成した。
【0470】
【0471】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL三つ口フラスコに、国際公開第2011/052709号の段落[0271]に記載の方法により合成した化合物18を2.85g(5.36mmol)、脱水テトラヒドロフランを27mL加え、得られた溶液を-70℃まで冷却した後、n-ブチルリチウム溶液(1.64mol/L、ヘキサン溶液)を3.3mL加え、2時間攪拌を行った。
【0472】
次に、反応液を-70℃で保持したまま、トリメトキシボランを0.83g(8.04mmol)を加え、2時間攪拌を行った。
【0473】
次いで、得られた反応液に10w%酢酸水溶液(30mL)を入れ、酢酸エチルを用いて分液操作を行い、有機層を抽出した。得られた有機層に対し、トルエン(20mL)、2-ヒドロキシメチレン-2-メチル-1,3-プロパンジオール1.29g(10.72mmol)を加え、ディーンスターク管を用いた脱水操作を30分間行った。さらに溶媒をロータリーエバポレーターで除き、化合物19の粗体3.53gを緑色オイルとして取得した。
【0474】
<合成例7>(化合物11の合成)
下記式で表される化合物9及び化合物10を用いて下記式で表される化合物11を合成した。
【0475】
【0476】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、合成例6で得た未精製の粗体である化合物9を3.53g(5.36mmol)、Luminescence Technology Corp.から購入した化合物10を1.2g(2.23mmol)、テトラヒドロフランを22mL入れ、30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで脱気した。
【0477】
得られた反応液に、Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)を0.164g(0.179mmol、8mol%)、Tri-tert-butylphosphonium Tetrafluoroborateを0.109g(0.357mmol、16mol%)を入れ、5分間攪拌した。
【0478】
次に、反応液にさらに3.0Mリン酸カリウム水溶液を22mL加え、得られた反応液を設定温度75℃のオイルバスで1時間加熱しつつ攪拌した。
【0479】
次いで、反応液を冷却後、水を100mL、ヘキサンを100mL加え、水で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回分液洗浄を行った。
【0480】
得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物11を濃赤色オイルとして2.11g(1.49mmol、収率67%)得た。
【0481】
得られた化合物21について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.94 (s, 1H), 7.03 (dd, JHH = 9.2Hz, 5.2Hz, 2H), 6.85 (s, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.68 (dd, JHH = 5.2Hz, 1.6Hz, 2H), 4.37 (t, JHH = 6.8Hz, 2H), 1.95-1.78 (m, 10H), 1.44-1.22 (m, 100H), 0.86 (t, 15H).
【0482】
<合成例8>(化合物12の合成)
下記式で表される化合物11から下記式で表される化合物12を合成した。
【0483】
【0484】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物21を1.5g(1.06mmol)、ジクロロメタンを11mL加え溶解させた。
【0485】
次に、得られた反応液に(Chloromethylene)dimethyliminium Chlorideを0.41g(3.19mmol)入れ、設定温度40℃のオイルバスで3時間加熱攪拌した。
【0486】
次いで、得られた反応液を冷却後、水を20mL加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で2回分液洗浄を行った。
【0487】
得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過し、減圧下で溶媒を留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物22を紫色の固体として1.44g(0.98mmol、収率92%)得た。
【0488】
得られた化合物22について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 9.78 (s, 1H), 9.77 (s, 1H), 7.95 (s, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.28 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 6.86 (s, 1H), 4.39 (t, JHH = 7.2Hz, 2H), 1.97-1.79 (m, 10H), 1.46-1.22 (m, 100H), 0.86 (t, 15H).
【0489】
<合成例9>(化合物N-2の合成)
下記式で表される化合物12及び化合物13を用いて下記式で表される化合物N-2を合成した。
【0490】
【0491】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物12を1.4g(0.98mmol)、化合物13を0.78g(2.95mmol)、クロロホルムを20mL、ピリジンを0.04g(0.49mmol)入れ、65℃のオイルバスで2時間加熱しつつ攪拌した。
【0492】
次に、得られた溶液を常温まで冷却し、水を加えることで反応を停止させた。得られた溶液をクロロホルムで抽出したのち、水で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。
【0493】
次いで、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行い、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物N-2を黒色の固体として1.5g(0.77mmol、収率95%)得た。
【0494】
得られた化合物N-2について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 8.57-8.51 (m, 4H), 7.81 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.29 (br, 2H), 6.96 (s, 1H), 6.88 (s, 1H), 4.50 (t, JHH = 7.2Hz, 2H), 2.08-1.93 (m, 10H), 1.59-1.20 (m, 100H), 0.83 (t, 15H).
【0495】
<合成例10>(化合物15の合成)
下記式で表される化合物14を用いて下記式で表される化合物15を合成した。
【0496】
【0497】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL三つ口フラスコに、特開2012―36357号公報の段落[0269]から段落[0274]に記載の方法で合成した化合物14を10.2g(16.7mmol)、脱水テトラヒドロフランを170mL加え、得られた溶液を-70℃まで冷却した後、n-ブチルリチウム溶液(1.6mol/L、ヘキサン溶液)を10.9mL(17.5mmol加え、1時間攪拌を行った。
【0498】
次に、反応液を-70℃で保持したまま、トリメトキシボランを4.39g(23.4mmol)加え、2時間攪拌を行った。
【0499】
次いで、得られた反応液に2質量%酢酸水溶液41.5gを入れ、酢酸エチルを用いて分液操作を行い、有機層を抽出した。得られた有機層に対し、トルエン(20mL)、2-ヒドロキシメチレン-2-メチル-1,3-プロパンジオール3.00g(25.1mmol)を加え、ディーンスターク管を用いた脱水操作を30分間行った。さらに溶媒をロータリーエバポレーターで除き、化合物15の粗生成物11.2gを緑色オイルとして取得した。
【0500】
<合成例11>(化合物17の合成)
下記式で表される化合物15及び化合物16を用いて下記式で表される化合物17を合成した。
【0501】
【0502】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL四つ口フラスコに、特開2014―31364号公報の段落[0202]から段落[0205]に記載の方法で合成した化合物16を2.45g(3.50mmol)、化合物15を5.30g(8.05mmol)、テトラヒドロフランを100mL入れ、30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで脱気した。
【0503】
次いで、四つ口フラスコに、Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)を0.160g(0.175mmol、5mol%)、Tri-tert-butylphosphonium Tetrafluoroborateを0.213g(0.700mmol、20mol%)、テトラヒドロフランを15mL入れ、5分間攪拌した。
【0504】
次に、4つ口フラスコに、3.0Mリン酸カリウム水溶液を12mL加え、反応液を設定温度75℃のオイルバスで3時間、加熱しつつ攪拌した。
【0505】
反応液を冷却後、4つ口フラスコに、水を100mL、ヘキサンを100mL加え、有機層を水で3回、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄する分液洗浄を行った。
【0506】
得られた溶液を、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、ろ過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物17を赤色オイルとして4.97g(3.11mmol、収率88.8%)得た。
【0507】
得られた化合物17について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.43 (s, 1H), 7.01 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 7.00 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 6.96 (s, 1H), 6.82 (s, 1H), 6.79 (s, 1H), 6.67 (d, JHH=4.8Hz, 1H), 6.66 (d, JHH=4.8Hz, 1H), 2.18 (m, 2H), 1.87 (m, 8H), 1.71 (m, 2H), 1.23 (br, 120H), 0.86 (m, 18H).
【0508】
<合成例12>(化合物18の合成)
下記式で表される化合物17を用いて下記式で表される化合物18を合成した。
【0509】
【0510】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL三つ口フラスコに、化合物17を4.96g(3.10mmol)、ジクロロメタンを150mL入れ、常温で10分間攪拌して化合物17を溶解させた。
【0511】
次に、三つ口フラスコに、(Chloromethylene)dimethyliminium Chlorideを1.19g(9.30mmol)入れ、設定温度40℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0512】
次いで、反応液を冷却後、水を20mL加え、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で2回分液洗浄を行った。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥して、ろ過を行い、減圧下で溶媒を留去した。
【0513】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物18を濃赤色固体として4.81g(2.90mmol、収率93.7%)得た。
【0514】
得られた化合物18について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 9.783 (s, 1H) , 9.775 (s, 1H) , 7.53 (s, 1H) , 7.28 (s, 1H), 7.27 (s, 1H) , 7.06 (s, 1H) , 6.87 (s, 1H), 6.85 (s, 1H) , 2.22 (m, 2H), 1.90 (m, 8H), 1.74 (m, 2H), 1.21 (br, 120H), 0.86 (m, 18H).
【0515】
<合成例13>(化合物N-3の合成)
下記式で表される化合物18及び化合物13を用いて下記式で表される化合物N―3を合成した。
【0516】
【0517】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物18を0.828g(0.500mmol)、化合物19を0.395g(1.50mmol)、クロロホルムを25mL、ピリジンを0.396g(5.00mmol)入れ、65℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0518】
得られた溶液を常温まで冷却し、水を加えることで反応を停止させた。得られた溶液をクロロホルムで抽出したのち、水で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄して有機層を得た。
【0519】
次に、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0520】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物N-3を濃青緑色の固体として0.752g(0.350mmol、収率70.1%)得た。
【0521】
得られた化合物N-3について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 8.74 (s, 4H), 7.92 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.62 (s, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.15 (s, 1H), 6.93 (s, 1H), 6.91 (s, 1H), 2.26 (m, 2H), 1.93 (m, 8H), 1.79 (m, 2H), 1.20 (br, 120H), 0.86 (m, 18H).
【0522】
<合成例14>(化合物21の合成)
下記式で表される化合物20を用いて下記式で表される化合物21を合成した。
【0523】
【0524】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL四つ口フラスコに、国際公開第2011/052709号の段落[0261]から[0271]に記載の方法により合成した化合物20を5.02g(12.0mmol)、テトラヒドロフランを100mL入れ、-30℃まで冷却した。
【0525】
次に、四つ口フラスコに、N-ブロモスクシンイミドを2.11g(11.9mmol)加え、-30℃で6時間攪拌した。
【0526】
次いで、得られた溶液を常温まで昇温し、常温でさらに3時間攪拌して反応させた後、さらに3%亜硫酸ナトリウム水溶液を加えることで反応を停止させた。
【0527】
得られた反応液をヘキサンで抽出したのち、水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して有機層を得た。
【0528】
次に、得られた有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥して、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0529】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムにて精製することにより、化合物21を薄黄色のオイルとして4.66g(9.36mmol、収率78.0%)得た。
【0530】
得られた化合物21について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 6.98 (d, JHH=4.8Hz, 1H), 6.66 (s, 1H),6.65 (d, JHH=4.8Hz, 1H), 1.87-1.74(m, 4H), 1.41-1.23 (br, 24H), 0.86 (t, 6H).
【0531】
<合成例15>(化合物22の合成)
下記式で表される化合物21を用いて下記式で表される化合物22を合成した。
【0532】
【0533】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL三つ口フラスコに、化合物21を4.59g(9.23mmol)、脱水テトラヒドロフランを90mL加え、得られた溶液を-70℃まで冷却した後、n-ブチルリチウム溶液(1.64mol/L、ヘキサン溶液)を5.8mL加え、1時間攪拌を行った。
【0534】
次に、反応液を-70℃で保持したまま、トリメトキシボランを2.43g(12.9mmol)を加え、2時間攪拌を行った。
【0535】
次いで、得られた反応液に10質量%酢酸水溶液(30mL)を入れ、酢酸エチルを用いて分液操作を行い、有機層を抽出した。得られた有機層に対し、トルエン(20mL)、2-ヒドロキシメチレン-2-メチル-1,3-プロパンジオール1.66g(13.82mmol)を加え、ディーンスターク管を用いた脱水操作を30分間行った。さらに溶媒をロータリーエバポレーターで除き、化合物22の粗生成物5.00gを緑色オイルとして取得した。
【0536】
<合成例16>(化合物24の合成)
下記式で表される化合物22及び化合物23を用いて下記式で表される化合物24を合成した。
【0537】
【0538】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した200mL四つ口フラスコに、文献(ACS Omega2017, 2, 4347.)に記載の方法により合成した化合物23を1.65g(2.80mmol)、化合物22を3.83g(7.00mmol)、テトラヒドロフランを93mL入れ、30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで脱気した。
【0539】
次いで、四つ口フラスコに、Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)を0.128g(0.140mmol、5mol%)、Tri-tert-butylphosphonium Tetrafluoroborateを0.170g(0.560mmol、20mol%)、テトラヒドロフランを5mL入れ、5分間攪拌した。
【0540】
次に、4つ口フラスコに、3.0Mリン酸カリウム水溶液を9.3mL加え、反応液を設定温度50℃のオイルバスで3時間、加熱しつつ攪拌した。
【0541】
反応液を冷却後、4つ口フラスコに、水を100mL、ヘキサンを100mL加え、有機層を水で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回、分液洗浄を行った。
【0542】
得られた溶液を、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、ろ過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物24を赤色オイルとして3.21g(2.54mmol、収率90.6%)得た。
【0543】
得られた化合物24について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.44 (s, 1H), 7.03 (d, JHH=4.0Hz, 1H),7.02 (d, JHH=4.0Hz, 1H), 6.97 (s, 1H), 6.83 (s, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.89 (d, JHH=4.8Hz, 1H), 6.68 (d, JHH=4.8Hz, 1H),2.23-2.16(m, 2H), 1.94-1.81 (m, 8H), 1.77-1.69 (m, 2H), 1.44-1.11 (br, 72H), 0.86-0.80 (m, 18H).
【0544】
<合成例17>(化合物25の合成)
下記式で表される化合物24を用いて下記式で表される化合物25を合成した。
【0545】
【0546】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL三つ口フラスコに、化合物24を3.41g(2.70mmol)、クロロホルムを80mL入れ、常温で10分間攪拌して化合物66を溶解させた。
【0547】
次に、三つ口フラスコに、(Chloromethylene)dimethyliminium Chlorideを1.04g(8.10mmol)入れ、設定温度65℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0548】
次いで、反応液を冷却後、水を20mL加え、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で2回分液洗浄を行った。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥して、ろ過を行い、減圧下で溶媒を留去した。
【0549】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物25を濃赤色固体として2.97g(2.25mmol、収率83.3%)得た。
【0550】
得られた化合物25について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 9.79 (s, 1H), 9.78 (s, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.28 (s, 1H), 7.06 (s, 1H), 6.87 (s, 1H), 2.25-2.17(m, 2H), 1.96-1.84 (m, 8H), 1.78-1.71 (m, 2H), 1.44-1.12 (br, 72H), 0.87-0.79 (m, 18H).
【0551】
<合成例18>(化合物N-4の合成)
下記式で表される化合物13及び化合物25を用いて下記式で表される化合物N―4を合成した。
【0552】
【0553】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物67を0.858g(0.650mmol)、化合物12を0.513g(1.95mmol)、クロロホルムを30mL、ピリジンを0.514g(6.50mmol)入れ、65℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0554】
得られた溶液を常温まで冷却し、水を加えることで反応を停止させた。得られた溶液をクロロホルムで抽出したのち、水で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄して有機層を得た。
【0555】
次に、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0556】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物N-4を濃青緑色の固体として0.967g(0.534mmol、収率82.2%)得た。
【0557】
得られた化合物N-4について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 8.74 (s, 4H), 7.92 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.63 (s, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.38 (s, 1H), 7.15 (s, 1H), 6.94 (s, 1H), 6.91 (s, 1H), 2.29-2.22(m, 2H), 1.99-1.86 (m, 8H), 1.82-1.75 (m, 2H), 1.44-1.14 (br, 72H), 0.92-0.80 (m, 18H).
【0558】
<合成例19>(化合物27の合成)
下記式で表される化合物26を用いて下記式で表される化合物27を合成した。
【0559】
【0560】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL三つ口フラスコに、化合物26を0.746g(0.450mmol)、(Tributyl(1,3-dioxolan-2-ylmethyl)phosphonium Bromide)を0.349g(0.945mmol)、テトラヒドロフランを20mL入れ、0℃に冷却した。
【0561】
次に、水素化ナトリウムを0.072g(1.80mmol)入れて、常温まで昇温して、1時間半攪拌した。
【0562】
反応液を再度0℃まで冷却し、10%塩酸を加えて、常温まで昇温して、2時間攪拌した。反応液にヘキサンを15mLさらに入れ、有機層を水で1回、飽和塩化ナトリウム水溶液で2回分液洗浄を行った。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥して、ろ過を行い、減圧下で溶媒を留去した。
【0563】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物27を赤紫色オイルとして0.703g(0.412mmol、収率91.4%)得た。
【0564】
得られた化合物27について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 9.614 (d, JHH=8.0Hz, 1H), 9610 (d, JHH=8.0Hz, 1H), 7.50 (s, 1H), 7.433 (d, JHH=15.6Hz, 1H), 7.426 (d, JHH=15.6Hz, 1H), 7.03 (s, 1H), 6.93 (s, 1H), 6.92 (s, 1H), 6.85 (s, 1H), 6.83 (s, 1H), 6.457 (dd, JHH=8.0Hz, 15.6Hz, 1H), 6.453 (dd, JHH=8.0Hz, 15.6Hz, 1H), 2.24-2.17 (m, 2H), 1.95-1.82 (m, 8H), 1.78-1.70 (m, 2H), 1.41-1.11 (br, 120H), 0.88-0.83 (m, 18H).
【0565】
<合成例20>(化合物N-5の合成)
下記式で表される化合物13及び化合物27を用いて下記式で表される化合物N―5を合成した。
【0566】
【0567】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物7を1.00g(0.585mmol)、化合物13を0.462g(0.585mmol)、クロロホルムを29mL、ピリジンを0.463g(5.85mmol)入れ、65℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0568】
得られた溶液を常温まで冷却し、水を加えることで反応を停止させた。得られた溶液をクロロホルムで抽出したのち、水で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄して有機層を得た。
【0569】
次に、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0570】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物N-5を濃青緑色の固体として0.982g(0.447mmol、収率76.4%)得た。
【0571】
得られた化合物N-5について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 8.74 (s, 2H), 8.55-8.40 (m, 4H), 7.92 (s, 2H), 7.55 (s, 1H), 7.41 (d, JHH=14Hz, 2H), 7.06 (d, JHH=14Hz, 2H), 7.05 (s, 2H), 6.87 (s, 2H), 6.85 (s, 2H), 2.28-2.20 (m, 2H), 1.93-1.89 (m, 8H), 1.81-1.74 (m, 2H), 1.27-1.14 (br, 120H), 0.87-0.83 (m, 18H).
【0572】
<合成例21>(化合物29の合成)
下記式で表される化合物28から下記式で表される化合物29を合成した。
【0573】
【0574】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した1L四つ口フラスコに、特開2014-31364号公報の段落[0203]に記載の方法により合成した化合物28を13.30g(24.50mmol)、テトラヒドロフランを490mL入れ、0℃まで冷却した。
【0575】
次に、四つ口フラスコに、N-ブロモスクシンイミドを4.361g(24.50mmol)加え、0℃で4時間攪拌した。
【0576】
次いで、得られた溶液を常温まで昇温し、常温でさらに3時間攪拌して反応させた後、さらに3%亜硫酸ナトリウム水溶液を加えることで反応を停止させた。
【0577】
得られた反応液をヘキサンで抽出したのち、水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。
【0578】
次に、得られた有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥して、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0579】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムにて精製することにより、化合物29を薄黄色のオイルとして10.1g(16.2mmol、収率66.3%)得た。
【0580】
得られた化合物29について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.44 (d, JHH=5.6Hz, 1H), 7.07 (d, JHH=5.6Hz, 1H), 6.95 (s, 1H), 2.16 (m, 2H), 1.72 (m, 2H), 1.21 (br, 40H), 0.86 (t, 6H).
【0581】
<合成例22>(化合物31の合成)
下記式で表される化合物29及び化合物30を用いて下記式で表される化合物31を合成した。
【0582】
【0583】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL四つ口フラスコに、国際公開第2011/052709号の段落[0139]から[0141]に記載の方法により合成した化合物30を5.23g(6.65mmol)、化合物29を9.51g(15.3mmol)、テトラヒドロナフタレンを120mL入れ、30分間アルゴンガスでバブリングを行うことで脱気した。
【0584】
次に、四つ口フラスコに、Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)を0.304g(0.333mmol、5mol%)、Tri-tert-butylphosphonium Tetrafluoroborateを0.405g(1.33mmol、20mol%)、テトラヒドロナフタレンを13mL入れ、5分間攪拌した。
【0585】
次いで、四つ口フラスコに、さらに3.0Mリン酸カリウム水溶液を22mL加え、反応液を設定温度75℃のオイルバスで1時間、加熱しつつ攪拌した。
【0586】
反応液を冷却後、水を100mL、ヘキサンを100mL加え、さらに水で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回分液洗浄を行った。
【0587】
得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥して、ろ過を行い、減圧下で溶媒を留去した。
【0588】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムにて精製することにより、化合物31を濃赤色オイルとして9.83g(6.09mmol、収率91.7%)得た。
【0589】
得られた化合物31について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.46 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 7.45 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 7.07 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 7.06 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 7.02 (s, 1H) , 6.98 (s, 1H) , 6.86 (s, 1H) , 6.84 (s, 1H), 2.19 (m, 4H), 1.91 (m, 4H), 1.73 (m, 4H), 1.18 (br, 120H), 0.86 (t, 18H).
【0590】
<合成例23>(化合物32の合成)
下記式で表される化合物31から下記式で表される化合物32を合成した。
【0591】
【0592】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した300mL四つ口フラスコに、化合物31を9.68g(6.00mmol)、クロロホルムを120mL入れ、常温で10分間攪拌し溶解させた。
【0593】
次に、四つ口フラスコに、(Chloromethylene)dimethyliminium Chlorideを5.38g(42.0mmol)入れ、設定温度65℃のオイルバスで合計20時間、加熱しつつ攪拌した。
【0594】
反応液を冷却後、水を100mL加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で2回分液洗浄を行った。
【0595】
得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥して、ろ過し、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0596】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物32を紫色オイルとして5.90g(3.53mmol、収率58.9%)得た。
【0597】
得られた化合物32について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 9.91 (s, 2H) , 8.08 (s, 1H) , 8.07 (s, 1H) , 7.06 (s, 1H), 7.02 (s, 1H) , 6.93 (s, 1H) , 6.91 (s, 1H) , 2.22 (m, 4H), 1.92 (m, 4H), 1.75 (m, 4H), 1.21 (br, 120H), 0.85 (t, 18H).
【0598】
<合成例24>(化合物N-6の合成)
下記式で表される化合物32及び化合物13を用いて下記式で表される化合物N-6を合成した。
【0599】
【0600】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した200mL四つ口フラスコに、化合物32を2.25g(1.35mmol)、Adv. Mater. 2017, 29, 1703080.に記載の方法により合成した化合物13を0.888g(3.38mmol)、クロロホルムを68mL、ピリジンを1.07g(13.5mmol)入れ、65℃のオイルバスで2時間、加熱しつつ攪拌した。
【0601】
得られた溶液を常温まで冷却し、水を加えることで反応を停止させた。得られた溶液をクロロホルムで抽出したのち、水で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。
【0602】
次に、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行い、さらに減圧下で溶媒を留去した。
【0603】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物N-6を濃青緑色の固体として1.91g(0.886mmol、収率65.6%)得た。
【0604】
得られた化合物N-6について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 8.90 (s, 1H), 8.89 (s, 1H), 8.81 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.11 (s, 1H), 7.07 (s, 1H), 6.98 (s, 1H), 6.98 (s, 1H), 2.25 (m, 4H), 1.94 (m, 4H), 1.77 (m, 4H), 1.24 (br, 120H), 0.86 (m, 18H).
【0605】
<合成例25>(化合物cの合成)
下記式で表される2-ブロモ-3-(2-エチルヘキシル)チオフェン(化合物a)及び2,5-ジブロモチオフェン(化合物b)を用いて下記式で表される化合物cを合成した。
【0606】
【0607】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した50mL四つ口フラスコに、マグネシウムを0.353g(14.5mmol)、脱水ジエチルエーテルを10mL、ヨウ素を少量入れ、常温で撹拌した。
【0608】
次に、滴下漏斗に、2-ブロモ-3-(2-エチルヘキシル)チオフェンを2.00g(7.27mmol)、脱水ジエチルエーテルを10mL入れ、内温が30℃以下となるように滴下速度を調整しながら50mL四つ口フラスコへ少しずつ滴下した。
【0609】
次いで、設定温度43℃のオイルバスで2時間加熱還流した後、反応液を常温に冷却し、得られた溶液をGrignard反応液とした。
【0610】
窒素ガスで内部の雰囲気を窒素ガスに置換した100mL四つ口フラスコに、2,5-ジブロモチオフェンを1.76g(7.27mmol)、[1,1’-Bis(diphenylphosphino)ferrocene]dichloropalladium(II)を0.200g(0.273mmol)、脱水ジエチルエーテルを20mL入れて撹拌した。
【0611】
氷水バスで冷却後、100mL四つ口フラスコへGrignard反応液を滴下した。2時間保温後、100mL四つ口フラスコを氷水バスから外して反応液を常温に昇温した。
【0612】
次に、反応液に水を40mL、ヘプタンを20mL加え、分液洗浄を行った。
【0613】
得られた有機層を、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥後、ろ過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物cを黄色オイルとして1.48g(4.14mmol、収率57.0%)得た。
【0614】
得られた化合物cについて、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.19 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 7.00 (d, JHH=3.9Hz, 1H), 6.89 (d, JHH=5.2Hz, 1H), 6.84 (d, JHH=3.9Hz, 1H), 2.64 (d, JHH=7.2Hz, 2H), 1.62-1.51 (m, 1H), 1.33-1.16 (m, 8H), 0.90-0.80 (m, 6H).
【0615】
<合成例26>(化合物eの合成)
下記式で表される化合物c及び化合物dを用いて下記式で表される化合物eを合成した。
【0616】
【0617】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した200mL四つ口フラスコに、化合物cを1.46g(4.09mmol)、国際公開第2014/112656号に記載の方法により合成した化合物dを1.42g(1.78mmol)、テトラヒドロナフタレンを59mL入れ、30分間窒素ガスでバブリングを行うことで脱気した。
【0618】
次いで、四つ口フラスコに、Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)を0.0813g(0.0888mmol、5mol%)、Tri-tert-butylphosphonium Tetrafluoroborateを0.103g(0.355mmol、20mol%)を入れ、5分間攪拌した。
【0619】
次に、4つ口フラスコに、3.0Mリン酸カリウム水溶液を5.9mL加え、反応液を設定温度75℃のオイルバスで1時間、加熱しつつ攪拌した。
【0620】
反応液を冷却後、4つ口フラスコに、水を103mL、ヘプタンを103mL加え、有機層を水で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回、分液洗浄を行った。
【0621】
得られた溶液を、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥後、ろ過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製することにより、化合物eを赤色オイルとして1.81g(1.67mmol、収率94.0%)得た。
【0622】
得られた化合物eについて、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 7.19-7.17 (m, 2H), 7.09 (d, JHH=3.9Hz, 1H), 7.07 (d, JHH=3.9Hz, 1H), 7.01 (d, JHH=3.9Hz, 2H), 6.92-6.90 (m, 2H), 6.78 (s, 1H), 6.76 (s, 1H), 2.72 (m, 4H), 1.95-1.81 (m, 4H), 1.68-1.64 (m, 2H), 1.42-1.23 (m, 56H), 0.91-0.83 (m, 18H).
【0623】
<合成例27>(化合物fの合成)
下記式で表される化合物eを用いて下記式で表される化合物fを合成した。
【0624】
【0625】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物eを1.79g(1.65mmol)、ジクロロメタンを83mL入れ、常温で10分間攪拌して化合物eを溶解させた。
【0626】
次に、四つ口フラスコに、(Chloromethylene)dimethyliminium Chlorideを0.845g(6.60mmol)入れ、設定温度49℃のオイルバスで24時間、加熱しつつ攪拌した。
【0627】
次いで、反応液を冷却後、水を13mL加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回分液洗浄を行った。得られた溶液を、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥して、ろ過を行い、減圧下で溶媒を留去した。
【0628】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物fを濃赤色オイルとして1.72g(1.51mmol、収率91.4%)得た。
【0629】
得られた化合物fについて、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 9.84 (s, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.19 (d, JHH=3.9Hz, 2H), 7.13 (d, JHH=3.9Hz, 1H), 7.11 (d, JHH=3.9Hz, 1H), 6.83 (s, 1H), 6.81 (s, 1H), 2.78-2.75 (m,4H), 1.96-1.82 (m, 4H), 1.70-1.68 (m, 2H), 1.40-1.23 (m, 56H), 0.90-0.84 (m,18H).
【0630】
<合成例28>(化合物N-7の合成)
下記式で表される化合物f及び化合物gを用いて下記式で表される化合物N―7を合成した。
【0631】
【0632】
窒素ガスで内部の雰囲気を置換した100mL四つ口フラスコに、化合物fを0.798g(0.700mmol)、化合物gを0.442g(1.68mmol)、クロロホルムを35mL、ピリジンを0.554g(7.00mmol)入れ、68℃のオイルバスで1.5時間、加熱しつつ攪拌した。
【0633】
得られた溶液を常温まで冷却し、メタノール210mLへ加えた。得られた溶液をろ過し、析出物として粗生成物を得た。
【0634】
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムにて精製することにより、化合物N-7を黒色固体として0.981g(0.602mmol、収率86.0%)得た。
【0635】
得られた化合物N-7について、NMRスペクトルを解析した。結果は下記のとおりである。
[1H NMR (CDCl3)]
δ 8.69 (s, 1H),8.68 (s, 1H),8.67 (s, 2H), 7.89 (s, 1H), 7.88 (s, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.53 (s, 1H),7.38 (d, JHH=4.1Hz, 1H),7.36 (d, JHH=4.0Hz, 1H),7.08 (d, JHH=4.3Hz, 1H),7.05 (d, JHH=4.0Hz, 1H),6.85 (s, 1H),6.80 (s, 1H), 2.76-2.72(m,4H), 1.96-1.92 (m, 4H), 1.74 (br, 2H), 1.41-1.23 (m, 56H), 0.95-0.83 (m, 18H).
【0636】
<調製例1>(インクI-1の調製)
第1溶媒としてテトラリン、第2溶媒として安息香酸ブチルを用い、第1溶媒と第2溶媒の体積比を97:3として混合溶媒を調製した。調製した混合溶媒にp型半導体材料である高分子化合物P―1をインクの全質量に対し1.2質量%の濃度となるように、また、n型半導体材料である化合物N-1をインクの全質量に対して1.2質量%の濃度となるように(p型半導体材料/n型半導体材料=1/1)混合し、60℃で8時間撹拌を行って得られた混合液をフィルターを用いてろ過し、インク(I-1)を得た。
【0637】
<調製例2~17>(インクI-2~I-17の調製)
溶媒とn型半導体材料とを下記表9に示す組み合わせで使用した以外は、調製例1と同様にして、インク(I-2)~(I-17)を得た。
【0638】
【0639】
<実施例1>(光電変換素子の製造及び評価)
(1)光電変換素子及びその封止体の製造
スパッタ法により50nmの厚さでITOの薄膜(陽極)が形成されたガラス基板を用意し、このガラス基板に対し、表面処理としてオゾンUV処理を行った。
【0640】
次に、インク(I-1)を、ITOの薄膜上にスピンコート法により塗布して塗膜を形成した後、窒素ガス雰囲気下で100℃に加熱したホットプレートを用いて10分間加熱処理して乾燥させ、活性層を形成した。形成された活性層の厚さは約300nmであった。
【0641】
次に、形成された活性層上にスピンコート法によりZnO(テイカ社製、製品名:HTD-711Z)を塗布して約50nmの厚さの電子輸送層を形成した。
【0642】
次いで、形成された電子輸送層上に、銀(Ag)層を約60nmの厚さで形成し、陰極とした。
以上の工程により光電変換素子が、ガラス基板上に製造された。
【0643】
次に、製造された光電変換素子の周辺を囲むように、支持基板であるガラス基板上に封止材であるUV硬化性封止剤を塗布し、封止基板であるガラス基板を貼り合わせた後、UV光を照射することで、光電変換素子を支持基板と封止基板との間隙に封止することにより光電変換素子の封止体を得た。支持基板と封止基板との間隙に封止された光電変換素子の厚さ方向から見たときの平面的な形状は2mm×2mmの正方形であった。得られた封止体をサンプル1とした。
【0644】
(2)光電変換素子の評価(外部量子効率の評価)
製造されたサンプル1に対し、-5Vの逆バイアス電圧を印加し、この印加電圧における波長940nmの外部量子効率(EQE)を分光感度測定装置(CEP-2000、分光計器社製)を用いて測定して評価した。
【0645】
<比較例1>
インク(I-2)を用いた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を製造して評価を行った。
【0646】
<評価1>
比較例1にかかる光電変換素子のEQEの値に対する実施例1にかかる光電変換素子のEQEの相対的な百分率(EQE相対値、単位:%)を求めると122%であった。すなわち、実施例1にかかる光電変換素子のEQEは、比較例1にかかる光電変換素子のEQEに比べて高くなっていた。結果を下記表10にも示した。
【0647】
<実施例2、比較例2、基準例1>
インク(I-3)、インク(I-4)、インク(I-5)をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子の製造と評価とを行った。
【0648】
<評価2>
基準例1にかかる光電変換素子のEQE値に対する実施例1で得られた光電変換素子のEQE相対値は118%であり、比較例1にかかる光電変換素子のEQE相対値は94%であった。n型半導体材料として用いられた化合物ははいずれも化合物N-2であるにもかかわらず、実施例2にかかるにおいては優れたEQE特性が得られることが分かった。結果を下記表10にも示した。
【0649】
<実施例3~8、比較例3、基準例2~6>
インク(I-6)~インク(I-17)を用いて製造した光電変換素子を用いて、基準例に対する実施例及び比較例に対する比較を上記と同様に行った。結果を下記表10に示す。
【0650】
【0651】
上記表10に示されるとおり、本発明の要件を満たすインク組成物を活性層形成用のインク組成物として用いて製造された光電変換素子によれば、本発明の要件を満たさないインク組成物を用いて製造された光電変換素子と比較して、EQEを向上させることができていた。