(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107252
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】グロメットインナ及びグロメット
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20230727BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20230727BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20230727BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
B60R16/02 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008325
(22)【出願日】2022-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】古田 高之
【テーマコード(参考)】
5G333
5G363
【Fターム(参考)】
5G333AA09
5G333AB29
5G333CC04
5G333DA03
5G333DC01
5G333DC02
5G333EA02
5G363AA07
5G363BA01
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】車体パネルに設けた挿通孔に挿通させ、車体パネルに沿って配索する電線の損傷を防止できるグロメットインナ及びグロメットを提供する。
【解決手段】ボディパネルPに設けられた挿通孔P1を挿通する電線WHを保護するグロメット1をカバー10とともに構成するグロメットインナ20は、挿通孔P1に挿通され、電線WHが内側に配索される配索空間Sを有する筒状の挿通部21と、挿通部21の一方側に配置されるとともに、挿通部21よりも径方向の外側に突出する環状の円盤部22と、円盤部22から一方側に向けて突出するとともに、配索空間Sと連通する挿通開口部232を有する中空状のインナー本体23とで構成されて、挿通孔P1に挿通部21を挿通させる方向を挿入方向Hdとし、環状リブ71と放射リブ72とで構成される挿通部21の内側が、挿入方向Hdに向かうに伴い、径方向の外側に広がるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに設けられた挿通孔を挿通する電線を保護するグロメットをカバーとともに構成し、前記挿通孔に挿通され、前記電線が内側に配索される配索空間を有する筒状の挿通部と、前記挿通部の一方側に配置されるとともに、前記挿通部よりも径方向の外側に突出する環状の円盤部と、前記円盤部から一方側に向けて突出するとともに、前記配索空間と連通する開口部を有する中空状のインナー本体とで構成され、前記カバーの端部に装着されて、前記挿通孔に固定されるグロメットインナであって、
前記挿通孔に前記挿通部を挿通させる方向を挿通方向とし、
前記挿通部の内側が、前記挿通方向に向かうに伴い、前記径方向の外側に広がるように構成された
グロメットインナ。
【請求項2】
前記インナー本体は、
前記挿通方向と反対方向である反挿通方向に上面部を有し、
前記開口部が、前記インナー本体において前記挿通方向と交差する交差方向に開口された
請求項1に記載のグロメットインナ。
【請求項3】
前記インナー本体は、
前記開口部における前記挿通方向に沿う周辺部に、前記挿通方向に沿った補強リブが設けられた
請求項2に記載のグロメットインナ。
【請求項4】
前記円盤部及び前記挿通部に、
前記開口部と連通するとともに、前記開口部が貫通する方向に沿って前記開口部に対応する箇所を窪ませた凹部が設けられた
請求項2又は請求項3に記載のグロメットインナ。
【請求項5】
周方向に対して分割できる複数の分割体で構成され、
前記分割体は、
前記挿通部を構成する挿通分割部と、前記円盤部を構成する円盤分割部と、前記インナー本体を構成するインナー分割部とで一体構成され、
隣接する前記分割体同士を固定する固定部が設けられ、
複数の前記分割体を構成する前記インナー分割部のうちの少なくとも2つに、組み合わせて前記開口部を形成する開口形成部が設けられた
請求項2乃至請求項4のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項6】
二つの前記分割体で構成され、
前記インナー分割部及び前記挿通分割部の少なくとも一方における周方向の一端側に、隣接する前記インナー分割部及び前記挿通分割部と枢動可能に連結された枢動部が設けられ、
前記開口形成部は、前記枢動部と対向する位置に設けられた
請求項5に記載のグロメットインナ。
【請求項7】
前記固定部は、
前記挿通分割部における周方向の一方から他方に向けて延出する係止固定片と、
該係止固定片を有する前記挿通分割部と隣接する前記挿通分割部に、周方向に沿った開口で形成され、前記係止固定片を係止する被係止部とで構成された
請求項5又は請求項6に記載のグロメットインナ。
【請求項8】
前記挿通分割部は、前記固定部により固定された状態において、隣接する他の前記挿通分割部と面接触する
請求項5乃至請求項7のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項9】
前記挿通部は、
円筒状に構成されるとともに、径方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の環状リブと、
周方向と交差する方向に沿って設けられた複数の直線状リブとで構成された
請求項1乃至請求項8のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうちのいずれかに記載のグロメットインナと、
内部に電線を挿通させる筒状の前記カバーとで構成され、
前記グロメットインナが、前記カバーの端部に装着された
グロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、パネルに挿通される電線を保護するグロメットを構成するグロメットインナ、及び、前記グロメットインナを装着したグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両などにおいて、車体パネルを挿通するように電線を配索する場合、車体パネルに設けられた挿通孔に嵌合したグロメットの内部に電線を挿通させることで、挿通孔の周縁部との干渉による電線の損傷を防止することがある。
【0003】
このようなグロメットの一例として、車体パネルに対して取り付ける可撓性を有する樹脂製のカバーと、カバーに装着されるとともに車体パネルに設けた挿通孔に挿通させる円筒状のグロメットインナを有するグロメットが特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1のグロメットでは、グロメットインナが周方向に分割可能な略同形状の分割体で構成されているため、分割体を電線に組み付けて係止固定することで、容易にグロメットインナを電線に組み付けることができるとされている。そして、カバーに装着させたグロメットインナを挿通孔に挿通させ、グロメットインナとカバーとで車体パネルを挟み込むことにより、グロメットを車体パネルに固定できるとともに、電線が挿通孔の周縁部に干渉して損傷することを防止できるとされている。
【0005】
ところで、特許文献1に開示されているグロメットインナは、挿通方向に沿った円筒状で形成されていることから、車体パネルに設けた挿通孔に挿通させた電線を車体パネルに沿って配索する場合に、電線がグロメットインナに角当たりし、損傷するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑み、車体パネルに設けた挿通孔に挿通させ、車体パネルに沿って配索する電線の損傷を防止できるグロメットインナ及びグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、パネルに設けられた挿通孔を挿通する電線を保護するグロメットをカバーとともに構成し、該カバーの端部に装着されて、前記挿通孔に固定されるグロメットインナであって、前記挿通孔に挿通され、前記電線が内側に配索される配索空間を有する筒状の挿通部と、前記挿通部の一方側に配置されるとともに、前記挿通部よりも径方向の外側に突出する環状の円盤部と、前記円盤部から一方側に向けて突出するとともに、前記配索空間と連通する開口部を有する中空状のインナー本体とで構成され、前記挿通孔に前記挿通部を挿通させる方向を挿通方向とし、前記挿通部の内側が、前記挿通方向に向かうに伴い、前記径方向の外側に広がるように構成されたことを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、上述のグロメットインナと、内部に電線を挿通させる筒状の前記カバーとで構成され、前記グロメットインナが、前記カバーの端部に装着されたグロメットである。
前記開口部は、前記挿通方向に沿った方向に開口する場合や、前記挿通方向と交差する方向に開口する場合を含む。
【0010】
上述の前記挿通部の内側が、前記挿通方向に向かうに伴い、前記径方向の外側に広がるとは、前記挿通方向に向かうに伴い、前記径方向の外側に向けて徐々に広がる場合や、前記挿通方向に向かうに伴い、前記径方向の外側に向けて段階的に広がる場合を含む。
【0011】
この発明により、パネルに設けた挿通孔に挿通させた電線をパネルに沿って配索させた場合に、挿通方向に向かうに伴い径方向の外側に広がる挿通部に沿って電線を径方向に配索できる。したがって、挿通孔に挿通させた電線が挿通部と角当たりすることを防止でき、電線の損傷を防止できる。
【0012】
この発明の態様として、前記インナー本体は、前記挿通方向と反対方向である反挿通方向に上面部を有し、前記開口部が、前記インナー本体において前記挿通方向と交差する交差方向に開口されてもよい。
この発明によると、交差方向に沿って開口部から配索空間に配索されるとともに挿通孔を挿通させた電線のように、急な曲げ角度で湾曲させた電線であっても挿通部と角当たりすることを防止できる。すなわち、車体パネルの一方側及び他方側において車体パネルに沿って配索された電線が、挿通部と干渉して損傷することを防止できる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記インナー本体は、前記開口部における前記挿通方向に沿う周辺部に、前記挿通方向に沿った補強リブが設けられてもよい。
この発明により、インナー本体における開口部近傍の剛性を向上させることができる。
【0014】
詳述すると、挿通方向と交差する方向に開口部を設けることによりインナー本体の強度が低下する。これに対して、前記開口部における挿通方向に沿う周辺部に補強リブを設けることにより、強度が低下する開口部近傍の剛性を向上させることができる。すなわち、インナー本体の強度低下を抑制できる。したがって、上面部に対して外力が作用した場合に、インナー本体が損傷することを防止できる。
【0015】
また、開口部から挿入された電線を補強リブに面当たりさせることができるため、電線が開口部と角当たりして損傷することを防止できる。
このように、開口部の周方向端部に沿って補強リブが設けることで、インナー本体の強度低下を抑制しつつ、開口部に挿入された電線の損傷を防止できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記円盤部及び前記挿通部に、前記開口部と連通するとともに、前記開口部が貫通する方向に沿って前記開口部に対応する箇所を窪ませた凹部が設けられてもよい。
この発明によると、挿通部における開口部の挿通方向に空間が形成される。これにより、開口部から挿通部に配索される電線の曲げ半径を緩やかにできるため、挿通方向側において車体パネルに沿って配索される電線のかかる負担を軽減できる。
【0017】
またこの発明の態様として、周方向に対して分割できる複数の分割体で構成され、前記分割体は、前記挿通部を構成する挿通分割部と、前記円盤部を構成する円盤分割部と、前記インナー本体を構成するインナー分割部とで一体構成され、隣接する前記分割体同士を固定する固定部が設けられ、複数の前記分割体を構成する前記インナー分割部のうちの少なくとも2つには、組み合わせて前記開口部を形成する開口形成部が設けられてもよい。
【0018】
前記分割体は、2部品、又はそれ以上に分割されてもよい。また、前記分割体は同形状である場合のみならず、異形状である場合を含む。
また、前記分割体は、例えばヒンジなどのような枢動部を介して枢動可能に連結されていてもよいし、完全に分離されていてもよい。
【0019】
この発明により、複数の分割体を電線に組み付けることで、グロメットインナを電線に後付けすることができる。また、開口形成部の間に電線が配置されるように分割体で電線に挟み込むことで、電線の損傷を防止しつつ、容易に電線を配索空間に配索できる。したがって、電線の損傷を防止しつつ、電線にグロメットインナを取り付ける取付作業を効率よく行うことができる。
【0020】
またこの発明の態様として、二つの前記分割体で構成され、隣接する挿通分割部同士を枢動可能に連結する枢動部が設けられ、前記開口形成部は、前記枢動部と対向する位置に設けられてもよい。
前記枢動部は、例えば、隣接する前記挿通分割部や前記インナー分割部を一体に連結している場合や、前記挿通分割部及び前記インナー分割部に設けられた部品同士を組み合わせることにより枢動可能に構成される場合を含む。すなわち、隣接する分割体は、枢動部を介して一体又は別体で構成されている場合を含む。
【0021】
この発明によると、隣接する挿通分割部同士を枢動部で連結されているため、枢動部を介して分割体を枢動させることで、容易に電線に対してグロメットインナを組み付けることができる。また、開口形成部が二つの分割体における周方向の他方側に設けられるため、一方の分割体にのみ開口部が設けられている場合に比べ、インナー本体の部分的な強度低下を抑制できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記固定部は、前記挿通分割部における周方向の一方から他方に向けて延出する係止固定片と、該係止固定片を有する前記挿通分割部と隣接する前記挿通分割部に、周方向に沿った開口で形成され、前記係止固定片を係止する被係止部とで構成されてもよい。
【0023】
この発明によると、挿通分割部の一方に、隣接する他方の挿通分割部に向けて延出する係止固定片が設けられるとともに、他方の挿通分割部に被係止部が設けられているため、配索空間に配索された電線が、隣接する分割体を係止固定する固定部と干渉することを防止できる。したがって、電線が損傷することを防止できる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記挿通分割部は、前記固定部により固定された状態において、隣接する他の前記挿通分割部と面接触してもよい。
この発明により、隣接する挿通分割部同士を互いに支持できるため、固定状態において挿通部の剛性を向上させることができる。したがって、挿通部に外力が作用した場合であっても、挿通部が変形することを防止でき、グロメット内部への液体の侵入防止できる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記挿通部は、円筒状に構成されるとともに、径方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の環状リブと、周方向と交差する方向に沿って設けられた複数の直線状リブとで構成されてもよい。
【0026】
この発明により、挿通部の強度を向上させることができるため、挿通部に外力が作用した場合であっても、挿通部が損傷することを防止できるため、カバーとの装着状態が解除されることを防止できる。なお、直線状リブが円盤部の中心部分を中心として径方向に放射線状に設けられた場合には、挿通部の強度の均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明により、車体パネルに設けた挿通孔に挿通させ、車体パネルに沿って配索する電線の損傷を防止できるグロメットインナ及びグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】パネルに取り付けた状態のグロメットの概略斜視図。
【
図9】第一分割体及び第二分割体の組み合わせ過程の説明図。
【
図10】第一分割体及び第二分割体の組み合わせ過程の説明図。
【
図11】第一分割体及び第二分割体の組み合わせ過程の説明図。
【
図12】第一分割体及び第二分割体の組み合わせ過程の説明図。
【
図15】パネルに取り付けた状態のグロメットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
グロメット1は、ボディパネルPに設けられた挿通孔P1を挿通する電線WHを保護する保護部材である。このグロメット1は、筒状のカバー10と、カバー10の端部に装着されるとともに、挿通孔P1に固定されるグロメットインナ20とで構成されている。以下、グロメット1及びグロメットインナ20について、
図1から
図15に基づいて説明する。
【0030】
図1は反挿入方向Huから視たグロメット1の概略斜視図を示し、
図2は反挿入方向Huから視たグロメット1の概略分解斜視図を示し、
図3はカバー10の説明図を示す。
図3について詳述すると、
図3(a)はカバー10の概略平面図を示し、
図3(b)は
図3(a)におけるA-A矢視断面図を示す。
【0031】
図4は第一分割体30と第二分割体40との固定を解除し、第一分割体30と第二分割体40とを離間するように枢動させた状態でのグロメットインナ20の概略斜視図を示す。
図5及び
図6は第一分割体30の構成を説明する説明図であり、
図5(a)は第一分割体30を長手方向Lの一方側から視た側面図を示し、
図5(b)は第一分割体30の底面図を示し、
図6(a)は第一分割体30の正面図を示し、
図6(b)は第一分割体30の平面図を示す。
【0032】
図7及び
図8は第二分割体40の構成を説明する説明図であり、
図7(a)は第二分割体40を長手方向Lの一方側から視た側面図を示し、
図7(b)は第二分割体40の底面図を示し、
図8(a)は第二分割体40の背面図を示し、
図8(b)は第二分割体40の平面図を示す。
【0033】
図9乃至
図12は第一分割体30に対して第二分割体40を枢動させ、第一分割体30と第二分割体40とを係止固定する工程を示す底面図である。詳しくは、
図9は第一分割体30と第二分割体40とが分割された状態の底面図を示し、
図10は第一分割体30に対して第二分割体40を枢動させた状態の底面図を示し、
図11は第一分割体30に対して第二分割体40をさらに枢動させた状態の底面図を示し、
図12は第一分割体30に対して第二分割体40を係止固定する直前の底面図を示す。
【0034】
図13は第一分割体30と第二分割体40とを固定したグロメットインナ20を下方から視た概略斜視図を示し、
図14はグロメットインナ20の構成を説明する説明図を示す。
図15はボディパネルPに取り付けた状態のグロメット1の断面図を示す。
【0035】
図14(a)は電線WHを挿通させたグロメットインナ20の側面図を示し、
図14(b)は
図14(a)におけるB-B矢視断面図を示す。
図15は
図3(a)におけるA-A矢視断面図に対応する断面図である。なお、
図14及び
図15において、グロメット1の構成を明らかにするため、便宜上電線WHを破線で示し、透過させた状態で図示している。
【0036】
ここで、
図1中において、上下方向を挿通方向Hとし、電線挿通部12の延出方向を長手方向Lとする。この挿通方向Hと長手方向Lとは互いに直交している。また、長手方向L及び挿通方向Hと直交する方向を幅方向Wとする。挿通方向Hに沿って下方側を挿入方向Hdとし、上方側を反挿入方向Huとする。なお、
図1中における方向は
図2乃至
図15にも適用する。
また、
図1中において、幅方向Wに沿って右側から視た図を正面図とする。
【0037】
グロメット1は、
図1及び
図2に示すように、内部に電線WHを挿通させる筒状のカバー10と、カバー10の端部に装着されるとともに、挿通孔P1に固定されるグロメットインナ20とで構成されている。
【0038】
カバー10は、可撓性を有する樹脂で形成された中空状の筒状体であり、
図2及び
図3(a)に示すように、平面視略円形状に形成され内部にグロメットインナ20を収容する収容空間を有する取付部11と、取付部11から長手方向Lに沿って突出する筒状の電線挿通部12とで一体に構成されている。
【0039】
取付部11は、
図3(b)に示すように、反挿入方向Huが閉塞された断面凹状の本体部111と、本体部111における挿入方向Hdの端部から径方向外側に向けて突出するフランジ収容部112とで構成されている。
【0040】
ここで、径方向とは、平面視において、略円形状に形成された本体部111の中心から放射状に向かう方向をさす。また、径方向外側とは、径方向に沿って本体部111の中心から外側に向けた方向をさし、径方向内側とは、径方向に沿って外側から本体部111の中心に向けた方向をさす。
【0041】
フランジ収容部112は、反挿入方向Huに本体部111と連通する開口を有するとともに、挿入方向Hdに挿通孔P1の外径と略同じ外径である円形状の開口を有する円環状の筒状体である。すなわち、フランジ収容部112は反挿入方向Huと挿入方向Hdに大きさの異なる開口を有する筒状体である。このフランジ収容部112の内周面には、径方向外側に向けて窪ませた装着凹部113が設けられている。またフランジ収容部112の底面部分(挿入方向Hd側の面)には挿入方向Hdに向けて突出する外側リブ114と内側リブ115とが備えられている。
【0042】
装着凹部113は、長手方向L及び幅方向Wの中央部分に対応する箇所を除いて、フランジ収容部112の内周面を径方向外側に向けて窪ませた溝である。この装着凹部113の溝底が形成する外径は、円盤部22の外径と略等しく、装着凹部113の溝幅(挿通方向Hの長さ)は、後述する円盤部22の板厚(挿通方向Hに沿った長さ)と略等しく構成されている。このため、装着凹部113は円盤部22を嵌合することができる。
【0043】
外側リブ114は、装着凹部113の溝底に対応する部分を基点とし、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向外側に拡がる略円錐台形状に形成された略円環状のリブである。
内側リブ115は、外側リブ114の径方向内側において、挿入方向Hdに向けて突出する略円環状のリブである。なお、内側リブ115の長さ(挿入方向Hdに向けて突出する長さ)は、外側リブ114の長さに比べて十分短い。
【0044】
グロメットインナ20は、電線WHが内側に配索される配索空間Sを内部に有する挿通部21と、挿通部21の反挿入方向Huに配置され、挿通部21よりも径方向外側に突出する環状の円盤部22と、円盤部22から反挿入方向Huに向けて突出する中空状のインナー本体23とで一体構成されている(
図2参照)。
【0045】
挿通部21は、挿通孔P1の外径と略同じ外径を有する略円筒形状で形成されており、円盤部22に装着されたカバー10とともにボディパネルPを挟み込んで固定する係止固定部24が外周面に四つ等間隔で設けられている。
【0046】
係止固定部24は、挿通部21の外周面を径方向内側に窪ませて形成された凹状の外面溝部241と、外面溝部241の溝底から径方向外側に突出する連結部242と、連結部242の先端から反挿入方向Huに向けて延出する係止片243とで構成されている(
図5(a)参照)。
【0047】
連結部242は、外面溝部241における挿入方向Hdの端部から径方向に沿って径方向外側に向けて突出する突片である。なお、連結部242の径方向に沿った長さは、外面溝部241の溝の深さと略同じである。
連結部242の先端と連結されるとともに、反挿入方向Huに向けて延出する係止片243は、連結部242の先端側(挿入方向Hd側)から反挿入方向Huに向かうに伴い、外面溝部241の溝底から徐々に離間するように、径方向外側に向けて傾斜している。
【0048】
円盤部22は、所定の板厚を有する平面視略円環形状をした板状体である。この円盤部22の長手方向L及び幅方向Wの一方側及び他方側の端部は、径方向内側に向けて窪んでいる。また、円盤部22における係止固定部24に対応する箇所には、挿通方向Hに沿って貫通する貫通孔25が設けられている。
【0049】
インナー本体23は、反挿入方向Huに上面231を有する中空状の円柱体であり、長手方向Lの一方側に配索空間Sと連通する挿通開口部232が設けられている。また、この挿通開口部232における周方向の両端部分には、一対の開口リブ233が挿通方向Hに沿って立設しており、インナー本体23の外周面には複数の周縁リブ234が挿通方向Hに沿って立設している。なお、開口リブ233及び周縁リブ234の下端は円盤部22と連結している。
【0050】
このように構成されたグロメットインナ20は、
図4に示すように、周方向に組み付けることができる第一分割体30と第二分割体40とで構成されている。第一分割体30と第二分割体40とは、ヒンジ部26を介して枢動可能に連結されているとともに、ヒンジ部26と反対側に設けられた固定部27を介して固定することができる。
【0051】
以下、グロメットインナ20を長手方向Lに沿って均等に二分割して形成された第一分割体30及び第二分割体40について詳述する。なお、第一分割体30と第二分割体40とは、
図4乃至
図8に示すように、略同形状をしている。
【0052】
第一分割体30は、グロメットインナ20の幅方向Wの一方側を構成しており、
図4乃至
図6に示すように、挿通部21の一部分を構成する第一挿通分割部31と、円盤部22の一部分を構成する第一円盤分割部32と、インナー本体23の一部分を構成する第一インナー分割部33とで構成されている。
【0053】
第一挿通分割部31は、
図5(b)及び
図6(a)に示すように、第一円盤分割部32から挿入方向Hdに向けて立設する、底面視略半円環状に形成された第一環状リブ51と、径方向に沿った第一放射リブ52とで構成されている。
第一環状リブ51は、
図5(b)に示すように、第一挿通分割部31の外周面を形成する第一径外側リブ511と、第一径外側リブ511の径方向内側に設けられた第一中間リブ512と、第一中間リブ512の径方向内側に設けられた第一径内側リブ513と、第一径内側リブ513の径方向内側に設けられた第一短縮リブ514と、第一短縮リブ514の径方向内側に設けられた第一最内リブ515とで構成されている。
【0054】
第一径外側リブ511と第一中間リブ512と第一径内側リブ513は、
図6(a)に示すように、挿通方向Hに沿った長さが等しくなるように構成されている。これに対して、第一短縮リブ514と第一最内リブ515は、第一径内側リブ513と比べて挿通方向Hに沿った長さが短くなるように構成されている。なお、第一最内リブ515は、第一短縮リブ514と比べて挿通方向Hに沿った長さが短くなるように構成されている。
【0055】
すなわち、径方向外側から径方向内側に向けて並んだ第一径外側リブ511と第一中間リブ512と第一径内側リブ513と第一短縮リブ514と第一最内リブ515は、
図5(b)及び
図6(a)に示すように、径方向内側に向かうに伴い縮径する略相似形状で構成されている。そして、第一径内側リブ513と第一短縮リブ514と第一最内リブ515は、径方向内側に向かうに伴い、反挿入方向Huに向けて傾斜する階段状となっている。
なお、第一最内リブ515は、後述する第一開口形成部333に対応する長手方向Lの一方側には設けられていない。すなわち、第一開口形成部333の挿入方向Hdには空間が形成されている。
【0056】
また、第一中間リブ512、第一径内側リブ513、第一短縮リブ514、第一最内リブ515は、径方向に沿って等間隔で配置されている。これに対して、第一径外側リブ511と第一中間リブ512との間隔は、第一中間リブ512と第一径内側リブ513の間隔と比べて短い。
【0057】
グロメットインナ20の外周面を構成する第一径外側リブ511は、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向内側にわずかに傾斜するように形成されており、周方向の所定の箇所、より具体的には、底面視において、第一径外側リブ511の中心を幅方向Wに沿って通る線に対して±45の位置に係止固定部24が設けられている。
【0058】
第一放射リブ52は、
図5(b)及び
図6(a)に示すように、互いに所定の間隔を隔てて平行に並んで配置された一対の第一直線リブ521と、長手方向Lの一方側において、後述する第一開口形成部333の外縁に対応する位置に設けられた第一開口補強リブ522とで構成されている。
【0059】
一対の第一直線リブ521は、
図5(b)に示すように、平面視における第一環状リブ51の中心を挿通方向Hに沿って延出する中心軸を中心として、径方向に沿って放射状に設けられている。より詳しくは、第一直線リブ521は周方向に沿って45度ずつ間隔を隔てて複数配置されている。すなわち、第一直線リブ521は、長手方向Lの一方側及び他方側において、長手方向Lに沿って配置されており、長手方向Lの中央部分において、幅方向Wに沿っている。また、第一直線リブ521は、底面視において、第一環状リブ51の中心を幅方向Wに沿って通る線に対して±45の位置にそれぞれ配置されている。
【0060】
第一直線リブ521について、詳述する。第一直線リブ521は、
図6(a)に示すように、挿入方向Hdに向かうに伴い、第一インナー分割部33の内周面から径方向外側に向けて徐々に傾斜するように構成されている。
より具体的には、放射状に設けた第一直線リブ521は、基本的に、第一径内側リブ513よりも径方向内側部分において、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向外側に向けて傾斜しており、第一インナー分割部33の内周面と第一最内リブ515と第一短縮リブ514と第一径内側リブ513との下端部分を連結している。また、第一径内側リブ513よりも径方向外側部分において、第一直線リブ521は、第一径内側リブ513と第一中間リブ512と第一径外側リブ511とを連結している。なお、第一直線リブ521の下端は、第一径内側リブ513と第一径外側リブ511との間で、第一径外側リブ511の下端と面一となっている。
【0061】
第一挿通分割部31は、
図5(b)に示すように、長手方向Lの他方側の端部が径方向内側に窪んでいる。より具体的には、第一挿通分割部31における長手方向Lの他方側の端部は、第一径外側リブ511が立設されておらず、第一挿通分割部31における外周面が径方向内側に窪んでいる。そのため、長手方向Lの他方側の端部では、第一中間リブ512が第一挿通分割部31の外周面を形成している。
【0062】
このため、長手方向Lの他方側に配置された一対の第一直線リブ521は、第一インナー分割部33の内周面と第一中間リブ512とを連結している。なお、長手方向Lの他方側に配置された一対の第一直線リブ521は、上述の第一直線リブ521と同様に、径方向内側において、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向外側に向けて傾斜している。
【0063】
また、第一挿通分割部31における長手方向Lの一方側では、上述のように第一最内リブ515が設けられていないため、長手方向Lの一方側に配置された一対の第一直線リブ521は、第一短縮リブ514と第一径外側リブ511とを連結している。なお、長手方向Lの一方側に配置された一対の第一直線リブ521は、上述の第一直線リブ521と同様に、径方向内側において、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向外側に向けて傾斜している。
【0064】
また、底面視において、第一環状リブ51の中心を幅方向Wに沿って通る線に対して-45度の位置に配置された第一直線リブ521のうちの一つは、長手方向Lの一方側に配置された一対の第一直線リブ521と同様に、第一短縮リブ514と第一径外側リブ511とを連結している。
【0065】
このように複数配置された第一直線リブ521のうち、幅方向Wの他方側の端部に配置された第一直線リブ521(第一直線リブ521a及び第一直線リブ521b)は、
図5(b)及び
図6(a)に示すように、第一径外側リブ511及び第一中間リブ512とともに、第一挿通分割部31の幅方向Wの外壁を形成している。
【0066】
幅方向Wの他方側の端部に配置された第一直線リブ521のうち、長手方向Lの他方側に設けられた第一直線リブ521aには、
図5(b)、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、ヒンジ部26の一部を構成する第一ヒンジ部53が長手方向Lの他方側の端部に設けられている。また、第一直線リブ521aにおける挿入方向Hdの端部、かつ、第一ヒンジ部53の径方向内側には、第一直線リブ521aを幅方向Wの一方側に向けて貫通させて形成された係止凹部54が設けられている。
【0067】
係止凹部54は、第一中間リブ512と第一径内側リブ513との間隔と略等しい幅長(長手方向Lに沿った長さ)を有するとともに、第一円盤分割部32の板厚と略等しい高さ(挿通方向Hに沿った長さ)を有する凹部で構成されている。
【0068】
一方で、幅方向Wの他方側の端部に配置された第一直線リブ521のうち、長手方向Lの一方側に設けられた第一直線リブ521bには、
図5及び
図6に示すように、固定部27の一部を構成する固定片55と、固定片55の径方向外側に挿入凸部56が設けられている。
【0069】
固定片55は、第一直線リブ521bの第一径内側リブ513に対応する箇所から幅方向Wに沿って突出する軸部551と、第一直線リブ521の先端から径方向外側に突出する係止部552とで構成されている。
軸部551は、第一直線リブ521bから第一開口補強リブ522までの幅方向Wに沿った長さと略同じ長さを有する平板状の突片であり、第一径内側リブ513と略等しい板厚を有する。また、軸部551の先端部分は、先端側に向かうに伴い、挿通方向Hの両端が内側に傾いた先細り形状となっている。
【0070】
係止部552は、
図5(b)に示すように、軸部551の先端中央部分から径方向外側に向けて突出した、平面視略三角形状に形成されている。係止部552の径方向外側の面は、基端側に向かうに伴い径方向外側に向けて傾斜している。
【0071】
挿入凸部56は、第一直線リブ521bにおける第一径外側リブ511と第一中間リブ512との間に対応する箇所、及び、第一中間リブ512と第一径内側リブ513との間に対応する箇所から幅方向Wに突出する、第一直線リブ521bの幅と略同じ長さだけ幅方向Wに向けて突出する平板状の突片である。なお、挿入凸部56の板厚は、固定片55の板厚と略同じである。また、挿入凸部56の突出量(幅方向Wの長さ)は、軸部551の突出量のおよそ半分である。
【0072】
第一開口補強リブ522は、
図5(b)に示すように、第一開口形成部333における幅方向Wの一方側に対応する箇所において、第一円盤分割部32から挿入方向Hdに向けて立設している。この第一開口補強リブ522は、第一インナー分割部33の内周面と第一径外側リブ511とを連結する第一直線リブ521と同じ形状で構成されている。なお、第一開口補強リブ522は、長手方向Lに沿っている。
【0073】
第一円盤分割部32は、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、平面視略半円状に構成された環状の板状体であり、径方向内側の端部から第一インナー分割部33が立設している。また、第一円盤分割部32における係止固定部24に対応する箇所には、挿通方向Hに沿って貫通する貫通孔25が設けられている。加えて、第一円盤分割部32の円盤上面32aには、幅方向Wに沿って突出する円盤凸部321が長手方向Lの他方側に設けられている。
【0074】
円盤凸部321は、円盤上面32aにおける径内側端部から幅方向Wの他方側に向けて突出している、平板状の突片である。この円盤凸部321は、第一径内側リブ513の板厚と略等しい幅を有するとともに、第一円盤分割部32の板厚と略同じ板厚で構成されている。
【0075】
第一インナー分割部33は、
図5(a)、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、第一円盤分割部32から立設する略半円状の外周面を有する第一側面部331と、上面231の一部を構成する略半円状の分割第一上面部332とで構成されている。
【0076】
第一側面部331は、第一円盤分割部32における径方向内側の端部から反挿入方向Huに向けて立設した、平面視略半円の環状体で形成されている。この第一側面部331の周方向には、複数の周縁リブ234が立設している。また、第一側面部331における長手方向Lの一方側は、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、挿通開口部232を形成する第一開口形成部333が設けられているとともに、第一開口形成部333の幅方向Wの他方側には、開口リブ233が立設している。なお、第一円盤分割部32から反挿入方向Huに向けて立設する開口リブ233の挿入方向Hdには、第一円盤分割部32から第一開口補強リブ522が立設している(
図6(a)参照)。
【0077】
第一円盤分割部32における第一開口形成部333に対応する箇所は、径方向の外側に向けて窪ませて形成された第一間隙部322が設けられている。この第一間隙部322における長手方向Lの一方側の端面は、第一円盤分割部32から挿入方向Hdに向けて立設する第一短縮リブ514の径方向内側の面と面一となっている(
図5(b)参照)。
【0078】
上面231の一部を構成する分割第一上面部332の裏面側には、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、二つの第一インナー凸部334が長手方向Lに沿って所定の間隔を隔てて設けられている。
第一インナー凸部334は、幅方向Wの他方側に向けて突出する突片であり、長手方向Lの中央部分と長手方向Lの一方側とに設けられている。なお、第一インナー凸部334と第一インナー凸部334との間隔は、第一インナー凸部334の幅長(長手方向Lに沿った長さ)と等しい。
【0079】
第一分割体30と略同じ外形を有する第二分割体40は、グロメットインナ20の幅方向Wの他方側を構成しており、
図4、
図7及び
図8に示すように、挿通部21の一部分を構成する第二挿通分割部41と、円盤部22の一部分を構成する第二円盤分割部42と、インナー本体23の一部分を構成する第二インナー分割部43とで構成されている。
【0080】
第二挿通分割部41は、
図7(b)及び
図8(a)に示すように、第二円盤分割部42から挿入方向Hdに向けて立設する、底面視略半円環状に形成された第二環状リブ61と、径方向に沿って放射状に配置される第二放射リブ62とで構成されている。
【0081】
第二環状リブ61は、長手方向Lに沿った面を対称面として、第一環状リブ51と面対称に形成されている。すなわち、第二環状リブ61は、
図7(b)に示すように、第二挿通分割部41の外周面を形成する第二径外側リブ611と、第二径外側リブ611の径方向内側に設けられた第二中間リブ612と、第二中間リブ612の径方向内側に設けられた第二径内側リブ613と、第二径内側リブ613の径方向内側に設けられた第二短縮リブ614と、第二短縮リブ614の径方向内側に設けられた第二最内リブ615とで構成されている。
【0082】
ここで、第二径外側リブ611,第二中間リブ612,第二径内側リブ613,第二短縮リブ614,第二最内リブ615は、面対称であることを除いて、それぞれ第一径外側リブ511,第一中間リブ512,第一径内側リブ513,第一短縮リブ514,第一最内リブ515と同じ構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0083】
第二放射リブ62は、第一放射リブ52と同様に、互いに所定の間隔を隔てて平行に並んで配置された一対の第二直線リブ621と、長手方向Lの他方側において、後述する第二開口形成部433の外縁に対応する第二開口補強リブ622とで構成されている(
図7(b)参照)。
【0084】
ここで、第二直線リブ621は、長手方向Lの一方側において長手方向Lに沿った第二直線リブ621が対となっていないこと、及び面対称であることを除いて、第一直線リブ521とそれぞれ同じ構成であるため、ここでは説明を省略する。同様に、第二開口補強リブ622は、面対称であることを除いて、第一開口補強リブ522とそれぞれ同じ構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0085】
このように複数配置された第二直線リブ621のうち、幅方向Wの一方の端部に配置された第二直線リブ621(第二直線リブ621a及び第二直線リブ621b)は、
図7(b)及び
図8(a)に示すように、第二径外側リブ611及び第二中間リブ612とともに、第二挿通分割部41の幅方向Wの外壁を形成している。
【0086】
幅方向Wの一方側の端部に配置された第二直線リブ621のうち、長手方向Lの他方側に設けられた第二直線リブ621aには、ヒンジ部26の一部を構成する径方向外側に第二ヒンジ部63が長手方向Lの他方側の端部に設けられている。この第二ヒンジ部63は、第一ヒンジ部53と一体に構成されており、ヒンジ部26を枢動軸として、第一分割体30に対して第二分割体40を枢動させることができる。
【0087】
また、第二直線リブ621aにおける挿入方向Hdの端部、かつ、第二ヒンジ部63の径方向内側には、幅方向Wの一方側に向けて突出する略板状の規制凸部64が設けられている。規制凸部64は、第二中間リブ612と第二径内側リブ613との間隔と略等しい幅長(長手方向Lに沿った長さ)を有するとともに、第二円盤分割部42の板厚と略等しい高さ(挿通方向Hに沿った長さ)を有する板状体である。
【0088】
一方で、幅方向Wの一方側の端部に配置された第二直線リブ621である第二直線リブ621bには、
図7(b)及び
図8(a)に示すように、固定片55を係止固定する固定凹部65と、挿通凹部66とが長手方向Lに沿って並んで設けられている。
【0089】
固定凹部65は、第二直線リブ621bにおける第二径内側リブ613に対応する箇所を幅方向Wに沿って貫通させて形成されている。この固定凹部65は、軸部551の長手方向Lの長さ及び挿通方向Hの長さと略等しい幅(長手方向Lに沿った長さ)及び高さ(挿通方向Hに沿った長さ)を有する凹部である。すなわち、固定凹部65は軸部551を挿入可能に構成されている。
【0090】
挿通凹部66は、固定凹部65の長手方向Lの一方側において、第二直線リブ621bを幅方向Wに沿って貫通させて形成されている。この挿通凹部66は、挿入凸部56の挿通方向Hの長さと等しい高さ(挿通方向Hに沿った長さ)を有する凹部であり、二つ並んだ挿入凸部56を挿入できるように構成されている。なお、挿通凹部66における長手方向Lの一方側の端部は、第二径外側リブ611の径方向内側の端部に対応している。
このように構成された、第二直線リブ621bを貫通させて形成された固定凹部65と挿通凹部66との境界部分は、挿通方向Hに沿った板状に形成された被係止部651が形成されている。
【0091】
第二円盤分割部42は、
図8(b)に示すように、平面視略半円状に構成された環状の板状体であり、径方向内側の端部から第二インナー分割部43が立設している。また、第二円盤分割部42における係止固定部24に対応する箇所には、挿通方向Hに沿って貫通する貫通孔25が設けられている。
【0092】
第二インナー分割部43は、
図7(a)、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、第一円盤分割部32から立設する略半円状の外周面を有する第二側面部431と、上面231の一部を構成する略半円状の分割第二上面部432とで構成されている。
【0093】
第二側面部431は、第二円盤分割部42における径方向内側の端部から反挿入方向Huに向けて立設した、平面視略半円の環状体で形成されている。この第二側面部431の周方向には、複数の周縁リブ234が立設している。また、第二側面部431における長手方向Lの一方側は、挿通開口部232を形成する第二開口形成部433が設けられているとともに、第二開口形成部433の幅方向Wの一方側には、開口リブ233が立設している。第二円盤分割部42から反挿入方向Huに向けて立設する第二側面部431の挿入方向Hdには、第二円盤分割部42から第二短縮リブ614が立設している(
図8(a)参照)。
【0094】
なお、第二円盤分割部42における第二開口形成部433に対応する箇所は、径方向の外側に向けて窪ませて形成された第二間隙部422が設けられている。この第二間隙部422における長手方向Lの一方側の端面は、第二円盤分割部42から挿入方向Hdに向けて立設する第二短縮リブ614の径方向内側の面と面一となっている(
図7(b)参照)。
【0095】
インナー本体23の一部を構成する分割第二上面部432の裏面側には、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、二つの第二インナー凸部434が長手方向Lに沿って所定の間隔を隔てて設けられている。
第二インナー凸部434は、幅方向Wの一方側に向けて突出する突片であり、第一インナー凸部334と同じ形状をしている。この第二インナー凸部434は、長手方向Lの中央部分のやや長手方向L一方側と長手方向Lの他方側とに設けられている。なお、第二インナー凸部434と第二インナー凸部434との間隔は、第二インナー凸部434の幅長(長手方向Lに沿った長さ)と等しい。
【0096】
このように構成された第一分割体30と第二分割体40は、
図9乃至
図12に示すように、第一ヒンジ部53と第二ヒンジ部63とで構成されたヒンジ部26を枢動軸として第一分割体30に対して第二分割体40を相対的に枢動させることで、固定片55と固定凹部65とで構成された固定部27を固定して、グロメットインナ20とすることができる。
【0097】
以下、電線WHにおける所望の位置に第一分割体30及び第二分割体40を組み付け、第一分割体30に対して第二分割体40を相対移動させて固定片55と固定凹部65とを固定することで、電線WHにグロメットインナ20を組み付ける方法について、
図9乃至
図12に基づき、簡単に説明する。
図9乃至
図12において、第一分割体30及び第二分割体40の構成を明確にするため、便宜上電線WHを省略する。
【0098】
まず、
図9に示すように、第一分割体30と第二分割体40とが分割された状態において、カバー10の挿入方向Hdにおいて、第一開口形成部333と第二開口形成部433との間に、電線挿通部12に挿通させた電線WHが配置されるように第一分割体30及び第二分割体40を配置する。この状態において、第一ヒンジ部53と第二ヒンジ部63とで構成されるヒンジ部26を枢動軸として、第一分割体30に対して第二分割体40を枢動させる(
図10参照)。
【0099】
このように第一分割体30に対して第二分割体40を枢動させることにより、第二直線リブ621aの長手方向Lの他端側に設けられた、すなわちヒンジ部26の近くに配置されている規制凸部64が、第一直線リブ521aに設けられた係止凹部54に挿入される(
図10参照)。これにより、規制凸部64の反挿入方向Huの面が係止凹部54における挿入方向Hdの面と当接し、第二分割体40に対する第一分割体30の反挿入方向Huへの移動を規制できる。
【0100】
さらに、第一分割体30に対して第二分割体40を枢動させることで、円盤上面32aに設けられた円盤凸部321が第二円盤分割部42の反挿入方向Huの面に配置される(
図11参照)。すなわち、円盤凸部321の挿入方向Hdの面と第二円盤分割部42の反挿入方向Huの面とが当接し、第二分割体40に対する第一分割体30の挿入方向Hdへの移動を規制できる。このように長手方向Lに沿って異なる位置に配置された円盤凸部321と規制凸部64とで、第二分割体40に対する第一分割体30の反挿入方向Hu及び挿入方向Hdへの相対移動を挟み込むように規制できるため、第二分割体40に対して第一分割体30が捩れることも防止できる。
【0101】
したがって、第一分割体30に対して第二分割体40をさらに枢動した場合に、固定片55及び挿入凸部56を固定凹部65及び挿通凹部66に確実に挿入し(
図12参照)、固定片55と被係止部651とを係止固定することができる。これにより、固定部27により係止固定された第一分割体30と第二分割体40とを組み付けたグロメットインナ20とすることができる。
【0102】
グロメットインナ20は、上述のように、第一挿通分割部31と第二挿通分割部41とで構成された挿通部21と、第一円盤分割部32と第二円盤分割部42とで構成された円盤部22と、第一インナー分割部33と第二インナー分割部43とで構成されたインナー本体23とで構成されている(
図2参照)。
【0103】
より具体的には、挿通部21は、
図13に示すように、第一環状リブ51と第二環状リブ61とで構成される底面視略円環状の環状リブ71と、第一放射リブ52と第二放射リブ62とで構成された放射リブ72とで構成されている。
【0104】
互いに面対称に構成された第一環状リブ51と第二環状リブ61とで構成された環状リブ71は、円盤部22から挿入方向Hdに向けて延出する底面視円形状のリブであり、第一径外側リブ511と第二径外側リブ611とで構成される径外側リブ711と、第一中間リブ512と第二中間リブ612とで構成される中間リブ712と、第一径内側リブ513と第二径内側リブ613とで構成される径内側リブ713と、第一短縮リブ514と第二短縮リブ614とで構成される短縮リブ714と、第一最内リブ515と第二最内リブ615とで構成される最内リブ715とで構成されている。
【0105】
径外側リブ711、中間リブ712、径内側リブ713、短縮リブ714,最内リブ715は、径方向外側から径方向内側に向けて所定の間隔を隔てて設けられており、径外側リブ711と中間リブ712と径内側リブ713とは挿通方向Hに沿って同じ長さを有する。
【0106】
一方で、径方向内側に向けて並んでいる短縮リブ714及び最内リブ715は、径内側リブ713よりも短くなるように構成されている。また、最内リブ715の挿通方向Hに沿った長さは、短縮リブ714の挿通方向Hに沿った長さよりも短い。このように、径方向に沿って並んだ径外側リブ711と最内リブ715とは、放射状に形成された放射リブ72によって連結されている。
【0107】
互いに面対称に構成された第一放射リブ52と第二放射リブ62とで構成される放射リブ72は、径内側リブ713よりも径方向外側において、底面が径外側リブ711の下端と面一となるように、径外側リブ711と径内側リブ713とを連結しており、径内側リブ713よりも径方向内側において、底面が短縮リブ714及び最内リブ715の挿入方向Hdとなるように、径内側リブ713とインナー本体23の内周面とを連結している。すなわち、放射リブ72は、径内側リブ713よりも径方向内側において、挿入方向Hdに向かうに伴い、径方向外側に向けて広がるように構成されている。
したがって、環状リブ71と放射リブ72とで構成された挿通部21の径方向内側は、挿入方向Hdに向かうに伴い、径方向外側に向けて広がるように構成されている。
【0108】
このように、挿通部21は、環状の環状リブ71と、環状リブ71と交差する放射リブ72とで構成されているため、挿通部21の軽量化を図りつつ、剛性を高めることができる。これにより、挿通部21に外力が作用した場合であっても、挿通部21が損傷することを防止でき、カバー10との装着状態が解除されることを防止できる。したがって、雨水などの液状体がボディパネルPの反挿入方向Huに侵入することを防止できる。
【0109】
また、第一インナー分割部33と第二インナー分割部43とで構成されるインナー本体23には、
図14(a)に示すように、第一開口形成部333と第二開口形成部433とで形成される挿通開口部232が設けられている。この挿通開口部232は、インナー本体23の外周面を長手方向Lに向けて貫通する開口であり、外部と配索空間Sとを連通している。
【0110】
このように構成された挿通開口部232の幅方向Wの両端には、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、開口リブ233が挿通方向Hに沿って立設している。この開口リブ233は、挿通開口部232の幅方向W両端から長手方向Lの一方側に向けて立設したリブであるため、開口を設けることにより強度が低下したインナー本体23を開口リブ233により補強することができる。
【0111】
加えて、開口リブ233は、挿通開口部232の幅方向W両端から長手方向Lの一方側に向けて立設しているため、開口リブ233の内面(幅方向Wの内側の面)は、挿通開口部232の端部と面一となっている。このことから、挿通開口部232に挿通させた電線WHが幅方向Wに対して移動した場合に、開口リブ233における幅方向Wの内側端面と面当たりすることとなる(
図14(b)参照)。すなわち、挿通開口部232の角部分と電線WHとが角当たりして、電線WHが損傷することを防止できる。
【0112】
さらにまた、挿通開口部232に対応する円盤部22には、第一間隙部322と第二間隙部422とで形成される間隙部222が設けられている。この間隙部222の挿入方向Hdには、最内リブ715が形成されていない。すなわち、挿通開口部232の挿入方向Hdには、配索空間Sと連通するとともに、第一開口補強リブ522と第二開口補強リブ622と短縮リブ714とで囲まれた陥凹部76が形成されている。
【0113】
さらにまた、第一分割体30と第二分割体40とを係止固定されたグロメットインナ20は、第一直線リブ521aと第二直線リブ621a及び、第一直線リブ521bと第二直線リブ621bとがそれぞれ面接触しているため、剛性が低下する第一分割体30と第二分割体40との当接箇所おいて、強度を補強することができる。
【0114】
加えて、第二直線リブ621bに設けられた挿通凹部66における挿通方向Hの長さが、第二直線リブ621bと当接する第一直線リブ521bに設けられた挿入凸部56の挿通方向Hの長さとが等しいため、固定片55を固定凹部65に挿入した状態において、挿入凸部56は挿通凹部66の反挿入方向Hu及び挿入方向Hdの面と当接するように、挿通凹部66に嵌合する。したがって、長手方向Lの一方側においても第二分割体40に対する第一分割体30の挿通方向Hの移動を規制しつつ、第一分割体30の剛性を向上させることができる。
【0115】
また、分割第一上面部332及び分割第二上面部432に設けられた第一インナー凸部334及び第二インナー凸部434が交互に隣接した状態で配置されるため、第一分割体30に対する第二分割体40の挿通方向H及び長手方向Lへの移動を規制しつつ、インナー本体23の剛性を向上させることができる。これにより、反挿入方向Huからインナー本体23に対して物がぶつかるなどの衝撃があったとしても、インナー本体23が損傷することを防止できる。
【0116】
このように第一分割体30と第二分割体40とを係止固定したグロメットインナ20における円盤部22を装着凹部113に組み付けることで、カバー10にグロメットインナ20を装着したグロメット1とすることができる。そして、グロメットインナ20を挿通孔P1に挿通させるとともに、係止固定部24とカバー10とでボディパネルPを挟み込んで、グロメット1をボディパネルPに固定することができる。これにより、電線WHをボディパネルPに沿って配索することができる(
図15参照)。
【0117】
ここで、環状リブ71と放射リブ72とで構成された挿通部21の径方向内側は、挿入方向Hdに向かうに伴い、径方向外側に向けて広がるように構成されているため、ボディパネルPに沿って配索された電線WHが、挿通部21の径方向内側と角当たりすることを防止できる。したがって、電線WHが損傷することを防止できる。
【0118】
このようにグロメットインナ20は、ボディパネルPに設けられた挿通孔P1を挿通する電線WHを保護するグロメット1をカバー10とともに構成し、カバー10の端部に装着されて、挿通孔P1に固定される。このグロメットインナ20は、挿通孔P1に挿通され、電線WHが内側に配索される配索空間Sを有する筒状の挿通部21と、挿通部21の一方側に配置されるとともに、挿通部21よりも径方向の外側に突出する環状の円盤部22と、円盤部22から一方側に向けて突出するとともに、配索空間Sと連通する挿通開口部232を有する中空状のインナー本体23とで構成されている。そして、挿通孔P1に挿通部21を挿通させる方向を挿入方向Hdとし、環状リブ71と放射リブ72とで構成される挿通部21の内側が、挿入方向Hdに向かうに伴い、径方向の外側に広がるように構成されている。
なお、グロメット1は、内部に電線WHを挿通させる筒状のカバー10と、カバー10の端部に装着されたグロメットインナ20とで構成されている。
【0119】
これにより、ボディパネルPに設けた挿通孔P1に挿通させた電線WHをボディパネルPに沿って配索させた場合に、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向の外側に広がる挿通部21に沿って電線WHを径方向に配索できる(
図15参照)。したがって、挿通孔P1に挿通させた電線WHが挿通部21と角当たりすることを防止でき、電線WHの損傷を防止できる。
【0120】
また、インナー本体23は、挿入方向Hdと反対方向である反挿入方向Huに上面231を有し、挿通開口部232が、インナー本体23において挿入方向Hdと交差する長手方向Lに開口されている。このため、
図15に示すように、長手方向Lに沿って挿通開口部232から配索空間Sに配索されるとともに挿通孔P1を挿通させた電線WHのように、急な曲げ角度で湾曲させた電線WHであっても挿通部21と角当たりすることを防止できる。すなわち、ボディパネルPの一方側及び他方側においてボディパネルPに沿って配索された電線WHが、挿通部21と干渉して損傷することを防止できる。
【0121】
さらにまた、インナー本体23は、挿通開口部232における挿入方向Hdに沿う周辺部に、挿通方向Hに沿った開口リブ233が設けられていることにより、インナー本体23における挿通開口部232近傍の剛性を向上させることができる。
【0122】
詳述すると、挿入方向Hdと交差する方向(長手方向L)に挿通開口部232を設けることによりインナー本体23の強度が低下する。これに対して、挿通開口部232における挿入方向Hdに沿う周辺部に開口リブ233を設けることにより、強度が低下する挿通開口部232近傍の剛性を向上させることができる。すなわち、インナー本体23の強度低下を抑制できる。したがって、上面231に対して外力が作用した場合に、インナー本体23が損傷することを防止できる。
【0123】
さらにまた、挿通開口部232から挿入された電線WHを開口リブ233に面当たりさせることができるため、電線WHが挿通開口部232と角当たりして損傷することを防止できる。
このように、挿通開口部232の周方向端部に沿って開口リブ233が設けることで、インナー本体23の強度低下を抑制しつつ、挿通開口部232に挿入された電線WHの損傷を防止できる。
【0124】
また、挿通部21及び円盤部22に、挿通開口部232と連通するとともに、挿通開口部232が貫通する方向に沿って挿通開口部232に対応する箇所を窪ませた間隙部222及び陥凹部76が設けられている。これにより、挿通部21における挿通開口部232の挿入方向Hdに空間が形成され、開口から挿通部21に配索される電線WHの曲げ半径を緩やかにすることができる。このため、挿入方向Hd側においてボディパネルPに沿って配索される電線WHのかかる負担を軽減できる。
【0125】
また、グロメットインナ20は、周方向に対して分割できる第一分割体30及び第二分割体40で構成されている。第一分割体30及び第二分割体40は、挿通部21を構成する第一挿通分割部31及び第二挿通分割部41と、円盤部22を構成する第一円盤分割部32及び第二円盤分割部42と、インナー本体23を構成する第一インナー分割部33及び第二インナー分割部43とで一体構成され、隣接する第一分割体30及び第二分割体40同士を固定する固定部27が設けられている。また、第一分割体30及び第二分割体40を構成する第一インナー分割部33及び第二インナー分割部43には、組み合わせて挿通開口部232を形成する第一開口形成部333及び第二開口形成部433が設けられている。
【0126】
これにより、第一分割体30及び第二分割体40を電線WHに組み付けることで、グロメットインナ20を電線WHに後付けすることができる。また、第一開口形成部333及び第二開口形成部433の間に電線WHが配置されるように第一分割体30及び第二分割体40で電線WHに挟み込むことで、電線WHの損傷を防止しつつ、容易に電線WHを配索空間Sに配索できる。したがって、電線WHの損傷を防止しつつ、電線WHにグロメットインナ20を取り付ける取付作業を効率よく行うことができる。
【0127】
さらにまた、第一分割体30及び第二分割体40で構成され、隣接する第一挿通分割部31及び第二挿通分割部41同士を枢動可能に連結するヒンジ部26が設けられ、第一開口形成部333及び第二開口形成部433は、ヒンジ部26と対向する位置に設けられている。
【0128】
このように隣接する第一挿通分割部31及び第二挿通分割部41同士をヒンジ部26で連結されているため、ヒンジ部26を介して第一分割体30及び第二分割体40を枢動させることで、容易に電線WHに対してグロメットインナ20を組み付けることができる(
図9乃至
図12参照)。
【0129】
また、第一開口形成部333及び第二開口形成部433が第一分割体30及び第二分割体40における周方向の他方側に設けられるため、一方の第一分割体30及び第二分割体40にのみ挿通開口部232が設けられている場合に比べ、インナー本体23の部分的な強度低下を抑制できる。
【0130】
さらにまた、固定部27は、第一挿通分割部31における周方向の一方から第二挿通分割部41へと延出する固定片55と、固定片55を有する第一挿通分割部31と隣接する第二挿通分割部41に、周方向に沿った開口(固定凹部65及び挿通凹部66)で形成され、固定片55を係止する被係止部651とで構成されている。
【0131】
このように、第一挿通分割部31に第二挿通分割部41に向けて延出する固定片55が設けられるとともに、第二挿通分割部41に被係止部651が設けられているため、配索空間Sに配索された電線WHが、隣接する第一分割体30及び第二分割体40を係止固定する固定部27と干渉することを防止できる。したがって、電線WHが損傷することを防止できる。
【0132】
また、第一挿通分割部31は、固定部27により固定された状態において、隣接する第二挿通分割部41と面接触している。より具体的には、固定部27により固定された状態において、第一直線リブ521aと第二直線リブ621a、及び、第一直線リブ521bと第二直線リブ621bとが面接触しているため、隣接する第一挿通分割部31及び第二挿通分割部41同士を互いに支持できる。これにより、固定状態において挿通部21の剛性を向上させることができる。したがって、挿通部21に外力が作用した場合であっても、挿通部21が変形することを防止でき、グロメット1内部への液体の侵入防止できる。
【0133】
さらにまた、挿通部21は、円筒状に構成されるとともに、径方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の環状リブ71と、周方向と交差する方向に沿って設けられた複数の放射リブ72とで構成されているため、挿通部21の強度を向上させることができる。これにより、挿通部21に外力が作用した場合であっても、挿通部21が損傷することを防止でき、カバー10との装着状態が解除されることを防止できる。また、放射リブ72が円盤部22の中心部分を中心として径方向に放射線状に設けられているため、挿通部21の強度の均一化を図ることができる。
【0134】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
パネルは、ボディパネルPに対応し、同様に
挿通孔は、挿通孔P1に対応し、
電線は、電線WHに対応し、
グロメットは、グロメット1に対応し、
カバーは、カバー10に対応し、
挿通部は、挿通部21に対応し、
円盤部は、円盤部22に対応し、
開口部は、挿通開口部232に対応し、
インナー本体は、インナー本体23に対応し、
グロメットインナは、グロメットインナ20に対応し、
挿通方向は、挿入方向Hdに対応し、
反挿通方向は、反挿入方向Huに対応し、
上面部は、上面231に対応し、
交差方向は、長手方向Lに対応し、
補強リブは、開口リブ233に対応し、
凹部は、陥凹部76に対応し、
分割体は、第一分割体30及び第二分割体40に対応し、
挿通分割部は、第一挿通分割部31及び第二挿通分割部41に対応し、
円盤分割部は、第一円盤分割部32及び第二円盤分割部42に対応し、
インナー分割部は、第一インナー分割部33及び第二インナー分割部43に対応し、
固定部は、固定部27に対応し、
開口形成部は、第一開口形成部333及び第二開口形成部433に対応し、
枢動部は、ヒンジ部26に対応し、
係止固定片は、固定片55に対応し、
被係止部は、被係止部651に対応し、
環状リブは、環状リブ71に対応し、
直線状リブは、放射リブ72に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0135】
例えば、本実施形態において、挿通開口部232は、インナー本体23を長手方向Lに向けて貫通した開口で形成されているが、この構成に限らず、インナー本体23の反挿入方向Huに設けていてもよい。すなわち、挿通方向Hに沿ってインナー本体23を電線WHが挿通し、ボディパネルPの挿入方向Hdにおいて、長手方向Lや幅方向Wに沿って電線WHを配索するような構成であってもよい。
【0136】
また、例えば、本実施形態において、グロメットインナ20は二分割できる第一分割体30及び第二分割体40で構成されているが、二分割に限らず、例えば三分割や四分割など、三分割以上に分割されてもよい。また、本実施形態において、第一分割体30及び第二分割体40は略同形状であるが、例えば、周方向の長さが異なるような異形状であってもよい。
また、本実施形態において、第一分割体30及び第二分割体40は、ヒンジ部26を介して枢動可能に連結されているが、完全に分離可能に分割されていてもよい。
【0137】
さらにまた、ヒンジ部26は、隣接する第一挿通分割部31及び第二挿通分割部41を一体に連結しているが、第一挿通分割部31及び第二挿通分割部41に設けられた部品同士を組み合わせることにより枢動可能に構成されてもよい。すなわち、隣接する第一分割体30及び第二分割体40は、別体で構成されていてもよい。
【0138】
また、本実施形態において、挿通部21の径方向内側は、段階的に挿通方向Hに沿った高さ異なる環状リブ71(径内側リブ713、短縮リブ714,最内リブ715)と、環状リブ71(径内側リブ713、短縮リブ714,最内リブ715)の下端部分を連結する放射リブ72により、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向外側に向けて傾斜するように構成されている。
【0139】
しかしながら、この構成に限定されることなく、例えば、挿通部21の内側に内周面が形成され、当該内周面が挿入方向Hdに向かうに伴い拡径するような略円錐台状に形成されていてもよいし、挿通部21の内周面が挿入方向Hdに向かうに伴い階段状に拡径する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 グロメット
10 カバー
20 グロメットインナ
21 挿通部
22 円盤部
23 インナー本体
26 ヒンジ部
27 固定部
30 第一分割体
31 第一挿通分割部
32 第一円盤分割部
33 第一インナー分割部
40 第二分割体
41 第二挿通分割部
42 第二円盤分割部
43 第二インナー分割部
55 固定片
71 環状リブ
72 放射リブ
76 陥凹部
231 上面
232 挿通開口部
233 開口リブ
333 第一開口形成部
433 第二開口形成部
651 被係止部
Hd 挿入方向
Hu 反挿入方向
L 長手方向
P ボディパネル
S 配索空間
P1 挿通孔
WH 電線