(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107349
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230727BHJP
C01G 41/00 20060101ALI20230727BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
C09K3/00 105
C01G41/00 A
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008507
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】野下 昭也
(72)【発明者】
【氏名】長南 武
【テーマコード(参考)】
4G048
4J037
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB04
4G048AC08
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
4J037AA08
4J037DD02
4J037EE08
4J037FF02
(57)【要約】
【課題】青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子を含む赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体を提供する。
【解決手段】赤外線吸収材料微粒子と分散媒を含む赤外線吸収材料微粒子分散液、または、赤外線吸収材料微粒子と固体媒体を含む赤外線吸収材料微粒子分散体において、上記赤外線吸収材料微粒子が、一般式(L
AM
B)W
CO
D(ただし、元素Lは、希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素、元素Mは、アルカリ金属元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、かつ、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線吸収材料微粒子と分散媒を含む赤外線吸収材料微粒子分散液において、
上記赤外線吸収材料微粒子が、一般式(LAMB)WCOD(ただし、元素Lは、希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素、元素Mは、アルカリ金属元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、かつ、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3であることを特徴とする赤外線吸収材料微粒子分散液。
【請求項2】
上記複合タングステン酸物微粒子が、六方晶系の結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の赤外線吸収材料微粒子分散液。
【請求項3】
上記一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子において、
上記元素LおよびMと、Wとの原子数比(A+B)/Cの値が、0.20≦(A+B)/C≦0.37であることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線吸収材料微粒子分散液。
【請求項4】
上記元素Mが、RbおよびCsから選択される一種以上の元素であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散液。
【請求項5】
上記分散媒が、水、有機溶媒、未硬化の樹脂モノマーから選択されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散液。
【請求項6】
赤外線吸収材料微粒子と固体媒体を含む赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記赤外線吸収材料微粒子が、一般式(LAMB)WCOD(ただし、元素Lは、希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素、元素Mは、アルカリ金属元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、かつ、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3であることを特徴とする赤外線吸収材料微粒子分散体。
【請求項7】
上記複合タングステン酸物微粒子が、六方晶系の結晶構造を有することを特徴とする請求項6に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体。
【請求項8】
上記一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子において、
上記元素LおよびMと、Wとの原子数比(A+B)/Cの値が、0.20≦(A+B)/C≦0.37であることを特徴とする請求項6または7に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体。
【請求項9】
上記元素Mが、RbおよびCsから選択される一種以上の元素であることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散体。
【請求項10】
上記固体媒体が、樹脂またはガラスであることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散体。
【請求項11】
上記樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項10に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体。
【請求項12】
上記赤外線吸収材料微粒子分散体が、シート形状、ボード形状、フィルム形状のいずれかであることを特徴とする請求項10または11に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域においては透明で、近赤外線領域では吸収を持つ赤外線吸収材料微粒子に係り、特に、青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子と分散媒を含む赤外線吸収材料微粒子分散液、および、上記赤外線吸収材料微粒子と固体媒体を含む赤外線吸収材料微粒子分散体の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光線に含まれる近赤外線は、窓材等を透過して室内に入り込み、室内へ侵入し、室内の壁や床の表面温度を上昇させ、室内気温も上昇させる。室内の温熱環境を快適にするため、窓材等に遮光部材を用いる等して、窓から侵入する近赤外線を遮ることで、室内気温を上昇させないことが従来からなされていた。
【0003】
例えば、窓材等に使用される遮光部材として、特許文献1では、カーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料や、アニリンブラック等の有機顔料等を含む黒色微粉末を含有する遮光フィルムが提案されている。しかし、黒色微粉末は、可視光領域に大きな吸収があるため、当該黒色微粉末が適用された窓材等は色調が暗くなり、使用方法、用途が限られる問題を有していた。
【0004】
また、特許文献2では、赤外線反射性を有する帯状のフィルムと、赤外線吸収性を有する帯状のフィルムとを、それぞれ経糸あるいは緯糸として編織物としてなる保温用シートが開示されている。そして、赤外線反射性を有する帯状のフィルムとして、合成樹脂フィルムにアルミ蒸着加工を施し、更に合成樹脂フィルムを積層したものを用いることも記載されている。しかし、アルミ蒸着膜が適用された窓材等は外観がハーフミラー状となるため、当該窓材等を屋外で用いた場合、反射がまぶしく景観上の問題を有していた。
【0005】
このような技術的背景の下、本出願人は、赤外線遮蔽材料微粒子(以下、赤外線吸収材料微粒子と称する)が媒体中に分散してなる赤外線吸収材料微粒子分散体であって、上記赤外線吸収材料微粒子が、一般式NBWCOD(ただし、元素Nは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦B/C≦1、2.2≦D/C≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、当該複合タングステン酸化物微粒子が六方晶、正方晶または立方晶の結晶構造を有し、上記複合タングステン酸化物微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする赤外線吸収材料微粒子分散体を提案している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-029314号公報
【特許文献2】特開平09-107815号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2005/037932公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3は、可視光線を十分に透過し、ハーフミラー状の外観を有さず、波長780nm以上の目に見えない近赤外線を効率よく吸収(すなわち遮蔽)し、透明で色調の変化しない赤外線吸収材料微粒子と赤外線吸収材料微粒子分散体、および、これ等の製造方法等を提供するものであった。
【0008】
しかし、特許文献3に開示された赤外線吸収材料微粒子分散体によっては、該赤外線吸収材料微粒子自体に青味を呈するものがあり、無色の赤外線材料微粒子分散体が要請される分野において青味が問題となり、また、染料や顔料で赤外線吸収材料微粒子分散体を青色以外に着色させる際、発色の障害となる問題を有していた。
【0009】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子を含んだ赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解決するため、本発明者らは、WO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙を構成し、該空隙中にN元素(特許文献3参照)が配置した構造をとる一般式NBWCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子について更なる研究を行った。
【0011】
すなわち、上記一般式NBWCODで表記されるN元素(特許文献3参照)に替えて元素L(希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素)と元素M(アルカリ金属元素)を選択し、かつ、タングステン(W)元素と酸素(O)元素との原子数比がD/C>3となるように酸素量を制御した一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子としたところ、一般式NBWCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子よりも青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子が得られることを見出すに至った。
【0012】
そして、一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子においても、上記一般式NBWCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子と同様、WO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙を構成し、該空隙中に元素Lと元素Mが配置した構造をとると共に、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3を満たすように酸素量を制御することにより、一般式NBWCOD(ただし、2.2≦D/C≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子よりも青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子になることが確認された。
【0013】
本発明はこのような技術的発見により完成されたものである。
【0014】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
赤外線吸収材料微粒子と分散媒を含む赤外線吸収材料微粒子分散液において、
上記赤外線吸収材料微粒子が、一般式(LAMB)WCOD(ただし、元素Lは、希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素、元素Mは、アルカリ金属元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、かつ、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3であることを特徴とする。
【0015】
また、第2の発明は、
第1の発明に記載の赤外線吸収材料微粒子分散液において、
上記複合タングステン酸物微粒子が、六方晶系の結晶構造を有することを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の赤外線吸収材料微粒子分散液において、
上記一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子であって、
上記元素LおよびMと、Wとの原子数比(A+B)/Cの値が、0.20≦(A+B)/C≦0.37であることを特徴とし、
第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散液において、
上記元素Mが、RbおよびCsから選択される一種以上の元素であることを特徴とし、
第5の発明は、
第1の発明~第4の発明のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散液において、
上記分散媒が、水、有機溶媒、未硬化の樹脂モノマーから選択されることを特徴とする。
【0016】
次に、本発明に係る第6の発明は、
赤外線吸収材料微粒子と固体媒体を含む赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記赤外線吸収材料微粒子が、一般式(LAMB)WCOD(ただし、元素Lは、希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素、元素Mは、アルカリ金属元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、かつ、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3であることを特徴とする。
【0017】
また、第7の発明は、
第6の発明に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記複合タングステン酸物微粒子が、六方晶系の結晶構造を有することを特徴とし、
第8の発明は、
第6の発明または第7の発明に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子であって、
上記元素LおよびMと、Wとの原子数比(A+B)/Cの値が、0.20≦(A+B)/C≦0.37であることを特徴とし、
第9の発明は、
第6の発明~第8の発明のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記元素Mが、RbおよびCsから選択される一種以上の元素であることを特徴とし、
第10の発明は、
第6の発明~第9の発明のいずれかに記載の赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記固体媒体が、樹脂またはガラスであることを特徴とする。
【0018】
更に、第11の発明は、
第10の発明に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂から選択される1種類以上であることを特徴とし、
第12の発明は、
第10の発明または第11の発明に記載の赤外線吸収材料微粒子分散体において、
上記赤外線吸収材料微粒子分散体が、シート形状、ボード形状、フィルム形状のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な可視光透過性を有し、優れた赤外線吸収能を有すると共に、青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子と分散媒を含む赤外線吸収材料微粒子分散液、および、上記赤外線吸収材料微粒子と固体媒体を含む赤外線吸収材料微粒子分散体を提供できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明するが、本発明は、下記実施形態に制限されることはなく、本発明の技術範囲を逸脱することなく下記実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0022】
1.赤外線吸収材料微粒子
(1)複合タングステン酸化物微粒子
本発明に係る赤外線吸収材料微粒子分散液および赤外線吸収材料微粒子分散体に含まれる赤外線吸収材料微粒子は、一般式(LAMB)WCOD(ただし、元素Lは、希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素、元素Mは、アルカリ金属元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、かつ、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3であることを特徴とする。
【0023】
上記特許文献3に開示されているように、一般に、自由電子を含む材料は、太陽光線の領域周辺である波長200nmから2600nmの電磁波に対しプラズマ振動による反射吸収応答を示すことが知られている。そして、該自由電子を含む材料の粉末を、光の波長より小さい粒子とすると、可視光領域(波長380nm以上780nm以下)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている(上記特許文献3の段落0018参照)。尚、本明細書において「透明性」とは、可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高いという意味で用いている。
【0024】
そして、一般式WO3-aで表されるタングステン酸化物や、三酸化タングステンにNa等の陽性元素を添加したいわゆるタングステンブロンズは、導電性材料であり、自由電子を含む材料であることが知られている。これらの材料は、単結晶等の分析により、近赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている(特許文献3の段落0019参照)。
【0025】
他方、三酸化タングステン(WO3)中には有効な自由電子が存在しないため、近赤外線領域の吸収反射特性が少なく、近赤外線吸収材料として有効ではない。
【0026】
この場合、三酸化タングステンのタングステンに対する酸素の比率を3より低減することにより、該タングステン酸化物中に自由電子が生成されることが知られている(特許文献3の段落0042参照)。また、タングステン酸化物へN元素(特許文献3参照)を添加し、複合タングステン酸化物とすることも従来からなされている。当該構成により、複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となるためである。
【0027】
そして、可視光透過性と赤外線吸収能に加え、青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子とするため、本発明者らは、WO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙を構成し、該空隙中にN元素(特許文献3参照)が配置した構造をとる上記一般式NBWCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子について、上述したように更なる研究を行っている。
【0028】
すなわち、上記一般式NBWCODで表記されるN元素(特許文献3参照)に替えて元素L(希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素)と元素M(アルカリ金属元素)を選択し、かつ、タングステン(W)元素と酸素(O)元素との原子数比がD/C>3となるように酸素量を制御した一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子とすることで、一般式NBWCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子よりも青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子が得られることを見出している。
【0029】
そして、一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子においても、上記一般式NBWCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子と同様、WO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙を構成し、該空隙中に元素Lと元素Mが配置した構造をとると共に、タングステン元素と酸素元素との原子数比がD/C>3を満たすように酸素量を制御することで、一般式NBWCOD(2.2≦D/C≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子よりも青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子になることが確認されている。
【0030】
(2)複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造
複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶の結晶構造を有する場合、該微粒子における可視光領域の透過率が特に向上し、近赤外線領域の吸収が特に向上する。
【0031】
六方晶の結晶構造は、WO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙(トンネル)が構成され、該空隙中に元素Lと元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合することで構成されている。
【0032】
ただし、複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶の結晶構造を有する場合に限定されることはなく、例えば、上記単位構造、すなわちWO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、該空隙中に元素Lと元素Mが配置した構造を有していれば可視光領域の透過率を特に向上させ、近赤外線領域の吸収を特に向上させることができる。このため、複合タングステン酸化物微粒子は、六方晶の結晶構造を有する場合に限定されず、上記単位構造を有するのみであっても高い効果を得ることができる。
【0033】
複合タングステン酸化物微粒子が、上述したように六角形の空隙に元素Lと元素Mの陽イオンが添加された構造を有するとき近赤外線領域の吸収が特に向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき、六方晶や上記構造が形成され易い。具体的には、複合タングステン酸化物が、元素Mとして、Cs、Rb、Kから選択される1種類以上の元素を含有する場合に、六方晶や上記構造が形成され易い。
【0034】
更に、これらイオン半径の大きな元素Mの内でも、Cs、Rbから選択される1種類以上を含有する複合タングステン酸化物微粒子においては、六方晶や上記構造が形成され易く、近赤外線領域の吸収と可視光領域の透過とを両立し、かつ、特に高い性能を発揮できる。
【0035】
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有する場合、1モルのタングステンに対する元素Lおよび元素Mの含有割合、すなわち、元素LおよびMとWとの原子数比(A+B)/Cの値は0.2以上0.37以下が好ましく、更に好ましくは、0.25≦(A+B)/C≦0.35であり、理論上、元素Lと元素Mがすべての六角形の空隙に配されるのが0.33である。原子数比(A+B)/Cの値が0.33となることで、元素Lと元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0036】
複合タングステン酸化物微粒子が、上述した六方晶以外の、例えば、正方晶や立方晶等の結晶構造を有する場合も近赤外線吸収材料として有効である。
【0037】
そして、立方晶、正方晶のそれぞれの複合タングステン酸化物にも、結晶構造に由来した元素Lや元素Mの添加量の好適範囲、上限があり、1モルのタングステンに対する元素Lおよび元素Mの含有割合である(A+B)/Cの上限値は、立方晶の場合は1モルであり、正方晶の場合は0.5モル程度である。尚、元素Lおよび元素Mの種類等により上記1モルのタングステンに対する元素Lおよび元素Mの含有割合である(A+B)/Cの上限値は変化するが、正方晶の場合、工業的製造が容易なのは0.5モル程度である。
【0038】
但し、これらの構造は、単純に規定することが困難で、当該範囲は特に基本的な範囲を示した例であることから、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0039】
複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、この近赤外線領域の吸収位置は、立方晶よりも正方晶の結晶の方が長波長側に移動し、更に六方晶の結晶は正方晶の結晶よりも長波長側に移動する傾向がある。また、当該吸収位置の変動に付随して、可視光領域の吸収は六方晶の結晶が最も少なく、次に正方晶の結晶であり、立方晶の結晶はこの中では最も大きい。このため、要求される性能等に応じて、複合タングステン酸化物微粒子の結晶系を選択することが好ましい。例えば、より可視光領域の光を透過し、より近赤外線領域の光を吸収することが求められる用途に用いる場合、複合タングステン酸化物微粒子は六方晶が好ましい。但し、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によっても変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0040】
尚、本実施形態に係る複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造は、粉末X線回折法(θ-2θ法)によりX線回折パターンで確認することができる。
【0041】
(3)タングステン(W)元素と酸素(O)元素との原子数比
上述したように、一般式NBWCODで表記されるN元素(特許文献3参照)に替えて、元素L(希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素)と元素M(アルカリ金属元素)を選択し、タングステン(W)元素と酸素(O)元素との原子数比がD/C>3、好ましくは3.4>D/C>3、より好ましくは3.3>D/C>3となるように酸素量を制御して一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子とすることで、一般式NBWCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子よりも青味が抑制された淡青色を有する赤外線吸収材料微粒子とすることができ、更に、元素Lおよび元素Mとタングステン(W)との原子数比(A+B)/Cの値が0.20≦(A+B)/C≦0.37とし、より好ましくは0.25≦(A+B)/C≦0.35を満たすことがよい。
【0042】
ところで、本出願人は、特許文献3において、一般式NBWCODで表記されかつ六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン(W)元素と酸素(O)元素との原子数比がD/C=3であるとき、元素N(特許文献3参照)とタングステン(W)との原子数比B/Cの値が0.33となることで、元素Nが六角形の空隙の全てに配置されると考えられることを開示している。
【0043】
一般式(LAMB)WCODで表記される本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)は、タングステン(W)元素と酸素(O)元素との原子数比D/Cが3を超えることが化学分析で確認されている。その一方、粉末X線回折法で、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)は、上記原子数比をD/C=3としたときに、正方晶、立方晶、六方晶の少なくともいずれかのタングステンブロンズ構造をとる場合があることが確認されている。このため、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)は、六方晶、正方晶、および、立方晶から選択される結晶構造を有することが好ましい。上記結晶構造を有することで、特に優れた近赤外線吸収特性と可視光透過特性を具備させることが可能となる。
【0044】
ところで、一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物微粒子において、上記原子数比D/Cの値が3を超える場合の酸素原子は、複合タングステン酸化物微粒子の結晶に入り込んでいると考えられる。そして、結果的に結晶に酸素原子が入り込むことで、熱や湿気に晒されても複合タングステン酸化物微粒子の結晶が変質することがなく、優れた耐候性を有すると共に青味が抑制された淡青色を有する複合タングステン酸化物微粒子を実現できると考えられる。
【0045】
(4)複合タングステン酸化物微粒子の粒子径等
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子(すなわち複合タングステン酸化物微粒子)は、波長350nm以上600nm以下の範囲に極大値を有し、波長800nm以上2100nm以下の範囲に極小値を有する光の透過特性を示し、優れた可視光透過性と赤外線吸収能を発揮できる。また、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子は、波長440nm以上600nm以下の範囲に極大値を有し、波長1150nm以上2100nm以下の範囲に極小値を有することがより好ましい。
【0046】
また、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)は、その粒子径が100nm以下であることが好ましい。より優れた赤外線吸収能を発揮させる観点から、当該粒子径は10nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上80nm以下が更に好ましく、10nm以上60nm以下が特に好ましく、10nm以上40nm以下が最も好ましい。赤外線吸収材料微粒子の粒子径が10nm以上40nm以下の範囲であれば、最も優れた赤外線吸収能が発揮される。
【0047】
ここで、粒子径とは凝集していない個々の赤外線吸収材料微粒子がもつ径、すなわち個別粒子の粒子径である。
【0048】
ここでの粒子径は、赤外線吸収材料微粒子の凝集体の径を含むものでなく、分散粒子径とは異なるものである。
【0049】
また、ここでの粒子径は、例えば赤外線吸収材料微粒子を分散させた状態で、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて、複数個の粒子の粒子径を測定し、算出できる。尚、赤外線吸収材料微粒子は通常不定形であることから、該粒子に外接する最小の円の直径を、該粒子の粒子径とすることができる。例えば透過型電子顕微鏡を用いて上述のように複数の粒子の粒子径を粒子毎に測定した場合、全ての粒子の粒子径が上記範囲を満たすことが好ましい。測定する粒子の数は特に限定されないが、例えば10個以上50個以下であることが好ましい。
【0050】
2.赤外線吸収材料微粒子の製造方法
以下、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子の製造方法について説明する。
【0051】
一般式(LAMB)WCODで表記される本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)は、例えばプラズマ法により製造することができ、プラズマ法により赤外線吸収材料微粒子を製造する場合、下記工程を有することができる。
【0052】
出発原料として、タングステン化合物と元素L化合物および元素M化合物との原料混合物、または、一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物の前駆体を調製する(原料調製工程)。
【0053】
次いで、調製した出発原料を、キャリアガスと共にプラズマ中に供給し、蒸発、凝縮過程を経て、目的とする赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)を生成する(反応工程)。
【0054】
(1)原料調製工程
出発原料として、タングステン(W)化合物と元素L化合物および元素M化合物との原料混合物を調製する場合、W化合物と元素L化合物および元素M化合物との原料混合物における元素Lおよび元素Mの合計とWとの物質量比(モル比)[=(元素L+元素M):W]が、目的とする複合タングステン酸化物の一般式(LAMB)WCODにおけるAとBとCの比、すなわち、原子数比(A:B:C)と等しくなるように各原料を配合、混合することが好ましい。
【0055】
また、一般式(LAMB)WCODで表記される複合タングステン酸化物の前駆体において、Lは元素L(希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素)、Mは元素M(アルカリ金属元素)、Wはタングステン、Oは酸素とすることができ、A、B、Cは、0.20≦(A+B)/C≦0.37を満たすことが好ましい。
【0056】
(2)混合工程
混合工程に供するタングステン化合物として、例えば、タングステン酸(H2WO4)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加し加水分解した後の溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種類以上を用いることができる。
【0057】
また、混合工程に供する元素L化合物として、例えば、元素L(希土類元素、Pd、Zn、Cd、Ga、In,Tlから選択される元素)の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩から選ばれる1種類以上を用いることができる。
【0058】
また、混合工程に供する元素M化合物として、例えば、元素M(アルカリ金属元素)の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩から選ばれる1種類以上を用いることができる。
【0059】
混合工程において、タングステン化合物と元素L化合物および元素M化合物との混合に際しては、得られる原料混合物中における元素Lおよび元素Mの合計とタングステン(W)との物質量比(モル比)[=(元素L+元素M):W]が、目的とする複合タングステン酸化物の一般式(LAMB)WCODにおけるAとBとCの比、すなわち、原子数比(A:B:C)と等しくなるように各原料を配合し、混合することが好ましい。
【0060】
混合方法は特に限定されず、湿式混合、乾式混合のいずれを用いることもできる。湿式混合の場合、湿式混合後に得られた混合液を乾燥することによって、元素L化合物および元素M化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる。湿式混合後における乾燥温度や時間は特に限定されない。
【0061】
乾式混合は、市販の擂潰機、ニーダー、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の公知の混合装置で行えばよく、混合時間や混合速度等の混合条件については特に限定されない。
【0062】
(3)反応工程
反応工程において出発原料を搬送するキャリアガスとしては、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いることができる。
【0063】
プラズマは、例えば不活性ガス単独若しくは不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気中で発生させることができる。プラズマは特に限定されないが、熱プラズマが好ましい。該プラズマ中に供給された原料は瞬時に蒸発し、蒸発した原料はプラズマ尾炎部に至る過程で凝縮し、プラズマフレーム外で急冷凝固されて、複合タングステン酸化物の粒子を生成する。プラズマ法によれば、例えば結晶相が単相の複合タングステン酸化物の粒子を生成できる。
【0064】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子の製造方法で用いるプラズマは、例えば、直流アークプラズマ、高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、低周波交流プラズマのいずれか、若しくはこれらの重畳したもの、あるいは直流プラズマに磁場を印加した電気的な方法によるもの、大出力レーザーによるもの、大出力電子ビームやイオンビームによって得られるものであることが好ましい。いずれの熱プラズマを用いる場合でも、10000K以上、より望ましくは10000K以上25000K以下の高温部を有する熱プラズマであり、特に、粒子の生成時間を制御できるプラズマであることが好ましい。
【0065】
プラズマ法による、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子の製造方法における反応工程の具体的な構成例について、
図1を用いながら説明する。
【0066】
図1に示した装置は、直流プラズマ装置と高周波プラズマ装置を重畳させたハイブリッドプラズマ反応装置100である。
【0067】
ハイブリッドプラズマ反応装置100は、水冷石英二重管2と、水冷石英二重管2と接続された反応容器5を有している。また、反応容器5には真空排気装置10が接続されている。
【0068】
水冷石英二重管2の上方には直流プラズマトーチ1が設けられ、直流プラズマトーチ1には、プラズマ発生用ガス供給口6が設けられている。
【0069】
プラズマ領域の外側に水冷石英二重管2の内壁に沿って、高周波プラズマ発生用および石英管保護用のシースガスを供給できるように構成されており、水冷石英二重管2の上方のフランジにはシースガス導入口7が設けられている。
【0070】
水冷石英二重管2の周囲には、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイル3が配置されている。
【0071】
直流プラズマトーチ1近傍には、原料粉末キャリアガス供給口8が設けられ、原料粉末を供給する原料粉末供給装置4と配管で接続されている。
【0072】
プラズマ発生用ガス供給口6、シースガス導入口7、原料粉末供給装置4には、配管により、ガス供給装置11を接続し、ガス供給装置11から所定のガスを各部材に供給できるように構成できる。尚、必要に応じて、装置内の部材を冷却したり、所定の雰囲気にできるように上記部材以外にも供給口を設けておき、上記ガス供給装置11と接続しておくこともできる。
【0073】
上記ハイブリッドプラズマ反応装置100を用いた複合タングステン酸化物の粒子の製造方法の構成例を説明する。
【0074】
まず、真空排気装置10により、水冷石英二重管2内と反応容器5内とで構成される反応系内を真空引きする。この際の真空度は特に限定されないが、例えば約0.1Pa(約0.001Torr)まで真空引きできる。反応系内を真空引きした後、ガス供給装置11からアルゴンガスを供給し、当該反応系内をアルゴンガスで満たすことができる。例えば反応系内を1気圧のアルゴンガス流通系とすることが好ましい。
【0075】
更にその後、反応容器5内にプラズマガスを供給できる。プラズマガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンガス、アルゴンとヘリウムとの混合ガス(Ar-He混合ガス)、アルゴンと窒素との混合ガス(Ar-N2混合ガス)、ネオン、ヘリウム、キセノンから選択されるいずれかのガスを用いることができる。
【0076】
プラズマガスの供給流量についても特に限定されないが、例えば、好ましくは3L/min以上30L/min以下、より好ましくは3L/min以上15L/min以下の流量でプラズマ発生用ガス供給口6から導入できる。そして、直流プラズマを発生できる。
【0077】
一方、プラズマ領域の外側に水冷石英二重管2の内壁に沿って、高周波プラズマ発生用および石英管保護用のシースガスをシースガス導入口7から旋回状に供給できる。シースガスの種類や、供給速度についても特に限定されないが、例えばアルゴンガスを20L/min以上50L/min以下と、水素ガス1L/min以上5L/min以下とを流し、高周波プラズマを発生させる。
【0078】
そして、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイル3に高周波電源を加えることができる。高周波電源の条件は特に限定されないが、例えば周波数4MHz程度の高周波電源を、15kW以上50kW以下加えることができる。
【0079】
このようなハイブリッドプラズマを発生させた後、キャリアガスを用い、原料を、原料粉末供給装置4により原料粉末キャリアガス供給口8から導入できる。キャリアガスについても特に限定されないが、例えば1L/min以上8L/min以下のアルゴンガスと0.001L/min以上0.8L/min以下の酸素ガスとからなる混合ガスを用いることができる。
【0080】
プラズマ中に供給される出発原料となる原料混合物、あるいは複合タングステン酸化物前駆体をプラズマ中に導入して反応を行う。出発原料の原料粉末キャリアガス供給口8からの供給速度は特に限定されないが、例えば1g/min以上50g/min以下の割合で供給することが好ましく、1g/min以上20g/min以下がより好ましい。
【0081】
出発原料の供給速度を50g/min以下とすることで、プラズマ火炎の中心部を通過する出発原料の割合を十分に高くし、未反応物や中間生成物の割合を抑制し、所望の複合タングステン酸化物微粒子の生成割合を高くできる。また、出発原料の供給速度を1g/min以上とすることで生産性を高めることができる。
【0082】
プラズマ中に供給される出発原料は、プラズマ中で瞬時に蒸発し、凝縮過程を経て、平均一次粒子径が100nm以下の複合タングステン酸化物微粒子が生成する。
【0083】
尚、本実施形態の製造方法によって得られる複合タングステン酸化物微粒子の粒径は、プラズマ出力や、プラズマ流量、供給する原料粉末の量等によって容易に制御できる。
【0084】
反応後、生成した複合タングステン酸化物微粒子は,反応容器5に堆積するので、これを回収できる。
【0085】
尚、ここまで説明した製造方法により得られた赤外線吸収材料微粒子は、その表面を被覆膜(例えば、Si、Ti、Zr、Alを含有する化合物)で被覆することもできる。
【0086】
以上、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子の製造方法について説明したが、かかる製造方法により得られた赤外線吸収材料微粒子は、例えば以下の方法により、評価、確認することができる。
【0087】
例えば、上記製造方法により得られた赤外線吸収材料微粒子における構成元素の化学定量分析を実施できる。分析方法は特に限定されないが、例えば、元素Lおよび元素Mやタングステンは、プラズマ発光分光分析法で、酸素は不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法で分析することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物粒子)の結晶構造は、粉末X線回折法で確認することができ、赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物粒子)の粒子径は、TEM観察や動的光散乱法に基づく粒径測定によって確認できる。
【0089】
3.赤外線吸収材料微粒子分散液
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散液は、既述の赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物粒子)と、分散媒とを含むことができる。
【0090】
赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物粒子)は、分散媒中に分散していることが好ましい。
【0091】
上記赤外線吸収材料微粒子(複合タングステン酸化物粒子)を、適宜な分散媒(溶媒)中に混合・分散したものが、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散液である。
【0092】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散液に用いる分散媒の種類等は特に限定されない。例えば該分散液を塗布したり、他の材料に練り込む場合の条件、環境等に応じて選択できる。また、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散液が、更に、無機バインダーや樹脂バインダー等のバインダー等の他の成分を含有する場合には、他の成分、例えばバインダー等に合わせて分散媒を選択できる。
【0093】
分散媒としては、例えば水、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン等の芳香族炭化水素類といった水、および各種有機溶媒から選択された1種類以上を使用可能である。
【0094】
分散媒には、未硬化の樹脂モノマーやオリゴマーを用いてもよい。
【0095】
赤外線吸収材料微粒子分散液における分散媒の含有割合は特に限定されないが、赤外線吸収材料微粒子100質量部に対し分散媒を80質量部以上含むことが好ましい。これは、赤外線吸収材料微粒子100質量部に対して、分散媒を80質量部以上の割合で含むことで、分散液としての保存性を担保し易く、赤外線吸収材料微粒子分散体を製造する場合等の作業性も確保できるからである。
【0096】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散液は、赤外線吸収材料微粒子および分散媒以外に任意の成分を含有することもできる。
【0097】
例えば、分散液に水を用いる場合には、本実施形態の赤外線吸収材料微粒子分散液に、酸やアルカリを添加して、当該分散液のpH調整をしてもよい。
【0098】
一方、分散液中における赤外線吸収材料微粒子の分散安定性を一層向上させるため、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散液は、更に各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤等を含有することもできる。
【0099】
赤外線吸収材料微粒子の分散媒への分散方法は、特に限定されない。例えば、赤外線吸収材料微粒子を分散媒中へ均一に分散する方法であって、当該赤外線吸収材料微粒子の粒径を調整できる方法であることが好ましい。具体的には、赤外線吸収材料微粒子を分散媒中へ均一に分散する方法であって、当該赤外線吸収材料微粒子の分散粒子径が100nm以下となる方法であることが好ましく、10nm以上100nm以下となる方法であることがより好ましく、10nm以上80nm以下となる方法が更に好ましい。
【0100】
赤外線吸収材料微粒子を分散媒中に分散する方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザー等から選択された1種類以上が挙げられる。
【0101】
これらの器材を用いた機械的な分散処理によって、赤外線吸収材料微粒子の分散媒中への分散と同時に赤外線吸収材料微粒子同士の衝突等により微粒化が進む。
【0102】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散液の状態は、赤外線吸収材料微粒子を分散媒中に分散した時の赤外線吸収材料微粒子の分散状態を測定することで確認できる。例えば、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子が、分散媒中において粒子および粒子の凝集状態として存在する液から試料をサンプリングし、市販されている種々の粒度分布計で測定することで確認することができる。粒度分布計としては、例えば、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS-8000等の公知の測定装置を用いて分散粒子径として知ることができる。
【0103】
赤外線吸収材料微粒子は、分散媒中に均一に分散していることが好ましい。
【0104】
赤外線吸収材料微粒子の分散粒子径を800nm以下とすることで、例えば赤外線吸収材料微粒子分散液を用いて製造される近赤外線吸収膜(近赤外線遮蔽膜)や成形体(板、シート等)が、単調に透過率の減少した灰色系になることを回避できるからである。
【0105】
尚、分散粒子径とは、赤外線吸収材料微粒子分散液中に分散した赤外線吸収材料微粒子の単体粒子や、当該赤外線吸収材料微粒子が凝集した凝集粒子の粒子径を意味するものである。
【0106】
赤外線吸収材料微粒子分散液において、赤外線吸収材料微粒子が凝集して粗大な凝集体となり、当該粗大化した粒子が多数存在すると、当該粗大粒子が光散乱源となる。その結果、当該赤外線吸収材料微粒子分散液を用いて、近赤外線吸収膜や成形体等の赤外線吸収材料微粒子分散体を作製した際に曇り(ヘイズ)が大きくなり、可視光透過率が減少する原因となることがある。従って、赤外線吸収材料微粒子の粗大粒子生成を回避するように十分に分散することが好ましい。
【0107】
尚、赤外線吸収微粒子分散液での赤外線吸収微粒子の分散状態は、以下の赤外線吸収材料微粒子分散体に加工されても、維持される。
【0108】
4.赤外線吸収材料微粒子分散体
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散体は、既述の赤外線吸収材料微粒子と、固体媒体と、を含むことができる。赤外線吸収材料微粒子は、固体媒体中に分散していることが好ましい。
【0109】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散体は、既述の赤外線吸収材料微粒子を適宜な固体媒体中に分散して得られる。
【0110】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散体は、例えば赤外線吸収材料微粒子を、所定条件における機械的な粉砕の後、樹脂等の固体媒体中に分散し、分散状態を維持している。このため、樹脂材料等の耐熱温度の低い基材材料への応用が可能であり、形成の際に大型の装置を必要とせず安価であるという利点がある。
【0111】
本実施形態に係る赤外線吸収材料は導電性材料であるため、連続的な膜として使用した場合は、携帯電話等の電波を吸収反射して妨害する恐れがある。しかし、赤外線吸収材料を微粒子として固体媒体のマトリックス中に分散した場合、粒子一個一個が孤立した状態で分散しているため、電波透過性を発揮でき、汎用性を有する。
【0112】
尚、赤外線吸収材料微粒子分散体における固体媒体のマトリックス中に分散した赤外線吸収材料微粒子の平均粒子径と、当該赤外線吸収材料微粒子分散体を形成するのに用いた赤外線吸収材料微粒子分散液中や赤外線吸収材料微粒子分散体形成用の分散液中に分散した赤外線吸収材料微粒子の分散粒子径とが異なる場合がある。これは、赤外線吸収材料微粒子分散液や赤外線吸収材料微粒子分散体形成用の分散液から、赤外線吸収材料微粒子分散体を得る際に、当該分散液中で凝集していた赤外線吸収材料微粒子の凝集が解されるためである。
【0113】
赤外線吸収材料微粒子分散体の固体媒体としては特に限定されないが、例えば樹脂またはガラスを用いることができる。
【0114】
固体媒体として樹脂を用いる場合、樹脂の種類は特に限定されないが、樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂から選択される1種類以上とすることができる。
【0115】
赤外線吸収材料微粒子分散体における赤外線吸収材料微粒子の含有割合は特に限定されないが、赤外線吸収材料微粒子分散体は、赤外線吸収材料微粒子を0.001質量%以上80質量%以下の割合で含有することが好ましい。これは赤外線吸収材料微粒子を0.001質量%以上含むことで、十分な近赤外線遮蔽機能を発揮できるからである。また、赤外線吸収材料微粒子の含有割合を80質量%以下とすることで、赤外線吸収材料微粒子分散体が含有する固体媒体の割合を多くし、当該赤外線吸収材料微粒子分散体の強度を高めることができるからである。
【0116】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散体の形状等は特に限定されず、用途等に応じて任意に選択できる。例えば、本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散体は、シート状、ボード状、フィルム状のいずれかであることが好ましい。
【0117】
本実施形態の赤外線吸収材料微粒子分散体の製造方法は特に限定されず、既述の赤外線吸収材料微粒子を固体媒体中に添加し、必要に応じて分散することで製造できる。
【0118】
本実施形態に係る赤外線吸収材料微粒子分散体は、例えば以下の手順により製造できる。
【0119】
まず、赤外線吸収材料微粒子分散体形成用分散液を調製する。赤外線吸収材料微粒子分散体形成用分散液は、例えば赤外線吸収材料微粒子分散液に、固体媒体となる樹脂を添加、溶解して調製できる。また、赤外線吸収材料微粒子分散液に、ガラスとなるシリケート化合物等の前駆体であるシランカップリング剤、シラン系アルコキシド、ポリシラザン、ポリオルガノシランから選択された1種類以上を添加して調製できる。
【0120】
そして、調製した赤外線吸収材料微粒子分散体形成用分散液を、ガラス板や板状のプラスチック等の透明基材に塗布する。次いで、赤外線吸収材料微粒子分散体形成用分散液に含まれる赤外線吸収材料微粒子分散液の分散媒を乾燥・揮発等して、透明基材の表面に硬化した赤外線吸収材料微粒子分散体が形成された赤外線吸収透明基材を得ることができる。
【0121】
また、赤外線吸収材料微粒子や、赤外線吸収材料微粒子分散液を、固体媒体に練り込むことで赤外線吸収材料微粒子分散体を得ることもできる。
【実施例0122】
以下、本発明に係る実施例について比較例を挙げ具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
(1)化学分析
製造された実施例と比較例に係る赤外線吸収材料(複合タングステン酸化物)微粒子の化学分析は、Csについては、フレーム原子吸光装置(VARIAN社製、型式:SpectrAA 220FS)により評価した。また、Wについては、ICP発光分光分析装置(島津製作所製、型式:ICPE9000)により評価し、Oについては、酸素窒素同時分析計(LECO社製、型式:ON836)により評価した。
【0124】
(2)結晶構造の測定
また、実施例と比較例に係る赤外線吸収材料(複合タングステン酸化物)の結晶構造については、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X‘Pert-PRO/MPD)を用い、粉末X線回折法(θ-2θ法)により当該赤外線吸収材料微粒子のX線回折パターンを測定し、得られたX線回折パターンから、赤外線吸収材料(複合タングステン酸化物)の結晶構造を特定した。
【0125】
(3)赤外線吸収材料微粒子分散液の分散粒子径
調製された実施例と比較例に係る赤外線吸収材料微粒子分散液の分散粒子径については、大塚電子株式会社製ELS-8000で測定した。
【0126】
(4)赤外線吸収材料微粒子分散液の分光透過率と表色系
調製された実施例と比較例に係る赤外線吸収材料微粒子分散液の波長320nm以上2200nm以下の光に対する透過率は、分光光度計用セル(ジーエルサイエンス株式会社製、型番:S10-SQ-1、材質:合成石英、光路長:1mm)に上記分散液を保持し、日立製作所(株)社製の分光光度計U-4100を用いて測定した。
【0127】
測定の際、上述した分光光度計用セルに、上記分散液の液状媒体(メチルイソブチルケトン、以下「MIBK」と略称する。)を満たした状態で透過率を測定し、透過率測定のベースラインを求めた。
【0128】
この結果、以下に説明する分光透過率および可視光透過率は、分光光度計用セル表面の光反射や液状媒体の光吸収による寄与が除外され、赤外線吸収材料(複合タングステン酸化物)微粒子による光吸収のみが算出されることとなる。
【0129】
また、可視光透過率は、JIS R 3106(2019)に従って算出した。
【0130】
表色系は、JIS Z 8701(1999)に基づくL*a*b*表色系(D65光源/10度視野)を用い、b*の値を測定した。
【0131】
(5)赤外線吸収材料微粒子分散体の分光透過率と表色系
調製された実施例と比較例に係る赤外線吸収材料微粒子分散体の波長320nm以上2200nm以下の光に対する透過率についても、日立製作所(株)社製の分光光度計U-4100を用いて測定した。
【0132】
可視光透過率も、JIS R 3106(2019)に従って算出した。
【0133】
表色系も、JIS Z 8701(1999)に基づくL*a*b*表色系(D65光源/10度視野)を用い、b*の値を測定した。
【0134】
[実施例1]
(1)赤外線吸収材料(複合タングステン酸化物)微粒子の製造
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化スカンジウム(Sc2O3)の各粉末を、物質量比(モル比)でSc:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例1に係る原料混合粉を得た(原料調製工程)。
【0135】
次に、原料調製工程で調製した原料混合粉を用いて、
図1に示す直流プラズマと高周波プラズマを重畳させたハイブリッドプラズマ反応装置100を用い、反応工程を実施した。
【0136】
まず、真空排気装置10により反応系内を約0.1Pa(約0.001torr)まで真空引きした後、アルゴンガスで完全に置換して1気圧のアルゴン流通系とした。
【0137】
プラズマ発生用ガス供給口6よりアルゴンガス8L/minを流し、直流プラズマを発生させた。このときの直流電源入力は6kWである。
【0138】
更に、水冷石英二重管2の内壁に沿って、高周波プラズマ発生用および石英管保護用のガスとして、シースガス導入口7より螺旋状にアルゴンガス40L/minと水素ガス3L/minを流し、高周波プラズマを発生させた。
【0139】
このときの高周波電源入力は45kWとした。このようなハイブリッドプラズマを発生させた後、3L/minのアルゴンガスと0.01L/minの酸素ガスとの混合ガスをキャリアガスとして、原料粉末供給装置4より実施例1に係る原料混合粉を2g/minの供給速度でプラズマ中に供給した。
【0140】
その結果、原料は瞬時に蒸発し、プラズマ尾炎部で凝縮して微粒化した。反応容器5の底で、赤外線吸収材料微粒子である微粒子(微粒子a1)を回収した。
【0141】
微粒子a1について、Cs、Sc、W、O定量分析の結果、実施例1に係る微粒子a1の化学式はCs0.26Sc0.05WO3.26(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0142】
また、微粒子a1について、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X‘Pert-PRO/MPD)を用い、粉末X線回折法(θ-2θ法)によりX線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンから微粒子a1に含まれる化合物の結晶構造を特定したところ、六方晶のCs0.3WO3と同じピークが確認された。上記のように、X線回折パターンにより得られた複合タングステン酸化物の結晶構造を特定できる。本実施例の場合、上述のように微粒子a1に含まれる化合物の結晶構造が、類似する六方晶の複合タングステン酸化物のピークと一致する。このため、本実施例で得られた複合タングステン酸化物、すなわち微粒子a1の結晶構造は、六方晶であることが確認できる。当該評価結果を表1に示す。
【0143】
(2)赤外線吸収材料微粒子分散液の調製
上記微粒子a1を23.0質量%と、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)[以下、「分散剤b」と記載する。]18.4質量%と、分散媒であるメチルイソブチルケトン(MIBK)58.6質量%とを秤量し、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカー(浅田鉄工社製)に装填し、50分間、解砕・分散処理することによって赤外線吸収材料微粒子分散液(A1液)を調製した。
【0144】
得られた実施例1に係るA1液を、可視光透過率が80.0%になるようにMIBKで適宜希釈して分光光度計用セルに入れ、分光透過率を測定した。
【0145】
可視光透過率が80.0%になるように希釈率を調整して測定したときの透過光プロファイルから、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価したところ、波長700nmの透過率は79.3%、波長1400nmの透過率は25.6%、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)は0.32、b*は2.4であった。
【0146】
当該評価結果を表2に示す。
【0147】
(3)赤外線吸収材料微粒子分散体の製造
次に、上記赤外線吸収材料微粒子分散液(A1液)とUV硬化樹脂(東亜合成株式会社製アロニックスUV-3701)とを、重量比で1:1となるように秤量し、混合・攪拌して、赤外線吸収材料微粒子分散体形成用分散液(B1液)を調製した。
【0148】
次いで、バーNo16のバーコーターを用い、厚さ3mmのソーダ石灰ガラス基板上へ赤外線吸収材料微粒子分散体形成用分散液(B1液)を塗布した後、70℃、1分間の条件で乾燥させた。
【0149】
そして、高圧水銀ランプを照射し、実施例1に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C1)を得た。
【0150】
得られた実施例1に係る分散体C1の光学特性を測定した。
【0151】
その結果、可視光透過率は81.2%、波長700nmの透過率は80.0%、波長1400nmの透過率は26.3%、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)は0.33、b*は2.6であった。
【0152】
当該評価結果を表2に示す。
【0153】
[実施例2]
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化パラジウム(PdO)の各粉末を、物質量比(モル比)でPd:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例2に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例2に係る微粒子a2を得た。
【0154】
尚、微粒子a2について、Cs、Pd、W、O定量分析の結果、微粒子a2の化学式はCs0.26Pd0.05WO3.32(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0155】
当該評価結果を表1に示す。
【0156】
次に、上記微粒子a2を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例2に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A2液)を調製し、調製されたA2液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0157】
当該評価結果を表2に示す。
【0158】
更に、上記A2液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例2に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C2)を製造し、得られた分散体C2を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0159】
当該評価結果も表2に示す。
【0160】
[実施例3]
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化カドミウム(CdO)の各粉末を、物質量比(モル比)でCd:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例3に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例3に係る微粒子a3を得た。
【0161】
尚、微粒子a3について、Cs、Cd、W、O定量分析の結果、微粒子a3の化学式はCs0.26Cd0.05WO3.27(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0162】
当該評価結果を表1に示す。
【0163】
次に、上記微粒子a3を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例3に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A3液)を調製し、調製されたA3液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0164】
当該評価結果を表2に示す。
【0165】
更に、上記A3液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例3に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C3)を製造し、得られた分散体C3を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0166】
当該評価結果も表2に示す。
【0167】
[実施例4]
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化イットリウム(Y2O3)の各粉末を、物質量比(モル比)でY:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例4に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例4に係る微粒子a4を得た。
【0168】
尚、微粒子a4について、Cs、Y、W、O定量分析の結果、微粒子a4の化学式は、Cs0.26Y0.05WO3.33(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0169】
当該評価結果を表1に示す。
【0170】
次に、上記微粒子a4を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例4に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A4液)を調製し、調製されたA4液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0171】
当該評価結果を表2に示す。
【0172】
更に、上記A4液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例4に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C4)を製造し、得られた分散体C4を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0173】
当該評価結果も表2に示す。
【0174】
[実施例5]
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化ランタン(La2O3)の各粉末を、物質量比(モル比)でLa:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例5に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例5に係る微粒子a5を得た。
【0175】
尚、微粒子a5について、Cs、La、W、O定量分析の結果、微粒子a5の化学式はCs0.26La0.05WO3.28(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0176】
当該評価結果を表1に示す。
【0177】
次に、上記微粒子a5を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例5に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A5液)を調製し、調製されたA5液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0178】
当該評価結果を表2に示す。
【0179】
更に、上記A5液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例5に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C5)を製造し、得られた分散体C5を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0180】
当該評価結果も表2に示す。
【0181】
[実施例6]
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化ガリウム(Ga2O3)の各粉末を、物質量比(モル比)でGa:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例6に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例6に係る微粒子a6を得た。
【0182】
尚、微粒子a6について、Cs、Ga、W、O定量分析の結果、微粒子a6の化学式はCs0.26Ga0.05WO3.29(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0183】
当該評価結果を表1に示す。
【0184】
次に、上記微粒子a6を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例6に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A6液)を調製し、調製されたA6液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0185】
当該評価結果を表2に示す。
【0186】
更に、上記A6液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例6に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C6)を製造し、得られた分散体C6を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0187】
当該評価結果も表2に示す。
【0188】
[実施例7]
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化インジウム(In2O3)の各粉末を、物質量比(モル比)でIn:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例7に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例7に係る微粒子a7を得た。
【0189】
尚、微粒子a7について、Cs、In、W、O定量分析の結果、微粒子a7の化学式はCs0.26In0.05WO3.34(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0190】
当該評価結果を表1に示す。
【0191】
次に、上記微粒子a7を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例7に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A7液)を調製し、調製されたA7液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0192】
当該評価結果を表2に示す。
【0193】
更に、上記A7液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例7に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C7)を製造し、得られた分散体C7を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0194】
当該評価結果も表2に示す。
【0195】
[実施例8]
三酸化タングステン(WO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、および、酸化タリウム(Tl2O3)の各粉末を、物質量比(モル比)でTl:Cs:W=0.05:0.25:0.95相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して実施例8に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例8に係る微粒子a8を得た。
【0196】
尚、微粒子a8について、Cs、Tl、W、O定量分析の結果、微粒子a8の化学式はCs0.26Tl0.05WO3.21(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0197】
当該評価結果を表1に示す。
【0198】
次に、上記微粒子a8を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例8に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A8液)を調製し、調製されたA8液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0199】
当該評価結果を表2に示す。
【0200】
更に、上記A8液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、実施例8に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C8)を製造し、得られた分散体C8を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0201】
当該評価結果も表2に示す。
【0202】
[比較例1]
三酸化タングステン(WO3)、および、炭酸セシウム(Cs2CO3)の各粉末を、物質量比(モル比)でCs:W=0.33:1.00相当となる割合で秤量した後、擂潰機で十分混合して比較例1に係る原料混合粉を得た以外は、実施例1と同様の操作をして、比較例1に係る微粒子aを得た。
【0203】
尚、比較例1に係る微粒子aについて、Cs、W、O定量分析の結果、微粒子aの化学式はCs0.33WO3.03(複合タングステン酸化物)であることを確認できた。
【0204】
当該評価結果を表1に示す。
【0205】
次に、上記微粒子aを用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、比較例1に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A液)を調製し、調製されたA液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0206】
当該評価結果を表2に示す。
【0207】
更に、上記A液を用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、比較例1に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C)を製造し、得られた分散体Cを用いた以外は、実施例1と同様の操作をして、波長700nmの透過率と波長1400nmの透過率、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)、および、b*を評価した。
【0208】
当該評価結果も表2に示す。
【0209】
【0210】
【0211】
[確 認]
(1)実施例1~実施例8に係る赤外線吸収材料微粒子(微粒子a1~微粒子a8)は、表1に記載されているように六方晶の結晶構造を有している。
【0212】
また、実施例1~実施例8に係る赤外線吸収材料微粒子分散液(A1液~A8液)の光学特性は、可視光透過率が80.0%の場合、表2に記載されているように、波長700nmの透過率が77.8%(実施例3)~79.3%(実施例1等)と70.0%以上であり、波長1400nmの透過率が21.9%(実施例2)~28.0%(実施例3)と30.0%以下であると共に、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)が0.28(実施例2)~0.36(実施例3)と0.50以下、かつ、JIS Z 8701(1999)に基づくL*a*b*表色系のb*値も2.2(実施例8)~2.9(実施例6)と2.0以上である。
【0213】
更に、実施例1~実施例8に係る赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C1~分散体C8)の光学特性は、可視光透過率が78.1%(実施例2)~81.6%(実施例8)の場合、表2に記載されているように、波長700nmの透過率が76.9%(実施例2)~80.0%(実施例1)と70.0%以上であり、波長1400nmの透過率が22.7%(実施例2)~28.0%(実施例3)と30.0%以下であると共に、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)が0.29(実施例6)~0.39(実施例2)と0.50以下、かつ、JIS Z 8701(1999)に基づくL*a*b*表色系のb*値も2.3(実施例8)~2.9(実施例7)と2.0以上である。
【0214】
ここで、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)に係る比は、可視光(700nm)の透過性と、赤外線(波長1400nm)の遮蔽性または吸収性を示す指標の一つである。可視光透過率が優れた赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体において、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)に係る比が0.50%以下であれば、可視光領域(波長380nm以上780nm以下)を透過し、赤外領域(波長780nmを超えて2600nm以下)の光を選択的に遮蔽または吸収することを意味する。
【0215】
このため、実施例1~実施例8に係る赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体に含まれる赤外線吸収材料微粒子は、良好な可視光透過性を有し、優れた赤外線吸収能を有すると共に、青味が抑制された淡青色を有していることが確認される。
【0216】
(2)他方、比較例1に赤外線吸収材料微粒子(微粒子a)は六方晶の結晶構造を有すると共に、赤外線吸収材料微粒子分散液(A液)の光学特性は、可視光透過率が80.0%の場合、表2に記載されているように、波長700nmの透過率が70.0%未満(65.6%)、波長1400nmの透過率が30.0%以下(5.7%)、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)が0.50以下(0.05)であり、赤外線吸収材料微粒子分散体(分散体C)の光学特性は、可視光透過率が79.0の場合、表2に記載されているように、波長700nmの透過率が70.0%未満(65.0%)、波長1400nmの透過率が30.0%以下(8.9%)、(波長1400nmの透過率)/(波長700nmの透過率)が0.50以下(0.14)であるため、赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体に含まれる赤外線吸収材料微粒子は良好な可視光透過性と優れた赤外線吸収能を有している。
【0217】
しかし、JIS Z 8701(1999)に基づく比較例1に係るL*a*b*表色系のb*値は2.0未満(赤外線吸収材料微粒子分散液のb*値は「1.4」、赤外線吸収材料微粒子分散体のb*値は「-1.1」)であるため、実施例1~実施例8に係る赤外線吸収材料微粒子に較べて青味を呈していることが確認される。
本発明の赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体に含まれる赤外線吸収材料微粒子は青味が抑制された淡青色を有するため、本発明に係る赤外線吸収材料微粒子分散液と赤外線吸収材料微粒子分散体は、無色あるいは青色以外に着色される赤外線材料微粒子分散体が要請される分野に利用される産業上の利用可能性を有している。