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特開2023-107430アダマンタン化合物、およびそれを含有する素子
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  • 特開-アダマンタン化合物、およびそれを含有する素子 図1
  • 特開-アダマンタン化合物、およびそれを含有する素子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107430
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】アダマンタン化合物、およびそれを含有する素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/24 20060101AFI20230727BHJP
   C07D 239/26 20060101ALI20230727BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230727BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230727BHJP
【FI】
C07D251/24 CSP
C07D239/26
H05B33/14 A
H05B33/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008628
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】新井 信道
(72)【発明者】
【氏名】上原 史成
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 一希
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC14
3K107CC21
3K107CC24
3K107DD74
3K107DD76
3K107DD78
3K107DD80
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規なアダマンタン化合物を提供し、さらには耐熱性に優れ、長寿命性または発光効率に優れる有機電界素子を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるアダマンタン化合物:

式中、Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;Arは、単結合または炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;Adは、1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;a、bおよびdは、1または2を表す; cは、0または1を表す;ただし、a+b+c=3である;Z、ZおよびZは、各々独立に窒素原子またはC-Hを表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアダマンタン化合物:
【化1】
式中、
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、単結合または炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Ar、芳香族炭化水素基である場合のAr、およびArは、それぞれ、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、および重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは、1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
aは、1または2を表す;
bは、1または2を表す;
cは、0または1を表す;
dは、1または2を表す;
ただし、a+b+c=3である;
、ZおよびZは各々独立に窒素原子またはC-Hを表す。
【請求項2】
、ZおよびZのうち、2つ以上が窒素原子である、請求項1に記載のアダマンタン化合物。
【請求項3】
、ZおよびZのうち、2つが窒素原子であり、1つがC-Hである、請求項1または2に記載のアダマンタン化合物。
【請求項4】
Arが、炭素数6~24の芳香族炭化水素基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
【請求項5】
Arが、フェニル基で置換されていてもよいフェニレン基またはビフェニリレン基である、請求項4に記載のアダマンタン化合物。
【請求項6】
Arが、フェニル基で置換されていてもよい1,4-フェニレン基または4,4’-ビフェニリレン基である、請求項4に記載のアダマンタン化合物。
【請求項7】
Arが、無置換である、請求項4に記載のアダマンタン化合物。
【請求項8】
Arが、炭素数12~16の芳香族炭化水素基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
【請求項9】
Arが、4-ビフェニリル基、まはた4-ナフチルフェニル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
【請求項10】
ArおよびArが、各々独立に、フェニル基またはナフチル基で置換されていてもよいフェニル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
【請求項11】
ArおよびArが、無置換である、請求項1~9のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
【請求項12】
一般式(1-1)で表される、請求項1に記載のアダマンタン化合物:
【化2】
式中、
は、単結合、水素原子、または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
は、水素原子または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
は、単結合または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
およびRのいずれかまたは両方が、炭素数6~18の芳香族炭化水素基である;
、R、およびRは、それぞれ、芳香族炭化水素基である場合、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、および重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは、1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
eは、0、1または2を表す;
fは、1または2を表す;
、ZおよびZは、各々独立に、窒素原子またはC-Hを表し、Z、ZおよびZのうち2つ以上が、窒素原子である。
【請求項13】
、RおよびRに関して、前記芳香族炭化水素基の炭素数が、6~12である、請求項12に記載のアダマンタン化合物。
【請求項14】
、RおよびRは、それぞれ、芳香族炭化水素基である場合、無置換である、請求項12または13に記載のアダマンタン化合物。
【請求項15】
e=0である、請求項12~14のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
【請求項16】
が、フェニル基またはナフチル基であり、
が、水素原子またはフェニル基である、
請求項15に記載のアダマンタン化合物。
【請求項17】
が、単結合またはフェニレン基である、請求項15または16に記載のアダマンタン化合物。
【請求項18】
一般式(1)で表されるアダマンタン化合物を含有する有機電界発光素子:
【化3】
式中、
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、単結合または炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Ar、芳香族炭化水素基である場合のAr、およびArは、それぞれ、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、ビフェニリル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、または重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
aは、1または2を表す;
bは、1または2を表す;
cは、0または1を表す;
dは、1または2を表す;
ただし、a+b+c=3である;
、ZおよびZは各々独立に窒素原子またはC-Hを表す。
【請求項19】
前記一般式(1)で表されるアダマンタン化合物を含有する層が電子輸送層である、請求項18に記載の有機電界発光素子。
【請求項20】
前記一般式(1)で表されるアダマンタン化合物がドープされている、請求項18または19に記載の有機電界発光素子。
【請求項21】
前記ドープがLiqである、請求項20に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たなアダマンチル基を有する環状アジン化合物およびそれを含有する有機電界発光素子に関する。
【0002】
従来の有機電界発光素子は、無機発光ダイオードに比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低く、素子寿命も著しく低く、実用化には至っていなかった。最近の有機電界発光素子は徐々に改良されているものの、発光効率特性、駆動電圧特性、長寿命特性において、さらに優れた材料が求められている。さらに、車載用途等、用途によっては高い耐熱性を要する場合もあり、材料は高いガラス転移温度(Tg)が求められている。
【0003】
有機電界発光素子用の長寿命性に優れる電子輸送材料として、特許文献1で開示されたアダマンタン化合物、または特許文献2で開示されたトリアジン化合物が挙げられる。また、特許文献3~7は、有機電界発光素子用のアダマンチル基を有する化合物を開示している。しかしながら、材料の耐熱性、および当該材料を用いた有機電界発光素子の電圧、寿命および発光効率の点で更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-34159号公報
【特許文献2】特開2007-314503号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第112661709号明細書
【特許文献4】韓国公開特許第10-2021-0062458号公報
【特許文献5】中国特許出願公開第111662241号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第111646951号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第111961038号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、新たなアダマンタン化合物を提供し、さらに他の一態様は、耐熱性に優れ、長寿命性または発光効率に優れる有機電界発光素子を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る発明は、下記の態様を含む。
<態様1>
一般式(1)で表されるアダマンタン化合物:
【化1】
式中、
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、単結合または炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Ar、芳香族炭化水素基である場合のAr、およびArは、それぞれ、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、および重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは、1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
aは、1または2を表す;
bは、1または2を表す;
cは、0または1を表す;
dは、1または2を表す;
ただし、a+b+c=3である;
、ZおよびZは各々独立に窒素原子またはC-Hを表す。
<態様2>
、ZおよびZのうち、2つ以上が窒素原子である、態様1に記載のアダマンタン化合物。
<態様3>
、ZおよびZのうち、2つが窒素原子であり、1つがC-Hである、態様1または2に記載のアダマンタン化合物。
<態様4>
Arが、炭素数6~24の芳香族炭化水素基である、態様1~3のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
<態様5>
Arが、フェニル基で置換されていてもよいフェニレン基またはビフェニリレン基である、態様4に記載のアダマンタン化合物。
<態様6>
Arが、フェニル基で置換されていてもよい1,4-フェニレン基または4,4’-ビフェニリレン基である、態様4に記載のアダマンタン化合物。
<態様7>
Arが、無置換である、態様4に記載のアダマンタン化合物。
<態様8>
Arが、炭素数12~16の芳香族炭化水素基である、態様1~7のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
<態様9>
Arが、4-ビフェニリル基、まはた4-ナフチルフェニル基である、態様1~7のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
<態様10>
ArおよびArが、各々独立に、フェニル基またはナフチル基で置換されていてもよいフェニル基である、態様1~7のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
<態様11>
ArおよびArが、無置換である、態様1~9のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
<態様12>
一般式(1-1)で表される、態様1に記載のアダマンタン化合物:
【化2】
式中、
は、単結合、水素原子、または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
は、水素原子または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
は、単結合または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
およびRのいずれかまたは両方が、炭素数6~18の芳香族炭化水素基である;
、R、およびRは、それぞれ、芳香族炭化水素基である場合、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、および重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは、1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
eは、0、1または2を表す;
fは、1または2を表す;
、ZおよびZは、各々独立に、窒素原子またはC-Hを表し、Z、ZおよびZのうち2つ以上が、窒素原子である。
<態様13>
、RおよびRに関して、前記芳香族炭化水素基の炭素数が、6~12である、態様12に記載のアダマンタン化合物。
<態様14>
、RおよびRは、それぞれ、芳香族炭化水素基である場合、無置換である、態様12または13に記載のアダマンタン化合物。
<態様15>
e=0である、態様12~14のいずれか一項に記載のアダマンタン化合物。
<態様16>
が、フェニル基またはナフチル基であり、
が、水素原子またはフェニル基である、
態様15に記載のアダマンタン化合物。
<態様17>
が、単結合またはフェニレン基である、態様15または16に記載のアダマンタン化合物。
<態様18>
一般式(1)で表されるアダマンタン化合物を含有する有機電界発光素子:
【化3】
式中、
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、単結合または炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Ar、芳香族炭化水素基である場合のAr、およびArは、それぞれ、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、ビフェニリル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、または重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
aは、1または2を表す;
bは、1または2を表す;
cは、0または1を表す;
dは、1または2を表す;
ただし、a+b+c=3である;
、ZおよびZは各々独立に窒素原子またはC-Hを表す。
<態様19>
前記一般式(1)で表されるアダマンタン化合物を含有する層が電子輸送層である、態様18に記載の有機電界発光素子。
<態様20>
前記一般式(1)で表されるアダマンタン化合物がドープされている、態様18または19に記載の有機電界発光素子。
<態様21>
前記ドープがLiqである、態様20に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、新規なアダマンタン化合物を提供し、さらに他の一態様では耐熱性、長寿命性および/または発光効率に優れる電子輸送材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一態様であるアダマンタン化合物を含有する有機電界素子の、好ましい実施態様の概略断面図である。
図2図2は、本発明の素子実施例1に係る有機電界発光素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の一般式(1)で表されるアダマンタン化合物(以下、「アダマンタン化合物(1)」、又は単に「化合物(1)」ともいう)、およびそれを含有する有機電界発光素子に関するものである。
【0011】
<一般式(1)で表されるアダマンタン化合物>
本発明の実施態様の一つであるアダマンタン化合物は、一般式(1)で表される。
【0012】
【化4】
式中、
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、単結合または炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す;
Ar、芳香族炭化水素基である場合のAr、およびArは、それぞれ、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、および重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは、1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
aは、1または2を表す;
bは、1または2を表す;
cは、0または1を表す;
dは、1または2を表す;
ただし、a+b+c=3である;
、ZおよびZは各々独立に窒素原子またはC-Hを表す。
【0013】
本発明の実施態様に係る式(1)で表されるアダマンタン化合物は、高いアモルファス性、分子量に比して高いガラス転移温度を有し、高い発光効率、長寿命、低電圧という電界発光素子特性を有する。理論によって限定する意図はないが、これは、立体障害の大きく、ドナー性を有するアダマンチル基を有することによると考えられる。
【0014】
本発明の実施態様に係る式(1)で表されるアダマンタン化合物のTgは、110℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。比較的高いTgを有するアダマンタン化合物は、特に、高い耐熱性を要する有機電界発光素子用途において有利である。本Tgは、DSC(Differential scanning calorimetry)装置を用い、23℃50%RH雰囲気下で測定したものである。
【0015】
≪Ar、ArおよびAr
Arは、単結合、又は炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す。ArおよびArは、各々独立して、炭素数6~24の芳香族炭化水素基を表す。
【0016】
なお、「芳香族炭化水素基」は、ベンゼン環を含む炭化水素基であり、例えば、環構造(単環又は縮合環)、又は複数の環構造が単結合で結合した構造を有する。
【0017】
ArおよびArにおける炭素数6~24の芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基等が好ましい例として挙げられる。
【0018】
Arに関して、炭素数6~24の芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフチレン基、フェナントレンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、トリレニフェンジイル基、クリセンジイル基、フルオランテンジイル基、アセナフチレンジイル基、フルオレンジイル基、ベンゾフルオレンジイル基が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、Arに関して、炭素数6~24の芳香族炭化水素基は、(好ましくは無置換の)フェニレン基、又はビフェニリレン基である。
【0019】
Ar、芳香族炭化水素基である場合のAr、およびArは、それぞれ、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、ビフェニリル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、および重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、又は、無置換であってよい。
【0020】
Ar、Ar、およびArが無置換であることが特に好ましい。
【0021】
Arは、炭素数6~24の芳香族炭化水素基であることが好ましい。特に好ましくは、Arが、フェニル基で置換されているか又は無置換の(好ましくは無置換の)フェニレン基またはビフェニリレン基であり、更に特に好ましくは、Arが、フェニル基で置換されているか又は無置換の(好ましくは無置換の)1,4-フェニレン基または4,4’-ビフェニリレン基である。
【0022】
Arは、無置換の炭素数6~24の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数12~16の芳香族炭化水素基であることが更に好ましい。Arは、フェニル基またはナフチル基で置換されているフェニル基であってもよい。性能が優れる点で、Arが、4-ビフェニリル基又は4-ナフチルフェニル基であることが特に好ましく、4-ビフェニリル基であることが最も好ましい。
【0023】
Arは、無置換の炭素数6~24の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数12~16の芳香族炭化水素基であることが更に好ましい。Arは、フェニル基またはナフチル基で置換されているフェニル基であってもよい。Arは、無置換のフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、ナフチル基で置換されたフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、またはアントリル基で置換されたフェニル基であることが好ましく、無置換のフェニル基、又は無置換のビフェニリル基であることが特に好ましい。
【0024】
≪a、b、cおよびd≫
aは1または2を、bは1または2を、cは0または1を、dは1または2を、それぞれ表す。ただし、a+b+c=3である。a=b=c=1であることが好ましい
【0025】
≪Z、ZおよびZ
、ZおよびZは各々独立に窒素原子またはC-Hを表す。Z、ZおよびZのうち、少なくとも二つが窒素原子であることが好ましい。二つが窒素原子、一つがC-Hであることがさらに好ましい。
【0026】
<一般式(1)で表されるアダマンタン化合物の好ましい例>
一般式(1)で表されるアダマンタン化合物は、例えば下記(A1)~(A34)で表される化合物が例として挙げられる。なお、「Ad」は1-アダマンチル基を示し、「Ad」は、2-アダマンチル基を示す。
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
Arとしては、特に限定されるものではないが、以下の(B1)~(B47)が例として挙げられる。
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
Ar-またはAr-としては、特に限定されるものではないが、以下の(C1)~(C71)が例として挙げられる。
【0036】
【化12】
【0037】
【化13】
【0038】
【化14】
【0039】
【化15】
【0040】
本願の化合物(1)は、基本骨格の(A1)~(A34)に対し、(B1)~(B47)で表されるAr、(C1)~(C71)で表されるAr、および(C1)~(C71)で表されるArを組み合わせた化合物が、好ましい例として挙げられる。
本願の化合物(1)のさらに好ましい例として、以下の(D1)-(D232)が挙げられる。なお、「Ad」は1-アダマンチル基を示し、「Ad」は、2-アダマンチル基を示す。
【0041】
【化16】
【0042】
【化17】
【0043】
【化18】
【0044】
【化19】
【0045】
【化20】
【0046】
【化21】
【0047】
【化22】
【0048】
【化23】
【0049】
【化24】
【0050】
【化25】
【0051】
【化26】
【0052】
【化27】
【0053】
なお、上記例示化合物のTgは、すべて100℃以上である。
【0054】
上記の一般式(1)で表されるアダマンタン化合物のうち、下記の一般式(1-1)で表されるアダマンタン化合物が、特に好ましい:
【0055】
【化28】
【0056】
式(1-1)中、
は、単結合、水素原子、または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
は、水素原子または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
は、単結合または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表す;
およびRのいずれかまたは両方が、炭素数6~18の芳香族炭化水素基である;
、R、およびRは、それぞれ、芳香族炭化水素基である場合、単数若しくは複数のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、トリフェニレニル基、テルフェニル基、メチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、および重水素の群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、または無置換である;
Adは、1-アダマンチル基または2-アダマンチル基を表す;
eは、0、1または2を表す;
fは、1または2を表す;
、ZおよびZは、各々独立に、窒素原子またはC-Hを表し、Z、ZおよびZのうち2つ以上が、窒素原子である。
【0057】
上記一般式(1-1)で表されるアダマンタン化合物は、Z、Z、およびZを有する芳香環(特にはトリアジンまたはピリミジンなどの複素芳香環)に3つのベンゼン環が結合しており、これら3つのベンゼン環に、それぞれ、R~Rがパラ位で結合している。
【0058】
このような構造を有するアダマンタン化合物は、有機電界発光素子の材料(特には電子輸送層の材料)として特に有用であり、この化合物を用いることによって、発光効率特性、駆動電圧特性、及び長寿命特性に特に優れる有機電界発光素子を得ることができる。
【0059】
上記一般式(1-1)で表されるアダマンタン化合物では、R~Rの少なくとも1つが、炭素数6~18の芳香族炭化水素基である。すなわち、上記一般式(1-1)で表されるアダマンタン化合物は、Z、Z、およびZを有する芳香環(特にはトリアジンまたはピリミジンなどの複素芳香環)に結合しているベンゼン環に対してパラ位で結合した芳香族炭化水素環を有している。
【0060】
理論によって限定する意図はないが、Z、Z、およびZを有する芳香環(特にはトリアジンまたはピリミジンなどの複素芳香環)に結合しているベンゼン環に対してパラ位で結合した芳香族炭化水素環を有する場合、Z、Z、およびZを有する芳香環(特にはトリアジンまたはピリミジン)の周囲に分布するLUMOが広範囲に広がり、その結果として、化合物の移動度(電子移動度)が向上すると考えられる。
【0061】
ここで、従来、そのような構造を有する化合物を用いて有機電界発光素子を製造した場合、良好な性能を得られない場合があった(例えば本願実施例に記載の化合物ETL-2参照)。理論によって限定する意図はないが、有機電界発光素子を構成する層(例えば電子輸送層)の材料としてこのような分子構造を有する化合物を用いた場合、素子中の層間でのエネルギー障壁が高くなり、結果として、有機電界発光素子の効率が低下すると考えられる。
【0062】
これに対して、本発明に係る上記一般式(1-1)で表されるアダマンタン化合物は、優れた移動度を示すとともに、この化合物を用いて製造された有機電界発光素子が、特に高い効率を示す。上記一般式(1-1)で表されるアダマンタン化合物は、Z、Z、およびZを有する芳香環(特にはトリアジンまたはピリミジン)に結合しているベンゼン環に対してパラ位で結合した芳香族炭化水素環に加えて、アダマンチル基をさらに有しており、これによって、優れた移動度に加えて、特に高い性能を有する有機電界発光素子を可能にしていると考えられる。
【0063】
理論によって限定する意図はないが、本発明に係る上記一般式(1-1)のアダマンタン化合物では、立体的にかさ高いアダマンチル基が、素子中において、隣接層との界面での励起子失活を抑制していることが考えられる。具体的には、例えば、発光層と電子輸送層との間の相互作用によってエキサイプレックス等の中間体が生成されると励起子のエネルギーが失活して発光効率低下の原因となりうるが、かさ高いアダマンチル基は、このようなエキサイプレックスの形成を抑制することができると考えられる。
【0064】
e=1又は2である場合のR、及びRの例としては、それぞれ、上記(B1)~(B47)が挙げられる。e=0である場合のR、及びRの例としては、それぞれ、上記(C1)~(C71)が挙げられる。
【0065】
e=1又は2である場合、Rは、単結合、または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表しうる。e=0である場合、Rは、水素原子、または炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表しうる。
【0066】
、RおよびRに関して、芳香族炭化水素基の炭素数が6~12(特には6~10)であることが好ましい。
【0067】
、RおよびRは、それぞれ、芳香族炭化水素基である場合、無置換であることが好ましい。
【0068】
eは、0であること(e=0であること)が好ましい。e=0である場合、Rが、フェニル基またはナフチル基であることが好ましく、Rが、水素原子またはフェニル基であることが好ましく、かつ/又は、Rが、単結合またはフェニレン基であることが好ましい。
【0069】
なお、e=0である場合、一般式(1-1)は、下記の一般式(1-10)で表される。
【0070】
【化29】
【0071】
一般式(1-1)で表されるアダマンタン化合物は、特に好ましくは、下記の一般式(1-11)、(1-12)又は(1-13)で表されるアダマンタン化合物である。
【0072】
【化30】
【0073】
【化31】
【0074】
【化32】
【0075】
<式(1)で表されるアダマンタン化合物の製造方法>
本発明の実施態様に係るアダマンタン化合物(1)は、例えば下記反応式1~3に示されるクロスカップリング反応によって製造することができる。
【0076】
【化33】
【0077】
【化34】
【0078】
【化35】
【0079】
反応式1~3中、XはF、Cl、Br、I、OTfまたは、F、Cl、Br、I若しくはOTfを部分構造として有する基を表す。Mはカップリング反応に有効な金属基または有機金属基を表し、例えばLi、Na、B(OR11、MgBr、MgCl、ZnCl、ZnBr、ZnCl、Zn(tmeda)、Sn(n-Bu)、SiMe等が挙げられる。
【0080】
ここで、R11は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、またはフェニル基を表し、2つのR11は同一であっても異なっていてもよい。また、2つのOR11とホウ素原子とが環を形成していてもよい。すなわち、B(OR11は下記の(I)~(VI)が例として挙げられる。
【0081】
【化36】
【0082】
クロスカップリング反応の反応条件は、例えば特開2015-34159、国際公開2019/191454に記載の方法を用いて、製造することができる。
【0083】
<式(1)で表されるアダマンタン化合物を含有する有機電界発光素子>
以下、本開示に係るアダマンタン化合物(1)を含む有機電界発光素子(以下、単に有機電界発光素子と称することがある)について説明する。
【0084】
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、本開示に係るアダマンタン化合物(1)を含有し、特には、本開示に係るアダマンタン化合物(1)を含有する層を有する。
【0085】
有機電界発光素子の構成については特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す(i)~(v)の構成が挙げられる。
【0086】
(i):陽極/発光層/陰極
(ii):陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii):陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv):陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0087】
本開示に係るアダマンタン化合物(1)は、上記のいずれの層に含まれていてもよいが、有機電界発光素子の発光特性に優れる点で、発光層と陰極との間の層からなる群より選ばれる1層以上に含まれることが好ましい。したがって、上記(i)~(v)に示された構成の場合、アダマンタン化合物(1)が、電子輸送層、及び電子注入層からなる群より選ばれる1層以上に含まれることが好ましい。
【0088】
以下、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子を、上記(v)の構成を例に挙げて、図1を参照しながらより詳細に説明する。
【0089】
なお、図1に示す有機電界発光素子は、いわゆるボトムエミッション型の素子構成を有するものであるが、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子はボトムエミッション型の素子構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、トップエミッション型など、他の公知の素子構成であってもよい。
【0090】
図1に示す有機電界発光素子100は、基板1、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、及び陰極8をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、発光層5と電子輸送層6との間に正孔阻止層が設けられていてもよく、正孔注入層3が省略され、陽極2上に正孔輸送層4が直接設けられていてもよい。
【0091】
また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに備えた構成であってもよい。さらに、例えば単層の正孔輸送層4、単層の電子輸送層6が、それぞれ複数層からなっていてもよい。
【0092】
<アダマンタン化合物(1)を含有する層>
図1に示される構成例において、有機電界発光素子100は、発光層5、電子輸送層6及び電子注入層7からなる群より選ばれる1層以上にアダマンタン化合物(1)を含む。特に、電子輸送層6がアダマンタン化合物(1)を含むことが好ましい。なお、アダマンタン化合物(1)は、有機電界発光素子が備える複数の層に含まれていてもよい。
【0093】
なお、以下においては、電子輸送層6がアダマンタン化合物(1)を含む有機電界発光素子100について説明する。
【0094】
[基板1]
基板1としては、例えば、ガラス板、石英板、プラスチック板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ガラス板、石英板、光透過性プラスチックフィルムが好ましい。
【0095】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルムが挙げられる。
なお、基板1側から発光が取り出される構成の場合、基板1は光の波長に対して透明である。
【0096】
[陽極2]
基板1上(正孔注入層3側)には陽極2が設けられている。
陽極の材料としては、仕事関数の大きい(例えば4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が挙げられる。陽極の材料の具体例としては、Auなどの金属;CuI、酸化インジウム-スズ(ITO;Indium Tin Oxide)、SnO、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
発光が陽極を通過して取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陽極は当該発光を通すか又は実質的に通す導電性透明材料で形成される。
【0097】
[正孔注入層3、正孔輸送層4]
陽極2と後述する発光層5との間には、陽極2側から、正孔注入層3、正孔輸送層4がこの順で設けられている。
【0098】
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入される。
【0099】
また、正孔注入層、正孔輸送層は、電子障壁性の層としても機能する。すなわち、陰極から注入され、電子注入層及び/又は電子輸送層より発光層に輸送された電子は、発光層と正孔注入層及び/又は正孔輸送層との界面に存在する電子の障壁により、正孔注入層及び/又は正孔輸送層に漏れることが抑制される。その結果、該電子が発光層内の界面に累積され、発光効率が向上する等の効果をもたらし、発光性能の優れた有機電界発光素子が得られる。
【0100】
正孔注入層、正孔輸送層の材料としては、正孔注入性、正孔輸送性、電子障壁性の少なくともいずれかを有するものである。正孔注入層、正孔輸送層の材料は、有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0101】
正孔注入層、正孔輸送層の材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。
【0102】
これらの中でも、有機電界発光素子の性能がよい点で、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0103】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(m-トリル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾール、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(m-トリル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0104】
また、p型-Si、p型-SiCなどの無機化合物も正孔注入層の材料、正孔輸送層の材料の一例として挙げることができる。
正孔注入層、正孔輸送層は、一種又は二種以上の材料からなる単構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0105】
[発光層5]
正孔輸送層4と後述する電子輸送層6との間には、発光層5が設けられている。
発光層の材料としては、燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料が挙げられる。発光層では電子・正孔対が再結合し、その結果として発光が生じる。
【0106】
発光層は、単一の低分子材料又は単一のポリマー材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を有することができる。
【0107】
ホスト材料としては、例えば、ビフェニリル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、アントリル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャリーブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0108】
蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、ホウ素化合物、環状アミン化合物等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0109】
燐光ドーパントとしては、例えば、イリジウム、白金、パラジウム、オスミウム等の遷移金属の有機金属錯体が挙げられる。
【0110】
蛍光ドーパント、燐光ドーパントの具体例としては、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)3(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、及びFIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))等が挙げられる。
【0111】
また、発光材料は発光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、発光材料は、発光層に隣接した層(正孔輸送層4、又は電子輸送層6)が含有していてもよい。これによってさらに有機電界発光素子の発光効率を高めることができる。
【0112】
発光層は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0113】
[電子輸送層6]
発光層5と後述する電子注入層7との間には、電子輸送層6が設けられている。
電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子輸送層を陰極と発光層との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層に注入される。
【0114】
電子輸送層は、本開示に係るアダマンタン化合物(1)を含むことが好ましい。また、電子輸送層は、アダマンタン化合物(1)に加えてさらに従来公知の電子輸送材料から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
【0115】
なお、アダマンタン化合物(1)が電子輸送層に含まれず、他の層に含まれる場合は、従来公知の電子輸送材料から選ばれる1種以上を、電子輸送層を構成する電子輸送材料として用いることができる。
【0116】
従来公知の電子輸送性材料としては、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、土類金属錯体等が挙げられる。アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、土類金属錯体としては、例えば、8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-1-ナフトラートアルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-2-ナフトラートガリウム等が挙げられる。
【0117】
電子輸送層は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0118】
本態様にかかる有機電界発光素子においては、電子注入性を向上させ、素子特性(例えば、発光効率、低電圧駆動、又は高耐久性)を向上させる目的で、電子注入層を設けてもよい。
【0119】
[電子注入層7]
電子輸送層6と後述する陰極8との間には、電子注入層7が設けられている。
電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子注入層を陰極と発光層との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層に注入される。
【0120】
電子注入層の材料としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン、Liq(8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム)等の有機化合物が挙げられる。更に、SiO、AlO、SiN、SiON、AlON、GeO、LiO、LiON、TiO、TiON、TaO、TaON、TaN、LiF、Li、Na、Ca、Mg、CsF、CaCO、C、Ybなどの各種酸化物、フッ化物、窒化物、酸化窒化物等の無機化合物も挙げられる。
【0121】
[陰極8]
電子注入層7上には陰極8が設けられている。
陽極を通過した発光のみが取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陰極は任意の導電性材料から形成することができる。
【0122】
陰極の材料としては、例えば、仕事関数の小さい金属(以下、電子注入性金属とも称する)、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。ここで、仕事関数の小さい金属とは、例えば、4eV以下の金属である。
【0123】
陰極の材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。
【0124】
これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好ましい。
【0125】
[各層の形成方法]
以上説明した、電極(陽極、陰極)を除く各層は、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法などの公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。各層の材料は、それ単独で用いてもよく、必要に応じて結着樹脂などの材料、溶剤と共に用いてもよい。
【0126】
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm~5μmの範囲である。
【0127】
陽極及び陰極は、電極材料を蒸着やスパッタリングなどの方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリングなどによって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0128】
陽極及び陰極の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0129】
なお、アダマンタン化合物(1)を含む層(特には電子輸送層)を形成する際には、上記の従来公知の電子輸送性材料と併用してもよい。したがって、例えば、アダマンタン化合物(1)と従来公知の電子輸送性材料とを共蒸着してもよく、アダマンタン化合物(1)の層に従来公知の電子輸送性材料の層を積層してもよい。
【0130】
有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像をスクリーン等に投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として有機電界発光素を使用する場合、駆動方式としては、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式であってもよく、アクティブマトリクス方式であってもよい。また、異なる発光色を有する有機電界発光素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0131】
本開示に係るアダマンタン化合物(1)は、特に電子輸送層として用いた際に、従来公知のアダマンタン化合物に比べて、発光効率及び低電圧特性が顕著に優れる有機電界発光素子を提供することができる。更に、アダマンタン化合物(1)はその立体障害骨格によってアモルファス性が高く、高い膜質安定性を有する。このため有機電界発光素子の駆動安定性の向上や、発光効率の向上等の効果が期待される。なおかつ、アダマンタン化合物(1)は、その特徴的な骨格から、化学的安定性が高く、有機電界発光素子の長寿命化に寄与することが可能である。
【0132】
本開示に係るアダマンタン化合物(1)は、特には、有機電界発光素子の電子輸送層として用いることで素子の低電圧駆動、高効率化及び長寿命化のいずれも高次元に達成可能なトリアジン化合物を提供することができる。さらに、アダマンタン化合物(1)を用いた、低電圧駆動、高効率化及び長寿命化を発揮し得る有機電界発光素子を提供することができる。
【実施例0133】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の好ましい実施態様をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0134】
H-NMR測定]
H-NMRの測定には、Bruker ASCEND HD(400MHz;BRUKER製)を用いた。H-NMRは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。また、試薬類は市販品を用いた。
【0135】
[FDMS測定]
FDMS測定は、日立製作所社製のM-80Bを用いて行った。
【0136】
[DSC測定(ガラス転移温度、結晶化温度)]
ガラス転移温度(Tg)および結晶化温度(Tc)の測定はDSC(Differential scanning calorimetry)装置 DSC7020(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて行った。DSC測定におけるリファレンスは酸化アルミニウム(Al)を使用し、試料は10mgで測定を行った。
【0137】
測定の前処理として、30℃から融点以上の温度まで10℃/分の速度で昇温し、試料を融解させた後、ドライアイスに試料を接触させて急冷を行った。続いて、前処理した試料を30℃から10℃/分の速度で温度を上昇させ、ガラス転移温度および結晶化温度を測定した。
【0138】
<合成例>
≪合成実施例-1≫
【0139】
【化37】
【0140】
アルゴン雰囲気下、4-(1-アダマンチル)フェニルトリフラート(150.0g、416.2mmol)、ビス(ネオペンチルグリコラート)ジボロン(103.4g,457.8mmol)、酢酸カリウム(122.5g、1248.6mmol)、酢酸パラジウム(1.87g,8.32mmol)をTHF(1340mL)に懸濁し、17時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温まで冷却したのち、ろ過によって反応残渣を取り除いた。得られたろ液を濃縮乾固させ、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製することにより、目的の5,5-ジメチル-2-[4-(1-アダマンチル)フェニル]-1,3,2-ジオキサボリナンを得た(85.0g、収率63%)。
HNMR(CDCl)δ1.01(s,6H),1.56(s,4H),1.77(brs,6H),1.92(brs,6H),2.09(brs,3H),7.36(d,J=8.4Hz,2H),7.75(d,J=8.4Hz,2H).
【0141】
≪合成実施例-2≫
【0142】
【化38】
【0143】
アルゴン雰囲気下、2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(10.0g,33.1mmol)、4-クロロフェニルボロン酸(5.69g,36.4mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(765mg,0.662mmol)をTHF(330mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-炭酸カリウム水溶液(49.6mL)を加えた後、12時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4-ビフェニリル)-4-クロロ-6-(4-クロロフェニル)1,3,5-トリアジンを得た(12.5g、収率40%)。
HNMR(CDCl)δ7.43(t,J=7.3Hz,1H),7.49(d,J=7.8Hz,2H),7.54(d,J=8.7Hz,2H),7.69(dd,J=8.5,1.5Hz,2H),7.79(d,J=8.6Hz,2H),8.60(d,J=8.7Hz,2H),8.69(d,J=8.5Hz,2H).
【0144】
≪合成実施例-3≫
【0145】
【化39】
アルゴン雰囲気下、2-(4-ビフェニリル)-4-クロロ-6-(4-クロロフェニル)1,3,5-トリアジン(5.00g,13.2mmol)、5,5-ジメチル-2-[4-(1-アダマンチル)フェニル]-1,3,2-ジオキサボリナン(4.29g,13.2mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(306mg,0.264mmol)をトルエン(132mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(19.8mL)を加えた後、21時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-(4-クロロフェニル)-1,3,5-トリアジンを得た(6.2g、収率85%)。
HNMR(CDCl)δ1.82(brs,6H),2.01(brs,6H),2.15(brs,3H),7.42(t,J=7.2Hz,1H),7.49-7.53(m,2H),7.55(d,J=8.9Hz,2H),7.58(d,J=8.6Hz,2H),7.71(dd,J=8.3,1.2Hz,2H),7.81(d,J=8.6Hz,2H).
【0146】
≪合成実施例-4(D158)≫
【0147】
【化40】
アルゴン雰囲気下、2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-(4-クロロフェニル)-1,3,5-トリアジン(3.00g,5.41mmol)、5,5-ジメチル-2-[4-(1-アダマンチル)フェニル]-1,3,2-ジオキサボリナン(1.93g,5.96mmol)、酢酸パラジウム(24.3mg,0.108mmol)および2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(103mg,0.217mmol)をテトラヒドロフラン(54mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(8.1mL)を加えた後、20時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)を得た(2.85g、収率72%)。
HNMR(CDCl)δ1.84(brs,12H),2.02(brs,6H),2.04(brs,6H),2.17(brs,6H),7.44(t,J=7.3Hz,1H),7.51-7.55(m,4H),7.61(d,J=8.5Hz,2H),7.72(d,J=8.5Hz,2H),7.75(d,J=7.2Hz,2H),7.84(d,J=8.0Hz,4H),8.76(d,J=8.6Hz,2H),8.87(d,J=8.3Hz,2H),8.89(d,J=8.4Hz,2H).
【0148】
≪合成実施例-5(D9)≫
【0149】
【化41】
アルゴン雰囲気下、2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-(4-クロロフェニル)-1,3,5-トリアジン(2.50g,4.51mmol)、1-ナフタレンボロン酸(0.85g,4.96mmol)、酢酸パラジウム(20.3mg,0.090mmol)および2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(86.0mg,0.181mmol)をテトラヒドロフラン(45mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(6.8mL)を加えた後、20時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-{4-(1-ナフチル)フェニル}-1,3,5-トリアジン(化合物D9)を得た(1.85g、収率64%)。
HNMR(CDCl)δ1.85(brs,6H),2.04(brs,6H),2.18(brs,3H),7.43-7.64(m,9H),7.74-7.77(m,4H),7.85(d,J=8.4Hz,2H),7.94-8.02(m,3H),8.78(d,J=8.7Hz,2H),8.91(d,J=8.4Hz,2H),8.94(d,J=8.4Hz,2H).
【0150】
化合物D9のTgは144℃、Tcは検出されなかった。
【0151】
≪合成実施例-6≫
【0152】
【化42】
アルゴン雰囲気下、2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-(4-クロロフェニル)-1,3,5-トリアジン(5.00g,9.02mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.75g,10.8mmol)、酢酸パラジウム(40.5mg、0.18mmol)、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(172mg、0.361mmol)、酢酸カリウム(2.66g、27.1mmol)をTHF(90mL)に懸濁し、17時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温まで冷却したのち、ろ過によって反応残渣を取り除いた。得られたろ液を濃縮乾固させ、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエンとヘキサンの混合溶媒)により精製することにより、目的の2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-[4-(4,4,5,5-テトラメチル)-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル]-1,3,5-トリアジンを得た(4.19g、収率72%)。
HNMR(CDCl)δ1.40(s,12H),1.82(brs,6H),2.01(brs,6H),2.12(brs,3H),7.42(t,J=7.5Hz,1H),7.51(t,J=7.5Hz,2H),7.59(d,J=8.7Hz,2H),7.72(dd,J=8.5,1.4Hz,2H),7.82(d,J=8.3Hz,2H),8.01(d,J=8.3Hz,2H),8.72(d,J=8.5Hz,2H),8.77(d,J=8.1Hz,2H),8.85(d,J=8.4Hz,2H).
【0153】
≪合成実施例-7(D8)≫
【0154】
【化43】
アルゴン雰囲気下、2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-[4-(4,4,5,5-テトラメチル)-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル]-1,3,5-トリアジン(2.00g,3.10mmol)、2-ブロモナフタレン(0.77g、3.72mmol)、酢酸パラジウム(13.9mg,0.062mmol)および2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(59.1mg,0.124mmol)をテトラヒドロフラン(31mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(4.6mL)を加えた後、20時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-{4-(2-ナフチル)フェニル}-1,3,5-トリアジン(化合物D8)を得た(1.20g、収率64%)。
HNMR(CDCl)δ1.83(brs,6H),2.02(brs,6H),2.16(brs,3H),7.42(t,J=7.2Hz,1H),7.50-7.57(m,4H),7.60(d,=8.8Hz,2H),7.73(d,J=7.6Hz,2H),7.83(d,J=8.5Hz,2H),7.85-8.00(m,6H),8.18(brs,1H),7.45(d,J=8.7Hz,2H),8.88(d,J=8.6Hz,2H),8.91(d,J=8.7Hz,2H).
【0155】
化合物D8のTgは139℃、Tcは検出されなかった。
【0156】
≪合成実施例-8(D81)≫
【0157】
【化44】
アルゴン雰囲気下、2-(ビフェニル-4-イル)-4-(4-ブロモフェニル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(13.0g,28.0mmol)、5,5-ジメチル-2-[4-(1-アダマンチル)フェニル]-1,3,2-ジオキサボリナン(9.99g,30.8mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(647mg,0.560mmol)をテトラヒドロフラン(280mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(42.0mL)を加えた後、18時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-ビフェニリル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(化合物D81)を得た(5.20g、収率31%)。
HNMR(CDCl)δ1.84(brs,6H),2.12(brs,6H),2.17(brs,3H),7.45(t,J=7.2Hz,1H),7.52-7.55(m,4H),7.60-7.66(m,3H),7.72(d,J=8.4Hz,2H),7.75(dd,J=8.5,1.4Hz,2H),7.85(d,J=8.0Hz,4H
),8.84(dd,J=8.0,1.9Hz,2H),8.88(d,J=8.5Hz,2H),8.89(d,J=8.5Hz,2H).
【0158】
化合物D81のTgは132℃、Tcは検出されなかった。
【0159】
≪合成実施例-9(D1)≫
【0160】
【化45】
アルゴン雰囲気下、2-(ビフェニル-4-イル)-4-クロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(16.0g,46.5mmol)、5,5-ジメチル-2-[4-(1-アダマンチル)フェニル]-1,3,2-ジオキサボリナン(16.6g,51.2mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(1.08g,0.931mmol)をテトラヒドロフラン(465mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(69.8mL)を加えた後、16時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(化合物D1)を得た(19.5g、収率81%)。
HNMR(CDCl)δ1.85(brs,6H),2.04(brs,6H),2.18(brs,3H),7.44(t,d=7.2Hz,1H),7,53(t,d=7.5Hz,2H),7.59-7.65(m,5H),7.74(dd,J=8.5,1.3Hz,2H),7.83(d,J=8.6Hz,2H),8.75(d,J=8.7Hz,2H),8.82(dd,J=8.0,1.8Hz,2H),8.87(d,J=8.6Hz,2H).
【0161】
≪合成実施例-10(D87)≫
【0162】
【化46】
合成実施例-8と同様な方法で2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D87)を得た。HNMR(CDCl)δ1.84(brs,6H),2.02(brs,6H),2.17(brs,3H),7.45(t,J=7.5Hz,2H),7.52-7.56(m,6H),7.72(d,J=8.6Hz,2H),7.75(dd,J=8.3,1.3Hz,4H),7.84-7.86(m,6H),8.88-8.91(m,6H).
【0163】
化合物D87のTgは155℃、Tcは検出されなかった。
【0164】
≪合成実施例-11(D175)≫
【0165】
【化47】
アルゴン雰囲気下、2-(4-クロロフェニル)-4,6ビス(4-ビフェニリル)ピリミジン(2.00g,4.04mmol)、5,5-ジメチル-2-[4-(1-アダマンチル)フェニル]-1,3,2-ジオキサボリナン(1.31g,4.04mmol)、酢酸パラジウム(18.1mg、0.081mmol)および2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(77.0mg,0.162mmol)をテトラヒドロフラン(40mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(6.1mL)を加えた後、19時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(4-ビフェニリル)ピリミジン(D175)を得た(2.45g、収率90%)。
HNMR(CDCl)δ1.83(brs,6H),2.02(brs,6H),2.16(brs,3H),7.44(t,d=7.2Hz,2H),7.51-7.55(m,6H),7.71-7.75(m,6H),7.82-7.85(m,6H),8.13(s,1H),8.44(d,J=8.6Hz,4H),8.84(d,J=8.4Hz,2H).
【0166】
≪合成実施例-12(D7)≫
【0167】
【化48】
アルゴン雰囲気下、2,4-ビス(ビフェニル-4-イル)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン(9.00g,21.4mmol)、5,5-ジメチル-2-[4-(1-アダマンチル)フェニル]-1,3,2-ジオキサボリナン(7.7g,23.6mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(49.5mg,0.429mmol)をテトラヒドロフラン(214mL)に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-リン酸カリウム水溶液(32.2mL)を加えた後、23時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、トルエンによる再結晶によって精製することで、目的の2-(4-アダマンチルフェニル)-4,6-ビス(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D7)を得た(9.8g、収率77%)。
HNMR(CDCl)δ1.85(brs,6H),2.04(brs,6H),2.18(brs,3H),7.44(t,J=7.5Hz,2H),7.54(t,J=7.8Hz,4H),7.62(d,J=8.7Hz,2H),7.75(d,J=7.3Hz,4H),7.85(d,J=8.6Hz,4H),8.76(d,J=8.6Hz,2H),8.89(d,J=8.5Hz,4H).
【0168】
化合物D7のTgは131℃、Tcは検出されなかった。
【0169】
≪合成例13(ETL1)≫
ETL1を、特開2015-34159号記載の実施例8に記載の方法で合成した。得られた化合物のTgは102℃、Tcは176℃であった。
【0170】
【化49】
【0171】
≪合成例-14≫
ETL2を特開2007-314503号記載の実施例22に記載の方法で合成した。得られた化合物のTgは124℃、Tcは174℃であった。
【0172】
【化50】
【0173】
以上の結果より、化合物D9、D8、D81、D87、及びD7は、ETL1およびETL2よりも高いTgを有することが確認された。更に、これらの化合物では結晶化ピークが検出されないことから、蒸着成膜時に高いアモルファス性を有する膜構造の形成が期待でき、これによって本発明の一つの実施態様である有機電界発光素子の高効率化や長寿命化が発現されたと推測される。
【0174】
<有機電界発光素子実施例>
有機電界発光素子を作製し、性能の評価を行った。使用素材は、昇華精製し使用した。
【0175】
<素子実施例-1>
【0176】
下記のとおりにして、化合物D158を含む有機電界発光素子100を作製した(図2参照)。
【0177】
(基板1、陽極2の用意)
陽極2をその表面に備えた基板1として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0178】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
【0179】
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。なお、各有機材料は抵抗加熱方式により成膜した。
【0180】
(正孔注入層3の作製)
N-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンと1,2,3-トリス[(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチレン]シクロプロパンとを99:1(質量比)の割合で10nm成膜し、正孔注入層3を作製した。成膜速度は0.1nm/秒の速度であった。
【0181】
(第一正孔輸送層41の作製)
N-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンを0.2nm/秒の速度で85nm成膜し、第一正孔輸送層41を作製した。
【0182】
(第二正孔輸送層42の作製)
N-フェニル-N-(9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル)-N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミンを0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第二正孔輸送層42を作製した。
【0183】
(発光層5の作製)
3-(10-フェニル-9-アントリル)-ジベンゾフランと2,7-ビス[N,N-ジ-(4-tertブチルフェニル)]アミノ-ビスベンゾフラノ-9,9’-スピロフルオレンとを95:5(質量比)の割合で20nm成膜し、発光層5を作製した。成膜速度は0.1nm/秒であった。
【0184】
(正孔阻止層9の作製)
2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)[1,1’-ビフェニル]-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを0.05nm/秒の速度で6nm成膜し、正孔阻止層9を作製した。
【0185】
(電子輸送層6の作製)
合成実施例-4で合成した2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)および8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム(以下、Liq)を50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、電子輸送層6を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
【0186】
(電子注入層7の作製)
Ybを0.02nm/秒の速度で1nm成膜し、電子注入層7を作製した。
【0187】
(陰極8の作製)
最後に、基板1上のITOストライプ(陽極2)と直交するようにメタルマスクを配し、陰極8を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0188】
以上により、図2に示すような発光面積4mmの有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
【0189】
さらに、この素子を酸素及び水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0190】
<素子実施例-2>
素子実施例-1において、電子輸送層6に2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成実施例-5で合成した2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-{4-(1-ナフチル)フェニル}-1,3,5-トリアジン(化合物D9)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0191】
<素子実施例-3>
素子実施例-1において、電子輸送層6に2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成実施例-7で合成した2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-{4-(2-ナフチル)フェニル}-1,3,5-トリアジン(化合物D8)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0192】
<素子実施例-4>
素子実施例-1において、電子輸送層6に2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成実施例-8で合成した2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-ビフェニリル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(化合物D81)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0193】
<素子実施例-5>
素子実施例-1において、電子輸送層6に2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成実施例-9で合成した2-(4-アダマンチルフェニル)-4-(4-ビフェニリル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(化合物D1)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0194】
<素子実施例-6>
素子実施例-1において、電子輸送層6に2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成実施例-10で合成した2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D87)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0195】
<素子実施例-7>
素子実施例-1において、電子輸送層6に2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成実施例-12で合成した2-(4-アダマンチルフェニル)-4,6-ビス(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D7)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0196】
<素子実施例-8>
素子実施例-1において、電子輸送層6に2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成実施例-11で合成した2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(4-ビフェニリル)ピリミジン(化合物D175)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0197】
<素子比較例-1>
素子実施例-1において、電子輸送層6に、2-(4’-アダマンチルビフェニル-4-イル)-4-(4-アダマンチルフェニル)-6-(4-ビフェニリル)-1,3,5-トリアジン(化合物D158)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、合成例-14で合成したETL-2及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0198】
<有機EL素子の評価>
作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、TOPCON社製のLUMINANCE METER(BM-9)の輝度計を用いて発光特性を評価した。
【0199】
発光特性として、電流密度10mA/cmを流したときの電圧(V)、電力効率(lm/A)を測定し、連続点灯時の素子寿命を測定した。当該素子寿命は初期輝度を1000cd/mで駆動したときの連続点灯時の輝度減衰時間を測定し、輝度(cd/m)が5%減じるまでに要した時間を測定した。なお、電圧、電力効率及び寿命の値は、素子比較例1の値を100としたときの相対値で表した。結果を表1に示す。測定は23℃50%RHの雰囲気下で行った。電圧は値が小さいほど優れ、効率および寿命は値が大きいほど、それぞれ優れていることを表す。
【0200】
【表1】
【0201】
表1より、素子比較例1に比べて、本発明の実施態様に係るアダマンタン化合物(1)を用いた素子実施例1~8に係る有機電界発光素子は、電圧、電流効率および素子寿命において、これらの特性が向上していることがわかる。
【0202】
<EOD評価>
有機電界発光素子の性能を向上させるうえで、電子移動度は、重要な因子となる。例えば、電子輸送層における電子移動度が高いほど、より多くの電子を発光層に注入することができ、素子の高効率化や低電圧化に寄与しうる。そこで、上記化合物の移動度(電子移動度)を調べるために、EOD(Electron Only Device、電子オンリー素子)を製造し、評価を行った。
【0203】
具体的には、上記化合物を用いて、EOD(素子実施例11~18及び素子比較例11)をそれぞれ製造した。また、上記合成例13に係る化合物ETL1を用いたEODも製造した(素子実施例19)。
【0204】
製造したEODそれぞれについて、特定の電流における電圧(V)を計測した。この電圧(EOD電圧)が小さい程、化合物の電子移動度が高いことを示す。なお、電圧の値は、素子実施例19の値を100としたときの相対値で表した。
【0205】
より詳細な製造・評価手順を下記に示す。
【0206】
下記の表2に示す化合物(対象化合物)をそれぞれ用いて、下記の素子構成を有するEODを、ITO基板上にAgから順に各層を蒸着することによって、製造した:
ITO/Ag(厚み:10nm)/Liq(厚み:1nm)/対象化合物:Liq=50:50(厚み:70nm)/Yb(厚み:1nm)/AgMg(80nm)
このEODでは、ITO上に蒸着されたAg/Liqによって、正孔の流れがブロックされるようになっている。
【0207】
製造したそれぞれのEODに関して、電流密度10mA/cmを流したときの電圧(EOD電圧)を計測した。結果を、下記の表2に示す。
【0208】
【表2】
【0209】
表2で見られるとおり、素子実施例11~18は、いずれも、素子実施例19と比較して、低いEOD電圧を示した。この結果は、素子実施例11~18に係る化合物が、素子実施例19に係る化合物よりも高い電子移動度を有することを示す。素子実施例11~18に係る化合物は、Z、Z、およびZを有する芳香環(特にはトリアジンまたはピリミジンなどの複素芳香環)に結合しているベンゼン環に対してパラ位で結合した芳香族炭化水素環を有している。理論によって限定する意図はないが、このような構造によって、化合物のLUMOが広範囲に広がり、このような構造を有していない素子実施例19の化合物と比較して、高い電子移動度を示したと考えられる。
【0210】
このことは、素子実施例19と素子比較例11との比較からも確認される。すなわち、素子比較例11の化合物(ETL2)も、Z、Z、およびZを有する芳香環に結合しているベンゼン環に対してパラ位で結合した芳香族炭化水素環(ベンゼン環)を有しており、比較的高い電子移動度を示した。
【0211】
表2の結果によれば、化合物ETL2は、実施例に係る化合物と比較しても、高い電子移動度を有する。しかしながら、表1の結果によれば、この化合物ETL2を用いて作製した有機電界発光素子は、実施例に係る化合物の場合よりも劣った性能を示した。この理由としては、パラ位で共役した芳香族炭化水素環を有する構造は、高い電子移動度をもたらす一方で、深いLUMOエネルギー準位を生じ、素子中で隣接層界面での抵抗の増加を引き起こしうることが挙げられる。理論によって限定する意図はないが、化合物ETL2を用いて製造した有機電界発光素子では、この抵抗の増加の影響が大きく、十分な有機電界発光素子の性能を得ることができないと考えられる。
【0212】
これに対して、表1の素子実施例1~8に係る本開示の化合物は、化合物ETL2とは異なり、末端部にアダマンチル基を有しており、これによって、深いLUMOエネルギー準位に起因する上記の不利な点が回避又は補償されていると考えられる。理論によって限定する意図はないが、素子実施例1~8に係る化合物では、立体的にかさ高いアダマンチル基が、素子中の隣接層界面での励起子の失活を抑制している可能性がある。より具体的には、例えば、発光層と電子輸送層との間の相互作用によってエキサイプレックス等の中間体が生成されると、励起子のエネルギーが失活し、発光効率低下の原因となり得るが、かさ高いアダマンチル基は、このようなエキサイプレックスの形成を抑制するうえで、有利に働くと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明の実施態様に係るアダマンタン化合物(1)は、高アモルファス性であって耐熱性に優れた新規なアダマンタン化合物であることが判る。そのため昇華精製時の熱安定性が良いために昇華精製の操作性に優れ、不純物の少ない材料を提供することができる
【0214】
また、本発明の別の実施態様に係るアダマンタン化合物(1)は、低駆動電圧に優れる有機電界発光素子用電子輸送材料として利用される。さらに、本発明によれば、消費電力に優れる有機電界発光素子を提供することができる。
【0215】
さらに、本発明の別の実施態様に係るアダマンタン化合物(1)は、蒸着膜の安定性に優れるために長寿命な有機電界発光素子を提供することができる。
【0216】
そして本発明の別の実施態様に係るアダマンタン化合物(1)から成る薄膜は、電子輸送能、正孔ブロック能、酸化還元耐性、耐水性、耐酸素性、電子注入特性等に優れるため、有機電界発光素子の材料として有用であり、とりわけ電子輸送材、正孔ブロック材、発光ホスト材等として有用である。また本発明の実施態様に係るアダマンタン化合物(1)はワイドバンドギャップ化合物なため、蛍光素子用途のみならず、燐光素子へ好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0217】
1. ガラス基板
2. 陽極
3. 正孔注入層
4. 正孔輸送層
41. 第一正孔輸送層
42. 第二正孔輸送層
5. 発光層
9. 正孔阻止層
6. 電子輸送層
7. 電子注入層
8. 陰極
100. 有機電界発光素子
図1
図2