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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107457
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】投影装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20230727BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008661
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 桃太朗
(72)【発明者】
【氏名】須藤 和久
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA22
2K203FA62
2K203GC19
2K203KA07
2K203KA10
2K203KA46
2K203KA60
2K203KA73
2K203KA76
2K203KA78
2K203MA19
(57)【要約】
【課題】投影する映像に悪影響が出ないようにしつつ、投影装置内部の光学部品を保護する。
【解決手段】投影装置1は、画像を形成する光学エンジン3と、筐体2の内部において光学エンジン3の下方に配置される衝撃吸収材4と、筐体2の内部に固設される固定部5と、光学エンジン3に設けられ、固定部5と連結され、所定以上の力Fが加わると固定部5から切り離される被固定部としての固定板6と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する光学エンジンと、
筐体の内部において前記光学エンジンの下方に配置される衝撃吸収材と、
前記筐体の内部に固設される固定部と、
前記光学エンジンに設けられ、前記固定部と連結され、所定以上の力が加わると前記固定部から切り離される被固定部と、
を備える投影装置。
【請求項2】
前記被固定部は、前記光学エンジンを載置する板材である、
請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記固定部及び前記被固定部の一方が永久磁石であり、他方が磁性体であり、
前記永久磁石は、前記光学エンジンにかかる重力と釣り合う磁力をもつ、
請求項1または2に記載の投影装置。
【請求項4】
前記固定部と前記被固定部との脱着を制御する制御部を備え、
前記制御部は、当該投影装置の電源がオン状態のとき前記固定部と前記被固定部とを連結させ、当該投影装置に所定以上の力が加わったとき前記固定部と前記被固定部との連結を解除する、
請求項1または2に記載の投影装置。
【請求項5】
当該投影装置の加速度を検知する加速度センサを備え、
前記制御部は、前記加速度センサが所定以上の加速度を検知したとき、当該投影装置に所定以上の力が加わったと判断して、前記固定部と前記被固定部との連結を解除する、
請求項4に記載の投影装置。
【請求項6】
前記固定部及び前記被固定部の一方が電磁石であり、他方が磁性体であり、
前記制御部は、当該投影装置の電源がオン状態のとき前記電磁石を作動させて前記固定部と前記被固定部とを連結させ、当該投影装置に所定以上の力が加わったとき前記電磁石を非作動に切り替えて、前記固定部と前記被固定部との連結を解除する、
請求項4または5に記載の投影装置。
【請求項7】
前記固定部が前記被固定部に対して上方に配置され、
前記被固定部および前記光学エンジンが前記固定部に吊り下げられる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは内部に光学部品を備えており、一般的に衝撃に弱い精密機器である。
【0003】
特許文献1には、プロジェクタと同様に内部に光学部品を備えるデジタルカメラにおいて、内部の光学部品を保護するために衝撃吸収材で囲う構成について記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今までの衝撃吸収材を用いた光学部品の保護技術をプロジェクタに転用しようとすると、光学部品の自重で衝撃吸収材が圧縮し、光学部品の位置が定まらず、使用中に投影映像がずれてしまう虞がある。このため、光学部品の安定性が投影映像の安定に繋がるプロジェクタ(投影装置)には転用するのは困難である。
【0005】
本発明は、投影する映像に悪影響が出ないようにしつつ、投影装置内部の光学部品を保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る投影装置は、画像を形成する光学エンジンと、筐体の内部において前記光学エンジンの下方に配置される衝撃吸収材と、前記筐体の内部に固設される固定部と、前記光学エンジンに設けられ、前記固定部と連結され、所定以上の力が加わると前記固定部から切り離される被固定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
投影する映像に悪影響が出ないようにしつつ、投影装置内部の光学部品を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る投影装置の内部の概略構成を示す断面図
図2】投影装置に衝撃が付加されたときの筐体の内部の動作を説明する模式図
図3】第1実施形態の変形例を示す図
図4】第2実施形態に係る投影装置の内部の概略構成を示す断面図
図5】第2実施形態における固定部による固定板の脱着制御のフローチャート
図6図5に示す脱着制御の各過程における筐体の内部の状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1図3を参照して第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る投影装置1の内部の概略構成を示す断面図である。なお、図1を含む本明細書で示す断面図では、図中の上下方向が投影装置1の設置時の鉛直方向に対応し、図中の左右方向が投影装置1の設置時の水平方向に対応する。
【0011】
投影装置1は、ディスプレイ装置の一種であり、画像や映像を大型スクリーンなどに投影することにより表示する装置である。投影装置1には色々な種類があるが、現在では、DLPや液晶を使い、画像を拡大して投影する装置のことを指すのが一般的である。投影装置1は、プロジェクタとも呼ばれる。
【0012】
図1に示すように、投影装置1は、例えば樹脂製の筐体2の内部に、画像を形成する光学エンジン3を備える。光学エンジン3は、光を射出する光源も含む。
【0013】
第1実施形態の投影装置1は、さらに、筐体2の内部に衝撃吸収材4と、固定部5と、固定板6(被固定部)とを備える。
【0014】
衝撃吸収材4は、光学エンジン3の下方に配置される。図1の例では、衝撃吸収材4は、筐体2の内壁のうち底面2Cの上に載置されている。
【0015】
固定部5は、筐体2の内部に固設される。図1の例では、固定部5は、筐体2の内壁のうち対向する一対の側面2A、2Bから中心側に突出して形成される一対の要素5A、5Bを含む。以下の説明では一対の固定部5A、5Bを纏めて固定部5とも表記する場合がある。
【0016】
固定板6は、光学エンジン3に設けられる。より詳細には、固定板6は、光学エンジン3を載置する板材であり、光学エンジン3は固定板6の上面に固定される。固定板6は、固定部5と連結され、所定以上の力F(図2参照)が加わると固定部5から切り離される被固定部として機能する。
【0017】
図1の例では、一対の固定部5A、5Bは永久磁石であり、固定板6は磁性体の一例としての金属板である。固定部5の永久磁石は、少なくとも光学エンジン3及び固定板6にかかる重力と釣り合う磁力をもつのが好ましい。なお、固定板6は、少なくとも固定部5A、5Bと接触する両端部6A、6Bが磁性体であればよい。
【0018】
衝撃吸収材4の材質は、例えば低反発ウレタンや低弾性ゴムなどを適用できる。衝撃吸収材4の平面視の面積は、光学エンジン3が載置される固定板6と同等以上であり、衝撃吸収材4の平面視の外形は、固定板6の外形より大きく形成されるのが好ましい。また、衝撃吸収材4の上下方向の厚さは、固定板6と、固定板6に載置される光学エンジン3などの各部品を含む、衝撃付加時に衝撃吸収材4に落下する物体の合計重量や、これらの物体に加わる衝撃加速度などに応じて決定される。
【0019】
図1に加えて図2を参照して、第1実施形態の投影装置1の作用を説明する。図2は、投影装置1に衝撃が付加されたときの筐体2の内部の動作を説明する模式図である。一方、図1は、投影装置1に衝撃が付加される前の通常時における筐体2の内部の状態を示している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では、永久磁石である一対の固定部5A、5Bは、鉛直下方を法線方向とする下面5A1、5B1をそれぞれ有する。通常時には、磁性体である固定板6の水平方向の一対の端部6A、6Bが、永久磁石である一対の固定部5A、5Bの磁力によって、これらの下面5A1、5B1にそれぞれ吸着される。これにより、固定板6は一対の固定部5A、5Bに吊り下げられた状態となり、固定板6が固定部5と連結されている。このとき、固定板6は、少なくとも固定部5や筐体2との相対的な位置関係が一定であればよく、衝撃吸収材4とは接触状態でも非接触状態でもよい。
【0021】
図1に示す状態で投影装置1が起動され、光学エンジン3が作動して投影が行われると、投影中、光学エンジン3は固定板6及び固定部5を介して筐体2に固定された状態となる。このため、投影中には光学エンジン3と筐体2との相対的な位置関係を一定に保持することができるので、投影映像の位置ずれは生じない。
【0022】
一方、図2に示すように、例えば搬送中に投影装置1が地面に落下するなど、投影装置1に所定以上の外力Fが加わり、投影装置1が衝撃を受けた場合には、図2に点線円Aで示すように、外力Fの影響によって固定板6が固定部5から切り離される。これにより、図2に矢印Bで示すように、固定板6は光学エンジン3と共に下方に落下し、衝撃吸収材4と衝突する。このとき、衝撃吸収材4が圧縮することにより、光学エンジン3に加わる衝撃を軽減することができる。
【0023】
第1実施形態の投影装置1では、要するに、投影装置1の内部の光学エンジン3は、通常時には固定板6及び固定部5を通して外装の筐体2に固定されているが、所定の力Fが加わると、固定板6及び光学エンジン3が固定部5から切り離され、固定板6及び光学エンジン3に加わる衝撃は衝撃吸収材4で吸収されることによって、光学エンジン3が保護される。
【0024】
第1実施形態に係る投影装置1は、画像を形成する光学エンジン3と、筐体2の内部において光学エンジン3の下方に配置される衝撃吸収材4と、筐体2の内部に固設される固定部5と、光学エンジン3に設けられ、固定部5と連結され、所定以上の力Fが加わると固定部5から切り離される被固定部としての固定板6と、を備える。
【0025】
この構成により、投影装置1を使用中には、固定板6が固定部5に連結されるため、光学部品(光学エンジン3や光源など)の筐体2に対する相対的な位置を固定することが可能となるので、投影中に投影画像の投影位置を一定に保持することができ、投影画像の位置ずれを防止できる。さらに、投影装置1が落下など衝撃を受けた際には、固定板6が固定部5から分離されるため、固定板6及び光学エンジン3が受ける衝撃を衝撃吸収材4で吸収することが可能となり、光学部品を保護することができる。したがって、第1実施形態の投影装置1では、投影する映像に悪影響が出ないようにしつつ、投影装置1内部の光学部品を保護することができる。
【0026】
また、第1実施形態に係る投影装置1では、固定部5と連結される被固定部として、光学エンジン3を載置する板材である固定板6が用いられる。この構成により、光学エンジン3を固定板6に載置して固定することができるので、通常時に光学エンジン3の設置位置をより安定して保持することができる。
【0027】
また、第1実施形態に係る投影装置1では、固定部5が永久磁石であり、被固定部としての固定板6が磁性体の一例としての金属板である。固定部5の永久磁石は、光学エンジン3にかかる重力と釣り合う磁力をもつ。
【0028】
この構成により、所定以上の外力Fが付加されない通常時には固定部5と固定板6との連結部分には重力以上の力が付加されないので、固定部5と固定板6とが確実に固定され、一方、衝撃発生時には連結部分に重力以上の外力Fが付加されるため、固定部5と固定板6とが確実に離間される。したがって、通常時の光学エンジン3の位置を保持する機能と、衝撃発生時の光学エンジン3を保護する機能とを確実に切り分けて実施することができる。
【0029】
また、第1実施形態に係る投影装置1では、固定部5が固定板6に対して上方に配置され、固定板6および光学エンジン3が固定部5に吊り下げられる。この構成により、外力Fが付加されたときに、固定板6と固定部5との接触部分に余計な摩擦力などが発生しにくくなるので、固定板6が固定部5から外れやすくすることが可能となり、通常時と衝撃発生時の機能の切り分けをより確実にできる。
【0030】
図3は、第1実施形態の変形例を示す図である。上記実施形態では、固定部5が固定板6に対して上方に配置され、固定板6および光学エンジン3が固定部5に吊り下げられる構成を例示したが、固定部5と固定板6との連結構造はこれに限られない。例えば図3(A)に示す第1変形例に係る投影装置1Aのように、固定板6の一対の端部6A、6Bが、一対の固定部5A、5Bの下面5A1、5B1ではなく、筐体2の中心側に向く側面5A2、5B2に吸着される構成でもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、光学エンジン3が被固定部としての固定板6を介して固定部5と連結される構成を例示したが、固定板6以外の要素によって固定部5と連結される構成でもよい。例えば図3(B)に示す第2変形例に係る投影装置1Bのように、光学エンジン3の水平方向の両側の側面に水平方向に突出する磁性体要素からなる一対の被固定部16A、16Bを設け、これらの被固定部16A、16Bを介して固定部5A、5Bに吸着される構成でもよい。一対の被固定部16A、16Bは、光学エンジン3と一体的に形成される構成でもよく、光学エンジン3に連結される構成でもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、固定部5が永久磁石であり、被固定部としての固定板6が磁性体の一例としての金属板である構成を例示したが、これと反対に、固定部5が磁性であり、固定板6が永久磁石である構成としてもよい。
【0033】
また、固定部5と被固定部(固定板6)とは永久磁石と磁性体の組以外の構成としてもよい。例えば、固定部5と被固定部とが一体的に形成された部品であり、衝撃付加時に塑性変形することによって両者が分離する構成や、固定部5と被固定部との連結部が衝撃付加時に破断することで両者が分離する構成としてもよい。ただしこれらの構成の場合、一度衝撃が付加された後には、固定部5と被固定部(固定板6)とを分離前の状態の部品に交換する必要がある。
【0034】
[第2実施形態]
図4図6を参照して第2実施形態を説明する。図4は、第2実施形態に係る投影装置1Cの内部の概略構成を示す断面図である。
【0035】
図4に示す第2実施形態の投影装置1Cでは、第1実施形態の固定部5に対応する一対の固定部15A、15Bが電磁石である。このため、固定部15は、通電時には磁力を発生させて固定板6を吸着することができる。一方、固定部15は、非通電時は磁力を発生しないため、固定板6を吸着できない。
【0036】
図4に示すように、投影装置1Cは、制御部10と、電源11と、加速度センサ12とを備える。
【0037】
電源11は、投影装置1Cの各要素に電力を供給する。電源11は、筐体2の内部に設置される。
【0038】
加速度センサ12は、投影装置1Cの加速度を検知する。加速度センサ12は、例えば筐体2の内壁や外壁上、固定板6上、光学エンジン3の内部など、投影装置1Cの任意の箇所に設定される。
【0039】
制御部10は、固定部15と被固定部である固定板6との脱着を制御する。制御部10は、投影装置1Cの電源11がオン状態のとき、固定部15と固定板6とを連結させ、投影装置1Cに所定以上の力Fが加わったとき、固定部15と固定板6との連結を解除する。
【0040】
より詳細には、制御部10は、投影装置1Cの電源がオン状態のとき固定部15の電磁石を作動させて固定部15と固定板6とを連結させる。一方、投影装置1Cに所定以上の力Fが加わったとき、固定部15の電磁石を非作動に切り替えて、固定部15と固定板6との連結を解除する。また、制御部10は、例えば加速度センサ12が所定以上の加速度を検知したとき、投影装置1Cに所定以上の力Fが加わったと判断して、固定部15と固定板6との連結を解除することができる。
【0041】
制御部10は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。上述の制御部10の各機能は、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウエアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで各種ハードウエアを動作させると共に、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0042】
なお、制御部10は、投影装置1Cの全体の動作を制御するコントローラの一部として構成されてもよい。また、図4では、図示の都合上、制御部10、電源11、加速度センサ12が筐体2の外部に配置されるように図示されているが、実際にはこれらの要素は筐体2の内部に設置される。
【0043】
図5図6を参照して、第2実施形態の投影装置1Cの作用を説明する。図5は、第2実施形態における固定部15による固定板6の脱着制御のフローチャートである。図5に示すフローチャートの各処理は制御部10により実施される。図6は、図5に示す脱着制御の各過程における筐体2の内部の状態を示す模式図である。
【0044】
図5のフローチャートの初期状態、すなわち投影装置1Cの電源11がオフ状態のとき、制御部10のスイッチもオフ状態となっている。この状態では、図6(A)に示すように、固定部15の電磁石には通電されていないので、被固定部である固定板6は固定部15から離間して、衝撃吸収材4の上に載置されている。
【0045】
次に、電源11がオン状態になると(ステップS1)、制御部10も起動して制御部10のスイッチもオン状態になる(ステップS2)。これにより、固定部15の電磁石への通電が開始されて電磁石による磁力が発生する。このとき、図6(B)に矢印Cで示すように、磁性体である固定板6の水平方向の一対の端部6A、6Bが、電磁石である一対の固定部15A、15Bの磁力によって、これらの下面15A1、15B1にそれぞれ吸着される。この結果、図6(B)に示すように、固定板6は一対の固定部5A、5Bに吊り下げられた状態となり、固定板6が固定部15と連結される。
【0046】
次に、投影装置1Cの内部に搭載された加速度センサ12が所定以上の加速度を検知した際(ステップS3)、制御部10にその旨の情報が入力される。制御部10は、この情報入力に応じて、投影装置1Cに所定以上の力Fが加わり、衝撃が発生したと判断して、制御部10のスイッチがオフ状態に切り替わる(ステップS4)。これにより、図6(C)に示すように、固定部15の電磁石への通電が停止されて電磁石による磁力が消失し、固定部15と固定板6との連結が解除され、点線円Dで示すように固定板6が固定部15から切り離される。このため、図6(C)に矢印Eで示すように、固定板6は光学エンジン3と共に下方に落下し、衝撃吸収材4と衝突する。このとき、衝撃吸収材4が圧縮することにより、光学エンジン3に加わる衝撃を軽減することができる。
【0047】
このように、投影装置1Cの電源11がオン状態の場合、固定板6は固定部15に固定されているため投影映像の位置ずれは生じない。一方、電源11がオン状態で衝撃が加わると、制御部10によって固定部15と固定板6が切り離されるため、固定板6と衝撃吸収材4が衝突し、光学エンジン3などの固定板6上の載置される部品に伝わる衝撃は軽減される。
【0048】
また、ステップS2にて固定板6が固定部15と連結された後に、電源11がオフ状態になると(ステップS5)、制御部10も停止して制御部10のスイッチもオフ状態になる(ステップS6)。この場合も、ステップS3、S4の場合と同様に、図6(C)に示すように固定部15と固定板6との連結が解除され、固定板6は衝撃吸収材4の上に載置された状態となる。このため、投影装置1Cの電源11がオフ状態で衝撃が加わると、固定板6が衝撃吸収材4上にあるため、光学エンジン3に伝わる衝撃は軽減される。
【0049】
このように、第2実施形態に係る投影装置1Cは、固定部15と被固定部としての固定板6との脱着を制御する制御部10を備える。制御部10は、投影装置1Cの電源11がオン状態のとき固定部15と固定板6とを連結させ、投影装置1Cに所定以上の力Fが加わったとき固定部15と固定板6との連結を解除する。
【0050】
この構成により、投影装置1Cを使用中には、固定板6が固定部15に連結されるため、光学部品(光学エンジン3や光源など)の筐体2に対する相対的な位置を固定することが可能となるので、投影中に投影画像の投影位置を一定に保持することができ、投影画像の位置ずれを防止できる。さらに、投影装置1Cが落下など衝撃を受けた際には、固定板6が固定部15から分離されるため、固定板6及び光学エンジン3が受ける衝撃を衝撃吸収材4で吸収することが可能となり、光学部品を保護することができる。したがって、第2実施形態の投影装置1Cでは、投影する映像に悪影響が出ないようにしつつ、投影装置1C内部の光学部品を保護することができる。
【0051】
また、第2実施形態に係る投影装置1Cは、投影装置1Cの加速度を検知する加速度センサ12を備え、制御部10は、加速度センサ12が所定以上の加速度を検知したとき、投影装置1Cに所定以上の力Fが加わったと判断して、固定部15と固定板6との連結を解除する。この構成により、投影装置1Cが衝撃を受けたことを加速度情報に基づき簡易かつ精度良く検出することができる。
【0052】
また、第2実施形態に係る投影装置1Cでは、固定部15が電磁石であり、被固定部としての固定板6が磁性体の一例としての金属板である。制御部10は、投影装置1Cの電源11がオン状態のとき固定部15の電磁石を作動させて固定部15と固定板6とを連結させ、投影装置1Cに所定以上の力Fが加わったとき固定部15の電磁石を非作動に切り替えて、固定部15と固定板6との連結を解除する。この構成により、電磁石の作動、非作動の切り替えによって固定部15と固定板6との連結、分離を確実に行うことができるので、筐体2と固定板6との固定、切り離しの制御が容易になる。
【0053】
また、上記実施形態では、固定部15が電磁石であり、被固定部としての固定板6が磁性体の一例としての金属板である構成を例示したが、これと反対に、固定部15が磁性体であり、固定板6が電磁石である構成としてもよい。この場合、電磁石を制御する制御部10や加速度センサ12などの要素は、光学エンジン3などと共に固定板6の上に載置されるのが好ましい。これにより固定板6の落下時にも制御部10や加速度センサ12との相対位置を一定に維持でき、衝撃付加時に各要素を接続する配線が断線するなどの問題を回避できる。
【0054】
また、上記実施形態では、制御部10が、加速度センサ12が所定以上の加速度を検知したときに投影装置1Cに所定以上の力Fが加わったと判断する構成を例示したが、加速度センサ12が検知する加速度以外の情報に基づいて制御部10が衝撃発生を検知する構成としてもよい。例えば、振動センサが検知する振動が所定値を超えた場合や、衝撃検知センサが衝撃を検知した場合に、制御部10が衝撃発生を検知して、固定部15と固定板6との連結を解除する構成としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、固定部15が電磁石であり、電磁石の作動時に被固定部である固定板6を吸着して連結させ、電磁石の非作動時に固定板6との連結を解除する構成を例示したが、固定部15は、電磁石以外の要素によって固定板6との連結と解除を切り替える構成でもよい。例えば、固定部15が可動式の爪などの係止要素であってもよい。この場合、投影装置1Cの電源11がオン状態のときには固定部15の爪によって固定板6が係止されて固定部15と固定板6とが連結する。一方、衝撃発生時には固定部15が作動して爪が固定板6から外れて、固定部15と固定板6との連結が解除される。
【0056】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、1B、1C 投影装置
3 光学エンジン
4 衝撃吸収材
5、15 固定部
6 固定板(被固定部)
16A、16B 被固定部
10 制御部
11 電源
12 加速度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2011-128653号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6