(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107459
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ベルトユニット及び転写装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008664
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 大樹
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200FA12
2H200FA16
2H200JC04
2H200JC07
2H200JC09
2H200JC10
2H200JC12
2H200JC13
2H200JC15
2H200JC17
2H200JC19
2H200MA02
2H200MA20
2H200MC01
2H200MC06
2H200PA10
2H200PA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ベルト寄りを制御しているローラに軸方向への外力が作用しても、長期にわたり良好にベルト寄り制御を行うことが可能なベルトユニットの提供。
【解決手段】支持回転体に掛け渡された走行駆動されるベルト部材9と、第一支持回転体21の回転軸21aに設けられ、回転軸の軸方向にベルト部材の端部が移動した際に、端部に接触してベルト部材と共に軸方向に移動可能なベルト突き当て部材24と、当該部材の移動に伴い軸方向に移動可能であり第一支持回転体を変位させる支持回転体変位部材25と、支持回転体変位部材の移動方向を規制するガイド部材26cと、第一支持回転体及び回転軸を回転自在に支持する支持部材30と、第一支持回転体及び回転軸の軸方向への移動を規制する規制部材34と、軸方向において支持部材と規制部材との間に設けられ、支持部材と規制部材とが接触することを防止する弾性変形可能な中間部材39とを有するベルトユニット10。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持回転体に掛け渡され、前記複数の支持回転体の回転により走行駆動されるベルト部材と、
前記複数の支持回転体のうちの一つの回転体である第一支持回転体の回転軸に設けられ、該回転軸の軸方向に前記ベルト部材の端部が移動した際に、前記端部に接触して前記ベルト部材と共に前記軸方向に移動可能なベルト突き当て部材と、
前記回転軸に設けられ前記ベルト突き当て部材の移動に伴い前記軸方向に移動可能であり、前記第一支持回転体を変位させる斜面を備えた支持回転体変位部材と、
前記斜面と接触して前記支持回転体変位部材の移動方向を規制するガイド部材と、
前記第一支持回転体及び前記回転軸を回転自在に支持する支持部材と、
前記第一支持回転体及び前記回転軸の前記軸方向への移動を規制する規制部材と、
前記軸方向において前記支持部材と前記規制部材との間に設けられ、前記支持部材と前記規制部材とが接触することを防止する弾性変形可能な中間部材と
を有するベルトユニット。
【請求項2】
請求項1記載のベルトユニットにおいて、
前記中間部材は前記第一支持回転体及び前記回転軸の回転に従動して回転しない構成であることを特徴とするベルトユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載のベルトユニットにおいて、
前記中間部材は樹脂材料からなることを特徴とするベルトユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載のベルトユニットを備えたことを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れか一つに記載のベルトユニットを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4記載の転写装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の画像形成装置において、
前記ベルト部材はその表面に画像を担持する像担持体として用いられ、前記ベルトユニットに対向して転写ローラが配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトユニット及び転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のローラに掛け渡されて走行駆動されるベルトを備えたベルトユニットが知られている。このベルトユニットにおいて、ベルトが掛け渡された複数のローラの各平行度や外径偏差、ベルトの周長偏差等に起因して、走行駆動時にベルトが軸方向に移動するベルト寄りが生じる場合がある。このようなベルト寄りが生じた際に、ベルトが掛け渡された複数のローラのうちの一つのローラを他のローラに対して軸方向に傾斜させ、ベルト寄り状態でのベルト移動方向とは逆方向に向けて、ベルトに対して移動力を作用させる技術が知られている(例えば「特許文献1」、「特許文献2」、「特許文献3」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
「特許文献1」、「特許文献2」、「特許文献3」に記載された技術では、ベルト寄りを制御するために一つのローラを傾斜させているが、この傾斜させたローラ自体にも軸方向へと移動する方向の外力が作用する。このため、このローラの軸方向への移動を規制している規制部材とローラを回転自在に支持している支持部材とが互いに接触して摺動し、両者間で想定外の摩擦や摩耗が生じることによりローラの軸方向における位置決め精度が低下する虞がある。位置決め精度が低下するとローラ傾斜制御の精度が低下し、ベルト寄り制御が機能しなくなるという問題点がある。
本発明は、上述した問題点を解決し、ベルト寄りを制御しているローラに軸方向への外力が作用しても、長期にわたり良好にベルト寄り制御を行うことが可能なベルトユニット及び転写装置及び画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、複数の支持回転体に掛け渡され、前記複数の支持回転体の回転により走行駆動されるベルト部材と、前記複数の支持回転体のうちの一つの回転体である第一支持回転体の回転軸に設けられ、該回転軸の軸方向に前記ベルト部材の端部が移動した際に、前記端部に接触して前記ベルト部材と共に前記軸方向に移動可能なベルト突き当て部材と、前記回転軸に設けられ前記ベルト突き当て部材の移動に伴い前記軸方向に移動可能であり、前記第一支持回転体を変位させる斜面を備えた支持回転体変位部材と、前記斜面と接触して前記支持回転体変位部材の移動方向を規制するガイド部材と、前記第一支持回転体及び前記回転軸を回転自在に支持する支持部材と、前記第一支持回転体及び前記回転軸の前記軸方向への移動を規制する規制部材と、前記軸方向において前記支持部材と前記規制部材との間に設けられ、前記支持部材と前記規制部材とが接触することを防止する弾性変形可能な中間部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、支持部材と規制部材との間に弾性変形可能な中間部材が設けられていることにより、支持部材と規制部材との間での移動量の差が中間部材の弾性変形によって吸収される。これにより、支持部材と規制部材とが直接摺動することによる各部材間での想定外の摩擦や摩耗が防止され、第一支持回転体及び回転軸の軸方向における位置決め精度の低下が防止される。この結果、ベルト寄りを制御している第一支持回転体に軸方向への外力が作用しても、長期にわたり良好にベルト寄り制御を行うことが可能なベルトユニット、これを用いた転写装置及び画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置の概略正面図である。
【
図2】従来のベルト寄り規制手段を説明する概略図である。
【
図3】
図2を断面線A-Aから見た概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るベルト寄り規制手段を説明する概略図である。
【
図5】
図4を断面線D-Dから見た概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラー複写機を示している。カラー複写機1の装置本体2の中央部には、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色トナー像を形成するためのプロセスカートリッジ3Y,3C,3M,3Kが配置されている。各プロセスカートリッジ3には、それぞれ対応する感光体ドラム4Y,4C,4M,4Kが設けられている。
図1において、時計回り方向に回転する各感光体ドラム4の周囲には、それぞれ帯電装置5Y,5C,5M,5K、現像装置6Y,6C,6M,6K、感光体クリーニング装置7Y,7C,7M,7Kが配置されている。各プロセスカートリッジ3の下方には、各感光体ドラム4にレーザ光を照射する光学ユニット8が配置されている。
【0008】
各プロセスカートリッジ3の上方には、各プロセスカートリッジ3によって形成されたトナー像が転写される、ベルト部材である中間転写ベルト9を有するベルトユニットとしての中間転写ユニット10が設けられている。中間転写ユニット10は、中間転写ベルト9を支持する複数の支持回転体である複数のローラを有しており、中間転写ベルト9は二次転写対向ローラ20、テンションローラ21、入口ローラ22に掛け渡されている。各ローラ20,21,22のうち、二次転写対向ローラ20が図示しない駆動モータによって回転駆動されることにより、中間転写ベルト9が
図1において反時計回り方向に走行駆動される。
中間転写ベルト9は単層構造でも多層構造でもよく、単層構造の場合にはポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド等により形成されることが好ましい。多層構造の場合には、ベース層を伸びの少ないフッ素樹脂やポリフッ化ビニリデンシートやポリイミド系樹脂によって構成し、表面をフッ素系樹脂等の平滑性が良好なコート層で覆う構成が好ましい。
【0009】
中間転写ベルト9の内周側であって各感光体ドラム4と対向する位置には、各感光体ドラム4上に形成されたトナー像を中間転写ベルト9上に一次転写させる一次転写ローラ11Y,11C,11M,11Kが設けられている。ここで、各感光体ドラム4への各色トナー像形成と、中間転写ベルト9へのトナー像の一次転写について説明する。
各感光体ドラム4は
図1においてそれぞれ時計回り方向に回転駆動され、各表面に除電装置からの除電光が照射されて各感光体ドラム4の表面電位が初期化される。初期化された各感光体ドラム4の表面電位は、各帯電装置5によって一様に所定の極性(本実施形態ではマイナス極性)に帯電される。帯電された各感光体ドラム4の表面に光学ユニット8から射出されたレーザビームがそれぞれ照射され、各感光体ドラム4の表面に各色画像に対応した静電潜像がそれぞれ形成される。
【0010】
各感光体ドラム4上に形成された静電潜像は、各現像装置6によってトナー像として可視像化される。一方、各一次転写ローラ11には、各感光体ドラム4上に形成されたトナー像とは逆極性(本実施形態ではプラス極性)の転写電圧が印加される。これにより、各感光体ドラム4とこれに対応する各一次転写ローラ11との間に転写電界が形成され、各感光体ドラム4上の各色トナー像が中間転写ベルト9上に静電的に転写される。このとき、各色トナー像が中間転写ベルト9上に重畳転写されて中間転写ベルト9上にフルカラートナー像が形成され、中間転写ベルト9は表面に画像を担持する像担持体として機能する。各色トナー像を中間転写ベルト9上に転写した各感光体ドラム4は、その表面に付着した転写残トナーを各感光体クリーニング装置7によって除去され、新たな画像形成に備えられる。
【0011】
一次転写ローラ11Kよりも中間転写ベルト9の走行方向下流側には、中間転写ベルト9上に一次転写されたトナー像を転写シートSに二次転写させる二次転写ローラ12が設けられている。二次転写対向ローラ20と二次転写ローラ12とは、中間転写ベルト9を介して接触して二次転写ニップを形成する。二次転写ローラ12には所定の転写電圧が印加され、これにより中間転写ベルト9上に形成されたトナー像が転写シートSに二次転写される。また、一次転写ローラ11Yよりも中間転写ベルト9の走行方向上流側には、画像転写後において中間転写ベルト9上に残留した残留トナーを除去するベルトクリーニング装置13が設けられている。上述した中間転写ユニット10、各一次転写ローラ11、二次転写ローラ12、ベルトクリーニング装置13によって、転写装置40が構成されている。
二次転写ローラ12の上方には、転写シートS上に二次転写されたトナー像を定着させる、加熱ローラと加圧ローラとを有する定着装置14が配置されている。
【0012】
装置本体2の下部には、給紙部15が配置されている。給紙部15は、給紙カセット16、給紙ローラ17、レジストローラ対18を有しており、給紙カセット16内に収容された転写シートSを給紙ローラ17によってレジストローラ対18に向けて給送する。レジストローラ対18は、中間転写ベルト9上に形成されたトナー像が転写シートSの所定位置に合致する所定のタイミングで、転写シートSを二次転写ローラ12と中間転写ベルト9とが接触する二次転写ニップ部に向けて給送する。
装置本体2の上部には、各現像装置6へ供給するためそれぞれ対応する色のトナーを収容したトナーボトル19Y,19C,19M,19Kが配置されている。
【0013】
中間転写ベルト9上にフルカラートナー像が形成されるとき、給紙部15では給紙カセット16内の転写シートSが給紙ローラ17の作動によって一枚分離給送される。給送された転写シートSは、レジストローラ対18の作動により所定のタイミングで二次転写ニップに送られる。二次転写ニップにおいて中間転写ベルト9上に形成されたフルカラートナー像が転写された転写シートSは、定着装置14に送られて転写された画像を定着された後、定着装置14のシート搬送方向下流側に配置された排出ローラ対27によって装置本体2の上部に形成された排紙トレイ28上に排出される。各感光体ドラム4と同様に、中間転写ベルト9上に残存した転写残トナーはベルトクリーニング装置13によってクリーニングされる。各トナーボトル19内に収容されている各色トナーは、必要に応じて図示しないトナー搬送経路を介して対応する現像装置6に所定量補給される。
【0014】
カラー複写機1を含む従来の画像形成装置では、潜像担持体、中間転写体、被記録媒体搬送部材、定着部材等として、中間転写ベルト9と同様の無端ベルトが用いられている。このような無端ベルトは、少なくとも2本のローラに掛け渡された状態で走行するように構成されているが、ベルト材質、関係部品精度、部品経年劣化等の影響によりベルトが走行方向とは直交する方向に寄ってしまう、いわゆるベルト寄りが発生するという問題点があった。ベルト寄りが発生すると、被記録媒体に対する転写画像の位置ずれ、ベルトが支持回転体から外れることによるベルト破損等の不具合が生じるため、ベルト寄りを解消する必要があった。
そこで従来の画像形成装置には、ベルト寄りが発生した際にこれを解消させるベルト寄り規制手段が設けられている。以下に、従来のベルト寄り規制手段の構成について説明する。
【0015】
図2はベルトクリーニング装置13を取り外した状態の中間転写ユニット10に設けられたベルト寄り規制手段23の概略図を、
図3は
図2に示したA-A断面におけるベルト寄り規制手段23の右側端部を拡大した概略断面図をそれぞれ示している。本実施形態で用いられるベルト寄り規制手段23は、例えば上述した「特許文献1」(特開2017-58651号公報)に開示されたベルト位置補正機構50と同様に構成されている。すなわちベルト寄り規制手段23は、中間転写ベルト9を支持する一つの支持ローラであるテンションローラ21の回転軸を傾斜させることで、中間転写ベルト9のベルト寄り範囲を所定の範囲内に規制する軸傾斜機構によって構成されている。
【0016】
図3に示すように、テンションローラ21はその端部に、自身の回転中心21bと同軸の回転軸としてのテンションローラ軸21aを一体的に有している。テンションローラ軸21aはテンションローラ12よりも短径の円柱形状を呈しており、テンションローラ21に接合されている。ベルト寄り規制手段23は、テンションローラ軸21aに沿って装置内側方向から順に、ベルト突き当て部材24、支持回転体変位部材としての軸傾斜部材25、フレーム26、ローラ軸支持部材29を有している。
【0017】
テンションローラ軸21aは上述した各部材24,25,26,29を貫通しており、テンションローラ軸21aの両端部はそれぞれ支持部材としての軸受部材30を介してローラ軸支持部材29に支持されている。ベルト突き当て部材24及び軸傾斜部材25は、テンションローラ軸21aに対してその軸方向には移動可能に構成され、軸方向と直交する方向、すなわち
図3においてテンションローラ軸21aの軸端部が上下に移動する方向にはテンションローラ軸21aと共に変位するように構成されている。
【0018】
板材からなるフレーム26は、テンションローラ軸21a、ベルト突き当て部材24、軸傾斜部材25が一体的に変位しても移動しないように、装置本体2に固定されている。フレーム26は、その上面に装置外側方向に向けて突出形成されたスプリング固定部26aが設けられており、その下部には装置外側方向に向けて突出した支持部材回転軸31が設けられている。
フレーム26には、テンションローラ軸21a及び後述する傾斜部回転防止部材37が貫通する開口部26bが設けられている。テンションローラ軸21a及び傾斜部回転防止部材37は、後述するテンションスプリング33の付勢力及びこれに抗する力と、付勢スプリング32の付勢力及びこれに抗する力とによって、回転中心21bに直行する方向に変位する。開口部26bは、このような変位が生じてもテンションローラ軸21a及び傾斜部回転防止部材37とフレーム26とが干渉しないように形成されている。
【0019】
支持部材回転軸31は、フレーム26に対してローラ軸支持部材29を
図2に示す矢印B方向に向けて回動自在に支持している。スプリング固定部26aには、ローラ軸支持部材29に付勢力を作用させる引張コイルバネからなる付勢スプリング32の一端が固定されている。付勢スプリング32の他端は、ローラ軸支持部材29に一体的に設けられたスプリング固定部29aに固定されている。
【0020】
テンションローラ軸21aの両端に配置された二つのローラ軸支持部材29は、それぞれ各フレーム26に固定された支持部材回転軸31によってそれぞれ回動自在に支持され、それぞれ付勢スプリング32によって支持部材回転軸31を中心に、
図2において時計回り方向に付勢されている。ローラ軸支持部材29が支持部材回転軸31を中心に回動することにより、軸受部材30を介してローラ軸支持部材29に支持されているテンションローラ軸21aの軸方向端部が
図2及び
図3において上下方向に変位する。
【0021】
二つのローラ軸支持部材29は、そのほぼ中央部に設けられた長方形状の穴部であるスライド長穴29bをそれぞれ有しており、各スライド長穴29bによって各軸受部材30を、
図2に矢印Cで示すテンションローラ軸21aの径方向にそれぞれ移動可能に支持している。スライド長穴29b内には、ローラ軸支持部材29の回動中心から外側に向かう付勢力を軸受部材30に付与する、圧縮コイルバネからなるテンションスプリング33が設けられている。この構成により、テンションローラ21はテンションスプリング33の付勢力により常時二次転写対向ローラ20から離れる向きの力を受け、中間転写ベルト9に対して所定の張力を付与することができる。
【0022】
図3に示すように、テンションローラ21と軸受部材30との間のテンションローラ軸21a上には、ベルト突き当て部材24及びその装置外側方向に配置された軸傾斜部材25がそれぞれ設けられている。ベルト突き当て部材24は、テンションローラ21よりも小さな外径の円筒部24aを有しており、円筒部24aの装置外側方向にテンションローラ21よりも大きな外径のフランジ部24bを備えている。中間転写ベルト9に装置外側方向への寄りが生じた場合には、フランジ部24bの内面に中間転写ベルト9の端部が接触するように構成されている。
【0023】
軸傾斜部材25は、その上部にテンションローラ軸21aに対して傾斜した斜面25aと、斜面25aの下部に連なるように設けられたストッパ面25bと、後述する押さえ部材ホルダ36を固定する、斜面25aの上部に設けられた位置決め部25cとを有している。斜面25aは、軸傾斜部材25をテンションローラ軸21aに組み付けたときに、回転中心21bを中心とした円錐形の周面の一部をなすように形成された曲面によって構成されている。ストッパ面25bは、回転中心21bを中心とした円柱形の周面の一部をなすように形成された曲面によって構成されている。
本実施形態において、回転中心21bに対する斜面25aの傾きは30°であるが、傾きはこれに限定されない。軸傾斜部材25は、後述する傾斜部回転防止部材37によってテンションローラ軸21aの周りを回転しないように構成されている。
【0024】
フランジ部24bの内面に中間転写ベルト9の端部が当接した後、当接した中間転写ベルト9の端部がさらに装置外側方向に向けて移動すると、この移動に伴いベルト突き当て部材24及び軸傾斜部材25がテンションローラ軸21a上を装置外側方向に向けて移動する。このとき、テンションローラ21及びテンションローラ軸21aが軸方向外側に向けて移動することを規制する規制部材34が、各軸受部材30の装置外側方向にそれぞれ設けられている。Eリングからなる規制部材34は、軸受部材30の外側に近接する態様で配置され、テンションローラ軸21aに対して軸方向に移動しないように、かつテンションローラ軸21aが回転自在となるように固定されている。
【0025】
フレーム26は、装置内側方向に向けて突出形成されたガイド部材として機能するガイド部26cを有しており、ガイド部26の下方角部には斜面25aに接触する曲面形状を呈する当接部26dが、下面にはストッパ面26eがそれぞれ形成されている。
図3に示すように、中間転写ベルト9の端部がフランジ部24bの内面に接触しない初期状態時において、当接部26dは斜面25aの下端に当接しており、さらにストッパ面26eがストッパ面25bに当接して軸傾斜部材25が位置決めされている。この構成により、ストッパ面25bが位置決め部として機能し、組み付け初期状態時でのテンションローラ21の回転中心21bに対する傾きを一定とすることができる。
【0026】
次に、ベルト寄り規制手段23の動作について説明する。
駆動ローラである二次転写対向ローラ20が回転駆動されると、中間転写ベルト9の走行移動に伴い従動ローラであるテンションローラ21が回転を開始する。このとき、中間転写ベルト9の端部あるいは端部近傍がベルト突き当て部材24の円筒部24aに接触している場合には、ベルト突き当て部材24も回転を開始する。
【0027】
上述の状態において、部材間の平行度等の影響により中間転写ベルト9の端部が装置外側方向に向けて移動するベルト寄りが発生すると、中間転写ベルト9の端部がフランジ部24bの内面に接触する。この後、中間転写ベルト9がさらに装置外側方向に移動すると、中間転写ベルト9の端部が接触しているベルト突き当て部材24が装置外側方向に向けて移動し、ベルト突き当て部材24の外側に配置された軸傾斜部材25がベルト突き当て部材24の移動に従動して装置外側方向に向けて移動する。
【0028】
図3に示すように、斜面25aには当接部26dが当接しており、テンションローラ軸21aの端部近傍は軸受部材30を介してローラ軸支持部材29に支持されている。また、ローラ軸支持部材29は付勢スプリング32によって支持部材回転軸31を中心に
図2において時計回り方向に回転する向きの付勢力を受けているため、テンションローラ軸21aは
図3において上方に向かう付勢力を受けている。
【0029】
フランジ部24bの内面に中間転写ベルト9の端部が当接していない状態では、付勢スプリング32の付勢力によって上方に移動しようとする軸傾斜部材25のストッパ面25bがストッパ面26eに突き当たる。このため、各ストッパ面25b,26eが当接する位置で斜面25aと当接部26dとの当接位置が規制され、当接部26dが斜面25aの下端部に当接した状態で各部材の位置関係が保持される。
【0030】
この状態から上述したように中間転写ベルト9が装置外側方向に向かう向きの移動力、すなわち
図3において右側へ移動する向きの移動力を受けると、中間転写ベルト9の端部がフランジ部24bの内面に接触する。この状態からさらに中間転写ベルト9が装置外側方向に向かう向きの移動力を受けると、ベルト突き当て部材24及び軸傾斜部材25がテンションローラ軸21aに沿って装置外側方向に向けて移動する。
【0031】
このとき、斜面25aに沿って当接部26dが相対的に移動し、これにより斜面25aと当接部26dとの当接位置が斜面25aにおける上方へ変位しようとする。その結果、中間転写ベルト9がベルト寄りによって移動する方向のテンションローラ軸21aの端部は、付勢スプリング32による上方へと向かう付勢力に抗して押し下げられる。
一方、ベルト寄りによって移動する方向とは逆側の中間転写ベルト9の端部はフランジ部24bの内面に接触していない。従って、中間転写ベルト9が移動する方向とは逆側のテンションローラ軸21aの端部は、
図3に示す状態と同様に、当接部26dが斜面25aの下端部に当接した状態で保持される。
【0032】
これにより、中間転写ベルト9が移動する方向のテンションローラ軸21aの端部は他端部側に対して押し下げられた状態となり、テンションローラ軸21aは
図3において下方側に傾斜した状態となる。
このように、テンションローラ軸21aが傾斜するに連れて中間転写ベルト9の装置外側方向への移動速度が次第に遅くなり、最終的には中間転写ベルト9が装置内側方向に向けて移動するようになる。その結果、中間転写ベルト9の端部の位置が徐々に戻され、中間転写ベルト9はベルト寄りが収束する位置で安定走行することができる。これは、中間転写ベルト9のベルト寄りが逆向きに生じる場合でも同様である。
なお、テンションローラ軸21aを傾けることにより中間転写ベルト9のベルト寄りを戻すことができる原理は、例えば上述した「特許文献1」(特開2017-58651号公報)に開示されている。
【0033】
ベルト寄り規制手段23は、テンションローラ21に巻き付いている中間転写ベルト9の端部近傍の位置において、中間転写ベルト9の外周面に対向する押さえ部材35を有している。回転中心21bの軸方向から見たときに、下方が開放された門型形状を呈する押さえ部材35は、押さえ部材ホルダ36を介して軸傾斜部材25に固定されている。また、軸傾斜部材25はテンションローラ軸21aの変位に連動して上下方向に変位する。このため、中間転写ベルト9のベルト寄りに伴いテンションローラ軸21aが上下動すると、軸傾斜部材25に固定された押さえ部材35も上下動する。これにより、テンションローラ軸21aと従動するテンションローラ21に掛け渡された中間転写ベルト9の端部表面を押さえ部材35によって常時押さえることができ、中間転写ベルト9の端部における変形を常時抑制可能に構成されている。
【0034】
押さえ部材35は、セル構造の発泡部材からなる発泡層35aを押さえ部材ホルダ36に取り付け、低摺動部材からなり中間転写ベルト9の外周面に接触する表面層35bを発泡層35aの下方に接合した構成である。発泡層35a及び表面層35bを構成する材質は、中間転写ベルト9の変形を抑制しつつ中間転写ベルト9の表面を傷つけないものであればどのようなものを用いてもよい。
また、押さえ部材35は、装置外側方向の端面がフランジ部24bの内面に接触するように構成されている。これにより、中間転写ベルト9の端面がフランジ部24bの内面に当接している状態では、中間転写ベルト9の端部を常時押さえ部材35によって押さえることができる。
【0035】
押さえ部材ホルダ36は、位置決め部25cが嵌合される嵌合穴36aと、軸傾斜部材25の底面に係合する二つの爪部36bとを有している。押さえ部材ホルダ36は、各爪部36bが
図3の紙面方向にそれぞれ移動するように開放された下方を拡開させ、位置決め部25cを嵌合穴36aに嵌合させた後に各爪部36bが軸傾斜部材25の底面に係合するように拡開させた下方を閉じることにより、軸傾斜部材25に対して離脱可能に装着される。
【0036】
上述したベルト寄り規制手段23では、中間転写ベルト9にベルト寄りが生じると、中間転写ベルト9の端部の移動に従動してベルト突き当て部材24及び軸傾斜部材25が装置外側方向に向けて移動する。このとき、斜面25aが当接部26dに沿うように軸傾斜部材25が移動することによりテンションローラ21が傾斜するが、押さえ部材35もこれに連動して傾斜する。これにより、テンションローラ21が傾斜してベルト寄りを防止する装置においても中間転写ベルト9の端部における変形及び破損を抑制できる。また、押さえ部材35を保持する押さえ部材ホルダ36を軸傾斜部材25に取り付けることにより、押さえ部材ホルダ36をテンションローラ軸21aに取り付ける部材を省略でき、省スペース化を図ることができる。
【0037】
次に、軸傾斜部材25がテンションローラ軸21aを中心に回転することを防止する傾斜部回転防止部材37について説明する。
傾斜部回転防止部材37は、軸傾斜部材25の側面と底面とに沿って軸傾斜部材25を覆う、軸方向から見たときに上方が開放された門型形状を呈しており、軸受部材30に一体化されている。このため、テンションローラ21及びテンションローラ軸21aが回転することにより軸傾斜部材25に回転方向の力が作用しても、軸傾斜部材25の回転が防止される。傾斜部回転防止部材37は、軸傾斜部材25の軸方向両端部に接触する部分は有しておらず、軸傾斜部材25がテンションローラ軸21a上を軸方向に移動することを妨げない形状を呈している。これにより、上述したような中間転写ベルト9のベルト寄りが発生した際には、軸傾斜部材25はテンションローラ軸21a周りを回転することなく軸方向に向けて移動可能である。
【0038】
傾斜部回転防止部材37は軸受部材30に接合されているため、
図2に矢印Cで示す軸受部材30のスライド方向にテンションローラ軸21aと共に移動する。また、傾斜部回転防止部材37が接合された軸受部材30はローラ軸支持部材29に支持されているため、ローラ軸支持部材29が
図2に矢印Bで示す方向に回動してテンションローラ軸21aが上下方向に変位すると、傾斜部回転防止部材37もテンションローラ軸21aと共に上下方向に変位する。
【0039】
ここで、上述したベルト寄り規制手段23の問題点について説明する。
ベルト寄り規制手段23において、中間転写ベルト9にベルト寄りが発生すると、中間転写ベルト9の端部の移動に伴いベルト突き当て部材24、軸傾斜部材25が装置外側方向に向けて移動する。この移動により斜面25aが装置外側方向に変位すると、これに接触した当接部26dを有するフレーム26によってテンションローラ21、テンションローラ軸21a、ベルト突き当て部材24及び軸傾斜部材25が下方へと変位される。この変位により中間転写ベルト9の端部の移動が制御され、中間転写ベルト9のベルト寄りが解消されて、各部材21,21a,24,25が上方へと変位される。
【0040】
上述の動作中、各部材21,21a,24,25がそれぞれ上下方向へと変位されるが、このときにテンションローラ軸21aの変位に伴い軸受部材30及び規制部材34も上下方向へと変位する。ここで、規制部材34はテンションローラ軸21aに対して軸方向へは移動しないが、軸受部材30はテンションローラ21aに対して軸方向へと移動する。このため、軸受部材30と規制部材34とが互いに接触して摺動し、軸受部材30と規制部材34との間で摩擦や摩耗が生じてテンションローラ21の軸方向における位置決め精度が低下する虞があるという問題点があった。
以下に、上述した問題点を解消する本発明の構成を説明する。
【0041】
図4は、ベルトクリーニング装置13を取り外した状態の中間転写ユニット10に設けられた、本発明の一実施形態を示すベルト寄り規制手段38の概略図を、
図5は、
図4に示したD-D断面におけるベルト寄り規制手段38の右側端部を拡大した概略断面図をそれぞれ示している。
図4及び
図5に示すように、本実施形態に用いられるベルト寄り規制手段38は、上述した従来のベルト寄り規制手段23と比較すると、軸受部材30と規制部材34との間に中間部材39を有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0042】
中間部材39は、その外形が規制部材34と同じ円形状を呈しており、規制部材34よりも一回り小さくなるように形成されている。また中間部材39には、テンションローラ軸21aが貫通する穴部が設けられており、この穴部は直径がテンションローラ軸21aよりも大きく形成されている。
中間部材39は、樹脂材料、ゴム等からなる弾性変形可能な弾性部材によって構成されており、軸受部材30の装置外側方向の面と規制部材34の装置内側方向の面との間に設けられている。中間部材39は、穴部がテンションローラ軸21aに接触しない状態で軸受部材30と規制部材34とに挟持されており、各部材30,34によって僅かに弾性変形した状態で配置されている。
【0043】
上述の構成により、本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。中間転写ベルト9のベルト寄りが発生した際に、ベルト寄り規制手段38の作用によりテンションローラ軸21aの変位に伴い各部材30,34が上下方向に変位した際に、各部材30,34間に相対的な移動量の差が生じる。ここで、各部材30,34間に弾性変形可能な中間部材39が設けられていることにより、各部材30,34間での移動量の差が中間部材39の弾性変形によって吸収される。これにより、各部材30,34が直接摺動することによる各部材30,34間での想定外の摩擦や摩耗が防止され、テンションローラ21及びテンションローラ軸21aの軸方向における位置決め精度の低下が防止される。この結果、ベルト寄りを制御しているテンションローラ21に軸方向への外力が作用しても、長期にわたり良好にベルト寄り制御を行うことが可能な中間転写ユニット10、これを用いた転写装置40及び画像形成装置1を提供できる。
【0044】
また、中間部材39が弾性変形可能であることから、各部材30,34間で移動量の差が生じても中間部材39と各部材30,34との間での想定外の摩擦や摩耗が防止され、テンションローラ21及びテンションローラ軸21aの軸方向における位置決め精度の低下が防止される。
さらに、中間部材39はテンションローラ21及びテンションローラ軸21aの回転に従動して回転しない構成であることから、各部材30,34との間での想定外の摩擦や摩耗がより一層防止される。
また、中間部材39を樹脂材料で構成することにより、装置を軽量化でき装置の動作性の向上及び長寿命化を図ることができると共に、コストダウンを達成できる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上述の実施形態ではベルト部材として中間転写ベルト9を示したが、本発明が適用可能なベルト部材はこれに限られず、複数の支持回転体に掛け渡されて前記複数の支持回転体の回転とともに走行するベルトであれば、どのようなベルトにも適用可能である。
さらに、上記実施形態で示したベルト寄り規制手段38は押さえ部材35及び押さえ部材ホルダ36を有する構成としたが、本発明が適用可能なベルト寄り規制手段は押さえ部材35及び押さえ部材ホルダ36を有していなくてもよい。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 画像形成装置(カラー複写機)
9 ベルト部材、像担持体(中間転写ベルト)
10 ベルトユニット(中間転写ユニット)
20 支持回転体(二次転写対向ローラ)
21 支持回転体、第一支持回転体(テンションローラ)
21a 回転軸(テンションローラ軸)
22 支持回転体(入口ローラ)
24 ベルト突き当て部材
25 支持回転体変位部材(軸傾斜部材)
25a 斜面
26c ガイド部材(ガイド部)
30 支持部材(軸受部材)
34 規制部材
39 中間部材
40 転写装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2017-58651号公報
【特許文献2】特許第6691682号公報
【特許文献3】特許第6628141号公報