(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107571
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び位置ずれ量計測方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20230727BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008832
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】富谷 統一郎
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG45
2C057AP02
2C057AP25
2C057AP77
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドの接合部品を構成する2つの構成部材間の位置ずれ量の高精度な計測を可能にする。
【解決手段】アクチュエータ素子5を駆動して圧力室内の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、2つの構成部材8,9が互いに接合された接合部品を有し、前記2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材には、該少なくとも一方の構成部材に対する他方の構成部材の位置ずれ量を計測するための目盛り101,102が形成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ素子を駆動して圧力室内の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、
2つの構成部材が互いに接合された接合部品を有し、
前記2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材には、該少なくとも一方の構成部材に対する他方の構成部材の位置ずれ量を計測するための目盛りが形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記2つの構成部材は、前記アクチュエータ素子を備えるアクチュエータ部材を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記2つの構成部材は、前記圧力室が形成された流路部材を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記2つの構成部材の双方に前記目盛りが形成されており、
前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材に形成される前記目盛りを主尺とし、他方の構成部材に形成される前記目盛りを副尺とするバーニアスケールを有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記目盛りは、前記少なくとも一方の構成部材に表面に形成される複数の溝によって構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記接合部品は、前記2つの構成部材を接着剤により互いに接合したものであり、
前記複数の溝は、前記接着剤の余剰分が流れ込む位置に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、及び、主走査移動機構の少なくとも一つと、液体吐出ヘッドとを備えた液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項8】
液体を吐出する装置において、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項7に記載の液体吐出ユニットを有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおける前記2つの構成部材間の位置ずれ量を計測する位置ずれ量計測方法であって、
前記2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材に前記目盛りを形成し、
前記目盛りを読み取って前記2つの構成部材間の位置ずれ量を計測することを特徴とする位置ずれ量計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び位置ずれ量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータ素子を駆動して圧力室内の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、積層圧電素子(アクチュエータ素子)を駆動して圧力発生室(圧力室)内のインク(液体)をノズルから吐出する液体吐出ヘッドが開示されている。この液体吐出ヘッドは、圧力発生室が形成された流路板に接合された振動板(構成部材)と、積層圧電素子を備えるベース(構成部材)とが接着層を介して互いに接合された接合部品を含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、液体吐出ヘッドにおいて、互いに接合される2つの構成部材間の位置ずれ量を精度よく確認することが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、アクチュエータ素子を駆動して圧力室内の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、2つの構成部材が互いに接合された接合部品を有し、前記2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材には、該少なくとも一方の構成部材に対する他方の構成部材の位置ずれ量を計測するための目盛りが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上、本発明によれば、液体吐出ヘッドの接合部品を構成する2つの構成部材間の位置ずれ量の高精度な計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドをノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
【
図2】同液体吐出ヘッドをノズル配列方向に沿って切断した断面図。
【
図3】同液体吐出ヘッドのノズル面に平行な面に沿って切断した断面図。
【
図4】実施形態に係るインク循環システムに関するブロック図。
【
図6】実施形態の接合工程における接合前の各構成部材を示す模式図。
【
図7】流路部材とアクチュエータ部材とを接合した状態を示す側面図。
【
図8】流路部材とアクチュエータ部材との接合箇所をノズル配列方向に平行な方向から見た拡大側面図。
【
図9】(a)乃至(c)は、流路部材とアクチュエータ部材の双方に形成された目盛りを示す、
図8中の符号Aで示す箇所を拡大した拡大図。
【
図10】変形例において、アクチュエータ部材だけに形成された目盛りを示す拡大図。
【
図11】液体を吐出する装置の一例の要部平面説明図。
【
図13】液体吐出ユニットの他例の要部平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッドの一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る個別循環型の液体吐出ヘッド434をノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
図2は、液体吐出ヘッド434をノズル配列方向に沿って切断した断面図である。
図3は、液体吐出ヘッド434のノズル面に平行な面に沿って切断した断面図である。
【0009】
本実施形態に係る液体吐出ヘッド434は、主に、フレーム1と、流路板2と、ノズル板3と、ベース4と、積層圧電素子5と、振動板6とから構成されている。
【0010】
フレーム1は、インク供給口11(
図3参照)、共通液室12となる彫り込みが形成された構成部材である。流路板2は、圧力室である圧力発生室22となる彫り込みと、ノズル31に連通する連通管部23とが形成された構成部材である。ノズル板3は、ノズル31が形成された構成部材である。ベース4は、アクチュエータ素子としての圧力発生素子である積層圧電素子5を支持する構成部材である。振動板6は、島状凸部61、ダイヤフラム部62及びインク流入口63を有する構成部材である。
【0011】
流路板2は、ノズル31に通じる圧力室である個別液室としての圧力発生室22、圧力発生室22に通じる流体抵抗部21、流体抵抗部21に通じる導入部20が形成されている。流路板2は、ノズル板3側から複数枚(ここでは3枚)の板状部材2A,2B,2Cを積層接合して形成され、これらの板状部材2A,2B,2Cと振動板6とを積層接合して流路部材8が構成されている。
【0012】
ノズル板3は、金属材料、例えば電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル31を多数形成している。このノズル31の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル31の径はインク滴出口側の直径で約20[μm]~35[μm]である。また各列のノズルピッチは150[dpi]とした。
【0013】
このノズル板3のインク吐出面(ノズル表面側)は、撥水性の表面処理を施した撥水処理層32を設けている。例えば、PTFE-Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理層32を設けている。これにより、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。インク供給口11と共通液室12となる彫り込みを形成するフレーム1は樹脂成形で作製している。
【0014】
ベース4は、積層圧電素子5を支持する基材であり、っ問えばSUSによって形成されている。
【0015】
積層圧電素子5は、厚さ10[μm]~50[μm]/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数[μm/1層]の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層した積層構造をもつ。内部電極層は両端で外部電極に接続される。積層圧電素子5は、ハーフカットのダイシング加工により櫛歯状に分割され、1つ毎に駆動部56と支持部57(非駆動部)として使用される。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極54となる。他方はダイシング加工では分割されずに導通しており共通電極55となる。
【0016】
駆動部56の個別電極54には、FPC(フレキシブルプリント回路)13が半田接合されている。また、共通電極55は積層圧電素子5の端部に電極層を設けて回し込んでFPC13のグランド電極に接合している。FPC13には、ヘッド制御部であるヘッドドライバが実装されており、これにより駆動部56への駆動電圧印加を制御している。
【0017】
振動板6は、電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成したものである。振動板6には、薄膜のダイヤフラム部62と、これの中央部に形成した駆動部56である積層圧電素子5に接合される島状凸部61と、フレーム1に接合される梁を含む厚膜部と、インク流入口63となる開口とが形成されている。ダイヤフラム部62の厚さは3[μm]、幅は35[μm](片側)である。振動板6の島状凸部61と積層圧電素子5の可動部(駆動部)56との接合や、振動板6とフレーム1との接合については、ギャップ材を含んだ接着剤からなる接着層7をパターニングして接着により接合している。
【0018】
このように構成した液体吐出ヘッド434においては、画像記録信号に応じて、駆動パルスで構成される駆動波形(10[V]~50[V]のパルス電圧)が駆動部56に印加される。これによって、駆動部56に積層方向の変位が生起し、振動板6を介して圧力発生室22が加圧されて圧力が上昇し、ノズル31からインク滴が吐出される。その後、インク滴吐出の終了に伴い、圧力発生室22内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動電圧(駆動パルス)の放電過程によって圧力発生室22内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室12に流入し、共通液室12からインク流入口63を経て流体抵抗部21を通り、圧力発生室22内に充填される。
【0019】
流体抵抗部21は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果がある反面、最充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部21を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0020】
次に、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434を用いたインク循環システムの一例を、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態に係るインク循環システムに関するブロック図である。
図4に示すように、インク循環システムは、メインタンク410、液体吐出ヘッド434、ヘッドタンク435、供給側ポンプ438a、循環側ポンプ438b、送液ポンプ438c、供給側圧力センサ439a及び循環側圧力センサ439bなどで構成されている。
【0021】
供給側圧力センサ439aは、供給側ポンプ438aと液体吐出ヘッド434との間であって、液体吐出ヘッド434の後述する供給ポート71(
図1参照)に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサ439bは、液体吐出ヘッド434と循環側ポンプ438bとの間であって、液体吐出ヘッド434の後述する循環ポート72(
図1参照)に繋がった循環流路側に接続されている。そして、供給側圧力センサ439aで正圧、循環側圧力センサ439bで負圧が検知されるように、供給側ポンプ438a及び循環側ポンプ438bでインクを流す。これにより、ヘッドタンク435から供給ポート71を通って液体吐出ヘッド434内に流入し、循環ポート72から排出されてヘッドタンク435に戻るように、インクが循環する。
【0022】
また、供給側圧力センサ439aが一定正圧、循環側圧力センサ439bが一定負圧となるように、供給側ポンプ438a及び循環側ポンプ438bを常に制御し続ける。これにより、液体吐出ヘッド434内を通ってインクを循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。また、液体吐出ヘッド434のノズルから液滴を吐出すると、ヘッドタンク435内のインク量が減少していくため、適宜メインタンク410から送液ポンプ438cを用いて、メインタンク410からヘッドタンク435にインクを補充することが望ましい。メインタンク410からヘッドタンク435へのインク補充のタイミングは、ヘッドタンク435内のインクの液面高さが所定高さよりも下がったらインク補充を行うなど、ヘッドタンク435内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0023】
本実施形態においては、共通液室12から、導入部20、流体抵抗部21、圧力発生室22、連通管部23、循環抵抗部42を経由し、共通の循環流路41へとつながる循環流路となる。循環流路の途中において、連通管部23の先にノズル31が配されている。共通液室12はフレーム1に形成されており、導入部20から循環流路41までの流路は流路板2に形成されている。
【0024】
図5は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434の外観斜視説明図である。
フレーム1の供給ポート71は、共通液室12のノズル配列方向中央に配置され、共通液室12につながっている。フレーム1の循環ポート72は、流路板2内の循環液室43につながっている。供給ポート71をノズル配列方向で共通液室12の中央に配置することにより、供給ポート71から各循環ポート72までの液体の流路の長さを、どの圧力発生室22でも同じにすることができる。このように前記流路の長さを同じにすることで、共通液室12で発生する圧力損失と、循環液室43で発生する圧力損失との和を、どの圧力発生室22を通る経路でも同じにすることができる。そして、前記圧力損失の和が同一となることで、圧力損失による特性差をなくすことができるようになる。
【0025】
なお、一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴(以下、インク滴という)を吐出する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、媒体である用紙を搬送しながら液体吐出ヘッドによりインク滴を用紙に付着させて画像形成を行う。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液滴となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
【0026】
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド434の構成部材を互いに接合する接合工程について説明する。
図6は、本接合工程における接合前の各構成部材を示す模式図である。
図7は、流路部材8とアクチュエータ部材9とを接合した状態を示す側面図である。
ここで説明する接合工程は、流路板2上に振動板6が形成された状態の流路部材8に対し、フレーム1と、ベース4上に積層圧電素子5が形成された状態のアクチュエータ部材9とを、それぞれ接合する工程である。
【0027】
この接合工程に際し、流路部材8に対するフレーム1及びアクチュエータ部材9の各位置ずれを許容範囲内に収めることが重要であり、許容範囲を超える位置ずれが発生した場合にはこれを除外することが求められる。そのため、本実施形態では、接合工程後に、流路部材8に対するフレーム1及びアクチュエータ部材9の各位置ずれが許容範囲内であるか否かを検査する検査工程を実施する。
【0028】
この検査工程では、流路部材8に対するフレーム1及びアクチュエータ部材9の各位置ずれ量を高精度に計測することが求められる。位置ずれ量を高精度に計測する方法としては、例えば、互いに接合される2つの構成部材間の接合箇所を撮像手段であるカメラによって撮像し、その撮像画像に基づいて当該2つの構成部材間の位置ずれ量を計測するという方法が挙げられる。しかしながら、当該2つの構成部材間の接合箇所に寸法の基準となる印(しるし)が無い場合、撮像画像から当該2つの構成部材間の位置ずれ量を正確に計測することが難しい場合がある。
【0029】
また、当該2つの構成部材間の接合箇所をカメラで撮像することが困難な場合もある。例えば、流路部材8とアクチュエータ部材9との接合箇所は、位置ずれ量を高精度に計測可能な撮像画像をカメラで撮像することが困難である。このような場合、顕微鏡などを利用して計測員(人間)による目視により位置ずれ量を計測することになる。この場合も、当該2つの構成部材間の接合箇所に寸法の基準となる印(しるし)がないと、計測員の個人差によって計測結果がばらつき、位置ずれ量を高精度に計測することが難しい。
【0030】
そこで、本実施形態においては、接合部品を構成する2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材に、寸法の基準となる印(しるし)となり得る目盛りを形成し、この目盛りを利用することで、位置ずれ量の高精度な計測を実現している。
【0031】
図8は、流路部材8とアクチュエータ部材9との接合箇所をノズル配列方向に平行な方向から見た拡大側面図である。
図9(a)乃至(c)は、
図8中の符号Aで示す箇所を拡大した拡大図である。
本実施形態においては、流路部材8とアクチュエータ部材9の双方に、外部から観測可能な状態の目盛り101,102がそれぞれ設けられている。
【0032】
本実施形態において、流路部材8に形成された目盛り101は、
図9(a)乃至(c)に示すように、流路部材8を構成する振動板6のダイヤフラム部62の外側面に、10μm間隔で複数形成されている。流路部材8の目盛り101は、例えば、流路板2上に振動板6を形成する時に一緒に形成することができる。
【0033】
具体的には、振動板6のダイヤフラム部62を電鋳工法により形成する場合、およそ1μm以下の精度でダイヤフラム部62の成膜が可能であることから、およそ1μm以下の精度で、目盛り101となる溝を形成することが可能である。本実施形態の目盛り101は、流路部材8を構成する振動板6のダイヤフラム部62の外側面に、1μm未満の溝幅をもつ溝を10μm間隔でノズル配列方向に沿って複数形成してある。なお、流路部材8の目盛り101の形成方法は、これに限らず、必要十分な寸法精度で目盛り101を形成できる様々な方法を採用することができる。
【0034】
一方、アクチュエータ部材9に形成された目盛り102は、
図9(a)乃至(c)に示すように、アクチュエータ部材9を構成する積層圧電素子5の外側面に、8μm間隔で複数形成されている。アクチュエータ部材9の目盛り102としては、例えば、アクチュエータ部材9の積層圧電素子5上に機械加工によって形成した溝を用いてもよい。
【0035】
具体的には、アクチュエータ部材9上の積層圧電素子5は、駆動部56と支持部57(非駆動部)とに櫛歯状に分割するために、ハーフカットのダイシング加工を行う。このダイシング加工の加工精度は、およそ1μm以下であるため、このダイシング加工を利用することで、およそ1μm以下の精度で目盛り102となる溝を形成することが可能である。本実施形態では、アクチュエータ部材9を構成する積層圧電素子5の外側面に、溝幅8μmをもつ溝を16μm間隔でノズル配列方向に沿って複数形成し、これによって目盛り102が構成されている。すなわち、ノズル配列方向における各溝の一端側エッジと他端側エッジが目盛り102として機能し、8μm間隔で目盛り102が形成される。なお、アクチュエータ部材9の目盛り102の形成方法は、これに限らず、必要十分な寸法精度で目盛り102を形成できる様々な方法を採用することができる。
【0036】
本実施形態において、
図9(a)に示すように、流路部材8上の目盛り101のうちの基準となる基準目盛り101aのノズル配列方向位置と、アクチュエータ部材9上の目盛り102のうちの基準となる基準目盛り102aのノズル配列方向位置とが一致する状態であるとき、位置ずれが無い状態である。これに対し、
図9(b)及び(c)に示すように、流路部材8上の目盛り101のうちの基準となる基準目盛り101aのノズル配列方向位置と、アクチュエータ部材9上の目盛り102のうちの基準となる基準目盛り102aのノズル配列方向位置とがずれている状態であるとき、位置ずれが発生している。
【0037】
図9(b)及び(b)に示す位置ずれ状態における位置ずれ量は、流路部材8上の目盛り101を主尺とし、アクチュエータ部材9上の目盛り102を副尺とするバーニアスケールによって読み取ることができる。
【0038】
例えば、
図9(b)に示す位置ずれ状態では、主尺となる目盛り101のうちの2番目(基準目盛り101aを1番目とする)の目盛り101bのノズル配列方向位置と、副尺となる目盛り102のうちの2番目(基準目盛り102aを1番目とする)の目盛り102bのノズル配列方向位置とが一致している。したがって、主尺の目盛り101の目盛り間隔である10μmと、副尺の目盛り102の目盛り間隔である8μmとの関係から、位置ずれ量は2μmであることが読み取れる。
【0039】
また、例えば、
図9(c)に示す位置ずれ状態では、主尺となる目盛り101のうちの5番目の目盛り101eのノズル配列方向位置と、副尺となる目盛り102のうちの5番目の目盛り102eのノズル配列方向位置とが一致している。したがって、主尺の目盛り101の目盛り間隔である10μmと、副尺の目盛り102の目盛り間隔である8μmとの関係から、位置ずれ量は8μmであることが読み取れる。
【0040】
本実施形態のように、流路部材8とアクチュエータ部材9の双方に、お互いの目盛り間隔がずれている目盛り101,102を形成し、バーニアスケールを構成することで、いずれか一方のみの目盛りだけで位置ずれ量を読み取る場合よりも、当該目盛りの目盛り間隔よりも狭い位置ずれ量を読み取ることができる。すなわち、いずれか一方のみの目盛りだけで位置ずれ量を読み取る場合よりも、位置ずれ量の計測分解能を高めることができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、流路部材8とアクチュエータ部材9の双方に目盛り101,102を形成してバーニアスケールを構成する例について説明したが、例えば、いずれか一方だけに目盛りを形成してもよい。例えば、
図10に示すように、アクチュエータ部材9だけに目盛り102が形成されている場合、流路部材8に形成されている基準印103のノズル配列方向位置が、目盛り102のうちの3番目の目盛り102cと4番目の目盛り102dとの略中央に位置していることを読み取ることができる。この場合、流路部材8の基準印103のノズル配列方向位置が目盛り102のうちの基準目盛り102a(1番目の目盛り)のノズル配列方向位置に一致するときに位置ずれが無い状態であるとした場合、
図10に示す状態の位置ずれ量は、少なくとも、16μm~24μmの範囲内であると計測することができる。この場合も、このような目盛り102が形成されていない場合よりも、高い精度(高い計測分解能)で、位置ずれ量を計測することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、流路部材8とアクチュエータ部材9の双方に形成される目盛り101,102の目盛り間隔は互いに異なるものであるが、同じ目盛り間隔であってもよい。この場合でも、双方の目盛りでそれぞれ位置ずれ量を計測して比較することで、よりバラツキの少ない正確な計測が可能となる。
【0043】
また、本実施形態においては、流路部材8とアクチュエータ部材9の双方に形成される目盛り101,102が互いに隣接又は近接する位置に配置されているが、双方の目盛りがそれぞれ別の位置に離間して配置されていてもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、目盛り101,102が溝によって構成されているため、流路部材8とアクチュエータ部材9との接合箇所の接着層7を構成する接着剤の余剰分が流出した場合、流出した接着剤が目盛り101,102を構成する溝内に流れ込む。これにより、このような溝が無い場合よりも、接着剤の流出範囲を抑制することができる。接着剤の流出範囲が拡大すると、駆動部56である積層圧電素子5によるダイヤフラム部62の挙動が阻害され、吐出効率が低下するという不具合が生じる。したがって、目盛り101,102を溝によって構成することにより接着剤の流出範囲を抑制することで、吐出効率に対するロバスト性向上を図ることができる。しかも、目盛り101,102を溝によって構成し、その溝に接着剤が入り込むことで、溝形成により低下した強度を接着剤によって補強でき、強度向上の効果も期待できる。
【0045】
また、本実施形態においては、液体吐出ヘッド434における流路部材8とアクチュエータ部材9とを接合した後(接合工程後)に実施される検査工程において、目盛り101,102を用いて位置ずれ量を計測する場合について説明したが、これに限られない。例えば、流路部材8とアクチュエータ部材9とを接合する前又は接合中に(接合工程中に)、目盛り101,102を用いて位置ずれ量を計測してもよい。この場合、位置ずれ量の計測結果を利用して流路部材8とアクチュエータ部材9との位置合わせを行って両者を接合することができる。
【0046】
次に、各実施形態に係る液体吐出ヘッド434,504を適用可能な液体を吐出する装置の一例を、液体吐出ヘッド504を適用した場合について
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図であり、
図12は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図である。
【0047】
この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構593によって、キャリッジ503は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構593は、ガイド部材501、主走査モータ505、及び、タイミングベルト508等で構成されている。ガイド部材501は、装置長手方向両側に設けられた側板591A,591Bに架け渡されており、キャリッジ503を移動可能に保持している。キャリッジ503は、主走査モータ505によって、駆動プーリ506と従動プーリ507との間に架け渡したタイミングベルト508を介して装置長手方向である主走査方向に往復移動される。
【0048】
このキャリッジ503には、液体吐出ヘッド504を搭載した液体吐出ユニット540が設けられている。液体吐出ユニット540の液体吐出ヘッド504は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド504は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド504の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド504に供給するための供給循環機構594により、液体が液体吐出ヘッド504内に供給及び循環される。
【0049】
なお、本実施形態において、供給循環機構594は、供給タンク531、循環タンク532、コンプレッサ533、真空ポンプ534、第一送液ポンプ535、第二送液ポンプ536、レギュレータ(R)539a,539b等で構成される。また、供給側圧力センサ537は、供給タンク531と液体吐出ヘッド504との間であって、液体吐出ヘッド504の供給ポート71に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサ538は、液体吐出ヘッド504と循環タンク532との間であって、液体吐出ヘッド504の循環ポート72に繋がった循環流路側に接続されている。
【0050】
液体を吐出する装置は、用紙510を搬送するための搬送機構595を備えている。搬送機構595は、搬送手段である搬送ベルト512、搬送ベルト512を駆動するための副走査モータ516などで構成されている。搬送ベルト512は、用紙510を吸着して液体吐出ヘッド504に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト512は、無端状ベルトであり、搬送ローラ513とテンションローラ514との間に掛け渡されている。搬送ベルト512への用紙510の吸着は、静電吸着あるいはエアー吸引などで行うことができる。搬送ベルト512は、副走査モータ516によってタイミングベルト517及びタイミングプーリ518を介して搬送ローラ513が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0051】
キャリッジ503の主走査方向の一方側には、搬送ベルト512の側方に液体吐出ヘッド504の維持回復を行う維持回復機構520が配置されている。維持回復機構520は、例えば液体吐出ヘッド504のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材521や、ノズル面を払拭するワイパ部材522などで構成されている。
【0052】
主走査移動機構593、供給循環機構594、維持回復機構520、及び、搬送機構595は、側板591A,591B及び背板591Cなどで構成される筐体に取り付けられている。このように構成した、液体を吐出する装置においては、用紙510が搬送ベルト512上に給紙されて吸着され、搬送ベルト512の周回移動によって用紙510が副走査方向に搬送される。そして、キャリッジ503を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド504を駆動することにより、停止している用紙510に液体を吐出して画像を形成する。このように、液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッド504を備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0053】
次に、液体吐出ユニット540の他例について
図13を参照して説明する。
図13は同ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニット540は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板591A,591B及び背板591Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構593と、キャリッジ503と、液体吐出ヘッド504とで構成されている。なお、この液体吐出ユニット540の例えば側板591Bに、前述した維持回復機構520及び供給循環機構594の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニット540を構成することもできる。
【0054】
本実施形態において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0055】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0056】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、供給循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0057】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0058】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0059】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0060】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0061】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で、用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて、原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0062】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、アクチュエータ素子(例えば積層圧電素子5)を駆動して圧力室(例えば圧力発生室22)内の液体(例えばインク)をノズル31から吐出する液体吐出ヘッド434であって、2つの構成部材(例えば流路部材8とアクチュエータ部材9)が互いに接合された接合部品を有し、前記2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材には、該少なくとも一方の構成部材に対する他方の構成部材の位置ずれ量を計測するための目盛り101,102が形成されていることを特徴とするものである。
2つの構成部材が互いに接合された接合部品を有する液体吐出ヘッドについては、2つの構成部材間の位置ずれ量を高精度に計測することが求められる場合が多い。当該2つの構成部材間の位置ずれ量を高精度に計測する方法としては、例えば、当該2つの構成部材間の接合箇所をカメラによって撮像し、その撮像画像に基づいて当該2つの構成部材間の位置ずれ量を計測するという方法が挙げられる。しかしながら、当該2つの構成部材間の接合箇所に寸法の基準となる印(しるし)がない場合には、撮像画像から当該2つの構成部材間の位置ずれ量を正確に計測することが難しい。
また、当該2つの構成部材間の接合箇所をカメラで撮像することが困難な状況では、そもそも接合箇所の撮像画像を得ることができず、撮像画像から当該位置ずれ量を計測することができない場合もある。このような場合、顕微鏡などを利用して計測員(人間)による目視により当該位置ずれ量を計測することになる。この場合も、当該2つの構成部材間の接合箇所に寸法の基準となる印(しるし)がないと、計測員の個人差によって計測結果がばらつき、位置ずれ量を高精度に計測することが難しい。
本態様においては、接合部品を構成する2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材に目盛りが形成されている。この目盛りは、当該少なくとも一方の構成部材に対する他方の構成部材の位置ずれ量を計測できるように設けられ、寸法の基準となる印(しるし)となり得るものである。したがって、この目盛りを利用することで、上述したカメラによる計測であっても計測員(人間)による目視計測であっても、当該2つの構成部材間の位置ずれ量の高精度な計測が可能となる。
特に、この目盛りが形成される構成部品は、液体吐出ヘッドを構成する部品であるため、高い寸法精度、高い位置精度で加工されるものである。そのため、当該構成部品の加工時に当該目盛りを形成することで、非常に寸法精度、位置精度の高い目盛りを構成部品上に形成することができる。このような高精度な目盛りが利用可能であるため、当該2つの構成部材間の位置ずれ量を高い精度で計測することが可能になる。
【0063】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記2つの構成部材は、前記アクチュエータ素子を備えるアクチュエータ部材9を含むことを特徴とするものである。
これによれば、アクチュエータ部材9の位置ずれ量を高い精度で計測することが可能である。
【0064】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記2つの構成部材は、前記圧力室が形成された流路部材8を含むことを特徴とするものである。
これによれば、流路部材8の位置ずれ量を高い精度で計測することが可能である。
【0065】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記2つの構成部材の双方に前記目盛りが形成されており、前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材に形成される前記目盛りを主尺とし、他方の構成部材に形成される前記目盛りを副尺とするバーニアスケールを有することを特徴とするものである。
これによれば、構成部材に形成される目盛りの目盛り間隔よりも狭い位置ずれ量についても高精度に計測することが可能となる。
【0066】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記目盛りは、前記少なくとも一方の構成部材に表面に形成される複数の溝によって構成されていることを特徴とするものである。
これによれば、比較的容易に目盛りを形成することができる。
【0067】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記接合部品は、前記2つの構成部材を接着剤により互いに接合したものであり、前記複数の溝は、前記接着剤の余剰分が流れ込む位置に配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、接着剤の流出範囲を抑制することができ、接着剤の流出範囲が拡大することによる吐出効率低下などの不具合を抑制することができる。また、目盛りを構成する溝内に接着剤が入り込むことで、溝形成により低下した強度を接着剤によって補強でき、強度向上の効果も期待できる。
【0068】
[第7態様]
第7態様は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、及び、主走査移動機構態様の少なくとも一つと、液体吐出ヘッドとを備えた液体吐出ユニットにおいて、前記液体吐出ヘッドとして、第1乃至第6態様のいずれかの液体吐出ヘッドを用いることを特徴とするものである。
これによれば、液体吐出ユニットにおいて、液体吐出ヘッドの接合部品を構成する2つの構成部材間の位置ずれ量を高い精度で計測することが可能になる。
【0069】
[第8態様]
第8態様は、液体を吐出する装置において、第1乃至第6態様のいずれかの液体吐出ヘッド、又は、第7態様の液体吐出ユニットを有することを特徴とするものである。
これによれば、液体を吐出する装置において、液体吐出ヘッドの接合部品を構成する2つの構成部材間の位置ずれ量を高い精度で計測することが可能になる。
【0070】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第6態様のいずれかの液体吐出ヘッドにおける前記2つの構成部材間の位置ずれ量を計測する位置ずれ量計測方法であって、前記2つの構成部材のうちの少なくとも一方の構成部材に前記目盛りを形成し、前記目盛りを読み取って前記2つの構成部材間の位置ずれ量を計測することを特徴とする位置ずれものである。
液体吐出ヘッドの接合部品を構成する2つの構成部材間の位置ずれ量を高い精度で計測することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 :フレーム
2 :流路板
3 :ノズル板
4 :ベース
5 :積層圧電素子
6 :振動板
7 :接着層
8 :流路部材
9 :アクチュエータ部材
11 :インク供給口
12 :共通液室
13 :FPC
20 :導入部
21 :流体抵抗部
22 :圧力発生室
23 :連通管部
31 :ノズル
32 :撥水処理層
41 :循環流路
42 :循環抵抗部
43 :循環液室
54 :個別電極
55 :共通電極
56 :駆動部
57 :支持部
61 :島状凸部
62 :ダイヤフラム部
63 :インク流入口
71 :供給ポート
72 :循環ポート
101 :目盛り
101a :基準目盛り
102 :目盛り
102a :基準目盛り
103 :基準印
410 :メインタンク
434 :液体吐出ヘッド
435 :ヘッドタンク
438a :供給側ポンプ
438b :循環側ポンプ
438c :送液ポンプ
439a :供給側圧力センサ
439b :循環側圧力センサ
501 :ガイド部材
503 :キャリッジ
504 :液体吐出ヘッド
505 :主走査モータ
506 :駆動プーリ
507 :従動プーリ
508 :タイミングベルト
510 :用紙
512 :搬送ベルト
513 :搬送ローラ
514 :テンションローラ
516 :副走査モータ
517 :タイミングベルト
518 :タイミングプーリ
520 :維持回復機構
521 :キャップ部材
522 :ワイパ部材
531 :供給タンク
532 :循環タンク
533 :コンプレッサ
534 :真空ポンプ
535 :第一送液ポンプ
536 :第二送液ポンプ
537 :供給側圧力センサ
538 :循環側圧力センサ
540 :液体吐出ユニット
591A :側板
591B :側板
591C :背板
593 :主走査移動機構
594 :供給循環機構
595 :搬送機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】