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特開2023-107590可動装置、距離測定装置、計測装置、ロボット、電子機器、造形装置、画像投影装置、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置、車両および移動体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023107590
(43)【公開日】2023-08-03
(54)【発明の名称】可動装置、距離測定装置、計測装置、ロボット、電子機器、造形装置、画像投影装置、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置、車両および移動体
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20230727BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230727BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230727BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20230727BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20230727BHJP
   G02B 26/08 20060101ALN20230727BHJP
   G02B 27/01 20060101ALN20230727BHJP
   G02B 27/02 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
B81B3/00
B60K35/00 A
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
G01C3/06 110B
G02B26/08 E
G02B27/01
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008854
(22)【出願日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 眞一
(72)【発明者】
【氏名】與田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】柳田 晃司
【テーマコード(参考)】
2F112
2H045
2H141
2H199
3C081
3D344
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AA01
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA04
2F112CA05
2F112CA08
2F112DA04
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA07
2H045AB06
2H045AB13
2H045AB38
2H045AB43
2H045AB81
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141ME01
2H141ME04
2H141ME09
2H141ME23
2H141ME24
2H141ME25
2H141MF05
2H141MG04
2H141MG07
2H141MG10
2H141MZ06
2H141MZ12
2H141MZ16
2H141MZ26
2H199CA06
2H199CA29
2H199CA34
2H199CA47
2H199CA53
2H199CA69
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA28
2H199DA30
2H199DA44
3C081AA01
3C081BA22
3C081BA28
3C081BA32
3C081BA33
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA55
3C081BA76
3C081CA13
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA22
3C081DA24
3C081DA27
3C081EA01
3C081EA11
3C081EA21
3C081EA43
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
5J084AA05
5J084AB07
5J084AC02
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA03
5J084BA34
5J084BA48
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB27
5J084BB28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】揺動角度の検出精度に優れた可動装置を提供する。
【解決手段】第1揺動軸周りに揺動する可動部を挟み一端が接続する第1、2捻れ梁、第1、2捻れ梁他端に接続する第1、2駆動梁、第1、2駆動梁の夫々を片持ち支持する第1支持部、第1駆動梁に配置される第1、2歪み抵抗、第2駆動梁に配置される第3、4歪み抵抗、第1乃至4歪み抵抗の各抵抗値に基づき第1揺動軸周りの角度情報を出力する検出部を有し、第1歪み抵抗は第1揺動軸よりも第1駆動梁の自由端側、第3歪み抵抗は第1揺動軸よりも第2駆動梁の自由端側に配置され、第2歪み抵抗は第1揺動軸よりも第1駆動梁の固定、自由端の何れか一方に、第4歪み抵抗は第1揺動軸よりも第2駆動梁の固定、自由端の何れか一方に配置され、第1歪み抵抗と第1揺動軸の距離は第2歪み抵抗と第1揺動軸の距離よりも長く、第3歪み抵抗と第1揺動軸の距離は第4歪み抵抗と第1揺動軸の距離よりも長い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1揺動軸周りに揺動する可動部と、
前記可動部に一端が接続する第1捻れ梁と、
前記可動部を挟んで前記第1捻れ梁の反対側に設けられ、一端側が前記可動部に接続する第2捻れ梁と、
前記第1捻れ梁の他端側に接続する第1駆動梁と、
前記第2捻れ梁の他端側に接続する第2駆動梁と、
前記第1駆動梁および前記第2駆動梁のそれぞれを片持ち支持する第1支持部と、
前記第1駆動梁に配置される第1歪み抵抗と、
前記第1駆動梁に配置される第2歪み抵抗と、
前記第2駆動梁に配置される第3歪み抵抗と、
前記第2駆動梁に配置される第4歪み抵抗と、
前記第1乃至第4歪み抵抗の各抵抗値に基づいて、前記第1揺動軸周りの前記可動部の揺動角度情報を出力する検出部と、を有し、
前記第1歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第1駆動梁の自由端側に配置され、
前記第3歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第2駆動梁の自由端側に配置され、
前記第2歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第1駆動梁の固定端側または自由端側のいずれか一方に配置され、
前記第4歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第2駆動梁の固定端側または自由端側のいずれか一方に配置され、
前記第1歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離は、前記第2歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離よりも長く、
前記第3歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離は、前記第4歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離よりも長い、可動装置。
【請求項2】
前記第1乃至前記第4歪み抵抗のそれぞれは、N型のピエゾ抵抗であり、
前記第1駆動梁および前記第2駆動梁のそれぞれは、P型のシリコン基板を含む、請求項1に記載の可動装置。
【請求項3】
前記第1乃至前記第4歪み抵抗のそれぞれは、P型のピエゾ抵抗であり、
前記第1駆動梁および前記第2駆動梁のそれぞれは、N型のシリコン基板を含む、請求項1に記載の可動装置。
【請求項4】
前記第1揺動軸と交差する第2揺動軸周りに前記可動部を揺動させる一対の駆動部を有し、
前記第1乃至前記第4歪み抵抗のそれぞれの長手方向は、前記第1揺動軸に沿う方向である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の可動装置。
【請求項5】
前記一対の駆動部を支持する第2支持部を有し、
前記一対の駆動部のそれぞれは、複数の梁部と、前記複数の梁部を折り返し接続する接続部と、を有し、
前記一対の駆動部それぞれの一端は、前記第1支持部に接続し、
前記一対の駆動部それぞれの他端は、前記第2支持部に接続する、請求項4に記載の可動装置。
【請求項6】
前記第1および前記第2捻れ梁それぞれの長手方向は、<100>方向と平行である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の可動装置。
【請求項7】
前記第1および前記第2捻れ梁それぞれの長手方向は、<110>方向と平行である、請求項4または5に記載の可動装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の可動装置と、
光源と、を備え、
前記光源から発せられた光を偏向し、前記光が物体に照射され、前記物体において反射された反射光を検出することにより物体までの距離を測定する、距離測定装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の可動装置を有する、計測装置。
【請求項10】
請求項9に記載の計測装置を有する、ロボット。
【請求項11】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の可動装置を有する、電子機器。
【請求項12】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の可動装置を有する、造形装置。
【請求項13】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の可動装置と、
光源と、を備え、
前記光源から発せられた光を偏向して投影する画像投影装置。
【請求項14】
前記光源は複数設けられており、
複数の前記光源は、異なる波長の光を発し、
複数の前記光源から発せられた複数の前記光を合成する合成部をさらに有し、
前記合成部において合成された光を偏向して投影する請求項13に記載の画像投影装置。
【請求項15】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の可動装置を有するヘッドアップディスプレイ。
【請求項16】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の可動装置を備えるレーザヘッドランプ。
【請求項17】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の可動装置を有するヘッドマウントディスプレイ。
【請求項18】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の可動装置と、
光源と、を備え、
前記光源から発せられた光を偏向し、前記光が物体に照射され、前記物体において反射された反射光を検出することにより物体を認識する、物体認識装置。
【請求項19】
請求項8に記載の距離測定装置、請求項15に記載のヘッドアップディスプレイおよび請求項16に記載のレーザヘッドランプの少なくとも1つを有する車両。
【請求項20】
請求項8に記載の距離測定装置、請求項15に記載のヘッドアップディスプレイおよび請求項16に記載のレーザヘッドランプの少なくとも1つを有する移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動装置、距離測定装置、計測装置、ロボット、電子機器、造形装置、画像投影装置、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置、車両および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコンやガラスを微細加工して製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスを用いた可動装置が知られている。可動装置は、車載用レーザレーダ装置やヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ等の様々な用途で利用される。
【0003】
可動装置として、両持ち支持され、可動部を揺動可能に支持する一対の捻れ梁と、可動部の揺動軸を中心に対称となる位置に配置された一対の歪み抵抗と、を有し、一対の歪み抵抗と外部の一対の固定素子とにより構成されるホイートストンブリッジ回路を用いて、可動部の揺動角度を検出可能なものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動部の揺動角度を検出可能な可動装置では、可動部の揺動角度を検出する精度に優れるものが求められる。
【0005】
本発明は、可動部の揺動角度を検出する精度に優れた可動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る可動装置は、少なくとも第1揺動軸周りに揺動する可動部と、前記可動部に一端が接続する第1捻れ梁と、前記可動部を挟んで前記第1捻れ梁の反対側に設けられ、一端側が前記可動部に接続する第2捻れ梁と、前記第1捻れ梁の他端側に接続する第1駆動梁と、前記第2捻れ梁の他端側に接続する第2駆動梁と、前記第1駆動梁および前記第2駆動梁のそれぞれを片持ち支持する第1支持部と、前記第1駆動梁に配置される第1歪み抵抗と、前記第1駆動梁に配置される第2歪み抵抗と、前記第2駆動梁に配置される第3歪み抵抗と、前記第2駆動梁に配置される第4歪み抵抗と、前記第1乃至第4歪み抵抗の各抵抗値に基づいて、前記第1揺動軸周りの前記可動部の揺動角度情報を出力する検出部と、を有し、前記第1歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第1駆動梁の自由端側に配置され、前記第3歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第2駆動梁の自由端側に配置され、前記第2歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第1駆動梁の固定端側または自由端側のいずれか一方に配置され、前記第4歪み抵抗は、前記第1揺動軸よりも前記第2駆動梁の固定端側または自由端側のいずれか一方に配置され、前記第1歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離は、前記第2歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離よりも長く、記第3歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離は、前記第4歪み抵抗と前記第1揺動軸との間の距離よりも長い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、可動部の揺動角度を検出する精度に優れた可動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る可動装置を例示する平面図である。
図2図1の第2揺動軸に沿った可動装置の端面図である。
図3図1のIII-III切断線に沿った可動装置の端面図である。
図4】第1実施形態に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図5】第1~第4歪み抵抗を有するブリッジ回路を例示する図である。
図6】第1変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図7図6のVII-VII切断線に沿った断面図である。
図8】第1変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図9】第2変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図10図9のX-X切断線に沿った断面図である。
図11】第2変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図12】第3変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図13図12のXIII-XIII切断線に沿った断面図である。
図14】第3変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図15】第4変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図16図15のXVI-XVI切断線に沿った断面図である。
図17】第4変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図18】第5変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図19図18のXIX-XIX切断線に沿った断面図である。
図20】第5変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図21】第6変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図22図21のXXII-XXII切断線に沿った断面図である。
図23】第6変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図24】第7変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図25図24のXXV-XXV切断線に沿った断面図である。
図26】第7変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図27】第8変形例に係る第1~第4歪み抵抗周辺の詳細構成例の平面図である。
図28図27のXXVIII-XXVIII切断線に沿った断面図である。
図29】第8変形例に係る第1~第4歪み抵抗を含むブリッジ回路例の図である。
図30】光走査システムの一例の概略図である。
図31】光走査システムの一例のハードウェア構成図である。
図32】制御装置の一例の機能ブロック図である。
図33】光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
図34】レーザレーダ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
図35】レーザレーダ装置を搭載した自動車の他の例の概略図である。
図36】レーザレーダ装置の一例の概略図である。
図37】三次元計測装置のブロック図である。
図38】対象物に計測用パターンが投影されている状態例の図である。
図39】ロボットの多関節を有するロボットアームを示す図である。
図40】光書込装置を搭載した画像形成装置の一例の概略図である。
図41】光書込装置の一例の概略図である。
図42】ヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
図43】ヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図である。
図44】レーザヘッドランプの一例の概略図である。
図45】ヘッドマウントディスプレイの一例の外観の斜視図である。
図46】ヘッドマウントディスプレイの構成を部分的に例示する図である。
図47】パッケージングされた可動装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
なお、以下の実施形態の説明では、回動、揺動、可動は同義であるとする。また、矢印により示した方向のうち、圧電駆動部等における各層の積層方向をZ方向、Z方向に垂直な平面内で直交する方向をX方向及びY方向とする。また、平面視とは、対象物をZ方向から見ることをいう。
【0011】
また、X方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。但し、これらは可動装置の向きを制限するものではなく、使用時における可動装置の向きは任意である。
【0012】
[実施形態]
<可動装置13の構成例>
図1図3を参照して、第1実施形態に係る可動装置13の構成を説明する。図1は可動装置13を例示する平面図である。図2は、図1の第2軸に沿った可動装置13の端面図である。図3は、図1のIII-III切断線に沿った可動装置13の端面図である。
【0013】
図1に示すように、可動装置13は、可動部101と、第1捻れ梁111aと、第2捻れ梁111bと、第1駆動梁110aと、第2駆動梁110bと、第1支持部120と、第1歪み抵抗160aと、第2歪み抵抗160bと、を有する。また可動装置13は、第3歪み抵抗160cと、第4歪み抵抗160dと、一対の駆動部130a及び130bと、第2支持部140と、電極接続部150と、制御装置11と、を有する。
【0014】
可動装置13は、第1揺動軸Ey周りおよび第2揺動軸Ex周りに可動部101を揺動させることにより、可動部101に入射する光をX方向およびY方向のそれぞれに走査可能な光偏向装置である。第1揺動軸EyはY軸に平行な軸であり、第2揺動軸ExはY軸に略直交するX軸に平行な軸である。
【0015】
可動部101は、入射した光を反射する反射面14を有する。第1捻れ梁111aは、可動部101に一端側が接続している。第2捻れ梁111bは、可動部101を挟んで第1捻れ梁111aの反対側に設けられ、一端側が可動部101に接続している。
【0016】
第1駆動梁110aは、第1捻れ梁111aの他端側に接続し、第2駆動梁110bは、第2捻れ梁111bの他端側に接続している。第1支持部120は、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bのそれぞれを片持ち支持している。第1支持部120は、可動部101を囲うように形成された矩形枠状の支持体である。片持ち支持される第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bそれぞれの-X方向側の端部は自由端であり、+X方向側の端部は固定端である。
【0017】
第1駆動梁110aは、第1圧電駆動部112aを有し、第1圧電駆動部112aに印加される駆動電圧に応じて駆動する。第2駆動梁110bは、第2圧電駆動部112bを有し、第2圧電駆動部112bに印加される駆動電圧に応じて駆動する。
【0018】
第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bが駆動することにより、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bが第1揺動軸Eyを捻れ中心軸として捻れ、可動部101は第1揺動軸Ey周りに揺動する。
【0019】
第1歪み抵抗160aおよび第2歪み抵抗160bは、それぞれ第1駆動梁110aに配置されている。第3歪み抵抗160cおよび第4歪み抵抗160dは、それぞれ第2駆動梁110bに配置されている。
【0020】
第1歪み抵抗160aおよび第2歪み抵抗160bは、それぞれ第1捻れ梁111aの捻れに伴って第1駆動梁110aにかかる応力に応じ、抵抗値が変化する抵抗体である。第3歪み抵抗160cおよび第4歪み抵抗160dは、それぞれ第2捻れ梁111bの捻れに伴って第2駆動梁110bにかかる応力に応じ、抵抗値が変化する抵抗体である。第1歪み抵抗160a、第2歪み抵抗160b、第3歪み抵抗160cおよび第4歪み抵抗160dそれぞれの長手方向は、第1揺動軸Eyに沿う方向である。
【0021】
なお、以降において、第1歪み抵抗160a、第2歪み抵抗160b、第3歪み抵抗160cおよび第4歪み抵抗160dを特に区別しない場合には、第1~第4歪み抵抗160と総称表記する。
【0022】
第1~第4歪み抵抗160は、例えば、それぞれ圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、圧電効果を利用したピエゾ素子である。本実施形態では、第1~第4歪み抵抗160の材質は半導体である。
【0023】
一対の駆動部130aおよび130bのそれぞれは、複数の梁部135と、複数の梁部135を折り返し接続する接続部136と、を有する。第2支持部140は、一対の駆動部130aおよび130bを支持する。一対の駆動部130aおよび130bそれぞれの一端は第1支持部120に接続し、一対の駆動部130aおよび130bそれぞれの他端は第2支持部140に接続している。
【0024】
駆動部130aと第1支持部120の接続箇所と、駆動部130bと第1支持部120の接続箇所は、反射面14の中心を対称中心にして点対称となっている。また駆動部130aと第2支持部140の接続箇所と、駆動部130bと第2支持部140の接続箇所は、反射面14の中心を対称中心にして点対称となっている。
【0025】
駆動部130aは、第3圧電駆動部131a~131fを有し、第3圧電駆動部131a~131fに印加される駆動電圧に応じて駆動する。駆動部130bは、第4圧電駆動部132a~132fを有し、第4圧電駆動部132a~132fに印加される駆動電圧に応じて駆動する。
【0026】
一対の駆動部130aおよび130bが駆動することにより、可動部101、第1捻れ梁111a、第2捻れ梁111b、第1駆動梁110a、第2駆動梁110b、および第1支持部120は、一体として第2揺動軸Ex周りに揺動する。
【0027】
第2支持部140は、可動部101、第1捻れ梁111a、第2捻れ梁111b、第1駆動梁110a、第2駆動梁110b、第1支持部120、並びに一対の駆動部130aおよび130bを囲うように形成された矩形枠状の支持体である。
【0028】
電極接続部150は、第2支持部140の+Z側の面上に形成され、第1圧電駆動部112a、第2圧電駆動部112b、第3圧電駆動部131a~131fおよび第4圧電駆動部132a~132fに、アルミニウム(Al)等の電極配線を介して電気的に接続している。
【0029】
制御装置11は、検出部330と、駆動制御部331と、を有する。制御装置11は、電極接続部150を介して第1圧電駆動部112a、第2圧電駆動部112b、第3圧電駆動部131a~131fおよび第4圧電駆動部132a~132fそれぞれに駆動電圧を印加する。
【0030】
検出部330は、第1歪み抵抗160a、第2歪み抵抗160b、第3歪み抵抗160cおよび第4歪み抵抗160dの各抵抗値に基づいて、第1揺動軸Ey周りの可動部101の揺動角度情報を出力する。検出部330は、オペアンプ等により構成される。揺動角度情報は、可動部101の第1揺動軸Ey周りの揺動角度を示す情報、または可動部101の第1揺動軸Ey周りの揺動角度に関連する情報である。
【0031】
駆動制御部331は、第1駆動梁110a、第2駆動梁110b、一対の駆動部130a及び130bそれぞれの駆動を制御する。また駆動制御部331は、検出部330から出力される揺動角度情報に基づいて駆動電圧を制御することにより、第1揺動軸Ey周りの可動部101の揺動角度を制御できる。
【0032】
可動装置13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板がエッチング処理等により成形される。成形された基板上に反射面14、第1圧電駆動部112a、第2圧電駆動部112b、第3圧電駆動部131a~131f、第4圧電駆動部132a~132f、電極接続部150等が一体的に形成される。なお、これらの各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行われてもよいし、SOI基板の成形中に行われてもよい。
【0033】
図2に示すように、可動装置13が成形されるSOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなるシリコン支持層161と、シリコン支持層161上(+Z方向側)に形成された酸化シリコン層162と、酸化シリコン層162上に形成された単結晶シリコンからなるシリコン活性層163と、を含む。酸化シリコン層162は、BOX(Buried Oxide)層と称することもできる。
【0034】
シリコン活性層163は、X方向またはY方向に対してZ方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163のみで構成された部材は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。
【0035】
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば、可動装置13の形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
【0036】
可動部101は、例えば、円形状の可動部基体102と、可動部基体の+Z側の面上に形成された反射面14と、を含む。可動部基体102は、例えば、シリコン活性層163を含む。反射面14は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜を含む。
【0037】
第3圧電駆動部131a~131fおよび第4圧電駆動部132a~132fは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203がこの順に積層されて構成される。上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)または白金(Pt)等を含んでいる。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を含んでいる。
【0038】
下部電極201には駆動電圧が印加され、上部電極203は接地(GND)している。なお、上部電極203又は下部電極201は、それぞれが電極接続部150と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。また下部電極201を接地(GND)とし、上部電極203に駆動電圧が印加されでもよい。
【0039】
可動部基体102の-Z側の面に可動部補強用のリブ103が形成されている。リブ103は、例えば、シリコン支持層161及び酸化シリコン層162を含み、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制する。但し、リブ103は必須の構成部ではない。
【0040】
図3に示すように、第2捻れ梁111bは、シリコン活性層163を含む。また、第2圧電駆動部112bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極301、圧電部302、上部電極303がこの順に積層されて構成される。上部電極303及び下部電極301は、例えば金(Au)または白金(Pt)等を含んでいる。圧電部302は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を含んでいる。
【0041】
下部電極301には駆動電圧が印加され、上部電極303は接地(GND)している。なお、上部電極303又は下部電極301は、それぞれが電極接続部150と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。また下部電極301を接地(GND)とし、上部電極303に駆動電圧が印加されでもよい。
【0042】
本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層163の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば-Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面および他面の双方に設けられても良い。
【0043】
また、可動部101を第1揺動軸Ey周りおよび第2揺動軸Ex周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は、本実施形態において示した形状に限定されない。例えば、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bや、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bが曲率を有する形状であってもよい。
【0044】
さらに、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bの上部電極303の+Z側の面上、第1支持部120の+Z側の面上、一対の駆動部130a及び130bの上部電極203の+Z側の面上、第2支持部140の+Z側の面上の少なくとも何れか1つに酸化シリコン膜からなる絶縁層が形成されていてもよい。
【0045】
絶縁層の上に電極配線を設け、また、上部電極203、上部電極303、下部電極201および下部電極301と、電極配線と、が接続される接続スポットのみ、開口部として部分的に絶縁層を除去または絶縁層を形成しない。この構成により、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110b、一対の駆動部130a及び130b、並びに電極配線の設計自由度を上げ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制できる。また、酸化シリコン膜は、反射防止材としての機能も備える。
【0046】
<制御装置11による制御>
可動装置13の第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bを駆動させる制御装置11による制御について簡単に説明する。
【0047】
第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bが有する圧電部302は、分極方向に正または負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bは、逆圧電効果を利用して可動部101を揺動させる。
【0048】
可動部101の反射面14がXY平面に対して+Z方向または-Z方向へ傾いたときのXY平面と反射面14によりなす角度を、振れ角とよぶ。+Z方向を正の振れ角、-Z方向を負の振れ角とする。
【0049】
圧電部302に、上部電極303及び下部電極301を介して駆動電圧が並行に印加されると、それぞれの圧電部302が変形する。この圧電部302の変形により、第1圧電駆動部112aおよび第2圧電駆動部112bが屈曲変形する。この結果、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの捻れを介して可動部101に第1揺動軸Ey周りの駆動力が作用し、可動部101が第1揺動軸Ey周りに揺動する。第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bに印加される駆動電圧は、駆動制御部331によって制御される。
【0050】
駆動制御部331によって、第1圧電駆動部112aおよび第2圧電駆動部112bに所定の正弦波波形の駆動電圧を並行に印加することにより、可動部101を、第1揺動軸Ey周りに駆動電圧の周期により揺動させることができる。
【0051】
例えば、駆動電圧の周波数が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合には、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの捻れによる機械的共振が生じるのを利用して、可動部101を約20kHzで共振揺動させることができる。
【0052】
[第1実施形態]
<第1~第4歪み抵抗160周辺の詳細構成例>
図4は、第1~第4歪み抵抗160周辺の詳細構成を例示する平面図である。図4に示すように、第1歪み抵抗160aは、第1揺動軸Eyよりも第1駆動梁110aの自由端側(-X方向側)に配置されている。第3歪み抵抗160cは、第1揺動軸Eyよりも第2駆動梁110bの自由端側(-X方向側)に配置されている。第2歪み抵抗160bは、第1揺動軸Eyよりも第1駆動梁110aの固定端側(+X方向側)に配置されている。第4歪み抵抗160dは、第1揺動軸Eyよりも第2駆動梁110bの固定端側(+X方向側)に配置されている。第1~第4歪み抵抗160は、ホイーストンブリッジ回路を構成している。
【0053】
距離Daは、第1歪み抵抗160aと第1揺動軸Eyとの間の距離である。距離Dbは、第2歪み抵抗160bと第1揺動軸Eyとの間の距離である。距離Dcは、第3歪み抵抗160cと第1揺動軸Eyとの間の距離である。距離Ddは、第4歪み抵抗160dと第1揺動軸Eyとの間の距離である。
【0054】
本実施形態では、距離Da、Db、DcおよびDdは、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの捻れによる第1~第4歪み抵抗160の各抵抗値の変化率が略等しくなるように調整されている。この調整の結果、距離Daは距離Dbよりも長くなっており、距離Dcは距離Ddよりも長くなっている。
【0055】
<第1~第4歪み抵抗160の作用>
駆動電圧を印加し、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bを駆動させると、第1駆動梁110aには第1捻れ梁111aの捻れにより、第2駆動梁110bには第2捻れ梁111bの捻れにより、それぞれ応力がかかる。
【0056】
第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bにおいて、X方向では、自由端側には圧縮応力、固定端側には引張応力がかかる。また、自由端側の応力値は固定端側の応力値よりも小さくなり、丸みをおびたフィレット側に近づくにつれて応力値は大きくなる。一方、Y方向では、自由端側には引張応力、固定端側には圧縮応力がかかり、自由端側の応力値は固定端側の応力値よりも小さくなる。この応力によって、第1歪み抵抗160a、第2歪み抵抗160b、第3歪み抵抗160cおよび第4歪み抵抗160dの各抵抗値は変化する。
【0057】
距離Daと距離Dcが略等しい場合には、第1歪み抵抗160aおよび第3歪み抵抗160cの各位置において、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bそれぞれにかかる応力は等しくなる。同様に、距離Dbと距離Ddが略等しい場合には、第2歪み抵抗160bおよび第4歪み抵抗160dの各位置において、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bそれぞれにかかる応力は等しくなる。
【0058】
図5は、第1~第4歪み抵抗160を有するブリッジ回路を例示する図である。ホイーストンブリッジ回路に定電流iを印加した場合には、第1歪み抵抗160aおよび第3歪み抵抗160cの抵抗値R1は、R+ΔRで表され、第2歪み抵抗160bおよび第4歪み抵抗160dの抵抗値R2は、R+ΔRで表される。ここで、Rは応力がかかっていない場合における第1~第4歪み抵抗160それぞれの抵抗値を表す。
【0059】
ホイートストンブリッジ回路から出力される電圧信号ΔVは、キルヒホッフの法則より以下の(1)式のように表される。
ΔV=V1-V2={(R+ΔR-(R+ΔR}/(4×R+2×ΔR+2×ΔR)×i=(ΔR/R-ΔR/R)×R×i/2 ・・・(1)
【0060】
所定の応力がかかっている場合における歪み抵抗の変化率ΔR/Rは、2次項まで考慮すると、以下の(2)式のように表される。
ΔR/R≒π'11×σ+π'12×σ+π'66×σxy+π'111×σ +2×π'112×σ×σ+π'122×σ +π'166×σxy ・・・(2)
ここで、π'11、π'12、π'66、π'111、π'112、π'122、π'166は、それぞれ歪み抵抗係数を表している。
【0061】
第1歪み抵抗160aおよび第3歪み抵抗160cそれぞれにかかる応力をσa、σa、σaxyとし、第2歪み抵抗160bおよび第4歪み抵抗160dそれぞれにかかる応力をσb、σb、σbxyとする。
【0062】
(2)式を(1)式に代入して変形すると、次の(3)式のように表される。
ΔV=1/2{π'11×(σa-σb)+π'12×(σa-σb)+π'16×(σaxy-σbxy)+π'111×(σa -σb )+2×π'112×(σa×σa-σb×σb)+π'122×(σa -σb )+π'166×(σaxy -σbxy )}×R×i ・・・(3)
【0063】
片持ち梁の場合には、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの捻れ中心軸に該当する第1揺動軸Eyを対称中心にして第1~第4歪み抵抗160を対称に配置すると、各位置での応力が異なることにより、2次項の影響を無視できなくなる。この結果、可動部101の揺動角度と、検出部330により出力される揺動角度情報と、の関係は線形ではなくなる。但し、応力が小さい場合には、2次項は無視できるレベルになるため、可動部101の揺動角度と、検出部330により出力される揺動角度情報と、の関係は略線形になる。
【0064】
歪み抵抗係数のオーダーは、以下の値であるため、応力が数10MPa(10)以上になると無視できなくなる。すなわち、1次項は10-10×10=10-2オーダーとなり、2次項は10-19×1016=10-3オーダーとなり、2桁違うが無視できないレベルとなる。
【0065】
本実施形態では、第1歪み抵抗160aおよび第3歪み抵抗160cを第1揺動軸Eyに対して自由端側に配置し、第1歪み抵抗160aおよび第3歪み抵抗160cを第1揺動軸Eyに対して固定端側に配置する。また、距離Daおよび距離Dcを距離Dbおよび距離Ddよりも長くし、応力によって生じる抵抗変化率が同じぐらいになるように距離Da、Db、DcおよびDdを調整する。これらにより、可動部101の揺動角度とホイートストンブリッジ回路から出力される電圧信号ΔVとの関係が略線形になり、可動部101の揺動角度と電圧信号ΔVとの関係を簡単な1次式により表現可能になる。
【0066】
<第1~第4歪み抵抗160の効果>
次に、第1~第4歪み抵抗160の効果について説明する。
【0067】
従来、MEMSデバイスを用いた可動装置として、両持ち支持され、可動部を揺動可能に支持する一対の捻れ梁と、可動部の揺動軸を中心に対称となる位置に配置された一対の歪み抵抗と、を有し、一対の歪み抵抗と外部の一対の固定素子とにより構成されるホイートストンブリッジ回路を用いて、可動部の揺動角度を検出可能なものが開示されている。
【0068】
しかしながら、駆動梁を片持ち支持する構造では、捻れ梁の捻れに応じて駆動梁にかかる応力の大きさは、可動部の揺動軸に対して対称ではない。このため、可動部の揺動軸を対称中心にして歪み抵抗を対称に配置すると、可動部の揺動角度とホイートストンブリッジ回路からの電圧信号との関係が線形にならず、揺動角度を検出する精度が低下する場合があった。
【0069】
本実施形態に係る可動装置13では、第1歪み抵抗160aは、第1揺動軸Eyよりも第1駆動梁110aの自由端側に配置され、第3歪み抵抗160cは、第1揺動軸Eyよりも第2駆動梁110bの自由端側に配置され、第2歪み抵抗160bは、第1揺動軸Eyよりも第1駆動梁110aの固定端側に配置され、第4歪み抵抗160dは、第1揺動軸Eyよりも第2駆動梁110bの固定端側に配置される。また、第1歪み抵抗160aと第1揺動軸Eyとの間の距離Daは、第2歪み抵抗160bと第1揺動軸Eyとの間の距離Dbよりも長く、第3歪み抵抗160cと第1揺動軸Eyとの間の距離Dcは、第4歪み抵抗160dと第1揺動軸Eyとの間の距離Ddよりも長い。
【0070】
上記構成により、第1~第4歪み抵抗160における各抵抗値の変化率が略等しくなることにより、可動部101の揺動角度とホイートストンブリッジ回路から出力される電圧信号ΔVとの関係が略線形になるため、可動部101の揺動角度と電圧信号ΔVとの関係を1次式により表現可能になる。これにより、本実施形態では、可動部101の揺動角度を高精度に検出でき、可動部101の揺動角度の制御が容易になるとともに高精度な制御が可能になる。この結果、本実施形態では、可動部101の揺動角度を検出する精度に優れた可動装置13を提供できる。
【0071】
また、本実施形態では、第1揺動軸Eyと交差する第2揺動軸Ex周りに可動部101を揺動させる一対の駆動部130aおよび130bを有し、第1~第4歪み抵抗160(第1乃至第4歪み抵抗)のそれぞれの長手方向は、第1揺動軸Eyに沿う方向である。この構成により、可動装置13は、第1揺動軸Eyおよび第2揺動軸Exの2軸周りに可動部101を揺動させることができ、可動部101の反射面14に入射する光を2軸方向に走査できる。
【0072】
また、本実施形態では、一対の駆動部130aおよび130bを支持する第2支持部140を有し、一対の駆動部130aおよび130bのそれぞれは、複数の梁部135と、複数の梁部135を折り返し接続する接続部136と、を有する。一対の駆動部130aおよび130bそれぞれの一端は、第1支持部120に接続し、一対の駆動部130aおよび130bそれぞれの他端は、第2支持部140に接続する。この構成により、可動装置13は、第2揺動軸Ex周りに大きな振れ角により可動部101を揺動させることができる。
【0073】
但し、一対の駆動部130aおよび130b並びに第2支持部140は、実施形態に係る可動装置13の必須の構成部ではない。可動装置13は、一対の駆動部130aおよび130b並びに第2支持部140を有さなくても、可動部101の揺動角度を検出する精度に優れるという効果を得ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、第1~第4歪み抵抗160は、半導体を材料とするピエゾ素子である。第1~第4歪み抵抗160としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を材質とするものを用いることも考えられるが、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの捻れに伴う応力が大きい。このため、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を材質とする歪み抵抗を用いると、応力により歪み抵抗がシリコン基板から剥離する場合がある。本実施形態では、半導体を材料とする第1~第4歪み抵抗160を用いており、第1~第4歪み抵抗160は拡散層として形成されているため、このような剥離が生じない。
【0075】
なお、本実施形態では、距離Daと距離Dcが略等しく、且つ距離Dbと距離Ddとが略等しい構成を例示したが、これらに限定されるものではない。第1~第4歪み抵抗160において、第1駆動梁110aおよび第2駆動梁110bにかかる応力に応じた抵抗変化率が略等しければ、距離Daと距離Dcは必ずしも等しくなくてよいし、距離Dbと距離Ddは必ずしも等しくなくてよい。
【0076】
また、本実施形態では、第2歪み抵抗160bが第1揺動軸Eyよりも第1駆動梁110aの固定端側に配置され、第4歪み抵抗160dが第1揺動軸Eyよりも第2駆動梁110bの固定端側に配置される構成を例示したが、これに限定されるものではない。距離Daが距離Dbよりも長く、距離Dcが距離Ddよりも長ければ、第2歪み抵抗160bが第1揺動軸Eyよりも第1駆動梁110aの自由端側に配置され、第4歪み抵抗160dが第1揺動軸Eyよりも第2駆動梁110bの自由端側に配置されてもよい。
【0077】
<変形例>
実施形態に係る可動装置は様々な変形が可能である。以下に各変形例について説明する。なお、上述した実施形態に係る可動装置13と同一の構成部には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0078】
(第1変形例)
図6は、第1変形例に係る第1~第4歪み抵抗160A周辺の詳細構成を例示する平面図である。図7は、図6のVII-VII切断線に沿った断面図である。図8は、第1~第4歪み抵抗160Aを含むブリッジ回路を例示する図である。
【0079】
本変形例では、結晶面(001)面のシリコン(Si)における第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの長手方向は第1揺動軸Eyと略平行である。第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの結晶軸方向が<110>である場合には、P型のピエゾ抵抗である第1~第4歪み抵抗160Aを、その長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ同じ向きになるように配置する。つまり、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向は、<110>方向と平行である。N型基板のシリコンに対してP型抵抗であってもよい。
【0080】
第1~第4歪み抵抗160Aは、第1歪み抵抗160Aa、第2歪み抵抗160Ab、第3歪み抵抗160Acおよび第4歪み抵抗160Adを含む。第1歪み抵抗160Aaおよび第3歪み抵抗160Abは第1駆動梁110aに配置され、第2歪み抵抗160Acおよび第4歪み抵抗160Adは第2駆動梁110bに配置される。
【0081】
本変形例では、P型シリコンにN-WELLを形成してそのN-WELL内にP型抵抗を形成してもよい。この場合には、P型基板電位は、第1~第4歪み抵抗160Aに印加される最小電位以下とし、N-WELL電位は、第1~第4歪み抵抗160Aに印加される最大電圧と寄生PNダイオードの順方向電圧Vfとの差以上の電位とする。
【0082】
第1~第4歪み抵抗160Aの長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ平行になるように配置すると、第1~第4歪み抵抗160Aの歪み抵抗係数を最も大きく設定できる。但し、多少角度がずれても、±30度程度までであれば、第1~第4歪み抵抗160Aの歪み抵抗係数の感度をある程度確保できるため、第1~第4歪み抵抗160Aを使用可能である。
【0083】
金属配線と第1~第4歪み抵抗160Aやシリコン基板とを接続するコンタクト部分は、第1~第4歪み抵抗160Aやシリコン基板よりも不純物濃度が高い拡散層になっている。この構成により、金属配線とのコンタクト性を高めることができる。なお、図6~8ではP+拡散がP-拡散に包括されているが、P+拡散エッジとP-拡散エッジとは段差が無くフラットな状態であってもよい。この点は、以降に示す図12~14、図18~20においても同様とする。
【0084】
図6および図7において、接続端子Pd5およびPd7は、NW電位をとる接続端子である。一般に、接続端子Pd5およびPd7は最大電位になる。接続端子Pd6およびPd8は、P型基板電位をとる接続端子である。一般に、接続端子Pd5およびPd7は最小電位になり、多くはGND電位になる。接続端子Pd1~Pd8はいずれも金属材料により構成されている。
【0085】
図8において、回路81は、定電圧を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示し、回路82は、定電流を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示している。
【0086】
第1~第4歪み抵抗160Aの作用効果は、第1~第4歪み抵抗160と同様である。
【0087】
(第2変形例)
図9は、第2変形例に係る第1~第4歪み抵抗160B周辺の詳細構成を例示する平面図である。図10は、図9のX-X切断線に沿った断面図である。図11は、第1~第4歪み抵抗160Bを含むブリッジ回路を例示する図である。
【0088】
本変形例では、結晶面(001)面のシリコンにおける第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの結晶軸方向が<110>である場合には、N型のピエゾ抵抗である第1~第4歪み抵抗160Bを、その長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ45度をなすように配置する。P型基板のシリコンに対してN型抵抗であってもいい。この場合には、P型基板の電位は、第1~第4歪み抵抗160Bに印加される最小電位以下になる。
【0089】
第1~第4歪み抵抗160Bは、第1歪み抵抗160Ba、第2歪み抵抗160Bb、第3歪み抵抗160Bcおよび第4歪み抵抗160Bdを含む。第1歪み抵抗160Baおよび第3歪み抵抗160Bbは第1駆動梁110aに配置され、第2歪み抵抗160Bcおよび第4歪み抵抗160Bdは第2駆動梁110bに配置される。
【0090】
第1~第4歪み抵抗160Bを、その長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ45度をなすように配置すると、第1~第4歪み抵抗160Bの歪み抵抗係数を最も大きく設定できる。但し、多少角度がずれても、±15度程度までであれば、第1~第4歪み抵抗160Bの歪み抵抗係数の感度をある程度確保できるため、第1~第4歪み抵抗160Bを使用可能である。
【0091】
図9および図10において、Pd6およびPd8は、P型基板電位をとる接続端子である。一般に、接続端子Pd4、Pd6およびPd8は、GND電位になる。
【0092】
図11において、回路83は、定電圧を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示し、回路84は、定電流を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示している。
【0093】
第1~第4歪み抵抗160Bの作用効果は、第1~第4歪み抵抗160と同様である。
【0094】
(第3変形例)
図12は、第3変形例に係る第1~第4歪み抵抗160C周辺の詳細構成を例示する平面図である。図13は、図12のXIII-XIII切断線に沿った断面図である。図14は、第1~第4歪み抵抗160Cを含むブリッジ回路を例示する図である。
【0095】
本変形例では、結晶面(001)面のシリコンにおける第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの結晶軸方向が<100>である場合には、N型のピエゾ抵抗である第1~第4歪み抵抗160Cを、その長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ同じ向きになるように配置する。つまり、第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向は、<100>方向と平行である。P型基板のシリコンに対してN型抵抗であってもよい。この場合にはP型基板の電位は、第1~第4歪み抵抗160Cに印加される最小電位以下になる。
【0096】
第1~第4歪み抵抗160Cは、第1歪み抵抗160Ca、第2歪み抵抗160Cb、第3歪み抵抗160Ccおよび第4歪み抵抗160Cdを含む。第1歪み抵抗160Caおよび第3歪み抵抗160Cbは第1駆動梁110aに配置され、第2歪み抵抗160Ccおよび第4歪み抵抗160Cdは第2駆動梁110bに配置される。
【0097】
第1~第4歪み抵抗160Cを、その長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ平行になるように配置すると、第1~第4歪み抵抗160Cの歪み抵抗係数を最も大きく設定できる。但し、多少角度がずれても、±15度程度までであれば、第1~第4歪み抵抗160Cの歪み抵抗係数の感度をある程度確保できるため、第1~第4歪み抵抗160Cを使用可能である。
【0098】
図12および図13において、Pd6およびPd8は、P型基板電位をとる接続端子である。一般に、接続端子Pd4、Pd6およびPd8はGND電位になる。
【0099】
図14において、回路85は、定電圧を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示し、回路86は、定電流を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示している。
【0100】
第1~第4歪み抵抗160Cの作用効果は、第1~第4歪み抵抗160と同様である。
【0101】
(第4変形例)
図15は、第4変形例に係る第1~第4歪み抵抗160D周辺の詳細構成を例示する平面図である。図16は、図15のXVI-XVI切断線に沿った断面図である。図17は、第1~第4歪み抵抗160Dを含むブリッジ回路を例示する図である。
【0102】
本変形例では、結晶面(001)面のシリコンにおける第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bの結晶軸方向が<100>である場合には、P型のピエゾ抵抗である第1~第4歪み抵抗160Dを、その長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ45度をなすように配置する。N型基板のシリコンに対してP型抵抗であってもいい。この場合には、N型基板の電位は、第1~第4歪み抵抗160Dに印加される最大電位以上になる。
【0103】
P型シリコンにN-WELLを形成してそのN-WELL内にP型抵抗を形成してもよい。この場合には、P型基板の電位は、第1~第4歪み抵抗160Dに印加される最小電位以下になり、N-WELL電位は、第1~第4歪み抵抗160Dに印加される最大電圧と寄生PNダイオードの順方向電圧Vfとの差以上の電位になる。
【0104】
第1~第4歪み抵抗160Dは、第1歪み抵抗160Da、第2歪み抵抗160Db、第3歪み抵抗160Dcおよび第4歪み抵抗160Ddを含む。第1歪み抵抗160Daおよび第3歪み抵抗160Dbは第1駆動梁110aに配置され、第2歪み抵抗160Dcおよび第4歪み抵抗160Ddは第2駆動梁110bに配置される。
【0105】
第1~第4歪み抵抗160Dを、各長手方向が第1捻れ梁111aおよび第2捻れ梁111bそれぞれの長手方向とほぼ45度になるように配置すると、第1~第4歪み抵抗160Dの歪み抵抗係数を最も大きく設定できる。但し、多少角度がずれても、±30度程度までであれば、第1~第4歪み抵抗160Dの歪み抵抗係数の感度をある程度確保できるため、第1~第4歪み抵抗160Dを使用可能である。
【0106】
図15および図16において、Pd5およびPd7は、NW電位をとる接続端子である。一般に、接続端子Pd5およびPd7は最大電位となる。Pd6およびPd8は、P型基板の電位をとる接続端子である。一般に、接続端子Pd4、Pd6およびPd8は最小電位となり、多くはGND電位となる。
【0107】
図17において、回路87は、定電圧を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示し、回路88は、定電流を印加する場合のホイーストンブリッジ回路を示している。
【0108】
第1~第4歪み抵抗160Dの作用効果は、第1~第4歪み抵抗160と同様である。
【0109】
(第5~第8変形例)
図18は、第5変形例に係る第1~第4歪み抵抗160E周辺の詳細構成を例示する平面図である。図19は、図18のXIX-XIX切断線に沿った断面図である。図20は、第1~第4歪み抵抗Eを含むブリッジ回路例の図である。
【0110】
図21は、第6変形例に係る第1~第4歪み抵抗160F周辺の詳細構成を例示する平面図である。図22は、図21のXXII-XXII切断線に沿った断面図である。図23は、第1~第4歪み抵抗Fを含むブリッジ回路を例示する図である。
【0111】
図24は、第7変形例に係る第1~第4歪み抵抗160G周辺の詳細構成を例示する平面図である。図25は、図24のXXV-XXV切断線に沿った断面図である。図26は、第1~第4歪み抵抗Gを含むブリッジ回路を例示する図である。
【0112】
図27は、第8変形例に係る第1~第4歪み抵抗160H周辺の詳細構成を例示する平面図である。図28は、図27のXXVIII-XXVIII切断線に沿った断面図である。図29は、第1~第4歪み抵抗Hを含むブリッジ回路を例示する図である。
【0113】
第1~第4変形例ではP型基板を用いたのに対し、第5~第8変形例ではN型基板を用いている。第5~第8変形例における第1~第4歪み抵抗160E、160F、160Gおよび160Hの各作用効果は、第1~第4歪み抵抗160と同様である。
【0114】
[その他の好適な実施形態]
上述した実施形態に係る可動装置13は、各種のシステム及び装置に適用可能である。以下では、可動装置13の各種システム及び装置への適用例を説明する。
【0115】
<光走査システム>
まず、本実施形態の可動装置を適用した光走査システムについて、図30図33を参照尾して詳細に説明する。図30には、光走査システムの一例の概略図が示されている。図30に示すように、光走査システム10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を可動装置13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。
【0116】
光走査システム10は、制御装置11、光源装置12、反射面14を有する可動装置13により構成される。
【0117】
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。可動装置13は、例えば反射面14を有し、反射面14が可動するMEMSデバイスである。
【0118】
光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
【0119】
制御装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12および可動装置13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12および可動装置13に駆動信号を出力する。光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向または2軸方向の少なくともいずれかに回転振動させる。
【0120】
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御装置11の制御によって、可動装置13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復回転振動させ、その結果、反射面14に入射する光源装置12からの照射光をある1軸周りに偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。なお、本実施形態の可動装置の詳細および制御装置による制御の詳細については後述する。
【0121】
次に、光走査システム10の一例のハードウェア構成について図31を用いて説明する。図31は、光走査システム10の一例のハードウェア構成図である。図31に示すように、光走査システム10は、制御装置11、光源装置12および可動装置13を備え、それぞれが電気的に接続されている。このうち、制御装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26を備えている。
【0122】
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0123】
RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0124】
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0125】
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25および可動装置ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
【0126】
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
【0127】
光源装置ドライバ25は、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0128】
可動装置ドライバ26は、入力された制御信号に従って可動装置13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0129】
制御装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0130】
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
【0131】
制御装置11は、CPU20の命令および図31に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
【0132】
次に、光走査システム10の制御装置11の機能構成について図32を用いて説明する。図32は、光走査システムの制御装置11の一例の機能ブロック図である。
【0133】
図32に示すように、制御装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
【0134】
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。駆動信号出力部31は、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または可動装置13に駆動信号を出力する。
【0135】
駆動信号は、光源装置12または可動装置13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、可動装置13においては、可動装置13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。
【0136】
次に、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について図33を用いて説明する。図33は、光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
【0137】
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および可動装置13に出力する。ステップS14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の回転振動を行う。光源装置12および可動装置13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
【0138】
なお、上記光走査システム10では、1つの制御装置11が光源装置12および可動装置13を制御する装置および機能を有しているが、光源装置用の制御装置および可動装置用の制御装置と、別体に設けてもよい。
【0139】
また、上記光走査システム10では、1つの制御装置11に光源装置12および可動装置13の制御部30の機能および駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した可動装置13と制御装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
【0140】
このように、実施形態の可動装置13を光走査システムに適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に光走査可能な光走査システムを提供できる。
【0141】
<距離測定装置>
次に、上記本実施形態の可動装置を適用した距離測定装置について、図34図36を参照して詳細に説明する。距離測定装置は、対象方向の物体までの距離を測定する装置であり、例えばレーザレーダ装置である。
【0142】
図34および図35は、レーザレーダ装置を、自動車の前照灯を搭載する灯部ユニットに搭載した自動車の概略図である。また、図36はレーザレーダ装置の一例の概略図である。
【0143】
図34および図35に示すように、レーザレーダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702までの距離を測定する。自動車701は車両の一例であり、移動体の一例である。
【0144】
図36に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメータレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する可動装置13で1軸もしくは2軸方向に走査される。そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12および可動装置13は、制御装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。すなわち、反射光は入射光検出受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理装置708に出力する。信号処理装置708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
【0145】
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、または受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
【0146】
反射面14を有する可動装置13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。このようなレーサレーダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を測定することができる。
【0147】
上記距離測定装置では、一例としてのレーザレーダ装置700の説明をしたが、距離測定装置は、反射面14を有した可動装置13を制御装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702までの距離を測定する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0148】
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材等にも同様に適用することができる。従って、レーザレーダ装置700は、物体認識装置の一例ということもできる。
【0149】
このように、実施形態の可動装置13を距離測定装置に適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に光走査可能な距離測定装置を提供できる。距離測定装置による測定範囲を所望の寸法で一定に維持することができる。
【0150】
<計測装置>
次に、実施形態に係る可動装置13を適用した計測装置について、図37及び図38を用いて詳細に説明する。ここでは、パターン投影法を用いて対象物の三次元計測を行う三次元計測装置を計測装置の一例とする。図37は、三次元計測装置の構成の一例を示すブロック図である。図38は、三次元計測装置により対象物に計測用パターンが投影されている状態を示す図である。
【0151】
図37に示すように、三次元計測装置1は、計測情報取得ユニット20と、制御ユニット300と、を有する。
【0152】
計測情報取得ユニット20は、投影装置2と、カメラ装置21と、を有する。図37に示す投影装置2は、VCSELアレイ(垂直共振器面発光レーザアレイ:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)3と、光学系4と、可動装置13と、を有する。VCSELアレイ3を光源とすることにより、発光間隔を細かくでき、且つ集光点を複数形成できる。
【0153】
計測情報取得ユニット20は、制御ユニット300の制御部310の制御に従い、VCSELアレイ3に含まれる複数の発光素子の光を可動装置13により偏向させて計測領域の対象物に投影する。制御部310は、VCSELアレイ3の各発光素子の輝度と点灯タイミングを制御することで、図38に示すように、対象物7を含む計測領域全体に所定の計測用パターンの投影光6を投影する。
【0154】
計測用パターンとして、VCSELアレイ3の発光素子の点灯及び消灯(オン/オフ)を制御することで、白黒のグレイコードパターン等の所定の投影パターンが投影される。図37では、VCSELアレイ3の光をライン状へとするための光学系4が光源部とは独立して設けられているが、光源部に含まれていてもよい。
【0155】
カメラ装置21は、投影装置2が対象物に投影する投影光6の投影中心41が撮像領域40の略中心となるように固定された位置及び角度で、上述の計測領域を撮像する。
【0156】
カメラ装置21は、受光光学系であるレンズ210、撮像素子211を有する。撮像素子211としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のイメージセンサ等を用いることができる。カメラ装置21に入射した光は、レンズ210を介して撮像素子211上に結像して光電変換される。撮像素子211で光電変換により生成された画像信号は、制御ユニット300の演算処理部320に供給される。
【0157】
レンズ210には、VCSELアレイ3の発光波長を透過する狭帯域のフィルタを用いてもよい。これにより、計測時の周辺光(蛍光灯などの外乱となる光)の影響を抑え、精度の良い計測を可能とすることができる。なお、レンズ210の前段に狭帯域フィルタを設けてもよい。この場合も、同じ効果を得ることができる。
【0158】
制御ユニット300は、投影装置2によって、計測用パターン光の投影制御及びカメラ装置21による撮像制御等を行い、カメラ装置21が撮像した画像に関する情報に基づいて、計測対象の三次元計測等の演算処理を行う。なお、制御部310は、投影装置2が投影する計測用パターン光を別のパターン光に切り替える制御を行ってもよい。また、制御部310は、演算処理部320が三次元座標の算出に用いるキャリブレーション情報を出力制御してもよい。
【0159】
制御ユニット300の演算処理部320は、供給された画像に関する情報に基づいて、対象物7の三次元形状に対応する三次元座標、又は、三次元座標に関する情報を算出(計測)する。演算処理部320は、算出された三次元形状を示す三次元形状情報を、制御部310の制御に従ってパーソナルコンピュータ装置等の外部機器に出力してもよい。
【0160】
なお、図37は、制御ユニット300に対して1組の計測情報取得ユニット20が設けられている例であるが、制御ユニット300に対し複数組の計測情報取得ユニット20を設けてもよい。また、図37では計測情報取得ユニット20と制御ユニット300が独立して設けられている例であるが、制御ユニット300の一部又は全てが計測情報取得ユニット20に含まれていてもよい。
【0161】
このように実施形態に係る可動装置を計測装置に適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に計測可能な計測装置を提供できる。
【0162】
<ロボット>
次に、実施形態に係る可動装置13を適用したロボットについて、図39を用いて詳細に説明する。図39は、ロボット70の多関節を有するロボットアームを示す図である。
【0163】
図39において、多関節アームであるロボットアーム72は、対象物7をピッキングするためのハンド部71を備え、ハンド部71の直近に三次元計測装置1が設けられている。ロボットアーム72は、それぞれ屈曲可能な複数の関節を備え、ハンド部71の位置及び姿勢を、制御に従い変更する。
【0164】
三次元計測装置1は、光の投影方向がハンド部71の向く方向に一致するように設けられ、ハンド部71のピッキング対象を計測の対象物7として計測する。
【0165】
ロボット70は、ロボットアーム72に設けられた三次元計測装置1により、ピッキングの対象物7を近距離から計測することができる。このため、カメラ装置等により、ピッキングの対象物7を遠方からの計測する場合と比較して、計測精度の向上を図ることができる。例えば、工場の様々な組立てライン等におけるFA分野においては、部品の検査及び認識等のために、ロボットアーム72を備えるロボット70が利用される。ロボット70に三次元計測装置1を設けることにより、部品の検査及び認識を精度よく行うことができる。
【0166】
また、測距用の撮像画像に無効領域が存在する場合、画像信号及び三次元形状に基づき、補完データの取得が可能となる位置及び姿勢を示す位置姿勢情報を、ロボットアーム72にフィードバックする。これにより、ロボットアーム72の制御を簡易に行うことができ、データ補完した計測結果より、より高精度な部品検査又は認識等を行うことができる。
【0167】
また、計測器と計測対象の位置及び姿勢の関係が相対的に変更すればよい。このため、三次元計測装置1をロボットアーム72に設けているが、計測対象をロボットアーム72に設け、位置及び姿勢を変更しても良い。
【0168】
三次元計測装置1をロボットアーム72に搭載して、被計測物体を三次元計測する場合、三次元計測装置1から200mmの間隔が好適である。そのため、パターン光(ライン光)の出射光線の広がり角が21度以上必要となるが、本実施形態ではこれを達成する。
【0169】
このように実施形態に係る可動装置をロボットに適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に制御可能なロボットを提供できる。
【0170】
<光書込装置>
次に、本実施形態の可動装置を適用した光書込装置について図40および図41を用いて詳細に説明する。
【0171】
図40は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。光書込装置600は、電子機器の一例であり、また記録媒体に造形を観点から造形装置の一例である。また、図41は、光書込装置の一例の概略図である。
【0172】
図40に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
【0173】
図41に示すように、光書込装置600において、レーザ素子等の光源装置12からのレーザ光は、コリメータレンズ等の結像光学系601を経た後、反射面14を有する可動装置13により1軸方向または2軸方向に偏向される。そして、可動装置13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射可動部602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。また、光源装置12および反射面14を有する可動装置13は、制御装置11の制御に基づき駆動する。
【0174】
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0175】
上記光書込装置に適用される反射面14を有した可動装置13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。また、可動装置13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また可動装置13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
【0176】
このように、実施形態の可動装置13を光書込装置に適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に光走査可能な光書込装置を提供できる。
【0177】
[画像投影装置]
次に、本実施形態の可動装置を適用した画像投影装置について、図42および図43を参照して詳細に説明する。
【0178】
図42は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、図43はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。自動車400は移動体の一例である。
【0179】
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
【0180】
図42に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0181】
図43に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R、501G、501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメータレンズ502、503、504と、2つのダイクロイックミラー505、506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する可動装置13にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R、501G、501B、コリメータレンズ502、503、504、ダイクロイックミラー505、506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
【0182】
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0183】
レーザ光源501R、501G、501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ502、503、504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505、506により合成される。ダイクロイックミラー505、506は、それぞれ合成部の一例である。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する可動装置13によって二次元走査される。可動装置13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0184】
可動装置13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0185】
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した可動装置13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0186】
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボット等の非移動体に搭載されてもよい。
【0187】
このように、実施形態の可動装置13を画像投影装置に適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に光走査可能な画像投影装置を提供できる。また画像投影装置による投影範囲を所望の寸法で一定に維持することができる。
【0188】
[レーザヘッドランプ]
次に、本実施形態の可動装置を自動車のヘッドライトに適用したレーザヘッドランプ50について、図44を用いて説明する。図44は、レーザヘッドランプ50の構成の一例を説明する概略図である。
【0189】
レーザヘッドランプ50は、制御装置11と、光源装置12bと、反射面14を有する可動装置13と、ミラー51と、透明板52とを有する。
【0190】
光源装置12bは、青色のレーザ光を発する光源である。光源装置12bから発せられた光は、可動装置13に入射し、反射面14にて反射される。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面をXY方向に可動し、光源装置12bからの青色のレーザ光をXY方向に二次元走査する。
【0191】
可動装置13による走査光は、ミラー51で反射され、透明板52に入射する。透明板52は、表面又は裏面を黄色の蛍光体により被覆されている。ミラー51からの青色のレーザ光は、透明板52における黄色の蛍光体の被覆を通過する際に、ヘッドライトの色として法定される範囲の白色に変化する。これにより自動車の前方は、透明板52からの白色光で照明される。
【0192】
可動装置13による走査光は、透明板52の蛍光体を通過する際に所定の散乱をする。これにより自動車前方の照明対象における眩しさは緩和される。
【0193】
可動装置13を自動車のヘッドライトに適用する場合、光源装置12b及び蛍光体の色は、それぞれ青及び黄色に限定されない。例えば、光源装置12bを近紫外線とし、透明板52を、光の三原色の青色、緑色及び赤色の各蛍光体を均一に混ぜたもので被覆してもよい。この場合でも、透明板52を通過する光を白色に変換でき、自動車の前方を白色光で照明することができる。
【0194】
このように、実施形態の可動装置13をレーザヘッドランプに適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に光走査可能なレーザヘッドランプを提供できる。
【0195】
[ヘッドマウントディスプレイ]
次に、上記本実施形態の可動装置を適用したヘッドマウントディスプレイ60について、図45および図46を用いて説明する。ここでヘッドマウントディスプレイ60は、人間の頭部に装着可能な頭部装着型ディスプレイで、例えば、眼鏡に類する形状とすることができる。ヘッドマウントディスプレイを、以降ではHMDと省略して示す。
【0196】
図45は、HMD60の外観を例示する斜視図である。図45において、HMD60は、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント60a、及びテンプル60bにより構成されている。フロント60aは、例えば、導光板61により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル60bに内蔵することができる。
【0197】
図46は、HMD60の構成を部分的に例示する図である。なお、図46では、左眼用の構成を例示しているが、HMD60は右眼用としても同様の構成を有している。
【0198】
HMD60は、制御装置11と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面14を有する可動装置13と、導光板61と、ハーフミラー62とを有している。
【0199】
光源ユニット530は、上述したように、レーザ光源501R、501G、及び501Bと、コリメータレンズ502、503、及び504と、ダイクロイックミラー505、及び506とを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、レーザ光源501R、501G、及び501Bからの三色のレーザ光は、ダイクロイックミラー505及び506で合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。
【0200】
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置13に入射する。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面14をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われ、走査光によりカラー画像が形成される。
【0201】
可動装置13による走査光は、導光板61に入射する。導光板61は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー62に導光する。導光板61は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
【0202】
ハーフミラー62は、導光板61からの光をHMD60の背面側に反射し、HMD60の装着者63の眼の方向に出射する。ハーフミラー62は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー62での反射により、装着者63の網膜に結像する。或いは、ハーフミラー62での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者63の網膜に結像する。またハーフミラー62での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者63は、XY方向に走査される光で形成される画像を、観察することができる。
【0203】
62はハーフミラーであるため、装着者63には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して観察される。ハーフミラー62に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを観察できる構成としてもよい。
【0204】
このように、実施形態の可動装置13をヘッドマウントディスプレイに適用することにより、可動部101の揺動を精度よく制御でき、高精度に光走査可能なヘッドマウントディスプレイを提供できる。
【0205】
[パッケージング]
次に、本実施形態の可動装置のパッケージングについて図47を用いて説明する。
【0206】
図47は、パッケージングされた可動装置の一例の概略図である。
【0207】
図47に示すように、可動装置13は、パッケージ部材801の内側に配置される取付部材802に取り付けられ、パッケージ部材の一部を透過部材803で覆われて、密閉されることでパッケージングされる。さらに、パッケージ内は窒素等の不活性ガスが密封されている。これにより、可動装置13の酸化による劣化が抑制され、さらに温度等の環境の変化に対する耐久性が向上する。
【0208】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0209】
なお、上述した実施形態では、可動部に反射面を設ける構成を例示したが、これに限定されるものではなく、可動部が回折格子、フォトダイオード、ヒータ(例えば、SiNを用いたヒータ)、光源(例えば、面発光型レーザ)等の他の光学素子を備えたり、反射面と他の光学素子の両方を備えたりすることもできる。
【符号の説明】
【0210】
1 三次元計測装置(計測装置の一例)
10 光走査システム
11 制御装置
12、12b 光源装置
13 可動装置
14 反射面
15 被走査面
25 光源装置ドライバ
26 可動装置ドライバ
30 制御部
31 駆動信号出力部
50 レーザヘッドランプ
51 ミラー
52 透明板
60 ヘッドマウントディスプレイ
60a フロント
60b テンプル
61 導光板
62 ハーフミラー
63 装着者
70 ロボット
101 可動部
102 可動部基体
110a 第1駆動梁
110b 第2駆動梁
111a 第1捻れ梁
111b 第2捻れ梁
112a 第1圧電駆動部
112b 第2圧電駆動部
120 第1支持部
130a、130b 一対の駆動部
131a~131f 第3圧電駆動部
132a~132f 第4圧電駆動部
140 第2支持部
150 電極接続部
160、160A、160B、160C、160D、160E、160F、160G、160H 第1~第4歪み抵抗
160a、160Aa、160Ba、160Ca、160Da、160Ea、160Fa、160Ga、160Ha 第1歪み抵抗
160b、160Ab、160Bb、160Cb、160Db、160Eb、160Fb、160Gb、160Hb 第2歪み抵抗
160c、160Ac、160Bc、160Cc、160Dc、160Ec、160Fc、160Gc、160Hc 第3歪み抵抗
160d、160Ad、160Bd、160Cd、160Dd、160Ed、160Fd、160Gd、160Hd 第4歪み抵抗
201、301 下部電極
202、302 圧電部
203、303 上部電極
330 検出部
331 駆動制御部
500 ヘッドアップディスプレイ装置(画像投影装置の一例)
600 光書込装置(電子機器の一例、造形装置の一例)
700 レーザレーダ装置(距離測定装置の一例、物体認識装置の一例)
701 自動車(車両の一例、移動体の一例)
Da、Db、Dc、Dd 距離
Ex 第2揺動軸
Ey 第1揺動軸
Pd1~Pd8 接続端子
V1、V2 電圧
i 定電流
【先行技術文献】
【特許文献】
【0211】
【特許文献1】特許5441533号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47