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特開2023-108200感光性樹脂、その感光性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、その硬化性樹脂組成物を樹脂層として有するドライフィルム、その硬化性樹脂組成物または樹脂層の硬化物、その硬化物を有する電子部品、およびその感光性樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108200
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】感光性樹脂、その感光性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、その硬化性樹脂組成物を樹脂層として有するドライフィルム、その硬化性樹脂組成物または樹脂層の硬化物、その硬化物を有する電子部品、およびその感光性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20230728BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230728BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230728BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C08F290/14
G03F7/004 512
G03F7/027 515
H05K3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009192
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】521310392
【氏名又は名称】太陽ファインケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】土橋 祐大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓実
(72)【発明者】
【氏名】佐原 豪
【テーマコード(参考)】
2H225
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AD06
2H225AE14P
2H225AN36P
2H225AP11P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB151
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD111
4J127BE331
4J127BE33Y
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF191
4J127BF19X
4J127BF251
4J127BF25Y
4J127BF391
4J127BF39Z
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG111
4J127BG11X
4J127BG11Y
4J127BG11Z
4J127BG171
4J127BG17Z
4J127CB371
4J127DA12
4J127DA34
4J127DA52
4J127EA13
4J127FA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板の現像部分において樹脂組成物の残渣を十分に抑制することができると共に、硬化後の低反り化を実現することのできる感光性樹脂、その感光性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、およびその感光性樹脂の製造方法を主に提供する。
【解決手段】ノボラック型フェノール樹脂に、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させ、次いで付加後のアルキレンオキシド由来のヒドロキシル基に、アクリル酸等の不飽和カルボン酸を反応させ、さらに前記ヒドロキシル基に無水フタル酸等の2塩基酸を反応させてカルボキシル基を付与した感光性樹脂、その感光性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、およびその感光性樹脂の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学構造式(1):
【化1】
で表される構成単位および下記化学構造式(2):
【化2】
で表される構成単位
(上記化学構造式(1)および(2)中、
およびXはそれぞれ独立してアルキレン基から選択され、
は直接結合およびアルキレン基から選択され、
は酸無水物残基から選択され、
およびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、またはアラルキル基から選択され、
およびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、シアノ基、ビニル基、またはRおよびRが互いに連結して形成されるアルキレン基から選択され、
kおよびmはそれぞれ独立して0.3~10のいずれかの値を表す。)
を主鎖として有するか、および/または
下記化学構造式(3):
【化3】
で表される構成単位および下記化学構造式(4):
【化4】
で表される構成単位
(上記化学構造式(3)および(4)中、
およびXはそれぞれ独立してアルキレン基から選択され、
は直接結合およびアルキレン基から選択され、
は酸無水物残基から選択され、
は-OH、-O-(X-O)-H、および、
【化5】
から選択され、
、R、R13、R16はそれぞれ独立して水素原子、およびアルキル基から選択され、
、R、R14、R15はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、および芳香族炭化水素環基から選択され、
10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、シアノ基、ビニル基、またはR10およびR11が互いに連結して形成されるアルキレン基から選択され、
12は-OH、-O-(X-O)-H、および
【化6】
から選択され、
nおよびpはそれぞれ独立して0.3~10のいずれかの値を表す。)
を主鎖として有する感光性樹脂であって、
前記化学構造式(1)における下記基(1):
【化7】
および前記化学構造式(3)における下記基(3):
【化8】
に対する、前記化学構造式(2)における下記基(2):
【化9】
および前記化学構造式(4)における下記基(4):
【化10】
のモル比(前記基(2)および(4)/前記基(1)および(3)のモル比;なお、前記感光性樹脂に含まれていない前記化学構造式(1)~(4)における前記基(1)~(4)についてはこのモル比の計算において除外される)がH-NMRによる測定によって0.7以上であることを特徴とする感光性樹脂。
【請求項2】
前記モル比が2.0以下であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂。
【請求項3】
請求項1または2記載の感光性樹脂と光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
絶縁材料として用いられることを特徴とする請求項3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3または4記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項6】
請求項3または4記載の硬化性樹脂組成物または請求項5記載のドライフィルムにおける樹脂層の硬化反応物であることを特徴とする硬化物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【請求項8】
(1)ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)における水酸基に対してアルキレンオキサイド(b)を反応させて、アルコール性水酸基を末端に得る工程、および
(2)不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c)と酸無水物化合物(d)とを前記アルコール性水酸基に対して反応させる工程
を含む、請求項1または2記載の感光性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂(特には、ソルダーレジスト用途に好適な感光性樹脂)、およびその感光性樹脂の製造方法に関する。更に、その感光性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、その硬化性樹脂組成物を樹脂層として有するドライフィルム、その硬化性樹脂組成物または樹脂層の硬化物、その硬化物を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の高性能化に伴い、プリント配線板および半導体パッケージ基板等において回路の高密度化が望まれている。この回路の高密度化によって、これらの基板の最外層に形成される感光性の永久マスクレジスト(ソルダーレジストまたは表面保護膜とも呼ばれる)には、より高い解像性が必要とされている。特に、モバイル機器(例えば、スマートフォン、タブレット端末、およびノートパソコン)に搭載される高性能な半導体パッケージにおいて形成される永久マスクレジストには、フリップチップ化に伴って、微小な丸穴の解像性が要求されている。その丸穴の開口径は、バンプピッチの狭ピッチ化に伴って、年々小さくなっている。
【0003】
一方、半導体パッケージ基板は全体として薄型化が進んでおり、この薄型化に伴って永久マスクレジストも薄膜化する必要がある。この薄膜化によって、レジスト用樹脂組成物の硬化収縮を起因とする反りが大きな問題となっている。
また、こうした半導体パッケージ基板の薄型化においては、使用する材料が、基板の形成時において基板の変形に影響を与えないことが強く要求されている。半導体パッケージ基板の最外層に形成される永久マスクレジスト用樹脂組成物については、基板が変形しないように、その永久マスクレジストの低反り化が特に求められている。
【0004】
この低反り化の達成は、一般には、樹脂組成物に含まれる無機フィラーの高充填化、樹脂の高架橋化、および、樹脂の剛直骨格化によって行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂と、カルボキシル基含有光重合性樹脂と、光重合開始剤と、無機フィラーと、光重合性化合物とを含有し、その無機フィラーは、球状で、平均比重が3以上であり、無機フィラーの含有量は、固形分中80~98質量%であり、光重合性化合物は、フルオレン骨格を有する光重合性化合物を含有するソルダーレジスト用樹脂組成物が開示されている。また、特許文献1には、そのソルダーレジスト用樹脂組成物が、回路基板との密着性が高く、回路基板の反りを低減させることができることが開示されている。さらにソルダーレジスト層付き回路基板は、例えば、回路基板の準備、ソルダーレジスト用フィルムの配置、パターン状の紫外線照射、現像などにより形成され得ることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6811416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、硬化後の低反り化を実現するために樹脂組成物に含まれる無機フィラーを高充填化した場合には、現像工程において樹脂組成物の未露光部分を洗い流しきれずに樹脂組成物が残渣として残ってしまう問題、すなわち、現像性が悪化してしまう問題が生じることがある。
従って、本発明の目的は、基板の現像部分において樹脂組成物の残渣を十分に抑制することができ、更に硬化後の低反り化も実現することのできる感光性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意研究を進めたところ、下記化学構造式(1):
【化1】
で表される構成単位および下記化学構造式(2):
【化2】
で表される構成単位
(上記化学構造式(1)および(2)中、
およびXはそれぞれ独立してアルキレン基から選択され、
は直接結合およびアルキレン基から選択され、
は酸無水物残基から選択され、
およびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、またはアラルキル基から選択され、
およびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、シアノ基、ビニル基、またはRおよびRが互いに連結して形成されるアルキレン基から選択され、
kおよびmはそれぞれ独立して0.3~10のいずれかの値を表す。)
を主鎖として有するか、および/または
下記化学構造式(3):
【化3】
で表される構成単位および下記化学構造式(4):
【化4】
で表される構成単位
(上記化学構造式(3)および(4)中、
およびXはそれぞれ独立してアルキレン基から選択され、
は直接結合およびアルキレン基から選択され、
は酸無水物残基から選択され、
は-OH、-O-(X-O)-H、および、
【化5】
から選択され、
、R、R13、R16はそれぞれ独立して水素原子、およびアルキル基から選択され、
、R、R14、R15はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、および芳香族炭化水素環基から選択され、
10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、シアノ基、ビニル基、またはR10およびR11が互いに連結して形成されるアルキレン基から選択され、
12は-OH、-O-(X-O)-H、および
【化6】
から選択され、
nおよびpはそれぞれ独立して0.3~10のいずれかの値を表す。)
を主鎖として有する感光性樹脂であって、
前記化学構造式(1)における下記基(1):
【化7】
および前記化学構造式(3)における下記基(3):
【化8】
に対する、前記化学構造式(2)における下記基(2):
【化9】
および前記化学構造式(4)における下記基(4):
【化10】
のモル比(前記基(2)および(4)/前記基(1)および(3)のモル比;なお、前記感光性樹脂に含まれていない前記化学構造式(1)~(4)における前記基(1)~(4)ついてはこのモル比の計算において除外される)がH-NMRによる測定によって0.7以上であることを特徴とする感光性樹脂において、基板の現像部分において樹脂組成物の残渣を十分に抑制することができ、更に硬化後の低反り化も実現することができることを見出した。
【0009】
本発明による感光性樹脂の好ましい態様によれば、前記モル比が2.0以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記感光性樹脂と光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
また、本発明による硬化性樹脂組成物の好ましい態様によれば、絶縁材料として用いられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とするドライフィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、前記硬化性樹脂組成物または前記ドライフィルムにおける樹脂層の硬化反応物であることを特徴とする硬化物に関する。
【0014】
また、本発明は、前記硬化物を有することを特徴とする電子部品に関する。
【0015】
また、本発明は、
ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)における水酸基に対してアルキレンオキサイド(b)を反応させて、アルコール性水酸基を末端に得る工程、および
(2)不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c)と酸無水物化合物(d)とを前記アルコール性水酸基に対して反応させる工程、
を含む、前記感光性樹脂の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂層の未露光部分において樹脂組成物の残渣を十分に抑制することができると共に硬化後の低反り化も実現することのできる感光性樹脂、およびその感光性樹脂の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、その感光性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、その硬化性樹脂組成物を樹脂層として有するドライフィルム、その硬化性樹脂組成物または樹脂層の硬化物、その硬化物を有する電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[感光性樹脂]
本発明の感光性樹脂は、下記化学構造式(1):
【化11】
で表される構成単位および下記化学構造式(2):
【化12】
で表される構成単位
(上記化学構造式(1)および(2)中、XおよびXはそれぞれ独立してアルキレン基から選択され、
は直接結合およびアルキレン基から選択され、
は酸無水物残基から選択され、
およびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、またはアラルキル基から選択され、
およびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、シアノ基、ビニル基、またはRおよびRが互いに連結して形成されるアルキレン基から選択され、
kおよびmはそれぞれ独立して0.3~10のいずれかの値を表す。)
を主鎖として有するか、および/または
下記化学構造式(3):
【化13】
で表される構成単位および下記化学構造式(4):
【化14】
で表される構成単位
(上記化学構造式(3)および(4)中、XおよびXはそれぞれ独立してアルキレン基から選択され、
は直接結合およびアルキレン基から選択され、
は酸無水物残基から選択され、
は-OH、-O-(X-O)-H、および、
【化15】
から選択され、
、R、R13、R16はそれぞれ独立して水素原子、およびアルキル基から選択され、
、R、R14、R15はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、および芳香族炭化水素環基から選択され、
10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、シアノ基、ビニル基、またはR10およびR11が互いに連結して形成されるアルキレン基から選択され、
12は-OH、-O-(X-O)-H、および
【化16】
から選択され、
nおよびpはそれぞれ独立して0.3~10のいずれかの値を表す。)
を主鎖として有する感光性樹脂であって、
前記化学構造式(1)における下記基(1):
【化17】
および前記化学構造式(3)における下記基(3):
【化18】
に対する、前記化学構造式(2)における下記基(2):
【化19】
および前記化学構造式(4)における下記基(4):
【化20】
のモル比(前記基(2)および(4)/前記基(1)および(3)のモル比;なお、前記感光性樹脂に含まれていない前記化学構造式(1)~(4)における前記基(1)~(4)ついてはこのモル比の計算において除外される)がH-NMRによる測定によって0.7以上であることを特徴とする感光性樹脂である。
この構成によって、基板の現像部分において樹脂組成物の残渣を十分に抑制することができ、更に硬化後の低反り化も実現することができる。
【0018】
上記化学構造式(1)~(4)におけるX~Xは、それぞれ独立して、アルキレン基(具体的には、直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基)である。
直鎖状のアルキレン基は、好ましくは、炭素数2~10の直鎖状のアルキレン基[一般式:-(CH)n-(nは2以上の整数)](例えば、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカメチレン基)である。
分岐状のアルキレン基は、上記の直鎖状のアルキレン基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基によって置換された基である。分岐状のアルキレン基は、好ましくは、炭素数3~10の分岐状のアルキレン基(例えば、アルキルエチレン基(メチルエチレン基(-CH(CH)CH-、-CHCH(CH)-)など))である。
【0019】
上記化学構造式(1)および(3)におけるYおよびYは、それぞれ独立して、直接結合またはアルキレン基(具体的には、直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基)である。
直鎖状のアルキレン基は、好ましくは、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基[一般式:-(CH)n-(nは1以上の整数)](例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカメチレン基)である。
分岐状のアルキレン基は、上記の直鎖状のアルキレン基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基によって置換された基である。分岐状のアルキレン基は、好ましくは、炭素数2~6の分岐状のアルキレン基(例えば、アルキルメチレン基(メチルメチレン基(-CH(CH)-)など)である。
【0020】
上記化学構造式(2)および(4)におけるZおよびZは、それぞれ独立して、後述の酸無水物化合物(d)の酸無水物残基である。
【0021】
上記化学構造式(1)~(4)におけるR、R、R、R、R13、およびR16は、水素原子、アルキル基(具体的には、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)、芳香族炭化水素環基(具体的には、非置換若しくは置換の芳香族炭化水素環基)、またはアラルキル基である。
直鎖状若しくは分岐状のアルキル基は、好ましくは、炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分岐状のプロピル基(例えば、n-プロピル基、イソプロピル基)、直鎖状若しくは分岐状のブチル基(例えば、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、直鎖状若しくは分岐状のペンチル基、直鎖状若しくは分岐状のヘキシル基、直鎖状若しくは分岐状のへプチル基、直鎖状若しくは分岐状のオクチル基、直鎖状若しくは分岐状のノニル基、直鎖状若しくは分岐状のデシル基、直鎖状若しくは分岐状のウンデシル基、および直鎖状若しくは分岐状のドデシル基)である。
非置換の芳香族炭化水素環基は、好ましくは、炭素数4~10の芳香族炭化水素環基(例えば、フェニル基、ナフチル基)である。置換の芳香族炭化水素環基は、上記の非置換の芳香族炭化水素環基における少なくとも1個の水素原子が、例えば、アルキル基(例えば、メチル基)によって置換されている。この例としては、トリル基が挙げられる。
アラルキル基は、好ましくは、炭素数7~9のアラルキル基(例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基(クミル基))である。
【0022】
上記化学構造式(1)および(3)におけるR、R、R10、およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(具体的には、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)、芳香族炭化水素環基(具体的には、非置換若しくは置換の芳香族炭化水素環基)、芳香族複素環基(具体的には、非置換若しくは置換の芳香族複素環基)、シアノ基、ビニル基(具体的には、置換または非置換のビニル基)、またはRおよびRが互いに連結して形成されるアルキレン基、R10およびR11が互いに連結して形成されるアルキレン基(具体的には、非置換若しくは置換のアルキレン基)である。
直鎖状若しくは分岐状の非置換のアルキル基は、好ましくは、炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分岐状のプロピル基(例えば、n-プロピル基、イソプロピル基)、直鎖状若しくは分岐状のブチル基(例えば、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、直鎖状若しくは分岐状のペンチル基、直鎖状若しくは分岐状のヘキシル基、直鎖状若しくは分岐状のへプチル基、直鎖状若しくは分岐状のオクチル基、直鎖状若しくは分岐状のノニル基、直鎖状若しくは分岐状のデシル基、直鎖状若しくは分岐状のウンデシル基、および直鎖状若しくは分岐状のドデシル基)である。
直鎖状若しくは分岐状の置換のアルキル基は、上記の直鎖状若しくは分岐状の非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が、例えば、下記の非置換若しくは置換の芳香族炭化水素環基および/または下記の非置換若しくは置換の芳香族複素環基によって置換されている。この例としては、フルフリル基が挙げられる。
非置換の芳香族炭化水素環基は、好ましくは、炭素数4~10の芳香族炭化水素環基(例えば、フェニル基、ナフチル基)である。置換の芳香族炭化水素環基は、非置換の芳香族炭化水素環基における少なくとも1個の水素原子が、例えば、ヒドロキシル基および/またはアルキル基(例えば、メチル基)によって置換されている。この例としては、フェノール基およびトリル基が挙げられる。
非置換若しくは置換の芳香族複素環基は、非置換若しくは置換の芳香族炭化水素環基の環を構成する炭素原子の少なくとも1個が酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から選ばれる原子によって置き換わったものである。この例としては、フリル基が挙げられる。
置換のビニル基は、非置換のビニル基(CH=CH-)における少なくとも1個の水素原子が、例えば、炭素数4~10の芳香族炭化水素環基(例えば、フェニル基)および/または炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基)によって置換されている。この例としては、スチリル基が挙げられる。
【0023】
上記化学構造式(3)および(4)におけるR、R、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(具体的には、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)、芳香族炭化水素環基(具体的には、非置換若しくは置換の芳香族炭化水素環基)である。
直鎖状若しくは分岐状のアルキル基は、好ましくは、炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖状若しくは分岐状のプロピル基(例えば、n-プロピル基、イソプロピル基)、直鎖状若しくは分岐状のブチル基(例えば、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、直鎖状若しくは分岐状のペンチル基、直鎖状若しくは分岐状のヘキシル基、直鎖状若しくは分岐状のへプチル基、直鎖状若しくは分岐状のオクチル基、直鎖状若しくは分岐状のノニル基、直鎖状若しくは分岐状のデシル基、直鎖状若しくは分岐状のウンデシル基、および直鎖状若しくは分岐状のドデシル基)である。
非置換の芳香族炭化水素環基は、好ましくは、炭素数4~10の芳香族炭化水素環基(例えば、フェニル基、ナフチル基)である。置換の芳香族炭化水素環基は、上記の非置換の芳香族炭化水素環基における少なくとも1個の水素原子が、例えば、アルキル基(例えば、メチル基)によって置換されている。この例としては、トリル基が挙げられる。
【0024】
本発明の感光性樹脂の数平均分子量(g/mol)は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1000~5,000である。
【0025】
上記化学構造式(1)~(4)で表される構成単位以外に感光性樹脂が含む化合物としては、例えば、上記化学構造式(1)および(2)で表される構成単位以外の構成単位については、未反応のフェノール性水酸基を有するノボラック型フェノールや、ノボラック型フェノールのフェノール性水酸基にアルキレンオキシドが付加した化合物などが挙げられ、上記化学構造式(3)および(4)で表される構成単位以外の構成単位については、ビスフェノールを構成する各フェノールの両方ともが、未反応のフェノール性水酸基を有するノボラック型フェノールである化合物および/またはその未反応のフェノール性水酸基にアルキレンオキシドが付加した化合物などが挙げられる。
【0026】
本発明の感光性樹脂における上記化学構造式(1)および(3)で表される構成単位は、ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)とアルキレンオキシド(b)との付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)に対して不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c)を付加させた化合物に相当する。本発明の感光性樹脂における上記化学構造式(2)および(4)で表される構成単位は、ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)とアルキレンオキシド(b)との付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)に対して酸無水物化合物(d)を付加させた化合物に相当する。
【0027】
上記ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)は、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応によって得ることができる。この反応は、通常、酸性触媒の存在下で行なわれる。
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、クミルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF等が挙げられる。これらの化合物を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
上記アルキレンオキシド(b)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。これらの化合物を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
上記ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)に対するアルキレンオキシド(b)の付加割合は、ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)のフェノール性水酸基1当量当り、0.3~10.0モルが好ましい。0.3~10.0モルの場合、感光性樹脂において、光硬化性と熱硬化性のバランスに優れる。
ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)に対するアルキレンオキシド(b)の付加反応は、例えば、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属化合物、または、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第四級塩基性塩化合物、または、アルカリ金属化合物と第四級塩基性塩化合物の混合物の存在下において、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、およびこれらの混合溶媒を用いて、80~180℃、常圧~10kg/cmで行なわれる。特にケトン類および芳香族炭化水素類を単独でまたは2種以上を混合した溶媒が好適に用いられる。
【0030】
不飽和炭化水素を有するカルボン酸(c)としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-3-ブテン酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。不飽和炭化水素を有するカルボン酸エステル(c)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の前記不飽和炭化水素を有するカルボン酸のエステル化物が挙げられる。これらの化合物を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中において、アクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましい。
【0031】
上記酸無水物化合物(d)としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族または芳香族二塩基酸無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または芳香族四塩基酸二無水物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、脂環式二塩基酸無水物および芳香族二塩基酸無水物が特に好ましい。
【0032】
本発明の感光性樹脂における前記基(2)および(4)/前記基(1)および(3)のモル比(なお、前記感光性樹脂に含まれていない前記化学構造式(1)~(4)における前記基(1)~(4)ついてはこのモル比の計算において除外される)については、その下限値は、0.7以上であり、その上限値は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下である。これら下限値および上限値は、任意に組み合わせることができる。
前記基(2)および(4)/前記基(1)および(3)のモル比を上記範囲とすることによって、現像残渣を十分に抑制することができ、更に硬化後の低反り化も実現することができる。
【0033】
本発明の感光性樹脂における前記基(2)および(4)/前記基(1)および(3)のモル比は、H-NMRによる測定によって、具体的には、H-NMRによる測定によって算出される面積比を元に計算することによって得られるものである。
前記基基(1)および(3)のモル比については、不飽和基に由来するピーク(例えば、5.9~6.5ppm付近に確認されるピーク)における面積比を元に計算することによって得ることができる。前記基(2)のモル比については、カルボキシル基に由来するピーク(例えば、5.5~5.9ppm付近に確認されるピーク)における面積比を元に計算することによって得ることができる。
このピークは、当業者の技術範囲において適宜決定することができる。
【0034】
前記基(2)および(4)/前記基(1)および(3)のモル比についての上記範囲のモル比は、例えば、下記の条件を考慮して、得ることができる。なお、下記の条件は一般的な反応条件の一例に過ぎず、下記の一般的な反応条件以外の条件を考慮して、上記範囲のモル比を得ることもできる。
前記基(1)および(3)(すなわち、不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c))のモル数は、理論上、ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)とアルキレンオキシド(b)との付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、0.1~0.6molの付加モル数が好ましい。
実際の反応では、不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c)を或る程度過剰に添加することが好ましく、具体的には、フェノール性水酸基1molに対して、1.0~2.0molの付加モル数で添加することが好ましい。なお、1.0mol以上の場合には、理論上の目的付加モル数(0.1~0.6mol)を達成しやすくなり、2.0mol以下の場合には、未反応の不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c)が少なくなり、最終の感光性樹脂において不純物として残りにくく、加えて合成のコストダウンにも繋がる。
【0035】
(c)の付加反応時において、反応触媒および重合禁止剤を加えることが好ましい。
反応触媒としては、酸系触媒(例えば、硫酸、塩酸、燐酸、フッ化ホウ素、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂)が好ましい。その添加量については、例えばメタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸の場合には、添加される(c)100mol%に対して、0.5~5.0mol%が好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン(例えば、メチルハイドロキノン)、メチルハイドロキノン、フェノール(例えば、4‐メトキシフェノール)、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロールが好適に用いられる。重合禁止剤の添加量については、キノン系の場合には、添加される(c)100mol%に対して、0.01~0.2mol%が好ましく、フェノール系の場合には、添加される(c)100mol%に対して、0.01mol~0.5mol%が好ましい。
【0036】
(c)の付加反応時おける反応温度は80~130℃が好ましく、そして反応時間は0.3時間~48時間が好ましい。上記反応温度および/または上記反応時間の場合には、未反応成分を少なくしつつ、副反応を抑えたりそして/または感光性樹脂の透過率を高くすることができる。なお、透過率の低下は残渣に影響するために、この透過率は、特に300nm~800nmの波長範囲において樹脂塗膜1μmに対して90%以上の透過率が好ましい。
【0037】
(c)の付加反応において使用される反応溶媒としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、メチルクロロホルム、ジイソプロピルエーテル、および、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が好適に用いられる。これらの溶媒は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
前記基(2)および(4)(すなわち、酸無水物化合物(d))のモル数は、理論上、ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)とアルキレンオキシド(b)との付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、0.2~0.8molの付加モル数が好ましい。
実際の反応では、酸無水物化合物(d)を或る程度過剰に添加することが好ましく、具体的には、フェノール性水酸基1molに対して、1.0~1.5molの付加モル数で添加することが好ましい。なお、1.0mol以上の場合には、理論上の目的付加モル数(0.2~0.8mol)を達成しやすく、1.5mol以下の場合には、目的のモル比を得るためのコントロールが容易であり、加えて合成のコストダウンにも繋がる。
【0039】
(d)の付加反応は、反応触媒の存在下または非存在下で行うことができる。反応触媒としては、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等を使用することができる。その添加量については、例えばホスフィン系触媒の場合には、添加される(d)100mol%に対して0.005~0.03mol%が好ましい。
【0040】
触媒(例えば、ホスフィン系触媒)を使用する場合には、上記0.005~0.03mol%の添加量で、反応温度が80~110℃であり、そして反応時間が4~8時間が好ましい。触媒を使用しない場合には、反応温度が80~110℃であり、そして反応時間が4~10時間が好ましい。
上記反応温度および/または反応時間の場合には、未反応分を少なくしつつ、副反応を抑えることができる。
重合禁止剤として、ハイドロキノンまたは酸素等を使用することができる。
【0041】
(d)の付加反応において使用される反応溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種類以上の混合物として使用することができる。
【0042】
[硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物は、上記感光性樹脂と光重合開始剤、感光性モノマー、熱硬化性樹脂、および/または無機フィラーとを含有することができる。例えば、硬化性樹脂組成物は、上記感光性樹脂と光重合開始剤とを含有することができる。
硬化性樹脂組成物は、例えば、プリント配線板のソルダーレジスト、フレキシブルプリント配線板のカバーレイや多層プリント配線板の層間絶縁材などの絶縁材料として好適に使用することができる。
(感光性樹脂)
上記感光性樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部(固形分として、以下同様)に対して、好ましくは3~85質量部、より好ましくは5~60質量部である。
【0043】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、特に限定されず、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;
2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;
1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;
ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;
アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;
チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;
アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;
アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;
エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ)-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;
フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。これらは、単独で、または、複数を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、BASFジャパン(株)社製のOXE02(オキシムエステル類)が挙げられる。
前記光重合開始剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは1~8質量部である。
【0044】
(感光性モノマー)
前記感光性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコール若しくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物および/またはプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能若しくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、および上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を使用することができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
市販品としては、例えば、日本化薬(株)社製のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)が挙げられる。
前記感光性モノマーの配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
【0045】
(熱硬化性樹脂)
前記熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。特に、本発明においては、エポキシ化合物を好適に用いることができ、これらは併用してもよい。
上記エポキシ化合物としては、1個以上のエポキシ基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、中でも、2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物などのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。これらは、要求特性に合わせて、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、エポキシ樹脂としては、例えば、DIC(株)社製のN-665(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のEPICLON 840、850、850-S、1050、2055、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学社製のスミ-エポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL903、DIC社製のEPICLON 152、165、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学社製のスミ-エポキシESB-400、ESB-700等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のEPICLON N-730、N-770、N-865、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、日本化薬社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、NC-3000、NC-3000L、住友化学社製のスミ-エポキシESCN-195X、ESCN-220、日鉄ケミカル&マテリアル社製のYDCN-700-2、YDCN-700-3、YDCN-700-5、YDCN-700-7、YDCN-700-10、YDCN-704 YDCN-704A、DIC社製のEPICLON N-680、N-690、N-695(いずれも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のEPICLON 830、三菱ケミカル社製jER807、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)、三菱ケミカル社製のYX8034等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER604、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYH-434、住友化学社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル社製のセロキサイド2021等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-933、日本化薬社製のEPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型若しくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、ADEKA社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL-931等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日油社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ESN-190、ESN-360、DIC社製HP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;DIC社製HP-7200、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日油社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;CTBN変性エポキシ樹脂(例えば日鉄ケミカル&マテリアル社製のYR-102、YR-450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記熱硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1~60質量部、より好ましくは1~40質量部である。
【0046】
(無機フィラー)
前記無機フィラーとしては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等を使用することができる。市販品としては、例えば、アドマテックス社(株)製のSO-C2(シリカ)が挙げられる
前記無機フィラーの配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは98質量部以下、より好ましくは15~85質量部である。
【0047】
(任意成分)
硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0048】
[ドライフィルム]
ドライフィルムは、セパレータフィルム上に硬化性樹脂組成物を樹脂層として塗布して、乾燥させることによって得ることができる。この乾燥条件は、例えば、60~130℃にて2~60分である。この乾燥では、公知の乾燥手段を用いることができる。
【0049】
[硬化物]
硬化物は、硬化性樹脂組成物またはドライフィルムにおける樹脂層を硬化することによって得ることができる。硬化物は、例えば、回路形成された基板において硬化性樹脂組成物を公知の方法で塗布して(または、公知の方法でドライフィルムを付着して)、その後、露光工程(ドライフィルムを使用する場合には、露光後にセパレータフィルムを剥離して)、現像工程、本硬化工程を行うことによって得ることができる。
得られる硬化物は、特にフレキシブルプリント配線板に対するカバーレイやソルダーレジスト(絶縁性硬化膜)として好適である。
回路形成された基板としては、例えば、ガラスポリイミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリカーボネートなどからなるフィルム等が挙げられるが、これらに限られず公知慣用の回路基板を用いることができる。
【0050】
(露光工程)
露光工程では、光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物に、例えば露光量が50mJ/cm~1000mJ/cmの条件にて光照射を行うことにより硬化性樹脂組成物を光硬化させることができる。光照射は、紫外線、電子線、化学線等の活性エネルギー線の照射により行われる。所定部分に活性エネルギー線を照射する方法としては、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線を照射する方法でもよく、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)を用いてもよい。
【0051】
(現像工程)
現像工程では、アルカリ水溶液による現像により、未露光部を除去して、ネガ型のパターン状の硬化膜を形成することができる。現像方法としては、ディッピング等の公知の方法によることができる。また、現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、アミン類、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液、または、これらの混合液を用いることができる。
【0052】
(本硬化工程)
本硬化工程によって、現像工程後の硬化物を完全に熱硬化させて信頼性の高い硬化物を得ることができる。加熱条件は、例えば、120℃~180℃にて5分~120分である。なお、加熱硬化後さらに活性エネルギー線を照射してもよく、加熱硬化前に活性エネルギー線を照射してもよい。
【0053】
[硬化物を有する電子部品]
本発明は、硬化物を有する電子部品も提供する。本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれる。本発明の硬化物は、これらの絶縁性硬化膜として好適である。
【0054】
[感光性樹脂の製造方法]
本発明による感光性樹脂は、主に、以下の工程を含む製造方法によって得ることができる:
(1)ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)における水酸基に対してアルキレンオキサイド(b)を反応させて、アルコール性水酸基を末端に得る工程、および
(2)不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c)と酸無水物化合物(d)とを前記アルコール性水酸基に対して反応させる工程。 上記反応工程の製造条件として、上記の[感光性樹脂]における反応条件を使用することができる。
ノボラック型フェノール樹脂および/またはノボラック型ビスフェノール樹脂(a)は、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応による工程によって得ることができる。
本発明による感光性樹脂の製造方法においては、不飽和炭化水素を有するカルボン酸若しくはそのカルボン酸エステル(c)を前記アルコール性水酸基に反応させて、続いて、酸無水物化合物(d)を残りのアルコール性水酸基に反応させることが好ましい。
【実施例0055】
以下、本発明の実施例等により具体的に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0056】
実施例において使用する感光性樹脂の合成方法(合成例1~4)および比較例において使用する感光性樹脂の合成方法(合成例5)を以下に説明する。
【0057】
[合成例1](フタル酸無水物(PA)/メタクリル酸(MA)[(d)/(c)]のモル比=0.7)
イオン交換水200質量部、シュウ酸1.8質量部、フェノール282質量部をフラスコに投入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。37%ホルムアルデヒド水溶液85.7質量部を0.5時間で滴下し、滴下終了後5時間反応を行った。次に、150℃まで昇温し、その温度で脱水を行い、ノボラック型樹脂(a)を得た。得られたノボラック型樹脂における未反応フェノールの割合をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定した。未反応フェノールの割合はチャート面積比から2%であった。なお、GPC測定は、Waters2695(Waters)を使用した。基準物質には標準ポリスチレンを用い、溶離液はテトラヒドロフランを0.5mL/分の流速で測定した(以下の合成例2~4におけるGPC測定条件も同様の条件である)。
得られたノボラック型樹脂(OH当量106g/eq)106.1質量部、トルエン100質量部、50%水酸化カリウム2.9質量部をオートクレーブに投入し、150℃に昇温した。続いてプロピレンオキサイド(b)59.3質量部をゆっくり導入し、窒素雰囲気下で8時間撹拌し、反応させた。反応終了後36%塩酸2.6質量部添加した。その後エバポレーターにて溶剤を留去し、反応生成物を得た。
得られた反応生成物150質量部、トルエン184質量部、メタクリル酸(c)64.5質量部(ノボラック型樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.5molの付加モル数)、メタンスルホン酸1.2質量部、4‐メトキシフェノール0.05質量部をフラスコに投入し、空気を吹き込みながら100℃で7時間撹拌し、反応により生じる水を、トルエンと共沸させ系外に排出させながら反応を行った。その後、室温まで冷却し、得られたアクリレート樹脂溶液を水酸化カルシウム40質量部で中和した。その後、濾過処理によりアクリレート樹脂溶液を単離した。
得られたアクリレート樹脂溶液のトルエンを留去しつつ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート170質量部で置換し、フタル酸無水物(d)51.8質量部(ノボラック型樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.0molの付加モル数)、4‐メトキシフェノール0.3質量部を添加して90℃の温度で6時間反応させ、(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液を得た。
【0058】
[合成例2](フタル酸無水物(PA)/2-メチル-3-ブテン酸[(d)/(c)]のモル比=0.8)
イオン交換水200質量部、シュウ酸1.8質量部、ビスフェノールE642質量部をフラスコに投入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。37%ホルムアルデヒド水溶液220.8質量部を0.5時間で滴下し、滴下終了後5時間反応を行った。次に、150℃まで昇温し、その温度で脱水を行い、ノボラック型樹脂(a)を得た。得られたノボラック型樹脂における未反応フェノールの割合をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定した。未反応フェノールの割合はチャート面積比から8%であった。
得られたノボラック型樹脂(OH当量113g/eq)113.1質量部、トルエン100質量部、50%水酸化カリウム2.9質量部をオートクレーブに投入し、150℃に昇温した。続いてプロピレンオキサイド(b)59.3質量部をゆっくり導入し、窒素雰囲気下で8時間撹拌し、反応させた。反応終了後36%塩酸2.6質量部添加した。その後エバポレーターにて溶剤を留去し、反応生成物を得た。
得られた反応生成物157質量部、トルエン184質量部、2-メチル-3-ブテン酸(c)75.2質量部(ノボラック型樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.5molの付加モル数)、メタンスルホン酸0.7質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部をフラスコに投入し、空気を吹き込みながら100℃で7時間撹拌し、反応により生じる水を、トルエンと共沸させ系外に排出させながら反応を行った。その後、室温まで冷却し、得られたアクリレート樹脂溶液を水酸化カルシウム40質量部で中和した。その後、濾過処理によりアクリレート樹脂溶液を単離した。
得られたアクリレート樹脂溶液のトルエンを留去しつつ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート170質量部で置換し、フタル酸無水物(d)63.0質量部(ノボラック型樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.0molの付加モル数)、4‐メトキシフェノール0.3質量部を添加して90℃の温度で6時間反応させ、(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液を得た。
【0059】
[合成例3](テトラヒドロ無水フタル酸/メタクリル酸(MA)[(d)/(c)]のモル比=1.0)
イオン交換水200質量部、シュウ酸1.8質量部、ビスフェノールE642質量部をフラスコに投入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。37%ホルムアルデヒド水溶液220.8質量部を0.5時間で滴下し、滴下終了後5時間反応を行った。次に、150℃まで昇温し、その温度で脱水を行い、ノボラック型樹脂(a)を得た。得られたノボラック型樹脂における未反応フェノールの割合をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定した。未反応フェノールの割合はチャート面積比から6%であった。
得られたノボラック型樹脂(OH当量113g/eq)113.1質量部、トルエン100質量部、50%水酸化カリウム2.9質量部をオートクレーブに投入し、150℃に昇温した。続いてプロピレンオキサイド(b)59.3質量部をゆっくり導入し、窒素雰囲気下で8時間撹拌し、反応させた。反応終了後36%塩酸2.6質量部添加した。その後エバポレーターにて溶剤を留去し、反応生成物を得た。
得られた反応生成物157質量部、トルエン184質量部、メタクリル酸(c)55.5質量部(ノボラック樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.5molの付加モル数)、メタンスルホン酸1質量部、4‐メトキシフェノール0.05質量部をフラスコに投入し、空気を吹き込みながら100℃で6時間撹拌し、反応により生じる水を、トルエンと共沸させ系外に排出させながら反応を行った。その後、室温まで冷却し、得られたアクリレート樹脂溶液を水酸化カルシウム40質量部で中和した。その後、濾過処理によりアクリレート樹脂溶液を単離した。
得られたアクリレート樹脂溶液のトルエンを留去しつつ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート170質量部で置換し、テトラヒドロ無水フタル酸(d)65.4質量部(ノボラック型樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.0molの付加モル数)、4‐メトキシフェノール0.3質量部を添加して90℃の温度で6時間反応させ、(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液を得た。
【0060】
[合成例4](フタル酸無水物(PA)/アクリル酸(AA)[(d)/(c)]のモル比=1.4)
イオン交換水200質量部、シュウ酸1.8質量部、ビスフェノールF600質量部をフラスコに投入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。37%ホルムアルデヒド水溶液182.4質量部を0.5時間で滴下し、滴下終了後5時間反応を行った。次に、150℃まで昇温し、その温度で脱水を行い、ノボラック型樹脂(a)を得た。得られたノボラック型樹脂における未反応フェノールの割合をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定した。未反応フェノールの割合はチャート面積比から6%であった。
得られたノボラック型樹脂(OH当量106g/eq)106.1質量部トルエン100質量部、50%水酸化カリウム2.9質量部をオートクレーブに投入し、150℃に昇温した。続いてプロピレンオキサイド(b)59.3質量部をゆっくり導入し、窒素雰囲気下で8時間撹拌し、反応させた。反応終了後36%塩酸2.6質量部添加した。その後エバポレーターにて溶剤を留去し、反応生成物を得た。
得られた反応生成物164質量部、トルエン184質量部、アクリル酸(c)43.2質量部(ノボラック型樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.5molの付加モル数)、p-トルエンスルホン酸1.7質量部、4‐メトキシフェノール0.05質量部をフラスコに投入し、空気を吹き込みながら100℃で6時間撹拌し、反応により生じる水を、トルエンと共沸させ系外に排出させながら反応を行った。その後、室温まで冷却し、得られたアクリレート樹脂溶液を水酸化カルシウム40質量部で中和した。その後、濾過処理によりアクリレート樹脂溶液を単離した。
得られたアクリレート樹脂溶液のトルエンを留去しつつ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート170質量部で置換し、フタル酸無水物(d)82.9質量部(ノボラック型樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.0molの付加モル数)、4‐メトキシフェノール0.3質量部を添加して100℃の温度で6時間反応させ、(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液を得た。
【0061】
[合成例5](テトラヒドロ無水フタル酸/アクリル酸(AA)[(d)/(c)]のモル比=0.5)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、群栄化学工業(株)製のノボラック型クレゾール樹脂(a)(商品名「レヂトップPSF―2803」、OH当量:109)109部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでプロピレンオキシド(b)60部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が167g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド付加物を得た。このアルキレンオキシド付加物において、アルキレンオキシドは、ノボラック型クレゾール樹脂の水酸基1当量当りに対して、平均1モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド付加物122部、アクリル酸(c)34部(ノボラック型クレゾール樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.5molの付加モル数)、p-トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05部、トルエン100部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、110℃で6時間反応させた。反応により生成した水がトルエンとの共沸混合物として留出し始めた後、さらに5時間反応させ、室温まで冷却した。得られた反応溶液を5%NaCl水溶液を用いて水洗し、エバポレーターにてトルエンを留去し、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、不揮発分60%のノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、撹拌器および還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05部、ピリジン0.2部を仕込み、この混合物を120℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸(d)23部(ノボラック型クレゾール樹脂とプロピレンオキサイドとの付加反応によって末端に生じた水酸基(アルコール性水酸基)1molに対して、1.0molの付加モル数)を加え、6時間反応させ、冷却後、(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液を得た。
【0062】
[実施例1~4および比較例1]
(硬化性樹脂組成物の調製)
表1に示す割合で各成分(合成例1~5の感光性樹脂、光重合開始剤、感光性モノマー、熱硬化性樹脂、および無機フィラー)を配合し、これらをディゾルバーで攪拌した(室温、回転数500rpm、5分間)。その後、ビーズミルを用いてジルコニアビーズ(1mm)にて分散を2時間行い、本発明としての硬化性樹脂組成物(実施例1~4)および比較例としての硬化性樹脂組成物(比較例1)を得た。なお、表1における数値は、特に断りが無い限り、質量部であり、固形分量である。
【0063】
(特性試験)
上記の各硬化性樹脂組成物について以下に示す特性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0064】
H-NMRの測定による(d)/(c)のモル比の算出>
得られた各硬化性樹脂組成物を重アセトンに溶解させ、H-NMR(400MHz)にて測定を行った。測定チャートにより、(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液における上記基(1)~(4)のそれぞれのモル比を得て、(d)/(c)のモル比(具体的には、基(2)および(4)/基(1)および(3)のモル比)を算出した。
上記基(1)~(4)を表すピークについては、例えば、アクリル酸(すなわ、基(1)および(3))の場合には5.9~6.5ppm付近に確認される不飽和基に由来するピークを使用し、テトラヒドロ無水フタル酸(すなわち、基(2)および(4))の場合には5.5~5.9ppm付近に確認される不飽和基に由来するピークを使用した。それぞれの帰属プロトン数および算出積分値から各モル比を算出した。(d)/(c)のモル比の結果を表1に示す。
【0065】
<(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液についての透過率の測定>
CaF板上に、固形分20wt%に調整した合成例1~5の(カルボキシル基含有)感光性樹脂の溶液を数滴滴下する。その後、スピンコーターにて均一に塗布し、90℃のホットプレート上にて乾燥した。乾燥後の塗膜の膜厚は1umであった。この塗膜をUV-vis(日本分光V-570)を使用し、300~800nmまでの透過率を数回測定し、その数回の測定によって得られた透過率値のうちの最も低かった透過率値を表1に示す。
【0066】
<残渣抑制の評価>
実施例1~4および比較例1の各硬化性樹脂組成物を、セパレータフィルム(材質:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚さ:25μm)上に乾燥後15μmとなるよう塗布し、80℃にて30分乾燥した。これにより、セパレータフィルム上において硬化性樹脂組成物の樹脂層を有するドライフィルムを得た。
CZ-8201Bでエッチングレート0.5μm/mの条件で処理されためっき銅基板上において、このドライフィルムを真空ラミネーターCVP-300(ニッコーマテリアルズ社製)を用いてラミネートした。めっき銅基板上における樹脂層の膜厚は、約15μmであった。
この樹脂層にDXP-3580(ORC社製、超高圧水銀灯DI露光機)を用いてStouffer41段ステップタブレットで10段の硬化段数になるよう各種開口パターンで露光を実施した。
その露光から10分後にPETフィルムを剥離させ、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液でブレイクポイント(最短現像時間)の2倍の現像時間で現像を行った。その後、熱循環式Box炉において、150℃60分で加熱して、めっき銅基板上において硬化性樹脂組成物の樹脂層の硬化物を得た。
上記により得られた評価用基板(樹脂層の硬化物を有するめっき銅基板)の開口形を観測し、Stouffer41段ステップタブレットで10段の硬化段数の条件において開口部の底部に残渣が発生するかを確認し評価を行った。
◎:残渣が確認されなかった。
〇:開口底部の面積に対して20%以下の残渣が確認された。
△:開口底部の面積に対して20%超50%以下の残渣が確認された。
×:残渣が確認され開口底部が見えなかった。
【0067】
<反りの評価>
実施例1~4および比較例1の各硬化性樹脂組成物を、セパレータフィルム(材質:ポリエチレンテレフタレート厚さ:25μm)上に乾燥後15μmとなるよう塗布し、80℃にて30分乾燥した。これにより、セパレータフィルム上において硬化性樹脂組成物の樹脂層を有するドライフィルムを得た。
このドライフィルムを古河電気工業社製電解銅泊(品名:FV-WS)の光沢面にのせ、真空ラミネーター(ニッコーマテリアルズ製CVP-300)を用いて加圧度:0.4MPa、100℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネート、100℃、5kg/fで平板プレスを行い、銅箔に貼り付けた。この銅箔を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して樹脂層を硬化した。硬化後5cm×5cmで切り出し、以下の基準で評価した。
◎:反りが確認されない。
×:反りが確認される。
【0068】
<保存安定性>
合成した硬化性樹脂を80℃下で6時間の保存を行った。保存前後の粘度を25℃、50rpmの条件にてコーンプレート型粘度計(東機産業社製TVH-33H)で測定した。この際の粘度変化について増粘率にて評価した。評価基準は下記のとおりである。
◎:増粘率が5%未満であった。
×:増粘率が5%以上であった。
【0069】
【表1】
【0070】
OXE02:オキシムエステル系、BASFジャパン(株)社製
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)社製
N-665:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)社製
SO-C2:シリカ、アドマテックス(株)社製
*残渣抑制評価および反り評価が悪かったので、評価しなかった。