IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

特開2023-108302観察システム、観察方法およびプログラム
<>
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図1
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図2
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図3
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図4
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図5
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図6
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図7
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図8
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図9
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図10
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図11
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図12
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図13
  • 特開-観察システム、観察方法およびプログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108302
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】観察システム、観察方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20230728BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009355
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 啓晃
(72)【発明者】
【氏名】安井 健二
(72)【発明者】
【氏名】大崎 真由香
(72)【発明者】
【氏名】木村 麻紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101FF02
5C101GG05
5C101HH22
5C101HH36
5C101HH38
5C101JJ03
5C101JJ07
5C101KK01
5C101KK17
5C101KK18
(57)【要約】
【課題】電子線を直接照射することができない注目形状の形成位置を観察することができる観察システムを提供する。
【解決手段】観察システム1は、電子顕微鏡100と計算機200とを備える。ここで、電子顕微鏡100は、試料108上の注目形状の形成位置とは異なる、試料108上の第1表面位置に電子線103を照射し、第1表面位置から試料108内を散乱して注目形状の形成位置から試料108外部に出る、所定の電子を検出して、検出信号として出力し、計算機200は、検出信号に基づいて、注目形状の形状に関連する値を1つ以上出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡と計算機とを有する観察システムであって、
前記電子顕微鏡は、
試料上の注目形状の形成位置とは異なる、前記試料上の第1表面位置に電子を照射し、前記第1表面位置から前記試料内を散乱して前記注目形状の形成位置から前記試料外部に出る、所定の電子を検出して、検出信号として出力し、
前記計算機は、
前記検出信号に基づいて、前記注目形状の形状に関連する値を1つ以上出力する、
観察システム。
【請求項2】
請求項1に記載の観察システムにおいて、
前記計算機は、
所定の基準に対して、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する、
観察システム。
【請求項3】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記計算機は、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記検出信号によって表される前記試料の画像輝度を用いて、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する、
観察システム。
【請求項4】
請求項3に記載の観察システムにおいて、
前記プロセッサは、前記画像輝度として、前記試料のパターントップ輝度を用いる、
観察システム。
【請求項5】
請求項3に記載の観察システムにおいて、
前記プロセッサは、前記画像輝度として、前記試料のパターンエッジ輝度を用いる、
観察システム。
【請求項6】
請求項3に記載の観察システムにおいて、
前記プロセッサは、前記検出信号によって表される値であって、前記注目形状の形状変化に伴って変化する複数の値を組み合わせて、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する、
観察システム。
【請求項7】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記計算機は、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、予め、前記注目形状の寸法を変えながら、前記注目形状の形成位置から出る電子量を求め、求めた電子量を輝度とし、前記注目形状の寸法の変化に伴う輝度の変化を感度として求め、
前記プロセッサは、前記電子顕微鏡から出力される前記検出信号と前記感度とに基づいて、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する、
観察システム。
【請求項8】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記計算機は、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、予め、撮像条件を変えながら、前記第1表面位置に電子を照射したときに、前記注目形状の形成位置から前記試料外部に出る電子量を求め、求めた電子量に基づいて、撮像条件に対応した複数の電子の散乱範囲を求め、
前記プロセッサは、前記複数の電子の散乱範囲のうち、適切な電子の散乱範囲に対応した撮像条件を、前記電子顕微鏡に設定し、前記電子顕微鏡は、前記検出信号を出力する、
観察システム。
【請求項9】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記計算機は、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記注目形状の寸法が異なる複数のサンプルにおいて、前記電子顕微鏡から出力される検出信号によって表される画像もしくは輝度を取得し、前記注目形状の寸法の変化に伴う輝度の変化を感度として、予め求め、
前記計算機は、前記電子顕微鏡から出力される前記検出信号と前記感度とに基づいて、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する、
観察システム。
【請求項10】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記計算機は、プロセッサと表示装置とを備え、
前記プロセッサは、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する際に用いた検出信号の特徴量と、前記電子顕微鏡に設定した撮像条件と、前記注目形状の形状変化量とを、前記表示装置に表示する、
観察システム。
【請求項11】
電子顕微鏡から出力される検出信号に基づいて、試料を観察する観察方法であって、
前記電子顕微鏡は、前記試料上の注目形状の形成位置とは異なる、前記試料上の第1表面位置に電子を照射し、
前記電子顕微鏡は、前記第1表面位置から試料内を散乱して前記注目形状の形成位置から試料外部に出る、所定の電子を検出し、
プロセッサが、前記検出された所定の電子に基づいた検出信号に基づいて、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する、
観察方法。
【請求項12】
請求項11に記載の観察方法において、
前記プロセッサは、予め、前記注目形状の寸法を変えながら、前記電子顕微鏡から出力される検出信号によって表される画像もしくは輝度を取得し、前記注目形状の寸法の変化に伴う輝度の変化を感度として求め、
前記電子顕微鏡から出力される前記検出信号と前記感度とに基づいて、前記プロセッサは、前記注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する、
観察方法。
【請求項13】
請求項12に記載の観察方法において、
前記プロセッサは、予め、前記電子顕微鏡の撮像条件を変えながら、前記感度を求め、複数の撮像条件に対応した複数の感度を求める、
観察方法。
【請求項14】
電子顕微鏡から出力される検出信号を用いて試料を観察する処理を、プロセッサに実行させるプログラムであって、
前記プロセッサに対して、
前記試料の注目形状の寸法を変化させながら、前記注目形状の形成位置とは異なる、前記試料の第1表面位置に電子を照射して、前記注目形状の形成位置から前記試料外部に出る電子量の変化を求める第1処理と、
前記注目形状の寸法の変化と前記電子量の変化とに基づいて、感度を求める第2処理と、
前記検出信号と前記感度とに基づいて、前記注目形状の形状変化に関連する値を出力する第3処理と、
を実行させる、プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムにおいて、
前記第1処理は、前記プロセッサに対して、電子の散乱範囲と前記注目形状とを重畳させる処理を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察システム、観察方法およびプログラムに関し、例えば電子顕微鏡によって撮像された画像(電子顕微鏡像)に基づいて観察を行う観察システム、観察方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡を用いて試料を観察する技術は、例えば特許文献1に記載されている。すなわち、特許文献1には、電子顕微鏡が備える一次電子線照射手段によって一次電子が照射された試料上のパターンの深さを推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-185972号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、試料に形成されたパターンの深さを観察するために、観察する箇所に直接電子線を照射して、電子線の照射により検出された信号からパターンの深さを観察している。言い換えるならば、特許文献1に記載の技術では、電子線を直接照射することができない個所を注目個所とした場合、かかる注目個所を観察することが出来ないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、電子線を直接照射することができない注目個所を観察することができる観察システム、観察方法およびプログラムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
すなわち、一実施の形態に係る観察システムは、電子顕微鏡と計算機とを備える。ここで、電子顕微鏡は、試料上の注目形状の形成位置(注目個所)とは異なる、試料上の第1表面位置に電子を照射し、第1表面位置から試料内を散乱して注目形状の形成位置から試料外部に出る、所定の電子を検出して、検出信号として出力し、計算機は、検出信号に基づいて、注目形状の形状に関連する値を1つ以上出力する。
【0009】
また、他の実施の形態においては、観察方法が提供され、さらに他の実施の形態では、試料上の注目形状の形状変化を求めるために、プログラムにおいて実行されるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、電子線を直接照射することができない注目形状の形成位置を観察することができる観察システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る観察システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る計算機の構成を示すブロック図である。
図3】(A)~(D)は、試料に形成されたパターン形状と、その電子顕微鏡画像とを示す図である。
図4】実施の形態1に係る観察システムの原理を説明するための説明図である。
図5】実施の形態1に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1の変形例1に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係るGUIの構成を示す図である。
図8】(A)~(D)は、実施の形態1の変形例2に係る注目形状を説明するための図である。
図9】実施の形態2に係る計算機の構成を示すブロック図である。
図10】実施の形態2に係る観察システムを説明するための図である。
図11】実施の形態2に係る観察システムを説明するための図である。
図12】実施の形態2に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。
図13】実施の形態2に係るGUIの構成を示す図である。
図14】実施の形態3に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
本発明によれば、観察の対象である注目個所の形状(注目形状)が観察されるが、以下で説明する実施の形態では、形状は、基準となる基準形状に対する注目形状の変化量として観察される。すなわち、注目形状は、基準形状に対する相対量として観察される。勿論、基準形状を固定して、変化量を、絶対量として観察してもよい。なお、基準形状については、その一例を、後で図7等を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態1)
<観察システムの全体構成>
図1は、実施の形態1に係る観察システムの構成を示すブロック図である。図1において、符号1は観察システムを示している。観察システム1は、電子顕微鏡100と、制御装置120と、電源装置121、122と、計算機200とを備えている。
【0015】
電子顕微鏡100においては、試料に対し電子線(電子ビーム)103が照射される。電子顕微鏡100は、当該電子ビーム103の照射に基づいて得られた検出信号を出力する。観察システム1は、電子顕微鏡100からの検出信号に基づいて、信号波形や画像を形成するために必要な構成要素を備えている。先ず、図1を参照して、電子顕微鏡100の一例を具体的に述べる。
【0016】
電子源101から、引き出し電極102によって引き出された電子ビーム103は、図示しない加速電極によって加速される。加速された電子ビーム103は、収束レンズの一形態であるコンデンサレンズ104によって絞られる。絞られた電子ビーム103は、走査電極105によって、試料108上を一次元的あるいは二次元的に走査される。電子ビーム103は、試料台109に内蔵された電極に印加された負電圧により減速されるとともに、対物レンズ106のレンズ作用によって集束されて、試料108上に照射される。
【0017】
電子ビーム103は、試料108に照射されると、照射された箇所(照射箇所)から、または/および照射箇所から試料108の内部に散乱して、照射箇所とは異なる箇所から、二次電子および後方散乱電子のような電子110として放出される。この放出された電子110は、試料108に印加される負電圧に基づく加速作用によって、電子源101の方向に加速され、変換電極112に衝突し、二次電子111を生じさせる。変換電極112から放出された二次電子111は、検出器113によって捕らえられ、捉えられた二次電子111の量によって、検出器113の出力である検出信号が変化する。
【0018】
検出器113から出力された検出信号は、制御装置120によって、計算機200に供給される。計算機200は、図示しない表示装置を備えている。この表示装置において表示される画像の輝度は、検出信号に応じて変化する。すなわち、検出器113によって捉えられた電子の量(電子量)が、輝度として、表示装置において表示されることになる。
【0019】
例えば、表示装置において、二次元像を表示する場合には、走査電極105に供給する偏向信号と、検出器113から出力される検出信号との間で、同期をとることで、偏向信号で走査した走査領域における画像の輝度が、表示装置に表示されることになる。
【0020】
また、図1に示した電子顕微鏡100には、特に制限されないが、電子ビーム103の走査領域を移動する図示しない偏向器が備えられている。この偏向器は、異なる位置に存在する同一形状のパターンの画像などを、表示装置上に表示するために用いられる。この偏向器はイメージシフト偏向器とも呼ばれ、試料108を移動させる試料ステージ(例えば、試料台109)による試料108の移動等を行うことなく、電子顕微鏡100の視野位置の移動を可能とすることができる。イメージシフト偏向器と走査電極105を共通の偏向器とし、イメージシフト用の信号と偏向信号を重畳して、偏向器に供給するようにしても良い。
【0021】
電子顕微鏡100からの検出信号(画像、輝度プロファイル、輝度等)は、制御装置120を介して計算機200に供給される。計算機200は、供給された検出信号に基づいて、観察対象の注目形状の形状の変化に関連する値を計算し、かかる計算値を1つ以上出力する。なお、計算機200は電子顕微鏡100と一体としてもよい。
【0022】
制御装置120は、計算機200からの指示に従って、電源装置121および122を制御する。電源装置122を制御することにより、引き出し電極102および加速電極(図示しない)に印加される電圧が変化する。同様に、電源装置121を制御することにより、試料108に印加される電圧が変化する。さらに、制御装置120は、計算機200からの指示に従って、走査電極105に供給する偏向信号を制御し、対物レンズ106に供給する信号を制御する。さらに、制御装置120は、前記したように、検出器113から出力された検出信号を、計算機200へ供給する。
【0023】
<計算機の構成>
次に、実施の形態1に係る計算機200を、図面を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係る計算機の構成を示すブロック図である。
【0024】
計算機200は、複数の機能ブロックを備えているが、図2には説明に必要な機能ブロックのみが示されている。図2において、210は計算機コア(以下、単に計算機とも称する)を示し、201は電子の散乱範囲データベース(Data Base:以下、電子散乱範囲DBとも称する)を示し、208は特徴量のデータベース(以下、特徴量DBとも称する)を示している。電子散乱範囲DB201および特徴量DB208は、計算機210に結合された記憶装置(図示しない)に格納されたデータベースである。
【0025】
電子散乱範囲DB201には、電子ビーム103(図1参照)を加速する加速電圧および試料108(図1参照)の材料ごとの電子の散乱範囲が登録されている。ここで、電子の散乱範囲とは、例えば単一材料で形成された試料108に入射した電子が散乱する範囲を示している。電子の散乱する範囲は、例えば、加速電圧および試料の材料をパラメータとして使用するシミュレーション、すなわち電子の散乱シミュレーションを実行することにより、求めることができる。電子の散乱シミュレーションとしては、例えばモンテカルロシミュレーションが一例としてある。勿論、電子の散乱シミュレーションを行う際のパラメータは、加速電圧および試料の材料だけに限定されるものではない。
【0026】
特徴量DB208には、試料108の画像の特徴量群が登録されている。特徴量は、例えば、パターントップの輝度(以下、パターントップ輝度またはトップ輝度とも称する)、パターンエッジの輝度(以下、パターンエッジ輝度またはエッジ輝度とも称する)、パターントップとパターンエッジの間の領域の輝度や、それらの微分値などである。これらの特徴量は、実施の形態1では、電子ビームを直接照射することができない位置(注目個所)におけるパターン形状の特徴を表すものとして用いられる。特徴量は、前記のようにデータベースに登録されていなくてもよい。例えば、ユーザーが試料108の画像を基にして、特徴量を設計して、計算機コア210に入力するようにしてもよい。特徴量に関するパターントップ輝度およびパターンエッジ輝度は、後で図3を用いて一例を説明するので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0027】
計算機210は、プログラムを実行するプロセッサ209と、プロセッサ209に結合された入出力装置205、表示装置206およびメモリ207とを備えている。入出力装置205は、例えばマウス、キーボード等であり、ユーザーがプロセッサ209にデータ、指示等を入力するのに用いられる。表示装置206は、プロセッサ209によって求められたデータ等を表示するのに用いられる。また、メモリ207は、プロセッサ209がプログラムを実行する際にデータ等を格納するのに用いられる。
【0028】
プロセッサ209は、例えば記憶媒体(図示しない)に格納されたプログラムを読み込み、実行する。プログラムを実行することにより、プロセッサ209において実現される機能ユニットが、図2では、特徴量感度計算機能ユニット202と、特徴量決定機能ユニット203と、注目形状の変化に関連する値を1つ以上求めて(計算し)、出力する寸法計算機能ユニット204として示されている。
【0029】
特徴量感度計算機能ユニット202は、入出力装置205を用いてユーザーが入力した試料108のパターンと、観察対象の注目個所の情報と、電子散乱範囲DB201に登録されている電子の散乱範囲の情報と、特徴量DB208に登録されている特徴量とから、注目個所の注目形状の形状変化に対する画像の特徴量および感度を、計算によって求める。求められた画像の特徴量および感度から、特徴量決定機能ユニット203は、感度、ばらつき等を考慮して、注目形状の形状変化を観察する際に用いる特徴量および感度を決定する。
【0030】
寸法計算機能ユニット204は、制御装置120(図1)を介して電子顕微鏡100(図1)から、実際に供給されている検出信号を基にして、特徴量決定機能ユニット203で決定された特徴量および感度もしくは特徴量感度計算機能ユニット202で求められた特徴量および感度を用いて、注目形状の形状変化に関連する値を、計算によって求める。この寸法計算機能ユニット204によって求められた1つ以上の値が、表示装置206によって表示される。
【0031】
図2には、注目形状の形状変化に関連する値を求めるのに、特徴量決定機能ユニット203を用いる例が示されているが、特徴量決定機能ユニット203は必須ではない。例えば、特徴量決定機能ユニット203に替えて、特徴量感度計算機能ユニット202によって求められた特徴量および感度を、表示装置206に表示し、ユーザーが使用する特徴量および感度を決定し、入出力装置205を用いて、決定した特徴量および感度を入力するようにしてもよい。また、特徴量感度計算機能ユニット202によって求められた特徴量および感度を複数個、表示装置206に表示させ、ユーザーが複数の特徴量および感度から、適切と考えるものを選択するようにしてもよい。この場合、寸法計算機能ユニット204は、ユーザーが入力もしくは選択した特徴量および感度を用いて、注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上求め、出力することになる。
【0032】
実施の形態1では、電子散乱範囲DB201は、前記したように、例えばモンテカルロシミュレーションによって、材料と加速電圧ごとに、予め作成しておく。また、図2では、電子散乱範囲DB201は、計算機200内に設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、計算機200の外部に設置されたサーバーに、電子散乱範囲DBを設け、サーバーと計算機200とを結ぶ通信手段によって、電子の散乱範囲が、計算機200に提供されるようにしても良い。
【0033】
さらに、電子散乱範囲DB201を用いずに、計算機200内で、電子の散乱範囲を求めるようにしても良い。例えば、電子の散乱範囲をシミュレーション(散乱シミュレーション)するプログラムを用意し、当該プログラムをプロセッサ209において実行させ、プロセッサ209によって電子の散乱範囲を求める電子散乱範囲計算機能ユニット(図示せず)を、計算機200上に実現するようにしてもよい。この場合、ユーザーが、入出力装置205を使って、例えば加速電圧および試料108の材料等を、電子散乱範囲計算機能ユニットに供給する。電子散乱範囲計算機能ユニットによって求められた電子の散乱範囲が、電子散乱範囲DB201に登録されている電子の散乱範囲の代わりに用いられることになる。この場合、電子散乱範囲DB201は必須ではなくなり、電子の散乱範囲は、ユーザーによる加速電圧および試料108の材料等の入力に合わせて、生成されることになる。
【0034】
<試料に形成されているパターン形状の例>
次に、試料108に形成されているパターン形状の例と、そのパターン形状を電子顕微鏡100で撮像(観察)した際に得られる電子顕微鏡画像の例を、図面を用いて説明する。図3は、試料に形成されたパターン形状と、その電子顕微鏡画像とを示す図である。ここで、図3(A)は、パターン形状の斜視図を示しており、図3(B)は、電子顕微鏡画像を示している。図3(C)は、図3(A)に示したパターン形状の断面図を示しており、図3(D)は、図3(B)に示した電子顕微鏡画像における輝度プロファイル(座標変化による輝度の変化)を示す図である。
【0035】
ここでは、試料108として、半導体装置の製造に用いられる半導体ウェハを例にして説明する。半導体ウェハであるため、試料108の材料はシリコン(Si)である。試料108をエッチングすることにより、図3(A)に示されているようなパターン形状300が形成されている。ここでは、パターン形状300のパターンとして、ボーイング形状を有するL/S(Line and Space)を例にして説明する。
【0036】
図3(A)において、UPは、パターン形状300のライン(Line)Lの主面(第1表面)を示し、SDは、ラインLの側壁(第2表面)を示している。また、DWは、主面UPに対向する試料108の裏面を示している。
【0037】
図3(B)の電子線顕微鏡画像310は、試料108の垂直上方から電子顕微鏡100によって撮像した画像である。すなわち、主面UPの垂直上方から試料108に向かって、電子ビーム103を照射することにより、撮像した画像が電子顕微鏡画像310である。なお、主面UPに電子ビーム103を照射する場合、側壁SDおよび裏面DWは、直接電子ビーム103が照射されない箇所となる。
【0038】
図3(C)は、図3(A)に示したパターン形状300おいて、断面位置301におけるパターン形状300の断面302を示している。また、図3(D)は、図3(B)に示した電子顕微鏡画像310において、断面位置311における輝度プロファイル312を示している。
【0039】
ここで、ボーイング形状を説明しておく。ボーイング形状とは、図3(C)に示すように、断面302において、ラインLの主面UPであるパターントップの幅寸法wtより、パターントップよりも下側の位置(例えば深さhの位置)における幅寸法wが小さくなっており、試料108(主面UP)の垂直上方から直接側壁SDを見ることができない形状を指している。図3(B)では、深さhから下側に向かって、幅寸法が再び大きくなっているが、断面視で見たときに、パターンであるラインLの幅が、パターントップ(主面UP)からボトム(裏面DW)に向かって小さくなっていく、いわゆる逆テーパーの形状も、ボーイング形状の一部であるとする。なお、ボーイング形状は、特に制限されないが、例えば半導体ウェハのオーバーエッチングによって発生する。
【0040】
以下の説明では、パターントップとは、図3(C)において矢印303で示したラインLのパターントップ(主面UP)の中央部の位置を示しているものとする。このパターントップの電子顕微鏡画像における画像輝度が、図3(D)において矢印313で示した位置におけるパターントップ輝度である。また、パターンエッジとは、図3(C)において矢印304で示したラインLのパターンエッジ付近の位置を示しているものとする。パターンエッジの電子顕微鏡画像における画像輝度が、図3(D)において矢印314で示した位置におけるパターンエッジ輝度である。図3(D)に示すように、パターンエッジ輝度314の画像輝度が、極大値となる。言い換えるならば、画像輝度の極大値が、パターンエッジ輝度314となる。
【0041】
電子顕微鏡100では、前記したように、主面UPの垂直上方から電子ビーム103が試料108に向かって照射される。ボーイング形状では、ラインLの幅寸法が、パターントップの下側では、パターントップよりも小さくなっているため、電子ビーム103は、ラインLの側壁SDに直接照射されない。したがって、電子顕微鏡100では、側壁SDを観察することが困難となる。
【0042】
<原理説明>
実施の形態1では、前記したパターントップ輝度または/およびパターンエッジ輝度を特徴量として用いて、断面視で見たときにボーイング形状のような形状を有するパターン形状の側壁を観察する。例えば、実施の形態1では、パターントップ輝度を特徴量として用いて、ボーイング形状を含むパターントップより下の電子ビームが直接照射されない位置の幅寸法w(以下、ミドル幅寸法とも称する)の寸法変化を観察する。次に、特徴量を用いて、ミドル幅寸法の寸法変化を観察するための原理を、図面を用いて説明する。
【0043】
図4は、実施の形態1に係る観察システムの原理を説明するための説明図である。図4において、401は、ボーイング形状となっていないラインLの外形のパターン形状(断面パターン形状)を示し、402および403は、ボーイング形状となっているラインLの外形のパターン形状(断面パターン形状)を示している。図4に示すように、パターン形状401~403のミドル幅寸法wは、互いに異なっており、パターン形状403から401に向けて、そのミドル幅寸法wが大きくなっている。また、パターン形状401~403と重ねて描かれている破線410の形状は、パターントップに電子ビームを照射した際に、試料内外を散乱する電子の散乱範囲を示している。
【0044】
図4において、421~423は、パターン形状401~403と電子の散乱範囲410とを重ねて描いた断面図を示している。断面図421~423から分かるように、主面UPから深さhの位置、すなわちミドル幅寸法wの測定位置において、ラインLの側壁SDから試料の外側に飛び出す電子の数(電子量)が、ボーイング形状の変化によって変わる。すなわち、側壁SDから外に飛び出す電子量を観察することにより、ボーイング形状の変化を観察することができる。側壁SDから外に飛び出した電子の一部は、例えば隣接して形成されているラインの側壁等で反射され、電界によって電子源101の方向に引き寄せられ、図1に示した電子源101の方向に向かう電子110となる。電子顕微鏡100は、電子110に起因する二次電子111に基づいた検出信号を出力するため、検出信号によって表される輝度が、側壁SDから外に飛び出した電子量に依存して変わることになる。
【0045】
ここでは、側壁SDから外に飛び出した電子を説明したが、電子110には、試料内部において側壁SDに反射し、散乱して、主面UPから電子源101の方向に向かう電子も含まれる。したがって、試料内部において側壁SDで反射した電子量によっても、検出信号によって表される輝度が、変化することになる。
【0046】
具体的に、断面図421~423を用いて説明すると、次の通りである。
【0047】
断面図421に示されているように、ミドル幅寸法wが大きいパターン形状401では、深さhのミドル幅観測の位置において、パターン形状401の外部に飛び出し電子量が比較的少ないため、パターントップ輝度313(図3(D))は比較的小さい。これに対して、断面図423に示されているように、ミドル幅寸法wが小さいパターン形状403では、深さhのミドル幅観測の位置において、パターン形状403の外部に飛び出し電子量が比較的多いため、パターントップ輝度313(図3(D))は比較的大きくなる。
【0048】
また、深さhのミドル幅観測の位置におけるミドル幅寸法wが、パターン形状401と403の間の値となるパターン形状402では、断面図422に示されているように、ミドル幅観測の位置で、パターン形状402の外部に飛び出す電子量が、パターン形状401と403の場合の間の値となるため、パターントップ輝度313も、パターン形状401と403の場合の間の値となる。前記したパターントップ輝度313は、電子顕微鏡100から出力される検出信号によって表される。
【0049】
すなわち、パターントップ輝度313は、ミドル幅寸法wに依存して変化する。図4において、430は、パターントップ輝度313(図4では、トップ輝度と記載)とミドル幅寸法との相関を示す相関グラフを示している。相関グラフ430に示されているように、ミドル幅寸法が大きくなるのに従って、パターントップ輝度が小さくなる。この相関グラフ430を用いることにより、パターントップ輝度を基にして、ボーイング形状が存在する場合にも、ミドル幅寸法を求めることができる。
【0050】
実施の形態1においては、ボーイング形状が、観察対象の注目形状である。ボーイング形状となっている側壁SDには、電子ビームを直接照射することができない。しかしながら、実施の形態1によれば、注目形状が形成される位置である注目個所(側壁SD)とは異なる試料の位置である表面(主面UP)に、電子(電子ビーム)を直接照射することによって得られる検出信号に基づいて、注目形状に関連する値を求めることができる。
【0051】
注目形状に関連する値は、検出信号で表されるパターントップ輝度から、相関グラフ430を数値化することによって算出することができる。例えば、相間グラフ430において、ミドル幅寸法の変化に伴うパターントップ輝度の変化を、一次関数でフィッテイングして、回帰直線430_1を求め、回帰直線430_1を用いて、パターントップ輝度からミドル幅寸法wを算出することが可能である。この場合、回帰直線430_1の傾きは、ミドル幅寸法の変化によって、パターントップ輝度が変化する量を表す感度と見なすことができる。
【0052】
<観察システムの動作>
図5は、実施の形態1に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。図1図2および図5を用いて、実施の形態1に係る観察システムの動作を説明する。
【0053】
図5のステップS501において、試料108の材料および注目個所の注目寸法の情報501は、ユーザーによる入出力装置205(図2)の操作を通じて、プロセッサ209(図2)に入力される。図5では、情報501として、ラインLの主面UPからの深さhの位置におけるミドル幅寸法wが示されている。また、図5には示されていないが、試料の材料としてシリコンが入力されている。
【0054】
計算機210のプロセッサ209は、ステップS502~S506の処理に対応するプログラムを実行する。ここで、ステップS502~S504を含むステップS202に対応するプログラムがプロセッサ209によって実行されることにより、図2に示した特徴量感度計算機能ユニット202が、プロセッサ209上に実現される。また、ステップS505およびS506を含むステップS204に対応するプログラムがプロセッサ209によって実行されることにより、図2に示した寸法計算機能ユニット204が、プロセッサ209上に実現される。
【0055】
ステップS502においては、ステップS501で入力された注目寸法(例えばミドル幅寸法)の値が、プロセッサ209に設定される。ステップS503で、プロセッサ209は、電子散乱範囲DB201(図2)から、電子散乱範囲502を取り込み、設定されている注目寸法の情報501と電子散乱範囲502とを重畳させて、図5中に符号503で示されているように、注目形状である側壁SDからラインLの外、すなわちラインLのパターン形状の外に飛び出る電子の数(電子量)をカウントする。
【0056】
プロセッサ209は、パターン形状の外に飛び出ている電子の数のカウントが終了すると、再びステップS502を実行する。この場合、プロセッサ209は、ステップS502で、注目寸法(ミドル幅寸法)の値を更新する。その後、プロセッサ209は、再びステップS503を実行する。注目寸法の値が更新されているため、再びステップS503が実行されることにより、更新された注目寸法の値に対応した電子の数が、プロセッサ209によってカウントされることになる。
【0057】
プロセッサ209は、注目寸法の値が、所定の値に到達するまで、ステップS502およびS503を繰り返す。ステップS502およびS503を繰り返すことにより、複数の注目寸法(ミドル幅寸法)に対応した複数の電子量が求められる。すなわち、プロセッサ209が、ステップS502およびS503を繰り返すことにより、注目寸法の寸法変化に伴う電子量の変化を求める第1処理が実行されることになる。
【0058】
次に、プロセッサ209は、ステップS503で求めた複数の注目寸法と、対応する複数の電子量を用いて、ステップS504(第2処理)で、感度を計算する。例えば、プロセッサ209は、複数の注目寸法を、図4の相関グラフ430の横軸とし、複数の電子量に対応するトップ輝度を相関グラフ430の縦軸にして、回帰直線430_1の傾きを感度として求める。また、特に制限されないが、プロセッサ209は、求めた感度を、ステップS504において、計算機210の表示装置206に表示する。
【0059】
前記したステップS501~S504が予め実行された後、電子顕微鏡100からの検出信号を用いた観察が行われる。すなわち、計算機210においては、プロセッサ209が、予め前記ステップS202を実行して、感度を求める。その後、プロセッサ209は、予め求めた感度と電子顕微鏡100からの検出信号とを用いて、注目形状の形状変化を観察する。
【0060】
すなわち、プロセッサ209は、次のステップS505において、制御装置120を介して電子顕微鏡100から出力されている検出信号を取得する。その後、ステップS506において、プロセッサ209は、感度と検出信号とを用いて、注目形状の形状変化に関連する値を1以上出力する。出力する値としては、ミドル幅寸法の変化、パターントップ輝度の変化、パターンエッジ輝度の変化等がある。
【0061】
なお、プロセッサ209は、例えばステップS503、S505等を実行する際に、特徴量DB208(図2)から特徴量(パターントップ、パターンエッジ)に関する情報も取り込み、利用する。例えば、電子の散乱範囲とパターン形状とを重畳させるときに、パターントップとなる位置を定めるために、プロセッサ209は、特徴量DB208から取り込んだ情報を利用する。
【0062】
実施の形態1によれば、電子ビームを試料の主面UPに照射することにより、電子ビームを直接的に照射することができない注目個所(側壁SD)の注目形状の変化を、ステップS506で出力される値を基にして観察することができる。
【0063】
<変形例1>
次に、図2に示した特徴量決定機能ユニット203を用いた観察システムを、変形例1として説明する。
【0064】
変形例1においては、特徴量の最適化が行われ、最適化された特徴量を用いて、注目形状の形状変化に関連する値を出力することができる観察システムが提供される。
【0065】
図6は、実施の形態1の変形例1に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。図6は、図5に類似しているので、相違点を主に説明する。相違点は、図6では、ステップS601とS602が、図5のフローチャートに追加されていることである。なお、図6では、図面が複雑になるため、ステップS202およびS204の区切りを示す破線は省略されている。
【0066】
図6において追加されたステップS601およびS602に対応するプログラムを、プロセッサ209が実行することにより、図2に示した特徴量決定機能ユニット203が、プロセッサ209上に実現される。
【0067】
特徴量としては、図4に示したパターントップ輝度313、パターンエッジ輝度314、パターントップとパターンエッジとの間の任意の位置における輝度およびこれらの輝度を組み合わせた値(例えばパターントップの輝度からパターンエッジの輝度の間の輝度変化量)があるが、これらに限定されず、これら以外の輝度に関する情報でもよい。変形例1としては、特徴量として、パターントップ輝度313とパターンエッジ輝度314とを例にして説明する。
【0068】
プロセッサ209は、ステップS601において、感度を計算するのに用いる特徴量を変更する。変形例1においては、プロセッサ209は、特徴量としてパターントップ輝度313を特徴量として用いるように選択し、次に特徴量をパターンエッジ輝度314に変更する。
【0069】
ステップS601において、プロセッサ209は、パターントップ輝度313を特徴量として選択し、ステップS502~S504を繰り返し実行する。かかる処理が実行されることにより、図5で述べたように感度が計算される。すなわち、ミドル幅寸法wとパターントップ輝度313との相関を示す相関グラフ430(図4)が生成され、回帰直線430_1の傾きがパターントップ輝度に関する感度として求められる。
【0070】
ミドル幅寸法wとパターントップ輝度313に関する感度の算出が、ステップS504において終了すると、ステップS601において、プロセッサ209は、特徴量としてパターンエッジ輝度314を選択する。その後、プロセッサ209は、ステップS502~S504を繰り返して実行することにより、ミドル幅寸法wとパターンエッジ輝度314に関する感度を算出する。すなわち、ミドル幅寸法wとパターンエッジ輝度314との相関を示す相関グラフが生成され、相間グラフにおける回帰直線の傾きが、パターンエッジに関する感度として求められる。
【0071】
ステップS504において、パターンエッジ輝度に関する感度の算出が終了すると、プロセッサ209は、ステップS602を実行する。ステップS602において、プロセッサ209は、先に求められたパターントップ輝度に関する感度とパターンエッジ輝度に関する感度とに基づいて、使用する特徴量および感度を決定する。例えば、プロセッサ209は、パターントップ輝度に関する感度とパターンエッジ輝度に関する感度とを比較し、最も高い感度を最適な感度として選択し、最適な感度とそれに対応する最適な特徴量(パターントップ輝度またはパターンエッジ輝度)とを、ステップS506で用いるものとして決定する。
【0072】
ステップS505およびS506は、図5と類似しているので説明は省略するが、ステップS506で用いる感度が、ステップS602で決定された最適な感度である点が、図5と相違している。
【0073】
図6では、ステップS602において、プロセッサ209が、感度の高いものを選択するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS602において、ユーザーが、パターントップ輝度に関する感度またはパターンエッジ輝度に関する感度を、最適な感度として選択するようにしてもよい。
【0074】
変形例1によれば、最適な感度を用いて、注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力するこが可能となるため、より正しい値を出力することが可能である。
【0075】
<表示装置による表示例>
実施の形態1に係る観察システム1では、プロセッサ209が、表示装置206によって、特徴量と感度(最適な特徴量と最適な感度を含む)と、特徴量と感度とを用いて求めた注目形状の形状変化に関連する1つ以上の値とを表示する。
【0076】
次に、表示装置206に表示されるGUI(Graphical User Interface)の一例を説明する。図7は、実施の形態1に係るGUIの構成を示す図である。
【0077】
表示されるGUIは、入力画面領域701と出力画面領域751とによって構成されている。ユーザーは、入力画面領域701において、観察するパターンのモデル(パターン形状および試料の材料等)を入力する。入力されたモデルに従って、プロセッサ209(図2)は、入力画面領域701にモデルの形状および材料(シリコン:Si)を表示する。ユーザーは、表示されたモデルにおいて、注目形状で観察する箇所(図7では注目寸法)702を指定し、注目寸法情報703において、指定した箇所702の値を数値で指定する。また、ユーザーは、電子顕微鏡100(図1)の撮像条件704を設定する。撮像条件704としては、加速電圧、検出器113(図1)の位置等がある。例えば、加速電圧として設定された値は、図1に示した制御装置120に通知され、制御装置120は、通知された加速電圧に従って電源装置121および122を制御する。
【0078】
その後、ユーザーは、計算開始ボタン705を押す。計算開始ボタン705が押されると、プロセッサ209は、例えば図6に示したステップS502~S504およびS601を実行し、感度等を算出する。
【0079】
感度等の算出が終了すると、プロセッサ209は、出力画面領域751に、計算が終了したことを示すように、進捗が「計算終了」であることを表示し、さらに特徴量毎の感度(相関グラフ)752と、特徴量と感度の一覧表753と、最適な特徴量(最適特徴量)754とを表示する。図7には、変形例1で述べたように、特徴量としてパターントップ輝度(トップ輝度)とパターンエッジ輝度(エッジ輝度)とが用いられ、図6のステップS602において、最適な特徴量としてパターントップ輝度が選択された場合が示されている。なお、図7に示した例では、パターントップ輝度に関する感度は、0.7であり、パターンエッジ輝度に関する感度は、0.2である。
【0080】
次に、入力画面領域701に表示されている計測ボタン710が押されると、プロセッサ209は、撮像条件704で設定された条件で電子顕微鏡100によって撮像された画像を取得し、取得した画像755を、出力画面領域751に表示する。また、プロセッサ209は、図6に示したステップS506を実行し、実行結果(注目形状の形状変化に関連する値)を出力画面領域751に表示する。図7では、注目形状の形状変化に関連する値として、注目形状の基準からの変化量756が表示されている。
【0081】
ここで、注目形状の基準である基準形状を説明しておく。出力画面領域751に表示されている符号757は、試料108(図1)である半導体ウェハの平面図を示している。半導体ウェハ757には、互いに同じ構成の複数の半導体チップが形成されている。実施の形態1においては、特に制限されないが、半導体ウェハ757の中心位置に形成されている半導体チップ(基準半導体チップ)758の所定の位置におけるパターン形状(例えば図3のラインL)が、基準形状として用いられる。
【0082】
すなわち、基準半導体チップ758に形成されている基準形状の例えばミドル幅寸法が、注目形状のミドル幅寸法の変化量の基準として用いられる。基準半導体チップ758における基準形状のミドル幅寸法を基準として、例えば半導体チップ(対象半導体チップ)759、760におけるパターン形状のミドル幅寸法の変化量が、注目形状の基準からの変化量756として表示される。この場合、基準形状となるパターン形状と計測対象のパターン形状は、基準半導体チップ758と対象半導体チップ759、760において、互いに同じ位置に配置されているものが用いられる。図7では、同一の半導体ウェハ757に基準半導体チップ758と対象半導体チップ759、760とが形成されている例を示したが、例えば基準半導体チップと対象半導体チップは、互いに異なる半導体ウェハに形成されていてもよい。
【0083】
注目形状の基準からの変化量を出力することにより、半導体ウェハにおけるばらつき等も取得することが可能となる。
【0084】
なお、注目形状の基準からの変化量756を表示すると、プロセッサ209は、出力画面領域751に、計測が終了したことを示すように、進捗が「計測終了」であることを表示する。また、図示しないが、半導体ウェハ内で複数チップを測定し、当該半導体ウェハ内での注目寸法の分布(ウェハマップ)を作成、表示しても良い。
【0085】
図7には、変形例1に係る観察システムの場合のGUIの構成が示されている。図5に示したフローチャートを実行する観察システムの場合には、出力画面領域751に、特徴量毎の感度752の代わりに1つの感度(相関グラフ)が表示され、特徴量と感度の一覧表753も1つの特徴量と感度とが表示されることになる。また、最適特徴量754は、出力画面領域751に表示されない。
【0086】
<変形例2>
注目形状として、L/Sパターンを例にして説明したが、注目形状はこれに限定されるものではない。変形例2では、L/Sパターン以外の例を説明する。
【0087】
図8は、実施の形態1の変形例2に係る注目形状を説明するための図である。
【0088】
図8(A)において、810は試料である半導体層(材料:シリコン)を示している。半導体層810には、主面UPから裏面DWに向かって延在する複数のホールパターン800が形成されている。ホールパターン800が形成された半導体層810を、断面801で見た断面図803が、図8(B)に示されている。図8(B)に示されているように、黒塗りのホールパターンは、主面UPから裏面DWに向かって広がるように形成されてしまっている。したがって、主面UPに電子ビームを照射しても、ホールパターンの側壁SDには、直接電子ビームは照射されない。
【0089】
実施の形態1によれば、所定ないし任意のプロセッサにより、図5に例示したステップS502~S504を繰り返し実行して、予め感度を求め、例えば主面UPの位置804に照射した電子ビームによって得られる電子顕微鏡からの検出信号と感度とを用いて、深さhの位置におけるホールパターン800の幅wを求めることができる。
【0090】
図8(C)は、GAA(Gate All Around)と呼ばれる、積層構造のパターン形状850が形成された試料を示している。また、断面851で見た断面図853が、図8(D)に示されている。図8(D)に示すように、パターン形状(GAA)850は、横方向の突起している2つの層間を結ぶ仮想線855に対して、凹んだ領域が形成されてしまっている。主面UPに電子ビームを照射しても、凹んだ領域には、電子が直接照射されず、凹み量(インデント量)Δwを観察することは困難である。
【0091】
実施の形態1によれば、所定ないし任意のプロセッサにより、図5に例示したステップS502~S504を繰り返し実行して、予め感度を求め、例えば主面UPの位置854に照射した電子ビームによって得られる電子顕微鏡からの検出信号と感度とを用いて、インデント量Δwを求めることもできる。
【0092】
実施の形態1によれば、注目個所とは異なる試料上の表面位置に照射した電子に基づいて得られる検出信号に用いて、注目個所の形状変化に関連する値を1つ以上出力することができる。
【0093】
例えば、半導体ウェハの面内で、注目形状の形状変化に関連する値の分布を得ることにより、得た分布を用いて、製造プロセスの改善、製造プロセスの制御を行うことができる。
【0094】
電子顕微鏡から出力される検出信号によって表される1つの特徴量(例えば、パターントップ輝度またはパターンエッジ輝度)を用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検出信号によって表される複数の特徴量を組み合わせて用いるようにしてもよい。一例を述べるならば、特徴量であるパターントップ輝度とパターンエッジ輝度とを組み合わせてもよい。この場合、予め求めたパターントップ輝度に関する感度と予め求めたパターンエッジ輝度に関する感度とを重み付して加算し、加算結果を2で割り(1/2)、その結果を組み合わせ感度として用いる。この場合、検出信号によって表されるパターントップ輝度とパターンエッジ輝度と、予め求めた組み合わせ感度とに基づいて、注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力することになる。
【0095】
また、注目寸法を変えながらシミュレーションを実行することによって用意した断面画像あるいは断面SEM(Scanning Electron Microscope)で得た断面画像を、注目形状の正解値として、観察システム1により求めた注目形状の形状変化に関連する値を校正するようにしてもよい。校正することにより、観察システム1から出力される値の精度が向上するため、観察システム1から出力される値を、パターン形状の注目形状の絶対値の把握あるいはパターン形状の評価・検査に使用することができる。勿論、注目寸法の正解値を得る方法としては、シミュレーション、断面SEMに限定されるものではない。
【0096】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した観察システムにおいて、注目形状の形状変化を観察する際の電子顕微鏡の撮像条件を最適化する技術を説明する。ここでは、撮像条件として、電子顕微鏡において電子を加速する加速電圧を例にして説明する。撮像条件である加速電圧は、図2示したプロセッサ209から、計算機200(図1)の出力として、制御装置120(図1)に指示される。制御装置120が、指示された加速電圧で、電子を加速するように、電子顕微鏡を制御する。
【0097】
また、実施の形態2においても、注目形状は、図3で説明したボーイング形状の側壁SDを例にして説明する。
【0098】
図9は、実施の形態2に係る計算機の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る電子顕微鏡および制御装置等は、図1で示したものと同様であるので、必要がない限りそれらの説明は省略する。図9は、図2と類似しているので、相違点を主に説明する。相違点は、図9では、撮像条件決定機能ユニット901が、プロセッサ209に追加されていることと、電子の散乱範囲DB201が変更されていることである。
【0099】
撮像条件決定機能ユニット901は、他の機能ユニット(例えば特徴量感度計算機能ユニット202)と同様に、プロセッサ209が、対応するプログラムを実行することにより、プロセッサ209上に実現される。
【0100】
電子の散乱範囲DB201の変更については、後で図10および図11を用いて説明するので、ここでは省略する。なお、図9では、図2に示した特徴量DB208は省略されている。
【0101】
<加速電圧と電子の散乱範囲>
先ず、加速電圧と、試料内を散乱する電子の散乱範囲との関係を説明する。図10および図11は、実施の形態2に係る観察システムを説明するための図である。図10には、加速電圧と電子の散乱範囲との関係が模式的に示されている。図10において、1001は、電子ビームが照射される試料を示している。ここでは、試料1001は、均一な材料(シリコン)によって形成されているものとする。
【0102】
電子ビームは、試料1001の主面UPから、裏面DWに向かう方向に照射される。電子ビームが照射されることにより、試料1001に入射した電子は、加速電圧に従って、試料1001内に侵入する深さおよび散乱範囲が変わる。図10では、試料1001内での電子の散乱範囲が、破線1002~1004で示されている。すなわち、加速電圧が低い場合には、電子に対する加速が低加速となるため、侵入する深さが浅く、散乱範囲も狭くなり、散乱範囲1002のようになる。これに対して、加速電圧が高い場合には、電子に対する加速が高加速となるため、侵入する深さが深く、散乱範囲も広くなり、散乱範囲1004のようになる。加速電圧が、低い加速電圧と高い加速電圧の間の電圧(中間電圧)の場合、電子に対する加速が中加速となるため、侵入する深さおよび散乱範囲は、低い加速電圧と高い加速電圧の間の値となり、散乱範囲1003のようになる。
【0103】
なお、試料1001の材料が変わることにより、散乱範囲1002~1004の形状も変わる。
【0104】
図11には、電子の散乱範囲とボーイング形状を有するL/Sパターンとの関係が模式的に示されている。
【0105】
加速電圧が低い場合の電子の散乱範囲とL/Sパターンとの関係が、図11において、1111として示され、加速電圧が高い場合の電子の散乱範囲とL/Sパターンとの関係が、図11において、1131として示されている。同様に、加速電圧が中間電圧の場合の電子の散乱範囲とL/Sパターンとの関係が、図11において、1121として示されている。
【0106】
関係1111に示されているように、加速電圧が低い場合には、電子が低加速のため、その散乱範囲が散乱範囲1002のように狭くなる。電子の散乱範囲が狭いため、電子は、ボーイング形状となっている側壁SDまで散乱せず、側壁SDから試料外に飛び出す電子が少ない。これに対して、関係1131に示されているように、加速電圧が高い場合には、電子が高加速のため、その散乱範囲が散乱範囲1004のようになり、電子の散乱する位置が、主面UPと対向する裏面DW(図10)側に下がる。すなわち、電子の散乱範囲1004の位置が、ボーイング形状の位置よりも下側になり、ボーイング形状となっている側壁SDから試料外に飛び出す電子が少なくなる。
【0107】
一方、加速電圧が中間電圧の場合、関係1121に示すように、電子の散乱範囲1003の位置が、ボーイング形状の位置とほぼ一致するため、ボーイング形状となっている側壁SDから試料外に飛び出す電子が多くなる。
【0108】
実施の形態1で述べたように、観察システムでは、ボーイング形状から飛び出る電子量を観察することによって、ボーイング形状の形状変化を、検出信号に基づいて観察する。この場合、飛び出る電子が多いほど、ボーイング形状に係る情報が検出信号に多く含まれることになる。言い換えるならば、飛び出る電子が多いほど、検出信号によって表されるボーイング形状に係る情報が多くなる。したがって、ボーイング形状から飛び出る電子は多い方が適切であり、望ましい。すなわち、加速電圧としては、注目形状を観察するのに、適切な電圧が存在することになる。図10および図11に示して例では、中間電圧が、注目形状を観察するのに適切な電圧となる。
【0109】
実施の形態2においては、材料と加速電圧とを変えながら、電子の散乱範囲を求めるシミュレーションが、予め実行される。このシミュレーションによって、それぞれの材料に対して、複数の加速電圧に対応した複数の電子の散乱範囲が求められ、求められた各加速電圧に対応する電子の散乱範囲が、予め、電子の散乱範囲DB201に登録されている。
【0110】
後で説明するが、注目形状に合わせた最適な電子の散乱範囲が、電子の散乱範囲DB201から選択されることになる。
【0111】
<観察システムの動作>
図12は、実施の形態2に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。図12は、図6と類似しているので、相違点を主に説明する。相違点は、図12では、ステップS1201~S1204が、図6に示されたステップに追加されていることである。また、図12では、図6に示したステップS602は省略されている。図9の示したプロセッサ209が、ステップS1201~S1204に対応するプログラムを実行することにより、図9に示した撮像条件決定機能ユニット901が実現される。
【0112】
ステップS501~S506およびステップS601の動作は、図5および図6で既に説明しているので、省略する。
【0113】
プロセッサ209は、ステップS502~S504およびS601を実行することにより、所定の撮像条件(例えば、加速電圧を低い電圧とする条件)のときの特徴量ごとの感度を算出する。すなわち、プロセッサ209は、加速電圧が低い電圧のときの、電子の散乱範囲(例えば図10の1002)を、電子の散乱範囲DB201から読み出し、読み出した電子の散乱範囲を用いて、特徴量(例えば、パターントップ輝度およびパターンエッジ輝度)ごとの感度を算出する。
【0114】
ステップS1201において、プロセッサ209は、撮像条件の変更が完了したか否かを判定する。例えば、撮像条件として、3つに撮像条件(加速電圧を、低い電圧、中間電圧および高電圧とする3つの条件)がある場合、この3つの撮像条件の全てが完了しているか否かが、ステップS1201においてプロセッサ209により判定される。
【0115】
加速電圧を中間電圧とする条件および加速電圧を高電圧とする条件が、まだ完了していないと、ステップS1201において判定された場合、次のステップS1202において、プロセッサ209は、撮像条件を変更する。すなわち、プロセッサ209は、例えば、加速電圧が中間電圧のときの、電子の散乱範囲(例えば図10の1003)を、電子の散乱範囲DB201から読み出す。その後、プロセッサ209は、ステップS502~S504およびS601を、実行する。ステップS502~S504およびS601が実行されることにより、加速電圧が中間電圧のときの電子の散乱範囲を用いて、特徴量ごとの感度が算出される。
【0116】
ステップS1201において、プロセッサ209が、全ての撮像条件の変更が完了したと判定するまで、プロセッサ209は、ステップS502~S504、S601、S1201およびS1202を繰り返し実行する。全ての撮像条件の変更が完了した場合、撮像条件ごとであって、特徴量ごとに感度が算出されたことになる。
【0117】
その後、プロセッサ209は、ステップS1203において、加速電圧と感度との相関を計算する。この計算により得られる相関グラフが、図12では、1201として示されている。相関グラフ1201には、特徴量としてパターントップ輝度を用いた例が示されており、横軸が加速電圧(加速)を示し、縦軸がパターントップ輝度(トップ輝度)の感度を示している。相関グラフ1201によれば、加速電圧が30keV近辺で、感度が最も高くなっている。
【0118】
次に、プロセッサ209は、ステップS1204において、撮像条件を決定する。例えば、最も感度の高い加速電圧(30keV)を撮像条件として決定する。決定した撮像条件を、プロセッサ209は、制御装置120(図1)に通知し、制御装置120が撮像条件に従って、電子顕微鏡100(図1)の加速電圧を設定する。ステップS1204に続いて、プロセッサ209は、ステップS505において電子顕微鏡100からの検出信号を取得し、ステップS506において注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する。ステップS505およびS506は、既に説明しているので、省略するが、ステップS505では、電子顕微鏡100の設定条件である加速電圧は、ステップS1204で決定されたものになっている。
【0119】
図12では、撮像条件決定機能ユニット901で撮像条件を決定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、プロセッサ209が、特徴量ごとの相関グラフを表示装置で表示させ、ユーザーが適切な撮像条件を選択するようにしてもよい。
【0120】
<表示装置による表示例>
図13は、実施の形態2に係るGUIの構成を示す図である。図13は、図7と類似しているので、相違点を主に説明する。相違点は、図13では、図7の入力画面領域701が入力画面領域1301に変更され、図7の出力画面領域751が出力画面領域1351に変更されていることである。
【0121】
入力画像領域1301においては、撮像条件704が撮像条件1302に変更されている。撮像条件1302では、電子顕微鏡100に設定する加速電圧を、図7のように所定の値として入力するのではなく、電圧の範囲として入力できるように加速電圧範囲が設けられている。ユーザーが、加速電圧範囲に、加速電圧の範囲を入力する。加速電圧範囲に設定された加速電圧の値が、図12のステップS1201において用いられる。例えば、加速電圧範囲に設定された下限電圧(図13では、0.2keV)が、図12において説明した所定の撮像条件(例えば、加速電圧を低い電圧とする条件)に相当し、上限電圧(60keV)が、図12において説明した高電圧に相当する。したがって、プロセッサ209は、図13に示した下限電圧から上限電圧に向けて、加速電圧を変更しながら、図12に示したステップS502~S506、S601およびS1201~S1204を実行する。
【0122】
出力画面領域1351においては、図7に示した特徴量と感度の一覧表753および最適な特徴量(最適特徴量)754が、最適特徴量と最適加速条件の一覧表1353に変更され、図7に示した特徴量毎の感度(相関グラフ)752が、特徴量毎の感度の加速依存性(相関グラフ)1352に変更されている。
【0123】
プロセッサ209は、図12のステップS1204を実行することにより決定した撮像条件である加速電圧を、最適加速電圧(図13では、最適加速)として、最適特徴量と最適加速条件の一覧表1353に表示する。また、プロセッサ209は、図6に示したステップS602(図12では省略)を実行することにより決定した特徴量を、最適特徴量と最適加速条件の一覧表1353に表示する。さらに、プロセッサ209は、図12のステップS1203を実行することにより求めた、特徴量毎の感度の相関グラフを、特徴量毎の感度の加速依存性(相関グラフ)1352として表示する。
【0124】
プロセッサ209は、ユーザーによる計測ボタン710の押圧に応じて、電子顕微鏡100から試料の画像755を取得し、取得された画像から特徴量を計算し、注目形状の基準からの変化量756を出力する。
【0125】
撮像条件として、試料に照射する電子の加速電圧を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電子の散乱範囲DB201(図9)に、電子の散乱範囲だけではなく、電子のエネルギー、電子の位置および/または電子の進行方向を含んだ、電子の軌道情報を保存してもよい。この場合、ステップS503(図12)において、電子の数だけでなく、電子が飛び出す方向やその時のエネルギーを考慮して電子の数をカウントし、電子顕微鏡100の検出器113(図1)の配置や検出器の前に配置される検出エネルギーフィルタ(図示せず)の帯域ごとの感度を、ステップS504で計算し、検出器113の配置や検出エネルギーフィルタごとに、ステップS1203(図12)で加速と感度の相関を計算し、最適な検出器113の配置や検出エネルギーフィルタの値を導出することも可能である。
【0126】
実施の形態2によれば、電子ビームを直接照射することができない注目形状の形状変化を観察する際の電子顕微鏡の撮像条件を最適化することができる。
【0127】
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、注目形状の形状変化を観察するのに、電子の散乱シミュレーションによって求めた電子の散乱範囲を用いていた。実施の形態3では、電子の散乱シミュレーションではなく、実際に電子顕微鏡によって撮像した画像を用いる例を説明する。
【0128】
図14は、実施の形態3に係る観察システムの動作を示すフローチャートである。
【0129】
先ず、ステップS1401において、注目形状の寸法が異なる試料が複数用意される。
【0130】
プロセッサ209(図2)は、ステップS1402で、電子顕微鏡100(図1)によって、ステップS1401で用意された複数の試料をサンプルとして、それぞれの画像もしくは輝度を取得し、1つの画像群とする。ステップS1402では、電子顕微鏡100の撮像条件(例えば、加速電圧)を変えながら、サンプルの画像を取得することにより、複数の画像群を取得する。
【0131】
ステップS1403では、プロセッサ209が、画像群(測定画像群)の特徴量(例えばパターントップ輝度、パターンエッジ輝度等)を分析し、注目形状の変化と特徴量の変化との関係(感度)を計算する。ステップS1404では、プロセッサ209が、全ての撮像条件でステップS1403の計算が完了したか否かを判定する。全ての撮像条件でステップS1403の計算が完了していない場合には、プロセッサ209は、完了していない撮像条件の測定画像群に対してステップS1403の計算を実行するように、ステップS1403とS1404を繰り返す。
【0132】
プロセッサ209が、ステップS1404において、全ての撮像条件について計算が完了したと判定すると、プロセッサ209はステップS1405を実行する。このステップS1405において、プロセッサ209は、特徴量毎に、撮像条件と感度の関係を計算し、表示装置206(図2)に表示する。図14においては、表示装置206に表示される相関グラフの例が、符号1401で示されている。表示装置206に表示されるものは、図14の相関グラフ1401に限定されるものではない。例えば、横軸を撮像条件である加速電圧とし、縦軸を特徴量とし、奥行き方向を感度の大小として3次元(3D)マップで、特徴量と撮像条件と感度との関係を表示するようにしてもよい。
【0133】
プロセッサ209は、ステップS1406において、特徴量決定機能ユニット203(図2)および撮像条件決定機能ユニット901(図9)を用いて撮像条件と特徴量を決定する。勿論、ユーザーが、相間グラフ1401に示された感度等に基づいて、撮像条件と特徴量を決定してもよい。
【0134】
その後、プロセッサ209は、ステップS505において、電子顕微鏡100から検出信号を取得し、ステップS506において、注目形状の形状変化に関連する値を1つ以上出力する。
【0135】
前記したように、ステップS1401で複数の試料を用意するが、例えば1枚の半導体ウェハ内で、互いに異なる位置に形成された、互いに異なる注目形状のパターンを、注目形状として用意してもよい。勿論、1枚の半導体ウェハではなく、複数枚の半導体ウェハを用いて、複数の試料を用意してもよい。
【0136】
実施の形態3によれば、実際のサンプルを用いて感度を求めているため、より正確な感度を用いて、注目形状の形状変化に関連する値を出力することができる。また、実施の形態3は、実施の形態1または実施の形態2と組み合わせてもよい。例えば、実施の形態3で求めた感度を用いて、実施の形態1または実施の形態2で求めた感度を校正し、校正された感度を用いて注目形状の形状変化に関連した値を出力するようにしてもよい。校正された感度を用いることで、より正確な形状変化に関連した値を出力することができる。
【0137】
前記した実施の形態において、各機能ユニットを実現するプログラム等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。勿論、各機能ユニットは、論理回路等を組み合わせて実現してもよい。
【0138】
実施の形態1~3においては、電子ビームを直接照射することができない注目形状の形状変化を、注目形状が形成された注目個所(注目形状が形成された形成位置)とは異なる所定の箇所(例えば第1表面の位置:第1表面位置)に電子ビームを照射することにより得られる検出信号を用いて定量化することができる。
【0139】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0140】
1 観察システム
100 電子顕微鏡
103 電子線
108 試料
120 制御装置
200 計算機
DW 裏面
SD 側壁(第2表面)
UP 主面(第1表面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14