(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108388
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像形成装置、及びキャリブレーション支援方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20230728BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20230728BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H04N1/00 002B
H04N1/10
H04N1/00 350
H04N1/04 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009488
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】濱小路 浩騎
【テーマコード(参考)】
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AB17
5C062AB20
5C062AB23
5C062AB42
5C062AC02
5C062AC05
5C062AC22
5C062AC58
5C062AC66
5C062AD01
5C062AF15
5C072AA01
5C072BA13
5C072DA25
5C072EA07
5C072LA02
5C072MA01
5C072MB08
5C072RA03
5C072RA07
(57)【要約】
【課題】キャリブレーションの実行頻度を低減するとともに、キャリブレーションが必要な変化が検出された場合に適時実行することができる画像読取装置を提供する。
【解決手段】コンタクトガラス210上に載置された読取対象物70を走査して画像を取得する光学センサ21と、光学センサ21を搭載して副走査方向に移動するキャリッジ20と、光学センサ21が取得した画像に基づいて寸法を算出するための基準となる基準スケール81と、光学センサ21が取得した画像の寸法を実際の寸法へ変換するキャリブレーション手段と、キャリッジ20が移動するときの移動特性の変化を検知する検知手段と、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであるかを判断する手段と、判断に基づいてユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知手段と、を備える画像読取装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトガラス上に載置された読取対象物を走査して画像を取得する光学センサと、前記光学センサを搭載して副走査方向に移動するキャリッジと、前記光学センサが取得した画像に基づいて寸法を算出するための基準となる基準スケールと、前記光学センサが取得した画像の寸法を実際の寸法へ変換するキャリブレーション手段と、前記キャリッジが移動するときの移動特性の変化を検知する検知手段と、前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものであるかを判断する手段と、前記判断に基づいてユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知手段と、を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものであると判断した場合、前記通知手段がユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知を行い、
前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものでないと判断した場合、再度画像の取得を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記基準スケールは、前記光学センサが前記読取対象物を走査して画像を取得する範囲の外側、かつ前記キャリッジが移動可能な最大移動範囲の内側に配置され、
主走査方向に沿って配設された主走査基準スケール、及び副走査方向に沿って配設された1または複数の副走査基準スケールを有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
取得した前記主走査基準スケールの画像の傾き、または取得した前記副走査基準スケールの画像の一画素当たりの長さに基づいて前記キャリッジの移動特性の変化を検知することを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記キャリッジの移動特性の変化は、前記キャリッジが副走査方向へ移動するときのスキュー量の変化、及び前記キャリッジが副走査方向へ移動するときのキャリッジの移動速度の変化のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記読取対象物の画像取得時に前記基準スケールの画像を取得するとともに保存し、新たに取得した前記基準スケールの画像と、以前に取得した前記基準スケールの画像と比較し、その差分を前記キャリッジの移動特性の変化として検知することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記差分に閾値を設け、前記差分が少なくとも2回連続して閾値を超えたとき前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものであると判断することを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記差分に閾値を設け、副走査方向において所定の範囲で連続して閾値を超えたとき前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものであると判断することを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
コンタクトガラス上に載置された読取対象物を走査して画像を取得する光学センサと、前記光学センサを搭載して副走査方向に移動するキャリッジと、前記光学センサが取得した画像に基づいて寸法を算出するための基準となる基準スケールと、前記光学センサが取得した画像の寸法を実際の寸法へ変換するキャリブレーション手段と、前記キャリッジが移動するときの移動特性の変化を検知する検知手段と、前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものであるかを判断する手段と、通知手段と、を備える画像読取装置のキャリブレーション支援方法であって、
前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものであると判断した場合、前記通知手段がユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知を行い、
前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものでないと判断した場合、再度画像の取得を行うことを特徴とするキャリブレーション支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置、及びキャリブレーション支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の形状等を光学的に読み取る画像読取装置が知られている。画像読取装置は、ガラスなどの載置面部材と、載置面に沿って走査して該載置面上に載置された読取対象物の画像情報を取得する走査取得手段を備えている。走査取得手段としては、例えば、光学センサを保持するキャリッジを、ガイドロッド等に沿って移動させる駆動構造を有するものが知られている。
【0003】
画像読取装置としては、測定装置として利用したいという要望にも対応可能な、十分な読取精度を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、読取精度を向上させる較正方法として、硬質部材に目盛りを形成した基準スケールをフラットベッドスキャナに読取らせて較正用のデータを得る技術が開示されている。この基準スケールを読み取った画像における目盛り部分の画像の位置情報を測定すれば、読取画像での距離と載置面上での距離との対応関係を正確に特定することができることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、基準スケールの画像を読取対象物の画像読取時とは異なるタイミングで取得するため、読取対象物の画像から当該読取対象物の寸法などを計測する精度においては課題があった。
【0006】
さらに、光学センサを保持したキャリッジは、ガイドロッドと摺動可能に支持されているが、製品設計の加工上隙間が設けられているために、スキュー(主走査方向の傾き)が発生することが避けられず、基準スケールの配設位置から読取範囲のズレ量を高精度に補正することが困難であるという課題がある。
【0007】
これに対し、別途平面ゲージ等の補正手段を用いて予めズレ量を取得し、読取画像に対する補正量を算出する等の較正を行う方法が検討されている。キャリッジのスキュー量は部品の摩耗や設置環境等の条件に起因して経時変化するものであるため、読取精度維持のために定期的にキャリブレーションを実行することが求められる。
しかしながら、キャリブレーションを実行する都度基準スケールや平面ゲージを設置することは、操作が煩雑となり、作業性を低下させることになる。
【0008】
そこで本発明は、キャリブレーションの実行頻度を低減するとともに、キャリブレーションが必要な変化が検出された場合に適時実行することができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像読取装置は、コンタクトガラス上に載置された読取対象物を走査して画像を取得する光学センサと、前記光学センサを搭載して副走査方向に移動するキャリッジと、前記光学センサが取得した画像に基づいて寸法を算出するための基準となる基準スケールと、前記光学センサが取得した画像の寸法を実際の寸法へ変換するキャリブレーション手段と、前記キャリッジが移動するときの移動特性の変化を検知する検知手段と、前記キャリッジの移動特性の変化が経時的なものであるかを判断する手段と、前記判断に基づいてユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャリブレーションの実行頻度を低減するとともに、キャリブレーションが必要な変化が検出された場合に適時実行することができる画像読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る画像読取装置の一実施形態としてのスキャナユニットが備える光学系の説明図である。
【
図4】本発明に係る画像読取装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図6】スキャナユニットのスキューの説明図である。
【
図7】本発明に係る画像読取装置におけるキャリブレーション実行時の一例を示す説明図である。
【
図8】主走査方向基準スケールの読取画像の模式図である。
【
図9】副走査方向基準スケールにより検知された一画素当たりの長さの変化を示すグラフである。
【
図10】
図9のグラフにおける1回目とN回目との差分を示すグラフである。
【
図11】スキャナユニットのスキュー量が変化した場合に検知される変化の一例を示すグラフである。
【
図12】1対の副走査方向基準スケールにより検知された一画素当たりの長さの変化を示すグラフである。
【
図13】
図12のグラフにおける1回目とN回目との差分を示すグラフである。
【
図14】画像形成装置が備える制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】画像形成装置の機能構成の一例を模式的に示す機能ブロック図である。
【
図16】キャリブレーション支援方法として、画像読取装置のキャリブレーション実行を判断するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の画像読取装置、画像形成装置、及びキャリブレーション支援方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
図1は本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す模式図、
図2は本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す斜視図である。
【0014】
本実施形態の画像形成装置1は、画像記録手段としての画像形成部100と、画像読取手段としての本発明に係る画像読取装置である画像読取部200とを備えている。また、画像形成装置1は、ユーザーに対する通知を表示する通知手段であり、またユーザーからの指示操作を受け付ける操作パネル2なども備えている。
【0015】
画像形成部100は、記録材である用紙P上に画像を記録(形成)するものである。本実施形態の画像形成部100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の色ごとの作像部10が中間転写体としての中間転写ベルト31の回転方向に沿って配列されたタンデム型の画像形成装置である。各作像部10は、それぞれ、潜像担持体としての感光体11を備えている。
【0016】
また、各作像部10は、感光体11の周囲に感光体表面を一様に所定電位に帯電する帯電手段としての帯電装置を備えている。また、各作像部10は、感光体11の周囲に帯電装置によって一様に帯電された感光体表面上に画像情報に応じて露光して静電潜像を書き込む静電潜像形成手段としての光書込装置を備えている。また、各作像部10は、感光体11の周囲に、感光体上の静電潜像にそれぞれの色(Y、M、C、K)のトナーを付着させる現像処理によりトナー像を作成する現像手段としての現像装置を備えている。また、各作像部10は、感光体11の周囲に、感光体上のトナー像を中間転写ベルト31上に転写する一次転写手段としての一次転写装置を備えている。また、各作像部10は、感光体11の周囲に、感光体上の転写残トナーを除去してクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニング装置を備えている。
【0017】
各感光体11上に形成された各色トナー像は、一次転写装置によって、中間転写ベルト31上に互いに重なり合うように一次転写され、中間転写ベルト31上にカラートナー像が形成される。中間転写ベルト31上のカラートナー像は、中間転写ベルト31の回転に伴って二次転写装置30との対向領域(二次転写領域)へと搬送される。
【0018】
一方、画像形成部100の下部には、用紙Pを給送する給送部としての用紙給紙部60が設けられている。本実施形態の用紙給紙部60は、2つの給紙トレイ61a、61bから構成されているが、給紙トレイの数はこれに限定されない。用紙給紙部60は、画像形成部100の制御部150からの指示に従って選択されるいずれかの給紙トレイ61a、61bからピックアップローラ62により用紙Pを1枚ずつ給紙する。そして、図中破線で示す搬送経路に沿って、搬送ローラ対63により二次転写領域へと用紙Pが搬送される。
【0019】
中間転写ベルト31上のカラートナー像は、二次転写領域において、所定のタイミングで搬送ローラ対63により搬送されてくる用紙P上に、二次転写装置30により二次転写される。カラートナー像が形成された用紙Pは、その後、定着手段としての定着装置40へと搬送され、熱と圧力の作用により、カラートナー像が用紙P上に定着される。定着後の用紙Pは、図中破線で示す搬送経路に沿って搬送され、排出部としての排紙トレイ50へと排出される。
【0020】
画像読取部200には、コンタクトガラス201に対して開閉可能で、コンタクトガラス201上に載置される読取対象物70をコンタクトガラス201の上面へ押さえ付ける押さえ部材としての圧板202が設けられている。圧板202は、ヒンジ203によって開閉可能に支持されている。
読取対象物70の画像情報を取得する場合、コンタクトガラス201上に読取対象物70をセットして圧板202を閉じ、読取動作を行う。
【0021】
画像読取部200は、読取対象物70を走査して画像を取得する光学センサと、光学センサ21(
図3参照)を搭載して副走査方向に移動するキャリッジ20を備えている。
光学センサ21は、コンタクトガラス201に載置された読取対象物70に光を照射し、その反射光に基づいて光学像を取得する画像センサである。キャリッジ20は、光学センサ21が読取対象物70を走査するように、ホームポジション20aから図中矢印Dで示す副走査方向に移動する。
【0022】
光学センサ21は、キャリッジ20の移動方向としての副走査方向に直交する主走査方向においてライン状に配列されている。
画像読取部200は、光学センサ21の読み取り位置としてのラインが読取対象物70を副走査方向に移動しながら走査することで、読取対象物70の全体を画像として取得することができるように構成されている。
また、画像読取部200は、シート状の読取対象物を搬送するADFも備えている。
【0023】
図3は、キャリッジ20が搭載する光学系の概要を示す図である。
図3に示すように、キャリッジ20が搭載する光源からの光が読取対象物70によって反射され、その反射光が光路hから縮小光学系に入り、第一ミラー23aで反射される。なお、
図3において光源の図示は省略している。
第一ミラー23aで反射された光は、第二ミラー23b、第三ミラー23c、第四ミラー23d、第五ミラー23e、第六ミラー23fで反射され、反射レンズ22を通過して光学センサ21へと入る。光学センサ21は、例えば、CCDセンサである。
【0024】
光学センサ21において検知された光に基づいて、読取対象物70の画像が電気信号に変換されて制御部150において所定の処理に付される。これによって、読取対象物70の画像データが生成される。
【0025】
図14は、画像形成装置が備える制御部150のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図14に示すように、本実施形態の画像形成装置は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等と同様の構成を含む。すなわち、CPU(Central Processing Unit)310、RAM(Random Access Memory)320、ROM(Read Only Memory)330、HDD(Hard Disk Drive)340及びI/F350がバス390を介して接続されていて、I/F350には表示部360、操作部370及び専用デバイス380が接続されている。専用デバイス380には、画像形成部100や画像読取部(画像読取装置)200が含まれる。
【0026】
CPU310は演算手段であり、画像形成装置全体の動作を制御する。RAM320は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU310が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM330は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD340は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や、印加電圧制御プログラムなどの各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。
【0027】
I/F350は、バス390と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。表示部360は、ユーザーが画像読取装置である画像読取部200を含む画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースであり、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって実現される。
操作部370は、ユーザーが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。操作部370及び表示部360の機能が同一の部材、例えば
図2に示す操作パネル2によって実現される態様であってもよい。
専用デバイス380には、画像形成部100及び画像読取部200が含まれる。
【0028】
このようなハードウェア構成において、ROM330やHDD340若しくは図示しない光学ディスク等の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM320に読み出され、CPU310がRAM320にロードされたプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0029】
図15は、画像形成装置の機能構成の一例を模式的に示す機能ブロック図である。なお、
図15においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙若しくは文書束の流れを破線の矢印で示している。
図15に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、制御部150、給紙テーブル96、プリントエンジン95、排紙トレイ50、ADF(Auto Document Feeder:原稿自動搬送装置)93、スキャナエンジン92、スキャン用排紙トレイ91、操作パネル2、ネットワークI/F97。また、制御部150は、主制御部151、エンジン制御部152、画像処理部153、操作表示制御部154及び入出力制御部155を有する。
【0030】
給紙テーブル96は、画像形成部であるプリントエンジン95に転写紙を給紙する。プリントエンジン95は、給紙テーブル96から搬送されてきた用紙に対して画像形成出力を実行することにより画像を描画する画像形成部である。プリントエンジン95の具体的態様としては、電子写真方式による画像形成機構であり、
図1中符号100で示す画像形成部にあたる。このプリントエンジン95により画像が描画された画像形成済みの用紙は、排紙トレイ50に排紙される。プリントエンジン95は、
図14に示す専用デバイス380によって実現される。
【0031】
ADF93は、画像読取装置における主要な処理を実行するスキャナエンジン92において、シート状の読取対象物を読み取り可能な位置に自動搬送する。
スキャナエンジン92は、光学情報を電気信号に変換する光電変換素子を含む原稿読取部であり、ADF93により自動搬送されてきた原稿、若しくは、コンタクトガラス201上に載置された読取対象物を光学的に走査して読み取って画像情報を生成する原稿読取部である。
ADF93により自動搬送されてスキャナエンジン92により読み取られた原稿は、スキャン用排紙トレイ91に排紙される。ADF93及びスキャナエンジン92は、
図14に示す専用デバイス380によって実現される。
【0032】
操作パネル2は、画像形成装置または画像読取装置の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザーが画像形成装置または画像読取装置を直接操作し、若しくは情報を入力する際の入力インタフェースでもある。すなわち、操作パネル2は、ユーザーによる操作を受けるための画像を表示する機能を含む。操作パネル2は、
図14に示す表示部360及び操作部370によって実現される。
【0033】
ネットワークI/F97は、画像形成装置1がネットワークを介して管理者用端末やPC(Personal Computer)等の他の機器と通信するためのインタフェースである。本実施形態に係る画像形成装置1は、ネットワークI/F97を介して接続された端末から各種制御コマンドを受信する。ネットワークI/F97は、
図14に示すI/F350によって実現される。
【0034】
制御部150は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM330やHDD340等の不揮発性記憶媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM320にロードされ、それらのプログラムに従ってCPU310が演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御と集積回路などのハードウェアとによって制御部150が構成される。
【0035】
主制御部151は、制御部150に含まれる各部を制御する役割を担い、制御部150の各部に命令を与える。また、主制御部151は、入出力制御部155を制御し、ネットワークI/F97及びネットワークを介して他の装置にアクセスする。エンジン制御部152は、プリントエンジン95、スキャナエンジン92等の駆動部を制御し若しくは駆動させる。
【0036】
画像処理部153は、主制御部151の制御に従い、PDL(Page Description Language)等により記述された画像情報、例えば、入力された印刷ジョブに含まれる文書データ若しくは画像データに基づいて描画情報を出力情報として生成する。この描画情報とは、CMYKのビットマップデータ等の情報であり、画像形成部であるプリントエンジン95が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。
また、画像処理部153は、スキャナエンジン92から入力される情報を処理し、画像データを生成する。この画像データとは、スキャナ動作の結果物として画像形成装置1に格納され若しくはネットワークI/F97及びネットワークを介して他の機器に送信される情報である。
【0037】
操作表示制御部154は、操作パネル2に情報表示を行い若しくは操作パネル2を介して入力された情報を主制御部151に通知する。入出力制御部155は、ネットワークI/F97及びネットワークを介して入力される信号や命令を主制御部151に入力する。
【0038】
以下、本発明に係る画像読取装置におけるキャリブレーションについて説明する。
本発明に係る画像読取装置200は、コンタクトガラス201上に載置された読取対象物70を走査して画像を取得する光学センサ21と、光学センサ21を搭載して副走査方向に移動するキャリッジ20と、光学センサ21が取得した画像に基づいて寸法を算出するための基準となる基準スケールと、光学センサ21が取得した画像の寸法を実際の寸法へ変換するキャリブレーション手段と、キャリッジ20が副走査方向へ移動する際の移動特性の変化を検知する検知手段と、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであるかを判断する手段と、判断に基づいてユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知手段と、を備えている。
キャリブレーション手段、検知手段、判断手段、及び通知手段の機能は、
図1、
図14及び
図15に示す画像形成装置の制御部150(画像処理部153、主制御部151、及び操作表示制御部154)により実現される。
【0039】
図4及び
図6は、本発明に係る画像読取装置の構成の一例を示す平面図であり、
図5は
図4中の断面A-Aの模式図である。
図4は、キャリッジ20がホームポジションに位置している状態を示している。
画像読取装置は、キャリッジ20の駆動源であるモータ27と、モータ軸上取付けられたタイミングプーリ28と、タイミングベルト26と、ガイドロッド24と、を備えている。キャリッジ20は、ガイドロッド24に沿って図中矢印Dで示す副走査方向に移動する。
【0040】
また、キャリッジ20は、
図5に示すように、ガイドロッド24と摺動する摺動部材25、及びタイミングベルト26を保持する固定部29を有している。
キャリッジ20は摺動部材25によりガイドロッド24と摺動可能に支持されているが、
図5に示すように、摺動部材25とガイドロッド24との間には製品設計の加工上隙間Gが発生する。そして、タイミングベルト26を固定する固定部29と離間しているため、タイミングベルト26で引っ張る方向の回転方向にスキュー(主走査方向の傾き)が発生することが避けられない。
そして、隙間Gは摩耗等により経時的に大きくなり、その結果キャリッジ20のスキュー量も経時的に増加することとなる。
【0041】
図6は、キャリッジ20のスキューが発生している状態を模式的に示した図である。
例えば、ガイドロッド24が主走査方向の中央ではなく、主走査方向の一方端部寄りに設置されている場合は、
図6に示すようにキャリッジ20のスキュー量Sは主走査方向の端部側へ向かうに従い大きくなる(S1<S2)。
【0042】
キャリッジ20のスキュー量は、摺動部材25等の摩耗や設置環境等の条件に起因して経時変化するため、読取精度維持のために定期的にキャリブレーションを実行する必要がある。
キャリブレーションの例を
図7に示す。
図7は画像読取装置において、基準スケール81と平面ゲージ82を用いた補正値算出を実施している状態を示す平面図である。
【0043】
基準スケール81は、コンタクトガラス上の読取面に寸法の計測基準として機能する「目盛り」を配置する部材である。なお、
図7に示すように、コンタクトガラス上に読取対象物を載置するときの基準位置83が示されている。
基準スケール81は、光学センサ21が読取対象物を走査して画像を取得する範囲の外側、かつキャリッジ20が移動可能な最大移動範囲の内側に配置されており、主走査方向に沿って配設された主走査基準スケール81a、及び副走査方向に沿って配設された1または複数の副走査基準スケール81bを有している。
図7の例では、副走査基準スケール81bが主走査方向の両端側に対向して一対(2本)設けられているが、主走査方向一方端部側にのみ配設される態様であってもよい。
【0044】
基準スケール81は、光学センサ21のキャリブレーションに用いられるため、下面(キャリッジ20側)に目盛りを設ける必要がある。一方、基準スケール81は、コンタクトガラスの上面側(読取対象物の載置面)に配置した方が、光学センサ21による読み取りのキャリブレーションの精度が向上する。基準スケール81はコンタクトガラスの上面側と下面側の両面に配置してもよい。基準スケール81を両面に配置すると、ユーザーが基準スケール81の位置を視認可能にしつつ、かつ、コンタクトガラスの下面側から上方向に向いている光学センサ21が、基準スケール81と読取対象物の画像を同時に取得することができる。
【0045】
キャリッジ20側に配置される基準スケール81の面は、キャリッジ20が搭載している光源からの光を反射しないように、目盛りを表示する色と、目盛りが形成されている部分の色を異なる色にするほうが望ましい。例えば、SUS磨きなどで目盛りを表示する線を白色にし、画像において線のコントラストを強調して識別しやすくする。
基準スケール81の素材をSUSとし、目盛りを黒色で形成しても、読取対象物と同時に画像を取得する処理において問題は生じない。
【0046】
なお、キャリッジ20の移動方向(副走査方向)と、キャリッジ20に搭載された光学センサ21が読取対象物を光学的に読み取る光学方向(主走査方向)とでは、キャリッジ20の移動方向の方が、位置ずれが大きくなる傾向を有する。そこで、計測精度を向上させるために、副走査方向スケール81bの目盛り間隔を、主走査方向スケール81aの目盛り間隔よりも狭く(細かく)形成することができる。
【0047】
上述のとおりキャリッジ20のスキュー量は経時変化するため、基準スケール81の情報のみでは正確な寸法が得られない。そこで、主走査方向及び副走査方向(X/Y方向)に目盛りがある平面ゲージ82を用いて定期的にキャリブレーションを実行する必要がある。
図7に示すように、平面ゲージ82を用いることにより、例えば、副走査方向の長さX1~X4、及び主走査方向の長さY1~Y3を取得することができる。そして、基準スケールの副走査方向の長さXと取得した長さX1~X4とを比較し、差分を補正量として保持する。同様に、基準スケールの主走査方向の長さYと取得した長さY1~Y3とを比較し、差分を補正量として保持する。
【0048】
基準スケール81は常設であるが、平面ゲージ82はキャリブレーション実行時に都度配設する必要がある。平面ゲージを設置することで操作が煩雑となり、作業性を低下させることになるため、キャリブレーションの実行頻度を低減するとともに、キャリブレーションが必要な変化が検出された場合にのみ適時実行可能とすることが好ましい。
そこで、本実施形態の画像読取装置は、キャリッジ20が副走査方向へ移動する際の移動特性の変化が経時的なものであるか、装置の振動等に起因した一時的なものであるかを判断し、判断結果に基づいてユーザーにキャリブレーション実行を促す通知を行う。
具体的には、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであると判断した場合、通知手段がユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知を行い、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものでないと判断した場合は、再度画像の取得を行う。
【0049】
本実施形態の画像読取装置においてキャリブレーション実行を判断するキャリブレーション支援方法のフローチャートを
図16に示す。
まず、コンタクトガラス201の載置面に読取対象物70を載置するために、圧板202を開ける(S001)。圧板202はADF93を含む構成であって、コンタクトガラス201に読取対象物が載置されたときに、これを保持するためにコンタクトガラス201上を覆う部材である。
続いて、コンタクトガラス201の載置面に読取対象物70を載置する(S002)。
【0050】
次に、操作パネル2から読取処理を開始させる指示を行い(S003)、読取り処理が開始される。
読取開始後、キャリッジ20が稼働し、キャリッジ20の移動とともに光学センサ21が読取対象物70と基準スケール81の画像を同時に取得し、記憶領域に保存する。
【0051】
続いて、取得された画像に含まれる基準スケール81の画像の部分を特定し、以前に取得した基準スケールの画像、例えば、前回のキャリブレーション実行時に取得した基準スケール81の画像と比較して、その差分をキャリッジ20の移動特性の変化として検知する(S004)。
キャリッジ20の移動特性の変化は、キャリッジ20が副走査方向へ移動するときのスキュー量の変化、またはキャリッジが副走査方向へ移動するときのキャリッジの移動速度の変化として検知することができる。
【0052】
キャリッジ20の移動特性に変化があると判断された場合(S005)は、それが経時的変化であるかを判断する(S006)。キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであると判断した場合、通知手段がユーザーにキャリブレーションの実行を促す通知を行い(S007)、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものでないと判断した場合、ステップS004へ戻り、再度画像の取得を行う。
ステップS005にてキャリッジ20の移動特性に変化があると判断されなかった場合は、通知を行わずに処理を終了する。
【0053】
本実施形態の画像読取装置において、取得した主走査基準スケール81aの画像の傾き、または取得した副走査基準スケール81bの画像の一画素当たりの長さに基づいてキャリッジ20の移動特性の変化を検知することができる。
キャリッジ20の移動特性の変化は、例えば、キャリッジ20が副走査方向へ移動するときのスキュー量の変化や、キャリッジが副走査方向へ移動するときの移動速度の変化である。
【0054】
キャリッジ20の移動特性の検知は、読取対象物70の画像取得時に基準スケール81の画像を取得するとともに保存し、新たに取得した基準スケール81の画像と、前回のキャリブレーション実行時に取得した基準スケール81の画像と比較して、その差分をキャリッジ20の移動特性の変化として検知する。
【0055】
キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであるかを判断する方法としては、例えば、新たに取得した基準スケール81の画像と、前回のキャリブレーション実行時に取得した基準スケール81の画像と比較して得た差分に閾値を設け、その差分が少なくとも2回連続して閾値を超えたとき、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであると判断することができる。
【0056】
また、新たに取得した基準スケールの画像81と、前回のキャリブレーション実行時に取得した基準スケール81の画像と比較して得た差分に閾値を設け、副走査方向において所定の範囲で連続して閾値を超えたとき、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであると判断することができる。
【0057】
以下、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであるかを判断する具体例ついて説明する。
【0058】
(第1の実施形態)
取得した主走査基準スケール81aの画像810の傾きに基づいてキャリッジ20の移動特性の変化を検知する方法について説明する。
本実施形態の方法は、新たに取得した主走査基準スケール81aの画像と、前回のキャリブレーション実行時に取得した主走査基準スケール81aの画像とを比較して、その差分をキャリッジ20の移動特性の変化として検知する。
キャリッジ20の移動特性の変化は、キャリッジ20が副走査方向へ移動するときのスキュー量の変化として検知することができる。
【0059】
図8は主走査方向基準スケール81aの読取画像を模式的に表した図であり、
図8(A)はキャリブレーション実行時の読取画像810を、
図8(B)は新たに取得した画像811をそれぞれ示している。本実施形態では、
図8(A)の読取画像810と
図8(B)の読取画像811の傾き量を比較してその差分を得る。差分に閾値を設け、閾値を超える傾き量の変化がみられた場合は、キャリッジ20の移動特性が変化したと判断する。そして、差分が少なくとも2回連続して閾値を超えたとき、キャリッジ20の移動特性の変化が経時的なものであると判断することができる。
【0060】
また、主走査基準スケール81aの画像の傾き量を保存し、新たに主走査基準スケール81aの画像を取得した時に前回の画像の傾き量と比較することにより、スキュー量の変化が一時的なものであるか、経時的なものであるかを判断することができる。
スキュー量が徐々に変化している場合は駆動部材の摩耗等による経時的な変化である可能性が高いため、ユーザーにキャリブレーションの実行を促す。一方、スキュー量の変化が突発的で連続性が無い等の場合は、経時的な変化ではない可能性が高いため画像の再読取を行う。
【0061】
(第2の実施形態)
取得した副走査基準スケール81bの画像の一画素当たりの長さに基づいてキャリッジ20の移動特性の変化を検知する方法について説明する。
本実施形態の方法は、新たに取得した副走査基準スケールの画像81bの一画素当たりの長さと、前回のキャリブレーション実行時に取得した副走査基準スケール81bの画像の一画素当たりの長さとを比較して、その差分をキャリッジ20の移動特性の変化として検知する。
キャリッジ20の移動特性の変化は、キャリッジ20が副走査方向へ移動するときのスキュー量の変化として検知することができる。
【0062】
上記第1の実施形態では、主走査基準スケール81aが配設された副走査側の一方端部側領域の変化しか検出することができないが、本実施形態によれば副走査基準スケール81bが配設された領域の全域にわたる変化を広く検出することができる。
【0063】
図9は、副走査方向基準スケール81bにより検知された一画素当たりの長さの変化を示すグラフであり、異なるタイミングの読取画像から取得したデータをプロットしたものである。グラフの縦軸は画素の長さ、横軸は副走査方向の位置を表し、グラフの薄い実線が1回目の走査時のデータ(例えば前回キャリブレーション実行時)、実線がN回目(N>1)の走査時のデータ(例えばキャリブレーション実施後の任意の読取時のデータ)を示している。
図10は、
図9の1回目及びN回目の差分のグラフであり、グラフの縦軸及び横軸は
図9と同じレンジである。
図10のグラフから、画素の長さの変化はL1からL2の間の狭い一定範囲内に収まるパターンを示している。
図10の例において、差分の下限の閾値をL1、上限の閾値をL2とした場合、画素の長さの変化は閾値を超えておらず、キャリッジ20の移動特性の変化、すなわちキャリッジ20が副走査方向へ移動するときのスキュー量の変化が経時的なものであるとは判断されない。
【0064】
また、キャリブレーション実施時に取得した画像と、以降の画像読取時に取得した画像との間で、画像の寸法と実際の寸法との間の差異を検出し、それぞれを比較することでキャリッジの移動特性の変化を検出することができる。
この場合も事前に決めた閾値に従い、差分が閾値を超えた場合にキャリッジの移動特性が経時的なものであるかを判断する。
【0065】
キャリッジ20の移動特性の変化、すなわちキャリッジ20が副走査方向へ移動するときのスキュー量に変化がみられ、かつ当該変化が経時的なものであると判断される場合のグラフの一例を
図11に示す。
駆動部材の摩耗等による経時的な変化の場合、
図11のように全体的に長さの変化が検知される。
図11の例において、差分の下限の閾値をL1、上限の閾値をL2とした場合、副走査方向において所定の範囲で連続して閾値L2を超えているため、キャリッジ20の移動特性の変化は経時的なものであると判断される。
一方、装置の振動等に起因した一時的な変化は、一部分のみが突発的に閾値を超えるような変動を示すグラフとなる。この場合は、再度画像の取得を行うこととなる。
【0066】
(第3の実施形態)
副走査基準スケール81bは、
図7の例のように、主走査方向両端に一対備えられていることが好ましい。
例えば、ガイドロッド24が主走査方向の中央ではなく、主走査方向の一方端部寄りに設置されている場合は、
図6に示すようにキャリッジ20のスキュー量Sは主走査方向の端部側へ向かうに従い大きくなる(S1<S2)。そのため、移動特性としてのスキュー量の変化を検知する基準となる閾値の設定方法によっては、変化を検知できなかったり、本来キャリブレーションの実施が不要であるにもかかわらずキャリブレーションの実施を促す通知が行われてしまう場合がある。
本実施形態のように、2本の副走査基準スケール81bを用いて変化を検出することにより、より正確にキャリッジ20の移動特性の変化が検出できる。
【0067】
取得した一対(2本)の副走査基準スケール81bの画像の一画素当たりの長さに基づいてキャリッジ20の移動特性の変化を検知する方法について説明する。
2本の副走査基準スケール81bのそれぞれについて取得した画像を用いて変化を検知することもできるが、保存データが2倍となる。そこで、一方の副走査基準スケール81bの画像と、他方の副走査基準スケール81bの画像のそれぞれから得た一画素当たりの長さの差分を保存対象のデータとすることにより、データ量の増大を抑えることができる。
【0068】
図12は、1対の副走査方向基準スケールにより検知された一画素当たりの長さの差分の変化を示すグラフであり、異なるタイミングの読取画像から取得したデータをプロットしたものである。グラフの縦軸は画素の長さ、横軸は副走査方向の位置を表し、グラフの薄い実線が1回目の走査時のデータ(例えば前回キャリブレーション実行時)、実線がN回目(N>1)の走査時のデータ(例えばキャリブレーション実施後の任意の読取時のデータ)を示している。
図13は、
図12の1回目及びN回目の差分のグラフであり、グラフの縦軸及び横軸は
図12と同じレンジである。
図13のグラフから、画素の長さの変化は一定範囲内に収まるパターンを示しており、また予め決定した閾値を超えておらず、キャリッジ20の移動特性の変化、すなわちキャリッジ20が副走査方向へ移動するときのスキュー量の変化は経時的なものとして判断されない。
【0069】
以上第1~第3の実施形態において例示した処理は、制御部150の主制御部151及び画像処理部153において実行可能な演算処理によって実現される。上記の処理において、同時に取得した読取対象物70と基準スケール81の画像に対し、画像処理部153において、それぞれの画像部分が特定される処理が実行される。その処理の結果が、主制御部151に渡されて読取対象物70の寸法を算出するために必要となる情報が揃うので、主制御部151において寸法の算出処理が実行される。
すなわち、主制御部151及び画像処理部153を含む機能ブロックによって寸法算出部が構成される。
【0070】
画像読取装置200は、コンタクトガラス201の下部の光学センサ21を備えたキャリッジ20によって、読取対象物70と基準スケール81の画像を同時に取得することができる。この同時取得を可能にするように、基準スケール81を配置し、読取対象物70が立体物であるときの読取(計測)範囲を、読取対象物が平面であるときの領域と異なる範囲に設定することができる。
【0071】
例えば、読取対象物70の最大読取長さを、主走査方向において297mmとし、副走査方向において420mmとして設定する。また、キャリッジ20が移動可能範囲であって光学センサ21によって読取可能の最大範囲の範囲を主走査方向において306mmとし、副走査方向において435mmとして設定する。そして、最大読取長さの外側に相当する位置であて、読取可能最大範囲の内側に基準スケール81を、主査方向と副走査方向のそれぞれに配置する。
このような構成とすることにより、基準スケール81の画像と、読取対象物70の画像を同時に取得できるので、寸法計測精度が大幅向上する。
【0072】
本発明に係る画像読取装置、及びキャリブレーション支援方法によれば、画像読取装置のキャリブレーションの実行頻度を低減するとともに、キャリブレーションが必要な変化が検出された場合に適時実行することができる。また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像読取装置を備えているため、キャリブレーションの煩雑な操作を行う頻度が低減され、作業性の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
20 キャリッジ
21 光学センサ
24 ガイドロッド
25 摺動部材
26 タイミングベルト
29 固定部
70 読取対象物
81 基準スケール
81a 主走査基準スケール
81b 副走査基準スケール
100 画像形成部
150 制御部
200 画像読取装置
201 コンタクトガラス
202 圧板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】