(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108422
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230728BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 B
C23C16/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009544
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】平山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB05
2G084CC04
2G084CC16
2G084DD04
2G084DD23
2G084DD42
2G084DD55
2G084DD68
4K030EA03
4K030FA03
4K030KA22
4K030KA30
(57)【要約】
【課題】高周波電源に電気的に接続された負荷側のインピーダンスを調整する。
【解決手段】例示的実施形態に係るプラズマ処理装置において、処理容器はプラズマ処理が行われるように構成されている。高周波電源は処理容器に設けられた電極に高周波を供給するように構成されている。管部は処理容器に設けられている。管部は管状の外導体、及び外導体の内側において外導体から離隔して設けられた管状の内導体、及び外導体と内導体の間に設けられた誘電体部、並びに外導体及び内導体を電気的に短絡する短絡部材を含んでいる。管部は高周波電源に電気的に接続されている負荷側のインピーダンスを調整するように構成されている。外導体は接地された導体の処理容器に電気的に接続されている。内導体は電極に電気的に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理が行われるように構成された処理容器と、
前記処理容器に設けられた電極に高周波を供給するように構成された高周波電源と、
前記処理容器に設けられた管部と、
を備え、
前記管部は、管状の外導体、該外導体の内側において該外導体から離隔して設けられた管状の内導体、及び該外導体と該内導体の間に設けられた誘電体部、並びに該外導体及び該内導体を電気的に短絡する短絡部材を含んでおり、前記高周波電源に電気的に接続されている負荷側のインピーダンスを調整するように構成され、
前記外導体は、接地された導体の前記処理容器に電気的に接続され、
前記内導体は、前記電極に電気的に接続されている、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記管部は、前記高周波電源に電気的に接続されている負荷側のインピーダンスのリアクタンス成分を補助するように構成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記短絡部材は、導体又はキャパシタである、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記高周波電源は、VHF帯、UHF帯、及びマイクロ波帯の少なくとも一つの周波数帯にある高周波を前記電極に供給する、
請求項1~3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記管部は、ガス、温調流体、電気配線の少なくとも一つを含む用力を導入するように構成されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記外導体は、前記処理容器の上壁の上面から上方に延びており、
前記内導体は、前記電極から前記上壁を介して上方に延びており、
前記内導体の外側の周囲には、該内導体を覆う空間が設けられている、
請求項1~5の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記誘電体部は、前記内導体を覆う前記空間のうち、前記上壁の下面から該上壁の上方に延びる領域に充填されている、
請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記高周波電源から前記電極に供給される高周波の該管部内における波長をλgとし、前記上壁の前記下面から該上壁の上方に延びる前記領域の長さをLとすると、該Lは、0<L<λg/2の範囲にある、
請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
複数の前記電極を有しており、
前記内導体は、複数の前記電極のそれぞれに電気的に接続されている、
請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
複数の前記管部を有している、
請求項1~9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
複数の前記管部は、前記処理容器の上壁の中心軸に対して軸対称に該上壁に配置されている、
請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造に用いられるプラズマ処理装置では、高周波電源によって生成される超短波(VHF)帯又は極超短波(UHF)帯の高周波が処理空間に供給される。プラズマ処理装置についての技術は、例えば特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-35443号公報
【特許文献2】特開2019-106290号公報
【特許文献3】国際公開第2013/89007号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、高周波電源に電気的に接続された負荷側のインピーダンスを調整する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。このプラズマ処理装置は、処理容器と、高周波電源と、管部とを備える。処理容器は、プラズマ処理が行われるように構成されている。高周波電源は、処理容器に設けられた電極に高周波を供給するように構成されている。管部は、処理容器に設けられている。管部は、管状の外導体、外導体の内側において外導体から離隔して設けられた管状の内導体、及び外導体と内導体の間に設けられた誘電体部、並びに外導体及び内導体を電気的に短絡する短絡部材を含んでいる。管部は、高周波電源に電気的に接続されている負荷側のインピーダンスを調整するように構成されている。外導体は、接地された導体の処理容器に電気的に接続されている。内導体は、電極に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、高周波電源に電気的に接続された負荷側のインピーダンスを調整し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す管部の同軸フィルタによって提供されるインピーダンスを表す数式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
近年、半導体製造技術の高度化に伴い、プラズマ処理装置の高性能化が求められている。CVDやALD等の成膜用のプラズマ処理装置においては、気相中の活性種密度の増加による生産性向上、及び、基板表面に入射するイオンの低エネルギー化によるダメージの低減、等のためにプラズマ励起にVHF~UHF帯の高周波が用いられる。
【0010】
プラズマ処理装置の電極には、ガスを導入するための配管、電極の温度を一定に保つための流体を導入するための配管、ヒータの電気配線、熱電対の電気配線等が接続されることがある。これらの配管や配線を通して高周波がプラズマ処理装置の外部に漏洩しないように、すなわちプラズマ処理装置と当該プラズマ処理装置の外部とが電気的に絶縁されるように絶縁部やローパスフィルタ等が用いられ得る。絶縁部に高い高周波電圧が印加される場合には、配管内でプラズマが発生することがある。配管内での放電は、プラズマ励起周波数が高くなると発生しやすい傾向がある。
【0011】
一方、高周波電源に接続された整合器から出力された高周波は、プラズマ処理装置内の伝搬部を伝搬して高周波放出部から処理容器内に放出される。高周波放出部において、一部の高周波は反射し整合器側に戻っていくため、VHF~UHF帯の周波数では、伝搬部において定在波が生じる。このため、プラズマ着火に必要な電圧が、高周波放出部では数100Vであっても、整合器出力部では数1000Vを超えることがあり得る。この場合、整合器は高電圧の影響を受ける場合がある。このため、高周波電源に電気的に接続された負荷側のインピーダンスを調整するための技術が望まれている。
【0012】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。このプラズマ処理装置は、処理容器と、高周波電源と、管部とを備える。処理容器は、プラズマ処理が行われるように構成されている。高周波電源は、処理容器に設けられた電極に高周波を供給するように構成されている。管部は、処理容器に設けられている。管部は、管状の外導体、外導体の内側において外導体から離隔して設けられた管状の内導体、及び外導体と内導体の間に設けられた誘電体部、並びに外導体及び内導体を電気的に短絡する短絡部材を含んでいる。管部は、高周波電源に電気的に接続されている負荷側のインピーダンスを調整するように構成されている。外導体は、接地された導体の処理容器に電気的に接続されている。内導体は、電極に電気的に接続されている。
【0013】
したがって、管部の構成によって、高周波電源に電気的に接続された負荷側のインピーダンスが調整可能となる。
【0014】
一つの例示的実施形態において、管部は、高周波電源に電気的に接続されている負荷側のインピーダンスのリアクタンス成分を補助するように構成されている。
【0015】
このように、リアクタンス成分を補助することによって、高周波電源から発生する高周波が高周波電源に電気的に接続された負荷側に及ぼす影響を低減し得る。
【0016】
一つの例示的実施形態において、短絡部材は、導体又はキャパシタである。
【0017】
一つの例示的実施形態において、高周波電源は、VHF帯、UHF帯、及びマイクロ波帯の少なくとも一つの周波数帯にある高周波を電極に供給する。
【0018】
一つの例示的実施形態において、管部は、ガス、温調流体、電気配線の少なくとも一つを含む用力を導入するように構成されている。
【0019】
一つの例示的実施形態において、外導体は、処理容器の上壁の上面から上方に延びている。内導体は、電極から上壁を介して上方に延びている。内導体の外側の周囲には、内導体を覆う空間が設けられている。
【0020】
一つの例示的実施形態において、誘電体部は、内導体を覆う空間のうち、上壁の下面から上壁の上方に延びる領域に充填されている。
【0021】
一つの例示的実施形態において、高周波電源から電極に供給される高周波の管部内における波長をλgとし、上壁の下面から上壁の上方に延びる領域の長さをLとすると、Lは、0<L<λg/2の範囲にある。
【0022】
一つの例示的実施形態において、複数の電極を有している。内導体は、複数の電極のそれぞれに電気的に接続されている。
【0023】
一つの例示的実施形態において、複数の管部を有している。
【0024】
一つの例示的実施形態において、複数の管部は、処理容器の上壁の中心軸に対して軸対称に上壁に配置されている。
【0025】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0026】
プラズマ処理装置1の構成の一例が
図1に示されている。
図1を参照してプラズマ処理装置1の構成について説明する。
【0027】
プラズマ処理装置1は、処理容器101、上壁102、電極103、シャワープレート106、ガス孔107、絶縁リング108、高周波電源109、及び複数の管部CPを備える。
【0028】
プラズマ処理装置1は、更に、整合器110、高周波導入部111、高周波伝搬部112、高周波放出部113、ガス供給器114、排気口116、封止部材117、処理空間119、基板120、及びステージ121を備える。
【0029】
プラズマ処理装置1は、更に、外導体200、内導体201、誘電体部202、短絡部材203、同軸フィルタ204、封止部材205、ヒータ電源206、ヒータ配線207、外側ヒータ208、及び内側ヒータ209を備える。
【0030】
電極103は、処理容器101において、処理容器101の上壁102に対向して上壁102に沿って設けられている。電極103の内部には、二本のヒータ(外側ヒータ208、内側ヒータ209)が埋め込まれている。外側ヒータ208及び内側ヒータ209は、例えばシースヒータであり得る。
【0031】
電極103には、整合器110及び上壁102の高周波導入部111を介して、高周波電源109が電気的に接続されている。一つの実施形態において、高周波導入部111には、図示しない同軸導波管が設けられ得る。高周波電源109から発生した高周波は、整合器110を介して電極103に印加される。上壁102及び電極103の間は、高周波が伝搬する空間である高周波伝搬部112を提供する。
【0032】
電極103は、処理容器101において、絶縁リング108によって支持され、固定されている。絶縁リング108は、処理容器101の側壁に沿って設けられている。電極103と絶縁リング108との接合面には封止部材117が設けられている。封止部材117によって、電極103及び絶縁リング108の接合によって画成された複数の空間(高周波伝搬部112の空間、並びに電極103及びシャワープレート106の間の空間)それぞれの気密性が向上する。
【0033】
高周波電源109は、処理容器101に設けられており、電極103に高周波を供給するように構成されている。高周波電源109は、VHF帯、UHF帯、及びマイクロ波帯の少なくとも一つの周波数帯にある高周波電圧(以下、高周波という場合がある。)を電極103に供給する。高周波電源109から出力された高周波は、整合器110を介して高周波導入部111から処理容器101内に導入される。高周波は、電極103を取り囲む高周波伝搬部112を伝搬し、高周波放出部113から処理空間119に放出される。高周波は、表面波としてシャワープレート106の下面に沿って伝搬しながらプラズマを励起する。
【0034】
シャワープレート106は、電極103の下方において、電極103に沿って設けられている。電極103及びシャワープレート106の間には空間が設けられており、この空間は、ガス供給器114に接続された管部CPに電極103を介して連通している。電極103及びシャワープレート106の間のこの空間には、ガス供給器114から出力されたガスが管部CPを介して拡散する。そして、このガスは、更に、シャワープレート106に設けられた複数のガス孔107を介してシャワープレート106の下方に設けられた処理空間119内に供給される。高周波放出部113から処理空間119に放出された高周波によって、処理空間119内に放出されたガスのプラズマが生成される。このプラズマによって、ステージ121上に載置された基板120がプラズマ処理される。処理空間119内のガスは、排気口116を介して外部に排出される。
【0035】
処理容器101は、プラズマ処理が行われるように構成されている。処理容器101は、電気的に接地された導体である。
【0036】
処理容器101には、管部CPが設けられている。管部CPは、高周波電源109に電気的に接続されている負荷側のインピーダンスを調整するように構成されている。管部CPは、同軸フィルタ204を含む。同軸フィルタ204は、上壁102から上方に延びている。同軸フィルタ204は、管状の外導体200、及び外導体200の内側において外導体200から離隔して設けられた管状の内導体201、外導体200と内導体201の間の空間に設けられた誘電体部202を含んでいる。外導体200の内径bは、内導体201の外径aよりも大きい。誘電体部202は、固体状の部材や気体(例えば、空気)であり得る。
【0037】
外導体200は、処理容器(特に上壁102)に電気的に接続されている。外導体200は、処理容器101の上壁102の上面から上方に延びている。内導体201は、電極103に電気的に接続されている。内導体201は、電極103から上壁102を介して上方に延びている。内導体201の外側の周囲には、内導体201を覆う空間が設けられている。内導体201及び電極103の接合面には、封止部材205が設けられている。封止部材205によって、内導体201及び内導体201の接合によって画成された複数の空間(高周波伝搬部112の空間及び管部CP内の空間)それぞれの気密性が向上する。外導体200、内導体201、外導体200と内導体201の間の空間に設けられた誘電体部202、並びに、内導体201の外側の周囲に設けられ内導体201を覆う空間によって同軸フィルタ204が構成される。なお、封止部材205は、ガス等を導く同軸フィルタ204の場合に必要であるが、ヒータ電源206に電気的に接続されたヒータ配線207等の電気配線を導く同軸フィルタ204の場合には不要である。
【0038】
外導体200及び内導体201は、アルミニウムの合金、銅、ステンレス等の金属を用いて構成される。外導体200及び内導体201は、金メッキ、銀メッキ、ニッケルメッキ等の被膜が施されていてもよい。同軸フィルタ204を含む管部CPは、屈曲自在な管(同軸ケーブル)であってもよい。
【0039】
管部CPは更に、外導体200及び内導体201を電気的に短絡する短絡部材203を含んでいる。一実施形態において、短絡部材203は、例えば、スパイラルリング等の導体又はキャパシタであり得る。短絡部材203は、外導体200及び内導体201の上端付近に設けられ、外導体200及び内導体201は、両者の上端付近で電気的に短絡されている。
【0040】
管部CPの同軸フィルタ204は、外導体200及び内導体201の間に設けられた誘電体部202を更に含んでいる。誘電体部202は、内導体201を覆う空間のうち、上壁102の下面から上壁102の上方に延びる領域に充填されている。誘電体部202は、テトラフロロエチレン、酸化アルミニウム、石英等の絶縁体の材料であり得る。なお、内導体201を覆う空間のうち上壁102の下面から上壁102の上方に延びる領域には、誘電体部202に代えて気体が充填されていてもよい。
【0041】
管部CPは、ガス、温調流体、電気配線の少なくとも一つを含む用力を導入するように構成されている。
図1に示す構成の場合、管部CPは、ガス供給器114から供給されるガス、並びに、ヒータ電源206と外側ヒータ208及び内側ヒータ209とを電気的に接続する電気配線を導入する。また、管部CPは、高周波導入部111に設けられる図示しない同軸導波管に用いられ得る。
【0042】
一つの実施形態において、管部CPは、同軸フィルタ204と共に、変形が困難な管であってもよいが、屈曲自在な管であってもよい。また、管部CPの断面形状は、円であってもよいが、矩形などの他の形であってもよい。また外導体200の内径、及び内導体201の外径を屈曲時に変更してもよい。
【0043】
一つの実施形態において、プラズマ処理装置1は、複数の管部CPを有していてもよい。この場合、複数の管部CP(複数の同軸フィルタ204)は、電極103の上部において、上壁102の中心軸に対して軸対称に上壁102に配置される。複数の同軸フィルタ204を軸対称な位置に配置することにより、同軸フィルタ204の導入によるプラズマの周方向分布の悪化が抑制される。
【0044】
次に、管部CPの形状について説明する。高周波電源109から電極103に供給される高周波の管部CP内における波長をλgとし、上壁102の下面から上壁102の上方に延びる領域の長さをLとする。上壁102の下面から上方に延びる同軸フィルタ204の下端(上壁102の下面)から見た同軸フィルタ204のインピーダンスZcは、
図2に示す式FM1によって表される。
【0045】
式FM1に含まれるZ0は、同軸フィルタ204の特性インピーダンスであり、
図2に示す式FM2によって表され、εrは誘電体部202の比誘電率である。式FM1に含まれるλgは、高周波電源109によって発生される電磁波の同軸フィルタ204内での波長であり、
図2に示す式FM3によって表される。λ0は、真空中の波長である。jは虚数である。すなわち、同軸フィルタ204のインピーダンスZcは、リアクタンスのみとなっている。
【0046】
同軸フィルタ204のインピーダンスZcは、同軸フィルタ204の長さLによってλg/2の周期で周期的に変化する。Zcは、L<λg/4の場合には誘導性リアクタンスとなり、λg/2>L>λg/4の場合には容量性リアクタンスとなる。また、Zcは、L=λg/4の場合には絶縁性となる。
【0047】
このように、Lは、0<L<λg/2の範囲にある。これにより、管部CPの同軸フィルタ204の長さのLを調整することによって、同軸フィルタ204のインピーダンスZcが調整され、更に、高周波電源109に電気的に接続された負荷側のインピーダンスも調整され得る。同軸フィルタ204のインピーダンスZcは、
図2の式FM1に示されているように、リアクタンス成分のみを提供する。したがって、Zcを調整することによって、高周波電源109に電気的に接続された負荷側のインピーダンスのリアクタンス成分を補助する(リアクタンス成分を調整(例えば低減)する)ことができる。より好ましくは、当該負荷側のインピーダンスのリアクタンス成分を消す(ゼロにする)ことが可能となる。この場合、管部CPを含み高周波電源109に電気的に接続された負荷において交流成分が遮断され、高周波によって生じ得る管部CP内における放電や、高周波の整合器110への反射波が整合器110に及ぼす影響、等を回避し得る。プラズマ着火前の整合器110の出力電圧を低くしてプラズマ着火後の反射を抑制し得るものであり、これにより、プラズマ着火時に整合器110に生じ得る電気的負荷を低減するとともに、電力効率を向上させ得る。同軸フィルタ204を含む管部CPを介して高周波電圧が印加される電極103に気体、液体、電流、信号を導入することによって、気体、液体、電流、信号を導入するための構成に設けられる絶縁材やローパスフィルタが不要になる。これにより、プラズマ処理装置1の構成が複雑になることを回避できる。また、過電圧による絶縁部内での放電やローパスフィルタへの影響も抑制し得る。
【0048】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0049】
例えば、プラズマ処理装置1は、複数の電極103を有していてもよい。この場合、内導体201は、複数の電極103のそれぞれに電気的に接続されている。
【0050】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0051】
1…プラズマ処理装置、101…処理容器、102…上壁、103…電極、106…シャワープレート、107…ガス孔、108…絶縁リング、109…高周波電源、110…整合器、111…高周波導入部、112…高周波伝搬部、113…高周波放出部、114…ガス供給器、116…排気口、117…封止部材、119…処理空間、120…基板、121…ステージ、200…外導体、201…内導体、202…誘電体部、203…短絡部材、204…同軸フィルタ、205…封止部材、206…ヒータ電源、207…ヒータ配線、208…外側ヒータ、209…内側ヒータ、CP…管部。