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特開2023-108476レーザー加工システム及び光照射装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108476
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】レーザー加工システム及び光照射装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230728BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20230728BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009622
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一範
(72)【発明者】
【氏名】林 善紀
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CB04
4E168DA32
4E168DA45
4E168DA46
4E168EA15
4E168GA01
4E168GA02
4E168JA01
4E168JA14
4E168JA17
4E168KA16
(57)【要約】
【課題】被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度を高精度化でき、簡易な装置構成により商品化可能なレベルの情報を高速で描画できるレーザー加工システムの提供。
【解決手段】レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置を複数台備え、複数台の前記光照射装置により前記被加工物を加工するレーザー加工システムであって、第1の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有するレーザー加工システムである。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置を複数台備え、複数台の前記光照射装置により被加工物を加工するレーザー加工システムであって、
第1の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、
第2の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、
前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有することを特徴とするレーザー加工システム。
【請求項2】
前記角度差が90°以上270°以下である、請求項1に記載のレーザー加工システム。
【請求項3】
前記被加工物が搬送装置により複数台の前記光照射装置の加工領域に搬送され、
前記第1の光照射装置及び前記第2の光照射装置が搬送方向に隣接して配設される、請求項1から2のいずれかに記載のレーザー加工システム。
【請求項4】
前記第1の光照射装置と前記第2の光照射装置が一対となり、一対の光照射装置が複数台配設される、請求項1から3のいずれかに記載のレーザー加工システム。
【請求項5】
前記第1の光照射装置による加工開始位置から前記第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域において、被加工物は搬送方向以外に姿勢が変化しない、請求項3から4のいずれかに記載のレーザー加工システム。
【請求項6】
前記第1の光照射装置による加工開始位置から前記第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域において、被加工物は搬送面以外が前記搬送装置に接触しない、請求項3から4のいずれかに記載のレーザー加工システム。
【請求項7】
前記第1の光照射装置の光走査手段が第1の偏向器及び第1の結像光学素子を有し、
前記第2の光照射装置の光走査手段が第2の偏向器及び第2の結像光学素子を有し、
下記式(1)の関係を充たす、請求項1から6のいずれかに記載のレーザー加工システム。
L>(WD1+d/2)*tan(θ1/2)+CA1/2+(WD2+d/2)*tan(θ2/2)+CA2/2 ・・・式(1)
ただし、前記式(1)中、Lは第1の光照射装置の光軸中心と第2の光照射装置の光軸中心の距離(mm)、第1の偏向器の偏向角θ1(°)、第2偏向器の偏向角θ2(°)、第1の結像光学素子の作動距離WD1(mm)、第2の結像光学素子の作動距離WD2(mm)、第1の結像光学素子の開口径CA1(mm)、第2の結像光学素子の開口径CA2(mm)、被加工物の最大直径d(mm)である。
【請求項8】
前記第1の光照射装置と前記第2の光照射装置の間に遮光部材を有する、請求項1から7のいずれかに記載のレーザー加工システム。
【請求項9】
前記第1の光照射装置の光出射手段における射出口及び前記第2の光照射装置の光出射手段における射出口は、前記搬送装置に対して同じ側に位置する、請求項3から8のいずれかに記載のレーザー加工システム。
【請求項10】
前記第1の光照射装置の光出射手段における射出口及び前記第2の光照射装置の光出射手段における射出口は、前記搬送装置に対してそれぞれ異なる側に位置する、請求項3から8のいずれかに記載のレーザー加工システム。
【請求項11】
レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置を複数台備え、複数台の前記光照射装置により被加工物を加工するレーザー加工システムであって、
第1の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、
第2の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、
前記第1の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第1の照射領域及び前記第2の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第2の照射領域のうち少なくとも1つの照射領域が前記被加工物の搬送経路を横断することを特徴とするレーザー加工システム。
【請求項12】
前記第1の照射領域及び前記第2の照射領域の少なくとも1つの照射領域が搬送経路を横断後に、レーザー光が少なくとも1つのミラーで反射され前記被加工物へ入射する、請求項11に記載のレーザー加工システム。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載のレーザー加工システムと、
請求項11から12のいずれかに記載のレーザー加工システムと、を組み合わせてなるレーザー加工システム。
【請求項14】
レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置であって、
前記光照射装置が複数の光照射口を有し、
第1の光照射口から前記被加工物へ入射する第1のレーザー光によって加工される第1の領域と、
第2の光照射口から前記被加工物へ入射する第2のレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、
前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有することを特徴とする光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工システム及び光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、海洋プラスチックごみの問題等が取り沙汰され、世界的にプラスチックごみによる環境汚染をなくしていく動きが活発化している。このようなプラスチックごみの一例としてペットボトルは飲料の流通、販売において保存性などの様々な利点から、広く利用されており、大量の飲料用ペットボトルが生産、販売、使用されている。
【0003】
飲料用ペットボトルは、その管理及び販売促進のためにラベルが添付されるのがほとんどである。ラベルには、商品名、成分表示、賞味期限、バーコード、QRコード(登録商標)、リサイクルマーク、ロゴマークなどの消費者にとって必要不可欠な情報が多く印刷されている。加えて、飲料の製造元各社が消費者に訴求するために考案するデザイン画又はイラストの印刷も行われ、商品の個性発揮、競争力アップに寄与している。このように、現在では、飲料用ペットボトルには、上記のような印刷を施されたラベルを付加することが一般的となっている。
【0004】
このようなラベル付き飲料用ペットボトルは、消費者が収容物を消費した後、回収され、環境を保護するために、再資源化を目的にリサイクルされている。このことは特に、飲料用ペットボトルにおいて「ボトルtoボトル」と呼ばれることもある、循環型リサイクルの促進が求められている。飲料用ペットボトルの循環型リサイクルとは、使用済みペットボトルを分別回収して、リサイクル業者で飲料用ペットボトルの原料となるフレークに変え、再度ペットボトルの生成に活用するというもので、この循環型リサイクルを円滑に回していくためには、分別回収が徹底される必要がある。
【0005】
この際、ペットボトルとラベルとキャップとは材質が異なるために、リサイクルの過程できちんと分離される必要がある。そのため、消費者は1本1本のペットボトルからキャップとラベルを分離しなければならない。キャップは飲料を消費する際に、自然と外すことになるため手間にならないが、ラベルは手作業で剥がして分別しなければならず、リサイクルにおける煩わしさを生じている。つまり、この人手による作業が、大量に消費される飲料用ペットボトルのリサイクルを困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、今までの既存技術では、炭酸ガスレーザーで簡単な記号や数字を記録するに留まっており、ラベルの内容を被加工物であるペットボトルに直接加工することはできていない。
そこで、被加工物であるペットボトルを回転させてラベルの内容をペットボトルに直接加工する方法が試みられているが、ペットボトルを回転させるためには、搬送されているボトルを把持し、回転させながら搬送する機構が必要であり、ペットボトルの把持と搬送の機構との制御が複雑となる。また、複数の加工部間の相対位置精度の確保のためには高精度な回転位置精度が必要である。その結果、製造装置のコストが増大する。また、ペットボトルを回転させた後、加工を行うのでペットボトルが所望の回転をするまでの間待機させる必要があり、生産性が低下するという課題がある。
【0007】
関連する先行技術文献として、例えば、厚みのある被加工物を加工する目的で、光束を分岐して分岐した光束を同じ位置に照射する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この提案では、被加工物上の任意の複数位置に相対位置精度を高精度化することができず、高生産性の確保という問題は解決できない。
【0008】
本発明は、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度を高精度化でき、簡易な装置構成により商品化可能なレベルの情報を高速で描画できるレーザー加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段としての本発明のレーザー加工システムは、レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置を複数台備え、複数台の前記光照射装置により前記被加工物を加工するレーザー加工システムであって、第1の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度を高精度化でき、簡易な装置構成により商品化可能なレベルの情報を高速で描画できるレーザー加工システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、被加工物としてのペットボトルの表面に所望の加工形状を設ける第1の実施形態のレーザー加工システムの一例を示す平面図である。
図1B図1Bは、図1Aの側面図である。
図2A図2Aは、被加工物としてのペットボトル上の異なる位置にレーザー加工を行う第2の実施形態のレーザー加工システムの一例を示す平面図である。
図2B図2Bは、図2Aの被加工物における2つの加工部を示す部分拡大図である。
図3図3は、第1の光照射装置及び第2の光照射装置における被加工物としてのペットボトル上の加工領域を示す図である。
図4A図4Aは、被加工物としてのペットボトル上の加工部の位置関係を示した図である。
図4B図4Bは、第1の光照射装置と第2の光照射装置と加工部との位置関係を示した図である。
図5図5は、搬送方向に隣接した第1の光照射装置と第2の光照射装置の位置関係を説明する図である。
図6図6は、搬送装置を挟んで第1の光照射装置と第2の光照射装置を搬送方向に隣接して配設し、第1の光照射装置と第2の光照射装置の間に遮光部材を設けたレーザー加工システムを示す図である。
図7A図7Aは、搬送方向に隣接する第1及び第2の光照射装置のレーザー射出口が搬送装置の同じ側に配設した状態を説明する図である。
図7B図7Bは、搬送方向に隣接する第1及び第2の光照射装置のレーザー射出口が搬送装置の同じ側に配設した状態を説明する別の図である。
図8図8は、隣接する2台の光照射装置が複数配設された構成のレーザー加工システムを示す図である。
図9図9は、光照射装置における光走査手段の一例を示す概略図である。
図10図10は、収容容器の外観の一例を示す図である。
図11図11は、収容容器の外観の他の一例を示す図である。
図12図12は、収容容器の外観の他の一例を示す図である。
図13図13は、表面改質をレーザー照射によって行った場合の一例を示す図である。
図14A図14Aは、表面性状の変化により形成された微細構造を集合させることで形成された印字面の拡大図である。
図14B図14Bは、表面性状の変化により形成された微細構造を集合させることで形成された印字面が複数の微細構造によって形成されている図である。
図14C図14Cは、表面性状の変化により形成された微細構造を集合させることで形成された印字面における微細構造が円形に近い形状を取る図である。
図14D図14Dは、表面性状の変化により形成された微細構造を集合させることで形成された印字面における微細構造が同一のライン加工である場合を示す図である。
図15A図15Aは、収容容器における出力画素の画素値を調整する一例を示す図である。
図15B図15Bは、収容容器における出力画素の画素値を調整する他の一例を示す図である。
図15C図15Cは、収容容器における出力画素の画素値を調整する他の一例を示す図である。
図16A図16Aは、第7の実施形態に係る一体記録を有する収容容器の一例を示す図である。
図16B図16Bは、図16Aの描画部分の拡大図である。
図17図17は、一体記録を有する収容容器の口部付近の曲面に画像記録を実施した一例を示す図である。
図18図18は、一体記録を有する収容容器の口部付近の曲面に画像記録を実施した他の一例を示す図である。
図19図19は、一体記録を有する収容容器の口部付近の曲面に画像記録を実施した他の一例を示す図である。
図20図20は、加工深度のバリエーションを表す模式図である。
図21図21は、マルチビーム時の加工のビーム同士の重なりのイメージを表す図である。
図22図22は、第8の実施形態に係る収容容器の製造装置の一例を示す概略図である。
図23図23は、第8の実施形態に係る収容容器の製造装置の他の一例を示す概略図である。
図24図24は、第8の実施形態に係る収容容器の製造装置の他の一例を示す概略図である。
図25図25は、容器本体の傾斜部に描画できるように容器本体に対して傾斜を持たせてマーキング部を配置した収容容器の製造装置の一例を示す概略図である。
図26図26は、容器本体を横置きに配置した場合の収容容器の製造装置の一例を示す概略図である。
図27図27は、収容容器の製造装置の一例を示す機能ブロック図である。
図28A図28Aは、収容容器の製造装置におけるレーザー駆動部の走査部(ラスター)の構成の一例を示す概略図である。
図28B図28Bは、図28Aの収容容器の製造装置を用いた処理を示すフローチャートである。
図29A図29Aは、収容容器の製造装置におけるレーザー駆動部の光学系をアレイ化した場合の構成の一例を示す概略図である。
図29B図29Bは、図29Aの収容容器の製造装置を用いた処理を示すフローチャートである。
図30図30は、収容容器で実現する繊細なデザインの一例を示す図である。
図31図31は、PETボトルに繊細なデザインを適用した図である。
図32図32は、プラスチックカップに繊細なデザインを適用した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(レーザー加工システム)
本発明のレーザー加工システムは、第1の形態では、レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置を複数台備え、複数台の前記光照射装置により前記被加工物を加工するレーザー加工システムであって、第1の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有する。
【0013】
本発明においては、例えば、被加工物としてのペットボトルの表と裏の加工領域を加工するために、少なくとも2台の光照射装置を用いる。ペットボトルの表と裏を加工するレーザー光はペットボトル表面に対して対向する側から入射することによって別の加工領域を加工する。2台の光照射装置はペットボトルの搬送方向に沿って隣接して並んでおり、例えば、搬送先行側の表の加工が終わった直後に別のレーザー光により裏の加工を行う。両者の開始時間差は小さいのでペットボトルが姿勢変化しにくく、表を加工したペットボトルの姿勢とほぼ同じ姿勢で裏を加工できる。その結果、簡易な構成によりペットボトルの表と裏の加工領域の相対位置精度の高精度化を図ることができる。
【0014】
したがって、第1の形態に係るレーザー加工システムによると、光照射装置が複数台配設され、第1の光照射装置により被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射装置により被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は被加工物上で異なる領域を形成し、第1の領域の加工面の法線方向と第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有するので、被加工物上の複数の照射領域において、加工面の法線方向に角度差を有する照射領域に対して別の光照射装置を用いて加工を行うことによって、搬送装置の複雑化及び搬送装置の費用の抑制を実現でき、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の第1の形態における一態様において、角度差が90°以上270°以下であることが好ましい。この態様によると、第1の領域の加工面の法線方向と第2の領域の加工面の法線方向とが角度差が90°以上270°以下であることにより、被加工物上の複数の照射領域において、加工面の法線方向に角度差を有する照射領域に対して別の光照射装置を用いて加工を行うことによって、搬送装置の複雑化及び搬送装置の費用の抑制を実現でき、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度の向上を図ることができる。
【0016】
本発明の第1の形態における一態様において、被加工物が搬送装置により複数台の光照射装置の加工領域に搬送され、第1の光照射装置及び第2の光照射装置が搬送方向に隣接して配設される。この態様によると、複数の光照射装置を被加工物の搬送方向に隣接して配設することにより、加工開始時間差を短くでき、搬送方向以外の被加工物の姿勢変動要因を抑制し、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度の向上を図ることができる。
【0017】
本発明の第1の形態における一態様において、第1の光照射装置と第2の光照射装置が一対となり、一対の光照射装置が複数台配設される。この態様によると、第1の光照射装置と第2の光照射装置が一対となり、一対の光照射装置が複数台配設されるので、例えば、同一被加工物を加工する光照射装置を隣接させることにより、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度を向上でき、更に隣接した一対の光走査手段を複数配設することで高生産性に対応できる。
【0018】
本発明の第1の形態における一態様において、第1の光照射装置による加工開始位置から第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域において、被加工物は搬送方向以外に姿勢が変化しないことが好ましい。この態様によると、第1の光照射装置による加工開始位置から第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域では搬送方向以外に被加工物の姿勢を変化させないことにより、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度を向上させることができる。
【0019】
本発明の第1の形態における一態様において、第1の光照射装置による加工開始位置から第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域において、被加工物は搬送面以外が搬送装置に接触しないことが好ましい。この態様によると、第1の光照射装置による加工開始位置から第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域ではガイド部材等の部品と被加工物が接触しないことで搬送方向以外に被加工物の姿勢を変化させず、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度を向上させることができる。
【0020】
本発明の第1の形態における一態様において、第1の光照射装置が第1の偏向器及び第1の結像光学素子を有し、第2の光照射装置が第2の偏向器及び第2の結像光学素子を有し、下記式(1)の関係を充たすことが好ましい。
L>(WD1+d/2)*tan(θ1/2)+CA1/2+(WD2+d/2)*tan(θ2/2)+CA2/2 ・・・式(1)
ただし、前記式(1)中、Lは第1の光照射装置の光軸中心と第2の光照射装置の光軸中心の距離(mm)、第1の偏向器の偏向角θ1(°)、第2偏向器の偏向角θ2(°)、第1の結像光学素子の作動距離WD1(mm)、第2の結像光学素子の作動距離WD2(mm)、第1の結像光学素子の開口径CA1(mm)、第2の結像光学素子の開口径CA2(mm)、被加工物の最大直径d(mm)である。
第1の光照射装置と第2の光照射装置が、上記式(1)の関係を充たすことにより、隣接する第1の光照射装置の光路が第2の光照射装置に入らないようすることができ、レーザー光照射による光照射装置の損傷を防ぐことができる。
【0021】
本発明の第1の形態における一態様において、第1の光照射装置と第2の光照射装置の間に遮光部材を有することが好ましい。この態様によると、反射した一方の光照射装置のレーザー光が他方の光照射装置に入らないようにすることができ、レーザー光照射による光照射装置の損傷を防ぐことができる。
遮光部材としては、レーザー光を遮光できれば特に制限はなく、例えば、表面処理を施した金属板、遮光機能を有する樹脂板などを用いることができる。
【0022】
本発明の第1の形態における一態様において、第1の光照射装置の光出射手段における射出口及び第2の光照射装置の光出射手段における射出口は、搬送装置に対して同じ側に位置することが好ましい。この態様によると、複数台の光照射装置を搬送装置の片側に配置することにより光照射装置の面積を小さくすることができる。
【0023】
本発明の第1の形態における一態様において、第1の光照射装置の光出射手段における射出口及び第2の光照射装置の光出射手段における射出口は、搬送装置に対してそれぞれ異なる側に位置することが好ましい。この態様によると、光走査手段としての結像光学素子(例えば、fθレンズ等)又はその他の光学部材の仕様によっては、光出射手段を両側に配置した方が光照射装置の面積を小さくすることができる。
【0024】
本発明のレーザー加工システムは、第2の形態では、レーザー光を出射する光出射手段と、光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置を複数台備え、複数台の光照射装置により被加工物を加工するレーザー加工システムであって、第1の光照射装置により被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射装置により被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は被加工物上で異なる領域を形成し、第1の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第1の照射領域及び第2の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第2の照射領域のうち少なくとも1つの照射領域が被加工物の搬送経路を横断する。
第2の形態に係るレーザー加工システムによると、光照射装置が複数台配設され、第1の光照射装置により被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射装置により被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は被加工物上で異なる領域を形成し、第1の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第1の照射領域及び第2の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第2の照射領域のうち少なくとも1つの照射領域が被加工物の搬送経路を横断するので、第1の照射領域及び第2の照射領域の少なくとも1つの照射領域が被加工物の搬送経路を跨ぐ構成となり、複数台の光照射装置の面積を小さくすることができる。
搬送平面とは、加工領域内の搬送経路を被加工物が搬送される際に被加工物の最下面が通過する面を意味する。被加工物がコンベア上に積載され搬送される場合は、コンベア上の被加工物の接地面でもある。
【0025】
本発明の第2の形態における一態様において、第1の照射領域及び第2の照射領域の少なくとも1つの照射領域が搬送経路を横断後に、レーザー光が少なくとも1つのミラーで反射され前記被加工物へ入射することが好ましい。この態様によると、第1の照射領域及び第2の照射領域のうちの少なくとも1つの照射領域が搬送経路を横断後に、レーザー光が少なくても1つのミラーで反射され被加工物へ入射することにより、被加工物の対向側の被加工物上の任意の複数の位置に対してレーザー光を折り返して照射する構成とすることで、複数台の光照射装置の面積を小さくすることができる。
【0026】
本発明のレーザー加工システムは、第3の形態では、本発明の第1の態様に係るレーザー加工システムと、本発明の第2の態様に係るレーザー加工システムと、を組み合わせてなる。
第3の形態に係るレーザー加工システムによると、本発明の第1の態様に係るレーザー加工システムと、本発明の第2の態様に係るレーザー加工システムと、を組み合わせることにより、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度の向上を図ることができ、光照射装置の面積を小さくでき、隣接する第1の光照射装置の光路が第2の光照射装置に入らないようすることができ、レーザー光照射による光照射装置の損傷を防ぐことができる。
【0027】
<光照射装置>
光照射装置は、被加工物に対してレーザー光を照射してレーザー加工を行う装置であり、レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する。
光出射手段はレーザー光を射出するパルスレーザーであることが好ましい。光出射手段は、レーザー光が照射された被加工物の表面又は内部の少なくとも一方の性状を変化させるために好適な出力(光強度)のレーザー光を射出する。
光出射手段は、レーザー光の射出のオン又はオフの制御、射出周波数の制御、及び光強度制御等が可能になっている。
光出射手段の一例として、波長が355nm~1064nmで、レーザー光のパルス幅が1ピコ秒~10ナノ秒、平均出力10W~50Wのレーザー光源を用いることができる。
被加工物を変化させる領域でのレーザー光のスポット径は、1μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましい。
【0028】
光走査手段としては、例えば、偏向器、結像光学素子などが挙げられる。
偏向器としては、例えば、ガルバノスキャナなどが挙げられる。
結像光学素子としては、例えば、fθレンズなどが挙げられる。
【0029】
ここで、図9は、光走査手段の一例を示す概略図である。この図9の光走査手段45は、偏向器及び結像光学素子を有している。
偏向器としてのガルバノスキャナは2軸構成になっており、X軸用ガルバノスキャナとY軸用ガルバノスキャナから構成される。
X軸用ガルバノスキャナはX軸用ガルバノメータとその先端に回転可能に取り付けられた偏向ミラー31から構成されている。また、Y軸用ガルバノスキャナはY軸用ガルバノメータとその先端に回転可能に取り付けられた偏向ミラー32から構成されている。2枚の偏向ミラーは回転方向が直交しており、偏向ミラーが回転することで、レーザー光を任意の位置に走査させることができる。
【0030】
結像光学素子としてはfθレンズを用いることができる。図9に示すようにfθレンズ33は、偏向器により走査されて入射するレーザー光をその入射角に比例して、レンズ光軸中心から変位した位置に集光する。
【0031】
-被加工物-
被加工物としては、レーザー加工可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲料用ペットボトル等の収容容器、収容体、成分表示、消費期限、メーカーロゴ、商品名等が表示されている樹脂材、樹脂材でできた液体又は固体等を収容する収容容器、パッケージなどが挙げられる。
【0032】
--収容容器--
収容容器は、容器本体を有する。
容器本体としては、その材質、形状、大きさ、構造、色などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
容器本体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、ガラス、金属などが挙げられる。これらの中でも、透明な樹脂又は透明なガラスがより好ましく、透明な樹脂が特に好ましい。
また、近年リサイクルで注目されている生分解性樹脂を用いることができる。100%生分解性樹脂を用いることが望ましいが、生分解性樹脂が30%程度であっても、環境へのやさしさは大幅に改善される。
容器本体の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレン(PE)、ポリプロビレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、エポキシ、バイオポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸ブレンド(PBAT)、スターチブレンドポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシプチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、バイオPET30、バイオポリアミド(PA)610、410、510、バイオPA1012、10T、バイオPA11T、MXD10、バイオポリカーポネート、バイオポリウレタン、バイオPE、バイオPET100、バイオPA11、バイオPA1010などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境負荷の点から、ポリビニルアルコール、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート等の生分解性樹脂が好ましい。
【0033】
容器本体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボトル状、円柱状、四角柱状、箱状、錐体状などが挙げられる。これらの中でも、ボトル状が好ましい。
ボトル状の容器本体は、口部と、口部に連結された肩部と、肩部に連結された胴部と、胴部に連結された底部とを備えている。
容器本体の大きさとしては、特に制限はなく、容器の用途に応じて適宜選定することができる。
容器本体の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
容器本体の色としては、例えば、無色透明、有色透明、有色不透明などが挙げられる。
【0034】
-収容体-
収容体は、収容容器と、この収容容器に収容されている収容物と、収容物を収容容器内に密閉する密閉手段とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0035】
--収容物--
収容物としては、例えば、液体、気体、粒状固形物などが挙げられる。
液体としては、水、お茶、コーヒー、紅茶、清涼飲料水などが挙げられる。収容物が液体飲料である場合には、透明、白色、黒色、茶色、又は黄色等の色を有していることが多い。
気体としては、例えば、酸素、水素、窒素などが挙げられる。
粒状固形物としては、例えば、果肉、野菜、ナタデココ、タピオカ、ゼリー、コンニャクなどの細片又は粒子などが挙げられる。
【0036】
--密閉手段--
密閉手段は、収容物を収容容器内に密閉する手段であり、「容器のキャップ」と称することもある
密閉手段は、その材質、形状、大きさ、構造、色などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
密閉手段の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、ガラス、金属、セラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、成形性の点から樹脂が好ましい。
密閉手段の樹脂としては、上記容器の本体の樹脂を同様なものを用いることができる。
密閉手段の色としては、例えば、有色不透明、有色透明などが挙げられる。
密閉手段の形状及び大きさとしては、容器本体の開口部を封じる(閉封する)ことができる形状及び大きさであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
密閉手段の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、開封した時に容器本体から離れる第1の部分と、容器本体に残る第2の部分とを有することが好ましい。
第1の部分の側面には、開封時に手が滑らないように、表面に凹凸形状が形成されていることが好ましい。第2の部分の側面には、凹凸形状は形成されておらず、表面は平坦であることが好ましい。
【0039】
<搬送工程及び搬送装置>
搬送工程は、被加工物を加工領域に搬送する工程であり、搬送装置により実施される。
搬送装置としては、例えば、ベルトコンベアなどが挙げられる。
【0040】
<その他の工程及びその他の手段>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、制御工程などが挙げられる。
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、制御手段などが挙げられる。
【0041】
(光照射装置)
本発明の光照射装置は、レーザー光を出射する光出射手段と、前記光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有する光照射装置であって、前記光照射装置が複数の光照射口を有し、第1の光照射口から前記被加工物へ入射する第1のレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射口から前記被加工物へ入射する第2のレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有する。
【0042】
本発明の光照射装置によると、1台の光照射装置が複数の光照射口を有し、第1の光照射口から前記被加工物へ入射する第1のレーザー光によって加工される第1の領域と、第2の光照射口から前記被加工物へ入射する第2のレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有することにより、搬送装置の複雑化及び搬送装置の費用の抑制を実現でき、被加工物上の任意の複数の位置における相対位置精度の向上を図ることができる。
【0043】
ここで、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状などは本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状などにすることができる。
【0044】
図1Aは、被加工物としてのペットボトルの表面に所望の加工形状を設ける従来のレーザー加工システムの一例を示す平面図、図1B図1Aの側面図である。
この図1A及び図1Bのレーザー加工システム20は、被加工物21と、搬送装置22と、光照射装置23とを有する。
光照射装置23は、レーザー光を出射する光出射手段と、光出射手段により出射されたレーザー光を走査する光走査手段とを有している。
【0045】
図1A及び図1Bに示すように、所定の間隔を隔てて並んだ被加工物21としてのペットボトルは、ボトル搬送方向Aに搬送装置22によって一定の速度で加工領域24に搬送される。ペットボトルは長手方向を重力方向として搬送装置22上に並んでいる。加工領域24は、光照射装置23の光走査手段としての結像光学素子(例えば、fθレンズ)と、偏向器であるガルバノスキャナとの設定によって決定されている。被加工面であるペットボトルの表面はfθレンズの焦点位置に略一致させている。
加工領域24に進入した被加工物21としてのペットボトルは、所定の位置に加工を行うため、搬送装置22上のペットボトル位置を検出系によって検出する。その位置から所定の遅延時間を設けて、レーザー光照射を行い、加工を行う。加工領域24内で加工が完了し、加工形状25が形成されたペットボトルは一定の搬送速度のまま次工程に搬送装置22によって搬送される。
【0046】
<第1の実施形態>
図2Aは、被加工物としてのペットボトル上の異なる位置にレーザー加工を行う第1の実施形態のレーザー加工システムの一例を示す平面図、図2Bは、図2Aの被加工物における2つの加工部を示す部分拡大図である。
【0047】
この図2Aのレーザー加工システム30は、被加工物としてのペットボトル21上の異なる位置へ加工を行うため、搬送装置22を挟んで2台の光照射装置(第1の光照射装置23a、第2の光照射装置23b)が配設されている。
第1の光照射装置23aは、レーザー3を出射する光出射手段と、ガルバノスキャナ、fθレンズ等の光走査手段とを有し、加工領域5としている。
第2の光照射装置23bは、レーザー3を出射する光出射手段と、ガルバノスキャナ、fθレンズ等の光走査手段とを有し、加工領域6としている。
2台の第1、第2の光照射装置23a,23bは、搬送装置22を挟んで配設されており、それぞれの加工領域5,6における光軸の向きは2つの第1、第2の光照射装置23a,23bから搬送装置22へ向かって対向する向きとなっている。
【0048】
加工領域5,6はfθレンズの焦点面と略一致しており、その焦点面は被加工物としてのペットボトル21の搬送方向Aと略平行としている。搬送装置22によって搬送されてきたペットボトル21は検知系(不図示)によって位置を検出され、所定の遅延時間を設けた後、第1の光照射装置23aにより加工領域5内で加工が行われる。加工完了後ペットボトル21は搬送装置22により搬送され、光照射装置23bの加工領域6にて加工が行われる。
ペットボトル21が搬送装置22により加工領域5から加工領域6に搬送される間は、ペットボトル21の姿勢はペットボトルの搬送方向A以外に変化せず、第1の光照射装置23aでの加工の姿勢のまま第2の光照射装置23bにて加工が行われる。そのため、図2Bに示すように、第1の光照射装置23aで加工される加工部7と第2の光照射装置23bで加工される加工部8はペットボトル21上で異なる場所に位置する。
第1の光照射装置23aと第2の光照射装置23bはペットボトルの搬送方向Aに隣接していて、加工領域5と加工領域6はペットボトルの搬送方向Aに近接した設定としている。加工領域5での加工と加工領域6での加工は時間的にずれているため、その間にペットボトル21の姿勢が変化すると加工部の相対的な位置が狙いからずれてしまう。そのため、加工領域5と加工領域6の間の搬送方向の距離をできる限り短くし加工の時間差をなるべく小さくすることにより、加工領域5でのペットボトル21の姿勢のまま加工領域6に搬送し、加工部7と加工部8の相対位置の変動を抑えることができる。
【0049】
<第2の実施形態>
図3は、第1の光照射装置及び第2の光照射装置における被加工物としてのペットボトル上の加工領域を示す図である。
図2Aのように第1、第2の光照射装置23a,23bを、搬送装置22を挟んだ位置にそれぞれ配設し光軸を対向させることにより、ペットボトル21の周囲略全域に対して加工領域を設定することが可能となる。
図3に示すように、第1の光照射装置23aの加工領域5でペットボトルの周囲半分の180°分、第2の光照射装置23bの加工領域6で残りの180°分としている。このことは、第1の光照射装置23aの照射範囲に対して照射が届かない領域を別の第2の光照射装置23bの照射範囲としている。
【0050】
図4Aは、被加工物としてのペットボトル上の加工部の位置関係を示した図である。
図4Bは、第1の光照射装置と第2の光照射装置と加工部との位置関係を示した図である。
図4Aでは、図3の加工領域5で加工したペットボトル21表面の加工部7における法線を法線10、加工領域6で加工した加工部8における法線を法線9としている。加工部における法線とは加工部全域での法線の平均値である。
図4Aでは法線の角度差は180°である。図4Bのように加工部8とするとその法線は法線9、それに対向する側の加工部7の法線10は、加工部7の設定次第で法線9に対して90°~270°の領域を取りうることができる。残りの法線角度差270°~360°又は0~90°は加工領域6に入り、第2の光照射装置23bにて加工することが可能である。このように被加工物としてのペットボトル21上に複数ある加工部の内のある一つの加工部に対して、法線角度差が90°~270°の範囲にある加工部を加工する第1の光照射装置23aと、270°~360°又は0~90°の範囲にある加工部を加工する第2の光照射装置23bとし、ペットボトル21への入射光軸を対向させることでペットボトル中心面を定義した際の両側に加工面を設けることが可能となる。つまり、図3に示す構成をとることによりペットボトルの回転機構やその位相合わせ制御などが不要となり簡素な構成で両側に加工することが可能となる。
【0051】
<第3の実施形態>
図5は、搬送方向に隣接した第1の光照射装置と第2の光照射装置の位置関係を説明する図である。
図5のように第1、第2の光照射装置23a,23bは搬送装置22を挟んで配設され、搬送方向に隣接している。それぞれの光軸は対向しているため、隣接する第1の光照射装置と第2の光照射装置間の搬送方向の距離が小さいと走査画角内にて一方の光軸が他方の装置に入ってしまい、レーザー光の照射により光照射装置の損傷が起きてしまう。光照射装置の損傷が発生すると損傷個所によっては被加工物21としてのペットボトルの搬送を止めることになり、製造工程の稼働率を下げて生産性を著しく損なってしまう恐れがある。そのため、図5のように搬送装置22を挟んで第1の光照射装置23aと第2の光照射装置23bを配設する場合は、その走査光路内に他方の光照射装置に入る光路を避ける必要がある。
したがって、第1の光照射装置及び第2の光照射装置が下記式(1a)の関係を充たすことにより、一方の第1の光照射装置23aの光軸が他方の第2の光照射装置23bの光軸に入らないようにすることができ、レーザー光照射による光照射装置の損傷を防ぐことができる。
【0052】
【数1】
Lは、第1の光照射装置の光軸中心と第2の光照射装置の光軸中心の距離(mm)、L1は、第1の光照射装置の光軸中心から最大走査角における被加工物としてのペットボトルの中心位置までの搬送方向の距離(mm)、L2は、第2の光照射装置の光軸中心から最大走査角における被加工物としてのペットボトルの中心位置までの搬送方向の距離(mm)を表す。
【0053】
ここで、L1、L2は以下の通りである。
【0054】
【数2】
ただし、第1の偏向器としてのガルバノスキャナの偏向角θ1(°)、第1の結像光学素子としてのfθレンズの作動距離WD1(mm)、第1の結像光学素子としてのfθレンズの開口径CA1(mm)、被加工物としてのペットボトルの最大直径d(mm)である。
【0055】
【数3】
ただし、第2偏向器としてのガルバノスキャナの偏向角θ2(°)、第2の結像光学素子としてのfθレンズの作動距離WD2(mm)、第2の結像光学素子としてのfθレンズの開口径CA2(mm)、被加工物としてのペットボトルの最大直径d(mm)である。
【0056】
<第4の実施形態>
図6は、搬送装置を挟んで第1の光照射装置と第2の光照射装置を搬送方向に隣接して配設し、第1の光照射装置と第2の光照射装置の間に遮光部材を設けたレーザー加工システムを示す図である。
図5のように、一方の第1の光照射装置23aによる光路が他方の第2の光照射装置23bに入らない条件で配設したとしても、ガルバノスキャナの異常動作やペットボトルの誤検知によりペットボトルが無い場所でレーザーが点灯し、レーザー光がペットボトルに入らずそのまま抜けて意図しない場所で反射して他方の光照射装置に入る場合などが容易に想定される。そのため、図6に示すように第1の光照射装置23aと第2の光照射装置23bとの間に遮光部材43を設け、意図しない光路を遮光して、一方の第1の光照射装置23aのレーザー光が他方の第2の光照射装置23bに入らないようにする必要がある。
遮光部材43としては、黒アルマイト処理を表面に施したアルミ材を用いた。
【0057】
<第5の実施形態>
図7Aは、搬送方向に隣接する光走査手段のレーザー射出口が搬送装置の同じ側に配設した状態を説明する図である。
ペットボトルの製造工程又はペットボトル飲料の製造工程では、ペットボトルが搬送装置22の一つであるコンベアに乗って搬送され、搬送される経路にて様々な工程を経て出荷される。その搬送路は、様々な工程に対応すべく長距離になるため、各工程での装置面積を小さくすることが製造工程全体の床面積を小さくすることに繋がる。
図7Aでは、第1の光照射装置23aと第2の光照射装置23bのレーザーを出射する光出射手段41が搬送装置22の片側に配設している。第1の光照射装置23aの走査光はfθレンズを出た後、そのままペットボトルへ向かって加工を行う。第2の光照射装置23bの走査光はfθレンズを出た後、搬送装置22を横断し、折り返しミラー44にて反対方向に折り返されペットボトルへ向かって加工を行う。図7Aでは第2の光照射装置23bの走査光が搬送装置22を横断するため、図7Bに示すようにfθレンズ33を出る光軸中心を、ペットボトルを含んだ搬送装置22よりも高い、もしくは低い位置とし、搬送装置22の上下空間を通り抜け、折り返しミラー44によって反射させて所定の高さに合わせるような光路としている。このような構成を取ることで、異なる光照射装置により同一のペットボトルの異なる位置に加工を行うことが可能で、かつ光照射装置によるレーザー加工工程に必要な領域を搬送装置の片側にまとめ、搬送経路の自由度を確保している。
【0058】
<第6の実施形態>
図8は、隣接する2つの光照射装置が複数配設された構成のレーザー加工システムを示す図である。
図8のレーザー加工システム30では、第1及び第2の光照射装置23a,23bは搬送方向に隣接して配設され、同一のボトルで別の領域の加工を行う。それとは別に第3、第4の光照射装置23c,23dが搬送方向後方に配設されており、第1及び第2の光照射装置23a,23bにて加工されるペットボトルとは別のペットボトルの加工を行う。
第3及び第4の光照射装置23c,23dの動作は、第1及び第2の光照射装置23a,23bの動作と同一で加工対象のペットボトルだけが異なる。これは生産性に対応する構成であり、高生産性が求められ、それが第1及び第2の光照射装置23a,23bだけでは対応できない場合、第3及び第4の光照射装置23c,23dを一対として追加して生産性対応を図るものである。第3及び第4の光照射装置23c,23dで使うペットボトル位置検知の検知系(不図示)は第1及び第2の光照射装置23a,23bで使う信号でもよいが、第2の光照射装置23bの搬送後方に別途追加して、その検知信号を利用してもよい。
【0059】
本発明のレーザー加工システムは、以上説明した構成を備えることにより、搬送ライン上にペットボトル回転機構を設けずに複数の加工部をペットボトルの周囲に加工することが可能となる。位置決め及び回転機構が不要となることにより装置コストの低減を図ることができる。また回転の位相制御なども不要になり簡素な制御構成を実現できる。また加工開始時間差をなるべく短くする構成とし、加工開始時間差の間で搬送中のボトル姿勢変動を抑え、加工部間の相対位置精度を向上させることが可能となる。更にペットボトル上の異なる加工部を別の光照射装置で加工することにより加工時間の短縮が図れ、生産性向上に寄与することができる。
【0060】
図10は、本発明に用いられる収容容器の外観の一例である。印字部分は容器の表面性状を変化させることにより、画像を形成している。図10は収容物もしくは背景が黒で、印字面が白い場合を示したが、例えば、図11に示すように、収容物が白い場合などには、印字面の透過率を非印字面より小さくするなどにより、印字面側を非印字面より暗くしてもよい。また図12に示すように、非印字面に微細構造の集合体を形成してもよい。
【0061】
容器本体の表面に個々の微細構造を形成するための表面性状の変化とは、形状の変化と、物性の変化とがあり、表面改質を行う手段によって、少なくともどちらか一方の変化を伴って表面改質が行われる。
図13は、例えば、表面改質をレーザー照射によって行った場合の例を示したものである。図13はあくまでも一例であり、表面性状の変化の種類や変化させる手段を制限するものではなく、光学特性を伴うのであれば、例えば、樹脂材料における黄変や、切削加工による形状変化、酸化反応などを用いてもよい。
【0062】
図14A図14Dは、本発明における表面性状の変化により形成された微細構造を集合させることで形成された印字面を示す。図14Aは印字面の拡大図である。図14Bに示すように、本発明に用いられる収容容器では、任意の領域の印字面は複数の微細構造によって形成される。図14Bでは印字の線幅に対して2つの微細構造が並ぶように構成しているが、個数を印字幅に対する構造の数を制限するものではない。また、微細構造の形成手段によっては図14Cに示すように、微細構造が円形に近い形状を取ることも想像される。微細構造の形状についても、特に制限するものではなく、また、図14Cに示すように印字する内容や、位置によって集合の仕方を変更してもよい。ここで、微細構造を集合させるとは、任意の範囲で異なる時間で並ぶ状態を言い、図14Dに示すように、同一のライン加工で合っても、折り返して集合される場合も、本発明における微細構造の集合体となる。
【0063】
本発明で用いられる収容容器は、印字する容器本体の表面の任意の領域を出力画素として割り当てることができる。図15Aに示すように、出力画素の領域内での微細構造の密度を調整することにより、出力画素の画素値を調整することができる。
図15Aの出力画素上の微細構造の位置はあくまでも一例であり、配置は任意に設定することができる。図15Aのように画素値を振り分ける場合、出力画素に必要な解像度と微細構造のサイズを鑑みて表現可能な諧調値が決まり、図15Aの諧調はあくまで一例である。出力画素に諧調値を持たせることは、図15Bに示すように、容器本体の表面からの深度方向へ、表面性状を改質する範囲を調整することで達成してもよい。図15Bはあくまでも一例であり、調整後の改質領域の分布を制限するものではない。
また、同様に出力画素に諧調値を持たせることは、図15Cに示すように、単一の微細構造の光学特性を変更することで達成してもよい。
【0064】
本実施形態では、簡単のため、ペットボトルを例に説明しているが、他の樹脂材料、ガラス等の透明収容容器でもよい。
また、微細加工の形成手段もレーザーに限らない。例えば、切削加工等の他の加工手段を制限しない。
【0065】
本発明においては、中身の色によっては中身が入った状態の方がより視認性を高い。
視認領域が白色に見える場合には、容器に入れる収容物の色が黒の場合が、一番コントラストが高くなるが、その他、茶色や無色などでもよい。
また、視認領域が黒色の形成も可能であり、黒色に見える場合には容器に入れる収容物の色が白の場合が、一番コントラストが高くなる。
黒色の形成の場合には、炭化による視認性領域形成が考えられる。容器自体の色についても無色だけでなく、有色であっても問題ない。
【0066】
<第7の実施形態>
図16Aは、第7の実施形態に係る一体記録を有する収容容器の一例を示す図である。図16Bは、図16Aの描画部分の拡大図である。
図16A及び図16Bは、一体記録を有する収容容器の一例であって、描画部分(識別可能領域・白色化領域)は容器の素材を変性させた微細構造の集合体である。
【0067】
本発明に用いられる収容容器の構造は、形状は容器を輪切りにしたときの形状が円形のものや多角形のものなどがある。そのため、画像形成面は1つの平面だけでなく、複数の平面の組み合わせ、曲面、曲面と平面の組み合わせがある。
図17は、一体記録を有する収容容器の口部付近の曲面に画像記録を実施した一例を示す図である。
【0068】
図18に示すように、収容容器の高さ方向をZ軸とすると、Z軸方向からXY平面を見たときに形成されている描画はZ軸方向からの視認性がよく、例えば、メーカ名、商品名、イメージ、ロゴ、QRコード(登録商標)、バーコードなどを入れると箱などに詰めている状態でもわかりやすい。
【0069】
バーコード等は収容容器の高さ方向をZ軸としたときのZ軸方向からの視認性をよくするため、例えば、図19に示すように、下側の線の描画間隔を狭めて、曲率に合わせて描画すると読み取りやすい場合がある。
【0070】
図20は、加工深度のバリエーションを表している。
バリエーションとしては、以下のA~Dの4つの条件がある
A:加工部対非加工部が、1~3対9~7となる加工深度、強度が強い
B:加工部対非加工部が、7~9対3~1となる加工深度
C:加工部対非加工部が、4~6対6~4となる加工深度
D:様々な加工深度が共存している状態、情報のバリエーションが広がる
具体的には、例えば、A条件については容器厚みが100μm~500μmの場合に加工深度は10μmなどとなる。
容器の容量は500mL又は2Lのものなどがあり、最大で30Lのものがある。
【0071】
画像形成のレーザー照射において、高速化のためにマルチビームでの照射を行う。マルチビームのレーザー配置は1Dでの配置とし、ビーム同士の重なりは3つのバリエーションがある。
図21は、マルチビーム時の加工のビーム同士の重なりのイメージを表す。
上記A条件としては、例えば、加工幅:42.6μmに対して、隙間23.6μmがある。
【0072】
<第8の実施形態>
図22は、第8の実施形態に係るレーザー加工システムとしての収容容器の製造装置の一例を示す概略図であり、回転機構11により描画対象である容器本体15を回転させながら、マーキング部12からレーザー13を照射し、加工形状を形成するものである。描画対象である容器本体15はコンベア14上に載置され、コンベア14により移動されながらマーキングされる。図22は、コンベアの進行方向から見た図である。
レーザー位置は固定で回転機構11により容器本体を動かす場合と、容器本体が固定でレーザー位置を動かす場合がある。
また、容器本体を動かす場合、一定角度回転させ、レーザー描画を行った後、また同じ角度回転させ、再度レーザー描画を行うといった、同期制御によりレーザー描画を行う場合や、容器本体を等速回転とし、レーザー描画を行う場合がある。
容器保持部は口部でも容器本体部でも底部でもよい。収容容器は加工時縦置きでも横置きでも斜め置きでもよい。
【0073】
図23に示すようにコンベア等を通過する際に一方からレーザーマーキングしてもよいし、図24に示すようにコンベア等を通過する際に複数個所から同時にレーザーマーキングしてもよい。
【0074】
図25は、容器本体15の傾斜部に描画できるように容器本体15に対して傾斜を持たせてマーキング部12を配置したものである。容器本体15に対して傾斜している箇所については、容器本体15に対して所定角度傾斜してマーキング部12を配置したものであり、その角度は調整可能である。
図26は、容器本体15を横置きにした場合の収容容器の製造装置の一例を示している。
【0075】
図27は、第8の実施形態に係るレーザー加工システムとしての収容容器の製造装置におけるマーキング部の一例を示す機能ブロック図である。マーキング部は、レーザー光制御部と、レーザー駆動部と、容器保持部とを備えている。なお、容器保持部は無い場合もあり、レーザー駆動部には走査部がない場合もある。
【0076】
第8の実施形態に係るレーザー加工システムとしての収容容器の製造装置におけるレーザー駆動部の走査部(ラスター)については、図28Aに示すような構成を備えている。
図28Aに示すように、収容容器の製造装置10は、レーザー発振器101と、ビームエキスパンダ102と、走査用光学素子103と、集光用光学素子104と、回転機構11とを有する。
図28Bは、収容容器の製造装置におけるレーザー駆動部の走査部の処理手順を示すフローチャートである。図28Aを参照して走査部の処理手順について説明する。
【0077】
ステップS10では、収容容器の製造装置におけるレーザー駆動部の走査部は、レーザー発振器101からレーザー光を射出すると、処理をS11に移行する。
ステップS11では、走査部は、ビームエキスパンダ2によりレーザー光の光束径を変更すると、処理をS12に移行する。
ステップS12では、走査部は、走査用光学素子103によりレーザー光を走査すると、処理をS13に移行する。
ステップS13では、走査部は、集光用光学素子104によりレーザー光を集光すると、処理をS14に移行する。
ステップS14では、走査部は、容器本体15にレーザー光が照射されると、本処理を終了する。
【0078】
第8の実施形態に係るレーザー加工システムとしての収容容器の製造装置におけるレーザー駆動部の光学系をアレイ化した場合については、図29Aに示すような構成を備えている。
図29Aに示すように、収容容器の製造装置10は、レーザー光源106と、回転機構11とを有する。レーザー光源106は、アレイ状に配列する複数の光学素子(集光レンズ)107を有する。
図29Bは、第8の実施形態に係るレーザー加工システムとしての収容容器の製造装置におけるレーザー駆動部の光学系の処理手順を示すフローチャートである。図29Aを参照してレーザー駆動部の光学系の処理手順について説明する。
【0079】
ステップS20では、収容容器の製造装置10におけるレーザー駆動部の光学系は、レーザー光源(n個)106からレーザー光を射出すると、処理をS21に移行する。
ステップS21では、レーザー駆動部の光学系は、アレイ状の光学素子(集光用、n個)107によりレーザー光を集光すると、処理をS22に移行する。
ステップS22では、レーザー駆動部の光学系は、容器本体15にレーザー光が照射されると、本処理を終了する。
【0080】
図30は、本発明の容器で実現する繊細デザインのイメージ図である。本容器を利用した商品価値の向上に寄与するようなデザイン描画の実現方法として、点描での画像表現、諧調による画像表現がある。
点描、2値、多値、イメージのサイズ、描画可能領域は容器の高さ方向のほぼ全域をカバーすることが望ましい。
具体的には高さ2cm~20cmの描画領域が望ましい。一度に書ける高さは例えば2.54cmとして、何回かに分けて記録することも経済的である。
【0081】
本発明で利用するレーザーはビーム径が小さなレーザーを微細な構造の集合体として描画に利用することで、従来のレーザー印字(主に炭酸ガスレーザー)では難しい繊細なデザイン描画が可能である。
図31は、PETボトルに繊細なデザインを適用した図である。
記録する樹脂容器としてはPETボトル以外では、例えば、コンビニのアイスコーヒーの提供などで使われるプラスチックカップなどが考えられる。図32は、プラスチックカップに繊細なデザインを適用した図である。
【0082】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更しても差支えない。
【0083】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> レーザー光を出射する光出射手段及びレーザー光を走査する光走査手段を有する光照射装置を複数台備え、複数台の前記光照射装置により被加工物を加工するレーザー加工システムであって、
第1の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、
第2の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、
前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有することを特徴とするレーザー加工システムである。
<2> 前記角度差が90°以上270°以下である、前記<1>に記載のレーザー加工システムである。
<3> 前記被加工物が搬送装置により複数台の前記光照射装置の加工領域に搬送され、
前記第1の光照射装置及び前記第2の光照射装置が搬送方向に隣接して配設される、前記<1>から<2>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
<4> 前記第1の光照射装置と前記第2の光照射装置が一対となり、一対の光照射装置が複数台配設される、前記<1>から<3>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
<5> 前記第1の光照射装置による加工開始位置から前記第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域において、被加工物は搬送方向以外に姿勢が変化しない、前記<3>から<4>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
<6> 前記第1の光照射装置による加工開始位置から前記第2の光照射装置による加工終了位置までの搬送領域において、被加工物は搬送面以外が前記搬送装置に接触しない、前記<3>から<4>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
<7> 前記第1の光照射装置の光走査手段が第1の偏向器及び第1の結像光学素子を有し、
前記第2の光照射装置の光走査手段が第2の偏向器及び第2の結像光学素子を有し、
下記式(1)の関係を充たす、前記<1>から<6>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
L>(WD1+d/2)*tan(θ1/2)+CA1/2+(WD2+d/2)*tan(θ2/2)+CA2/2 ・・・式(1)
ただし、前記式(1)中、Lは第1の光照射装置の光軸中心と第2の光照射装置の光軸中心の距離(mm)、第1の偏向器の偏向角θ1(°)、第2偏向器の偏向角θ2(°)、第1の結像光学素子の作動距離WD1(mm)、第2の結像光学素子の作動距離WD2(mm)、第1の結像光学素子の開口径CA1(mm)、第2の結像光学素子の開口径CA2(mm)、被加工物の最大直径d(mm)である。
<8> 前記第1の光照射装置と前記第2の光照射装置の間に遮光部材を有する、前記<1>から<7>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
<9> 前記第1の光照射装置の光出射手段における射出口及び前記第2の光照射装置の光出射手段における射出口は、前記搬送装置に対して同じ側に位置する、前記<3>から<8>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
<10> 前記第1の光照射装置の光出射手段における射出口及び前記第2の光照射装置の光出射手段における射出口は、前記搬送装置に対してそれぞれ異なる側に位置する、前記<3>から<8>のいずれかに記載のレーザー加工システムである。
<11> レーザー光を出射する光出射手段及びレーザー光を走査する光走査手段を有する光照射装置を複数台備え、複数台の前記光照射装置により被加工物を加工するレーザー加工システムであって、
第1の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第1の領域と、
第2の光照射装置により前記被加工物へ入射するレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、
前記第1の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第1の照射領域及び前記第2の光照射装置により搬送平面上にレーザー光を投影した第2の照射領域のうち少なくとも1つの照射領域が前記被加工物の搬送経路を横断することを特徴とするレーザー加工システムである。
<12> 前記第1の照射領域及び前記第2の照射領域の少なくとも1つの照射領域が搬送経路を横断後に、レーザー光が少なくとも1つのミラーで反射され前記被加工物へ入射する、前記<11>に記載のレーザー加工システムである。
<13> 前記<1>から<10>のいずれかに記載のレーザー加工システムと、
前記<11>から<12>のいずれかに記載のレーザー加工システムと、を組み合わせてなるレーザー加工システムである。
<14> レーザー光を出射する光出射手段及びレーザー光を走査する光走査手段を有する光照射装置であって、
前記光照射装置が複数の光照射口を有し、
第1の光照射口から前記被加工物へ入射する第1のレーザー光によって加工される第1の領域と、
第2の光照射口から前記被加工物へ入射する第2のレーザー光によって加工される第2の領域は前記被加工物上で異なる領域を形成し、
前記第1の領域の加工面の法線方向と前記第2の領域の加工面の法線方向とが角度差を有することを特徴とする光照射装置である。
【0084】
前記<1>から<13>のいずれかに記載のレーザー加工システム、及び前記<14>に記載の光照射装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 収容容器の製造装置
11 回転機構
12 マーカー部
13 レーザー
14 コンベア
15 容器本体
20 レーザー加工システム
21 被加工物
22 搬送装置
23 光照射装置
23a 第1の光照射装置
23b 第2の光照射装置
24 加工領域
25 加工形状
26 被加工部
30 レーザー
33 fθレンズ
41 光出射手段
42 ガルバノスキャナ
43 遮光部材
44 折り返しミラー
45 光走査手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2021-20242号公報
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29A
図29B
図30
図31
図32