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特開2023-108625試験測定システム、リモート・デバイス及び試験測定システムを動作させる方法
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  • 特開-試験測定システム、リモート・デバイス及び試験測定システムを動作させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108625
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】試験測定システム、リモート・デバイス及び試験測定システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/36 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
G06F11/36 164
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023009478
(22)【出願日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】202221004291
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】18/100,180
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ケー・ティー・アヌラグ
(72)【発明者】
【氏名】ニティン・ケインジャ
(72)【発明者】
【氏名】アクシャイ・ミシュラ
(72)【発明者】
【氏名】ケー・ヴァニ
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042HH04
(57)【要約】
【課題】個々のデータ送信に伴うオーバーヘッドを削減する。
【解決手段】試験測定システムは、被試験デバイス(DUT)からの入力信号を受けるように構成された入力ポート32と、入力信号から導出されたデータを記憶するように構成されたメモリと、リモート・アクセス・マネージャ80と、測定装置30の現在の動作状態を維持するように構成された測定装置状態マネージャとを有する。システムは、更に、リモート・デバイス100を有し、これは、測定装置30からの入力信号から導出され、記憶されたデータの一部を通信ネットワークを介して受信するよう構成され、更に、記憶されたデータの一部が測定装置30によって取得されたときの測定装置30の現在の動作状態を特定するトランザクション識別子(TID)を受信するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定システムであって、
測定装置と、
通信ネットワークと
を具え、
上記測定装置は、
被試験デバイス(DUT)からの入力信号を受信するように構成された入力ポートと、
上記入力信号から導出されたデータを記憶するように構成されたメモリと、
リモート・アクセス・マネージャと、
上記測定装置の現在の動作状態を維持するように構成された測定装置状態マネージャと
を有し、上記測定装置は、上記通信ネットワークを通してリモート・デバイスに結合でき、
該リモート・デバイスは、上記通信ネットワークを介して上記入力信号から導出され、記憶された上記データの少なくとも一部を上記測定装置から受信するように構成され、更に、記憶された上記データの一部が上記測定装置によって取得されたときの上記測定装置の現在の動作状態を特定するトランザクション識別子を受信するように構成される試験測定システム。
【請求項2】
上記リモート・デバイスが、上記通信ネットワークを介してコマンドを送信することにより、上記測定装置の状態を制御するように更に構成される請求項1による試験測定システム。
【請求項3】
上記リモート・アクセス・マネージャが、上記リモート・デバイスから受信したリモート・プロシージャ・コール(RPC)を使用して動作するように構成される請求項1による試験測定システム。
【請求項4】
上記リモート・デバイスは、上記測定装置によって取得され、記憶された上記データの一部について分析を実行するように構成された分析エンジンを更に有する請求項1による試験測定システム。
【請求項5】
上記リモート・デバイスは、上記測定装置によって取得され、記憶された上記データの一部を1つ以上の分析エンジンに送信するように構成される請求項1による試験測定システム。
【請求項6】
上記リモート・デバイスは、トランザクション識別子を1つ以上の分析エンジンに送信するように更に構成される請求項4による試験測定システム。
【請求項7】
試験測定装置に結合されるリモート・デバイスであって、
上記リモート・デバイスで生成されたコマンドを受信し、上記試験測定装置にコマンドを送信して上記試験測定装置との通信チャンネルを開くように構成されたアプリケーション・プログラム・インタフェースと、
該アプリケーション・プログラム・インタフェースが、上記試験測定装置の現在の状態を要求するコマンドを上記試験測定装置に送信するように更に構成され、
上記試験測定装置の現在の状態を記憶するよう構成された上記リモート・デバイス上のストレージと、
上記アプリケーション・プログラム・インタフェースが、上記試験測定装置からデータを受信し、該データが上記リモート・デバイスで受信されたときの上記試験測定装置の状態を特定する、上記試験測定装置のアップデートされた現在の状態を受信するように更に構成され、
上記試験測定装置の記憶された状態を上記試験測定装置のアップデートされた現在の状態と比較するように構成されたコンパレータと
を具えるリモート・デバイス。
【請求項8】
上記試験測定装置から受信したデータの少なくとも一部について分析を実行するように構成された分析エンジンを更に具える請求項7によるリモート・デバイス。
【請求項9】
試験測定システムを動作させる方法であって、
測定装置において被試験デバイス(DUT)からの入力信号を受信する処理と、
上記入力信号から導出されたデータを記憶する処理と、
上記入力信号から導出されたデータが記憶された時点における上記測定装置の状態を示すトランザクション識別子を記憶する処理と、
上記測定装置において、リモート・デバイスからの要求を受信した後に、
記憶された上記データの少なくとも一部を上記リモート・デバイスに送信する処理と、
上記トランザクション識別子を上記リモート・デバイスに送信する処理と
を具える試験測定システムを動作させる方法。
【請求項10】
上記測定装置において、上記リモート・デバイスから通信チャンネルを開く要求を受信する処理と、
上記リモート・デバイスとの通信チャンネルを開く処理と
を更に具える請求項9による試験測定システムを動作させる方法。
【請求項11】
上記リモート・デバイスにおいて、記憶されたデータの少なくとも一部について分析を行う処理を更に具える請求項9による試験測定システムを動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホスト・コンピューティング・デバイス又はリモートコンピューティング・デバイスから装置データとその設定制御にアクセスするためのインタフェース・メカニズムに関する。
【背景技術】
【0002】
プログラマブル測定装置用標準コマンド(SCPI)は、試験測定装置を制御するために設計されたプログラミング言語規格である。SCPIは、ASCIIベースの事前定義されたコマンドと応答のセットであるSCPIコマンドを持つ、情報交換用米国標準コード(ASCII)ベースの測定装置コマンド言語であり、物理通信層を介して試験測定装置との間で送受信される。SCPIは、通常、試験測定装置用に設計されたASCIIベースの測定装置コマンド言語を使用して、外部コンピュータから測定装置と通信する方法を定義する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-060983号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「SCPI」、TechEyesOnlineの用語集、TechEyesOnline、[オンライン]、[2023年1月24日検索]、インターネット<https://www.techeyesonline.com/glossary/detail/SCPI/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインタフェースは、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)を介して、SCPIを使用して設定とデータ・アクセスを提供する。しかし、SCPIはASCIIベースの測定装置コマンド言語であるため、SCPIプロトコルでは、一連のASCII情報の文字列を物理インタフェースに送信する必要があり、測定装置とリモート・デバイス間の通信インタフェースの設定には比較的長い時間がかかる。SCPIコマンドの解析も測定装置内で実行する必要があり、測定装置との通信チャンネルを設定する時間に加えて、測定装置に保存されている情報を取り出す時間も遅くなる。このような転送を処理するための合計時間は、たとえ高速LANと最新世代のプロセッサを使用しても(これらは、どちらもボトルネックではないにも関わらず)、個々のデータ転送に関連するオーバーヘッドが増加する可能性がある。むしろ、現在のシステムでこのような遅延を引き起こすのは、SCPIプロトコル自体の要件である。
【0006】
本開示による実施形態は、現在の技術のこれら及び他の制限に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による実施形態は、装置の外部にあるローカル/エッジ/クラウド・コンピューティング環境における装置データ分析の目標を変更することによって、リモート・デバイスを使用する際の総試験時間を短縮するインタフェースを提供する。このインタフェースにより、デバッグや視覚化のための分析び視覚化ツールの使用が可能となることで、クライアントは、装置データを追加又は変更できる。
【0008】
本発明の特定の例示的な実施形態の上述及び他の態様、特徴及び効果は、添付の図面と併せて検討することで、以下の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、開示技術の実施形態による、リモート・デバイスとインタフェースを確立するために内在するリモート・インタフェースを含む測定装置のブロック図である。
図2図2は、開示技術の実施形態による、図1の測定装置に加えて、少なくとも1つのツール・セットを伴う統合ライブラリを有するリモート・アクセス・デバイスを含むブロックシステム図である。
図3図3は、開示技術の実施形態による、図2の測定装置及びリモート・アクセス・デバイスを示すブロックシステム図であり、リモート・アクセス・デバイスは、それぞれ1つ以上の分析エンジンを含む複数のコンピューティング・リソースに結合される。
図4図4は、開示技術の実施形態による、図2に描かれたようなシステムを用いて、測定装置の設定にデータを同期させ、測定装置のデータ分析の目標を変更するシーケンスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本開示技術の実施形態による、リモート・デバイス100とインタフェースで接続するために内在するリモート・アクセス・マネージャ80を含む測定装置30のブロック図である。概して、測定装置30は、外部デバイスからの入力信号を受信し、オプションで、受信した入力信号について分析を実行する任意の装置であっても良い。測定装置の例としては、オシロスコープ、スペクトラム・アナライザ、データ・ネットワーク・アナライザ及びロジック・アナライザが含まれるが、開示による実施形態は、他のタイプの装置で動作しても良い。
【0011】
測定装置30は、プロセッサ・メモリ42に結合された1つ以上のメイン・プロセッサ40を含み、これは、RAM、ROM、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハード・ディスク・ドライブ)やキャッシュ・メモリを有していても良い。プロセッサ・メモリ42は、1つ以上のプロセッサ40に対する命令に加えて、測定装置30で使用されるデータを記憶しても良い。記憶されたデータには、入力信号を表すデジタル化された値、タイムベース(時間軸)校正値、ルックアップ・テーブルなどが含まれても良い。
【0012】
いくつかの実施形態では、入力信号を表すデジタル化された値は、アクイジション・メモリ60が、被試験デバイス(DUT)20からのサンプルを受けて、サンプリング波形としてアクイジション・メモリ60に記憶されてもよく、次いで、サンプリング波形は、典型的には、トリガ・イベントが発生したときにメモリ42に転送される。アクイジション・メモリ60は、また、1つ以上のプロセッサ40に結合される。メモリ42に記憶されたサンプリング波形は、測定装置30の一部を形成する測定ユニット70などの他の構成要素で利用可能である。測定ユニット70は、1つ以上の別個の回路又はモジュールであってもよく、DUT20から受信した信号の特性(例えば、電圧、アンペア数、振幅、エネルギーなど)を測定できる任意のコンポーネントを含むことができる。
【0013】
ユーザ入力部52及びユーザ出力部56は、プロセッサ40に結合される。ユーザ入力部52は、測定装置30をセットアップ及び制御するためにユーザが利用可能なキーボード、マウス、タッチスクリーン、その他の任意の操作装置を有していても良い。ユーザ入力部52は、メイン表示部54と連動して操作されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースやテキスト/文字インタフェースによって具現化されても良い。ユーザ入力部52は、測定装置30上のユーザからか又はリモート・デバイスからのプログラム入力を更に有していても良い。メイン表示部54は、波形、測定値及び他のデータをユーザに表示するためのデジタル・スクリーン、ブラウン管ベースのディスプレイ、その他の任意のモニタであっても良い。ユーザ出力56としては、試験データ及び他の結果があっても良く、これらは、メイン表示部54に表示されても良いし、表示されないこともある。
【0014】
測定装置30の構成要素は、試験測定装置内に一体化されているように描かれているが、これらの構成要素のいずれかが、リモート・ヘッド内又は別の装置内などの測定装置30の外部にあっても良く、従来の任意の方法(例えば、有線や無線の通信メディアやメカニズム)で試験測定装置30に結合されても良いことが、当業者には理解できよう。
【0015】
測定装置30は、DUT20に結合されてもよく、測定装置による処理及び分析のために、DUT20から1つ以上の信号を受信する。DUT20からの入力信号は、1つ以上の入力ポート32で受信されるが、入力ポート32は、任意の電気的又は光学的信号伝送媒体であっても良い。入力ポート32は、レシーバ、トランスミッタやトランシーバを有していても良い。各入力ポート32は、試験測定装置30のチャンネルである。
【0016】
入力ポート32で受信された入力信号は、最初に調整(コンディショニング)回路50によって調整されるが、調整回路50は、更に、DUT20からの入力信号からサンプリング波形を作成するサンプリング機能を実行しても良い。調整回路50は、サンプリング波形を作成するための1つ以上の増幅器、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)及び他の回路を有していても良い。サンプルは、上述したアクイジション・メモリ60に格納される。サンプルは、また、トリガ・プロセッサ51に送られてもよく、トリガ・プロセッサ51は、入力調整回路50と連動して、サンプリング波形をアクイジション・メモリ60からメモリ42に転送するトリガを生成する。
【0017】
DUT20からの入力信号は、数千回、数百万回又は数十億回サンプリングされてサンプリング波形が作成され、測定装置で後で使用するために、アクイジション・メモリ60に格納されても良い。測定装置で使用されることに加えて、本発明の実施形態には、ユーザが、測定装置30に記憶されたデータにアクセス可能にするだけでなく、リモート・デバイスから、そのようなデータを操作及び変更することも可能にし、更に、取り出されたデータに対して外部での処理を実行可能にするインタフェース機構がある。
【0018】
リモート・アクセス・マネージャ80は、測定装置自体とは別のリモート・デバイス100から、測定装置30上のアクイジション・メモリ60又は他の場所に記憶されたデータのリモート・アクセスを管理する。本願で説明されるこのリモート・データ・アクセスは、上述したように、測定装置30からデータを取り出す非常に遅い方法なことがあるユーザ入力部52又はユーザ出力部56を介して実行される任意のリモート・アクセスとは異なっている。
【0019】
リモート・アクセス・マネージャ80には、リモート・インタフェース82があり、これは、以下で説明するように、本願に記載される新しい方法を使用して測定装置30と相互に通信するための主要なリモート・インタフェースである。リモート・アクセス・マネージャ80には、状態クライアント86及びデータ・クライアント88もある。
【0020】
状態クライアント86は、測定装置状態機能64とのインターフェースを確立し、すると、測定装置状態機能64が、メイン・プロセッサ40と連動して、測定装置の現在の状態を決定する。次いで、状態クライアント86は、測定装置の現在の状態を記憶することで、リモート・アクセス・マネージャ80が状態クライアント86にアクセスしても良いし、更に、状態クライアント86がリモート・デバイス100にアクセスしても良い。
【0021】
同様に、データ・クライアント88は、測定装置データ機能62とインタフェースを確立し、すると、測定装置データ機能62が、アクイジション・メモリ60又は測定装置30のメモリ42を含む他のメモリとインタフェースを確立し、これによって、アクイジション・メモリ60又は測定装置30上の他の場所に記憶されたデータにアクセスする。
【0022】
いくつかの実施形態では、測定装置状態機能64は、測定装置30の独立した要素ではなく、代わりに、リモート・アクセス・マネージャ80の状態クライアント86が、メイン・プロセッサ40と直接インタフェースを確立し、状態情報を取得又はアップデートする。また、同様に、測定装置データ機能62が、測定装置30の独立した機能又はモジュールである必要はなく、代わりに、データ・クライアント88が、測定装置30のアクイジション・メモリ60又は測定装置内の他の場所と直接インタフェースを確立し、アクイジション・メモリに記憶されたデータを取得し、場合によってはアップデートする。
【0023】
実施形態による測定装置30は、更に、以下で詳細に説明する分析エンジン90を含む。
【0024】
図2は、図1のメイン測定装置30に加えてリモート・アクセス・デバイス200を含む開示技術の実施形態によるブロック・システム図である。リモート・アクセス・デバイス200は、統合型ライブラリと、少なくとも1つのツールセットとを含む。リモート・アクセス・デバイス200は、図1を参照して説明したリモート・アクセス・デバイス100の一実施形態であっても良い。なお、図2では、図1を参照して上述した測定装置の機能は、明瞭にするために、メインの参照番号31に集約している。
【0025】
リモート・アクセス・デバイス200は、インタフェース機構(メカニズム)であり、測定装置状態及び測定装置データへの高速アクセスを外部クライアントに提供するデータ・アクセス・サブシステムを含む。リモート・アクセス・デバイス200は、測定装置30へのインタフェースとして使用されても良いし、リモート・アクセス・デバイス200の機能を、外部デバイスに統合して、こうした外部デバイスが測定装置30と直接インタフェースを確立できるようにしても良い。
【0026】
上述したように、リモート・アクセス・デバイス200は、それ自身で、測定装置30上のリモート・アクセス・マネージャ80と直接インタフェースを確立する。リモート・アクセス・デバイス200は、独立した物理的デバイスである必要はなく、複数の処理からなる「プラグイン」として実現されて、ホスト・プロセッサと連携して機能し、測定装置30への接続を希望する任意のリモート・コンピューティング・デバイスに高速サブシステム・プラグインを与えるものであっててもよい。
【0027】
いずれのタイプの実施形態でも、リモート・アクセス・デバイス200は、クライアントを有し、これは、典型的にはソフトウェア・クライアントであって、API(Application Program Interface)とインタフェースを確立して、測定装置30に存在するリモート・アクセス・マネージャ80と通信を行う。リモート・アクセス・デバイス200と同様に、リモート・アクセス・マネージャ80は、測定装置30上で動作する独立したハードウェアである必要はなく、リモート・アクセス・デバイス200と測定装置30との間のインタフェースを確立するのに使用される、メイン・プロセッサ40が処理する一連の動作として、ソフトウェアで実現されても良い。
【0028】
先に詳細に説明したように、リモート・アクセス・マネージャ80は、状態クライアント86を介して測定装置30の状態にアクセスし、また、データ・クライアント88を介して測定装置30に記憶されたデータにアクセスする。本開示による実施形態を使用して、リモート・アクセス・デバイス200のユーザは、測定装置30のその時点での動作状態を取得できるのに加えて、アクイジション・メモリ60などから、そのような状態の測定装置30からデータを取得できる。また、後述するように、リモート・アクセス・デバイス200のユーザは、更に、測定装置30の状態を制御するコマンドを送信し、リモート・アクセス・デバイス200のユーザが指示した状態に測定装置30が移行したかを判断できる。以下で、例を詳述する。
【0029】
リモート・アクセス・デバイス200には、C#クライアント220、Pythonクライアント230及びC++クライアント240などの1つ以上のクライアントがある。他のクライアントも可能であり、これは、図2では、省略記号で示されている。各クライアントに付随して、クライアント・ライブラリが存在する。例えば、C#クライアント220をサポートするために、C#ライブラリ222が提供されても良い。C#ライブラリ222には、C#クライアント220がアクセスできるサブルーチンがあっても良い。このサブルーチンは、コンパイルされたコードであっても良いし、そうでなくても良い。このように、C#クライアント220をゼロから開発する必要はなく、C#ライブラリ222を利用しても良い。
【0030】
ライブラリ222、232、242は、リモート・プロシージャ・コール(Remote Procedure Call:RPC)ライブラリであってもよく、その機能を以下に記述する。C#ライブラリに含まれる機能の他の例としては、例えば、クライアントとメイン測定装置間のアクセスを接続及び切断する機能、測定装置データに安全にアクセスし、データが処理されたら、そのような測定装置データへのアクセスを解放することを管理する機能、測定装置の設定中の変更を設定、取得及び通知する機能、設定トランザクションID(TID)と取得したデータ・トランザクションID(識別子)を取り出して、クライアントが設定に従ってデータを同期できるようにする機能、測定装置の入力波形サンプル・データと分析データにアクセスする機能、更なる分析と視覚化のために、処理されたデータを測定装置に送信する機能、がある。
【0031】
もちろん、リモート・アクセス・デバイス200とメイン測定装置30との間の相互作用を容易にする他の機能も可能であり、上記の機能のリストは、網羅したリストではない。同様に、Pythonライブラリ232は、Pythonクライアント230に対して同じ又は類似のリソースを提供し、C++ライブラリ242は、C++クライアント240に対して同じ又は類似のリソースを提供する。
【0032】
クライアント220、230、240は、APIインタフェース210に結合しており、これは、リモート・アクセス・マネージャ80のリモート・インタフェース82と直接インタフェースを確立する。いくつかの実施形態では、リモート・インタフェース82は、RPC(Remote Procedure Call)サーバの実施形態であり、APIインタフェース210からのコマンドを受け入れ、それらを測定装置30上で実行するように機能する。
【0033】
例えば、測定装置30の現在の状態を決定し、その現在の状態をリモート・アクセス・デバイス200に返すコマンドが、リモート・アクセス・デバイス200のC#クライアント220によって作成されても良い。リモート・アクセス・デバイス200は、測定装置30のリモート・アクセス・マネージャ80に状態情報の要求を送信し、リモート・アクセス・マネージャ80は、状態クライアント86に記憶されている測定装置の現在の状態(継続的にアップデートされている)を取り出す。次いで、リモート・アクセス・マネージャは、この状態情報を状態クライアント86からリモート・デバイス200に返し、次に、リモート・デバイス200は、現在の状態を要求したクライアント220に情報を渡し、その結果、現在の状態情報が、クライアントが使用するためにクライアントに通知される。
【0034】
この例は、C#クライアント220に言及して与えられたが、この処理は、どのクライアント220、230、240が最初に状態の要求を行ったかにかかわらず、同様に実行される。リモート・インタフェース82上で動作するRPCサーバの例としては、米国カリフォルニア州メンロパークのAlphabet社から入手可能なオープンソースのRPCフレームワークであるgRPCがある。
【0035】
リモート・アクセス・デバイス200にAPIインタフェース210があることで、リモート・アクセス・デバイス200のユーザと、リモート・アクセス・デバイスと測定装置30との間で送信される詳細情報との間に、抽象化層が提供される。このため、測定装置30を制御するのに必要なコマンドを手作業でコーディングする代わりに、ユーザは、APIインタフェース210を介して測定装置30とインタフェースを確立するのに、C#クライアント220、Pythonクライアント230やC++クライアント240など、最も便利な任意のクライアントを使用しても良い。更に、APIインタフェース210は、以下で図4を参照して説明するように、リモート・アクセス・デバイス200と測定装置30との間のデータ同期のサポートを提供する。
【0036】
リモート・アクセス・デバイス200と測定装置30との間の通信は、高速通信インタフェース150を通して行われることに留意されたい。高速通信インタフェース150は、任意の有線又は無線の通信ネットワークであっても良い。通信インタフェースは、ローカル・ネットワーク、エッジ・ネットワーク又はクラウド・コンピューティング・ネットワークの一部であっても良い。これらのネットワークは、インターネット・プロトコル(IPプロトコル)を利用しても良く、これは、比較的大きなペイロード容量に加えて、データ・サイズに比較してオーバーヘッド・データの比率が低い。このため、測定装置自身の状態情報及びデータの両方を含む測定装置30の情報及びデータは、非常に高速な方法でリモート・アクセス・デバイス200に通信される。即ち、上述のSCPIコマンドを使用するよりも、はるかに高速である。
【0037】
リモート・アクセス・デバイス200は、SCPIコマンドを使用して測定装置30とインタフェースする代わりに、RPCコマンド形式の、独自のコマンド・セットを使用し、これは、通信インタフェース150を介してデータ及び情報を送信するために、IPネットワークを介して伝送される。RPCインタフェースは、HTTP/2(HyperText Transport Protocol 2)とプロトコル・バッファを使用して、リアルタイム通信を可能にする。HTTP/2は、ストリームについてバイナリ・フレーミングを利用し、これは、単一のTCP接続によって、優先順位を付けて実行でき、ネットワーク使用率と処理負荷が軽減される。実行時に、データ・メッセージはバイナリ形式で圧縮及びシリアル化されるため、メッセージのサイズが最小限に抑えられる。これは、以前に使用されたSCPIコマンドと比較して、本発明の実施形態を使用することで、より速いメッセージ交換につながる。
【0038】
測定装置の状態は、トランザクションID(TID)によって特定されても良く、これは、測定装置30のアクティブなトランザクションに関する情報を特定する。このTIDは、状態クライアント86に記憶されても良く、これにより、上述の技術を使用して、リモート・アクセス・デバイス200がTIDを利用可能になる。加えて、TIDを使用して測定装置30の状態を特定することにより、複数のデバイスが、もう1つ別のプロセス又はホスト/リモート・マシンに結合された他のプロセスを、同じトランザクションに接続できるようになる。
【0039】
リモート・アクセス・デバイス200は、更に、1つ以上の分析エンジン250を有していても良い。分析エンジン250は、測定装置30から取り出されたデータについて、詳細な測定及び分析を実行しても良い。分析エンジン250などの外部分析エンジンを使用すると、後続の波形を呼出しながら、記憶された入力波形に対して複雑な分析を実行することから測定装置30を解放するという点で有益なことがある。
【0040】
あるいは、図3に示すように、リモート・アクセス・デバイス200に、夫々がそれら自身の分析エンジン250を有する複数のデバイスを結合し、夫々が測定装置30から抽出されたデータに対して何らかのタイプの分析を実行するように構成しても良い。そして、上述したTIDを使用することで、接続された全てのデバイス中の全ての分析エンジン250が、測定装置30から取り出された全く同じデータ・セットについて動作していることを確認するようにしても良い。次いで、こうした複数の分析エンジン250の出力が、互いに接続されるか又は互いに比較されて、ユーザが、測定装置からのデータを多種多様な方法で分析できるようにしても良い。例えば、1つの分析エンジン250は、時間領域で測定を実行し、別の分析エンジンは周波数領域で測定を実行しても良い。
【0041】
分析エンジン250にデータと共に送られるTIDが同じであるか又はリモート・デバイス200によって適切に管理されている限り、これらの分析エンジン250は、それらが測定装置30からの同じデータについて動作していることを確認できるが、これは、現在の方法を使用して行うことは、非常に困難又は不可能である。
【0042】
これら分析エンジン250は、分析結果を生成するのに、ローカル、エッジ又はクラウド・コンピューティング環境を使用して動作しても良い。そして、様々な分析エンジン250が、様々なコンピューティング環境上で動作しても良い。例えば、1つの分析エンジン250は、ローカル・マシン上で動作する一方、別の分析エンジン250は、クラウド・コンピューティング環境からのリソースを使用して分析を実行しても良い。この場合も、各分析エンジン250は、同じTIDについて動作しているので、測定装置30から抽出された同じデータに対して分析が実行されることが保証される。
【0043】
複数の分析エンジン250を使用する別の利点は、別々のコンピューティング・リソースを同時に使用し、複数の分析エンジン250を使用してそれぞれの別々の分析を実行することによって、分析のスループットが増加することである。具体的には、図示していないが、各分析エンジン250は、コンピューティング・リソースと、状態記憶リソースを含むデータ記憶リソースを有し、これらにより、分析エンジン250は、ユーザが要求する所望の分析機能を実行可能となる。
【0044】
図1図3に示すように、測定装置30は、それ自身の分析エンジン90を有し、これは、分析エンジン250を参照して上述したのと同じ又は類似の様式で動作できる。この意味で、分析エンジン90は、ユーザが測定装置30からの情報を分析するために利用できる別のコンピューティング・リソースとなる。いくつかの実施形態では、分析エンジン90は、測定装置30の内蔵機能として予め存在しても良い。分析エンジン90は、状態ストレージ96及びデータ・ストレージ98を有し、これらは、両方とも、受信したデータについて分析を実行するために使用されても良い。
【0045】
図4は、本開示技術の実施形態による、図2に示すようなシステムを用いて、測定装置の設定にデータを同期し、測定装置のデータ分析の目標を変更する処理のシーケンス図である。図4は、C++クライアント240と、C++ライブラリ242と、リモート・アクセス・マネージャ410(これは、APIインタフェース210及びリモート・アクセス・マネージャ80の両方によって実行される通信機能を含む)と、データ・クライアント88を通して利用可能な測定装置データと、状態クライアント86を通して利用可能な測定装置状態データと、複数の分析エンジン250の中の1つとを含む、上述のリモート・アクセス・システムの主要コンポーネントを使用する例を示す。ある実施形態では、図4に示すプロセスが、分析エンジン250に結合された夫々別々のシステムによって使用されて、複数の分析エンジンが同じデータ・セットに対する分析を同時に実行しても良い。
【0046】
図4を参照すると、C++クライアント240のようなクライアント・アプリケーションは、図2のリモート・デバイス200などのリモート・デバイスと測定装置30との間の接続を確立するために、リモート・アクセス・マネージャ410へのAPIを開始する。図示されるように、C++クライアント240は、C++ライブラリ242に記憶されたRPC及びAPI機能を使用しても良く、これが、APIリクエストをコード化するのに使用されて、リモート・アクセス・マネージャ410に接続するためにAPIリクエストを簡単に利用するのを確実にしても良い。この例は、C++クライアント240によって開始されるが、クライアント220、230、240又はその他のいずれかが、測定装置30へのリモート接続を確立するための呼び出し(call:コール)を開始しても良い。
【0047】
リモート・アクセス・マネージャ410は、上述したように、APIインタフェース210及びリモート・アクセス・マネージャ80の両方の機能を有し、リモート・デバイス200と測定装置30との間の接続を確立する(図2)。接続を確立する処理には、許可されたリモート・デバイス200にのみ接続する処理、又は、C++クライアント240を使用して許可されたアカウントからのみ接続する処理のようなセキュリティ・アクセスの形態が含まれても良い。
【0048】
図4に示すように、工程420は、上述の手順を用いて、リモート・デバイス200と測定装置30との間に、通信ポータルを開くことを要求する。測定装置30上のリモート・アクセス・マネージャ80が通信ポータルを承認すると、リモート・アクセス・マネージャ80は、この承認と、通信ポータルの詳細とをC++クライアント240に送り返す。このようにして、C++クライアント240は、測定装置の状態及び測定装置データなどの測定装置30の情報に通信ポータルを通してアクセスすることが許可される。いくつかの実施形態では、上述したように、リモート・アクセス・マネージャ410が、gRPCフレームワークを使用して開発され、測定装置と一体化して測定装置上で動作するサーバを有し、この通信ポータルを介して外部クライアントに測定装置の状態及びデータへの高速アクセスを提供する。
【0049】
ある実施形態では、C++クライアント240とリモート・アクセス・マネージャ410との間のインタフェース機構が、工程430において、測定装置にコマンドを送ることによって、測定装置30の設定を設定できる。この要求(リクエスト)に応答して、リモート・アクセス・マネージャ410は、測定装置30の状態クライアント86(図2)に、測定装置30を要求された状態に設定するよう指示する。C++クライアント240が要求することがある測定装置30の状態の例としては、入力信号のデータを取り込んでサンプリング波形にするよう設定するためのサンプリング及びトリガ設定に加えて、サンプリング波形に対して実行される分析を設定するための測定設定がある。
【0050】
更に、工程440に示されるように、C++クライアント240は、C++ライブラリ242を使用して、測定装置30の現在の状態をチェックし、測定装置が工程430で要求された状態に入ったか判断しても良い。言い換えると、測定装置30は、要求された状態に変更する前に完了する必要がある他の機能を実行していることがあるので、測定装置30は、工程430において要求された状態に、直ぐには変化しないことがある。このため、工程440において、C++クライアント240は、測定装置30の現在の状態を表すトランザクションID(TID)を受信することによって、測定装置30が要求された状態に入ったことを確実にできる。TIDが、工程430において要求された状態と一致することを保証することによって、C++クライアント240又はリモート・デバイス200内の他の機能は、要求した状態が測定装置30の現在の状態と一致すること、そして、測定装置が実際に要求された状態に入ったことが保証されても良い。次いで、C++クライアント240は、上述のように取り出されたTIDをローカルTID(LTID)として記憶し、これは、工程450に図示されている。
【0051】
測定装置の状態が確立され、確認された後、C++クライアント240は、図4のループ工程460によって表されるように、測定装置30のデータの要求を開始しても良い。このループ460では、測定装置30からのデータがデータ・クライアント88から取り出され、リモート・アクセス・デバイス200に送り返される。サブ工程462では、リモート・アクセス・デバイス200に記憶されているLTIDを、TIDによって表される、データが取り出されるときの測定装置30のその瞬間の状態と連続的に比較する。LTIDが、その瞬間のTIDと一致することを確認することによって、工程460でデータが取り出されている間、測定装置30が状態を変えていないことを確認する。いくつかの実施形態では、工程460を使用して測定装置30から取り出されたデータは、LTIDでタグ付けされ、これは、測定装置30から取り出されたデータが正確であることを更に保証する。
【0052】
こうして、これらの工程430~460において、リモート・デバイス200と測定装置30との間のインタフェース機構により、測定装置を所望の状態に設定した後に、リモート・デバイスが測定装置データを照会することが可能となり、また、リモート・デバイスが、取得したデータを漏れ無しに測定装置30から測定装置データを取得することを可能にする。更に、LTIDがTIDと一致することを確認することにより、測定装置30がデータ検索中に状態を変更していないことが保証される。
【0053】
データが測定装置30から取り出された後、上述の技術を使用して、そのようなデータが、リモート・デバイス200の分析エンジン250によって使用されても良い。上述したように、分析エンジン250は、波形サンプルの作成に使用された入力信号の特性の測定、時間領域又は周波数領域でのデータの分析、分析されたデータのヒストグラム、アイ・チャートなどの作成又は他の機能の実行といった測定装置30でも実行できる、任意の測定又は分析機能等を実行しても良い。
【0054】
そして、これも上述したように、リモート・デバイス200は、取り出されたデータ(正しいことが保証されている)を、別々のコンピューティング・デバイス上に夫々配置された2つ以上の分析エンジン250に送信しても良い。次いで、全ての分析エンジン250からの全ての分析結果を、編集し、一箇所に集め、集約し、又は、組み合わせることで、元々はDUT20(図2)から取得された信号の多くの特性を分析できる。
【0055】
更に、複数の分析エンジン250を多数の異なるコンピューティング・リソースに分散させることで、データを並列的に分析することができ、その結果、特定のマシン又はネットワークが分析を実行することによって過負荷にならないようにできる。そして、測定装置30から取り出されたデータは、同じTIDの下で、又は、場合によっては同じTIDでタグ付けされて取り出されるので、全ての分析エンジン250が全く同じデータ上で動作していることが保証される。
【0056】
取り出されたデータを分析エンジン250に送信する例が、図4にループ工程470で示されている。この工程470では、測定装置30から取得したデータを分析エンジン250に送り、上述したように、データに対する分析を実行する。そして、分析エンジン250は、分析結果をリモート・デバイス200に送り返す。これらの結果は、波形表示、周波数領域での表示、パワー・スペクトル表示、変調測定、アイ・チャート、位相及びジッタ測定値、ベクトル表示、周波数及び位相測定値、ノイズ及びゲイン測定値などの表示データの形式であっても良い。概して、分析エンジン250の夫々は、DUTから取得された信号を試験及び測定するために、試験測定装置において典型的に見られる任意のタイプの分析を実行するように動作させても良い。
【0057】
図4は、上述したように、測定装置30から取り出されたデータが単一の分析エンジン250にのみ送られることを示しているが、取り出されたデータのコピーが、複数の分析エンジン250に送られても良い。任意の特定の分析エンジン250は、任意の時点でデータに対して動作し、その分析結果をリモート・デバイス200又は他のデバイスに送り返しても良い(場合によっては、測定装置30に送り返しても良く、このとき、分析結果が分析エンジン90(図2)によって分析されても良い)。
【0058】
次いで、全ての別々の分析エンジン250によって実行される全ての分析は、リモート・デバイス200又は他のデバイスに送り返され、編集することで、様々な分析エンジン250からの出力に同じタイム・スタンプ又はトリガの索引(インデックス)を付し、互いを容易に比較できようにして、元々は測定装置30が取得した波形信号に由来するデータをユーザが分析するのを支援しても良い。このようなプロセスにより、ユーザは、おそらく複数の別々のデバイスを使用して、複雑な分析を実行でき、しかも、全ての分析が測定装置30によって取得された全く同じデータに対して実行されることを保証できる。
【0059】
また、個々の分析エンジン250によって実行される分析は、ローカル・ネットワーク、エッジ・ネットワーク及びクラウド・コンピューティング・ネットワークを含む複数のコンピューティング・リソースに分散されても良い。分析エンジン250の分析機能を複数のコンピューティング・リソースに分散させることによって、ユーザは、分析が完了するまで、その測定装置の状態に関してデータの変化なしに、複雑なデータ分析を広く展開できる。例えば、上述のインタフェース機構により、クライアントは、クライアント・ライブラリを介して測定装置データを要求し、現在実行中のTIDを受け取ることができる。
【0060】
測定装置30から取り出されたデータをリモート・デバイス200が受信した後、リモート・デバイスは、図4の工程480に図示されるように、測定装置から切断され、通信ポータルを閉じることができる。図4では、この切断工程480は、工程460において、データが分析のために送信された後に発生するものとして図示されているが、切断の前に、取り出されたデータが分析のために送信されることは、厳密には必要ではない。他の実施形態では、リモート・デバイス200は、それ自身での又は他のデバイスでの後の処理のために、情報を記憶するだけでも良い。
【0061】
他の実施形態では、測定装置30に一連のデータ・サンプルを取得するように指示し、データ・サンプルの夫々がリモート・デバイスに個別に記憶されることによって、リモート・デバイス200が、複数の異なるデータ・サンプルを取得しても良い。次いで、全てのサンプルが取得された後、それらは、上述のように、分析のために様々な分析エンジン250に送られても良い。別々のデータ・サンプルの夫々は、固有のTIDに関連付けられているので、複数の様々な分析エンジン250によって処理される場合であっても、また、サンプルが測定装置30から取り出されたときよりも後の時間に分析される場合であっても、同じサンプルに対して分析が実行されていることを保証できる。
【0062】
図4を参照した上記の説明では、リモート・デバイス200が、外部での分析のためにメイン測定装置で取得されたデータを取り出し、測定装置とは別のデバイス上で実行する例を説明したが、本発明の実施形態は、更に、1台以上の測定装置の分析及び視覚化機能を使用して、別のデバイス又は測定装置から取得されたデータに対して、そのような分析及び視覚化を実行することもできる。
【0063】
このような例では、リモート・デバイス200がメイン測定装置30に結合した後、上述したように、リモート・デバイスは、最初に、メイン測定装置に記憶されるデータのコピーをメイン測定装置に送信する。上述した実施形態とは異なるのは、分析対象のこのデータは、メイン測定装置30によって取得されたのではなく、別の装置又は別のタイプのデバイスによって取得されたとして良いことである。例えば、リモート・デバイス200が、4つの異なるメイン測定装置30で分析及び視覚化するデータのセットを提供し、4つの異なるメイン測定装置30の夫々は、入力波形などの分析対象の同じデータの異なる特性を分析するように設定されても良い。
【0064】
このようにして、リモート・デバイス200は、まず、4つのメイン測定装置30の夫々に接続し、次いで、上述したプロトコルを使用して、4つのメイン測定装置の夫々に同じ入力波形を記憶させる。次いで、リモート・デバイス200は、各メイン測定装置30に対してコマンドを送信して、各測定装置内に記憶された入力波形に対して、その個別の分析を実行し、各メイン測定装置で、個別のメイン測定装置夫々に関する特定の分析を示す視覚情報を生成する。次いで、これらの視覚情報は、更に編集されるか、さもなければ最終出力に組み合わされて、リモート・デバイス200のユーザが、同時に動作している全ての視覚情報を見ることができる。本発明の実施形態を用いると、複数の測定装置を用いて、このような並列分析を行うことを可能にするコーディネートが可能になる。
【0065】
本発明の上述の説明は、単に本発明を説明するために設定されたものであり、限定することを意図するものではない。本発明の構成要素を組み込んで、開示された実施形態を変更することは、当業者であれば行えるので、本発明は、本発明の範囲内の全てを含むと解釈されるべきである。
実施例
【0066】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0067】
実施例1は、試験測定システムであって、測定装置と、通信ネットワークとを具え、上記測定装置は、被試験デバイス(DUT)からの入力信号を受信するように構成された入力ポートと、上記入力信号から導出されたデータを記憶するように構成されたメモリと、リモート・アクセス・マネージャと、上記測定装置の現在の動作状態を維持するように構成された測定装置状態マネージャとを有し、上記測定装置は、上記通信ネットワークを通してリモート・デバイスに結合でき、該リモート・デバイスは、上記通信ネットワークを介して上記入力信号から導出され、記憶された上記データの少なくとも一部を上記測定装置から受信するように構成され、更に、記憶された上記データの一部が上記測定装置によって取得されたときの上記測定装置の現在の動作状態を特定するトランザクション識別子(identifier:ID)を受信するように構成されている。
【0068】
実施例2は、実施例1による試験測定システムであって、上記リモート・デバイスは、上記通信ネットワークを介してコマンドを送信することにより、上記測定装置の状態を制御するように更に構成されている。
【0069】
実施例3は、先行する実施例のいずれかによる試験測定システムであって、上記リモート・アクセス・マネージャは、上記リモート・デバイスから受信したリモート・プロシージャ・コール(RPC)を使用して動作するように構成されている。
【0070】
実施例4は、先行する実施例のいずれかによる試験測定システムであって、上記通信ネットワークがインターネット・プロトコルを使用する。
【0071】
実施例5は、先行する実施例のいずれかによる試験測定システムであって、上記リモート・デバイスは、測定装置によって取得され、記憶された上記データの一部について分析を実行するように構成された分析エンジンを更に有する。
【0072】
実施例6は、先行する実施例のいずれかによる試験測定システムであって、上記リモート・デバイスは、上記測定装置によって取得され、記憶された上記データの一部を1つ以上の分析エンジンに送信するように構成されている。
【0073】
実施例7は、実施例6による試験測定システムであって、上記1つ以上の分析エンジンは、それぞれ異なるコンピューティング・リソース上で動作する。
【0074】
実施例8は、実施例7による試験測定システムであって、コンピューティング・リソースの少なくとも1つは、ローカル・ネットワーク、エッジ・ネットワーク又はクラウド・ネットワークである。
【0075】
実施例9は、実施例6~8のいずれかによる試験測定システムであって、上記リモート・デバイスは、トランザクション識別子を1つ以上の分析エンジンに送信するように更に構成されている。
【0076】
実施例10は、試験測定装置に結合されるリモート・デバイスであって、上記リモート・デバイスで生成されたコマンドを受信し、試験測定装置にコマンドを送信して試験測定装置との通信チャンネルを開くように構成されたアプリケーション・プログラム・インタフェースと、該アプリケーション・プログラム・インタフェースが、上記試験測定装置の現在の状態を要求するコマンドを上記試験測定装置に送信するように更に構成され、上記試験測定装置の現在の状態を記憶するよう構成された上記リモート・デバイス上のストレージと、上記アプリケーション・プログラム・インタフェースが、上記試験測定装置からデータを受信し、該データが上記リモート・デバイスで受信されたときの上記試験測定装置の状態を特定する上記試験測定装置のアップデートされた現在の状態を受信するように更に構成され、上記試験測定装置の記憶された状態を上記試験測定装置のアップデートされた現在の状態と比較するように構成されたコンパレータとを具える。
【0077】
実施例11は、実施例10によるリモート・インタフェースであって、上記試験測定装置から受信したデータの少なくとも一部について分析を実行するように構成された分析エンジンを更に具える。
【0078】
実施例12は、実施例10又は11によるリモート・インタフェースであって、受信した上記データと、上記リモート・デバイスが上記データを受信したときの上記試験測定装置の状態を表すトランザクション識別子とを送信するように構成された送信モジュールを更に具える。
【0079】
実施例13は、試験測定システムを動作させる方法であって、上記方法は、測定装置において被試験デバイス(DUT)からの入力信号を受信する処理と、上記入力信号から導出されたデータを記憶する処理と、上記入力信号から導出されたデータが記憶された時点における上記測定装置の状態を示すトランザクション識別子を記憶する処理と、上記測定装置において、リモート・デバイスからの要求を受信した後に、記憶された上記データの少なくとも一部を上記リモート・デバイスに送信する処理と、上記トランザクション識別子を上記リモート・デバイスに送信する処理を具える。
【0080】
実施例14は、実施例13による方法であって、上記測定装置において、上記リモート・デバイスから通信チャンネルを開く要求を受信する処理と、上記リモート・デバイスとの通信チャンネルを開く処理とを更に具える。
【0081】
実施例15は、実施例14による方法であって、上記リモート・デバイスからの要求を受信する処理が、リモート・プロシージャ・コールを受信する処理を含む。
【0082】
実施例16は、先行する実施例の方法のいずれかであって、上記リモート・デバイスにおいて、記憶されたデータの少なくとも一部について分析を行う処理を更に具える。
【0083】
実施例17は、先行する実施例の方法のいずれかであって、記憶された上記データの少なくとも一部を外部デバイスに送信する処理を更に具える。
【0084】
実施例18は、実施例17による方法であって、上記トランザクション識別子を外部デバイスに送信する処理を更に含む。
【0085】
実施例19は、先行する実施例の方法いずれかであって、記憶された上記データ及び上記トランザクション識別子の少なくとも一部を2つ以上の外部デバイスに送信する処理を更に具える。
【0086】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0087】
当業者であれば、図中の要素が単純さ及び明瞭さのために図示されており、同じ縮尺で描かれていない可能性があることが理解できよう。例えば、任意のフローチャート、フロー図などは、様々なプロセスを表し、これらは、コンピュータ可読媒体において実質的に表され、コンピュータ又はプロセッサ(そのようなコンピュータ又はプロセッサが明示的に示されているかどうかにかかわらず)によって実行されることが理解できよう。更に、様々なプロセス及び工程は、1つの動作が後続の動作に先行すること又は状況的にそれらの可能性を排除することが具体的に説明されていない限り、任意の順序で実行されても良い。図面全体を通して、同様の参照番号は、同一又は類似の要素、機能及び構造を描写するために使用されることに留意されたい。
【0088】
以下の説明で使用される用語および単語は、書誌的な意味に限定されるものではなく、単に本発明の実施形態の明確かつ一貫した理解を可能にするために本明細書で使用されるものである。したがって、例示的な実施形態の説明は、例示の目的のみに提供され、本発明及びそれらの等価物を限定する目的ではないことが、当業者には明らかであろう。
【0089】
単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈上、明らかにそうでない場合を除き、複数の参照語を含むと理解されるべきである。
【0090】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0091】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0092】
20 被試験デバイス(DUT)
30 測定装置
32 入力ポート
40 プロセッサ
42 メモリ
52 トリガ・プロセッサ
52 ユーザ入力部
54 メイン表示部
60 アクイジション・メモリ
70 測定ユニット
80 リモート・アクセス・マネージャ
100 リモート・アクセス・デバイス
200 リモート・アクセス・デバイス
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】