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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108662
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20230731BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20230731BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20230731BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20230731BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20230731BHJP
   H04N 1/047 20060101ALI20230731BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G02B26/12
G02B26/10 A
B41J2/47 101M
G03G15/01 112A
H04N1/047
H04N1/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009820
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩輔
【テーマコード(参考)】
2C362
2H045
2H270
2H300
5C072
【Fターム(参考)】
2C362BA04
2C362BA36
2C362BA50
2C362CA18
2C362CA22
2C362CA39
2C362CB35
2H045AA01
2H045BA22
2H045BA32
2H045CA88
2H045CA98
2H045CA99
2H270KA04
2H270KA09
2H270KA28
2H270KA32
2H270LA12
2H270LA22
2H270LA35
2H270LA70
2H270LD03
2H270MB18
2H270MC22
2H270MC23
2H270MC24
2H270MD05
2H270MD06
2H270MF01
2H270MF08
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
2H300EB07
2H300EB12
2H300EB21
2H300EC02
2H300EC05
2H300EH16
2H300EJ09
2H300GG22
2H300GG23
2H300QQ10
2H300RR13
2H300RR17
2H300RR38
2H300TT02
2H300TT03
2H300TT04
2H300TT06
5C072AA03
5C072BA04
5C072DA04
5C072HA02
5C072HA12
5C072HB16
5C072XA01
5C072XA05
(57)【要約】
【課題】光書込手段の光偏向器の動作速度が変更されても、画像間における被転写材上の画像位置ずれを抑制する。
【解決手段】画像情報に応じた書込光を光偏向器202により偏向する光書込手段により、複数の感光体504の表面を主走査方向に沿って繰り返し走査し、画像情報に応じた潜像を複数の感光体表面にそれぞれ書き込み、複数の感光体表面上の潜像を可視像化した各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置であって、光偏向器の動作速度を制御する光偏向器制御手段350と、光偏向器の動作速度を基準動作速度から変更することによって生じる複数の感光体の各画像間における被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、複数の感光体のうちの少なくとも1つの感光体の画像の被転写材への転写開始タイミングを、基準動作速度のときのものから変更する転写タイミング変更手段350とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に応じた書込光を光偏向器により偏向する光書込手段により、表面移動する複数の感光体の表面を主走査方向に沿って繰り返し走査して、前記画像情報に応じた潜像を該複数の感光体表面にそれぞれ書き込み、該複数の感光体表面上の潜像を可視像化した各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置であって、
前記光偏向器の動作速度を制御する光偏向器制御手段と、
前記光偏向器の動作速度を基準動作速度から変更することによって生じる前記複数の感光体の各画像間における前記被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、該複数の感光体のうちの少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを、前記基準動作速度のときのものから変更する転写タイミング変更手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記転写タイミング変更手段は、前記少なくとも1つの感光体上への潜像の書込開始タイミングを変更することにより、該画像の前記被転写材への転写開始タイミングを変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記転写タイミング変更手段は、前記動作速度が前記基準動作速度である場合、前記複数の感光体の各画像間における前記被転写材上での画像位置を互いに一致させるための基準位置合わせパラメータを用いて、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定し、前記光偏向器制御手段が前記動作速度を前記基準動作速度から変更する場合、変更後の動作速度に対応する調整パラメータを用いて、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記基準位置合わせパラメータは、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定するタイミング決定パラメータに加算される加算値であり、
前記調整パラメータは、前記基準位置合わせパラメータに乗算される補正係数であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の画像形成装置において、
前記転写タイミング変更手段は、感光体ごとに異なる調整パラメータを用いて、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、書込光を光偏向器により偏向する光書込手段により、表面移動する感光体の表面を主走査方向に沿って繰り返し走査して書き込んだ感光体表面上の潜像を可視像化した画像を被転写材上に転写する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、副走査方向(感光体の表面移動方向)の画像倍率を微調整するために、ポリゴンミラー(光偏向器)の回転数(動作速度)を制御する書込駆動制御手段(光偏向器制御手段)を備えた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、この微調整によって生じる主走査方向の画像倍率の変化をキャンセルするため、書込駆動制御手段により書込クロック周波数も制御する。具体的には、書込駆動制御手段は、副走査方向倍率調整値と、各副走査方向倍率調整値による主走査方向の画像倍率変化をキャンセルするための主走査方向倍率調整値との対応関係を記述した倍率補正テーブルを用いる。そして、書込駆動制御手段は、副走査方向倍率調整値に応じてポリゴンミラーの回転数を制御するとともに、対応する主走査方向倍率調整値に応じて書込クロック周波数を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の画像形成装置では、複数の感光体の表面上に光書込手段によりそれぞれ書き込み、これらの感光体表面上の潜像を可視像化した各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する場合に発生する色ずれを抑制できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、画像情報に応じた書込光を光偏向器により偏向する光書込手段により、表面移動する複数の感光体の表面を主走査方向に沿って繰り返し走査して、前記画像情報に応じた潜像を該複数の感光体表面にそれぞれ書き込み、該複数の感光体表面上の潜像を可視像化した各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置であって、前記光偏向器の動作速度を制御する光偏向器制御手段と、前記光偏向器の動作速度を基準動作速度から変更することによって生じる前記複数の感光体の各画像間における前記被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、該複数の感光体のうちの少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを、前記基準動作速度のときのものから変更する転写タイミング変更手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光書込手段の光偏向器の動作速度が基準動作速度から変更されても、複数の像担持体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るカラープリンタの主要構成を示す模式図。
図2】同カラープリンタにおけるM-Yユニットの入射光学系のレイアウトを示す模式図。
図3】同M-Yユニットの走査光学系のレイアウトを示す模式図。
図4】同カラープリンタにおける書込制御部の構成を示す説明図。
図5】(a)は、作像する本来の画像を示す図。(b)は(a)の画像が副走査方向に伸びた状態を示す図。(c)は、副走査方向の画像の伸びをキャンセルした状態(これに連動して主走査方向に画像が伸びた状態)を示す図。
図6】(a)は、画像が主走査方向に伸びた状態における書込クロックと感光体ドラム上の位置との関係を示す説明図。(b)は、(a)の画像について主走査倍率を調整した状態における書込クロックと感光体ドラム上の位置との関係を示す説明図。
図7】同書込制御部の制御フローの概要を示すフローチャート。
図8】光偏向器の回転数を変更する前と後における、中間転写ベルト上における感光体ドラムの各主走査1ラインの画像位置ずれ(色ずれ)が発生した様子を示す説明図。
図9】(a)は、光偏向器の回転数の変更後において、補正前における各感光体の書込開始タイミングを示すタイミングチャート。(b)は、光偏向器の回転数の変更後において、補正後における各感光体の書込開始タイミングを示すタイミングチャート。
図10】実施形態における各感光体ドラムの書込開始タイミングの補正処理の流れを示すフローチャート。
図11】光偏向器を基準回転数で動作させた状態で、中間転写ベルト上に形成された各色の色合わせ修正パターンの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、画像形成装置としてのカラープリンタに適用した一実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るカラープリンタ500の主要構成を示す模式図である。
このカラープリンタ500は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のトナー像を互いに重ね合わせることにより、フルカラー画像を形成することができるタンデム方式の多色カラープリンタである。このカラープリンタ500は、光書込手段としての光書込装置100、4つの感光体ドラム501,502,503,504を備えている。また、4つのクリーニングユニット605Y,605M,605C,605K、4つの帯電装置602Y,602M,602C,602Kを備えている。また、現像ローラ603Y,603M,603C,603Kを備えた4つの現像装置604Y,604M,604C,604Kも備えている。さらに、被転写体としての中間転写体である中間転写ベルト606、二次転写ローラ613、定着装置610、給紙コロ608、レジストローラ対609、排紙ローラ612、排紙トレイ611なども備えている。
【0010】
感光体ドラム501、クリーニングユニット605K、帯電装置602K、現像ローラ603K、現像装置604Kは、ブラック画像を形成する画像ステーション(以下「Kステーション」という。)を構成する。感光体ドラム502、クリーニングユニット605C、帯電装置602C、現像ローラ603C、現像装置604Cは、シアン画像を形成する画像ステーション(以下「Cステーション」という。)を構成する。感光体ドラム503、クリーニングユニット605M、帯電装置602M、現像ローラ603M、現像装置604Mは、マゼンタ画像を形成する画像ステーション(以下「Mステーション」という。)を構成する。感光体ドラム504、クリーニングユニット605Y、帯電装置602Y、現像ローラ603Y、現像装置604Yは、イエロー画像を形成する画像ステーション(以下「Yステーション」という。)を構成する。
【0011】
各感光体ドラム501,502,503,504は、いずれも、その周面に感光層を備えており、回転機構によって図1中矢印方向へ回転駆動する。各帯電装置602Y,602M,602C,602Kは、対応する感光体ドラム501,502,503,504の表面を一様に帯電させる。
【0012】
光書込装置100は、ブラック用感光体ドラム501及びシアン用感光体ドラム502を露光走査するK-Cユニット100Aと、マゼンタ用感光体ドラム503及びイエロー用感光体ドラム504を露光走査するM-Yユニット100Bとから構成されている。光書込装置100は、各々対応する感光体ドラム表面を被走査面として、画像データに基づいた点灯制御で書込光(走査光)を照射し、感光体ドラム表面に静電潜像を形成する。ここで形成された静電潜像は、感光体ドラム501,502,503,504の回転に伴って、現像装置604Y,604M,604C,604Kの現像ローラと対向する現像領域へ搬送される。
【0013】
各現像装置604Y,604M,604C,604Kには、帯電したトナーを担持する現像ローラが備わっている。現像ローラには所定の現像バイアスが印加されており、これにより形成される現像電界の作用によって、現像ローラ上のトナーが感光体ドラム上の静電潜像へ付着する。これにより、感光体ドラム501,502,503,504上には、トナーが付着した像(以下「トナー画像」という。)が形成される。
【0014】
このようにして形成されたトナー画像は、感光体ドラム501,502,503,504の回転に伴って中間転写ベルト606と対向する一次転写領域へ搬送される。そして、各感光体ドラム501,502,503,504上におけるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、互いに重なり合うタイミングで中間転写ベルト606上に順次一次転写される。これにより中間転写ベルト606上に多色のカラー画像が形成される。各クリーニングユニット605Y,605M,605C,605Kは、対応する感光体ドラム501,502,503,504の表面に転写されずに残った転写残トナーを除去する。
【0015】
一方、記録材である記録紙510は、給紙コロ608によって1枚ずつレジストローラ対609へ搬送する。レジストローラ対609は、所定のタイミングで記録紙510を中間転写ベルト606と二次転写ローラ613とが対向する二次転写領域へ送る。この二次転写領域において、中間転写ベルト606上の多色のトナー画像が記録紙510に二次転写される。多色のトナー画像が転写された記録紙510は、その後、定着装置610に送られる。定着装置610は、熱と圧力により記録紙510上のトナー画像を記録紙に定着させる。定着後の記録紙510は、排紙ローラ612を介して排紙トレイ611上に排紙される。
【0016】
次に、光書込装置100の構成及び動作について説明する。
光書込装置100を構成するK-Cユニット100AとM-Yユニット100Bとは、その基本構成が同じであるため、以下の説明ではM-Yユニット100Bを用いて光書込装置100の構成及び動作を説明する。なお、以下の説明では、適宜、色分け符号であるY、M、C、Kを省略する。
【0017】
図2は、M-Yユニット100Bの入射光学系のレイアウトを示す模式図である。
光源ユニット101は、直線偏光にてレーザ光を射出する面発光型レーザ等からなる光源102と、光源102から射出されたレーザ光を円偏光に変換する1/4波長板105とを有する。また、1/4波長板105で円偏光に変換されたレーザ光を平行光にするコリメートレンズ106と、コリメートレンズ106で平行化されたレーザ光を切り取るアパーチャ107とを有する。これらの光学部品102,105,106,107は、光源ホルダに対して所定の位置に位置決めされて一体的に組み付けられている。光源ユニット101から射出されるレーザ光は、入射光学系を介して、光走査手段としての光偏向器202へ入射する。
【0018】
入射光学系は、光源ユニット101から射出されたレーザ光を副走査方向(図2中紙面前後方向)で2つに分割する偏向ビームスプリッタ(PBS)203を備えている。また、2つに分割されたレーザ光L1,L2の偏光特性を直線偏光から円偏光に変換する1/4波長板204を備えている。また、円偏光に変換された各レーザ光L1,L2を、光偏向器202に搭載される2つの回転多面鏡(ポリゴンミラー)202a,202bのミラー面上で結像させるシリンドリカルレンズ205を備えている。シリンドリカルレンズ205は、円偏光に変換されたレーザ光を副走査方向についてのみ集光機能を持っている。
【0019】
このような入射光学系によって所定のレーザプロファイルに形成された各レーザ光L1,L2は、光偏向器202の各回転多面鏡202a,202bのミラー面上にそれぞれ結像される。光偏向器202は、副走査方向に平行な回転軸を中心に回転多面鏡202a,202bを一体的に所定の回転数(動作速度)で安定駆動させている。このように回転している回転多面鏡202a,202bのミラー面にレーザ光L1,L2が入射することで、図2に示すように、レーザ光L1,L2が主走査方向へ走査される。
【0020】
本実施形態では、各感光体ドラム501,502,503,504の主走査方向上流側に、先端同期センサ311が設けられている。この先端同期センサ311がレーザ光L1,L2を検出すると、先端同期センサ311から先端同期信号が出力される。後述する書込制御部では、この先端同期信号が出力されるタイミングを基準に、画像データに基づいた点灯制御を開始し、潜像の書込開始タイミングや、主走査方向における各走査線の書込開始タイミングの同期をとる。
【0021】
図3は、M-Yユニット100Bの走査光学系のレイアウトを示す模式図である。
光偏向器202によって走査されたレーザ光のうちの一方のレーザ光L1(上段回転多面鏡202aのミラー面で走査されたレーザ光)は、走査レンズ301及び長尺レンズ302を経て、防塵ガラス305を透過する。そして、感光体ドラム504の表面で等速走査される。この光路上には、レーザ光L1を折り返すためのミラー303a,303b,303cが設置されている。また、他方のレーザ光L2(下段回転多面鏡202bのミラー面で走査されたレーザ光)は、走査レンズ301及び長尺レンズ302を経て、防塵ガラス305を透過して、感光体ドラム503の表面で等速走査される。この光路上には、レーザ光L2を折り返すためのミラー304が設置されている。
【0022】
上述した入射光学系、光偏向器202及び走査光学系は、いずれも、図3に示す保持部材としての光学ハウジング400に一体的に設けられている。
【0023】
次に、画像の副走査方向における倍率(以下「副走査倍率」という)を調整する方法について説明する。
図4は、書込制御部350の構成を示す説明図である。
画像の副走査倍率を調整する場合、書込光を生成するための画像データのデータ処理を行って副走査倍率を調整することも可能である。しかしながら、副走査倍率を大きく変える場合には、画像データを格納するメモリ容量が肥大化し、データ処理を行うASIC等のデータ処理部351の処理負荷も大きくなるので、書込制御部350のコスト増になり得る。
【0024】
そのため、書込制御部350では、データ処理による副走査倍率の調整機能を持たない安価なデータ処理部351を採用する一方、副走査倍率の調整は、光偏向器202の回転数(動作速度)を調整することにより行う。例えば、副走査倍率を小さくする場合には、光偏向器202の回転数を上げ、感光体ドラム504上における書込光の走査線の間隔を狭め、副走査倍率を大きくする場合には、光偏向器202の回転数を下げ、感光体ドラム504上における書込光の走査線の間隔を広げる。なお、データ処理部351による副走査倍率の調整と、光偏向器202の回転数調整による副走査倍率の調整とを併用するものであってもよい。
【0025】
具体例を挙げると、図5(a)に示す画像の画像データに基づいて画像形成するときに、図5(b)に示すように副走査方向に画像が伸びて形成されてしまうような場合(B2>B1)、副走査倍率を小さくするために光偏向器202の回転数を上げる。この場合、感光体ドラム504上における書込光の走査線の間隔が狭まるため、副操作倍率が小さくなる。その結果、図5(c)に示すように、副走査方向の画像の伸びをキャンセルすることができる。
【0026】
光偏向器202の回転数調整によって副走査倍率を調整する場合、主走査方向における走査速度も変更されることになる。この場合、図4に示すように繰り返しパルス光である書込光のクロックパルスごとに書き込まれる静電潜像の1ドットの間隔が変化することになるので、主走査方向における画像倍率(以下「主走査倍率」という)も変更されてしまう。例えば、副走査倍率を小さくするために光偏向器202の回転数を上げると、書込光の走査速度が上がるので、主走査倍率が大きくなり、副走査倍率を大きくするために光偏向器202の回転数を下げると、書込光の走査速度が下がるので、主走査倍率が小さくなる。
【0027】
図5(a)~(c)に示す具体例でいえば、副走査方向の画像の伸びをキャンセルするために光偏向器202の回転数を上げた場合、書込光の走査速度が上がるので、書込光のクロックパルスごとに書き込まれる静電潜像の1ドットの間隔が広がる。そのため、主走査倍率が大きくなり、図5(c)に示すように、主走査方向に画像が伸びてしまう(A2>A1)。
【0028】
このように、光偏向器202の回転数調整によって副走査倍率を調整する場合、これに連動して主走査倍率が変わってしまうので、主走査倍率の変化分をキャンセルすることが必要となる。そのため、例えば、書込制御部350では、光偏向器202の回転数調整によって副走査倍率を調整する際、書込クロック周波数を調整することにより主走査倍率を調整して主走査倍率の変化分をキャンセルする。
【0029】
図6(a)及び(b)は、書込クロック周波数を調整することにより主走査倍率を調整する場合の説明図である。
図5(a)~(c)に示す具体例のように、副走査方向の画像の伸びをキャンセルするために光偏向器202の回転数を上げた場合、書込光のクロックパルスごとに書き込まれる静電潜像の1ドットの間隔が広がる。そのため、図6(a)に示すように、主走査方向の画像長さが本来のA1よりも長いA2になり、主走査倍率が大きくなってしまう。
【0030】
この主走査倍率の変化分をキャンセルするためには、書込光の書込クロック周波数を上げればよい。これによれば、光偏向器202の回転数上昇によって書込光の走査速度が上がっても、書込光の書込クロック周波数が上がる結果、図6(b)に示すように、書込光のクロックパルスごとに書き込まれる静電潜像の1ドットの間隔が狭まる。その結果、主走査方向の画像長さが本来のA1に戻り、主走査倍率の変化分がキャンセルされる。
【0031】
図7は、書込制御部350の制御フローの概要を示すフローチャートである。
静電潜像の書き込み中(潜像書込期間中)に光偏向器202の回転数(動作速度)を変更すると、1つの画像内で副走査倍率及び主走査倍率が変化してしまい、画像歪みが発生してしまう。そのため、一般に、副走査倍率を調整するための光偏向器202の回転数変更は、非潜像書込期間中(ページ間)で行う。具体的には、書込制御部350の制御部352は、用紙ゲート信号をモニタし(S1)、ネゲートしたタイミングで(S1のYes)、副走査倍率の調整のための光偏向器202の回転数変更を行う(S2)。このとき、制御部352は、入力される副走査倍率情報に基づき、光偏向器202の回転数が当該副走査倍率情報の示す副走査倍率に対応した回転数となるように、光偏向器202のモータ202cを制御する。
【0032】
また、制御部352は、光偏向器202の回転数変更に伴って生じる主走査倍率の変化をキャンセルするために、主走査倍率の調整も行う(S3)。このとき、制御部352は、光偏向器202の変更後の回転数に基づき、書込クロック周波数が当該変更後の回転数に対応する周波数となるように、光源102を制御する。
【0033】
ここで、上述したように、光偏向器202の回転数(動作速度)が変更されると、感光体ドラム501,502,503,504の各画像間における中間転写ベルト606上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生し得る。具体的には、光偏向器202の回転数を基準回転数(基準動作速度)から変更した場合、この変更に伴って各感光体ドラム501,502,503,504への潜像の書込開始タイミングが変化する構成であると、色ずれが発生する。
【0034】
図8は、光偏向器202の回転数を変更する前と後における、中間転写ベルト606上における感光体ドラム501,502,503,504の各主走査1ラインの画像位置(互いに重なるように形成される各画像の位置。例えば各画像の先端位置)を示す説明図である。
【0035】
光偏向器202の回転数の変更前、すなわち、光偏向器202の回転数が基準回転数(基準動作速度)である場合であれば、図8の下側に図示された中間転写ベルト606に示すように、色ずれは発生しない。しかしながら、本実施形態では、各感光体ドラム501,502,503,504への潜像の書込開始タイミングが、所定の印刷開始タイミングからの光偏向器202による走査回数に基づいてそれぞれ制御される。詳しくは、書込制御部350は、先端同期センサ311がレーザ光を検出する回数をカウントしており、このカウント数が所定のカウント数に達したら、書込開始タイミングが到来したと判定する。
【0036】
このようにして各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングを制御するため、光偏向器202の回転数が変更されると、この変更に伴って各感光体ドラム501,502,503,504への潜像の書込開始タイミングが変化してしまう。その結果、例えば、光偏向器202の回転数が遅くなるように変更された場合、図8の上側に図示された中間転写ベルト606に示すように、色ずれが発生する。これは、下流側の感光体ドラム501,502,503の転写位置Pm,Pc,Pkに対し、当該感光体ドラム501,502,503上の画像先端Tm,Tc,Tkよりも、上流側の感光体ドラム502,503,504から転写された中間転写ベルト606上の画像先端Ty,Tm,Tcの方が先に到達するためである。
【0037】
そこで、本実施形態では、光偏向器202の回転数の変更によって生じる色ずれの量が小さくなるように、少なくとも1つの感光体ドラムの画像の中間転写ベルト606への転写開始タイミングを変更(補正)する。具体的には、例えば、印刷開始タイミングに対する、各感光体ドラム501,502,503,504への光書込装置100による静電潜像の書込開始タイミング(画像形成開始タイミング)を変更(補正)する。
【0038】
図9(a)及び(b)は、光偏向器202の回転数の変更後において、各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングを補正する前と後におけるタイミングチャートである。
なお、図9(a)は、書込開始タイミングの補正前のタイミングチャートであり、図9(b)は、書込開始タイミングの補正後のタイミングチャートである。
【0039】
図9(a)に示すタイミングチャートは、光偏向器202の回転数の変更前、すなわち、光偏向器202の回転数が基準回転数である場合のものである。すなわち、このタイミングチャートでは、光偏向器202の回転数が基準回転数である場合に色ずれが発生しないように、印刷開始タイミングに対する各感光体ドラム501,502,503,504への書込開始タイミングが決定されている。
【0040】
このとき、光偏向器202の回転数が基準回転数から変更された場合、図9(a)のタイミングチャートに従った書込開始タイミングで各感光体ドラム501,502,503,504の潜像書き込み(画像形成)を開始すると、上述のとおり、色ずれが発生する。そこで、本実施形態では、この変更によって生じる感光体ドラム501,502,503,504の各画像間における中間転写ベルト606上での画像位置ずれ(色ずれ)が小さくなるように、感光体ドラム501,502,503,504への書込開始タイミングを変更(補正)する。
【0041】
例えば、光偏向器202の回転数が遅くなるように変更された場合、印刷開始タイミングに対する各感光体ドラム501,502,503,504への書込開始タイミングを、図9(b)のタイミングチャートのものに変更(補正)する。これにより、下流側のM、C、Kの感光体ドラム501,502,503の各画像の中間転写ベルト606への転写開始タイミングがそれぞれ早まり、感光体ドラム501,502,503,504の各画像間における中間転写ベルト606上での画像位置ずれ(色ずれ)が小さくなる又はなくなる。
【0042】
本実施形態において、各感光体ドラム501,502,503,504への書込開始タイミングは、印刷開始タイミング信号を基準に決定される。詳しくは、印刷開始タイミング信号を基準にして、K色の感光体ドラム504への書込開始タイミングを決定し、そして、決定されたK色の感光体ドラム501への書込開始タイミングを基準にして、他の各感光体ドラム502,503,504への書込開始タイミングを決定する。他の各感光体ドラム502,503,504への書込開始タイミングは、K色の感光体ドラム501と他の各感光体ドラム502,503,504との感光体ドラム間距離(両感光体ドラムの一次転写位置間の距離)Lky,Lkm,Lkcとプロセス速度(感光体ドラムの表面移動速度)とから、求められる。
【0043】
そして、光偏向器202の回転数が基準回転数から変更される場合、上述した各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミング(補正前の書込開始タイミング)に対し、変更後の回転数に応じた補正係数を乗算して、各感光体ドラムの書込開始タイミングを補正する。すなわち、以下の式(1)に従い、各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングをそれぞれ補正する。
補正後の書込開始タイミング=補正前の書込開始タイミング×補正係数 ・・・(1)
【0044】
なお、前記補正係数(調整パラメータ)は、例えば、以下の式(2)のように、光偏向器202の変更前の回転数(基準回転数)と変更後の回転数との比率から求められる。
補正係数 = 変更後回転数 ÷ 基準回転数 ・・・(2)
【0045】
図10は、本実施形態における各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングの補正処理の流れを示すフローチャートである。
画像形成指示(印刷ジョブ)が入力されると、制御部352は、所定の表面移動速度で感光体ドラム501,502,503,504を駆動させるとともに、中間転写ベルト606が基準速度で表面移動するように駆動モータを制御し、画像形成動作を開始する(S10)。このときの各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングは、制御部352の記憶部に記憶されている基準書込開始タイミングの値(タイミング決定パラメータ)を用いて行われる。
【0046】
この基準書込開始タイミングの値は、初期時においては、色ずれが発生しないように理想的な設計値から算出された値であるが、経時的には、直近に行われた後述の基準書込開始タイミング修正処理によって修正された書込開始タイミングの値である。
【0047】
基準書込開始タイミング修正処理を実行する条件が満たされると、制御部352は、光偏向器202を基準回転数で動作させた状態で、基準書込開始タイミング修正処理を実行する。基準書込開始タイミング修正処理では、まず、基準書込開始タイミング修正用のパターン画像(以下「色合わせ修正パターン」という。)を中間転写ベルト606上に形成する(S12)。そして、中間転写ベルト606上に形成された色合わせ修正パターンを、検知手段としてのパターン検知センサ26によって検知する(S13)。
【0048】
図11は、光偏向器202を基準回転数で動作させた状態で、中間転写ベルト606上に形成された各色の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPc,TPkの一例を示す説明図である。
基準となるK色の色合わせ修正パターンTPkについては、所定の基準書込開始タイミング(固定のタイミング)で書き込まれて形成される。一方、他の色の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPcは、制御部352の記憶部に記憶されている基準書込開始タイミングの値に従い、中間転写ベルト606上で副走査方向に規定の間隔が開くように形成される。
【0049】
基準となるK色の感光体ドラム501の色合わせ修正パターンTPkに対する他色の感光体ドラム502,503,504の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPcの中間転写ベルト606への転写開始タイミング(中間転写ベルト606上の副走査方向位置)は、経時的に変化し得る。例えば、各感光体ドラム501,502,503,504の取付位置誤差(感光体ドラム間距離の誤差)や、温度変化や摩耗等による部品寸法変化による誤差などが発生し、これにより当該転写開始タイミングが変化し得る。上述した基準書込開始タイミング修正処理は、このような経時的な変化を修正するために行われるものである。
【0050】
制御部352は、中間転写ベルト606上に形成された色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPc,TPkのパターン検知センサ26による検知結果に基づいて、K色以外の感光体ドラム502,503,504の基準書込開始タイミングの値を修正する(S14)。具体的には、制御部352は、K色の感光体ドラム501の色合わせ修正パターンTPkと当該感光体ドラム502,503,504の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPcとの間隔をそれぞれ規定の間隔にすることのできるパターン修正値(基準位置合わせパラメータ)を算出する。そして、当該感光体ドラム502,503,504の基準書込開始タイミングの値に、それぞれのパターン修正値を加算して、K色以外の感光体ドラム502,503,504の基準書込開始タイミングの値の修正を行う。その結果、感光体ドラム間距離の誤差や温度変化や摩耗等による部品寸法変化による誤差などの経時的変化によって色ずれが発生する状況になっても、基準書込開始タイミング修正処理の実行により、色ずれの発生が抑制される。
【0051】
ここで、制御部352は、所定の光偏向器回転数変更条件が満たされたとき、光偏向器202の回転数を基準回転数から変更する(S15のYes)。この所定の光偏向器回転数変更条件としては、形成される画像の副走査方向長さが、本来の画像よりも長くなる又は短くなるという副走査倍率誤差を修正する処理を実行する条件などが挙げられる。この場合、光偏向器202の回転数を副走査倍率誤差の大きさに応じた回転数に変更することで、各感光体ドラム501,502,503,504上の走査線間隔(副走査方向における走査線の間隔)が変化し、画像の伸び縮みが修正される。
【0052】
ただし、このとき、光偏向器202の回転数変更に伴い、レーザ光が先端同期センサ311に検出されるタイミングも変わってくるので、先端同期センサ311がレーザ光を検出する時間間隔も変化する。そのため、先端同期センサ311がレーザ光を検出する回数のカウント値が所定のカウント数に達するまでの時間が変わり、各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングが到来する時期が変わってしまう。その結果、各感光体ドラム501,502,503,504に対する潜像の書込開始タイミングが変化して、上述のとおり、感光体ドラム501,502,503,504の各画像間における中間転写ベルト606上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生してしまう。この色ずれを抑制するため、本実施形態では、光偏向器202の変更後の回転数に応じて、上述したように、各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングを補正するための補正係数を算出する(S16)。
【0053】
その後、制御部352は、算出した補正係数を用いて、基準書込開始タイミングを補正する(S17)。そして、制御部352は、画像形成動作を開始する。このときの各感光体ドラム501,502,503,504の書込開始タイミングには、処理ステップS17で補正した補正後の書込開始タイミングを用いる。
【0054】
本実施形態における補正後の書込開始タイミングは、基準となるK色については、書込開始タイミングが印刷開始タイミングと一致しているため、特に補正の必要はない。一方で、補正の必要がある他色における補正後の書込開始タイミングは、以下の式(3-1)~式(3-3)のとおりとなる。
補正後の書込開始タイミング(C色)=
(C色の基準書込開始タイミング+パターン修正値)×補正係数 ・・・(3-1)
補正後の書込開始タイミング(M色)=
(M色の基準書込開始タイミング+パターン修正値)×補正係数 ・・・(3-2)
補正後の書込開始タイミング(Y色)=
(Y色の基準書込開始タイミング+パターン修正値)×補正係数 ・・・(3-3)
【0055】
なお、本実施形態では、補正が必要となる感光体ドラム502,503,504のすべてについて補正係数による補正後の書込開始タイミングを算出しているが、画像形成に使用する感光体ドラムについてのみ補正後の書込開始タイミングを算出するようにしてもよい。この場合、制御部352における処理負荷を軽減することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のトナー像を互いに重ね合わせて画像形成を行う4つのステーションをもつタンデム型の画像形成装置を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、これらのステーションに加えて、これらの色以外のトナー(以下「特色トナー」という。)を用いる1つのステーションを搭載した5つのステーションをもつタンデム型の画像形成装置であってもよい。ここでいう特色トナーとしては、透明トナー、白色トナー、金色トナーなどが挙げられる。
【0057】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、画像情報に応じた書込光を光偏向器202により偏向する光書込手段(例えば光書込装置100)により、表面移動する複数の感光体501,502,503,504の表面を主走査方向に沿って繰り返し走査して、前記画像情報に応じた潜像を該複数の感光体表面にそれぞれ書き込み、該複数の感光体表面上の潜像を可視像化した各画像を被転写材(例えば中間転写ベルト606)上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置(例えばカラープリンタ500)であって、前記光偏向器の動作速度(例えば回転数)を制御する光偏向器制御手段(例えば書込制御部350)と、前記光偏向器の動作速度を基準動作速度から変更することによって生じる前記複数の感光体の各画像間における前記被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、該複数の感光体のうちの少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを、前記基準動作速度のときのものから変更する転写タイミング変更手段(例えば書込制御部350)とを有することを特徴とするものである。
従来、光書込手段により書き込まれた潜像を可視像化して感光体上に形成された画像を被転写材に転写する画像形成装置において、光書込手段の光偏向器の動作速度を基準動作速度から変更する場合がある。例えば、このような画像形成装置では、種々の要因によって、本来の画像よりも感光体あるいは被転写材の表面移動方向(副走査方向)に伸びた画像や縮んだ画像が形成されることがある。このような画像の伸び縮みを副走査倍率誤差と呼ぶ。このような副走査倍率誤差が発生する場合、光書込手段の光偏向器の動作速度を基準動作速度から変更することで、感光体上に形成される潜像を副走査方向に伸縮させて書き込むことができ、副走査倍率誤差を相殺することが可能である。
ところが、画像形成装置の中には、複数の感光体の表面上に光書込手段によってそれぞれ書き込まれた潜像を可視像化した各画像を、被転写材上で互いに重なり合うように転写して画像形成を行う画像形成装置がある。この画像形成装置では、光書込手段の光偏向器の動作速度を基準動作速度から変更した場合、この変更に伴って各感光体への潜像の書込開始タイミングが変化する構成であると、複数の感光体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生する。例えば、各感光体への潜像の書込開始タイミングを、所定の印刷開始タイミングからの光偏向器による走査回数に基づいてそれぞれ制御する場合、光偏向器の動作速度を変更すると、この変更に伴って各感光体への潜像の書込開始タイミングが変化する。このとき、例えば、光偏向器の動作速度を基準動作速度(変更前の動作速度)よりも遅くなるように変更すると、被転写材表面移動方向下流側の感光体の転写位置に対し、当該感光体上の画像先端が到達するよりも、被転写材表面移動方向上流側の感光体から転写された被転写材上の画像先端の方が、先に到達する。そのため、複数の感光体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生する。
そこで、本態様では、このような光偏向器の動作速度の変更によって生じる複数の感光体の各画像間における被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、当該複数の感光体のうちの少なくとも1つの感光体の画像の被転写材への転写開始タイミングを、前記基準動作速度のときのものから変更する。これにより、光偏向器の動作速度が基準動作速度から変更されても、複数の感光体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)を抑制することができる。
【0058】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記転写タイミング変更手段は、前記少なくとも1つの感光体上への潜像の書込開始タイミングを変更することにより、該画像の前記被転写材への転写開始タイミングを変更することを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成によって転写開始タイミングの変更を実現することができる。
【0059】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記転写タイミング変更手段は、前記動作速度が前記基準動作速度である場合、前記複数の感光体の各画像間における前記被転写材上での画像位置を互いに一致させるための基準位置合わせパラメータ(例えば基準書込開始タイミング)を用いて、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定し、前記光偏向器制御手段が前記動作速度を前記基準動作速度から変更する場合、変更後の動作速度に対応する調整パラメータ(例えば補正係数)を用いて、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定することを特徴とするものである。
これによれば、簡易な制御によって転写開始タイミングの変更を実現することができる。
【0060】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記基準位置合わせパラメータは、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定するタイミング決定パラメータ(修正前の基準書込開始タイミング)に加算される加算値(例えばパターン修正値)であり、前記調整パラメータは、前記基準位置合わせパラメータに乗算される補正係数であることを特徴とするものである。
これによれば、より簡易な制御によって転写開始タイミングの変更を実現することができる。
【0061】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記転写タイミング変更手段は、感光体ごとに異なる調整パラメータを用いて、前記少なくとも1つの感光体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定することを特徴とするものである。
これによれば、感光体ごとに調整パラメータを変更することで、経時のズレにも対応できる。
【符号の説明】
【0062】
26 :パターン検知センサ
100 :光書込装置
100A :K-Cユニット
100B :M-Yユニット
101 :光源ユニット
102 :光源
202 :光偏向器
202a :上段回転多面鏡
202b :下段回転多面鏡
202c :モータ
204 :4波長板
205 :シリンドリカルレンズ
301 :走査レンズ
302 :長尺レンズ
303a~303c,304:ミラー
305 :防塵ガラス
311 :先端同期センサ
350 :書込制御部
351 :データ処理部
352 :制御部
400 :光学ハウジング
500 :カラープリンタ
501~504:感光体ドラム
510 :記録紙
602 :帯電装置
603 :現像ローラ
604 :現像装置
605 :クリーニングユニット
606 :中間転写ベルト
608 :給紙コロ
609 :レジストローラ対
610 :定着装置
611 :排紙トレイ
612 :排紙ローラ
613 :二次転写ローラ
L1,L2:レーザ光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2005-059602号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11