(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109159
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230731BHJP
B65H 5/36 20060101ALI20230731BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
G03G15/20 535
B65H5/36
G03G15/00 455
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206634
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2022010295
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 敏夫
【テーマコード(参考)】
2H033
2H072
3F101
【Fターム(参考)】
2H033AA15
2H033BA02
2H033BA03
2H033BA04
2H033BA09
2H033BA10
2H033BA11
2H033BA16
2H033BB01
2H033BB28
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BB36
2H033BB37
2H033BB38
2H033CA04
2H033CA07
2H033CA16
2H033CA39
2H072CB08
2H072HA00
2H072JA04
3F101FA01
3F101FB07
3F101FC11
3F101FE02
3F101LA07
3F101LB05
(57)【要約】
【課題】普通紙両面印刷時のしわ防止およびカール低減と、封筒印刷時のしわ防止とを両立させる定着装置を提供すること。
【解決手段】定着装置は、定着部材(定着ローラ1)と加圧部材(加圧ローラ2)とが押圧当接してニップ部を形成する定着装置であって、支点を中心に回動し、加圧部材を加圧する加圧板(加圧アーム10)と、加圧板の加圧力を調整する加圧力調整装置と、ニップ部へ進入する記録媒体(用紙5)を案内する進入案内部材(入口ガイド7)と、ニップ部から排出された記録媒体を案内する排出案内部材(出口ガイド8)と、加圧部材を、定着部材の回転中心と加圧部材の回転中心とを結ぶ線から記録媒体の搬送方向下流に傾いた方向に、案内するように構成されたガイドと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と加圧部材とが押圧当接してニップ部を形成する定着装置であって、
支点を中心に回動し、前記加圧部材を加圧する加圧板と、
前記加圧板の加圧力を調整する加圧力調整装置と、
前記ニップ部へ進入する記録媒体を案内する進入案内部材と、
前記ニップ部から排出された前記記録媒体を案内する排出案内部材と、
前記加圧部材を、前記定着部材の回転中心と前記加圧部材の回転中心とを結ぶ線から前記記録媒体の搬送方向下流に傾いた方向に、案内するように構成されたガイドと、を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加圧力調整装置は、前記加圧板を、前記支点を中心に複数の回転方向位置に設定可能であり、前記複数の回転方向位置は、前記加圧板によって加圧された加圧部材が普通紙を最大の加圧力で押す最大加圧位置と、前記加圧板によって加圧された加圧部材が封筒を前記最大の加圧力より小さい加圧力で押す封筒用位置とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記最大加圧位置にある前記加圧部材は、前記ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線と、ニップ部中央と前記排出案内部材の先端とを結ぶ直線とがなす排出案内角度を0°から+15°の範囲に設定し、
前記封筒用位置にある前記加圧部材は、前記排出案内角度を-10°から+5°の範囲に設定し、
プラスの角度は、前記定着部材と前記加圧部材とのうちの一つの回転体であって、前記ニップ部において凸形状を有する回転体へ向かって傾斜する、前記排出案内部材の先端を通る直線と、前記ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成され、マイナスの角度は、他の一つの回転体であって、前記ニップ部において凹形状を有する回転体へ向かって傾斜する、前記排出案内部材の先端を通る直線と、前記ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加圧力調整装置は、前記加圧板に接触したカム部材により構成し、前記最大加圧位置と、前記封筒用位置とで、カム部材の回転方向の位置が異なる位置で停止し、モータ駆動もしくは、手動操作レバーにより回転力が加えられる
ことを特徴とする請求項2または3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着部材と前記加圧部材とは、一つの部材で保持される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加圧部材を前記搬送方向下流に移動させる方向を前記部材の形状で決める
ことを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記加圧部材を前記搬送方向下流に移動させる位置を前記部材の形状で決める
ことを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項8】
前記加圧部材を前記搬送方向下流に移動させる位置を、二枚の側板の形状で決める
ことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項9】
前記進入案内部材は、開口部を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項10】
前記進入案内部材は、移動可能に設けられた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置では、用紙を加熱、加圧して搬送するため、用紙通過時に、しわが発生することがある。
例えば、特許文献1では、普通紙と封筒で、定着装置の適切な加圧力、ガイド位置に差異がある為、封筒の定着装置への進入に当たって、加圧力を自動減圧し、それに連動して、入口ガイド(2分割構成の一方)を退避させる動作を減圧の駆動を用いて行っている。
しかしながら、ニップ出口では用紙排出方向を制御していないため、封筒しわ除去効果が不十分となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、普通紙両面印刷時のしわ防止およびカール低減と、封筒印刷時のしわ防止とを両立させる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、定着部材と加圧部材とが押圧当接して定着ニップ部を形成する定着装置であって、
支点を中心に回動し、前記加圧部材を加圧する加圧板と、
前記加圧板の加圧力を調整する加圧力調整装置と、
前記ニップ部へ進入する記録媒体を案内する進入案内部材と、
前記ニップ部から排出された前記記録媒体を案内する排出案内部材と、
前記加圧部材を、前記定着部材の回転中心と前記加圧部材の回転中心とを結ぶ線から前記記録媒体の搬送方向下流に傾いた方向に、案内するように構成されたガイドと、を有するものとする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、普通紙両面印刷時のしわ防止およびカール低減と、封筒印刷時のしわ防止とを両立させる定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態の定着装置の普通紙にトナー像を定着するための第一ニップ形成時の構成例を説明する図である。
【
図2】同定着装置の封筒にトナー像を定着するための第二ニップ形成時の構成例を説明する図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態の定着装置の第一ニップ形成時の加圧機構の構成例を説明する図である。
【
図4】同定着装置の第二ニップ形成時の加圧機構の構成例を説明する図である。
【
図5】比較例の定着装置の第二ニップ形成時の構成例を説明する図である。
【
図6】第一の実施形態の定着装置の第一ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
【
図7】同定着装置の第二ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
【
図8】比較例の定着装置の第二ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
【
図9】
図7の、加圧ローラが定着ローラから離れる退避方向を決める側板形状を説明する図である。
【
図10】
図7の、退避位置を決める側板形状の部分を説明する図である。
【
図11】第二の実施形態の定着装置の第一ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
【
図12】同定着装置の第二ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
【
図13】第三の実施形態の定着装置が有する入口ガイドの一例を説明する図である。
【
図14】同定着装置が有する入口ガイドの他の例を説明する図である。
【
図15】モータ駆動の加圧力調整装置の構成例を説明する図である。
【
図16】手動操作レバーでカムを回転させる構成例の加圧状態を説明する図である。
【
図17】手動操作レバーでカムを回転させる構成例の減圧状態を説明する図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る画像形成装置を説明する概略構成図である。
【
図19】封筒印刷時の表裏搬送量差を説明する図である。
【
図20】封筒印刷時の印字面、非印字面の搬送量分布を説明する図である。
【
図21】普通紙両面印刷時の片面印刷後のカール発生状態で用紙進入時の用紙姿勢例を説明する図である。
【
図22】普通紙両面印刷時の片面印刷後のカール発生状態で用紙進入排出時の用紙姿勢例を説明する図である。
【
図23】普通紙しわ低減の入口ガイドを有する定着装置の構成例を説明する図である。
【
図24】進入案内角度と排出案内角度とを説明する図である。
【
図25】進入案内角度と、封筒片面印字しわ長さおよび普通紙両面印字しわ長さとの関係を説明する図である。
【
図26】排出案内角度と封筒しわ長さとの関係を説明する図である。
【
図27】排出案内角度による用紙の非印字面側へのカールを説明する図である。
【
図28】排出案内角度と普通紙片面印刷時の用紙バックカール量との関係を説明する図である。
【
図29】封筒しわに良好な、入口ガイド、出口ガイド位置での封筒通紙時の表裏送り量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0008】
電子写真方式の画像形成装置では、トナーを用紙に加熱定着させる定着装置は、定着器の上流側の転写部から用紙を搬送して、定着器に進入させる進入案内部材が設けられている。また、定着器の下流側の排紙部へ用紙を搬送して、定着器から排出させる排出案内部材が設けられている。
定着装置は、定着ローラなどの定着部材と、加圧ローラなどの加圧部材とを有している。加圧部材は、定着部材を押圧し、ニップ部を形成する。
定着器のニップ部(「定着ニップ」または「ニップ」とも称する)で用紙を加熱加圧させることでトナー定着するが、ニップ部で、用紙を搬送する過程でしわが発生することがある。両面印刷時において二面目で端部カールした用紙進入の場合には、ニップ部への進入タイミングが加圧部材または定着部材の軸方向でばらつき、しわ発生することが知られている。封筒の場合には、紙を折り曲げて作られた二枚重ねの紙であるため、回転体に挟持搬送される際に、二枚の紙の速度差などによりしわが発生する。特に、坪量80g/m2以下の薄い封筒ではしわが発生しやすい。
また、しわ発生を抑止するため、ニップに侵入する用紙の角度とニップから排出された用紙の角度とが調整される。
【0009】
ここで、
図19から
図29を参照して、しわの発生と、ニップ部の入口および出口の案内部材の角度について説明する。トナー画像を形成する記録媒体の一例の用紙として、普通紙と封筒とを用いて説明する。
(1)曲率ニップで封筒しわ発生する理由
定着装置では、一対の回転体を加圧し、回転体を加熱し、所定の圧力、温度条件で、未定着のトナー画像が形成された用紙を、進入させてトナーを用紙上に定着させる。一対の回転体の加圧されたニップ部は、一方の回転体が凸形状で、他方の回転体が凹形状となる場合がある。ニップ部は、例えば、定着ローラよりも柔らかい加圧ローラが弾性変形して形成される。
その場合に、特に二枚重ねの用紙である封筒においては、印字面と、非印字面で、凸形状の回転体からみた曲率半径が異なる為、凹形状の回転体に接する面で、軸方向中央速度が端部速度より速くなり、しわが発生しやすい問題がある。この内容を以下で、図を用いて説明する。
【0010】
図19は、封筒印刷時の表裏搬送量差を説明する図である。
図19では、ローラ定着構成例を示しており、ヒータ3の内蔵された定着ローラ1と、加圧ローラ2とが加圧されている。用紙5として、厚さtの封筒がニップ部に送られる例を示す。ニップ部は、角度αの部分となる。トナー画像6の載っている面が印字面5a、トナー画像6の載っていない面が非印字面5bである。非印字面5bのニップ部での搬送量(「送り量」とも称する)は、(R+t)αであり、印字面5aのニップ部での搬送量Rαよりtα大きくなる。
【0011】
図20は、封筒印刷時の印字面、非印字面の搬送量分布を説明する図である。
図20は、封筒の軸方向の搬送量分布を示し、(A)は印字面、(B)は非印字面である。
封筒は、軸方向両端部が、折り曲げもしくは糊付けされた構造になっている為、軸方向両端部は、印字面5a、非印字面5bともに同じ搬送量L1で送られる。搬送量L1は印字面5aの軸方向中央搬送量Rαと略同等の搬送量である。
【0012】
図19における上述の角度αを小さくすること、つまり、ニップ幅を狭くすることは、後端シワを減らす。後述する本実施形態の定着装置は、加圧力調整装置を有し、画像形成装置が封筒上にトナー像を形成するとき、加圧力調整装置が、加圧ローラが定着ローラを押す加圧力を減らし、
図19の角度αを減らし封筒上のシワを減らす。
【0013】
(2)普通紙大サイズ紙の両面印刷時のしわ発生を防止する入口ガイドの条件
普通紙は、両面印刷時に、一面目印刷時に端部カールした用紙を進入させると、ニップ部への用紙噛みこみが軸方向で同じタイミングとならず、中央からニップ部に噛みこむため、軸方向中央速度が軸方向端部速度より大きく(軸方向中央速度>軸方向端部速度)なり、しわ発生する問題がある。以下図を用いて説明する。
【0014】
図21は、普通紙両面印刷時の片面印刷後のカール発生状態で用紙進入時の用紙姿勢例(定着装置縦断面)を説明する図である。
図22は、普通紙両面印刷時の片面印刷後のカール発生状態で用紙進入排出時の用紙姿勢例(定着ローラ長手方向)を説明する図である。
図21では、用紙5として、端部カールした普通紙がニップ部へ進入する前の姿勢を示し、用紙端部5dは、用紙中央5eと比較して、ニップ部から離れた位置にある。
図22では、端部カールした用紙5がニップ部への進入前と排出後との状態を示し、用紙進入前は、用紙中央5eが、用紙端部5dより先に、ニップ部に進入し、そのまま、用紙5が搬送されるため、ニップ部にて、加熱加圧されて、しわ5cが発生する。
【0015】
このようなしわ発生を回避する為、入口ガイドにて案内する構成が知られている。
図23は、普通紙しわ低減の入口ガイドを有する定着装置の構成例を説明する図であり、ニップ部の用紙進入部に、入口ガイド7を設ける定着装置の構成を示した。図中で、端部カールした用紙5は、入口ガイド7に当たり、定着ローラ1側に、中央、端部一体となって案内され、端部カールが低減されて、定着ローラ1の回転に導かれて、ニップ部に進入するため、用紙5のニップ部への進入が軸方向において同じタイミングで実現でき、しわ発生を防止できる。
【0016】
(3)封筒しわ、普通紙両面しわの良好な案内部材角度条件
ニップ部に対して、用紙5が進入する角度と関係する進入案内角度と、用紙5が排出される角度と関係する排出案内角度の定義を、
図24を参照して説明する。
ニップ部の入口には、入口ガイド7が、出口には、出口ガイド8が設けられている。
なお、本明細書では、「入口ガイド」を「進入案内部材」と、「出口ガイド」を「排出案内部材」と、「ニップ部中央」を「ニップ中心」とも称する。
【0017】
ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15に対して、ニップ部中央からの、進入案内角度β、排出案内角度γを
図24のように定義した。進入案内角度βは、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15と、ニップ部中央と入口ガイド7の先端(入口ガイドの搬送方向下流側端部)とを結ぶ直線とのなす角とする。また、排出案内角度γは、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15と、ニップ部中央と出口ガイド8の先端とを結ぶ直線とのなす角度とする。
また、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15上を角度ゼロ(0°)とし、凸状ニップ形状となる回転体側の角度をプラス、凹ニップ形状となる回転体側の角度をマイナスとする。
図24の下段の矢印の右側に進入案内角度βの一例(破線内)を、上段の矢印の右側に排出案内角度γの一例(一点破線内)を示している。
例えば、定着ローラ1と加圧ローラ2とのうち、凸形状を有する回転体を「一方の回転体」、凹形状を有する回転体を「他方の回転体」とすると、プラスの角度とマイナスの角度とを次のように設定する。
進入案内角度βについて、プラスの角度は、一方の回転体へ向かって傾斜する、入口ガイド7の先端およびニップ部中央を通る直線と、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成される。また、マイナスの角度は、他方の回転体へ向かって傾斜する、入口ガイド7の先端およびニップ部中央を通る直線と、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成される。
排出案内角度γについて、プラスの角度は、一方の回転体へ向かって傾斜する、出口ガイド8の先端およびニップ部中央を通る直線と、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成される。また、マイナスの角度は、他方の回転体へ向かって傾斜する、出口ガイド8の先端およびニップ部中央を通る直線と、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成される。
図24では、定着ローラ1と加圧ローラ2とのうち、凸状ニップ形状となる回転体を定着ローラ1とし、凹状ニップ形状となる回転体を加圧ローラとする。
ニップ部中央は、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15におけるニップ部の入口と出口との間の中央の位置とし、ニップ幅の中央となる。
【0018】
進入案内角度β、排出案内角度γに対する、封筒片面印字時しわ長さ、普通紙両面印字時しわ長さの関係を
図25に示した。
図25には、以下の試験条件で試験した結果を示す。
試験条件:
封筒印刷時ニップ幅2.5mm
普通紙印刷時ニップ幅7.7mm
封筒印刷定着温度210℃
普通紙印刷定着温度170℃
封筒印刷速度180mm/s
普通紙印刷速度252mm/s
封筒坪量70g/m
2、80g/m
2、90g/m
2、100g/m
2銘柄のしわ平均長さ
普通紙坪量69g/m
2用紙しわ長さ
【0019】
これから、次のことがわかった。
封筒しわ良好領域は、進入案内角度βが-20°以上0°以下の範囲(β=-20~0deg)である。
普通紙両面印字時しわ良好領域は、進入案内角度βが15°以上25°以下の範囲(β=15~25deg)である。
後述の実施形態に係る定着装置は、加圧力調整装置を有する。画像形成装置がトナー像を封筒上に印刷するとき、加圧力調整装置は、加圧力を減らす。
【0020】
図26は、排出案内角度と封筒しわ長さとの関係を説明する図である。
図27は、排出案内角度による用紙の非印字面側へのカールを説明する図であり、(A)排出案内角度γ大の場合、(B)排出案内角度γ小の場合である。
用紙出口の排出案内角度γと、封筒しわの関係は、
図26の関係があり、排出案内角度γが大きい場合、封筒しわが発生し易くなり、印刷品質が悪くなる。
一方、排出案内角度γが小さい場合の問題として、
図27に示す普通紙の非印字面側へのカール(バックカール)が大きくなる問題がある。
図27(A)に示すように、排出案内角度γを大きく設定すると、出口ガイド8とニップから排出された普通紙とがなす当接角が小さくなり、普通紙が形成する曲率半径が大きくなる。その結果、大きな排出案内角度γは、非印字面側のカールを減らす。対して、
図27(B)に示すように、排出案内角度γを小さく設定すると、出口ガイド8とニップから排出された普通紙とがなす当接角は大きくなり、普通紙が形成する曲率半径は小さくなる。その結果、小さい排出案内角度γは、非印字面側のカールを増やす。
【0021】
図28は、排出案内角度と普通紙片面印刷時の用紙バックカール量との関係を説明する図である。進入案内角度βを20°とした。
図28に示すように、用紙出口の排出案内角度γと、普通紙のバックカール量との関係は、排出案内角度γ小の場合、バックカール量が大きくなり印刷品質が悪くなる。
以上の結果から、排出案内角度γについて、封筒しわ良好領域は、5°以下(γ≦5deg)であり、普通紙バックカール量良好領域は、0°以上(γ≧0deg)である。
シートバックカール量は、坪量64、69、75g/m
2を有する普通紙に関するものである。
【0022】
図29は、封筒しわに良好な、入口ガイド、出口ガイド位置での封筒通紙時の表裏送り量を説明する図であり、(A)は、定着装置における各値を示し、(B)は、用紙送り量を示す。
封筒しわに良好な条件として、進入案内角度βがゼロ以下(β≦0)、排出案内角度γがゼロ未満(γ<0)の条件が含まれているが、その場合の封筒通紙時の封筒の二枚重ね紙の印字面、非印字面の用紙送り量を
図29(B)に示した。(A-B)が、封筒通紙時の表裏送り量差となる。
ニップ部(ニップ内)のみを通過すると、-tαの表裏送り量差があり、しわの原因となっているが、ニップ入口の加圧ローラ巻き付き角ε、ニップ出口の加圧ローラ巻き付き角δがあることで、表裏の送り量差が打ち消されて、t(ε+δ-α)とできることで、封筒しわが低減できる。
【0023】
このように、普通紙通紙時、封筒通紙時のニップ部の入口と出口とを結ぶ直線に対する進入案内部材、排出案内部材の角度を、所定の角度の範囲内にすることにより、普通紙両面しわと、封筒しわとの両方を回避することができる。
【0024】
以上の説明から、封筒と普通紙では、ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15に対して進入案内角度、排出案内角度ともに、適正な条件が異なるため、紙種によって切り換えることが望まれる。
【0025】
ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15に対する、進入案内角度、排出案内角度の適正範囲を表1に示した。
【表1】
【0026】
本発明の実施形態では、普通紙通紙時の両面しわ・バックカール回避と、封筒通紙時の封筒しわ回避とを両立させるため、普通紙通紙時を第一ニップとし、封筒通紙時を第二ニップとした場合、封筒通紙時の第二ニップを形成する時に、定着ローラから加圧ローラを退避させる方向を定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線上より用紙の搬送方向下流側に退避させる。
このようにすると、第二ニップからの排出角度を変え、搬送された封筒が出口ガイドで規制される。これにより、普通紙印刷時と封筒印刷時のニップ部の入口と出口とを結ぶ直線15に対して排出案内角度を別々の最適位置に設定可能であり、普通紙通紙時の両面しわ・バックカールと、封筒通紙時の封筒しわを防止する事ができる。
【0027】
本発明の実施形態に係る定着装置の一態様は、
定着部材(定着ローラ1)と加圧部材(加圧ローラ2)とが押圧当接してニップ部を形成する定着装置であって、
支点(支点14)を中心に回動し、加圧部材を加圧する加圧板(加圧アーム10)と、
加圧板の加圧力を調整する加圧力調整装置(カム9)と、
ニップ部へ進入する記録媒体(用紙5)を案内する進入案内部材(入口ガイド7)と、
ニップ部から排出された記録媒体を案内する排出案内部材(出口ガイド8)と、を有し、
定着装置は、前記加圧部材を、前記加圧部材の中心と前記定着部材の中心とを結ぶ線から記録媒体搬送方向下流に向けて傾けた方向にガイドするガイド(加圧ローラのベアリングを受ける構造など)を有する。
( )内は後述する
図1から
図4の構成を一例として対応付けている。
【0028】
例えば、特許文献1では、ニップ入口で、ニップ部とは逆の二枚紙の速度差を与えることで、しわを防止している入口ガイドが二ケ構成のため、構造が複雑となり、ニップ出口では用紙排出方向を制御していないため、封筒しわ除去効果が不十分となっている。
本実施形態の定着装置は、封筒印刷時に加圧部材の位置を搬送方向下流側に移動することにより、封筒通紙時の搬送経路を規制して封筒印刷時のしわを防止する。また、本実施形態の定着装置は、封筒排出方向と用紙排出案内部材との角度を適正にすることを簡単な構成で実現するため、装置を小型化かつ低コスト化できる。
以下、各実施形態について説明する。
【0029】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態の定着装置の第一ニップ形成時の構成例を説明する図である。
図2は、同定着装置の第二ニップ形成時の構成例を説明する図である。
図3は、本発明の第一の実施形態の定着装置の第一ニップ形成時の加圧機構の構成例を説明する図である。
図4は、同定着装置の第二ニップ形成時の加圧機構の構成例を説明する図である。
図5は、比較例の定着装置の第二ニップ形成時の構成例を説明する図である。
本実施形態の定着装置は、定着ローラ1、加圧ローラ2、入口ガイド7、出口ガイド8、カム9、加圧アーム10、および加圧バネ11を備える。
【0030】
記録媒体の一例としての用紙5は、次のように搬送される。
転写ローラ30でトナー画像6が転写された用紙5が、定着装置に進入する。定着装置は、定着ローラ1と加圧ローラ2とが接触しているニップ部(
図1の符号N1または
図2のN2の部分)に進入し、加熱加圧されて定着される。ニップ部の入口側には入口ガイド7が、出口側には出口ガイド8があり、用紙の搬送を案内する。
【0031】
図3で、定着ローラ1および加圧ローラ2への加圧力は、加圧アーム10が、加圧バネ11で押圧されることにより印加されているが、カム9の位置によって、加圧(
図3は加圧状態)、減圧(
図4は減圧状態)される。加圧アーム10は、支点14周りに回動可能である。カム9により、加圧アーム10は、支点14に対して、複数の回転方向位置に設定可能で、加圧力が最大となる条件(加圧状態)で普通紙の通紙を行い、加圧力を減圧した条件(減圧状態)で、封筒を通紙する。複数の回転方向位置は、加圧アーム10によって加圧された加圧ローラ2が普通紙を最大の加圧力で押す最大加圧位置と、加圧アーム10によって加圧された加圧ローラ2が封筒を最大の加圧力より小さい加圧力で押す封筒用位置とを含む。このように、加圧力の切り替えを可能にし、普通紙印刷と封筒印刷との最適な条件に切り替える事が出来る。
【0032】
図1のニップ部の幅(以降「ニップ幅」と称する)N1は、
図2の減圧時のニップ幅N2より大きい。例えば、N1=7.7mm、N2=2.5mmである。
以降の説明では、普通紙通紙時(普通紙印刷時)に形成されるニップ幅N1のニップ部を「第一ニップ」とし、封筒通紙時(封筒印刷時)に形成されるニップ幅N2のニップ部を「第二ニップ」とし、第一ニップと第二ニップとを区別する必要がない場合には、「ニップ部」とする。
【0033】
図2に示すように、本実施形態の定着装置は、第二ニップを形成する時に、定着ローラ1から加圧ローラ2を退避させる方向を、普通通紙時(加圧状態)の定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線26上より定着ローラ1の中心と加圧ローラ2の中心とを結ぶ線から記録媒体搬送方向下流に傾いた方向に退避させる。このようにすることで、第二ニップから排出される用紙5として通紙される封筒の排出角度を変え、搬送された封筒を出口ガイド8で規制する。
図2には、加圧状態の定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線26と、減圧状態の定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線26aとを示す。
図5には、比較例の定着装置として、加圧力を減圧する第二ニップ形成時に、加圧ローラ2が用紙5の搬送方向下流側に移動しないで、例えば、定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線26に沿って加圧ローラ2が退避する例を示す。
【0034】
図2に示されるように、第一の実施形態における加圧ローラ2は、直線26から搬送方向下流側に7°傾いた方向に移動し、第二ニップを形成する。第二ニップの入口と出口とを結ぶ線と、第二ニップ部中央と出口ガイド8の先端とを結ぶ直線のなす排出案内角度は-5°となり、
図1に示される第一ニップによって形成される排出案内角度より小さい角度となり、結果として、封筒しわを減らすことができる。さらに、
図2に示される第一の実施形態における排出案内角度は、
図5に示される比較実施形態における排出案内角度より小さい。したがって、加圧ローラ2を直線26から搬送方向下流側に傾けた方向に動かすことで封筒しわを減らすことができる。
【0035】
次に、定着ローラ1と加圧ローラ2とを保持する構成例について説明する。定着装置は、定着ローラ1と加圧ローラ2とを、一つの部材(例えば、側板)で保持するとよい。
図6は、第一の実施形態の定着装置の第一ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
図7は、同定着装置の第二ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
図8は、比較例の定着装置の第二ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
【0036】
定着ローラ1と加圧ローラ2とを保持する側板16に、定着ローラ軸を受ける定着ローラ軸受け17と、加圧ローラ軸受け27を受ける形状を設ける。加圧ローラ軸受けのレール形状18は、加圧ローラ軸受け27が移動可能となるような形状とする。
図7に示すように、第二ニップ形成時には、加圧ローラ軸受け27は、加圧ローラ2が退避するときに、定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線26上より搬送方向下流側に移動し、側板16のレール形状18の位置で精度良く位置が決まる構成となっている。
図8は、比較例の定着装置における第二ニップ形成時の構成であり、加圧ローラ軸受け27は、定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線26に沿って側板16のレール形状18の位置で精度良く位置が決まる構成となっており、
図7に示す構成例と、加圧ローラ2の移動方向が異なる。
このように、定着ローラ1と加圧ローラ2とを一つの部品(側板)で保持すると、ローラの位置精度が良くなる。
【0037】
定着装置の側板における形状が、加圧ローラ2が定着ローラ1から退避する方向、すなわち、定着ローラ1の中心と加圧ローラ2の中心とを結ぶ線から搬送方向下流側に傾いた方向を決めることが望ましい。
図7において、例えば、加圧ローラ軸受け27は、側板16のレール形状18に沿って移動する。
図9は、加圧ローラ2の退避位置に側板形状に沿って移動することを説明する図である。
このようにすると、封筒印刷(減圧)時に加圧ローラ2を、側板形状18aに沿って退避方向へ移動させるため、加圧ローラ2の位置精度が良くなる。
【0038】
さらに、定着装置は、
図10に示すように、定着装置の側板における形状が、加圧ローラ2が定着ローラ1から退避する方向、すなわち、定着ローラ1の中心と加圧ローラ2の中心とを結ぶ線から搬送方向下流側に傾いた方向を決めることが望ましい。
図10は、加圧ローラ2の退避位置を決める側板形状の部分を説明する図である。
封筒印刷(減圧)時にはニップ幅を小さくするが、加圧ローラ2の位置バラツキが大きくなると、ニップ幅バラツキが大きくなる。加圧ローラ2の退避位置を側板形状18a、18bで決めることで加圧ローラ2の位置精度を良くし、定着ニップ幅バラツキを小さくする事ができる。
定着装置は、加圧ローラ軸受け27を受ける側板16のレール形状18で、加圧ローラ2の退避方向と退避位置とのいずれか一方または両方を決めるように形成するとよい。
【0039】
第二の実施形態
本実施形態では、定着ローラ1と加圧ローラ2とを保持する構成の変形例を説明する。
図11は、第二の実施形態の定着装置の第一ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
図12は、同定着装置の第二ニップ形成時の定着ローラと加圧ローラとを保持する構成例を説明する図である。
第二の実施形態に係る定着装置は、二枚の側板16a、16bを有する。側板16bは、加圧ローラ2が定着ローラ1の中心と加圧ローラ2の中心とを結ぶ線から搬送方向下流側に傾いた方向に定着ローラ1から退避した後の退避位置を決める形状を有している。加圧アーム10により減圧するときに、側板16bを回転させることにより、加圧ローラ2を所望の方向および位置に移動させる。
加圧ローラ2の移動範囲が大きい場合は、側板を二枚構成にし、側板16aに対し側板16bを回転させる事により、加圧ローラ2を退避位置に移動させる事ができる。
【0040】
第三の実施形態
本実施形態では、入口ガイド7の変形例について説明する。
定着装置は、開口部を設けた入口ガイド7を有するとよい。
図13は、第三の実施形態の定着装置が有する入口ガイドの一例を説明する図である。
定着装置は、入口ガイド7に開口部7aを設け、封筒印刷時には、用紙5としての封筒を開口部7a内に搬送する事により、入口ガイド7への封筒の進入方向(進入案内角度)を変え、しわを防止することができる。
【0041】
また、定着装置は、移動可能な入口ガイド7を有するとよい。
図14は、同定着装置が有する入口ガイドの他の例を説明する図である。
入口ガイド7は、例えば、先端を移動可能(退避可能)とし、封筒印刷時に加圧ローラ2に近づくように退避させ封筒の変形を防止する構成とする。
入口ガイド7に作用するスプリング7bの力は、シートが入口ガイド7に当接するとき、普通紙のような剛性の低いシートが入口ガイドを動かせないように調整される。したがって、入口ガイド7は、普通紙のような剛性の低いシートを、動くことなく、定着ニップに案内する。また、入口ガイド7に作用するスプリング7bの力は、封筒等の剛性の高いシートが入口ガイド7に当接したときに入口ガイド7の先端を動かすように調整される。
したがって、封筒等の剛性の高いシートが入口ガイドに当接すると、シートは、入口ガイドの先端を動かし、封筒内にしわが発生しないように入口ガイド角を形成する。
このようにすると、封筒印刷時に、封筒の進入にともなって、入口ガイド7の先端が押し下げられる事により、入口ガイド7の進入方向(進入案内角度)を変え、しわを防止することができる。
【0042】
その他の実施形態
加圧力調整装置の構成例について説明する。
図15は、モータ駆動の加圧力調整装置の構成例を説明する図である。
加圧力調整装置の駆動については、
図15に示すように、カム9a、9bがカム軸91の軸方向の両端に一対設けられ、モータ19より駆動系(ウオームギア20a、20b、平歯車21a、21b)を介して、回転駆動される。カム9a、9bの回転方向位置は、カム9a、9bと同軸上に設けられた回転方向位置検知部材92の段差部分を、光学センサ93で検知して制動することにより、所望の回転方向位置へ移動できる。
【0043】
また、加圧力調整装置の駆動については、
図16に示すように手動操作レバーで所定角度回転させる構成でもよい。
図16は、手動操作レバーでカムを回転させる構成例の加圧状態を説明する図である。
図17は、手動操作レバーでカムを回転させる構成例の減圧状態を説明する図である。
図16は加圧条件を示しており、
図17は減圧条件を示している。
【0044】
手動操作レバー22は、カム9と同軸上に結合されており、カム9中心回りに手動で回転可能である。
図16で手動操作レバー22を矢印23の方向に、カム9の軸回りに回転させると、加圧アーム10も矢印24の方向に回転し、
図17のようにカム9が減圧位置となり、減圧される。
手動操作レバー22は、加圧位置、減圧位置で停止する箇所には、ストッパー25a、25bを設ける構成であってもよい。
上記各実施形態において、カム9の駆動手段は電動、手動いずれであってもよい。
カムを使用する事により簡単な構成にすることが出来る。
【0045】
次に、画像形成装置の基本的な構成について説明する。
図18は、本発明の実施形態に係る画像形成装置を説明する概略構成図である。
同図において、画像形成装置は、像担持体としての感光体31や、本体筐体50に対して着脱可能に構成された給紙カセット100などを備えている。給紙カセット100は、複数の記録媒体たる用紙Sを用紙束の状態で収容している。
【0046】
給紙カセット100内の用紙Sは、給送ローラ44の回転駆動によってカセット内から送り出されて、後述する分離ニップを経た後に給紙路42内に至る。その後、用紙Sは、第一搬送ローラ対41の搬送ニップに挟み込まれて、給紙路42内を搬送方向の上流側から下流側に向けて搬送される。給紙路42の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。用紙Sは、このレジストローラ対49のレジストニップに先端を突き当てた状態で搬送が一時中止される。その突き当ての際、用紙Sのスキューが補正される。
【0047】
レジストローラ対49は、用紙Sを後述する転写ニップで感光体31の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで回転駆動を開始して、用紙Sを転写ニップに向けて送り出す。この際、第一搬送ローラ対41が同時に回転駆動を開始して、一時中止していた用紙Sの搬送を再開する。
【0048】
画像形成装置の本体筐体は、手差しトレイ43、手差し給送ローラ43a、分離パッド43bなどからなる手差し給紙部を保持している。この手差し給紙部の手差しトレイ43に手差しされた用紙は、手差し給送ローラ43aの回転駆動によって手差しトレイ43内から送り出される。そして、用紙は、手差し給送ローラ43aと分離パッド43bとの当接による分離ニップを経た後に、給紙路42におけるレジストローラ対49よりも上流側の領域に進入する。その後、用紙は、給紙カセット100から送り出された用紙Sと同様にして、レジストローラ対49を経た後に、後述する転写ニップに送られる。
【0049】
図中時計回り方向に回転駆動せしめられるドラム状の感光体31の周囲には、クリーニングブレード32、帯電ローラ34、潜像書込装置37、現像装置38、転写ローラ30などが配設されている。帯電ローラ34は、感光体31に接触しながら回転して帯電ニップを形成している。この帯電ローラ34には、電源から出力される帯電バイアスが印加されている。これにより、帯電ニップにおいて、感光体31の表面と帯電ローラ34の表面との間で放電が発生することで、感光体31の表面が一様に帯電せしめられる。
【0050】
潜像書込装置37は、LEDアレイを具備しており、感光体31の一様帯電した表面に対してLED光による光走査を行う。感光体31の一様帯電した地肌部のうち、この光走査によって光照射を受けた領域は、電位を減衰させる。これにより、感光体31の表面に静電潜像が形成される。
【0051】
静電潜像は、感光体31の回転駆動に伴って、現像装置38に対向する現像領域を通過する。この現像領域で、感光体31上に形成された静電潜像に、現像装置38によってトナーが供給され、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0052】
現像装置38の上方には、トナーカートリッジ39が配設されている。このトナーカートリッジ39は、内部にトナーを収容しており、制御部51から出力される補給動作信号に応じてトナーを現像装置38に補給する。
【0053】
現像によって感光体31上に形成されたトナー像は、感光体31の回転に伴って、感光体31と、転写手段たる転写ローラ30とが当接する転写ニップに進入する。転写ローラ30には、感光体31の潜像電位とは逆極性の帯電バイアスが印加されており、これにより、転写ニップ内には転写電界が形成されている。
【0054】
上述したように、レジストローラ対49は、用紙Sを転写ニップ内で感光体31上のトナー像に重ね合わせうるタイミングで転写ニップに向けて送り出す。転写ニップでトナー像に密着せしめられた用紙Sには、転写電界やニップ圧の作用により、感光体31上のトナー像が転写される。
【0055】
転写ニップを通過した後の感光体31の表面には、用紙Sに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは感光体31に当接しているクリーニングブレード32によって感光体31の表面から掻き落とされ、感光体31の表面がクリーニングされる。
クリーニングブレード32によってクリーニングされた感光体31の表面は、除電手段によって除電された後、帯電ローラ34によって再び一様に帯電せしめられる。
【0056】
感光体31と転写ローラ30とが当接する転写ニップを通過した用紙Sは、定着装置60に送られる。定着装置60は、ハロゲンランプ等の発熱源63を内包する加熱回転体たる定着ローラ61と、これに向けて押圧されるニップ形成回転体たる加圧ローラ62との当接によって定着ニップを形成している。
定着ローラ61は、ステンレスやアルミニウム等からなる中空の芯金の外周面にトナーや紙粉との離型性を向上させるための離型促進層を有している。加圧ローラ62は、ステンレスやアルミニウム等からなる芯金の外面に、フッ素系ゴムやシリコーンゴム等の耐熱弾性材料弾性層を有している。
【0057】
定着ニップに挟み込まれた用紙Sの表面には、加熱や加圧の作用によってトナー像が定着せしめられる。その後、定着装置60を通過した用紙Sは、排紙路45を経た後、排紙ローラ対46の排紙ニップに挟み込まれる。
【0058】
画像形成装置は、用紙Sの片面だけに画像を形成する片面モードと、用紙Sの良縁に画像を形成する両面モードとを切り替えて実行することができる。片面モードの場合や、両面モードであって既に用紙Sの両面に画像を形成している場合には、排紙ローラ対46が正転駆動を続けることで、排紙路45内の用紙Sを機外に排出する。排出された用紙Sは、本体筐体50の上面に設けられたスタック部にスタックされる。
【0059】
一方、両面モードであって、且つ用紙Sの片面だけにしか画像を形成していない場合には、排紙ローラ対46の排紙ニップに用紙Sの端部が進入したタイミングで、排紙ローラ対46が逆転駆動される。このとき、排紙路45の末端付近に配設された切換爪47が作動して、排紙路45を塞ぐとともに、反転再送路48の入口を開く。排紙ローラ対46の逆転駆動によって逆戻りを開始した用紙Sは、反転再送路48内に送り込まれる。そして、用紙は、反転再送路48内で上下を反転せしめられながら搬送された後、レジストローラ対49のレジストニップに再送される。その後、転写ニップでもう一方の面にもトナー像が転写された後、定着装置60と排紙路45と排紙ローラ対46とを経て用紙は、機外に排出される。
【0060】
定着装置60によるトナー像定着時に用紙Sが高温に晒されることで用紙中の水分が蒸発し、紙の目の方向によっては幅方向端部が丸まる所謂端部カールが発生することがある。特に、用紙が大サイズの普通紙のときに、端部カールが発生しやすい。
【0061】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【0062】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
定着部材と加圧部材とが押圧当接してニップ部を形成する定着装置であって、
支点を中心に回動し、前記加圧部材を加圧する加圧板と、
前記加圧板の加圧力を調整する加圧力調整装置と、
前記ニップ部へ進入する記録媒体を案内する進入案内部材と、
前記ニップ部から排出された前記記録媒体を案内する排出案内部材と、
前記加圧部材を、前記定着部材の回転中心と前記加圧部材の回転中心とを結ぶ線から前記記録媒体の搬送方向下流に傾いた方向に、案内するように構成されたガイドと、を有することを特徴とする定着装置である。
<2>
前記加圧力調整装置は、前記加圧板を、前記支点を中心に複数の回転方向位置に設定可能であり、前記複数の回転方向位置は、前記加圧板によって加圧された加圧部材が普通紙を最大の加圧力で押す最大加圧位置と、前記加圧板によって加圧された加圧部材が封筒を前記最大の加圧力より小さい加圧力で押す封筒用位置とを含む
ことを特徴とする前記<1>に記載の定着装置である。
<3>
前記最大加圧位置にある前記加圧部材は、前記ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線と、ニップ部中央と前記排出案内部材の先端とを結ぶ直線とがなす排出案内角度を0°から+15°の範囲に設定し、
前記封筒用位置にある前記加圧部材は、前記排出案内角度を-10°から+5°の範囲に設定し、
プラスの角度は、前記定着部材と前記加圧部材とのうちの一つの回転体であって、前記ニップ部において凸形状を有する回転体へ向かって傾斜する、前記排出案内部材の先端を通る直線と、前記ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成され、マイナスの角度は、他の一つの回転体であって、前記ニップ部において凹形状を有する回転体へ向かって傾斜する、前記排出案内部材の先端を通る直線と、前記ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線とによって形成される
ことを特徴とする前記<2>に記載の定着装置である。
<4>
前記加圧力調整装置は、前記加圧板に接触したカム部材により構成し、前記最大加圧位置と、前記封筒用位置とで、カム部材の回転方向の位置が異なる位置で停止し、モータ駆動もしくは、手動操作レバーにより回転力が加えられる
ことを特徴とする前記<2>または<3>に記載の定着装置である。
<5>
前記定着部材と前記加圧部材とは、一つの部材で保持される
ことを特徴とする前記<1>から<4>のいずれか一つに記載の定着装置である。
<6>
前記加圧部材を前記搬送方向下流に移動させる方向を前記部材の形状で決める
ことを特徴とする前記<5>に記載の定着装置である。
<7>
前記加圧部材を前記搬送方向下流に移動させる位置を前記部材の形状で決める
ことを特徴とする前記<5>または<6>に記載の定着装置である。
<8>
前記加圧部材を前記搬送方向下流に移動させる位置を、二枚の側板の形状で決める
ことを特徴とする前記<1>から<4>のいずれか一つに記載の定着装置である。
<9>
前記進入案内部材は、開口部を有する
ことを特徴とする前記<1>から<8>のいずれか一つに記載の定着装置である。
<10>
前記進入案内部材は、移動可能に設けられた
ことを特徴とする前記<2>から<8>のいずれか一つに記載の定着装置である。
<11>
前記<1>から<10>のいずれか一つに記載の定着装置を備える画像形成装置である。
【符号の説明】
【0063】
1 定着ローラ
2 加圧ローラ
3 ヒータ
4、30 転写ローラ
5 用紙
6 トナー画像
7 入口ガイド(進入案内部材)
8 出口ガイド(排出案内部材)
9 カム
10 加圧アーム
11 加圧バネ
14 支点
15 ニップ部の入口と出口とを結ぶ直線
16、16a、16b 側板
17 定着ローラ軸受け
18 加圧ローラ軸受けのレール形状
19 モータ
20a、20b ウオームギア
21a、22b 平歯車
22 手動操作レバー
23 手動操作レバー動作方向(減圧時)
24 加圧アーム動作方向(減圧時)
25 ストッパー部材
26、26a 定着ローラ中心と加圧ローラ中心とを結ぶ直線
27 加圧ローラ軸受け
91 カム軸
92 回転方向位置検知部材
93 光学センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】