(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109204
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】フライ調理用油脂組成物及びフライ調理食品の花咲性向上方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
A23D9/00 506
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010585
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】清水 里奈
(72)【発明者】
【氏名】新井 正博
(72)【発明者】
【氏名】井上 賀美
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG01
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】より簡便に、フライ調理食品の花咲性を向上させるためのフライ調理用油脂組成物及びフライ調理食品の花咲性向上方法を提供する。
【解決手段】オリーブ油を30質量%以上含有し、フライ調理食品の花咲性向上のためのフライ調理用油脂組成物。並びに、当該油脂組成物で食品をフライ調理することを特徴とする、フライ調理食品の花咲性向上方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ油を30質量%以上含有する、フライ調理食品の花咲性向上のためのフライ調理用油脂組成物。
【請求項2】
前記オリーブ油が、未精製オリーブ油である、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の油脂組成物で食品をフライ調理することを特徴とする、フライ調理食品の花咲性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理用油脂組成物及びフライ調理食品の花咲性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷら等のフライ調理食品において、衣の花咲性は重要である。衣の花咲性が良好であると、見栄えが良くなり、消費者の購買意欲向上につながる。そのため、従来、天ぷら等のフライ調理食品の花咲性を向上させるために、種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定のショ糖エステル及び液体油からなる加熱調理用油脂組成物を用いることで、天ぷらの衣の花咲性(散り状態)が向上することが記載されている。
特許文献2には、液状油脂に特定量の乳化剤を添加・溶解して得られる油脂組成物であって、該油脂組成物の水との80℃における、界面形成時より3秒後の界面張力が7mN/m以下であることを特徴とする揚げ物調製用油脂組成物が開示されており、当該油脂組成物を用いることで、天ぷらの衣の花咲性が向上することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、液状油脂中に、融点50℃以上の高融点油脂と乳化剤とを特定割合で含有する流動状を呈する油脂組成物を用いることで、天ぷらの花咲性が向上することが記載されている。
特許文献4には、ジアシルグリセロールを70質量%以上、ショ糖脂肪酸エステル及びアスコルビン酸脂肪酸エステルを含有し、ショ糖脂肪酸エステル中のモノエステルの含有量が30質量%以上である油脂組成物を用いることで、揚げ物の衣の花咲性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-316950号公報
【特許文献2】特開2002-101819号公報
【特許文献3】特開2002-3883号公報
【特許文献4】特開2011-188820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~4では、いずれも乳化剤を必須として含むため、フライ調理用油脂組成物の製造が煩雑となり、なお改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、より簡便に、フライ調理食品の花咲性を向上させるためのフライ調理用油脂組成物及びフライ調理食品の花咲性向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、オリーブ油を特定量配合した油脂組成物で食品をフライ調理することで、得られたフライ調理食品の花咲性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。なお、本発明において、「花咲性」とは、天ぷら等のフライ調理食品の衣が花咲いたような形態になることを指す。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下のフライ調理用油脂組成物及びフライ調理食品の花咲性向上方法が提供される。
[1] オリーブ油を30質量%以上含有する、フライ調理食品の花咲性向上のためのフライ調理用油脂組成物。
[2] 前記オリーブ油が、未精製オリーブ油である、[1]に記載の油脂組成物。
[3] [1]又は[2]に記載の油脂組成物で食品をフライ調理することを特徴とする、フライ調理食品の花咲性向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フライ調理食品の花咲性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための具体的な態様を説明する。ただし、以下の説明は本発明の一態様に過ぎず、発明を限定するものではない。なお、以下の各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
本発明における油脂組成物は、オリーブ油を30質量%以上含有し、フライ調理食品の花咲性向上のための、フライ調理用油脂組成物である。
【0013】
本発明におけるオリーブ油は、オリーブの実から圧搾や遠心分離等の方法により分離された油である。オリーブの実の由来に特に制限はなく、日本国産であっても外国産であってもよい。
【0014】
本発明におけるオリーブ油は、未精製オリーブ油又は精製オリーブ油のいずれでも良く、組み合わせて用いても良い。
フライ調理食品の花咲性を向上させる観点から、オリーブ油は、未精製オリーブ油を含むことが好ましく、未精製オリーブ油であることがより好ましい。前記未精製オリーブ油の含有量は、フライ調理用油脂組成物中のオリーブ油全体に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上であり、よりいっそう好ましくは100質量%である。
【0015】
本発明における未精製オリーブ油とは、オリーブの実から圧搾や遠心分離等の方法により分離された油であって、その油が脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理のうちの1種又は2種以上の精製処理が施されていないか、もしくはいずれの精製処理も施されていない該オリーブ油をいう。好ましくは、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のいずれの精製処理も施されていない該オリーブ油である。
なお、脱ガム処理は、油分中に含まれるリン脂質を主成分とするガム質を水和除去する工程である。脱酸処理は、アルカリ水で処理等することにより、油分中に含まれる遊離脂肪酸をセッケン分として除去する工程である。脱色処理は、油分中に含まれる色素を活性白土等に吸着させて除去する工程である。脱臭処理は、減圧下で水蒸気蒸留等することによって油分中に含まれる有臭成分を除去する工程である。
【0016】
未精製オリーブ油は、エキストラバージンオリーブオイル(エクストラバージンオリーブオイルともいう。)、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、ランパンテバージンオリーブオイル等として市場にも流通しており、いずれを用いてもよい。本発明においてはそのような市販品を用いてもよく、好ましくはエキストラバージンオリーブオイル及びバージンオリーブオイルから選ばれる1種または2種であり、より好ましくはエキストラバージンオリーブオイルである。なお、バージンオリーブオイルは、官能評価における判定基準により、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、ランパンテバージンオリーブオイルの4つに区分されている。バージンオリーブオイルの基準は、国際オリーブ協会の定めた基準を適宜参照することができる。
【0017】
本発明における精製オリーブ油とは、オリーブの実から圧搾や遠心分離等の方法により分離された油であって、その油が脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のすべての精製処理が施された該オリーブ油をいう。
【0018】
本発明は、前記オリーブ油(2種以上のものを使用する場合、その合計)を、フライ調理用油脂組成物中に特定量含有させることで効果を発揮する。前記オリーブ油の含有量は、フライ調理用油脂組成物全体に対して、30質量%以上であり、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上であり、よりいっそう好ましくは100質量%である。所定の含有量とすることで、フライ調理食品の花咲性を向上することができる。
【0019】
本発明におけるフライ調理用油脂組成物は、オリーブ油以外の食用油脂を含んでも良い。前記食用油脂は、食用のものを適宜利用することができ、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、カカオ脂、パーム核油、ヤシ油、あまに油、えごま油、椿油、茶油、カラシ油、カポック油、カヤ油、クルミ油、ケシ油等の植物油脂;牛脂、豚脂、乳脂、鶏油、魚油等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂が挙げられ、これらの食用油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂も含まれる。
前記食用油脂を含む場合、製造時の作業性等の観点から、菜種油、大豆油、ひまわり油、パームオレイン、コーン油等のヨウ素価が50以上(好ましくは70以上であり、より好ましくは80以上である。)の油脂から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、菜種油、大豆油、ひまわり油、パームオレイン及びコーン油から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、菜種油、大豆油、パームオレイン及びコーン油から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましい。
【0020】
前記食用油脂は、油糧原料から搾油、抽出等して得られた原油から、更に、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理のうちの1種又は2種以上の精製処理が施されてなるものであることが好ましく、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のすべての精製処理が施されてなるものであることがより好ましい。このような精製処理によれば、原料の香りや風味、色素等が除かれて、そのような原料由来の性質が好まれない場合の需要に応えることができる。
【0021】
前記食用油脂の含有量(2種以上のものを使用する場合、その合計の含有量)は、フライ調理用油脂組成物全体に対して、70質量%以下であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらにより好ましくは10質量%以下である。また、前記食用油脂の含有量の下限は特に限定されず、例えば、前記フライ用調理用油脂組成物中の他の成分との合計が100質量%となるように配合する。また、本発明のフライ調理用油脂組成物の水の含有量は、1質量%未満が好ましい。
【0022】
また、前記フライ調理用油脂組成物は、本発明による作用効果を害しない範囲であれば、抗酸化剤、香料などの添加素材を、更に配合していてもよい。
【0023】
本発明におけるフライ調理食品は、前記フライ調理用油脂組成物でフライ調理された食品である。例えば、天ぷら、揚げ玉等のようにバッターを使用するフライ調理食品に好適に使用され得る。好ましくは、天ぷら及び揚げ玉から選ばれる1種である。
【0024】
本発明のフライ調理食品の花咲性向上方法は、上述のフライ調理用油脂組成物で食品をフライ調理することを特徴とする。
【0025】
食品をフライ調理する態様に特に制限はなく、本発明におけるフライ調理用油脂組成物を使用して、それぞれの食品の種類に応じて、適した方法にて、食品をフライ調理すればよい。例えば、加熱された前記フライ調理用油脂組成物に、所定のフライ調理食品の調理用材料を加えてフライ調理をする。前記フライ調理用油脂組成物の加熱温度は、例えば、150℃以上220℃以下であり、好ましくは160℃以上210℃以下であり、より好ましくは160℃以上200℃以下である。
【実施例0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例に使用した食用油脂及びオリーブ油は以下のとおりである。なお、いずれも水の含有量は1質量%未満である。
<食用油脂>
菜種油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製
<オリーブ油>
オリーブ油A(未精製オリーブ油(エキストラバージンオリーブオイル)):AJINOMOTOオリーブオイルエクストラバージン、株式会社J-オイルミルズ製
オリーブ油B(未精製オリーブ油(エキストラバージンオリーブオイル)):FILIPPO BERIOエクストラバージンオリーブオイル、株式会社J-オイルミルズ製
オリーブ油C:精製オリーブ(株式会社J-オイルミルズ製)と未精製オリーブ(エキストラバージンオリーブオイル、株式会社J-オイルミルズ製)を7:3の割合でブレンドして作製したもの
【0028】
[試験例1]
天ぷら粉(天ぷら粉黄金、昭和産業株式会社製)100gと水150gをホイッパーで攪拌しバッター液を作製した。鍋に表1に記載の油脂組成物を500g投入し、180℃になるまで加温した後、作製したバッター液をスポイトで入れた。30秒後に油から取り出し、揚げ玉を得た。
【0029】
得られた揚げ玉の花咲性について、3名の専門パネルの目視により以下の基準で評価した。専門パネルの平均値を評点とした。評価結果をあわせて表1に示す。
【0030】
[花咲性]
5:対照例より花咲性が非常に良好
4:対照例より花咲性が良好
3:対照例と同等
2:対照例より花咲性が悪い
1:対照例より花咲性が非常に悪い
【0031】
【0032】
その結果、表1に示されるように、オリーブ油を用いた各実施例では、対照例に比べて花咲性が良好だった。また、未精製オリーブ油を100質量%用いた実施例1-1及び1-2について、特に花咲性が良好だった。
【0033】
[試験例2]
表2に記載の油脂組成物を用いて、試験例1と同様の方法で揚げ玉を得た。得られた揚げ玉の花咲性について、2名の専門パネルにより試験例1と同様の方法により評価した。評価結果をあわせて表2に示す。
【0034】
【0035】
その結果、表2に示されるように、オリーブ油の含有量が50質量%以上の油脂組成物を用いた実施例2-1~2-3では、対照例に比べて花咲性が良好だった。一方で、オリーブ油の含有量が25質量%の油脂組成物を用いた比較例2-1では、対照例と同等の花咲性しか得られなかった。