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特開2023-109237基板処理装置、基板処理システム、及び運用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109237
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システム、及び運用方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230801BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230801BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/68 A
H01L21/68 N
H01L21/302 101M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010642
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】久保田 紳治
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA07
5F004BA20
5F004BB22
5F004BB23
5F004CA06
5F131AA02
5F131CA46
5F131DA20
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131EA23
5F131EB11
5F131EB17
5F131EB72
5F131FA32
5F131GA14
(57)【要約】
【課題】電子発生器を容易に交換可能とする技術を提供する。
【解決手段】開示される基板処理装置は、チャンバ、電子発生器、保持体、及び一つ以上の電源を備える。電子発生器は、基板、複数の電子放出素子、及び複数の第1のコンタクト電極を含む。保持体は、チャンバ内で電子発生器を着脱可能に保持するように構成されている。保持体は、リング本体及び複数の第2のコンタクト電極を含む。一つ以上の電源は、電子発生器に保持体を介して電気的に接続される。一つ以上の電源は、複数の第2のコンタクト電極のうち対応の第2のコンタクト電極及び複数の第1のコンタクト電極のうち対応の第1のコンタクト電極を介して、複数の電子放出素子のうち対応の電子放出素子に電気的に接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記チャンバ内にガスを供給するように構成されたガス供給部と、
電子発生器と、
リング形状を有し、前記チャンバ内で前記電子発生器を着脱可能に保持するように構成された保持体と、
前記電子発生器に前記保持体を介して電気的に接続された一つ以上の電源と、
を備え、
前記電子発生器は、
基板と、
前記基板の一主面上に設けられた複数の電子放出素子と、
前記一主面の周縁部に設けられた複数の第1のコンタクト電極と、
を含み、
前記保持体は、
リング形状を有するリング本体と、
前記リング本体上に設けられた複数の第2のコンタクト電極と、
を含み、前記複数の電子放出素子が前記チャンバ内の空間に向けられ、且つ、前記複数の第1のコンタクト電極が前記複数の第2のコンタクト電極にそれぞれ接触した状態で前記電子発生器を保持し、
前記一つ以上の電源は、前記複数の第2のコンタクト電極のうち対応の第2のコンタクト電極及び前記複数の第1のコンタクト電極のうち対応の第1のコンタクト電極を介して、前記複数の電子放出素子のうち対応の電子放出素子に電気的に接続される、
基板処理装置。
【請求項2】
前記保持体は、外縁部と該外縁部に対して段差を有する内縁部とを含み、
前記複数の第2のコンタクト電極は、少なくとも前記内縁部に設けられており、
前記電子発生器は、前記内縁部上且つ前記外縁部の内側に配置される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数の第2のコンタクト電極の各々は、前記複数の第1のコンタクト電極のうち対応の第1のコンタクト電極に接触する凸部を含む、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記複数の第1のコンタクト電極及び前記複数の第2のコンタクト電極は、周方向に沿って配列されている、請求項1~3の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記リング本体は、絶縁性材料から形成されている、請求項1~4の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記一つ以上の電源として複数の電源を備え、
前記複数の電源の各々は、前記複数の電子放出素子のうち一つ以上の対応の電子放出素子に電気的に接続される、
請求項1~5の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記電子発生器は、
前記基板の前記一主面上で第1の方向に沿って延び、該第1の方向に直交する第2の方向に沿って配列された複数の第1の電極と、
前記第2の方向に沿って延び、前記第1の方向に沿って配列された複数の第2の電極であり、前記複数の第1の電極と前記複数の第2の電極との間に絶縁膜が介在するように設けられた、該複数の第2の電極と、
を含み、
前記複数の第1の電極と前記複数の第2の電極が重なる複数の領域が前記複数の電子放出素子を構成し、
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、前記周縁部において前記複数の第1のコンタクト電極を構成し、
該基板処理装置は、
前記一つ以上の電源に含まれる第1の電源からの電圧を調整して前記複数の第1の電極に印加するように構成されたドライバと、
前記一つ以上の電源に含まれる第2の電源からの電圧を前記複数の第2の電極に順に印加するように構成されたスイッチング部と、
を更に備える、
請求項1~5の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記保持体を前記チャンバ内で上下に移動させるように構成された第1のアクチュエータを更に備え、
前記保持体は、前記チャンバの天部と該保持体との間で前記電子発生器を保持するように構成されている、
請求項1~7の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記一つ以上の電源に電気的に接続されており、前記複数の第2のコンタクト電極に弾性的に接触するように構成された複数の電極ピンを更に備える、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記チャンバの前記天部は、前記電子発生器を静電引力により保持するように構成された静電チャックを含む、請求項8又は9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記チャンバの前記天部は、その中で冷媒が流れるように形成された流路を提供している、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板支持部の上方で基板を支持するように構成された複数のリフトピンと、
前記複数のリフトピンを前記基板支持部の上面に対して上下に移動させるように構成された第2のアクチュエータと、
制御部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記保持体と前記複数のリフトピンとの間で前記電子発生器を受け渡すよう、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを制御するように構成されている、
請求項8~11の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の基板処理装置と、
前記チャンバ内に進入可能なアームを含み、前記チャンバの外部に設けられた搬送装置と、
を備え、
前記制御部は、前記チャンバ内で前記電子発生器を前記アームと前記複数のリフトピンとの間で受け渡すよう、前記第2のアクチュエータ及び前記搬送装置を制御するように構成されている、
基板処理システム。
【請求項14】
請求項13に記載された基板処理システムの運用方法であって、
前記第1のアクチュエータを用いて前記電子発生器と共に前記保持体を下方に移動させる工程と、
前記第2のアクチュエータを用いて前記複数のリフトピンを上方に移動させることにより、前記電子発生器を前記保持体から前記複数のリフトピンに受け渡す工程と、
前記アームを前記チャンバ内に進入させる工程と、
前記第2のアクチュエータを用いて前記複数のリフトピンを下方に移動させることにより、前記電子発生器を前記複数のリフトピンから前記アームに受け渡す工程と、
前記アームを前記チャンバの内部から外部に移動させることにより、前記チャンバの内部から前記電子発生器を搬出する工程と、
を含む運用方法。
【請求項15】
前記第1のアクチュエータを用いて前記保持体を下方に移動させる工程と、
前記電子発生器を支持している前記アームを前記チャンバ内に進入させる工程と、
前記第2のアクチュエータを用いて前記複数のリフトピンを上方に移動させることにより、前記電子発生器を前記アームから前記複数のリフトピンに受け渡す工程と、
前記第1のアクチュエータを用いて前記保持体を上方に移動させることにより前記電子発生器を前記複数のリフトピンから前記保持体に受け渡す工程と、
前記保持体により前記電子発生器を保持する工程と、
を更に含む、請求項14に記載の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、基板処理装置、基板処理システム、及び運用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子発生器を有する基板処理装置が、基板に対する処理において用いられている。このような基板処理装置では、電子発生器によって発生された電子がガス分子に付着して負イオンが生成される。或いは、電子発生器によって発生された電子によりガス分子が解離して、正イオンが生成される。基板は、生成されたイオンによって処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-87702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電子発生器を容易に交換可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。基板処理装置は、チャンバ、基板支持部、ガス供給部、電子発生器、保持体、及び一つ以上の電源を備える。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。ガス供給部は、チャンバ内にガスを供給するように構成されている。保持体は、リング形状を有し、チャンバ内で電子発生器を着脱可能に保持するように構成されている。一つ以上の電源は、電子発生器に保持体を介して電気的に接続される。電子発生器は、基板、複数の電子放出素子、及び複数の第1のコンタクト電極を含む。複数の電子放出素子は、基板の一主面上に設けられている。複数の第1のコンタクト電極は、該一主面の周縁部に設けられている。保持体は、リング本体及び複数の第2のコンタクト電極を含む。リング本体は、リング形状を有する。複数の第2のコンタクト電極は、リング本体上に設けられている。保持体は、複数の電子放出素子がチャンバ内の空間に向けられ、且つ、複数の第1のコンタクト電極が複数の第2のコンタクト電極にそれぞれ接触した状態で電子発生器を保持する。一つ以上の電源は、複数の第2のコンタクト電極のうち対応の第2のコンタクト電極及び複数の第1のコンタクト電極のうち対応の第1のコンタクト電極を介して、複数の電子放出素子のうち対応の電子放出素子に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、電子発生器を容易に交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムを示す図である。
図2】一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。
図3】一つの例示的実施形態に係る電子発生器の平面図である。
図4】一つの例示的実施形態に係る電子発生器の部分拡大断面図である。
図5】一つの例示的実施形態に係る保持体の平面図である。
図6】一つの例示的実施形態に係る保持体の部分拡大断面図である。
図7】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法の対応の工程の後の基板処理装置の状態を示す図である。
図8】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法の対応の工程の後の基板処理装置の状態を示す図である。
図9】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法の対応の工程の後の基板処理装置の状態を示す図である。
図10】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法の対応の工程の後の基板処理装置の状態を示す図である。
図11】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法の対応の工程の後の基板処理装置の状態を示す図である。
図12】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法の対応の工程の後の基板処理装置の状態を示す図である。
図13】別の例示的実施形態に係る電子発生器の平面図である。
図14】別の例示的実施形態に係る電子発生器の部分拡大断面図である。
図15】別の例示的実施形態に係る電子発生器の駆動に関連する構成を示す図である。
図16】別の例示的実施形態に係る電子発生器に印加される電圧のタイミングチャートである。
図17】別の例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。
図18】別の例示的実施形態に係る電子発生器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。基板処理装置は、チャンバ、基板支持部、ガス供給部、電子発生器、保持体、及び一つ以上の電源を備える。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。ガス供給部は、チャンバ内にガスを供給するように構成されている。保持体は、リング形状を有し、チャンバ内で電子発生器を着脱可能に保持するように構成されている。一つ以上の電源は、電子発生器に保持体を介して電気的に接続される。電子発生器は、基板、複数の電子放出素子、及び複数の第1のコンタクト電極を含む。複数の電子放出素子は、基板の一主面上に設けられている。複数の第1のコンタクト電極は、該一主面の周縁部に設けられている。保持体は、リング本体及び複数の第2のコンタクト電極を含む。リング本体は、リング形状を有する。複数の第2のコンタクト電極は、リング本体上に設けられている。保持体は、複数の電子放出素子がチャンバ内の空間に向けられ、且つ、複数の第1のコンタクト電極が複数の第2のコンタクト電極にそれぞれ接触した状態で電子発生器を保持する。一つ以上の電源は、複数の第2のコンタクト電極のうち対応の第2のコンタクト電極及び複数の第1のコンタクト電極のうち対応の第1のコンタクト電極を介して、複数の電子放出素子のうち対応の電子放出素子に電気的に接続される。
【0010】
上記実施形態では、電子発生器は、チャンバ内で保持体によって着脱可能に保持されている。したがって、電子発生器は、チャンバ内で容易に取り外し可能であり、チャンバの外部に容易に搬出することが可能である。また、電子発生器をチャンバ内で保持体によって保持することにより、電子発生器と一つ以上の電源との間の電気的接続が容易に形成される。したがって、電子発生器をチャンバ内で容易に取り付けることが可能である。故に、上記実施形態によれば、電子発生器を容易に交換することが可能となる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、保持体は、外縁部と該外縁部に対して段差を有する内縁部とを含んでいてもよい。複数の第2のコンタクト電極は、少なくとも内縁部に設けられている。電子発生器は、保持体の内縁部上且つ外縁部の内側に配置される。
【0012】
一つの例示的実施形態において、複数の第2のコンタクト電極の各々は、複数の第1のコンタクト電極のうち対応の第1のコンタクト電極に接触する凸部を含んでいてもよい。この実施形態によれば、複数の第2のコンタクト電極の各々と対応の第1のコンタクト電極との間の電気的接続の確実性が高められる。
【0013】
一つの例示的実施形態において、複数の第1のコンタクト電極及び複数の第2のコンタクト電極は、周方向に沿って配列されていてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、リング本体は、絶縁性材料から形成されていてもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置は、一つ以上の電源として複数の電源を備えていてもよい。複数の電源の各々は、複数の電子放出素子のうち一つ以上の対応の電子放出素子に電気的に接続される。この実施形態によれば、複数の電子放出素子が構成する複数の電子放出素子群にそれぞれ与えられる電圧が個別に制御され得る。
【0016】
一つの例示的実施形態において、電子発生器は、複数の第1の電極及び複数の第2の電極を含んでいてもよい。複数の第1の電極は、基板の一主面上で第1の方向に沿って延び、第1の方向に直交する第2の方向に沿って配列されている。複数の第2の電極は、第2の方向に沿って延び、第1の方向に沿って配列されている。複数の第2の電極は、複数の第1の電極と複数の第2の電極との間に絶縁膜が介在するように設けられている。複数の第1の電極と複数の第2の電極が重なる複数の領域は、複数の電子放出素子を構成する。複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、周縁部において複数の第1のコンタクト電極を構成する。この実施形態において、基板処理装置は、スイッチング部及びドライバを更に備えていてもよい。ドライバは、一つ以上の電源に含まれる第1の電源からの電圧を調整して複数の第1の電極に印加するように構成されている。スイッチング部は、一つ以上の電源に含まれる第2の電源からの電圧を複数の第2の電極に順に印加するように構成されている。
【0017】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置は、第1のアクチュエータを更に備えていてもよい。第1のアクチュエータは、保持体をチャンバ内で上下に移動させるように構成されている。保持体は、チャンバの天部と該保持体との間で電子発生器を保持するように構成されていてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置は、複数の電極ピンを更に備えていてもよい。複数の電極ピンは、一つ以上の電源に電気的に接続されており、複数の第2のコンタクト電極に弾性的に接触するように構成されている。
【0019】
一つの例示的実施形態において、チャンバの天部は、電子発生器を静電引力により保持するように構成されていてもよい。
【0020】
一つの例示的実施形態において、チャンバの天部は、その中で冷媒が流れるように形成された流路を提供していてもよい。
【0021】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置は、複数のリフトピン、第2のアクチュエータ、及び制御部を更に備えていてもよい。複数のリフトピンは、基板支持部の上方で基板を支持するように構成されている。第2のアクチュエータは、複数のリフトピンを基板支持部の上面に対して上下に移動させるように構成されている。制御部は、保持体と複数のリフトピンとの間で電子発生器を受け渡すよう、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータを制御するように構成されている。
【0022】
別の例示的実施形態において、基板処理システムが提供される。基板処理システムは、上記基板処理装置と搬送装置を備える。搬送装置は、チャンバ内に進入可能なアームを含み、チャンバの外部に設けられている。制御部は、チャンバ内で電子発生器をアームと複数のリフトピンとの間で受け渡すよう、第2のアクチュエータ及び搬送装置を制御するように構成されている。
【0023】
更に別の例示的実施形態において、上記基板処理システムの運用方法が提供される。運用方法は、第1のアクチュエータを用いて電子発生器と共に保持体を下方に移動させる工程を含む。運用方法は、第2のアクチュエータを用いて複数のリフトピンを上方に移動させることにより、電子発生器を保持体から複数のリフトピンに受け渡す工程を更に含む。運用方法は、アームをチャンバ内に進入させる工程を更に含む。運用方法は、第2のアクチュエータを用いて複数のリフトピンを下方に移動させることにより、電子発生器を複数のリフトピンからアームに受け渡す工程を更に含む。運用方法は、アームをチャンバの内部から外部に移動させることにより、チャンバの内部から電子発生器を搬出する工程を更に含む。
【0024】
一つの例示的実施形態において、運用方法は、第1のアクチュエータを用いて保持体を下方に移動させる工程を更に含む。運用方法は、電子発生器を支持しているアームをチャンバ内に進入させる工程を更に含む。運用方法は、第2のアクチュエータを用いて複数のリフトピンを上方に移動させることにより、電子発生器をアームから複数のリフトピンに受け渡す工程を更に含む。運用方法は、第1のアクチュエータを用いて保持体を上方に移動させることにより電子発生器を複数のリフトピンから保持体に受け渡す工程を更に含む。運用方法は、保持体により電子発生器を保持する工程を更に含む。
【0025】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0026】
図1は、一つの例示的実施形態に係る基板処理システムを示す図である。図1に示す基板処理システムPSは、プロセスモジュールPM1~PM6、搬送モジュールTM、及び制御部MCを備えている。
【0027】
基板処理システムPSは、台2a~2d、容器4a~4d、ローダモジュールLM、アライナAN、及びロードロックモジュールLL1,LL2を更に備えていてもよい。なお、基板処理システムPSにおける台の個数、容器の個数、ロードロックモジュールの個数は一つ以上の任意の個数であり得る。また、基板処理システムPSにおけるプロセスモジュールの個数は、一つ以上の任意の個数であり得る。
【0028】
台2a~2dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。容器4a~4dはそれぞれ、台2a~2d上に搭載されている。容器4a~4dの各々は、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)と称される容器である。容器4a~4dの各々は、その内部に基板Wを収容するように構成されている。容器4a~4dの各々は、後述する電子発生器を収容するように構成されていてもよい。
【0029】
ローダモジュールLMは、チャンバを有する。ローダモジュールLMのチャンバ内の圧力は、大気圧に設定される。ローダモジュールLMは、搬送装置TU1を有する。搬送装置TU1は、例えば搬送ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU1は、ローダモジュールLMのチャンバを介して基板Wを搬送するように構成されている。搬送装置TU1は、容器4a~4dの各々とアライナANとの間、アライナANとロードロックモジュールLL1,LL2の各々との間、ロードロックモジュールLL1,LL2の各々と容器4a~4dの各々との間で、基板Wを搬送し得る。さらに、搬送装置TU1は、電子発生器を搬送するように構成されていてもよい。アライナANは、ローダモジュールLMに接続されている。
【0030】
アライナANは、基板Wの位置の調整(位置の較正)を行うように構成されている。さらに、アライナANは、電子発生器の位置の調整(位置の較正)を行うように構成されていてもよい。
【0031】
ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、ローダモジュールLMと搬送モジュールTMとの間に設けられている。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、予備減圧室を提供している。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、ゲートバルブを介して、ローダモジュールLMに接続されている。また、ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、ゲートバルブを介して搬送モジュールTMに接続されている。
【0032】
搬送モジュールTMは、減圧可能な搬送チャンバTCを有している。搬送モジュールTMは、搬送装置TU2を有している。搬送装置TU2は、例えば搬送ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU2は、プロセスモジュールPM1~PM6の各々のチャンバ内に進入可能なアームを含んでいる。搬送装置TU2は、アームによって支持した基板Wを搬送チャンバTCを介して搬送するように構成されている。搬送装置TU2は、ロードロックモジュールLL1,LL2の各々とプロセスモジュールPM1~PM6の各々との間、及び、プロセスモジュールPM1~PM6のうち任意の二つのプロセスモジュールの間において、基板Wを搬送し得る。さらに、搬送装置TU2は、アームによって支持した電子発生器を搬送するように構成されていてもよい。
【0033】
プロセスモジュールPM1~PM6の各々は、ゲートバルブを介して搬送モジュールTMに接続されている。プロセスモジュールPM1~PM6の各々は、専用の基板処理を行うように構成された装置である。プロセスモジュールPM1~PM6のうち少なくとも一つのプロセスモジュールは、後述する例示的実施形態に係る基板処理装置である。
【0034】
制御部MCは、基板処理システムPSの各部を制御するように構成されている。制御部MCは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり得る。制御部MCは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいて基板処理システムPSの各部を制御する。制御部MCは、後述する基板処理装置の制御部でもある。後述する例示的実施形態に係る運用方法は、制御部MCによる基板処理システムPSの各部の制御により、基板処理システムPSにおいて実行され得る。
【0035】
以下、図2を参照して、例示的実施形態に係る基板処理装置について説明する。図2は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。図2示す基板処理装置1は、チャンバ10、基板支持部12、ガス供給部14、電子発生器16、及び保持体18、及び一つ以上の電源20(図6参照)を備えている。
【0036】
チャンバ10は、内部空間を提供している。チャンバ10は、チャンバ本体10mを含んでいてもよい。チャンバ本体10mは、略円筒形状を有している。チャンバ本体10mは、チャンバ10の側壁を提供している。チャンバ10の内部空間は、チャンバ本体10mの内側に提供されている。チャンバ本体10mは、例えばアルミニウムのような金属から形成されている。チャンバ本体10mは、電気的に接地されている。チャンバ本体10mの内壁面には、耐腐食性を有する膜が形成されていてもよい。耐腐食性を有する膜は、例えば、酸化アルミニウム膜又はイットリア膜である。
【0037】
チャンバ10は、天部10cを更に含んでいてもよい。天部10cは、本体10cmを含んでいる。本体10cmは、例えばアルミニウムのような金属から形成されている。また、本体10cmは、電気的に接地されている。本体10cmは、部材10iと共にチャンバ本体10mの上部開口を閉じるように設けられている。部材10iは、天部10cの本体10cmとチャンバ本体10mの上端との間に介在している。
【0038】
チャンバ10は、その側壁において通路10pを提供している。基板W及び電子発生器16は、チャンバ10の内部と外部との間で搬送されるときに、通路10pを通過する。通路10pは、ゲートバルブによって開閉可能となっている。
【0039】
基板支持部12は、チャンバ10内に設けられている。基板支持部12は、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板支持部12は、その上に載置されるエッジリングERを更に支持してもよい。基板Wは、基板支持部12上、且つ、エッジリングERによって囲まれた領域内に配置される。
【0040】
一実施形態において、基板支持部12は、基台12b及び静電チャック12cを含んでいてもよい。基台12bは、略円盤形状を有している。基台12bは、例えばアルミウムのような金属から形成されている。静電チャック12cは、基台12b上に設けられている。静電チャック12cは、誘電体部と当該誘電体部の中に設けられた電極を含んでいる。静電チャック12cの電極に直流電源から電圧が印加されると、静電チャック12c上に載置された基板Wと静電チャック12cとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック12cに保持される。
【0041】
基板支持部12は、外周部12eを更に含んでいてもよい。外周部12eは、絶縁性材料から形成され得る。外周部12eは、チャンバ10の底部から上方に延在しており、基台12b及び静電チャック12cを囲むように周方向に沿って延在している。基台12bは、外周部12eによって支持されていてもよい。
【0042】
一実施形態において、基板処理装置1は、バッフル部材22を更に備えていてもよい。バッフル部材22は、外周部12eとチャンバ10の側壁との間で延在している。バッフル部材22は、厚み方向にバッフル部材22を貫通する複数の貫通孔を提供している。一実施形態において、基板処理装置1は、排気装置24を更に備えている。排気装置24は、バッフル部材22の下方でチャンバ10内の空間に接続している。
【0043】
一実施形態において、基板処理装置1は、バイアス電源26を更に備えていてもよい。バイアス電源26は、チャンバ10内で生成されたイオンを基板Wに引き込むために、基板支持部12のバイアス電極に電気的に接続されており、バイアス電極にバイアス電圧を印加するように構成されている。バイアス電極は、基台12b又は基板支持部12内の他の導電性部材であってもよい。
【0044】
バイアス電圧は、チャンバ10内で負イオンが生成される場合には、正の電圧であり、チャンバ10内で正イオンが生成される場合には、負の電圧である。バイアス電圧は、直流電圧であってもよい。或いは、バイアス電圧は、バイアス電源26によってバイアス高周波電力がバイアス電極に供給されることにより、バイアス電極に印加されてもよい。なお、バイアス電源26がバイアス高周波電力をバイアス電極に供給する場合には、バイアス電源26とバイアス電極との間に整合器が設けられる。
【0045】
ガス供給部14は、チャンバ10内にガスを供給するように構成されている。図示された例では、ガス供給部14からのガスは、天部10cからチャンバ10内に導入される。しかしながら、ガス供給部14からのガスは、チャンバ10の如何なる箇所からチャンバ10内に導入されてもよい。
【0046】
以下、図2と共に図3及び図4を参照する。図3は、一つの例示的実施形態に係る電子発生器の平面図である。図4は、一つの例示的実施形態に係る電子発生器の部分拡大断面図である。電子発生器16は、基板16s、複数の電子放出素子16e、及び複数の第1のコンタクト電極16cを含んでいる。
【0047】
基板16sは、略円盤形状を有しており、例えばシリコンから形成されている。複数の電子放出素子16eは、電子を放出するように構成されている。図3及び図4に示すように、複数の電子放出素子16eは、基板16sの一主面上に設けられている。複数の電子放出素子16eは、基板16sの一主面上で基板16sの周縁部16pの内側の領域に配置されている。複数の電子放出素子16eは、当該領域において二次元的に分布している。複数の電子放出素子16eは、例えば二次元マトリックス状に配列されている。
【0048】
複数の第1のコンタクト電極16cは、基板16sの一主面上で基板16sの周縁部16p内に設けられている。一実施形態において、複数の第1のコンタクト電極16cは、基板Wの中心軸線を中心として周方向に沿って配列されている。複数の第1のコンタクト電極16cの各々は、複数の電子放出素子16eのうち一つ以上に接続されている。即ち、複数の電子放出素子16eは、各々が一つ以上の電子放出素子16eを含む複数の電子放出素子群を構成している。複数の第1のコンタクト電極16cはそれぞれ、複数の電子放出素子群に接続されている。なお、複数の第1のコンタクト電極16cは、複数の電子放出素子16eに個別に接続されていてもよい。
【0049】
図4に示すように、電子発生器16は、絶縁層16i及び導体層16dを更に含んでいる。絶縁層16iは、基板16sの一主面上に設けられている。絶縁層16iは、例えば酸化シリコンから形成されている。導体層16dは、チタンのような金属から形成されており、絶縁層16i上に設けられている。導体層16dは、複数の電子放出素子16eと、複数の第1のコンタクト電極16cと、複数の電子放出素子16eの各々と対応の第1のコンタクト電極16cとを電気的に接続する配線と、を構成している。絶縁層16iは、部分的に薄く形成された複数の領域を有している。絶縁層16iの当該複数の領域と当該複数の領域上で延在する導体層16dの複数の領域が、複数の電子放出素子16eを構成している。
【0050】
複数の第1のコンタクト電極16cに電圧が印加されると、複数の電子放出素子16eを構成する導体層16dの各領域から電子が放出される。複数の電子放出素子16eの各々から放出される電子のエネルギーは、対応の第1のコンタクト電極16cを介して複数の電子放出素子16eの各々に印加される電圧によって調整される。複数の電子放出素子16eから放出される電子のエネルギーが比較的低い第1のエネルギーである場合には、チャンバ10内のガスに電子が付着して、負イオンが生成される。複数の電子放出素子16eから放出される電子のエネルギーが第1のエネルギーよりも高い第2のエネルギーである場合には、チャンバ10内のガス分子に電子が衝突して、当該ガス分子が解離し、正イオンが生成される。
【0051】
以下、図2と共に図5及び図6を参照する。図5は、一つの例示的実施形態に係る保持体の平面図である。図6は、一つの例示的実施形態に係る保持体の部分拡大断面図である。図6には、図5に示す保持体18のVI-VI線に沿ってとった断面が描かれている。保持体18は、リング形状を有する。保持体18は、チャンバ10内で電子発生器16を着脱可能に保持するように構成されている。
【0052】
保持体18は、リング本体18m及び複数の第2のコンタクト電極18cを含んでいる。リング本体18mは、リング形状を有する板である。リング本体18mは、酸化シリコンのような絶縁性材料から形成され得る。複数の第2のコンタクト電極18cは、リング本体18m上に設けられている。保持体18は、複数の電子放出素子16eがチャンバ10内の空間に向けられ、且つ、複数の第1のコンタクト電極16cが複数の第2のコンタクト電極18cにそれぞれ接触した状態で電子発生器16を保持するように構成されている。一実施形態において、複数の第2のコンタクト電極18cは、複数の複数の第1のコンタクト電極16cと接触可能であるように、周方向に沿って配列されていてもよい。
【0053】
一実施形態において、保持体18は、外縁部18oと内縁部18iを含んでいてもよい。内縁部18iは、外縁部18oに対して段差を有する。この場合に、電子発生器16は、内縁部18i上且つ外縁部18oの内側に配置される。この場合には、外縁部18oと内縁部18iの間の段差を利用して、保持体18上での電子発生器16の位置が決定される。この場合において、複数の第2のコンタクト電極18cは、少なくとも内縁部18iに設けられている。複数の第2のコンタクト電極18cは、内縁部18iから外縁部18oにわたって放射状に延びていてもよい。
【0054】
一実施形態において、複数の第2のコンタクト電極18cの各々は、対応の第1のコンタクト電極16cに接触する凸部18pを含んでいてもよい。凸部18pは、限定されるものではないが、円錐形状を有していてもよい。この場合には、複数の第2のコンタクト電極18cの各々と対応の第1のコンタクト電極16cとの間の電気的接続の確実性が高められる。
【0055】
一実施形態において、保持体18は、図2に示すように、チャンバ10の天部10cと保持体18との間で電子発生器16を保持するように構成されている。この場合に、天部10cは、絶縁部10ciを含んでいる。絶縁部10ciは、絶縁性材料から形成されており、天部10cにおいて保持体18(複数の第2のコンタクト電極18c)が接触する箇所に設けられている。
【0056】
一実施形態において、基板処理装置1は、一つ以上の第1のアクチュエータ28を更に備えていてもよい。図示された例では、基板処理装置1は、複数の第1のアクチュエータ28を備えている。複数の第1のアクチュエータ28は、保持体18をチャンバ10内で上下に移動させるように構成されている。
【0057】
複数の第1のアクチュエータ28の各々は、シャフト28s及び駆動部28dを含んでいてもよい。駆動部28dは、モータ又は油圧式若しくは空気圧式のシリンダであり、チャンバ10の天部10cの上方に設けられている。複数の第1のアクチュエータ28、即ち駆動部28dは、制御部MCによって制御され得る。シャフト28sは、駆動部28dに接続されている。シャフト28sは、駆動部28dから下方に延びて、チャンバ10の天部10cを突き抜けている。シャフト28sの下端は、保持体18の外縁部18oに接続されており、保持体18は、シャフト28sに固定されている。駆動部28dによってシャフト28sが上下に移動されることにより、保持体18が上下に移動される。なお、一対の端板28pが、シャフト28sに沿って配列されていてもよい。これら端板28pの間にはベローズ28bが設けられていてもよい。これら端板28pとベローズ28bにより、チャンバ10内の空間が、シャフト28sの周りで気密に封止される。
【0058】
基板処理装置1は、一つ以上の電源20として複数の電源20を備え得る。複数の電源20の各々は、電子発生器16に保持体18を介して電気的に接続される。図6に示すように、複数の電源20の各々は、対応の第2のコンタクト電極18c及び対応の第1のコンタクト電極16cを介して、対応の電子放出素子16eに電気的に接続される。
【0059】
一実施形態において、基板処理装置1は、複数の電極ピン30を更に備えていてもよい。複数の電極ピン30はそれぞれ、複数の電源20に電気的に接続されている。複数の電極ピン30はそれぞれ、複数の第2のコンタクト電極18cに弾性的に接触するように構成されている。複数の電極ピン30は、図6に示すように、ポゴピンのようなスプリング式電極ピンであってもよい。複数の電極ピン30の各々は、その先端(下端)に第2のコンタクト電極18cが当接したときに生じるスプリングの反力により、第2のコンタクト電極18cに弾性的に接触する。
【0060】
一実施形態において、基板処理装置1は、図2に示すように、複数のリフトピン32及び一つ以上の第2のアクチュエータ34を更に備えていてもよい。図示された例では、基板処理装置1は、複数の第2のアクチュエータ34を備えている。
【0061】
複数のリフトピン32は、基板支持部12の上方で基板を支持するように構成されている。複数のリフトピン32の各々は、基板支持部12に形成された貫通孔を通っている。複数のリフトピン32の各々は、その先端が基板支持部12から上方に突き出すように上方に移動可能であり、その先端を基板支持部12の上面から下方に退避させるように下方に移動可能である。
【0062】
複数の第2のアクチュエータ34は、複数のリフトピン32を基板支持部12の上面に対して上下に移動させるように構成されている。複数の第2のアクチュエータ34の各々は、駆動部34dを含んでいる。駆動部34dは、モータ又は油圧式若しくは空気圧式のシリンダであり、チャンバ10の底部の下方に設けられている。複数のリフトピン32は、対応の第2のアクチュエータ34の駆動部34dに接続されている。複数のリフトピン32の各々は、対応の第2のアクチュエータ34の駆動部34dから上方に延びている。なお、一対の端板34pが、対応のリフトピン32に沿って配列されていてもよい。これら端板34pの間にはベローズ34bが設けられていてもよい。これら端板34pとベローズ34bにより、チャンバ10内の空間が、対応のリフトピン32の周りで気密に封止される。
【0063】
複数の第2のアクチュエータ34、即ち駆動部34dは、制御部MCによって制御され得る。制御部MCは、保持体18と複数のリフトピン32との間で電子発生器16を受け渡すよう、複数の第1のアクチュエータ28及び複数の第2のアクチュエータ34を制御し得る。また、制御部MCは、チャンバ10内で電子発生器16を搬送装置TU2のアームと複数のリフトピン32との間で受け渡すよう、複数の第2のアクチュエータ34及び搬送装置TU2を制御し得る。
【0064】
以上説明したように、基板処理装置1において、電子発生器16は、チャンバ10内で保持体18によって着脱可能に保持される。したがって、電子発生器16は、チャンバ10内で容易に取り外し可能であり、チャンバ10の外部に容易に搬出することが可能である。また、電子発生器16をチャンバ10内で保持体18によって保持することにより、電子発生器16と一つ以上の電源20との間の電気的接続が容易に形成される。したがって、基板処理装置1によれば、電子発生器16をチャンバ10内で容易に取り付けることが可能である。故に、基板処理装置1によれば、電子発生器16を容易に交換することが可能となる。
【0065】
また、上述したように、複数の電源20が、複数の電子放出素子16eのうち一つ以上の対応の電子放出素子16eに電気的に接続されている。したがって、基板処理装置1によれば、複数の電子放出素子16eが構成する複数の電子放出素子群にそれぞれ与えられる電圧が個別に制御され得る。
【0066】
以下、一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法について説明する。運用方法において、基板処理システムPSの各部及び基板処理装置1の各部は、制御部MCによって制御され得る。以下の説明では、図7図12を参照する。図7図12は、一つの例示的実施形態に係る基板処理システムの運用方法の対応の工程の後の基板処理装置の状態を示す図である。
【0067】
まず、運用方法において、電子発生器16がチャンバ10から取り外されて、チャンバ10から搬出される処理について説明する。この処理においては、まず、複数の第1のアクチュエータ28により、図7に示すように、電子発生器16と共に保持体18が下方に移動される。
【0068】
次いで、複数の第2のアクチュエータ34によって、図8に示すように、複数のリフトピン32が上方に移動される。その結果、図8に示すように、電子発生器16は、保持体18から複数のリフトピン32に受け渡される。
【0069】
次いで、図9に示すように、搬送装置TU2が、そのアームTAをチャンバ10内に進入させる。アームTAは、電子発生器16の下方、且つ、保持体18の上方の領域に進入する。
【0070】
次いで、複数の第2のアクチュエータ34によって、複数のリフトピン32が下方に移動される。その結果、図10に示すように、電子発生器16が複数のリフトピン32からアームTAに受け渡される。
【0071】
次いで、搬送装置TU2が、アームTAをチャンバ10の内部から外部に移動させる。その結果、図11に示すように、チャンバ10の内部から電子発生器16が搬出される。
【0072】
以下、運用方法において、電子発生器16がチャンバ10内に搬入されて、チャンバ10内で保持されるまでの処理について説明する。この処理においては、まず、第1のアクチュエータによって、保持体18が下方に移動される。その結果、保持体18のチャンバ10内での位置は、図11に示すような位置となる。
【0073】
次いで、搬送装置TU2が、電子発生器16を支持しているアームTAをチャンバ10内に進入させる。その結果、図10に示すように、チャンバ10内に電子発生器16が搬入される。
【0074】
次いで、複数の第2のアクチュエータ34によって複数のリフトピン32が上方に移動される。その結果、電子発生器16がアームTAから複数のリフトピン32に受け渡される。電子発生器16は、図9に示すように、複数のリフトピン32によって支持される。
【0075】
次いで、複数の第1のアクチュエータ28によって、保持体18が上方に移動される。その結果、電子発生器16が複数のリフトピン32から保持体18に受け渡される。そして、複数の第1のアクチュエータ28によって、保持体18が更に上方に移動されて、図12に示すように、保持体18により電子発生器16が保持される。その結果、複数の電子放出素子16eは、保持体18を介して一つ以上の電源20に電気的に接続される。しかる後に、複数のリフトピン32は、複数の第1のアクチュエータ28によってそれらの先端が基板支持部12の上面に対して下方に退避するように移動される。
【0076】
以下、図13及び図14を参照する。図13は、別の例示的実施形態に係る電子発生器の平面図である。図14は、別の例示的実施形態に係る電子発生器の部分拡大断面図である。図13及び図14に示す電子発生器16Aは、電子発生器16の代わりに基板処理装置1において用いられ得る。電子発生器16Aは、基板16s、複数の電子放出素子16e、及び複数の第1のコンタクト電極16cを含んでいる。
【0077】
電子発生器16Aにおいても、基板16sは、略円盤形状を有しており、例えばシリコンから形成されている。複数の電子放出素子16eは、電子を放出するように構成されている。複数の第1のコンタクト電極16cは、基板16sの一主面上で基板16sの周縁部に設けられている。
【0078】
電子発生器16Aは、絶縁膜16f、絶縁膜16g、複数の第1の電極16y、及び複数の第2の電極16xを更に含んでいる。絶縁膜16fは、酸化シリコンのような絶縁性材料から形成されており、基板16s上に形成されている。
【0079】
電子発生器16Aは、複数の第1の電極16yとして、N個の第1の電極16y1~16yNを含んでいる。複数の第1の電極16yは、帯状をなしており、例えばモリブデンのような金属から形成されている。複数の第1の電極16yは、基板16sの一主面上、即ち、絶縁膜16f上で第1の方向に沿って延びている。複数の第1の電極16yは、絶縁膜16f上で、第1の方向に直交する第2の方向に沿って配列されている。絶縁膜16gは、酸化シリコンのような絶縁性材料から形成されており、複数の第1の電極16y及び絶縁膜16fを覆うように設けられている。
【0080】
電子発生器16Aは、複数の第2の電極16xとして、M個の第2の電極16x1~16xMを含んでいる。複数の第2の電極16xは、帯状をなしており、例えばチタンのような金属から形成されている。複数の第2の電極16xは、第2の方向に沿って延びており、第1の方向に沿って配列されている。複数の第2の電極16xは、複数の第1の電極16yと複数の第2の電極16xとの間に絶縁膜16gが介在するように設けられている。
【0081】
電子発生器16Aにおいては、複数の第1の電極16yと複数の第2の電極16xが互いに重なる複数の領域が、複数の電子放出素子16eを構成している。複数の第1の電極16y及び複数の第2の電極16xは、電子発生器16Aの周縁部において複数の第1のコンタクト電極16cを提供している。
【0082】
以下、図13及び図14と共に、図15及び図16を参照する。図15は、別の例示的実施形態に係る電子発生器の駆動に関連する構成を示す図である。図16は、別の例示的実施形態に係る電子発生器に印加される電圧のタイミングチャートである。図16において、電圧Vx1~VxMはそれぞれ、第2の電極16x1~16xMの電圧を示しており、電圧Vy1~VyNはそれぞれ、第1の電極16y1~16yNの電圧を示している。
【0083】
図15に示すように、電子発生器16Aを用いる場合には、基板処理装置1は、一つ以上の電源20として第1の電源201及び第2の電源202を備える。また、この場合において、基板処理装置1は、ドライバ40及びスイッチング部42を更に備える。
【0084】
ドライバ40は、複数の増幅器を含む。複数の増幅器の各々は、第1の電源201と複数の第1の電極16y(即ち、第1の電極16y1~16yN)のうち対応の第1の電極との間で接続されている。ドライバ40の複数の増幅器の各々は、図16に示すように、第1の電源201からの電圧(即ち、そのレベル)を調整して、調整された電圧を対応の第1の電極に印加するように構成されている。ドライバ40の複数の増幅器の増幅率及び当該増幅率の変化のタイミングは、制御部MCによって制御され得る。
【0085】
スイッチング部42は、複数のスイッチング素子を含んでいる。複数のスイッチング素子の各々は、第2の電源202と複数の第2の電極16x(即ち、第2の電極16x1~16xM)のうち対応の第2の電極との間で接続されている。スイッチング部42は、複数のスイッチング素子を用いて、図16に示すように、第2の電源202からの電圧VONを複数の第2の電極16xに順に印加するように構成されている。なお、第2の電源202からの電圧がそれらに印加されていないときの複数の第2の電極16xの各々の電圧は、VOFFである。スイッチング部42の複数のスイッチング素子の開閉のタイミングは、制御部MCによって制御され得る。
【0086】
電子発生器16Aにおいて、複数の電子放出素子16eの各々には、それを構成する第1の電極16yに印加される電圧(Vy1~VyNのうち対応の電圧)とそれを構成する第2の電極16xに印加される電圧(VON)との間の差の電圧が印加される。複数の電子放出素子16eの各々は、それに印加される電圧に応じたエネルギーを有する電子を放出する。なお、複数の電子放出素子16eの各々は、それを構成する第2の電極16xの電圧がVOFFであるときには、電子を放出しない。
【0087】
以下、図17及び図18を参照する。図17は、別の例示的実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。図18は、別の例示的実施形態に係る電子発生器の平面図である。図17に示す基板処理装置1Bは、基板処理システムPSの一つのプロセスモジュールとして用いられ得る。以下、基板処理装置1Bと基板処理装置1との相違点の観点から、基板処理装置1Bについて説明する。
【0088】
基板処理装置1Bにおいて、天部10cは、静電チャック10eを含んでいる。静電チャック10eは、天部10cの下面を提供している。静電チャック10eは、電子発生器16Bを静電引力により保持するように構成されている。静電チャック10eは、誘電体部と当該誘電体部内に設けられた電極を含んでいる。静電チャック10eの電極に電源からの直流電圧が印加されると、静電チャック10eと電子発生器16Bとの間で静電引力が発生する。電子発生器16Bは、静電引力によって静電チャック10eに引き付けられて、静電チャック10eによって保持される。
【0089】
天部10cの本体10cmは、流路10fを提供している。流路10fは、その中を冷媒が流れるように形成されている。冷媒は、チャンバ10の外部に設けられたチラーユニットから流路10fに供給される。基板処理装置1Bでは、流路10fに冷媒が供給されることにより、天部10cが冷却され、天部10cと電子発生器16Bとの間の熱交換により、電子発生器16Bが冷却される。基板処理装置1Bでは、静電チャック10eに電子発生器16Bが引き付けられているので、電子発生器16Bと天部10cとの間の熱交換が促進される。
【0090】
基板処理装置1Bにおいて、天部10c上には部材50が設けられている。部材50は、天部10cと部材50との間にガス拡散室50dを提供している。天部10cは、ガス拡散室50dから下方に延びる複数のガス孔10hを提供している。図15及び図16に示すように、電子発生器16Bは、複数のガス孔16hを提供している。複数のガス孔16hは、電子発生器16Bを貫通している。複数のガス孔16hはそれぞれ、複数のガス孔10hに連通する。基板処理装置1Bでは、ガス供給部14からのガスは、ガス拡散室50d及び複数のガス孔10hを経由して、複数のガス孔16hからチャンバ10内の空間に導入される。なお、電子発生器16Bの他の構成は、電子発生器16Aの対応の構成と同一である。
【0091】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0092】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0093】
PS…基板処理システム、TU2…搬送装置、1…基板処理装置、10…チャンバ、12…基板支持部、14…ガス供給部、16…電子発生器、16s…基板、16e…電子放出素子、16c…第1のコンタクト電極、18…保持体、18m…リング本体、18c…第2のコンタクト電極、20…電源。
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