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  • 特開-イオン交換システムの運転方法 図1
  • 特開-イオン交換システムの運転方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109499
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】イオン交換システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20230801BHJP
   B01J 49/05 20170101ALI20230801BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20230801BHJP
【FI】
C02F1/42 B
B01J49/05
B01J47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011045
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田村 明之
(72)【発明者】
【氏名】吉松 皓陽
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA03
4D025BA07
4D025BA22
4D025BB10
4D025BB19
4D025CA04
4D025CA06
4D025CA10
(57)【要約】
【課題】各イオン交換塔の再生時期が重なることがないように適切にイオン交換塔の再生を行うことができるイオン交換システムの運転方法を提供する。
【解決手段】各イオン交換塔への原水通水開始時期と純水採水停止時期とを異ならせ、一部のイオン交換塔で再生を行っているときに他のイオン交換塔で純水製造を行うように順番にイオン交換塔の再生を行うイオン交換システムの運転方法において、再生順番が1番及び2番となっているイオン交換塔の双方で純水を製造している状態において、再生順番2番のイオン交換塔における採水残余時間が再生順番1番のイオン交換塔の再生所要時間に達したときには、再生順番1番のイオン交換塔が採水予定量に達していなくても再生順番1番のイオン交換塔の再生を開始する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のイオン交換塔が並列設置されたイオン交換システムを運転する方法であって、
各イオン交換塔への原水通水開始時期と純水採水停止時期とを異ならせ、
一部のイオン交換塔で再生を行っているときに他のイオン交換塔で純水製造を行うように順番にイオン交換塔の再生を行うイオン交換システムの運転方法において、
再生順番が1番及び2番となっているイオン交換塔の双方で純水を製造している状態において、再生順番2番のイオン交換塔における採水残余時間が、再生順番が1番のイオン交換塔の再生所要時間に達したときには、再生順番1番のイオン交換塔が採水予定量に達していなくても再生順番1番のイオン交換塔の再生を開始することを特徴とするイオン交換システムの運転方法。
【請求項2】
3個のイオン交換塔が設置されており、すべてのイオン交換塔で純水を製造する時間帯が存在する、請求項1のイオン交換システムの運転方法。
【請求項3】
前記イオン交換塔にイオン交換体としてイオン交換樹脂が充填されている、請求項1又は2のイオン交換システムの運転方法。
【請求項4】
各イオン交換塔の容積が同一であり、同一種類のイオン交換樹脂が同一量充填されている、請求項3のイオン交換システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂等のイオン交換体を有したイオン交換塔(軟水器、イオン交換器等と称されることもある。)に原水(被処理水)を通水して純水を得るイオン交換システムの運転方法に係り、特に複数のイオン交換塔が並列設置されている場合の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のイオン交換塔を並列に設置し、一部のイオン交換塔に原水を通水して純水を製造しているときに他のイオン交換塔でイオン交換体の再生を行うイオン交換システムの運転方法が広く行われている(特許文献1~3)。
【0003】
特許文献1~3には、2個のイオン交換塔が並列に設置され、一方のイオン交換塔で純水を製造しているときに他方のイオン交換塔の再生を行うことが記載されている。
【0004】
特許文献3の図3には、3個の軟水器を並列した場合も記載されている。この場合、1つの軟水器で純水を製造しているときに、他の1つの軟水器の再生を行い、残りの1つの軟水器を待機状態とするように運転が行われる。
【0005】
なお、並列設置されたイオン交換塔のうち2個以上のものを同時に再生することは、再生薬液の供給系統の構成が複雑になったり、廃液タンク容量の制約があったりするため、実際には行われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-15265号公報
【特許文献2】特開平10-272370号公報
【特許文献3】特開2003-1249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数のイオン交換塔を並列に設置したイオン交換塔システムにおいて、複数のイオン交換塔で純水製造を行い、1個のイオン交換塔の破過が近づいたときには、該1個のイオン交換塔を他のイオン交換塔に先行して再生を行うことがある。
【0008】
この場合、先行して再生を開始しているイオン交換塔の再生が終了する前に他のイオン交換塔も破過してしまうと、いずれのイオン交換塔でも、純水製造を行うことができなくなってしまう。
【0009】
イオン交換塔が破過状態となっているにも拘らず採水を継続すると、純水の水質が基準値よりも悪化することになる。
【0010】
本発明は、複数のイオン交換塔が並列に設置されているイオン交換システムを運転する方法において、複数のイオン交換塔で良好な水質の純水を効率よく製造することができ、しかも各イオン交換塔の再生時期が重なることがないように適切にイオン交換塔の再生を行うことができるイオン交換システムの運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のイオン交換システムの運転方法は、複数のイオン交換塔が並列設置されたイオン交換システムを運転する方法であって、
各イオン交換塔への原水通水開始時期と純水採水停止時期とを異ならせ、
一部のイオン交換塔で再生を行っているときに他のイオン交換塔で純水製造を行うように順番にイオン交換塔の再生を行うイオン交換システムの運転方法において、
再生順番が1番及び2番となっているイオン交換塔の双方で純水を製造している状態において、再生順番2番のイオン交換塔における採水残余時間(採水予定量に達するまでの時間)が、再生順番が1番のイオン交換塔の再生所要時間(再生に要する時間)に達したときには、再生順番1番のイオン交換塔が採水予定量に達していなくても再生順番1番のイオン交換塔の再生を開始することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様では、3個のイオン交換塔が設置されており、すべてのイオン交換塔で純水を製造する時間帯が存在する。
【0013】
本発明の一態様では、前記イオン交換塔にイオン交換体としてイオン交換樹脂が充填されている。
【0014】
本発明の一態様では、各イオン交換塔の容積が同一であり、同一種類のイオン交換樹脂が同一量充填されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のイオン交換システムの運転方法では、再生順番が1番及び2番となっているイオン交換塔の双方で純水を製造している状態にあるときに、再生順番2番のイオン交換塔の採水残余時間(採水予定量に達するまでの時間)が、再生順番1番のイオン交換塔の再生所要時間に達したときには、1番のイオン交換塔がまだ採水予定量に達していなくても該1番のイオン交換塔の再生を開始する。
【0016】
このため、1番のイオン交換塔の再生が終了した時点では、2番のイオン交換塔ではまだ採水予定量に到達していない。従って、1番と2番のイオン交換塔の再生時期が重なることがない。
【0017】
本発明の一態様では、再生終了後のイオン交換塔を長時間にわたって待機状態にしておくことがなく、イオン交換塔の稼動効率がよく、純水製造効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】イオン交換システムの構成図である。
図2】各イオン交換塔の採水量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0020】
[イオン交換システムの構成]
図1は実施の形態に係るイオン交換システムの運転方法が適用されるイオン交換システムの構成図である。この実施の形態では、3個のイオン交換塔が並列設置されているが、2又は4以上のイオン交換塔が並列設置されてもよい。なお、イオン交換塔は、軟水器、イオン交換器等と称されるものを包含する。
【0021】
原水(被処理水)は、原水配管10から、各分岐配管11,12,13及びバルブ21,22,23を介してイオン交換塔A,B又はCに導入可能とされている。イオン交換塔A,B,C内には、イオン交換体としてイオン交換樹脂が充填されている。
【0022】
イオン交換処理により生じた純水は、イオン交換塔A,B,Cからバルブ31,32,33を有した分岐配管41,42,43及び集合配管40を通って取り出される。各分岐配管41,42,43には流量計51,52,53が設けられている。また、図示は省略するが、各分岐配管41,42,43には水質センサが設けられている。水質センサとしては導電率計、比抵抗計などを用いることができるが、これに限定されない。
【0023】
イオン交換樹脂の再生液が、集合配管60から、バルブ71,72,73を有した分岐配管61,62,63を介してイオン交換塔A,B,Cに導入可能とされている。イオン交換樹脂の再生排水は、バルブ81,82,83を有した分岐配管91,92,93及び集合配管90を介して排出可能とされている。
【0024】
各イオン交換塔A,B,Cの容積、形状、イオン交換樹脂の種類及びイオン交換樹脂充填量は同一である。
【0025】
各イオン交換塔A,B,Cの採水可能量、すなわち原水を通水開始してから、純水水質(例えば導電率)が所定水質以上を維持している間に得られる純水量を採水予定量Qとする。
【0026】
各流量計51,52,53の検出流量は制御器(図示略)に送信される。制御器は、この検出流出を積算し、積算流量と採水予定量Qとに基づいて各バルブの切り替えを行う。
【0027】
[イオン交換システムの運転手順]
このイオン交換システムの運転を開始しようとする初期状態にあっては、各イオン交換塔A~Cに同一種類の新品(又は再生済み)のイオン交換樹脂が同一量充填されている。
原水は、まず配管10,11を介してイオン交換塔Aにのみ通水され、製造された純水はイオン交換塔Aから配管41,40を介して取り出される。この場合、バルブ21,31が開とされ、その他のバルブは閉とされている。配管41を流れる純水の流量が流量計51で検出され、この流量データは制御器(図示略)に送信され、積算される。
【0028】
このイオン交換塔Aの積算流量が規定積算流量Sに到達したならば、イオン交換塔Bにも原水の通水を開始する。この場合、バルブ21,22,31,32が開状態とされ、他のバルブは閉のままとされる。流量計52の積算流量も制御器で積算される。
【0029】
本発明の一態様では、上記のイオン交換塔Bにも原水の通水を開始するときのイオン交換塔Aの規定積算流量S(m)は、イオン交換塔Aへの通水流量V(m/h)で、イオン交換塔Aの採水予定量をQ(m)とした場合、(Q―S)/Vがイオン交換塔Aの再生所要時間以上、好ましくは(Q―S)/Vがイオン交換塔Aの再生所要時間の100~50%、特に好ましくは80~60%となるように設定される。イオン交換塔B,Cの規定積算流量Sも同様である。
【0030】
イオン交換塔Bからの純水の積算流量が規定積算流量Sに到達したならば、イオン交換塔Cにも原水の通水を開始する。この場合、バルブ21~23、31~33が開状態とされ、他のバルブは閉のままとされる。流量計53の積算流量も制御器で積算される。この時点では、図2(1)のように、すべてのイオン交換塔A,B,Cで純水が製造されている。
【0031】
図2(1)の状態では、イオン交換塔Aが再生順番1番、イオン交換塔Bが再生順番2番、イオン交換塔Cが再生順番3番である。この図2(1)の状態において、イオン交換塔Bの採水残余時間(採水予定量Qに達するまでの時間)が、イオン交換塔Aの再生所要時間に達したならば、イオン交換塔Aの採水量がまだ採水予定量Qに達していなくても、イオン交換塔Aの再生を開始する。この再生は、イオン交換塔Aに再生液を通液することにより行われる。
【0032】
このように、イオン交換塔Bの採水残余時間が十分に(イオン交換塔Aの再生所要時間よりも長く)残っているうちにイオン交換塔Aの再生を開始するので、イオン交換塔Aの再生が終了した時点では、イオン交換塔Bはまだ採水予定量Qに達していない。
【0033】
イオン交換塔Aの再生が終了した後、イオン交換塔Aへの原水供給を再開する。これにより、図2(2)の状態となる。
【0034】
この図2(2)の状態では、イオン交換塔Bが再生順番1番、イオン交換塔Cが再生順番2番、イオン交換塔Aが再生順番3番である。この図2(2)の状態において、イオン交換塔Cの採水残余時間がイオン交換塔Bの再生所要時間に達したならば、イオン交換塔Bの採水量がまだ採水予定量Qに達していなくても、イオン交換塔Bの再生を開始する。
【0035】
このように、イオン交換塔Cの採水残余時間が十分に(イオン交換塔Bの再生所要時間よりも長く)残っているうちにイオン交換塔Bの再生を開始するので、イオン交換塔Bの再生が終了した時点では、イオン交換塔Cはまだ採水予定量Qに達していない。この再生が終了した後、イオン交換塔Bへの原水供給を再開する。これにより、図2(3)の状態となる。
【0036】
この状態では、イオン交換塔Cが再生順番1番、イオン交換塔Aが再生順番2番、イオン交換塔Bが再生順番3番である。この図2(3)の状態において、イオン交換塔Aの採水残余時間が、イオン交換塔Cの再生所要時間に達したならば、イオン交換塔Cの採水量がまだ採水予定量Qに達していなくても、イオン交換塔Cの再生を開始する。
【0037】
このように、イオン交換塔Aの採水残余時間が十分に(イオン交換塔Cの再生所要時間よりも長く)残っているうちにイオン交換塔Cの再生を開始するので、イオン交換塔Cの再生が終了した時点では、イオン交換塔Aはまだ採水予定量Qに達していない。
【0038】
イオン交換塔Cの再生が終了した後、イオン交換塔Cへの原水供給を再開する。これにより、図2(1)の状態となる。
【0039】
以下、図2(1)→(2)→(3)の工程を繰り返す。。
【0040】
従って、このシステムでは、イオン交換塔A,B,Cの3個で純水が製造される運転状態と、2個のイオン交換塔で純水が製造され1個で再生が行われる運転状態とが繰り返されることになる。そのため、各イオン交換塔が長時間待機状態におかれることがなく、イオン交換塔の稼動効率が高いので、純水が効率よく製造される。また、イオン交換塔Aの再生中にはイオン交換塔B,Cにイオン交換容量が残存し、イオン交換塔Bの再生中にはイオン交換塔C,Aにイオン交換容量が残存し、イオン交換塔Cの再生中にはイオン交換塔A,Bにイオン交換容量が残存しており、純水を切れ目なく連続して且つ安定して製造することができる。
【0041】
なお、図2では、イオン交換塔Aの再生開始時にはイオン交換塔Cに原水が通水され、イオン交換塔Bの再生開始時にはイオン交換塔Aに原水が通水され、イオン交換塔Cの再生開始時にはイオン交換塔Bに原水が通水されており、すべてイオン交換塔に原水を通水する時間帯が存在する。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、イオン交換塔Aの再生開始とイオン交換塔Cへの原水通水開始とを略同時としてもよく、イオン交換塔Bの再生開始とイオン交換塔Aへの原水通水開始とを略同時としてもよく、イオン交換塔Cの再生開始とイオン交換塔Bへの原水通水開始とを略同時としてもよい。
【0042】
本発明の一態様では、イオン交換塔A~Cの採水予定量Qは、予め原水の水質とイオン交換樹脂のイオン交換容量とに基づいて設定しておく。
【0043】
また、本発明の一態様では、イオン交換塔A~Cの再生所要時間については、予め該イオン交換塔の過去の運転実績値や、設計計算値及び運転実測値に基づいて設定しておく。
【0044】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【符号の説明】
【0045】
11~13,41~43,61~63,91~93 分岐配管
21~23,31~33,71~73,81~83 バルブ
51~53 流量計
図1
図2