(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109544
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】流体流通システム
(51)【国際特許分類】
F03G 7/00 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
F03G7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011110
(22)【出願日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 将人
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 良一
(72)【発明者】
【氏名】相澤 望
(72)【発明者】
【氏名】村井 祐一
(72)【発明者】
【氏名】田坂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】堀本 康文
(72)【発明者】
【氏名】梅村 崇弘
(57)【要約】
【課題】流体流通システムにおいて、タービンの適用により生じる流体の圧力低下の影響を抑制する。
【解決手段】流体流通システムは、流通する流体の圧力を減圧する減圧機構部と、前記減圧機構部に設けられ、前記減圧機構部において流通する流体によって回転するタービンと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通する流体の圧力を減圧する減圧機構部と、
前記減圧機構部に設けられ、前記減圧機構部において流通する流体によって回転するタービンと、
を備える流体流通システム。
【請求項2】
前記減圧機構部は、ガバナユニットであり、
前記タービンは、
前記ガバナユニットにおいて、前記流体の圧力を減圧する減圧部に対する流通方向上流側の上流部に配置されている
請求項1に記載の流体流通システム。
【請求項3】
前記上流部は、前記減圧部に対する上流側で前記減圧部に隣接する
請求項2に記載の流体流通システム。
【請求項4】
前記上流部に対する上流側で前記上流部に隣接する隣接部、を備え、
前記上流部の流路断面積は、前記隣接部の流路断面積及び前記減圧部の流路断面積よりも小さい
請求項2又は3に記載の流体流通システム。
【請求項5】
前記ガバナユニットは、前記上流部、前記タービン及び前記減圧部が収容された筐体を有する
請求項2~4のいずれか1項に記載の流体流通システム。
【請求項6】
前記ガバナユニットは、前記タービンの回転力により発電する発電機、をさらに有し、
前記発電機は、前記筐体に収容されている
請求項5に記載の流体流通システム。
【請求項7】
前記タービンは、
前記減圧機構部としてのガス管の管軸方向に対して直交する回転軸方向周りに回転可能に前記ガス管内に支持され、ガスの流れを受ける凹曲面を有する中空半球状に形成された第一、第二ブレードを備え、
前記第一ブレードの前記凹曲面が前記管軸方向の一方側を向いた状態において、前記第二ブレードの前記凹曲面が前記管軸方向の他方側を向き、且つ、前記第一、第二ブレードは、一部がオーバーラップしつつ前記管軸方向及び前記回転軸方向に対する直交方向にずれて配置されている
請求項1~6のいずれか1項に記載の流体流通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流通システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、給水管に対してサボニウス型のタービンを配置し、エネルギーを取り出す構成が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S. Abdolkarim Payambarpour, Amir F. Najafi, Franco Magagnato, Investigation of deflector geometry and turbine aspect ratio effect on 3D modified in-pipe hydro Savonius turbine: Parametric study:, Renewable Energy 148(2020)44-59
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流通管等の流通部によって流体を流通させる流体流通システムに対して、エネルギーを取り出すためのタービンを適用すると、タービンの回転が流体の流通抵抗となり、流体の圧力が低下するなどの影響が生じる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、流体流通システムにおいて、タービンの適用により生じる流体の圧力低下の影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る流体流通システムは、流通する流体の圧力を減圧する減圧機構部と、前記減圧機構部に設けられ、前記減圧機構部において流通する流体によって回転するタービンと、を備える。
【0007】
このように、第1態様の構成では、流体流通システムにおいて、流通する流体の圧力を減圧する減圧機構部に対して、タービンが設けられている。したがって、第1態様の構成によれば、流体流通システムにおいて、減圧が予定されている部分である減圧機構部でタービンが回転することになるので、タービンの適用により生じる流体の圧力低下の影響を抑制することができる。
【0008】
第2態様に係る流体流通システムでは、第1態様において、前記減圧機構部は、ガバナユニットであり、前記タービンは、前記ガバナユニットにおいて、前記流体の圧力を減圧する減圧部に対する流通方向上流側の上流部に配置されている。
【0009】
ここで、タービンが、ガバナユニットにおいて減圧部に対する流通方向下流側の下流部に配置されている場合では、ガバナユニットにおいてガスの圧力が減圧された部分からエネルギーを獲得することになる。
【0010】
これに対して、第2態様の構成によれば、ガバナユニットにおいて減圧部による減圧前の高圧となっている部分からエネルギーを獲得できる。したがって、第2態様の構成によれば、ガバナユニット内において、ガスが有する運動エネルギー(動圧)のみならず、圧力エネルギー(静圧)を回転力に変換することができる。この結果、第2態様の構成によれば、タービンが、ガバナユニットにおいて減圧部に対する流通方向下流側の下流部に配置されている場合に比べ、流体から高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0011】
第3態様に係る流体流通システムでは、第2態様において、前記上流部は、前記減圧部に対する上流側で前記減圧部に隣接する。
【0012】
第3態様の構成では、タービンが、減圧部に対する上流側で減圧部に隣接する上流部に配置されるため、タービンと減圧部とを集約して配置することができる。
【0013】
第4態様に係る流体流通システムは、第2態様又は第3態様において、前記上流部に対する上流側で前記上流部に隣接する隣接部、を備え、前記上流部の流路断面積は、前記隣接部の流路断面積及び前記減圧部の流路断面積よりも小さい。
【0014】
第4態様の構成では、タービンが配置される上流部の流路断面積が、隣接部の流路断面積及び減圧部の流路断面積よりも小さいため、上流部において流通する流体の流速を高めることができる。この結果、流体から高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0015】
第5態様に係る流体流通システムでは、第2~第4態様のいずれか1つにおいて、前記ガバナユニットは、前記上流部、前記タービン及び前記減圧部が収容された筐体を有する。
【0016】
第5態様の構成では、ガバナユニットが有する筐体に、上流部、タービン及び減圧部が収容されている。このため、上流部、タービン及び減圧部が、筐体内に集約され、上流部、タービン及び減圧部の少なくとも1つが筐体外に配置された構成に比べ、構成がコンパクトになる。
【0017】
第6態様に係る流体流通システムでは、第5態様において、前記ガバナユニットは、前記タービンの回転力により発電する発電機、をさらに有し、前記発電機は、前記筐体に収容されている。
【0018】
第6態様の構成では、筐体に発電機が収容されている。このため、上流部、タービン及び減圧部に加えて、発電機が、筐体内に集約され、発電機が筐体外に配置された構成に比べ、構成がコンパクトになる。
【0019】
第7態様に係る流体流通システムでは、第1~第6態様のいずれか1つにおいて、前記タービンは、前記減圧機構部としてのガス管の管軸方向に対して直交する回転軸方向周りに回転可能に前記ガス管内に支持され、ガスの流れを受ける凹曲面を有する中空半球状に形成された第一、第二ブレードを備え、前記第一ブレードの前記凹曲面が前記管軸方向の一方側を向いた状態において、前記第二ブレードの前記凹曲面が前記管軸方向の他方側を向き、且つ、前記第一、第二ブレードは、一部がオーバーラップしつつ前記管軸方向及び前記回転軸方向に対する直交方向にずれて配置されている。
【0020】
第7態様の構成によれば、第一、第二ブレードの凹曲面が、ガスの流れを受けて、タービンが予め定められた回転方向に回転する。このとき、ガスは、第一ブレードと第二ブレードとの間をS字状に流れる。
【0021】
これにより、ガス管内のガスが有する運動エネルギー(動圧)のみならず、圧力エネルギー(静圧)を回転力に変換することができる。この結果、第7態様の構成によれば、ガスから高効率にエネルギーを獲得することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成としたので、流体流通システムにおいて、タービンの適用により生じる流体の圧力低下の影響を抑制できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係るガス供給システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係るタービンの構成を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るタービンの構成を示す正面図である。
【
図4】本実施形態に係るタービンの構成を示す平面図である。
【
図5】本実施形態に係るタービンの構成を示す側面図である。
【
図6】本実施形態に係るタービンの構成を示す平断面図である。
【
図7】本実施形態及び比較例に係るタービンにおけるガスの流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0025】
<ガス供給システム10>
本実施形態に係るガス供給システム10の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るガス供給システム10の構成を示す概略図である。
【0026】
ガス供給システム10は、ガス(すなわち気体)を供給するシステムである。具体的には、ガス供給システム10は、例えば、供給源(例えば、ガス製造所)から需要家(例えば、一般の家庭、商業施設、及び工業施設等)へ都市ガスを供給するシステムであり、
図1に示されるように、第一ガス管11と、第二ガス管12と、ガバナユニット20と、タービン50と、発電機60と、を備えている。なお、ガス供給システム10において、ガスが流通する方向をガス流通方向という。また、ガス供給システム10は、流体を流通させる流体流通システムの一例である。第一ガス管11及び第二ガス管12は、流体を流通させる流通部の一例である。このように、流通部の一例としては、複数の構成要素で構成されていてもよいし、1つの構成要素で構成されていてもよい。さらに、ガスは、流体の一例である。
【0027】
第一ガス管11は、ガス供給システム10において、第二ガス管12に対する供給源側(すなわち、ガス流通方向の上流側)に配置されている。第一ガス管11は、第二ガス管12におけるガス圧よりも高圧の都市ガスを流通させるガス管である。
【0028】
第二ガス管12は、ガス供給システム10において、第一ガス管11に対する需要家側(すなわち、ガス流通方向の下流側)に配置されている。第二ガス管12は、第一ガス管11におけるガス圧よりも低圧の都市ガスを流通させるガス管である。
【0029】
ガバナユニット20は、ガス供給システム10において、第一ガス管11と第二ガス管12との間に配置されている。すなわち、ガバナユニット20は、ガス供給システム10において、第一ガス管11に対するガス流通方向の下流側であって、第二ガス管12に対するガス流通方向の上流側に配置されている。
【0030】
ガバナユニット20は、第一ガス管11と第二ガス管12との間で、第一ガス管11から第二ガス管12へ流通するガスを整圧する整圧器として機能する。なお、ガバナユニット20は、減圧機構部の一例である。具体的には、ガバナユニット20は、第一ガス管11からのガスを減圧して、第二ガス管12へ送る。
【0031】
ガバナユニット20は、ガス管22を含むガス流通構成部26と、減圧部24と、筐体28と、を有している。筐体28は、ガス管22を含むガス流通構成部26と、減圧部24と、が収容される構成部である。ガス管22は、上流部の一例である。
【0032】
ガス流通構成部26は、ガスを流通させる構成部であり、ガス管22と、その他のガス管及び弁などの構成要素と、を有している。ガス流通構成部26では、第一ガス管11が接続される入口25から、第二ガス管12が接続される出口27までガスを流通させる(矢印20A、20B、20C、20D参照)。
【0033】
減圧部24は、ガバナユニット20において、ガスを減圧する構成部である。ガス管22は、減圧部24に対するガス流通方向の上流側に配置されている。具体的には、ガス管22は、減圧部24に対するガス流通方向の上流側で、減圧部24に対して接続されている。すなわち、ガス管22は、減圧部24に対するガス流通方向の上流側で、減圧部24に隣接している。ガス管22は、ガス管22に対して流通方向の上流側でガス管22に隣接する隣接部23、及びガス管22に対して流通方向の下流側で接続された構成要素(具体的には減圧部24)よりも、流路径(すなわち流路の断面積)が小さくされている。本実施形態では、ガス管22は、例えば、フランジによって、減圧部24に対して直接接続される。
【0034】
減圧部24は、一例として、本体スリーブ及びパイロットガバナで構成されている。減圧部24では、二次側圧力が設定圧力より減少すると、パイロットガバナが開き、制御圧力が減少することで、本体スリーブが開き、一次側の流体が二次側に流入する。一方、二次側圧力が設定圧力より上昇すると、パイロットガバナが閉止し、制御圧力が上昇することで、本体スリーブが閉じ、一次側から二次側への流体の流入が止まる。
【0035】
隣接部23は、具体的には、緊急遮断弁であり、何らかの理由で二次側圧力が遮断弁の設定圧力を超過した場合、遮断弁が閉止し、流体の流入を停止させる機能を持つ。
【0036】
なお、ガバナユニット20では、後述するように、ガス管22に対してタービン50が配置される。また、ガバナユニット20を流通するガスは、タービン50によって減圧され、さらに、減圧部24で減圧される。したがって、ガバナユニット20において矢印20A、20Bで示される流路でのガス、矢印20Cで示される流路でのガス、及び矢印20Dで示される流路でのガスは、この順で徐々に低圧になっていく。このように、タービン50は、ガバナユニット20において、ガスを減圧する減圧機能を有する構成要素でもある。
【0037】
また、発電機60は、ガス管22の外周部(
図1及び
図2における上方側)に設けられている。この発電機60は、筐体28に収容されている。発電機60は、タービン50の回転力により発電する。具体的には、発電機60は、タービン50によって後述の回転軸55が回転することで発電する。発電機60により発電した電力は、例えば、ガバナユニット20に設置された圧力計や流量計により計測された、圧力及び流量等のデータの常時遠隔監視と、地震災害時の遠隔再稼働などにおいて利用することができる。なお、発電機60のコネクタ(図示省略)に対しては、例えば、筐体28外部から接続可能とされる。
【0038】
<タービン50>
図2~
図6は、タービン50の構成を示す図である。なお、
図2では、タービン50の構成を示すため、ガス管22の一部を切り欠いて図示している。
【0039】
図2~
図6に示されるタービン50は、ガバナユニット20で流通するガスが有するエネルギーを回転力に変換して、当該エネルギーを取り出す機構である。このタービン50は、
図1及び
図2に示されるように、ガバナユニット20に備えられたガス管22に配置されている。すなわち、タービン50は、ガバナユニット20において減圧部24に対する流通方向上流側の上流部としてのガス管22に配置されている。
【0040】
本実施形態では、タービン50は、所謂サボニウス型のタービンで構成されている。具体的には、タービン50は、
図2~
図6に示されるように、第一ブレード51と、第二ブレード52と、第一スペーサ53と、第二スペーサ54と、回転軸55と、を有している。以下では、第一ブレード51及び第二ブレード52を「第一、第二ブレード51、52」と表記し、第一スペーサ53及び第二スペーサ54を「第一、第二スペーサ53、54」と表記する場合がある。
【0041】
タービン50は、垂直軸型のタービンであり、回転軸55がガス管22の管軸方向Xに対して直交する回転軸方向Yに沿って配置されている。第一、第二ブレード51、52、及び第一、第二スペーサ53、54は、回転軸55によって、回転軸方向Y周りに回転可能にガス管22内に支持されている。
【0042】
なお、各図では、管軸方向Xが矢印Xにて示され、回転軸方向Yが矢印Yにて示されている。さらに、各図では、管軸方向X及び回転軸方向Yに直交する直交方向Zが矢印Zにて示されている。
【0043】
第一、第二ブレード51、52は、ガスの流れを受ける凹曲面513、523を有する中空半球状に形成されている。すなわち、第一、第二ブレード51、52は、半球状の空間518、528と、前述の凹曲面513、523(すなわち内周面)と、凸曲面515、525(すなわち外周面)と、端面514、524と、を有している。
【0044】
第一、第二ブレード51、52(凹曲面513、523及び凸曲面515、525を含む)は、
図6に示されるように、水平断面(すなわち、XZ断面)において、円弧状に形成されている。第一、第二ブレード51、52の内径(すなわち凹曲面513、523の径)及び外径(すなわち凸曲面515、525の径)は、回転軸方向Yの中央で最大となり、回転軸方向Yの中央から一方側(すなわち
図3及び
図4の上方側)及び他方側(すなわち
図3及び
図4の下方側)に向かうにつれて徐々に小さくなっている。
【0045】
第一、第二ブレード51、52の厚みは、一定とされている。なお、第一、第二ブレード51、52の厚みは、変化していてもよい。例えば、第一、第二ブレード51、52の厚みは、回転軸方向Yの中央で最大となり、回転軸方向Yの中央から一方側(すなわち
図3及び
図4の上方側)及び他方側(すなわち
図3及び
図4の下方側)に向かうにつれて徐々に小さくなる構成であってもよい。
【0046】
第一、第二ブレード51、52は、完全な半球状である必要はない。例えば、第一、第二ブレード51、52は、前述のように、水平断面において円弧状に形成され、内径及び外径が、回転軸方向Yの中央で最大となり、回転軸方向Yの中央から一方側(すなわち
図3及び
図4の上方側)及び他方側(すなわち
図3及び
図4の下方側)に向かうにつれて徐々に小さくなる形状とされる。
【0047】
図6に示されるように、第一ブレード51の凹曲面513及び端面514が、管軸方向Xの一方側を向いた状態(以下、第一状態という)において、第二ブレード52の凹曲面523及び端面524が、管軸方向Xの他方側を向き、且つ、第一、第二ブレード51、52は、一部がオーバーラップしつつ直交方向Zにずれて配置されている。
【0048】
第一、第二ブレード51、52の全体に対するオーバーラップ率が、第一、第二ブレード51、52の間を流通するガスにおいてチョーキング現象が生じないオーバーラップ率とされている。具体的には、第一、第二ブレード51、52の全体に対するオーバーラップ率が、1%以上80%以下の範囲で設定されている。
【0049】
なお、チョーキング現象とは、第一ブレード51と第二ブレード52との間を流れるガスの流速が音速程度となることで、質量流量が頭打ちになる現象である。なお、チョーキング現象は、ガス等の圧縮性流体特有の現象であり、圧縮性を有さない流体(例えば水等の液体)では、チョーキング現象は生じない。
【0050】
オーバーラップ率は、具体的には、S/D×100によって算出される(
図6参照)。Sは、タービン50の第一状態において、第一ブレード51と第二ブレード52との隙間における直交方向Zの寸法である。Dは、タービン50の第一状態において、第一ブレード51及び第二ブレード52の全体の直交方向Zの寸法である。したがって、Dは、タービン50の回転軌跡の直径と把握できる。
【0051】
第一スペーサ53は、第一、第二ブレード51、52に対する回転軸方向Yの一方側(すなわち
図3及び
図4の上方側)に設けられている。第一スペーサ53は、当該一方側の面536が、当該一方側へ凸状となる曲面で形成されている。
【0052】
第二スペーサ54は、第一、第二ブレード51、52に対する回転軸方向Yの他方側(すなわち
図3及び
図4の下方側)に設けられている。第二スペーサ54は、当該他方側の面546が、当該他方側へ凸状となる曲面で形成されている。
【0053】
タービン50は、第一状態において、
図3に示されるように、管軸方向Xに見て、第一、第二ブレード51、52、及び第一、第二スペーサ53、54によって円形状に形成されている。当該円形は、具体的には、ガス管22と同軸の円形とされることが好ましい。すなわち、タービン50とガス管22の内壁との隙間Eが、周方向において、一定の寸法とされることが好ましい。なお、Dは、例えば110mm以上120mm以下とされ、ガス管22の内径DAは、例えば114mm以上124mm以下とされ、隙間Eは、例えば2mm程度とされる。
【0054】
そして、タービン50では、第一、第二ブレード51、52の凹曲面513、523が、ガスの流れを受けて、予め定められた回転方向(
図6における時計回り方向)に回転する。すなわち、ガス供給システム10では、タービン50がガス管22内のガスから受ける抗力によって回転する方式を用いている。
【0055】
さらに、タービン50は、前述のように、第一状態において、第二ブレード52の凹曲面523及び端面524が、管軸方向Xの他方側を向き、且つ、第一、第二ブレード51、52は、一部がオーバーラップしつつ直交方向Zにずれて配置されている(
図6参照)。この構成により、タービン50がオーバーラップ部を有さない場合(
図7(C)参照)とは異なり、第一、第二ブレード51、52の間に、ガスが流通するS字状のガス通路59が形成される(
図7(B)参照)。このように、第一、第二ブレード51、52の間に、S字状のガス通路59を形成することで、
図7(B)に示されるように、ガスの進路が、2回反転するため、その反動力で第一、第二ブレード51、52のトルクを増強させることができる。
【0056】
さらに、タービン50が開放空間に配置される場合(
図7(A)参照)と異なり、タービン50が閉鎖空間であるガス管22に配置される場合(
図7(B)参照)では、ガス管22による流れの拘束作用によって、ガス通路59にガスが集中して流れる。その際、圧縮ガスの膨張作用により、ガス通路59でのガスの流れはさらに高速となり、大きな反動力を獲得する。
【0057】
また、ガスの流れが、ガス通路59に集中される構成により、第一、第二ブレード51、52は、外部モータによる助走なしの動作で自然に回転が始動する自己起動性を有する。
【0058】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の構成では、ガス供給システム10において、第一ガス管11におけるガスの圧力を減圧するガバナユニット20に対して、タービン50が設けられている。したがって、本実施形態の構成によれば、ガス供給システム10において、減圧が予定されている部分であるガバナユニット20でタービン50が回転することになるので、タービン50の適用により生じるガスの圧力低下の影響を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の構成では、タービン50は、ガバナユニット20において減圧部24に対する流通方向上流側の上流部としてのガス管22に配置されている。ここで、タービン50が、ガバナユニット20において減圧部24に対する流通方向下流側の下流部に配置されている場合では、ガバナユニット20においてガスの圧力が減圧された部分からエネルギーを獲得することになる。
【0060】
これに対して、本実施形態の構成によれば、ガバナユニット20において減圧部24による減圧前の高圧となっているガス管22からエネルギーを獲得できる。したがって、本実施形態の構成によれば、ガス管22内のガスが有する運動エネルギー(動圧)のみならず、圧力エネルギー(静圧)を回転力に変換することができる。この結果、本実施形態の構成によれば、タービン50が、ガバナユニット20において減圧部24に対する流通方向下流側の下流部に配置されている場合に比べ、ガスから高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0061】
また、本実施形態の構成では、前述のように、タービン50が、減圧部24に対する上流側で減圧部24に隣接するガス管22に配置されている。このため、タービン50と減圧部24とを集約して配置することができる。
【0062】
また、本実施形態の構成では、タービン50が配置されるガス管22の流路断面積が、隣接部23の流路断面積及び減圧部24の流路断面積よりも小さいため、ガス管22において流通するガスの流速を高めることができる。この結果、ガスから高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0063】
また、本実施形態の構成では、ガバナユニット20が有する筐体28に、ガス管22、タービン50及び減圧部24が収容されている。このため、ガス管22、タービン50及び減圧部24が、筐体28内に集約され、ガス管22、タービン50及び減圧部24の少なくとも1つが筐体28外に配置された構成に比べ、構成がコンパクトになる。
【0064】
また、本実施形態の構成では、筐体28に発電機60が収容されている。このため、ガス管22、タービン50及び減圧部24に加えて、発電機60が、筐体28内に集約され、発電機60が筐体28外に配置された構成に比べ、構成がコンパクトになる。このように、構成がコンパクトになるため、ガバナユニット20の取り扱い性が向上する。
【0065】
また、本実施形態の構成では、タービン50は、垂直軸型のタービンであり、回転軸55がガス管22の管軸方向Xに対して直交する回転軸方向Yに沿って配置されている。
【0066】
ここで、タービン50として、軸流タービンを用いた場合では、回転軸をガス管22の中心軸に一致させる必要がある。このため、回転エネルギーをガス管22の外部に取り出すには、ガス管22の内部に発電機本体を挿入するか、または、回転軸を変換する装置を設けるなどの対応が必要となる。
【0067】
これに対して、ガス供給システム10では、タービン50は、垂直軸型のタービンであるため、上記の対応が不要であり、タービン50のガス管22への装着性に優れる。
【0068】
また、本実施形態の構成では、タービン50における第一、第二ブレード51、52の凹曲面513、523が、ガスの流れを受けて、タービン50が予め定められた回転方向(
図6における時計回り方向)に回転する。このとき、ガスは、第一ブレード51と第二ブレード52との間をS字状に流れる(
図7(B)参照)。
【0069】
これにより、ガス管22内のガスが有する運動エネルギー(動圧)のみならず、圧力エネルギー(静圧)を回転力に変換することができる。この結果、ガス供給システム10の構成によれば、ガス管22から高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0070】
そして、本実施形態の構成では、第一、第二ブレード51、52の全体に対するオーバーラップ率が、第一、第二ブレード51、52の間を流通するガスにおいて、質量流量が頭打ちになるチョーキング現象が生じないオーバーラップ率とされている。このため、ガス管22から高効率にエネルギーを獲得することができる。なお、前述のように、チョーキング現象は、ガス等の圧縮性流体特有の現象であるため、本効果は、圧縮性流体において奏する効果である。
【0071】
具体的には、本実施形態の構成では、第一、第二ブレード51、52の全体に対するオーバーラップ率が、1%以上80%以下の範囲で設定されている。
【0072】
オーバーラップ率が80%を超えると、第一ブレード51と第二ブレード52との間を流れるガスの流量が増大となるため、以下のことが推測される。すなわち、第一ブレード51と第二ブレード52との間でガス溜まりが形成され、ガスの流れの抵抗となることが推測される。
【0073】
一方、オーバーラップ率が1%未満であると、第一ブレード51と第二ブレード52との間を流れるガスの流速が速くなるため、以下のことが推測される。すなわち、第一ブレード51と第二ブレード52との間を流れるガスの流速が速くなり、当該流速が音速程度になると、質量流量が頭打ちになる状態(すなわちチョーキング現象)が生じることが推測される。このため、オーバーラップ率が1%未満であると、ガス管22内のガスが有するエネルギーを回転力へ変換する変換効率が低下することが推測される。
【0074】
そして、本実施形態の構成では、前述のように、オーバーラップ率が1%以上80%以下であるため、ガス管22から高効率にエネルギーを獲得することができる。なお、前述のように、チョーキング現象は、ガス等の圧縮性流体特有の現象であるため、本効果は、圧縮性流体において奏する効果である。
【0075】
また、本実施形態では、第一スペーサ53が、第一、第二ブレード51、52に対する回転軸方向Yの一方側(すなわち
図3及び
図4の上方側)に設けられている。さらに、第二スペーサ54が、第一、第二ブレード51、52に対する回転軸方向Yの他方側(すなわち
図3及び
図4の下方側)に設けられている。
【0076】
これにより、タービン50では、第一、第二スペーサ53、54によってガス管22の内壁とタービン50との隙間Eが小さくなるため、ガスが、効率よく、第一ブレード51と第二ブレード52との間を流れる。これにより、ガス管22内のガスが有する運動エネルギー(動圧)のみならず、圧力エネルギー(静圧)を回転力に変換することができる。この結果、本実施形態の構成によれば、ガス管22から高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、タービン50は、第一状態において、
図3に示されるように、管軸方向Xに見て、第一、第二ブレード51、52、及び第一、第二スペーサ53、54によって円形状に形成されている。
【0078】
これにより、ガス管22の内壁とタービン50との隙間Eを周方向の全体において、小さくできる。このため、ガスが、効率よく、第一ブレード51と第二ブレード52との間を流れる。これにより、ガス管22内のガスが有する運動エネルギー(動圧)のみならず、圧力エネルギー(静圧)を回転力に変換することができる。この結果、本実施形態の構成によれば、ガス管22から高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0079】
<変形例>
本実施形態では、流体の一例として、ガス(具体的には、都市ガス)が適用されていたが、これに限られない。流体の一例としては、都市ガス以外の気体、水などの液体であってもよい。
【0080】
本実施形態では、タービン50は、第一状態において、
図3に示されるように、管軸方向Xに見て、円形状に形成されていたが、これに限られない。非円形状に形成されていてもよい。したがって、タービン50とガス管22の内壁との隙間Eが、周方向において、一定の寸法でなくてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、タービン50は、第一、第二スペーサ53、54を有していたが、これに限られない。第一、第二スペーサ53、54の少なくとも一方を有さない構成であってもよい。
【0082】
また、本実施形態では、減圧機構部の一例としてのガバナユニット20に対してタービン50が設けられていたが、これに限られない。例えば、大気に開放されることで流体の圧力が減圧される大気解放部に対して、タービン50が設けられていてもよい。すなわち、減圧機構部の一例としては、ガバナユニット20に限られず、例えば、上記の大気解放部であってもよく、流体の圧力が減圧される構成部であればよい。
【0083】
また、本実施形態では、タービン50が、ガバナユニット20における減圧部24の上流側に設けられたガス管22に配置されていたが、これに限られない。ガバナユニット20における他のガス管に配置してもよく、ガバナユニット20において種々のガス管に対してタービン50を適用可能である。
【0084】
また、本実施形態では、タービン50は、第一、第二ブレード51、52からなる2枚のブレードを有していたが、これに限られない。タービン50としては、3枚以上のブレードを有する構成であってもよい。
【0085】
<評価>
本実施形態に係るタービン50において、オーバーラップ率を変えた場合における性能を表現する指標として、運動量増倍係数を定義して評価を行った(
図8参照)。なお、「運動量増倍係数」とは、「オーバーラップ部を流れる流体の運動量と管内一般部を流れる流体の運動量の比」をいい、「オーバーラップ部」とは、「第一ブレード51と第二ブレード52との間の領域」である。
【0086】
この結果、オーバーラップ率が1%以上80%以下である範囲では、運動量増倍係数が1.0を超える(
図8参照)。このため、ガス管22から高効率にエネルギーを獲得することができる。
【0087】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 ガス供給システム
11 第一ガス管
12 第二ガス管
20 ガバナユニット
22 ガス管
23 隣接部
24 減圧部
25 入口
26 ガス流通構成部
27 出口
28 筐体
50 タービン
51 第一ブレード
52 第二ブレード
53 第一スペーサ
54 第二スペーサ
55 回転軸
59 ガス通路
60 発電機
513 凹曲面
514 端面
515 凸曲面
518 空間
523 凹曲面
524 端面
536 面
546 面