(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023109692
(43)【公開日】2023-08-08
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20230801BHJP
B42B 5/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
B42B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178962
(22)【出願日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022011154
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 一貴
(72)【発明者】
【氏名】亀山 琴美
(72)【発明者】
【氏名】杉山 恵介
【テーマコード(参考)】
3F108
【Fターム(参考)】
3F108GA01
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA11
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で生産性を向上させる媒体処理装置を提供する。
【解決手段】媒体処理装置(3)は、媒体を搬送方向に搬送する搬送部(11~14)と、搬送部(11~14)によって搬送された複数の媒体を載置する載置手段(22)と、媒体の搬送方向において、載置手段よりも上流側に配置され、搬送部(11~14)によって搬送される媒体の液体付与位置に液体を付与する液体付与手段(31)と、載置手段に載置された複数の媒体の液体付与位置を加圧変形させて圧着綴じする圧着手段(25)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された複数の前記媒体を載置する載置手段と、
前記媒体の搬送方向において、前記載置手段よりも上流側に配置され、前記搬送部によって搬送される前記媒体の液体付与位置に液体を付与する液体付与手段と、
前記載置手段に載置された複数の前記媒体の前記液体付与位置を加圧変形させて綴じる圧着手段とを備えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記液体付与手段は、前記搬送部による前記媒体の搬送が一時停止されたタイミングで、前記液体付与位置に対面する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記搬送部による前記媒体の搬送が一時停止されたタイミングで、前記液体付与手段による液体付与処理と並行して、前記媒体の傾きの補正または前記媒体を厚み方向に貫通するパンチ孔を穿つ処理を実行する処理部を備えることを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記液体付与手段は、前記搬送部による前記媒体の搬送が開始される前に、前記媒体の搬送方向及び前記媒体の厚み方向の両方に直交する主走査方向に移動して、前記液体付与位置に対面する位置で待機していることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記液体付与手段は、前記媒体の搬送方向及び前記媒体の厚み方向の両方に直交する主走査方向に離間した位置において、各々が前記主走査方向に移動可能な複数の液体付与ユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記液体付与手段は、前記搬送部によって搬送される複数の前記媒体それぞれに対する液体付与量を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記液体付与手段は、前記媒体に対して接離可能な液体付与部材の前記媒体に対する押し付け力を変更することによって、前記液体付与量を調整することを特徴とする請求項6に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記液体付与手段は、前記搬送部によって搬送されている前記媒体に当接して、前記媒体の搬送方向及び前記媒体の厚み方向の両方に直交する主走査方向に延びる支軸周りに回転することによって、当該媒体に液体を付与する液体付与回転体を備えることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置と、
請求項1に記載の媒体処理装置と、を備える画像形成システム。
【請求項10】
前記媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置と、
前記画像形成装置によって前記画像が形成された媒体に処理を行う請求項1記載の媒体処理装置と、
前記媒体の搬送工程において、前記画像形成装置の排紙部と、前記媒体処理装置との間に配置された中間装置と、を備えた画像形成システムにおいて、
前記液体付与手段は、前記中間装置に配置されている画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置によって画像が形成されたシート状の媒体を束にして綴じる処理を行う媒体処理装置が知られている。なお、シート状の媒体の例として用紙が広く知られているので、本明細書では、シート状の媒体の束に関しては複数の用紙を積層した「用紙束」を例に用いることとする。また、媒体処理装置には、省資源化や環境負荷の低減を鑑みる観点から、金属製の綴じ針(ステープル針)を用いずに、凹凸状の綴じ歯で用紙束を挟持して加圧変形させる所謂「圧着綴じ」が可能な圧着処理部を備えるものがある。
【0003】
圧着綴じには、用紙束を構成する用紙の枚数が多いほど用紙束に綴じ歯が食い込みにくくなって、綴じた用紙が剥がれ落ちるなど、綴じ状態を適切に維持することに困難さがあるという課題がある。そこで、圧着綴じを行う媒体処理装置には、綴じ強度を上げる目的で、用紙上において綴じ歯が接触する位置(以下、「綴じ位置」と表記する。)に予め加水して、綴じ歯が用紙束に食い込み易くするための加水処理部を備えるものがある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、微細な給水孔を加圧歯に設けている。しかしながら、高荷重が負荷される加圧歯に給水孔を形成すると、表面特性の変化、耐久性の低下、給水孔の目詰まり、錆の発生などが生じる可能性がある。そして、これらの現象を予防するためには、加圧歯を高価な材料で形成する必要があり、コストが増加するという課題がある。
【0005】
また、綴じ処理のバリエーションとして、コーナー斜め綴じ、平行一箇所綴じ、平行二箇所綴じなどがある。そして、これらのバリエーションを実現するためには、加水処理部を回転させたり、主走査方向に移動させたりする必要がある。
【0006】
しかし、特許文献2のように、水分塗布手段と綴じ手段とを1つの載置プレート上に並べて配置していると、上記綴じ処理のバリエーションにおける綴じ手段の動作に合わせて、水分塗布手段が連動するような機構を載置プレート上に設ける必要がある。そのため、綴じ処理部の機構が複雑化し、かつ綴じ処理部全体が大型化する。
【0007】
又、十分な綴じ力を得るためには用紙1枚ずつに水分を塗布することが望ましい。しかし、特許文献2では、水分塗布手段と綴じ手段とは内部トレイに搬送された用紙に対して処理を行うように配置されているので、用紙を1枚ずつ内部トレイに搬送する必要がある。媒体処理装置では、内部トレイに搬送する前に一時的に貯留トレイに2~3枚の用紙を重ねて搬送(所謂、プレスタック)することで処理時間を稼いで生産性を高める技術がある。しかしながら、特許文献2では、用紙をプレスタックしてしまうと用紙1枚ずつに水分塗布ができなくなってしまうため、プレスタックをすることができず綴じ手段の生産性が低下するという課題もある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、用紙束を構成する複数の用紙に加水してから圧着綴じする媒体処理装置において、シンプルな構成で生産性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、媒体処理装置に関し、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された複数の前記媒体を載置する載置手段と、前記媒体の搬送方向において、前記載置手段よりも上流側に配置され、前記搬送部によって搬送される前記媒体の液体付与位置に液体を付与する液体付与手段と、前記載置手段に載置された複数の前記媒体の前記液体付与位置を加圧変形させて綴じる圧着手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、用紙束を構成する複数の用紙に加水してから圧着綴じする媒体処理装置において、綴じ処理部の構成がシンプルになり、綴じ処理の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】圧着手段を搬送方向の上流側から見た模式図。
【
図9】後処理装置の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図。
【
図11】変形例1に係る液体付与手段を用紙の厚み方向から見た図。
【
図12】変形例2に係る液体付与ユニットを搬送方向に切断した断面図。
【
図13】画像形成システムの全体構成の他の例を示す図。
【
図14】画像形成システムの全体構成のさらに他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成システム1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、用紙P(媒体)に画像を形成し、画像が形成された用紙Pに対して後処理を施す機能を有する。
図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置2と、後処理装置3(媒体処理装置)とで構成される。
【0013】
画像形成装置2は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを後処理装置3に排出する。画像形成装置2は、用紙Pが収容されたトレイと、トレイに収容された用紙Pを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された用紙Pに画像を形成する画像形成部とを備える。画像形成部は、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成装置2の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。又、画像形成装置2は、胴内排紙部を備えており、胴内排紙部に中継搬送装置7が設けられている。画像形成装置2から排出された用紙Pは、中継搬送装置7を経由して後処理装置3に搬送される。
【0014】
図2は、後処理装置3の内部構造を示す図である。後処理装置3は、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pに後処理を施す。本実施形態に係る後処理は、画像が形成された複数の用紙Pの束(以下、「用紙束Pb」と表記する。)を、綴じる処理である。より詳細には、本実施形態に係る後処理は、綴じ位置で用紙束Pbを加圧変形させる所謂「圧着綴じ」と、綴じ針で用紙束Pbを綴じる「針綴じ」とを含む。また、圧着綴じは、用紙束Pbの端を綴じる端綴じ処理と、用紙束Pbの中央を綴じる中綴じ処理と含む。
【0015】
後処理装置3は、搬送ローラ対10~19(搬送部)と、切替爪20とを備える。搬送ローラ対10~19は、後処理装置3の内部において、画像形成装置2から供給された用紙Pを搬送する。より詳細には、搬送ローラ対10~13は、第1搬送路Ph1に沿って用紙Pを搬送する。また、搬送ローラ対14~15は、第2搬送路Ph2に沿って用紙Pを搬送する。さらに、搬送ローラ対16~19は、第3搬送路Ph3に沿って用紙Pを搬送する。
【0016】
以下、搬送ローラ対10、11、14が用紙Pを搬送する方向を、「搬送方向」と定義する。また、搬送方向及び用紙Pの厚み方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。
【0017】
搬送ローラ対11を構成する複数のローラ対は、
図6(A)に示すように、液体付与手段31の液体付与ヘッド46により液体が付与された用紙Pの液体付与位置B1と、用紙Pの幅方向(主走査方向)において重ならない位置に配置されている。これは、搬送ローラ対11が用紙Pを搬送する際に、複数のローラ対が、液体付与位置B1を押圧することにより液体付与位置B1の液量が減少することを防止するためである。その結果、用紙Pが、液体付与手段31よりも搬送方向の下流側に設けられた圧着手段25に到達した時点で、液体付与位置B1の液量は、綴じ強度を維持するのに必要な液量を確保できているので、搬送過程で液体付与位置B1の液量が減少することによる用紙束Pbの綴じ強度の低下を防止することができる。更に、搬送ローラ対11を構成する複数のローラ対を、用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置することにより、複数のローラ対に液体が付着して用紙Pの搬送性が悪化したり、そのことが原因で生じる搬送ジャムを防止することができる。尚、以上では搬送ローラ対11についてのみ説明したが、搬送ローラ対14~15を構成する複数のローラ対も同様に、用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置することが好ましい。
【0018】
第1搬送路Ph1は、画像形成装置2からの用紙Pの供給口から排出トレイ21に至る経路である。第2搬送路Ph2は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第1搬送路Ph1から分岐し、内部トレイ22を経由して排出トレイ26に至る経路である。第3搬送路Ph3は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第1搬送路Ph1から分岐し、排出トレイ30に至る経路である。
【0019】
切替爪20は、第1搬送路Ph1及び第2搬送路Ph2の分岐位置に配置されている。切替爪20は、第1搬送路Ph1を通じて用紙Pを排出トレイ21に排出する第1位置と、第1搬送路Ph1を搬送される用紙Pを第2搬送路Ph2に導く第2位置とに切り替え可能に構成されている。また、第2搬送路Ph2に進入した用紙Pの後端が搬送ローラ対11を通過したタイミングで、搬送ローラ対14を逆回転させることによって、当該用紙Pが第3搬送路Ph3に導かれる。なお、搬送時に用紙Pの位置を検知するセンサは、
図2において、黒色で塗りつぶされた三角形(▲)で示している。
【0020】
後処理装置3は、排出トレイ21を備える。排出トレイ21は、第1搬送路Ph1を通じて排出された用紙Pを載置する。排出トレイ21には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、綴じ処理が施されない用紙Pが排出される。
【0021】
また、後処理装置3は、内部トレイ22(載置手段)と、エンドフェンス23と、サイドフェンス24L、24Rと、圧着手段25と、排出トレイ26とを備える。内部トレイ22、エンドフェンス23、サイドフェンス24L、24R、及び圧着手段25、針綴じ手段25´は、第2搬送路Ph2を搬送され、内部トレイ22に載置された複数の用紙Pからなる用紙束Pbに端綴じ処理を施す。排出トレイ26には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、端綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0022】
内部トレイ22は、第2搬送路Ph2を順番に搬送される複数の用紙Pを一時的に載置する。エンドフェンス23は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbについて、搬送ローラ対15からエンドフェンス23に向かって用紙Pが搬送される方向(以下、「トレイ上搬送方向」)の位置を揃える。尚、ここでいう「トレイ上搬送方向」は、上述の「搬送方向」と異なる方向でもよい。サイドフェンス24L、24Rは、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える。圧着手段25及び針綴じ手段25´は、エンドフェンス23及びサイドフェンス24L、24Rによって揃えられた用紙束Pbの端部を綴じる。そして、搬送ローラ対15は、端綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0023】
圧着手段25及び針綴じ手段25´は、内部トレイ22よりトレイ上搬送方向の下流側に配置されている。また、圧着手段25及び針綴じ手段25´は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbのトレイ上搬送方向の下流側の端部に対面し得る位置において、主走査方向に移動可能に構成されている。さらに、圧着手段25及び針綴じ手段25´は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの厚み方向に延びる回動軸線回りに回動可能に構成されている。すなわち、圧着手段25及び針綴じ手段25´は、コーナー斜め綴じ、平行一箇所綴じ、平行二箇所綴じなどのように、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの主走査方向の任意の位置を、任意の角度で綴じることができる。
【0024】
また、圧着手段25は、凹凸状の綴じ歯25a、25bで用紙束Pbを加圧変形させることによって、用紙束Pbを綴じる(以下、「圧着綴じ」と表記する。)。すなわち、圧着手段25は、綴じ針を用いずに、用紙束Pbを綴じることができる。圧着手段25の構成部品(綴じ歯25a(上圧着歯)、綴じ歯25b(下圧着歯))は、圧着フレーム25cに設けられている。一方、針綴じ手段25´は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの綴じ位置に綴じ針を貫通させることによって、当該用紙束Pbを針綴じすることができる。
【0025】
図3は、内部トレイ22を用紙束Pbの厚み方向から見た図である。
図4は、圧着手段25をトレイ上搬送方向上流側から見た模式図である。
図3に示すように、圧着手段25は、内部トレイ22よりトレイ上搬送方向の下流側に配置されている。圧着手段25は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの表面に沿って主走査方向に移動可能で、且つ内部トレイ22に載置された用紙束Pbの厚み方向(トレイ上搬送方向及び主走査方向に直交する方向)に延びる回動軸140を中心として、回動可能に構成されている。又、針綴じ手段25´についても同様に、用紙束Pbの主走査方向に移動可能で、且つ用紙束Pbの厚み方向に延びる回動軸141を中心として、回動可能に構成されている。
【0026】
より詳細には、
図4に示すように、内部トレイ22よりトレイ上搬送方向の下流側には、ガイドレール137が主走査方向に延設されている。圧着手段25は、圧着手段移動モータ138の駆動力が駆動伝達機構150(プーリやタイミングベルト)により伝達されることによって、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの表面(換言すれば、ガイドレール137)に沿って、主走査方向に移動する。さらに、圧着手段25の構成品を保持する圧着フレーム25cは、その底面に回動軸140が固定されている。回動軸140は、圧着フレーム25cが設けられるベース部材148に回転可能に保持されている。そして、圧着手段25は、回動モータ139の駆動力が回動軸140に伝達されることによって、内部トレイ22に載置された用紙Pの厚み方向に延びる回動軸140を中心として回動する。ガイドレール137、圧着手段移動モータ138、回動モータ139、回動軸140、及び駆動伝達機構150は、圧着手段25の駆動機構の一例を構成する。
【0027】
圧着手段25は、
図3(A)に示す待機位置HPと、
図3(B)及び
図3(C)に示す綴じ位置B1に対面する位置とに移動可能に構成されている。待機位置HPは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbから主走査方向の一方側に外れた位置である。綴じ位置B1は、内部トレイ22に載置された用紙束Pb上の位置である。但し、綴じ位置B1の具体的な位置は、
図3の例に限定されず、用紙Pのトレイ上搬送方向の下流側の端部における主走査方向の任意の位置で、かつ複数であってもよい。
【0028】
また、圧着手段25は、
図3(B)に示す平行綴じ姿勢と、
図3(C)に示す斜め綴じ姿勢とに姿勢変化(回動)する。平行綴じ姿勢とは、一対の綴じ歯25a、25b(換言すれば、長方形の圧着綴じ痕)の長手方向が主走査方向を向く圧着手段25の姿勢である。又、斜め綴じ姿勢とは、一対の綴じ歯25a、25b(換言すれば、長方形の圧着綴じ痕)の長手方向が主走査方向に対して傾いた圧着手段25の姿勢である。
【0029】
なお、斜め綴じ姿勢における回動角度(主走査方向に対する一対の綴じ歯25a、25bの角度)は、
図3(C)の例に限定されず、内部トレイ22に載置された用紙束Pbに一対の綴じ歯25a、25bが対面していれば、任意の角度でよい。また、平行綴じ姿勢の圧着手段25による圧着綴じを「平行綴じ」と表記し、斜め綴じ姿勢の圧着手段25による圧着綴じを「斜め綴じ」と表記する。
【0030】
図4は、圧着手段25の構成を示す模式図である。
図4に示すように、圧着手段25は、一対の綴じ歯25a、25bを備える。一対の綴じ歯25a、25bは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbを挟むことができるように、用紙束Pbの厚み方向に対向して配置されている。一対の綴じ歯25a、25bの互いに対向する面は、凹部及び凸部が交互に形成された凹凸状に形成されている。また、一対の綴じ歯25a、25bは、互いに噛合うように、凹部及び凸部がずれて形成されている。そして、一対の綴じ歯25a、25bは、接離モータ142(
図9参照)の駆動力によって接離する。
【0031】
尚、圧着手段25の構成としては、圧着機構を構成する一対の綴じ歯25a、25bが噛み合えばよいので、本実施例に限定されない。例えば、正転のみ、又は正逆転する駆動源とリンク機構を使って一対の綴じ歯25a、25bの圧着及び離間動作を行うリンク機構方式の圧着機構(例えば、特許6057167号に開示されているもの)であっても良いし、駆動源の回転運動を直線運動に変換するねじ機構により、一対の綴じ歯25a、25bの圧着及び離間動作を直線的に行う直動方式の圧着機構であってもよい。
【0032】
用紙束Pbを構成する複数の用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、
図4(A)に示すように、一対の綴じ歯25a、25bは互いに離間している。そして、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pが内部トレイ22に載置されると、
図4(B)に示すように、一対の綴じ歯25a、25bが噛み合って、用紙束Pbを厚み方向から加圧変形させる。これにより、内部トレイ22に載置された用紙束Pbが圧着綴じされる。また、圧着綴じされた用紙束Pbは、搬送ローラ対15によって、排出トレイ26に排出される。
【0033】
図2に戻って、後処理装置3は、エンドフェンス27と、中綴じ処理部28と、用紙折りブレード29と、排出トレイ30とをさらに備える。エンドフェンス27、中綴じ処理部28、及び用紙折りブレード29は、第3搬送路Ph3を搬送される用紙束Pbに中綴じ処理を施す。排出トレイ30には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、中綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0034】
エンドフェンス27は、第3搬送路Ph3を順番に搬送される複数の用紙Pの搬送方向の位置を揃える。また、エンドフェンス27は、用紙束Pbの中央を、中綴じ処理部28に対面させる綴じ位置と、用紙折りブレード29に対面させる折り位置とに移動可能に構成されている。中綴じ処理部28は、綴じ位置のエンドフェンス27によって揃えられた用紙束Pbの中央を綴じる。用紙折りブレード29は、折り位置のエンドフェンス27に支持された用紙束Pbを半分に折って、搬送ローラ対18に挟持させる。搬送ローラ対18、19は、中綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ30に排出する。
【0035】
後処理装置3は、液体付与手段31と、パンチ孔穿設部32(処理部)とを備える。液体付与手段31及びパンチ孔穿設部32は、内部トレイ22より搬送方向の上流側に配置されている。また、液体付与手段31及びパンチ孔穿設部32は、搬送ローラ対10~19によって搬送される1枚の用紙Pに同時に対面し得る位置において、搬送方向にずれて配置されている。本実施形態に係る液体付与手段31及びパンチ孔穿設部32は、搬送ローラ対10、11の間に配置されている。但し、液体付与手段31及びパンチ孔穿設部32の配置は、
図2の例に限定されない。例えば、
図13に示すように画像形成装置2と後処理装置3の間にインサーター6が配置されている場合は、液体付与手段31を後処理装置3の上流側に位置するインサーター6に設けることもできる。インサーター6としては、画像形成装置2から搬送された用紙Pとともに後処理装置3に搬送するプレプリント媒体を、表紙、挿入紙または仕切紙として、画像形成装置2を通さずに給紙することができる装置が挙げられる。
【0036】
更に、
図14に示すように、画像形成装置2と後処理装置3を接続する中継搬送装置7に、液体付与手段31を設けることもできる。中継搬送装置7としては、画像形成装置2から排出される用紙を、画像形成装置2の排紙トレイと、後処理装置3とに仕分け搬送するための装置が挙げられる。尚、以上で説明したインサーター6や中継搬送装置7は、請求項10の「中間装置」に相当するものである。
【0037】
液体付与手段31は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに液体(例えば、水)を付与(以下、「液体付与」と表記する。)する。パンチ孔穿設部32は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに、厚み方向に貫通するパンチ孔を穿つ。なお、液体付与手段31に近接して設けられる処理部は、パンチ孔穿設部32に限定されず、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pの傾き(スキュー)を補正する傾き補正部でもよい。
【0038】
ここで、上記「液体」とは、さらに詳しくは、化学式H2Oで表される水素と酸素の化合物の液体状態を主成分とするものである。液体状態であれば、その温度状態は問わず、いわゆる温水や熱水であってもよい。また、純水に限らず、精製水はもちろんのこと、イオン化した塩類が含まれていても良い。金属イオン含有量もいわゆる軟水から超硬水まで硬度は問わない。
【0039】
また主成分に加えて添加物が加えられていてもよい。水道水として用いられる残留塩素を含んでいてもよいし、着色剤・浸透剤・pH調整剤・フェノキシエタノールなどの防腐剤・グリセリンなどの乾燥防止剤等が添加されていることも望ましい。さらには、インクジェット方式の印刷装置で用いられるインクや、水性ペンに用いられるインクも成分として水を用いているので、これを液体として用いても良い。
【0040】
ここで具体的に挙げたものに限らず、次亜塩素酸水や消毒用に希釈したエタノール水溶液など広義の「水」であっても機能するが、圧着綴じとして機能させるためだけの用途であれば入手・管理が容易な水道水を用いればよい。又、液体としては、上記に例示したような水を主成分とする液体を用いる方が、水を主成分としていない液体を用いるよりも用紙束Pbの綴じ強度を向上させることができる。
【0041】
図6は、液体付与手段31を用紙Pの厚み方向から見た図である。
図7は、
図6のVI-VIにおける断面図である。
図8は、
図6のVII-VIIにおける断面図である。
図6~
図8に示すように、液体付与手段31は、一対のガイド軸33a、33bと、一対のプーリ34a、34bと、無端環状ベルト35、36と、液体付与手段移動モータ37と、待機位置センサ38と、液体付与ユニット40とを備える。
【0042】
一対のガイド軸33a、33bは、搬送方向に離間した位置において、各々が主走査方向に延設されている。また、一対のガイド軸33a、33bは、後処理装置3の一対の側板4a、4bに支持されている。そして、一対のガイド軸33a、33bは、液体付与ユニット40を主走査方向に移動可能に支持する。
【0043】
一対のプーリ34a、34bは、搬送方向における一対のガイド軸33a、33bの間に配置されている。また、一対のプーリ34a、34bは、主走査方向に離間して配置されている。さらに、一対のプーリ34a、34bは、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸線回りに回転可能に、後処理装置3のフレームに支持されている。
【0044】
無端環状ベルト35は、一対のプーリ34a、34bに掛け渡されている。また、無端環状ベルト35には、接続部35aによって液体付与ユニット40に接続されている。無端環状ベルト36は、プーリ34aと液体付与手段移動モータ37の出力軸に固定された駆動プーリ37aとに掛け渡されている。液体付与手段移動モータ37は、液体付与ユニット40を主走査方向に移動させるための駆動力を発生させる。
【0045】
液体付与手段移動モータ37が回転することによって、プーリ34a及び駆動プーリ37aの間を無端環状ベルト36が周回し、プーリ34aを回転させる。また、プーリ34aが回転することによって、一対のプーリ34a、34bの間を無端環状ベルト35が周回する。これにより、液体付与ユニット40は、一対のガイド軸33a、33bに沿って主走査方向に移動する。また、液体付与手段移動モータ37の回転方向を切り替えることによって、液体付与ユニット40は、主走査方向に往復移動する。
【0046】
待機位置センサ38は、液体付与ユニット40が主走査方向の待機位置に到達したことを検知し、検知結果を示す待機位置信号を後述するコントローラ100(
図9参照)に出力する。待機位置センサ38は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、待機位置の液体付与ユニット40は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、待機位置センサ38は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、待機位置信号を出力する。但し、待機位置センサ38の具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0047】
図7に示すように、後処理装置3内の搬送路は、用紙Pの厚み方向に離間して配置された上ガイド板5a及び下ガイド板5bによって画定される。そして、液体付与ユニット40は、上ガイド板5aに設けられた開口に対面する位置に配置されている。すなわち、液体付与ユニット40は、上ガイド板5aの開口を通じて搬送路(すなわち、用紙Pに対面し得る位置)に対面して配置されている。
【0048】
図6~
図8に示すように、液体付与ユニット40は、ベース部材41と、回転ブラケット42と、貯液タンク43と、移動手段44と、保持部材45と、液体付与ヘッド46(液体付与部材)と、柱状部材47a、47bと、押圧板48と、コイルバネ49a、49bと、回転モータ50と、移動モータ51(
図9参照)と、待機角度センサ52とを備える。
【0049】
ベース部材41は、主走査方向にスライド可能に一対のガイド軸33a、33bに支持されている。また、ベース部材41は、接続部35aによって無端環状ベルト35に接続されている。さらに、ベース部材41は、液体付与ユニット40の構成部品42~52を支持している。
【0050】
回転ブラケット42は、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸線回りに回動可能にベース部材41の下面に支持されている。また、回転ブラケット42は、回転モータ50の駆動力が伝達されることによって、ベース部材41に対して回転する。さらに、回転ブラケット42は、貯液タンク43、移動手段44、保持部材45、液体付与ヘッド46、柱状部材47a、47b、押圧板48、及びコイルバネ49a、49bを支持している。
【0051】
待機角度センサ52は、回転ブラケット42が待機角度に到達したことを検知し、検知結果を示す待機角度信号をコントローラ100に出力する。待機角度とは、例えば、平行綴じするときの角度である。待機角度センサ52は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、待機角度の回転ブラケット42は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、待機角度センサ52は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、待機角度信号を出力する。但し、待機角度センサ52の具体的な構成は、前述の例に限定されない。尚、
図6(A)に示した回転ブラケット42は、液体付与手段31より下流側の圧着手段25が平行綴じする際の状態を示している。又、
図6(B)に示した回転ブラケット42は、液体付与手段31より下流側の圧着手段25が斜め綴じ(角綴じ)する際の状態を示している。
【0052】
貯液タンク43は、用紙Pに付与するための液体を貯留する。移動手段44は、用紙Pの厚み方向に移動(例えば昇降)可能に貯液タンク43に支持されている。また、移動手段44は、移動モータ51の駆動力が伝達されることによって、貯液タンク43に対して移動する。保持部材45は、移動手段44の下端に取り付けられている。液体付与ヘッド46は、保持部材45から搬送路に向けて(本実施形態では、下方)に突出している。また、液体付与ヘッド46には、貯液タンク43に貯留された液体が供給される。さらに、液体付与ヘッド46は、吸液率の高い材料(例えば、スポンジ、繊維)で構成されている。
【0053】
柱状部材47a、47bは、液体付与ヘッド46の周囲において、保持部材45から下方に突出している。また、柱状部材47a、47bは、保持部材45に対して厚み方向に相対移動可能に構成されている。さらに、柱状部材47a、47bは、下端で押圧板48を保持している。押圧板48には、液体付与ヘッド46に対面する位置に貫通孔48aが形成されている。コイルバネ49a、49bは、保持部材45と押圧板48との間において、柱状部材47a、47bに外挿されている。そして、コイルバネ49a、49bは、柱状部材47a、47b及び押圧板48を、保持部材45に対して下方に付勢する。
【0054】
図7(A)及び
図8(A)に示すように、上ガイド板5aの開口に対面する位置に用紙Pが搬送される前の段階では、押圧板48は開口の位置または開口より上方に位置している。次に、搬送ローラ対10、11によって搬送された用紙Pの液体付与位置B1が開口に対面する位置で停止すると、移動モータ51を第1方向に回転させる。これにより、移動手段44、保持部材45、液体付与ヘッド46、柱状部材47a、47b、押圧板48、及びコイルバネ49a、49bが一体となって下降して、押圧板48が用紙Pに当接する。なお、液体付与位置B1とは、圧着手段25によって圧着綴じされる予定の位置(すなわち、綴じ位置B1)である。
【0055】
そして、押圧板48が用紙Pに当接した後も移動モータ51を第1方向に回転させることによって、コイルバネ49a、49bが圧縮されて、移動手段44、保持部材45、液体付与ヘッド46、及び柱状部材47a、47bがさらに下降する。そして、
図7(B)及び
図8(B)に示すように、液体付与ヘッド46の下面が貫通孔48aを通じて用紙Pに当接する。その結果、液体付与ヘッド46に含まれる水分が用紙Pに付与される。
【0056】
上述したように、押圧板48は、液体付与ヘッド46の先端が用紙Pに接触する前に、用紙Pを押圧する。そして、押圧板48は、液体付与ヘッド46が用紙Pに液体を付与する際に、液体付与ヘッド46の先端の周囲を押圧する。これにより、仮に用紙Pが波打った状態や湾曲した状態である場合でも、用紙Pの浮き上がりを確実に防止し、精度よく液体付与処理を行うことが可能となる。
【0057】
さらに、
図7(C)及び
図8(C)に示すように、移動モータ51をさらに第1方向に回転させることによって、液体付与ヘッド46を用紙Pにさらに強く押し付けることができる。これにより、用紙Pに対する液体付与量が増加する。すなわち、液体付与手段31は、用紙Pに対する液体付与ヘッド46の押し付け力を変更することによって、液体付与量を調整することができる。
【0058】
一方、移動モータ51を第1方向と逆向きの第2方向に回転させることによって、移動手段44、保持部材45、液体付与ヘッド46、柱状部材47a、47b、押圧板48、及びコイルバネ49a、49bが一体となって上昇する。ここで、押圧板48は、コイルバネ49a、49bにより用紙P側に付勢されているため、押圧板48が用紙Pに当接している状態で、液体付与ヘッド46の先端が押圧板48よりも先に用紙Pから離間する。その後、移動手段44が用紙Pから離れる方向に移動するにしたがって、
図7(A)及び
図8(A)に示すように、液体付与ヘッド46及び押圧板48が用紙Pから離間する。すなわち、液体付与手段31は、用紙Pに接離可能な液体付与ヘッド46を備える。
【0059】
上述したように、押圧板48は、液体付与ヘッド46の先端が用紙Pから離間した状態でも、用紙Pへの押圧状態を維持する。そして、押圧板48は、
図7(A)に示すように、液体付与ヘッド46の先端が用紙Pから完全に離間した離間位置に移動したときに、用紙Pへの押圧を解除する解放位置に移動する。これにより、液体付与ヘッド46による液体付与処理の終了後に、液体付与ヘッド46の先端に用紙Pが張り付くのを確実に防止し、次に搬送されてくる用紙Pへの液体付与処理をスムーズに行うことができる。
【0060】
図9は、後処理装置3の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図である。
図9に示すように、後処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0061】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0062】
後処理装置3は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3の動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0063】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、圧着手段25、液体付与手段31、パンチ孔穿設部32、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、圧着手段25、液体付与手段31、及びパンチ孔穿設部32の動作を制御する。なお、
図9には端綴じ処理を実行する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0064】
操作パネル110は、ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。
【0065】
図10は、後処理のフローチャートである。具体的には、
図3に示す一箇所綴じを実行する際のフローチャートである。コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から後処理の実行指示(以下、「後処理指示」と表記する。)を取得したことに応じて、
図10に示す後処理を実行する。後処理指示は、例えば、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数N」と表記する。)と、綴じ位置B1(=液体付与位置B1)及び綴じ角度(=液体付与角度)と、液体付与処理と並行して実行される処理(本実施形態では、パンチ孔の穿設)とを含む。なお、後処理の開始時点において、液体付与ユニット40は待機位置に位置し、回転ブラケット42は待機角度に保持されているものとする。
【0066】
まず、コントローラ100は、液体付与手段移動モータ37を駆動することによって、液体付与ユニット40を主走査方向に移動させることで、液体付与ヘッド46を待機位置HPから液体付与位置B1(
図3の綴じ位置B1に相当する位置)に対面し得る位置に移動させる。また、コントローラ100は、回転モータ50を駆動し、回転ブラケット42を回転させることで、液体付与ヘッド46を待機角度から液体付与角度に回転させる(S801)。液体付与ヘッド146が液体付与位置B1に対面し得る位置及び液体付与角度に達したことは、液体付与手段移動モータ37及び回転モータ50のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。又、コントローラ100は、圧着手段移動モータ138を駆動することによって、
図3(A)、(B)に示すように、圧着手段25を待機位置HPから綴じ位置B1に対面し得る位置に移動させる(S801)。また、コントローラ100は、回動モータ139を駆動することにより、圧着手段25を待機角度から圧着綴じ角度に回転させる(S801)。圧着手段25が、綴じ位置B1に対面し得る位置、及び圧着綴じ角度に達したことは、圧着手段移動モータ138及び回動モータ139のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0067】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11を駆動することによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pの搬送を開始する(S802)。コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ユニット40(より詳細には、液体付与ヘッド46)に対面するまで(S803:No)、搬送ローラ対10、11の駆動を継続する。そして、コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ヘッド46に対面したことに応じて(S803:Yes)、搬送ローラ対10、11を停止する(S804)。用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ヘッド46に対面したことは、搬送ローラ対10、11を駆動するモータのロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0068】
コントローラ100は、液体付与手段31によって用紙Pの液体付与位置B1に液体付与する処理と、パンチ孔穿設部32によって用紙Pにパンチ孔を穿設させる処理とを並行して実行する(S805)。より詳細には、コントローラ100は、移動モータ51を第1方向に回転させることによって、液体付与ヘッド46を用紙Pの液体付与位置B1に当接させる。また、コントローラ100は、用紙Pに対する液体付与量に応じて、液体付与ヘッド46の押し付け力(すなわち、移動モータ51の回転量)を変更する。
【0069】
用紙Pに対する液体付与量は、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pに対して同一でもよいし、用紙P毎に異なっていてもよい。例えば、コントローラ100は、後に搬送される用紙Pほど液体付与量を減少させてもよい。また、移動モータ51の回転量は、移動モータ51のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0070】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を駆動することによって、用紙Pを内部トレイ22に載置する(S806)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)。
【0071】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が、後処理指示で指示された所定枚数Nに達したか否かを判定する(S807)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達していないと判定したことに応じて(S807:No)、ステップS802~S806の処理を再び実行する。
【0072】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達したと判定したことに応じて(S807:Yes)、液体付与手段31によって液体付与された用紙束Pbの綴じ位置B1(=液体付与位置B1)を、圧着手段25に圧着綴じさせる。さらに、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する(S808)。
【0073】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0074】
上記の実施形態によれば、特許文献1のように綴じ歯25a、25bに給水孔を設ける必要がないので、綴じ歯25a、25bの構成をシンプルにできる。また、特許文献2のように、液体付与手段と圧着手段とを1つの載置プレート上に並べて配置する場合に比べて、液体付与手段と圧着手段を、レイアウトの都合を考慮することなく、それぞれ小型化かつシンプルな構成にすることが可能となる。又、内部トレイ22より搬送方向の上流側で用紙Pに液体を付与することによって、例えば液体付与手段31から内部トレイ22までの搬送経路上において、液体付与処理が完了した用紙Pを複数枚重ねてから、内部トレイ22に搬送すること(所謂、プレスタック)が可能となるので、後処理装置3(圧着手段25による綴じ処理)の生産性が向上する。
【0075】
更に、中綴じ処理部28においても液体付与処理を行いたい場合であって、中綴じ処理部28用の液体付与手段31を別途配置する必要がなくなるので、後処理装置3の構成をシンプルにでき、コストダウンを図ることが可能となる。
【0076】
また、上記の実施形態によれば、用紙Pに対する液体付与とパンチ孔の穿設とを並行して実行することによって、液体付与だけを行う場合と比較して、後処理装置3の生産性を向上させることができる。また、パンチ孔の穿設に加えて、またはパンチ孔の穿設に代えて、用紙Pの傾きの補正などを、用紙Pに対する液体付与と並行して実行してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態によれば、搬送ローラ対10、11による用紙Pの搬送が開始される前(例えば、画像形成装置2によって画像が形成されている間)に、用紙Pの液体付与位置に対面し得る位置で液体付与ユニット40を待機させる。これにより、用紙Pが液体付与ヘッド46に対面する位置で停止してから液体付与ユニット40を移動させる場合と比較して、後処理装置3の生産性を向上させることができる。
【0078】
また、上記の実施形態によれば、用紙P毎に液体付与量を調整することによって、用紙束Pbを構成する複数の用紙Pそれぞれに対する液体付与量を均一にすることができる。これにより、圧着綴じの強度を向上させることができる。
【0079】
[変形例1]
図11は、変形例1に係る液体付与手段31Aを用紙Pの厚み方向から見た図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例1に係る液体付与手段31Aは、複数の液体付与ユニット40A、40Bを備える点で上記の実施形態と相違し、その他の点で上記の実施形態と共通する。
【0080】
液体付与ユニット40A、40Bの構成は、上記の実施形態に係る液体付与ユニット40と共通する。液体付与ユニット40A、40Bは、主走査方向に離間した位置において、一対のガイド軸33a、33bに支持されている。また、液体付与ユニット40A、40Bは、接続部35a、35bによって無端環状ベルト35に接続されている。より詳細には、液体付与ユニット40A、40Bは、用紙Pの中央に対して主走査方向の対称な位置において、無端環状ベルト35の周方向の互いに逆向きに移動する部分(接続部35a、35b)に接続されているのが望ましい。
【0081】
変形例1のように、複数の液体付与ユニット40A、40Bを搭載することによって、二箇所綴じの場合でも後処理装置3の生産性を低下させることなく、用紙Pに液体付与することができる。なお、液体付与手段31Aに搭載される液体付与ユニット40A、40Bの数は、2つに限定されず、3つ以上でもよい。
【0082】
なお、二箇所綴じの場合の液体付与位置は、用紙Pの中央に対して主走査方向に対称な位置に設定されている場合が多い。そこで、用紙Pの中央に対して主走査方向の対称な位置において、無端環状ベルト35の互いに逆向きに移動する部分に液体付与ユニット40A、40Bを取り付けることによって、1つの液体付与手段移動モータ37で2つの液体付与ユニット40A、40Bを連動して移動させることができる。
【0083】
[変形例2]
図12は、変形例2に係る液体付与ユニット40Cを搬送方向に切断した断面図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例2に係る液体付与ユニット40Cは、液体付与ヘッド46に代えて液体付与ローラ55(液体付与回転体)を備える点で上記の実施形態と相違し、その他の点で上記の実施形態と共通する。
【0084】
変形例2に係る液体付与ユニット40Cは、アーム53と、支軸54と、液体付与ローラ55とを備える。アーム53は、移動手段44から下方に突出している。支軸54は、アーム53の先端において、主走査方向に延設されている。液体付与ローラ55は、支軸54に回転可能に支持されている。また、液体付与ローラ55には、貯液タンク43に貯留された水が供給される。
【0085】
コントローラ100は、移動モータ51を第1方向に回転させることによって、搬送ローラ対10、11によって搬送されている用紙Pに液体付与ローラ55を当接させる。この状態で搬送ローラ対10、11に用紙Pを搬送させることによって、液体付与ローラ55が回転する。これにより、液体付与ローラ55から用紙Pに液体付与される。そして、コントローラ100は、液体付与ローラ55を液体付与位置が通過したことに応じて、移動モータ51を第2方向に回転させることによって、液体付与ローラ55を用紙Pから離間させる。
【0086】
変形例2によれば、用紙Pの搬送を停止することなく液体付与することができるので、後処理装置3の生産性をさらに向上させることができる。
【0087】
また、上記に説明した制御方法は、例えば、プログラム等で実現してもよい。すなわち、制御方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて、コンピュータが実行する方法である。また、プログラムは、記憶装置、又は、記憶媒体等に書き込まれて配布、又は、電気通信回線等を通じて配布されてもよい。
【0088】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0089】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された複数の前記媒体を載置する載置手段と、
前記載置手段より前記媒体の搬送方向の上流側に配置されて、前記搬送部によって搬送される前記媒体の液体付与位置に液体を付与する液体付与手段と、
前記載置手段に載置された複数の前記媒体の前記液体付与位置を加圧変形させて綴じる圧着手段とを備えることを特徴とする媒体処理装置である。
<2> 前記液体付与手段は、前記搬送部による前記媒体の搬送が一時停止されたタイミングで、前記液体付与位置に対面する位置に配置されていることを特徴とする前記<1>に記載の媒体処理装置である。
<3> 前記搬送部による前記媒体の搬送が一時停止されたタイミングで、前記液体付与手段による液体付与処理と並行して、前記媒体の傾きの補正または前記媒体を厚み方向に貫通するパンチ孔を穿つ処理を実行する処理部を備えることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の媒体処理装置である。
<4> 前記液体付与手段は、前記搬送部による前記媒体の搬送が開始される前に、前記媒体の搬送方向及び前記媒体の厚み方向の両方に直交する主走査方向に移動して、前記液体付与位置に対面する位置で待機していることを特徴とする前記<1>乃至前記<3>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<5> 前記液体付与手段は、前記媒体の搬送方向及び前記媒体の厚み方向の両方に直交する主走査方向に離間した位置において、各々が前記主走査方向に移動可能な複数の液体付与ユニットを備えることを特徴とする前記<1>乃至前記<4>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<6> 前記液体付与手段は、前記搬送部によって搬送される複数の前記媒体それぞれに対する液体付与量を調整可能に構成されていることを特徴とする前記<1>乃至前記<5>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<7> 前記液体付与手段は、前記媒体に対して接離可能な液体付与部材の前記媒体に対する押し付け力を変更することによって、前記液体付与量を調整することを特徴とする前記<6>に記載の媒体処理装置である。
<8> 前記液体付与手段は、前記搬送部によって搬送されている前記媒体に当接して、前記媒体の搬送方向及び前記媒体の厚み方向の両方に直交する主走査方向に延びる支軸周りに回転することによって、当該媒体に液体を付与する液体付与回転体を備えることを特徴とする前記<1>乃至前記<7>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<9> 前記媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置と、前記<1>乃至前記<8>のいずれか1つに記載の媒体処理装置とを備える画像形成システムである。
<10> 前記媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置と、前記画像形成装置によって前記画像が形成された媒体に処理を行う前記<1>乃至前記<8>のいずれか1つに記載の媒体処理装置と、前記媒体の搬送工程において、前記画像形成装置の排紙部と、前記媒体処理装置との間に配置された中間装置と、を備えた画像形成システムにおいて、前記液体付与手段は、前記中間装置に配置されている画像形成システムである。
【符号の説明】
【0090】
1 :画像形成システム
2 :画像形成装置
3 :後処理装置
4a,4b :側板
5a :上ガイド板
5b :下ガイド板
6 :インサーター
7 :中継搬送装置
10~19 :搬送ローラ対
20,26,30 :切替爪
21 :排出トレイ
22 :内部トレイ
23,27 :エンドフェンス
24L,24R :サイドフェンス
25 :圧着手段
25a,25b :綴じ歯
28 :中綴じ処理部
29 :用紙折りブレード
31,31A :液体付与手段
32 :パンチ孔穿設部
33a,33b :ガイド軸
34a,34b :プーリ
35,36 :無端環状ベルト
35a,35b :接続部
37 :液体付与手段移動モータ
37a :駆動プーリ
38 :待機位置センサ
40,40A,40B,40C :液体付与ユニット
41 :ベース部材
42 :回転ブラケット
43 :貯液タンク
44 :移動手段
45 :保持部材
46 :液体付与ヘッド
47a,47b :柱状部材
48 :押圧板
48a :貫通孔
49a,49b :コイルバネ
50 :回転モータ
51 :移動モータ
52 :待機角度センサ
53 :アーム
54 :支軸
55 :液体付与ローラ
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2018-199552号公報
【特許文献2】特開2015-166281号公報
【手続補正書】
【提出日】2022-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
図
5は、圧着手段25の構成を示す模式図である。図
5に示すように、圧着手段25は、一対の綴じ歯25a、25bを備える。一対の綴じ歯25a、25bは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbを挟むことができるように、用紙束Pbの厚み方向に対向して配置されている。一対の綴じ歯25a、25bの互いに対向する面は、凹部及び凸部が交互に形成された凹凸状に形成されている。また、一対の綴じ歯25a、25bは、互いに噛合うように、凹部及び凸部がずれて形成されている。そして、一対の綴じ歯25a、25bは、接離モータ142(
図9参照)の駆動力によって接離する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
用紙束Pbを構成する複数の用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、図5(A)に示すように、一対の綴じ歯25a、25bは互いに離間している。そして、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pが内部トレイ22に載置されると、図5(B)に示すように、一対の綴じ歯25a、25bが噛み合って、用紙束Pbを厚み方向から加圧変形させる。これにより、内部トレイ22に載置された用紙束Pbが圧着綴じされる。また、圧着綴じされた用紙束Pbは、搬送ローラ対15によって、排出トレイ26に排出される。