(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110189
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法、チップオンサブマウントの製造方法、および、半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20230802BHJP
H01S 5/023 20210101ALI20230802BHJP
【FI】
H01L23/12 D
H01S5/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011475
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】大関 智行
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MC01
5F173MC12
5F173MD04
5F173MD07
5F173MD23
5F173MD84
(57)【要約】
【課題】導電回路を形成した大型セラミックス薄膜メタライズ基板から効率よく小型基板を製造可能にする
【解決手段】実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法のリソグラフィー工程は、レジスト塗布後のプリベークの温度が60℃以上100℃以下、時間が70秒以上120秒以下であり、プリベーク後の1次露光の積算照射量が10mJ/cm2以上50mJ/cm2以下であり、1次露光後の反転ベークの温度が110℃以上140℃以下、時間が40秒以上90秒以下であり、反転ベーク後の2次露光積算の照射量が260mJ/cm2以上350mJ/cm2以下であり、2次露光後に現像を行った後に薄膜メタライズによりパターン回路を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法において、リソグラフィー工程が、レジスト塗布後のプリベークについて温度が60℃以上100℃以下、時間が70秒以上120秒以下であり、プリベーク後の1次露光積算照射量10mJ/cm2以上50mJ/cm2以下であり、1次露光後の反転ベークについて温度が110℃以上140℃以下、時間が40秒以上90秒以下であり、反転ベーク後の2次露光積算照射量が260mJ/cm2以上350mJ/cm2以下であることを特徴とするセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法。
【請求項2】
前記セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法におけるリソグラフィー工程が、導通部と絶縁部を有するパターン回路形成であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法。
【請求項3】
前記セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法におけるパターン回路形成が、2次露光後に現像を行った後に薄膜メタライズによりパターン回路を形成することを特徴とする請求項2に記載のセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法におけるセラミックス基板が、窒化アルミニウム基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法。
【請求項5】
前記セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法における薄膜メタライズが、チタン、白金、金の積層膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法。
【請求項6】
セラミックス薄膜メタライズ基板のパターン回路に接合層を有するチップオンサブマウントの製造方法において、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の製造方法により得られたセラミックス薄膜メタライズ基板に接合層を形成する工程を行うことを特徴とするチップオンサブマウントの製造方法。
【請求項7】
前記チップオンサブマウントの製造方法における接合層が金―スズ半田であることを特徴する請求項6に記載のチップオンサブマウントの製造方法。
【請求項8】
チップオンサブマウントに半導体素子を搭載する半導体モジュールの製造方法において、請求項6または請求項7に記載の製造方法により得られたチップオンサブマウントに半導体素子を搭載する工程を行うことを特徴とする半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、おおむね、セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法、チップオンサブマウントの製造方法、および、半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザーダイオード(LD)をはじめ、一般照明LEDからヘッドランプ用のハイパワーLED、高放熱性の要求が強い深紫外LED(殺菌ランプ・樹脂硬化ランプ)などの高性能の発光が可能である光半導体素子が発展している。この光半導体素子の発展に伴って放熱性と電気絶縁性を兼ね備えたセラミックス基板の需要は年々増加している。特に、高性能化に伴い光半導体素子の発熱が増加するにつれ、放熱を効率よく行うために、セラミックス基板は小さく、かつ薄くなる傾向にある。
【0003】
セラミックス基板の中で放熱性が高い窒化アルミニウム基板(AlN)では、絶縁支持部材が窒化アルミニウム質焼結体から成り、かつ下面および上面にチタン(Ti)層と白金(Pt)層と(Au)層とを順次被着させる金属層が形成された光半導体素子用パッケージ部品が開示されている(特許文献1)。特許文献1によると窒化アルミニウム質焼結体の熱伝導率は55ないし250W/m・Kであり、光半導体素子が駆動時に発した熱は絶縁支持部材および金属基板を介して外部に放散される。その結果、熱伝導率約20W/m・Kの酸化アルミニウム質焼結体に比較して光半導体素子を常に適温として長期間にわたり正常、かつ安定に駆動させることができる。
【0004】
また、放熱性と電気絶縁性を兼ね備えたセラミックス基板の製造コストを下げるために、大型形状で製造をすることが行われている。大型形状の窒化アルミニウム基板を、半導体レーザー素子用サブマウントに分割する製法のひとつとして、熱伝導率200W/m・K、厚さ0.5mm、2インチの基板から1mmの角正方形に切断する製法が開示されている(特許文献2)。
【0005】
これらの絶縁基板上に形成された金属層は必要に応じて導電層部分と金属層のない絶縁部分にパターン回路形成が行われる。パターン回路の形成には、エッチング法やリフトオフ法が開示されている(特許文献3)。特許文献3によると、薄膜材料を基板上に形成した後にフォトレジスト材料を塗布し、紫外光を用いた1次露光を行い、フォトレジストなどのエッチングに耐性を持つ保護膜層を形成し、不要部分を選択的に除去してパターン回路を形成することができる。
【0006】
製造コストを下げるためには、より大型の基板から加工することが有利である。これに対し、切断される製品は組み込まれる半導体モジュールの小型化・高性能化に伴い、製品サイズは小さくなりパターン回路はファイン(微細)化が進んでいる。しかしながら基板が大型化するに伴い、個片に分割された製品の導電層からなる回路部分と回路同士を絶縁する非回路(基板部分)を基板全面に均一に製造する必要があり、切断前の基板サイズの大型化に伴い製造方法は難しくなる。
【0007】
セラミックス基板の表面に回路パターンを形成する方法としては、レジストを塗布して露光によりパターンを形成し現像を行うリソグラフィーの工程がある。製品を均一に製造するには、リソグラフィー工程においてレジストの塗布から現像までを均一に行う必要がある。
【0008】
すなわち基板が大型になれば切断される製品数は多くなり作業効率は向上し製造コストは低減するが、製品の中央部と周辺部ではパターン塗布したレジストに差が発生してレジストに起因する不良が発生しやすくなる。このため大型の基板に微細なパターンを均一に形成するには、レジスト塗布から現像までのリソグラフィー工程の制御が必要であることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3199611号公報
【特許文献2】特許第4528510号公報
【特許文献3】特開2001-22090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、レーザーダイオードやLEDなどの高性能の発光が可能である光半導体素子の発展に伴って、放熱性と電気絶縁性および回路導電性を兼ね備えたセラミックス回路基板の需要は年々増加している。特に、小型化・高性能化に伴い素子の発熱が増加するに伴いセラミックス回路基板の高信頼化が求められている。このため高信頼性を損なうことなく、放熱性と電気絶縁性を兼ね備え導電回路を形成したセラミック薄膜メタライズ基板(サブマウント)が求められている。
【0011】
実施形態は、このような問題を解決するものであり、導電回路を形成した大型セラミックス薄膜メタライズ基板から効率よく小型基板を製造可能にしたコストパフォーマンスに優れたセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法は、リソグラフィー工程において、レジスト塗布後のプリベークの温度が60℃以上100℃以下、時間が70秒以上120秒以下であり、プリベーク後の1次露光積算照射量が10mJ/cm2以上50mJ/cm2以下であり、1次露光後の反転ベークの温度が110℃以上140℃以下、時間が40秒以上90秒以下であり、反転ベーク後の2次露光積算照射量が260mJ/cm2以上350mJ/cm2以下であり、2次露光後に現像を行った後に薄膜メタライズによりパターン回路を形成する製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の切断前の一例を示す上面図。
【
図2】実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の一例を示す上面図。
【
図3】実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の一例を示す側面図。
【
図4】実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の一例を示す下面図。
【
図5】実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板のパターン回路の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6】実施形態に係るチップオンサブマウント基板の一例を示す断面図。
【
図7】実施形態に係る半導体モジュールの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、セラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法、チップオンサブマウントの製造方法、および、半導体モジュールの製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板に設けられるパターン回路とは、セラミックス基板表面上の薄膜メタライズによる導電部および絶縁部を示し、製品サイズに分割前および分割後の両方を示すものとする(以下「パターン回路」と呼ぶ)。また、パターン回路形成とは、セラミックス基板表面上に薄膜メタライズによる導電部および絶縁部を形作るためのものであり、セラミックス基板を分割する前に形成するパターン回路を示すものとする(以下、「パターン回路形成」と呼ぶ)。
【0016】
実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板のパターン回路形成の製造方法は、リソグラフィー工程において、レジスト塗布後のプリベークの温度が60℃以上100℃以下、時間が70秒以上120秒以下であり、プリベーク後の1次露光(パターン露光)積算照射量が10mJ/cm2以上50mJ/cm2以下である。また、1次露光後の反転ベークの温度が110℃以上140℃以下、時間が40秒以上90秒以下であり、反転ベーク後の2次露光(全面露光)積算照射量が260mJ/cm2以上350mJ/cm2以下であり、2次露光後に現像を行った後にパターン回路を形成するものである。以下、実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の製造方法、チップオンサブマウントの製造方法、および、半導体モジュールの製造方法について詳細に説明する。
【0017】
図1に実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板の切断前の一例の上面図を示した。1は切断前のセラミックス薄膜メタライズ基板、2はセラミックス薄膜メタライズ基板、3は切断後のセラミックス薄膜メタライズ基板である。なお、セラミックス薄膜メタライズ基板は、切断(分割)により複数のセラミックス薄膜メタライズ基板3を取得可能な大型なセラミックス薄膜メタライズ基板2を含む。
図1ではセラミックス薄膜メタライズ基板3は平面図で略長方形状をしているが、略多角形状をしていても良い。
【0018】
図2に実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板3の上面図の一例を示す。4は薄膜メタライズ、5はセラミックス基板である。セラミックス基板5が窒化アルミニウム基板である場合は、熱伝導率160W/m・K以上、さらには240W/m・K以上と高熱伝導率にすることができる。その他のセラミックス基板5としては、酸化アルミニウム、酸化ベリリウムなどがある。これらのセラミックス基板5は単板であっても良いし、多層構造などの立体構造を有していても良い。
【0019】
図3は
図2セラミックス薄膜メタライズ基板の側面図である。6は薄膜メタライズである。
図4は
図2の薄膜メタライズ基板の下面図である。
図4ではセラミックス基板の下面全面に薄膜メタライズが形成されているが、上面と同様に回路を形成しても良いし、薄膜メタライズがなくセラミック基板の状態でも良い。下面に薄膜メタライズが形成されている場合は、ろう付けや半田付けなどでヒートシンクに接合され、薄膜メタライズが形成されていない場合は樹脂などの接着剤にてヒートシンクに接合される。
【0020】
図5は実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板のパターン回路の製造工程の一例を示す断面図である。(A)は加工前のセラミックス基板5の断面図である。(B)はセラミックス基板5の表面にレジスト7を塗布した状態である。(C)はプリベークをしたセラミックス基板5にマスク8を介して1次露光を行い、1次露光によりマスクされていない部分のレジスト9に紫外線が照射された状態である。(D)は1次露光後に露光したレジスト9がセラミックス基板上で感光した状態である。この後に反転ベークを行いった後に2次露光を行う。(E)はレジスト面をエッチングすることにより露光したレジスト9をセラミックス基板5の表面に形成した状態である。(F)は露光したレジスト9およびセラミックス基板5の表面に薄膜メタライズ10を成膜した状態である。(G)は露光したレジスト9を除去(リフトオフ)することによりセラミックス基板5の表面に薄膜メタライズ4を形成した状態である。
【0021】
セラミックス薄膜メタライズ基板を製造する工程は、リソグラフィー工程において、セラミックス基板にレジストを塗布後のプリベークについて、温度が60℃以上100℃以下、時間が70秒以上120秒以下である。プリベークの目的はレジストを均一に乾燥することであるが、温度が60℃よりも低くなり、時間が70秒より短くなるとレジストが液状または半乾燥になる箇所が発生し、1次露光によるパターン感光ができない。これとは逆に温度が100℃よりも高くなり、時間が120秒を超えるとレジストが過剰に熱架橋する箇所が発生して、同様にパターンの感光ができなくなる。さらには、プリベークの温度は70℃以上90℃以下、時間が80秒以上110秒以下であることが好ましい。
【0022】
プリベーク後の1次露光について、積算照射量は10mJ/cm2以上50mJ/cm2以下である。1次露光の目的は、レジストにマスクを通して露光を行い、感光部分のレジストが変質することにより、パターン形状をセラミックス基板に感光することである。積算照射量が10mJ/cm2より小さいとパターン形状が十分に感光できない箇所が発生する。逆に積算照射量が50mJ/cm2よりも大きいとマスク内側まで感光が進んでしまい、パターン精度が悪くなる箇所が発生するためである。さらには、プリベーク後の1次露光の積算照射量は20mJ/cm2以上40mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0023】
1次露光後の反転ベークについて、温度は110℃以上140℃以下、時間は40秒以上90秒以下である。反転ベークでは1次露光より感光したレジストが優先的に架橋(クロス・リンク)される。温度が110℃よりも低くなり、時間が40秒より短くなると架橋が進まず、任意のパターン形状・精度を均一ではない箇所が発生する。これとは逆に温度が140℃よりも高くなり、時間が90秒を超えると感光していない部分まで架橋が進み、パターン形状・精度が均一ではない箇所が発生するためである。さらには、反転ベークの温度は120℃以上130℃以下、時間が50秒以上80秒以下の方が好ましい。
【0024】
反転ベーク後の2次露光について、積算照射量は260mJ/cm2以上350mJ/cm2以下である。2次露光の目的は、1次露光され反転ベークにより、架橋していない部分を感光するためである。積算照射量が260mJ/cm2より小さいと後工程で現像したときにレジストが除去できない部分が発生する可能性がある。積算照射量が350mJ/cm2よりも大きいと架橋が進み、パターン精度が悪くなるためである。さらには、反転ベーク後の2次露光の積算照射量は270mJ/cm2以上340mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0025】
2次露光後には現像を行い、セラミックス基板に感光したレジストの露光部が残った状態になる(E)。レジスト露光部が残ったセラミックス基板をアッシングした後に表面に薄膜メタライズ膜を形成する(F)。薄膜メタライズを形成する方法は蒸着法やスパッタ法などがある。薄膜メタライズを形成する金属は、例えば密着層、バリア層、表面層の3層構造などである。密着層はセラミックス基板の表面に金属を接合するために形成する金属層でありチタン(Ti)などが挙げられる。バリア層は密着層と表面層の間にあり相互の金属の拡散を防止するために形成する金属層であり白金(Pt)、パラジウム(Pd)などが挙げられる。表面層は他の部品と接合するために形成する金属層であり金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などが挙げられる。薄膜メタライズ後にレジストを剥離(リフトオフ)することにより薄膜メタライズのパターン回路を形成する(G)。
【0026】
パターン回路の裏面に薄膜メタライズを行う場合には、続けて表面と同様にアッシング後に薄膜メタライズを形成する。薄膜メタライズの表面に接合層を形成する場合は、半田などにより接合層を形成する。接合層は例えば金-スズ(Au-Sn)半田などが挙げられる。これらの薄膜メタライズや接合層によるパターン回路を形成後に製品のサイズに切断(分割)する。切断はダイサーなどにより行う。このようなセラミックス薄膜メタライズ基板3は、接合層を介して半導体素子を実装したことを特徴とするチップオンサブマウント11に好適である。
【0027】
図6に実施形態にチップオンサブマウントの一例を示す。
図6中、5はセラミックス基板、6は薄膜メタライズ、12は半田、13は半導体素子である。このようなチップオンサブマウント11は、接合層を介してヒートシンクにチップオンサブマウント11を実装したことを特徴とする半導体モジュール14に好適である。
【0028】
図7に実施形態に係る半導体モジュール(半導体装置)の一例を示す。
図7中、15はワイヤーボンディング、16はチップオンサブマウントおよびヒートシンクを接合する半田などの接合層、17はリードフレームである。18はヒートシンクである。
【0029】
図7では、ヒートシンク18の上に接合層16を介してチップオンサブマウント11を接合している。半導体素子13と薄膜メタライズ4をワイヤーボンディング15で導通している。また、半導体素子13の他にワイヤーボンディング15で薄膜メタライズ6とリードフレーム17を接合している。ワイヤーボンディング15とリードフレーム17、接合層16とヒートシンク18、により接続されたチップオンサブマウント11で半導体モジュール14としている。半導体モジュール14は、このような構造に限定されるものではない。例えば、ワイヤーボンディング15とリードフレーム17はどちらか一方であっても良い。また、半導体素子13、ワイヤーボンディング15およびリードフレーム17は、半導体モジュール14にそれぞれ複数個設けても良い。
【0030】
また、半導体素子13やヒートシンク18を接合する接合層12および接合層16は、半田、ろう材などが挙げられる。半田は鉛フリー半田が好ましい。また、半田は融点が450℃以下のものを示す。ろう材は融点が450℃を越えたものを示す。また、融点が500℃以上のものを高温ろう材と呼ぶ。高温ろう材は銀(Ag)を主成分とするものが挙げられる。
【0031】
半導体素子13は小型化が進む一方でチップからの発熱量は増加の一途をたどっている。そのため、半導体素子13を搭載するセラミックス薄膜メタライズ基板3においては放熱性の向上が重要になっている。また、半導体モジュール14の高性能化のために、半導体モジュール14内に複数の半導体素子13を実装するようになっている。半導体素子13一つだけでも素子の真性温度を超えてしまうと、抵抗が負のマイナス側の温度係数に変化してしまう。これに伴い、電力が集中的に流れる熱暴走を起こして瞬時に破壊してしまう現象がおきる。よって、放熱性を向上させることは有効である。また、半導体モジュール14は、レーザーダイオードをはじめ、一般照明LEDからヘッドランプ用のハイパワーLED、また高放熱性の要求が強い深紫外LED(殺菌ランプ・樹脂硬化ランプ)などに用いることができる。レーザーやLEDは、高出力化が進んでおり、半導体モジュール14の信頼性が向上することは、そのままレーザー装置やLED照明の信頼性向上につながる。
【0032】
次に、実施形態に係るセラミックス薄膜メタライズ基板3のうち窒化アルミニウム基板の薄膜メタライズのパターン回路形成方法について説明する。窒化アルミニウム基板のパターン回路形成は前述の構成を有していれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、歩留まり良く得るための方法として次のものが挙げられる。
【0033】
まず、窒化アルミニウム基板を用意する。特に、窒化アルミニウム基板から生成されるセラミックス薄膜メタライズ基板3全体の放熱性を考慮すると、窒化アルミニウム基板の熱伝導率は170W/m・K以上であることが好ましい。また、パターン回路を形成する薄膜メタライズ側と反対面の薄膜メタライズ側の導通を行うときは、スルーホールやビアホールによる貫通孔を有する窒化アルミニウム基板を用意する。窒化アルミニウム基板に貫通孔を設ける場合は、予め成形体の段階で貫通孔を設けても良い。また、窒化アルミニウム基板に貫通孔を設ける工程を行っても良い。貫通孔を設ける工程は、レーザー加工、ドリルやなどの切削加工などにより行われる。
【0034】
窒化アルミニウム基板にレジスト7を塗布する。塗布にはコーターなどを使用する。レジストはフェノール樹脂系のフォトレジストなどが挙げられる。次にレジスト塗布を行った窒化アルミニウム基板をプリベークする。プリベークは専用の加熱装置を使用しても良いし、コーターにベークする機能が備えられている場合は、そのままプリベークしても良い。所定の温度と時間にて加熱した後に冷却する。
【0035】
次に、プリベークした窒化アルミニウム基板を露光装置にセットして1次露光を行う。1次露光はパターンを形成したマスク8を通して紫外線などを照射することによりマスクされていない部分を露光する。次に、1次露光を行った窒化アルミニウム基板に反転ベークを行う。反転ベークは専用の加熱装置を使用しても良いし、コーターの加熱装置を使用しても良い。反転ベークは所定の加熱温度と時間にて保持した後に冷却する。
【0036】
次に、反転ベークした窒化アルミニウム基板を露光装置にセットして2次露光を行う。2次露光はマスク8を使用せずに基板全面に露光を行う。次に現像処理により露光したレジスト9以外のレジスト7を除去する。露光したレジスト9がある窒化アルミニウム基板に薄膜メタライズ10を行う。薄膜メタライズは蒸着法、スパッタ法などがある。薄膜メタライズ10を行った窒化アルミニウム基板から露光したレジスト9を剥離(リフトオフ)して薄膜メタライズ4によるパターン回路を形成する。
【0037】
薄膜メタライズの表面にリソグラフィーにより半田などの接合層12を製膜する場合は、薄膜形成する場合と同様にレジスト塗布・露光・現像・半田成膜・剥離(リフトオフ)の工程で形成する。半田はAu-Sn、Au-Si(ケイ素)、などが挙げられる。リソグラフィーで接合層などを形成する以外には、接合性を向上するために全面にめっきをする ことも可能である。めっきはニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)を下地にしたAuめっき、などが挙げられる。
【0038】
次に、窒化アルミニウム基板を製品サイズに切断する工程を行う。パターン回路を形成した窒化アルミニウム基板を製品形状に切断する。切断はダイサー(ダイシングソー)などによって行われる。次に、半導体素子13などを接合する工程を行う。半導体素子13を接合する箇所に接合層を設ける。接合層は、半田またはろう材が好ましい。接合層を設けて、その上に半導体素子13を設ける。
【0039】
次に、半導体素子13を接合した窒化アルミニウム基板を半導体モジュールに接合するする工程を行う。接合層を介してヒートシンク18に接合する。また、必要に応じ、ワイヤーボンディング15により薄膜メタライズ4によるパターン回路とリードフレーム17を接合する。また、ワイヤーボンディング15により半導体素子13と薄膜メタライズ4によるパターン回路とを接合する。また、半導体素子13、リードフレーム17、ワイヤーボンディング15は必要な数を設けるものとする。
【0040】
以上では、窒化アルミニウム基板のパターン回路の裏面に薄膜メタライズ6が形成された状態で半田などの接合層を介してヒートシンク18に接合して製造されるものとして説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、パターン回路の裏面に薄膜メタライズ6がなく窒化アルミニウム基板の状態である場合は、ヒートシンク18に接着剤などで接合しても良い。
【0041】
(実施例1~9、比較例1~8)
セラミックス薄膜メタライズ基板には、直径100mmで厚さが0.32mmの窒化アルミニウム基板(熱伝導率200W/m・K)を用意した。窒化アルミニウム基板にスピンコーターを使用して回転数および時間が、200rpmで10秒、1000rpmで15秒、2000rpmで15秒、200rpmで2秒の条件で、3cm3のレジストを滴定することにより基板全面に紫外線硬化型レジストを塗布した。
【0042】
レジスト塗布後にスピンコーターにより、表1の温度と時間にてプリベークを行った。次に
図1および
図2に示すように、0.9mm×0.9mmの切断後の製品サイズに、0.6mm×0.3mmの2カ所の導体部分が0.1mmの間隔がある回路パターンを直径100mmに形成したガラスマスクを準備した。露光機(パラレルライトマスクアライナー)に窒化アルミニウム基板とガラスマスクをセットして表1の条件で露光作業を行った。次に、窒化アルミニウム基板をスピンコーターにセットして表1の条件で反転ベークを行った。次に露光機に窒化アルミニウム基板をセットして表1の条件で2次露光を行った。
【0043】
【0044】
表1から分かる通り、実施例1~9では、プリベーク温度、プリベーク時間、1次露光積算照射量、反転ベーク温度、反転ベーク時間、2次露光積算照射量の値は好ましい範囲内であった。一方、比較例1~8では、それらの値が好ましい範囲外となった。
【0045】
次に2次露光後に窒化アルミニウム基板を耐溶剤性カセットにセットして恒温槽の現像液中にて25℃150秒で揺動して現像した。現像液はテトラメチルアンモニウム=ヒドロキシドに非イオン系界面活性剤を加えたリソグラフィー用現像液を使用した。現像した窒化アルミニウム基板を純水で洗浄した後にスピンドライヤーにて3000rpmで3分間回転することにより乾燥した。
【0046】
次に窒化アルミニウム基板をアッシャー装置にてアッシングを行った。アッシング条件はRFパワー400Wにて1分間で行った。次に電子ビーム蒸着装置にてチタン(Ti)0.1μm、白金(Pt)0.2μm、金(Au)0.3μmの順に窒化アルミニウム基板上に金属を三層蒸着した。次に窒化アルミニウム基板を耐溶剤性カセットにセットして恒温槽のレジスト剥離液中にて50℃45分間で揺動してレジストを剥離した。レジスト剥離液は非N-メチル-2-ピロリドンベースのアルカリ系レジスト剥離液を使用した。レジスト剥離した窒化アルミニウム基板を純水中で洗浄した。次に窒化アルミニウム基板をダイサーにより切断した。
【0047】
ダイサーにて切断した製品についてパターン形状と剥がれ状態について実体顕微鏡にて確認をした。パターンのエッジ部分に凹凸が発生して寸法規格を満たさない製品形状をパターン精度不良、パターン回路形成によりパターンに剥がれ不良が発生した製品形状をパターン精度不良としてカウントした。
【0048】
また、実施例および比較例に係る切断後の窒化アルミニウム薄膜メタライズ基板100個について回路パターン1カ所にAu-Sn半田により半導体素子であるレーザーダイオード素子を接合してチップオンサブマウントを製造した。
【0049】
ヒートシンク部分と2ヵ所のリード端子部分がある銅製のステム部品のヒートシンク部分にチップオンサブマウントを半田接合した。次にレーザーダイオード素子、パターン回路、およびリード端子をワイヤーボンディングで接合した。次にウインドウキャップを接合してレーザーデバイス用の半導体モジュールを作製した。
【0050】
半導体モジュールを100℃で200時間の高温連続通電試験をして、半導体モジュールのレーザー特性を確認した。200時間後にレーザー特性が低下したモジュールについて要因を調査した。モジュールの不良は通電不良と熱暴走不良の2種類の不良であった。通電不良はパターン回路間で電気ショートが起こったことにより半導体が破損した不良である。熱暴走不良は、半導体の発生する熱が十分に基板側に伝わらずに半導体が破損または能力が低下した不良である。これら二つの不良をモジュールの不良としてカウントした。
【0051】
実施例および比較例の基板不良発生率とモジュール不良率を表2に示す。
【0052】
【0053】
表2の基板不良から分かる通り、実施例に係る窒化アルミニウム薄膜メタライズ基板は、パターン精度不良が発生しないか不良率が小さかった。プリベークによりレジストが適正に乾燥したこと、および1次露光によりパターン形状に露光ができたためである。また、反転ベークにより感光したレジストが優先的に架橋されたこと、および2次露光により反転ベークにより架橋されていない箇所が適切に露光されたためである。
【0054】
それに対して比較例では、パターン精度不良が多く発生した。プリベーク条件が弱い場合は乾燥状態が十分でないため、また強い場合はレジストが熱架橋するためパターンの感光が適正にできなかったためである。1次露光条件が弱い場合はパターンの感光が十分にできないため、また強い場合はマスク内側部分まで露光が進むため所定のパターン形状・精度に対して十分に制御できなかったためである。反転ベーク条件が弱い場合は架橋が進まず、また強い場合は感光していない部分まで架橋が進み、所定のパターン形状・精度に対して十分に制御できないためである。2次露光の条件が弱い場合は現像時にレジストが除去されにくく、強い場合は架橋が進むため、所定のパターン形状・制度に対して十分に制御ができないためである。
【0055】
また、表2の基板不良から分かる通り、実施例に係る窒化アルミニウム薄膜メタライズ基板は、剥がれ不良が発生しないか不良率が小さかった。プリベークによりレジストが適正に乾燥したこと、および1次露光により露光部分が適正に変質されたためである。また、反転ベークにより感光したレジストが優先的に架橋されたこと、および2次露光により反転ベークにより架橋さえていない箇所が適切に露光され露光部分が適切に変質されたためである。
【0056】
それに対して比較例では、剥がれ不良が多く発生した。特にプリベーク条件が弱い場合は乾燥状態が十分でないため、次工程以下でレジストの感光が適正にできずにリフトオフ時の剥がれが発生しやすくなったためである。
【0057】
また、表2のモジュール不良から分かる通り、実施例に係る窒化アルミニウム薄膜メタライズ基板は、導通不良が発生しなかった。プリベークから2次露光までが適切な工程条件だったため、パターン精度不良の発生が少なくパターン間距離が確保され絶縁状態が適正に保たれたためである。
【0058】
それに対して比較例では、導通不良が発生した。パターン精度が悪くなったことが原因として挙げられる。他には、パターン寸法が公差内であってもパターン形状に凹凸が発生して凸部分から電流がリークする、レジスト層が十分に架橋せずにパターン間の絶縁部分にも薄膜メタライズの一部が侵入する、などが原因として挙げられる。
【0059】
また、表2のモジュール不良から分かる通り、実施例に係る窒化アルミニウム薄膜メタライズ基板は、熱暴走不良が発生しなかった。プリベークから2次露光までが適切な工程条件だったため、半導体素子、半田、薄膜メタライズ、窒化アルミニウム基板へと良好に放熱でき、半導体素子で発生した熱による動作への影響がなかったためである。
【0060】
それに対して比較例では、熱暴走不良が発生した。不良基板を観察すると半導体素子と薄膜メタライズの間にある半田接合層には異常は見られなかったが、薄膜メタライズと窒化アルミニウム基板の間に空孔が観察された。熱暴走不良が起きたのは発生した空孔により十分な放熱ができなかったのが原因である。この空孔発生の原因は、プリベークの条件が弱くレジストが十分に乾燥せずに窒化アルミニウム基板上に残り、薄膜メタライズと窒化アルミニウム基板との接合を阻害したためである。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…切断前のセラミックス薄膜メタライズ基板
2…セラミックス薄膜メタライズ基板
3…切断後のセラミックス薄膜メタライズ基板
4、6…薄膜メタライズ(パターン回路)
5…セラミックス基板
7…レジスト
8…マスク
9…露光したレジスト
10…薄膜メタライズ
11…チップオンサブマウント
12、16…接合層
13…半導体素子
14…半導体モジュール
15…ワイヤーボンディング
17…リードフレーム
18…ヒートシンク