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特開2023-110312循環流動層ボイラ及びフライアッシュの製造方法
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  • 特開-循環流動層ボイラ及びフライアッシュの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110312
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】循環流動層ボイラ及びフライアッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/10 20060101AFI20230802BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20230802BHJP
   F23J 13/04 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F23C10/10
F23J15/00 Z
F23J13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011673
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】清水 章
(72)【発明者】
【氏名】安松 知道
(72)【発明者】
【氏名】宇津見 博志
(72)【発明者】
【氏名】三角 唯斗
【テーマコード(参考)】
3K064
3K070
【Fターム(参考)】
3K064AA06
3K064AB01
3K064BA07
3K064BA15
3K064BA18
3K070CA05
3K070CA12
3K070CA36
3K070DA07
3K070DA30
3K070DA32
(57)【要約】
【課題】本開示は、内筒の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能な循環流動層ボイラ及びフライアッシュの製造方法を説明する。
【解決手段】循環流動層ボイラは、流動材を流動させつつ燃料を燃焼するように構成された火炉と、火炉で生成された燃焼ガスが導入され、燃焼ガスから粉粒体を分離するように構成されたサイクロンと、サイクロンにおいて粉粒体が分離された後のガスを排ガスとして排出するように構成された排気部とを備える。サイクロンは、排気部と接続される出口部と、サイクロンの内部に向けて突出しつつ上下方向に沿って延びるように出口部に配置された内筒と、排気部又は出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間に配置され、且つ、隙間における排ガスの流動を阻害するように構成された封止部材とを含む。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動材を流動させつつ燃料を燃焼するように構成された火炉と、
前記火炉で生成された燃焼ガスが導入され、前記燃焼ガスから粉粒体を分離するように構成されたサイクロンと、
前記サイクロンにおいて前記粉粒体が分離された後のガスを排ガスとして排出するように構成された排気部とを備え、
前記サイクロンは、
前記排気部と接続される出口部と、
前記サイクロンの内部に向けて突出しつつ上下方向に沿って延びるように前記出口部に配置された内筒と、
前記排気部又は前記出口部の内周面と前記内筒の外周面との間の隙間に配置され、且つ、前記隙間における前記排ガスの流動を阻害するように構成された封止部材とを含む、循環流動層ボイラ。
【請求項2】
前記封止部材は、前記内筒の周囲全体を覆うように前記隙間に配置されている、請求項1に記載の循環流動層ボイラ。
【請求項3】
前記内筒は、前記内筒の外周面から外方に突出し、且つ、前記排気部又は前記出口部に支持可能に構成された環状の突出片を含み、
前記封止部材は、前記排気部又は前記出口部の内周面と前記突出片との間に配置されている、請求項1又は2に記載の循環流動層ボイラ。
【請求項4】
前記サイクロンは、前記内筒の前記突出片よりも下方において前記出口部の内周面と前記内筒の外周面との間の別の隙間に配置され、且つ、前記別の隙間における前記排ガスの流動を阻害するように構成された別の封止部材をさらに含む、請求項3に記載の循環流動層ボイラ。
【請求項5】
前記サイクロンは、前記隙間よりも前記内筒の下端側に位置するバッフル部材をさらに含み、
前記バッフル部材は、上下方向から見たときに前記隙間の全域と重なり合うように前記内筒の外周面から外方に突出している、請求項1~4のいずれか一項に記載の循環流動層ボイラ。
【請求項6】
前記封止部材は、
耐火繊維によって構成されたベース層と、
前記ベース層上に設けられ、且つ、キャスタブル耐火物によって構成された被覆層とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の循環流動層ボイラ。
【請求項7】
前記封止部材は、燃え殻又はばいじんを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の循環流動層ボイラ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の循環流動層ボイラを用いてフライアッシュを製造する方法であって、
前記火炉において前記流動材を流動させつつ前記燃料を燃焼させることと、
前記火炉で生成された前記燃焼ガスを前記サイクロンに導入して、前記燃焼ガスから粉粒体を分離することと、
前記サイクロンにおいて前記粉粒体が分離された後のガスを排ガスとして、前記出口部及び前記排気部を通じて排出することと、
前記排ガスに随伴するフライアッシュを集塵機において回収することとを含む、フライアッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、循環流動層ボイラ及びフライアッシュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、火炉と、サイクロンとを備える循環流動層ボイラを開示している。火炉は、流動材を流動させつつ、空気及び燃料を流動材に混合して燃料を燃焼させるように構成されている。火炉内における燃料の燃焼によって生じた燃焼ガスは、サイクロンに導入される。サイクロンは、燃焼ガスに随伴する粒径の比較的大きな粉粒体(例えば、流動材の粉末又は粒子など)を燃焼ガスから遠心分離し、火炉に戻すように構成されている。サイクロンからは、サイクロンによって遠心分離されなかった粒径の比較的小さなダストが随伴した燃焼ガスが、下流側に排出される。
【0003】
サイクロンは、燃焼ガスが導入される円筒部を有するサイクロン本体と、サイクロン本体の円筒部の中心に位置する円筒状の内筒とを含む。サイクロン本体の円筒部には、内向きの内筒受け部が設けられている。金属製の内筒には、当該内筒の周壁を貫通して溶接により取り付けられる外向きの張り出し体が円周方向に複数配置されている。内筒は、内筒の複数の張り出し体がサイクロン本体の内筒受け部に載置されることで、サイクロン本体に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-020711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の循環流動層ボイラにおいて、内筒には、円周方向に間隔をおいて複数の開口が設けられている(段落0017,0031,0035参照)。この目的は、内筒の張り出し体とサイクロン本体の内筒受け部との間に灰が溜まるのを防止することと、当該開口を通じて内筒の内外に燃焼ガスを流通させることにより張り出し体の溶接部分における熱応力を緩和することとにある(同参照)。
【0006】
しかしながら、サイクロンによる遠心分離後の燃焼ガスが排ガスとして内筒を通じてサイクロンから排出される際に、高温(例えば、850℃~1000℃程度)の排ガスが当該開口を流れることにより、内筒のうち排ガスが流動する領域が特に軟化する。これに伴い、内筒が排ガスから受ける圧力によって、内筒のうち軟化した部分の近傍が径方向の内外に変形しうる。この場合、内筒の外形が全体として小さくなるので、循環流動層ボイラが停止して内筒が冷えたときに、内筒の張り出し体がサイクロン本体の内筒受け部から外れて、内筒がサイクロン本体から落下する懸念がある。そのため、内筒の落下前に内筒を交換しなければならず、内筒の交換頻度が高まる。したがって、ランニングコストが増加しうる。
【0007】
そこで、本開示は、内筒の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能な循環流動層ボイラ及びフライアッシュの製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
循環流動層ボイラの一例は、流動材を流動させつつ燃料を燃焼するように構成された火炉と、火炉で生成された燃焼ガスが導入され、前記燃焼ガスから粉粒体を分離するように構成されたサイクロンと、サイクロンにおいて粉粒体が分離された後のガスを排ガスとして排出するように構成された排気部とを備える。サイクロンは、排気部と接続される出口部と、サイクロンの内部に向けて突出しつつ上下方向に沿って延びるように出口部に配置された内筒と、排気部又は出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間に配置され、且つ、隙間における排ガスの流動を阻害するように構成された封止部材とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る循環流動層ボイラ及びフライアッシュの製造方法によれば、内筒の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、循環流動層ボイラの一例を示す概略図である。
図2図2は、図1の例の循環流動層ボイラを構成する内筒の近傍を示す断面図である。
図3図3は、図1の例の循環流動層ボイラを構成する内筒を示す上面図である。
図4図4(a)は、図1の例の循環流動層ボイラにおいて、内筒の近傍を排ガスが流動する様子を概略的に示す断面図であり、図4(b)は、図1の例の循環流動層ボイラが封止部材を含まない場合において、内筒の近傍を排ガスが流動する様子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0012】
[循環流動層ボイラの概要]
図1図3を参照して、循環流動層ボイラ1の構成について説明する。循環流動層ボイラ1は、図1に示されるように、火炉(流動床反応炉)10と、サイクロン20と、熱交換器30と、排気部40と、集塵機50と、煙突60とを含む。
【0013】
火炉10は、流動材(例えば、石炭灰、石灰石、砂など)を流動させつつ、空気及び燃料(例えば、石炭、バイオマスなど)を流動材に混合して燃料を燃焼させるように構成されている。バイオマスとしては、例えば、木屑、ヤシ殻などが挙げられる。
【0014】
火炉10は、上下方向に沿って延びると共に筒状を呈する燃焼室11と、排出ライン12とを含む。上下方向における燃焼室11の中間部には、燃料を供給する燃料供給口(図示せず)が設けられている。燃焼室11内には、流動材が充填されている。燃焼室11内では、内部に導入された流動用の空気により、流動材と、燃料供給口から供給された燃料とが、下方から上方に向けて流動する。燃料は、燃焼室11内において流動しながら、NOの発生を抑制するために830℃~900℃程度で燃焼される。
【0015】
排出ライン12は、燃焼室11の上部と、後述するサイクロン20の本体21の上部とを接続するように、これらの間を延びている。排出ライン12の下流端部は、本体21の内周面に沿う方向(例えば接線方向)に延びるように、本体21に接続されている。排出ライン12は、燃焼室11において生じた燃焼ガスG1を、サイクロン20に導入するように構成されている。燃焼ガスG1は、粒径の比較的大きな粉粒体と、粒径の比較的小さなダストとを随伴しつつ、排出ライン12を通じてサイクロン20に到達する。燃焼ガスG1の温度は、例えば、850℃~1000℃程度であってもよい。
【0016】
粉粒体は、例えば、流動材の粉末又は粒子、燃え殻、石こうなどを含む。燃え殻は、例えば、石炭の燃え殻(ボトムアッシュ、クリンカアッシュなどともいう)を含む。ダストは、例えば、ばいじんを含む。ばいじんは、例えば、石炭のばいじん(フライアッシュともいう)、木くずの灰、ヤシ殻の灰などを含む。
【0017】
サイクロン20は、本体21と、出口部22と、排出ライン23と、内筒70とを含む。本体21は、上下方向に沿って延びると共に筒状を呈する。本体21は、排出ライン12を通じて導入された燃焼ガスG1に随伴する粉粒体を、燃焼ガスG1から遠心分離するように構成されている。
【0018】
出口部22は、上下方向に沿って延びると共に筒状を呈する。出口部22は、本体21の上端部に配置されており、本体21において遠心分離処理された後の燃焼ガスG1を排ガスG2として下流側に排出するように構成されている。排ガスG2には、本体21において遠心分離されなかったダストが随伴する。
【0019】
出口部22の内周面には、出口部22の径方向中央側に向けて突出する支持片24が設けられていてもよい。支持片24は、一つ又は複数の支持片24を含んでいてもよい。支持片24が一つの支持片24を含む場合、支持片24は、円環状又は略C字形状を呈していてもよい。支持片24が複数の支持片24を含む場合、複数の支持片24は、図2及び図3に例示されるように、出口部22の内周面において周方向に並んでいてもよいし、出口部22の内周面において略等間隔で周方向に並んでいてもよい。なお、図3の例では、8個の支持片24が、出口部22の内周面において略等間隔で周方向に並んでいる。
【0020】
図1に戻って、排出ライン23は、燃焼室11の下部と熱交換器30とを接続するように、これらの間を延びている。排出ライン23は、本体21において遠心分離された粉粒体を熱交換器30に導入するように構成されている。内筒70についての詳細は後述する。
【0021】
熱交換器30は、排出ライン23を通じて導入された高温(例えば900℃程度)の粉粒体から熱を回収し、熱回収後(例えば500℃程度)の粉粒体を燃焼室11の下部に戻すように構成されている。熱交換器30において回収された熱は、例えば、発電等に利用されてもよい。
【0022】
排気部40は、出口部22と集塵機50とを接続するように、これらの間を延びている。排気部40は、例えば、筒状を呈している。排気部40は、出口部22を通じてサイクロン20から排出された高温の排ガスG2から熱を回収し、熱回収後の排ガスG2を集塵機50に導入するように構成されている。排ガスG2から熱回収するために、排気部40の中途に、例えば過熱器及び節炭器(図示せず)が設けられていてもよい。排気部40において回収された熱は、例えば、発電等に利用されてもよい。
【0023】
集塵機50は、排ガスG2に随伴するダスト(フライアッシュ等)を捕集するように構成されている。集塵機50は、バグフィルタであってもよいし、電気集塵機であってもよい。集塵機50において捕集されたフライアッシュは、セメント原料として利用されてもよい。煙突60は、集塵機50においてダストが捕集された後の清浄なガスを大気に排出するように構成されている。
【0024】
[内筒の構成]
続いて、図2及び図3を参照して、内筒70の詳細について説明する。内筒70は、出口部22に配置されている。内筒70は、ボルテックスファインダーとも呼ばれ、排出ライン12から本体21に導入された燃焼ガスG1が内筒70の外周を旋回することにより、遠心分離効果が発生する。内筒70は、金属製であってもよい。
【0025】
内筒70は、本体71と、突出片72とを含む。本体71は、上下方向に沿って延びるように、出口部22の内側に位置している。本体71の下部は、本体21の内部に向けて突出している。
【0026】
突出片72は、本体71の外周面から本体71の径方向外方に向けて突出している。突出片72は、出口部22に対して支持可能に構成されている。図2及び図3に示される例では、突出片72は、出口部22の支持片24に支持されている。このとき、循環流動層ボイラ1の運転時における内筒70の熱膨張を考慮して、突出片72の外周面が排気部40の内周面から離隔した状態とされ、本体71の外周面が出口部22の内周面から離隔した状態とされる。すなわち、突出片72の外周面と、排気部40の内周面との間には、隙間D1が形成されている。本体71の外周面と、出口部22の内周面との間には、隙間D2(別の隙間)が形成されている。なお、循環流動層ボイラ1の運転時に内筒70が熱膨張することで、本体71の外周面が支持片24の先端と当接してもよい。
【0027】
図2に例示されるように、内筒70の下端部には、バッフル部材80が取り付けられていてもよい。この場合、バッフル部材80は、隙間D2よりも下方、すなわち、出口部22よりも下方に位置する。バッフル部材80は、例えば、環状を呈する板状体であってもよい。バッフル部材80は、金属製(例えばステンレス鋼)であってもよい。バッフル部材80は、その内周縁が本体71の外周面に溶接されることで、内筒70に接続されていてもよい。
【0028】
バッフル部材80は、上下方向から見たときに、隙間D2の全域と重なり合っている。すなわち、バッフル部材80の外周縁は、径方向において隙間D2よりも外方に位置している。
【0029】
図2及び図3に例示されるように、隙間D1には、封止部材90が配置されていてもよい。すなわち、封止部材90は、排気部40の内周面と突出片72との間に配置されていてもよい。図2及び図3の例では、封止部材90は、支持片24によって支持される。封止部材90の存在によって、本体21から排気部40に向かおうとする排ガスG2が隙間D1を流動することが阻害される。
【0030】
封止部材90は、隙間D1の全域を封止していてもよいし、隙間D1を部分的に封止していてもよい。前者の場合には、図3に例示されるように、封止部材90が環状を呈し、封止部材90によって内筒70の周囲全体が覆われることとなる。
【0031】
封止部材90は、例えば、ベース層と、その上に設けられた被覆層とで構成されていてもよい。ベース層は、例えば、耐火繊維によって構成されていてもよい。被覆層は、例えば、キャスタブル耐火物によって構成されていてもよい。この場合、まず、隙間D1にベース層(耐火繊維)を配置し、続いて、水で混練したキャスタブル耐火物をベース層上に施工(例えば、流し込み、コテ塗り、吹きつけなど)してもよい。
【0032】
図2に例示されるように、隙間D2には、封止部材100(別の封止部材)が配置されていてもよい。すなわち、封止部材100は、突出片72の下方において、出口部22の内周面と本体71の外周面との間に配置されていてもよい。図2に例示されるように、封止部材100は、突出片72の下方で且つバッフル部材80の上方に位置していてもよい。封止部材100の存在によって、本体21から排気部40に向かおうとする排ガスG2が隙間D2を流動することが阻害される。
【0033】
封止部材100は、隙間D2の全域を封止していてもよいし、隙間D2を部分的に封止していてもよい。前者の場合には、封止部材90が環状を呈し、封止部材100によって内筒70の周囲全体が覆われることとなる。なお、封止部材100が隙間D2に配置された後に、バッフル部材80が内筒70に取り付けられてもよい。
【0034】
[作用]
ところで、図4(b)に例示されるように、循環流動層ボイラ1が封止部材90,100を含まない場合には、高温の排ガスG2が隙間D1,D2を流れることにより、内筒70のうち排ガスが流動する領域が特に軟化する。これに伴い、内筒70が排ガスG2から受ける圧力によって、内筒70のうち軟化した部分の近傍が径方向の内外に変形しうる(図4(b)の矢印Ar参照)。この場合、内筒70の外形が全体として小さくなるので、循環流動層ボイラ1が停止して内筒70が冷えたときに、内筒70の突出片72が本体21の支持片24から外れて、内筒70が本体21から落下する懸念がある。そのため、内筒70の落下前に内筒70を交換しなければならず、内筒70の交換頻度が高まる。したがって、ランニングコストが増加しうる。
【0035】
その対策として、鋼材(例えばH鋼)を用いて内筒70を支持することも考えられる。具体的には、鋼材を支持片24に固定し、鋼材が通過可能な貫通孔(例えば矩形状の孔)を内筒70の本体71に形成し、貫通孔に鋼材を通すことで、鋼材及び支持片24を介してサイクロン20に内筒70が支持される。しかしながら、この場合でも、内筒70に形成された貫通孔を中心に内筒70の変形が進行し、所定期間の経過後(例えば6年~7年程度の後)には内筒70の変形が甚大となって、内筒70の交換を要することがある。これは、別の隙間D2を通過する排ガスG2が、鋼材を通すための貫通孔を流通して、貫通孔を中心に変形が進行しやすくなるためであると推測される。
【0036】
これらに対し、以上の例によれば、図4(a)に例示されるように、封止部材90,100の存在によって、隙間D1,D2を排ガスG2が流れ難くなる。そのため、排ガスG2によって内筒70が軟化し難くなると共に、排ガスG2の流動に伴い排ガスG2から内筒70に作用する圧力が小さくなる。したがって、内筒70の外形の変形が抑制されるので、内筒70の交換頻度が低下する。その結果、内筒70の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【0037】
以上の例によれば、封止部材90,100は、内筒70の周囲全体を覆うように隙間D1,D2に配置されうる。この場合、封止部材90,100の存在によって、隙間D1,D2を排ガスG2がさらに流れ難くなる。そのため、内筒70の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【0038】
以上の例によれば、封止部材90は、排気部40の内周面と突出片72との間の隙間D1に配置されうる。この場合、突出片72を支持する出口部22が、封止部材90も支持する。そのため、封止部材90を支持するための別の部材を要しない。したがって、循環流動層ボイラ1の構造を簡略化することが可能となる。
【0039】
以上の例によれば、封止部材100は、出口部22の内周面と本体71の外周面との間との間の隙間D2に配置されうる。この場合、封止部材100の存在によって、内筒70がその径方向において変形し難くなる。そのため、内筒70の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。なお、循環流動層ボイラ1の運転中は排ガスG2が出口部22に向けて上方に流れ、排ガスG2による上向きの力が封止部材100に作用するので、封止部材100は落下し難い。
【0040】
以上の例によれば、上下方向から見たときに隙間D2の全域と重なり合うバッフル部材80が、内筒70に設けられうる。この場合、出口部22から排ガスG2が排出される際、バッフル部材80の存在により、出口部22の内周面と内筒70の外周面との間の隙間D2を排ガスG2がよりいっそう流れ難くなる。そのため、内筒70の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【0041】
以上の例によれば、封止部材90は、耐火繊維で構成されたベース層と、その上に設けられ且つキャスタブル耐火物で構成された被覆層とを含みうる。この場合、隙間D1を排ガスG2が流れることが耐火繊維によって抑制されると共に、排ガスG2による耐火繊維の浮き上がりがキャスタブル耐火物によって抑制される。そのため、封止部材90が隙間D1に配置された状態を長期にわたって維持することが可能となる。
【0042】
なお、図2の例におけるバッフル部材80及び封止部材100は設けずに、ベース層と、その上に設けられた被覆層とで構成された封止部材90によって隙間D1の全域を封止した状態でサイクロン20を構成し、循環流動層ボイラ1を実際に1年間運転した。その結果、封止部材90が存在していなかった場合と比較して、内筒70の変形が大きく抑制されたことが確認された。
【0043】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0044】
(1)封止部材90,100は、内筒70と、排気部40の内周面又は出口部22の内周面との間に配置されていてもよい。
【0045】
(2)封止部材90,100は、燃え殻又はばいじんによって構成されていてもよい。この場合、循環流動層ボイラ1の運転に伴い発生する燃え殻又はばいじんが、封止部材90,100として利用されうる。そのため、封止部材90,100を低コストで構成することが可能となる。なお、封止部材90,100として隙間D1,D2に配置される燃え殻又はばいじんは、循環流動層ボイラ1の運転中に隙間D1,D2に自然に堆積したものであってもよいし、循環流動層ボイラ1の運転前に作業者が隙間D1,D2に詰めたものであってもよい。
【0046】
[他の例]
例1.循環流動層ボイラの一例は、流動材を流動させつつ燃料を燃焼するように構成された火炉と、火炉で生成された燃焼ガスが導入され、燃焼ガスから粉粒体を分離するように構成されたサイクロンと、サイクロンにおいて粉粒体が分離された後のガスを排ガスとして排出するように構成された排気部とを備える。サイクロンは、排気部と接続される出口部と、サイクロンの内部に向けて突出しつつ上下方向に沿って延びるように出口部に配置された内筒と、排気部又は出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間に配置され、且つ、隙間における排ガスの流動を阻害するように構成された封止部材とを含む。この場合、封止部材の存在によって、排気部又は出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間を排ガスが流れ難くなる。そのため、排ガスによって内筒が軟化し難くなると共に、排ガスの流動に伴い排ガスから内筒に作用する圧力が小さくなる。したがって、内筒の外形の変形が抑制されるので、内筒の交換頻度が低下する。その結果、内筒の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【0047】
例2.例1の循環流動層ボイラにおいて、封止部材は、内筒の周囲全体を覆うように隙間に配置されていてもよい。この場合、封止部材の存在によって、排気部又は出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間を排ガスがさらに流れ難くなる。そのため、内筒の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【0048】
例3.例1又は例2の循環流動層ボイラにおいて、内筒は、内筒の外周面から外方に突出し、且つ、排気部又は出口部に支持可能に構成された環状の突出片を含み、封止部材は、排気部又は出口部の内周面と突出片との間に配置されていてもよい。この場合、突出片を支持する排気部又は出口部が、封止部材も支持する。そのため、封止部材を支持するための別の部材を要しない。したがって、循環流動層ボイラの構造を簡略化することが可能となる。
【0049】
例4.例3の循環流動層ボイラにおいて、サイクロンは、内筒の突出片よりも下方において出口部の内周面と内筒の外周面との間の別の隙間に配置され、且つ、別の隙間における排ガスの流動を阻害するように構成された別の封止部材をさらに含んでいてもよい。この場合、別の封止部材の存在によって、出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間を排ガスがいっそう流れ難くなる。また、内筒の外周面に別の封止部材が配置されていることによって、内筒がその径方向において変形し難くなる。そのため、内筒の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【0050】
例5.例1~例4のいずれかの循環流動層ボイラにおいて、サイクロンは、隙間よりも内筒の下端側に位置するバッフル部材をさらに含み、バッフル部材は、上下方向から見たときに隙間の全域と重なり合うように内筒の外周面から外方に突出していてもよい。この場合、出口部から排ガスが排出される際、バッフル部材の存在により、出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間を排ガスがよりいっそう流れ難くなる。そのため、内筒の交換に伴うランニングコストを抑制することが可能となる。
【0051】
例6.例1~例5のいずれかの循環流動層ボイラにおいて、封止部材は、耐火繊維によって構成されたベース層と、ベース層上に設けられ、且つ、キャスタブル耐火物によって構成された被覆層とを含んでいてもよい。この場合、排気部又は出口部の内周面と内筒の外周面との間の隙間を排ガスが流れることが耐火繊維によって抑制されると共に、排ガスによる耐火繊維の浮き上がりがキャスタブル耐火物によって抑制される。そのため、封止部材が当該隙間に配置された状態を長期にわたって維持することが可能となる。
【0052】
例7.例1~例6のいずれかの循環流動層ボイラにおいて、封止部材は、燃え殻又はばいじんを含んでいてもよい。この場合、循環流動層ボイラの運転に伴い発生する燃え殻又はばいじんが、封止部材として利用されうる。そのため、封止部材を低コストで構成することが可能となる。
【0053】
例8.フライアッシュの製造方法は、例1~例7のいずれかの循環流動層ボイラを用いてフライアッシュを製造する方法であって、火炉において流動材を流動させつつ燃料を燃焼させることと、火炉で生成された燃焼ガスをサイクロンに導入して、燃焼ガスから粉粒体を分離することと、サイクロンにおいて粉粒体が分離された後のガスを排ガスとして、出口部及び排気部を通じて排出することと、排ガスに随伴するフライアッシュを集塵機において回収することとを含む。この場合、例1と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0054】
1…循環流動層ボイラ、10…火炉、20…サイクロン、22…出口部、40…排気部、50…集塵機、70…内筒、71…本体、72…突出片、80…バッフル部材、90…封止部材、100…封止部材(別の封止部材)、D1…隙間、D2…隙間(別の隙間)、G1…燃焼ガス、G2…排ガス。
図1
図2
図3
図4