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特開2023-110360封止フィルム、電極リード線部材および電池
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  • 特開-封止フィルム、電極リード線部材および電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110360
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】封止フィルム、電極リード線部材および電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20230802BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20230802BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20230802BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20230802BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/178
H01M50/197
H01M50/193
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011754
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】竹山 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 喬規
(72)【発明者】
【氏名】目黒 敦史
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011AA10
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF03
5H011GG08
5H011HH02
5H011KK02
(57)【要約】
【課題】電極リード線に対する接着強度が高く、かつ電解液に対する耐性を備えた封止フィルム、電極リード線部材および電池の提供。
【解決手段】金属製の第1基体と、第2基体との間を封止する封止フィルムであって、前記封止フィルムは、前記第1基体に接着する第1接着層と、前記第2基体に接着する第2接着層と、前記第1接着層と前記第2接着層との間に設けられた基材層と、を備え、前記第1接着層は酸変性ポリオレフィンを主として含み、前記封止フィルムはエポキシ樹脂系化合物を含む、封止フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1基体と、第2基体との間を封止する封止フィルムであって、
前記封止フィルムは、前記第1基体に接着する第1接着層と、前記第2基体に接着する第2接着層と、前記第1接着層と前記第2接着層との間に設けられた基材層と、を備え、
前記第1接着層は酸変性ポリオレフィンを主として含み、
前記封止フィルムはエポキシ樹脂系化合物を含む、封止フィルム。
【請求項2】
前記封止フィルムを構成する樹脂の全量に対する前記エポキシ樹脂系化合物の含有割合は、0.05質量%以上6質量%以下である、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項3】
前記第1接着層がエポキシ樹脂系化合物を含む、請求項1又は2に記載の封止フィルム。
【請求項4】
前記第1接着層を構成する樹脂の全量に対する、前記エポキシ樹脂系化合物の含有割合は0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の封止フィルム。
【請求項5】
前記第2接着層は酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂系化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載に記載の封止フィルム。
【請求項6】
前記基材層はポリオレフィンとエポキシ樹脂系化合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の封止フィルム。
【請求項7】
前記第1接着層は酸変性ポリプロピレン及びエポキシ樹脂系化合物を含み、
前記基材層はポリプロピレンを含み、
前記第2接着層はポリプロピレン又は酸変性ポリプロピレンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の封止フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の封止フィルムと、一方向に延在する電極リード線である前記第1基体と、を備える電極リード線部材。
【請求項9】
請求項8に記載の電極リード線部材と、前記電極リード線が接続される電池本体と、前記電池本体を収容する収容容器である前記第2基体と、を備える電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止フィルム、電極リード線部材および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気エネルギーを貯蔵するための蓄電池として、リチウムイオン電池などの2次電池、キャパシタ等が注目されている。このような電池は、例えば、電池本体と、電池本体を収容する収容容器と、電池本体に接続された電極リード線とを備える。収容容器は、防水性、遮光性に優れた電池外装用積層体を用いて作製される。電池外装用積層体は、例えば、ポリアミド等からなる基材層と、アルミニウム箔とが積層された積層体である。電極リード線は、一端を含む部分が収容容器から外部に引き出された状態で収容容器に封止される。
【0003】
前述の電池では、収容容器に水が入ると、水が電解液中の成分と反応してフッ化水素が生成する可能性がある。フッ化水素は、電極リード線を劣化させ、電池寿命に影響を及ぼす場合がある。そのため、収容容器と電極リード線との間に、封止用のフィルム(樹脂フィルム)を介在させることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
封止用のフィルムは、電極リード線と収容容器とを接着し、収容容器と電極リード線との間に隙間ができるのを抑える。これにより、外部から前記隙間を通して収容容器内部へ水が浸入するのを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-73200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
封止用のフィルム(以下、封止フィルムという)は、電極リード線に対する接着強度が高いことが好ましい。また、封止フィルムは、収容容器内の電解液に接触する可能性があるため、電解液に対する耐性が求められる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、電極リード線に対する接着強度が高く、かつ電解液に対する耐性を備えた封止フィルム、電極リード線部材および電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
[1]金属製の第1基体と、第2基体との間を封止する封止フィルムであって、前記封止フィルムは、前記第1基体に接着する第1接着層と、前記第2基体に接着する第2接着層と、前記第1接着層と前記第2接着層との間に設けられた基材層と、を備え、前記第1接着層は酸変性ポリオレフィンを主として含み、前記封止フィルムはエポキシ樹脂系化合物を含む、封止フィルム。
[2]前記封止フィルムを構成する樹脂の全量に対する前記エポキシ樹脂系化合物の含有割合は、0.05質量%以上6質量%以下である、[1]に記載の封止フィルム。
[3]前記第1接着層がエポキシ樹脂系化合物を含む、[1]又は[2]に記載の封止フィルム。
[4]前記第1接着層を構成する樹脂の全量に対する、前記エポキシ樹脂系化合物の含有割合は0.1質量%以上10質量%以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の封止フィルム。
[5]前記第2接着層は酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂系化合物を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載に記載の封止フィルム。
[6]前記基材層はポリオレフィンとエポキシ樹脂系化合物を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の封止フィルム。
[7]前記第1接着層は酸変性ポリプロピレン及びエポキシ樹脂系化合物を含み、前記基材層はポリプロピレンを含み、前記第2接着層はポリプロピレン又は酸変性ポリプロピレンを含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の封止フィルム。
[8][1]~[7]のいずれか1つに記載の封止フィルムと、一方向に延在する電極リード線である前記第1基体と、を備える電極リード線部材。
[9][8]に記載の電極リード線部材と、前記電極リード線が接続される電池本体と、前記電池本体を収容する収容容器である前記第2基体と、を備える電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、電極リード線に対する接着強度が高く、かつ電解液に対する耐性を備えた封止フィルム、電極リード線部材および電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の封止フィルムを示す概略断面図である。
図2】実施形態の電極リード線部材を示す概略斜視図である。
図3】実施形態の電池を示す概略斜視図である。
図4図3の線分I-Iにおける矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図4を参照しながら、実施形態に係る封止フィルム、電極リード線部材、および電池について説明する。なお、図面においては、構成要素の寸法、比率などは実際とは異なる場合がある。
【0012】
<封止フィルム>
本実施形態は、金属製の第1基体と、第2基体との間を封止する封止フィルムに関する。
図1に、実施形態の封止フィルム1の概略断面図を示す。
図1に示すように、封止フィルム1は、第1接着層2と、基材層4と、第2接着層3とがこの順に積層された積層体である。
【0013】
第1接着層2は、金属製の第1基体に接着する接着層である。金属製の第1基体は、例えば電池の構成部材である電極リード線である。
第2接着層3は、第2基体に接着する接着層である。第2基体は、例えば電池の構成部材であって、電極リードを収容する収容容器である。
基材層4は、第1接着層と第2接着層との間に設けられている。
【0014】
図2は、実施形態の電極リード線部材10を示す概略斜視図である。
図2に示すように、電極リード線部材10は、電極リード線11と、封止フィルム1とを備える。電極リード線11は、「第1基体」の一例である。
【0015】
封止フィルム1は、エポキシ樹脂系化合物を含む。エポキシ樹脂系化合物の詳細は後述する。
封止フィルム1を構成する樹脂の全量に対するエポキシ樹脂系化合物の含有割合は、0.05質量%以上6質量%以下が好ましい。
「封止フィルムの全量に対するエポキシ樹脂系化合物の含有割合」の例としては、第1接着層と、基材層と、第2接着層の各層の合計樹脂量に対するエポキシ樹脂系化合物の含有割合である。
封止フィルム1に含まれるエポキシ樹脂系化合物の含有割合は、たとえばFT-IR、GC-MS、熱分解GC-MSといった公知の方法で測定することができる。
【0016】
以下、封止フィルム1を構成する各層について説明する。
【0017】
[第1接着層]
第1接着層2は、加熱・加圧によって第1基体に融着(接着)する層である。第1接着層2の表面は、封止フィルム1の一方の表面1aである。第1接着層2は、樹脂を含む樹脂層である。
【0018】
第1接着層2は、酸変性ポリオレフィンを主として含む。第1接着層2が「酸変性ポリオレフィンを主として含む」とは、第1接着層2を構成する樹脂のなかで、酸変性ポリオレフィンの含有率が最も高いことを意味する。
【0019】
第1接着層2は、第1接着層2の全量に対して酸変性ポリオレフィンを50質量%以上含むことが好ましく、50質量%を越えて含むことが好ましく、第80質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0020】
第1接着層2を構成するポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンは、柔軟性に優れるため好ましい。以下、ポリプロピレンを「PP」と略称することがある。
【0021】
ポリオレフィンは、プロピレンとエチレンとの共重合体(プロピレン-エチレン共重合体)でもよい。なかでも、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体が好ましい。ポリオレフィンは、プロピレンとオレフィン系モノマーとの共重合体であってもよい。オレフィン系モノマーとしては、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
【0022】
酸変性ポリオレフィンとは、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であって、ポリオレフィン系樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有する樹脂である。酸変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるポリオレフィン系樹脂の変性、酸官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合などにより得られる。酸変性ポリオレフィンの使用により、電極リード線11(図2参照)に対する第1接着層2の接着性を高めることができる。
【0023】
酸変性ポリオレフィンとしては、耐熱性に優れることから、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)が好ましい。酸変性PPは、例えば、ポリプロピレンまたはプロピレン-エチレン共重合体に、カルボキシ基を有するモノマーをグラフト共重合させた重合体である。カルボキシ基を有するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;無水マレイン酸などの酸無水物などが挙げられる。
【0024】
酸変性PPは、ポリプロピレンの酸変性重合体またはプロピレン-エチレン共重合体の酸変性重合体が有するカルボン酸基を、金属水酸化物、アルコキシド、低級脂肪酸塩などで中和したアイオノマーを含む。
酸変性PPの酸基は、無水マレイン酸基が好ましい。すなわち、酸変性PPとしては、無水マレイン酸変性PPが好ましい。
【0025】
第1接着層2は、エポキシ樹脂系化合物を含むことが好ましい。第1接着層2を構成する樹脂の全量に対する、エポキシ樹脂系化合物の含有割合は0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂系化合物の含有割合が上記下限値以上であると、第1接着層2に含まれる酸変性ポリオレフィンの酸官能基と、エポキシ樹脂系化合物の官能基(エポキシ基及び水酸基)が、共に金属製の第1基体に対して接着力を発揮できる。これにより、電解液と接触した場合にも、金属製の第1基体としての金属リード線に対する強度を維持できる。
【0027】
エポキシ樹脂系化合物の含有割合が上記の上限値以下であると、同時多層押出成形をする際に、第1接着層2が均一な厚さになりやすく、効率的に多層フィルムを製造しやすい。
【0028】
第1接着層2を構成する樹脂の融点は、110℃以上150℃以下が好ましい。
第1接着層2を構成する樹脂の融点が110℃以上であると、熱圧着時に第1接着層2が過度に薄くなりにくく、接着強度を確保しやすい。第1接着層2を構成する樹脂の融点が150℃以下であると、熱圧着時に樹脂が流動しやすくなるため、電極リード線11の周囲に樹脂が十分に回り込み、電極リード線11の全周を封止しやすい。
【0029】
「第1接着層2を構成する樹脂」が2種以上の樹脂のポリマーアロイである場合、「第1接着層2を構成する樹脂の融点」は、第1接着層2を構成するポリマーアロイの融点を意味する。
【0030】
第1接着層2において、ポリオレフィン以外の任意成分としては、公知の安定剤、帯電防止剤、着色料などの添加物を挙げることができる。
【0031】
第1接着層2の厚さは、封止フィルム1の全体の厚さを100として、25以上70以下とすることが好ましい。すなわち、第1接着層2の厚さは、封止フィルム1の全体の厚さの25%以上70%以下であることが好ましい。封止フィルム1の全体の厚さを100としたときの層の厚さの比率を「厚さ比率」という。
【0032】
第1接着層2の厚さ比率が25以上であると、第1接着層2と電極リード線11との接着強度を十分に確保できる。第1接着層2の厚さ比率が70以下であると、第2接着層3および基材層4に十分な厚さを付与できる。そのため、封止フィルム1の電解液耐性を低下させず、かつ第2接着層3と収容容器との接着強度を高めることができる。なお、「電解液耐性」は、電解液に対する耐性である。
【0033】
〔エポキシ樹脂系化合物〕
本実施形態で用いられるエポキシ樹脂系化合物は、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物である。
【0034】
前記エポキシ樹脂系化合物としては、ポリマーに対する、グリシジル化等のエポキシ化により、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものとした化合物が挙げられる。
【0035】
ポリマーとしては、ポリヒドロキシポリエーテル、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリカーボネート、ポリヒドロキシポリアミド等が挙げられる。
【0036】
その具体例としては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて合成される、フェノキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
より具体的には、両末端にエポキシ基を有し、下記一般式(1)で表される、エポキシ樹脂系化合物が挙げられる。
【0038】
【化1】
【0039】
一般式(1)において、置換基R,R’としては、各々独立して、水素原子またはメチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
【0040】
前記フェノキシ樹脂としては、一般式(1)におけるビスフェノール類の置換基R,R’が共にCHであるビスフェノールA(BPA)型のフェノキシ樹脂、R,R’が共にHであるビスフェノールF(BPF)型のフェノキシ樹脂、ビスフェノールA型とビスフェノールF型とが共重合した、BPA/BPF共重合型のフェノキシ樹脂、R,R’の一方がCHであり、他方がHであるビスフェノールB型のフェノキシ樹脂、などが挙げられる。
【0041】
前記フェノキシ樹脂またはエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、約3,000以上が好ましく、一例としては、約15,000、約20,000が挙げられる。また、さらに高分子量のものも使用できる。
【0042】
フェノキシ樹脂またはエポキシ樹脂の平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、80,000程度であると好ましい。
【0043】
フェノキシ樹脂またはエポキシ樹脂の平均分子量をGPCによって求める場合には、例えば、GPCの溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられる。
【0044】
また、カラムとしては、TSKgel G4000HとTSKgel G3000H(いずれも東ソー株式会社製、商品名)を連結したものを用いて求めることができる。
【0045】
このようなフェノキシ樹脂としては、新日鐵化学株式会社製の商品名:YP-50(Mwは60,000~80,000、BPA型、水酸基数pは約210~280)、YP-50S(Mwは50,000~70,000、BPA型、水酸基数pは約175~245)、YP-55U(Mwは40,000~45,000、BPA型、水酸基数pは約140~160)、YP-70(Mwは50,000~60,000、BPA/BPF共重合型)、ZX-1356-2(Mwは60,000~80,000、BPA/BPF共重合型)、FX-316(Mwは40,000~60,000、BPF型)等が使用できる。
【0046】
また、フェノキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製のフェノキシタイプのグレード1256(分子量約50000、BPA型)、同4250(分子量約60000、BPA/BPF共重合型)、同4275(分子量約60000、BPA/BPF共重合型)、1255HX30、YX8100BH30、YX6954BH30等が使用できる。
【0047】
また、フェノキシ樹脂としては、巴工業株式会社製のPKHB、PKHC、PKHH、PKHJ等が仕様できる。
【0048】
また、エポキシ樹脂としては、新日鐵化学株式会社製の商品名:YD-020G(エポキシ当量3500~4500、BPA型)等が使用できる。
【0049】
また、エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製のグレード1010(平均分子量5500、BPA型、エポキシ当量3000~5000)、同1009(平均分子量3800、BPA型、エポキシ当量2400~3300)等が使用できる。
【0050】
エポキシ樹脂系化合物としては、ノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂系化合物の具体例としてはフェノールノボラックとエピクロルヒドリンを反応させて合成される、フェノールノボラックエポキシ樹脂、O‐クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとを反応させて合成される、クレゾールノボラック樹脂などのエポキシ樹脂系化合物が挙げられる。
【0051】
また、このようなエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂として、三菱化学株式会社製の商品名:jER157S70、DIC株式会社の商品名:EPICLON N-865、N-885、クレゾールノボラックエポキシ樹脂として、DIC株式会社の商品名:EPICLON N-670、N-673、N-680、N-690、N-695、フェノールノボラックエポキシ樹脂として、DIC株式会社の商品名:N-770、N-775等が挙げられる。
【0052】
本実施形態において、エポキシ樹脂系化合物は分子内にビスフェノールA構造を持つ化合物を含有することが好ましい。
【0053】
[第2接着層]
第2接着層3は、例えば、加熱・加圧によって第2基体と融着(接着)する層である。第2基体は例えば収容容器である。収容容器については後述する。第2接着層3の表面は、封止フィルム1の他方の表面1bである。第2接着層3は、樹脂を含む樹脂層である。
【0054】
第2接着層3を構成する樹脂は、ポリオレフィンを主として含む樹脂が挙げられる。
第2接着層3を構成する樹脂は、酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂系化合物を含む樹脂が好ましい。
【0055】
第2接着層3は、ポリオレフィンを主として含む。第2接着層3が「ポリオレフィンを主として含む」とは、第2接着層3を構成する樹脂のなかで、ポリオレフィンの含有率が最も高いことを意味する。第2接着層3は、第2接着層3の全量に対してポリオレフィンを50質量%以上含むことが好ましく、ポリオレフィンを50質量%を越えて含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0056】
第2接着層3を構成するポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。なかでも、PPは、柔軟性に優れるため好ましい。
【0057】
ポリオレフィンは、プロピレンとエチレンとの共重合体(プロピレン-エチレン共重合体)でもよい。なかでも、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体が好ましい。ポリオレフィンは、プロピレンとオレフィン系モノマーとの共重合体(例えば、ランダム共重合体)であってもよい。オレフィン系モノマーとしては、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
【0058】
第2接着層3を構成するポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンであってもよい。酸変性ポリオレフィンとしては、耐熱性に優れることから、酸変性PPが好ましい。酸変性PPとしては、上述の第1接着層2の材料として例示した酸変性PPが好適に用いられる。酸変性PPとしては、柔軟性に優れることから、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体を酸変性した重合体が好ましい。酸変性ポリオレフィンの使用により、収容容器に対する第2接着層3の接着性を高めることができる。
【0059】
第2接着層3は、酸変性PPと酸変性ポリエチレンとの両方を含んでいてもよい。第2接着層3は、酸変性PPと酸変性ポリエチレンとの両方を含む場合、第2接着層3の融点を低くし、第2接着層3を融着する際の加熱温度を下げることができるため、第1接着層2の劣化を抑制できる。
【0060】
第2接着層3は、前述のエポキシ樹脂系化合物を含んでいてもよい。
本実施形態において、第2接着層3を構成する樹脂の全量に対する、エポキシ樹脂系化合物の含有割合は0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0061】
エポキシ樹脂系化合物の含有割合が上記下限値以上であると、第2接着層3に含まれるエポキシ樹脂系化合物の官能基(エポキシ基及び水酸基)が、第2基体に対して接着力を発揮できる。これにより、電解液と接触した場合にも、第2基体に対する強度を維持できる。
【0062】
エポキシ樹脂系化合物の含有割合が上記上限値以下であると、厚みが均一な第2接着層3が得やすくなる。このため、電解液と接した場合に液漏れが生じにくくなる。
【0063】
第2接着層3を構成する樹脂の融点は、110℃以上150℃以下が好ましい。
第2接着層3を構成する樹脂の融点が110℃以上であると、熱圧着時に第2接着層3が過度に薄くなりにくく、接着強度を確保しやすい。第2接着層3を構成する樹脂の融点が150℃以下であると、熱圧着時に樹脂が流動しやすくなるため、収容容器と電極リード線11との間を封止しやすい。
【0064】
「第2接着層3を構成する樹脂」が2種以上の樹脂のポリマーアロイである場合、「第2接着層3を構成する樹脂の融点」は、第2接着層3を構成するポリマーアロイの融点を意味する。
【0065】
第2接着層3において、酸変性ポリオレフィン以外の任意成分としては、公知の安定剤、帯電防止剤、着色料などの添加物を挙げることができる。
【0066】
第2接着層3の厚さ(厚さ比率)は、封止フィルム1の全体の厚さを100として、5以上50以下とすることが好ましい。すなわち、第2接着層3の厚さは、封止フィルム1の全体の厚さの5%以上50%以下であることが好ましい。
【0067】
第2接着層3の厚さ比率が5以上であると、第2接着層3と収容容器との接着強度を十分に確保できる。第2接着層3の厚さ比率が50以下であると、第1接着層2および基材層4に十分な厚さを付与できる。そのため、封止フィルム1の電解液耐性を低下させず、かつ第1接着層2と電極リード線11との接着強度を高めることができる。
【0068】
[基材層]
基材層4は、第1接着層2と第2接着層3との間に介在して設けられている。基材層4は、樹脂を含む樹脂層である。
【0069】
基材層4は、例えば、ポリオレフィンを主として含む。基材層4が「ポリオレフィンを主として含む」とは、基材層4を構成する樹脂のなかで、ポリオレフィンの含有率が最も高いことを意味する。基材層4は、基材層4の全量に対してポリオレフィンを50質量%以上含むことが好ましく、50質量%を越えて含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0070】
基材層4を構成するポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。なかでも、PPは、柔軟性に優れるため好ましい。
【0071】
基材層4を構成するポリオレフィンは、1種のオレフィンの単独重合体でもよいし、2種以上のオレフィンの共重合体でもよい。単独重合体としては、プロピレンだけの単独重合体(ホモPP)が挙げられる。共重合体としては、プロピレンとオレフィン系モノマー(エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン等)との共重合体、例えば、プロピレン-エチレン共重合体が挙げられる。
【0072】
基材層4を構成するポリオレフィンとしては、ICP(インパクトコポリマー)が好ましい。ICPは、第1相と第2相とを有する相分離構造、例えば、海島構造を有する。海島構造は、「海」に相当する第1相のなかに、「島」に相当する複数の第2相が分散された構造である。
【0073】
第1相は、例えば、プロピレン、エチレンなどのオレフィン系モノマーの単独重合体(ホモポリマー)で構成される。第2相は、第1相を構成するホモポリマーとは異なるポリマーで構成される。第2相は、例えば、プロピレン、エチレンなどのオレフィン系モノマーの重合体、例えばエチレンプロピレンラバー(EPR)を含む。第2相は、例えば、主相と、主相の表面を覆う表層とで構成される。主相は、例えば、ポリエチレンで構成される。表層は、例えば、EPRで構成される。
【0074】
第1相を構成するホモポリマーがホモPPであるICPを、ポリプロピレンICPまたはポリプロピレン分散体と呼ぶ。第1相を構成するホモポリマーがホモPPであるICPは、いわゆるブロックPPである。ICPは、異相共重合体(heterophasic copolymer)、またはブロックコポリマーとも呼ばれる。
【0075】
なお、基材層の構成材料は特に限定されず、ポリオレフィン以外の樹脂(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂)を使用してもよい。
【0076】
基材層4は、前述のエポキシ樹脂系化合物を含んでいてもよい。
本実施形態において、基材層4を構成する樹脂の全量に対する、エポキシ樹脂系化合物の含有割合は0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
エポキシ樹脂系化合物の含有割合が上記下限値以上であると、基材層4に含まれるエポキシ樹脂系化合物の官能基(エポキシ基及び水酸基)が、第1基体または第2基体に対して接着力を発揮できる。これにより、電解液と接触した場合にも、第1基体または第2基体に対する強度を維持できる。
【0077】
エポキシ樹脂系化合物の含有割合が上記上限値以下であると、厚みが均一な基材層4が得やすくなる。このため、電解液と接した場合に液漏れが生じにくくなる。
【0078】
基材層4の厚さ(厚さ比率)は、封止フィルム1の全体の厚さを100として、25以上70以下とすることが好ましい。すなわち、基材層4の厚さは、封止フィルム1の全体の厚さの25以上70%以下であることが好ましい。
基材層4の厚さ比率が25以上であると、封止フィルム1の電解液耐性を十分に確保できる。また、基材層4の厚さ比率が25以上であると、樹脂が流れすぎずに、圧着時に必要な流動性を発現しやすくなる。
【0079】
基材層4の厚さ比率が70以下であると、第1接着層2および第2接着層3に十分な厚さを付与できる。そのため、第1接着層2と電極リード線11との接着強度、および、第2接着層3と収容容器との接着強度をいずれも高めることができる。また、基材層4の厚さ比率が70以下であると、樹脂の流動性が低下せず、熱圧着時における樹脂の流動性を適度な範囲に抑えることができる。
【0080】
基材層4を構成する樹脂の融点は、150℃以上170℃以下が好ましい。
基材層4を構成する樹脂の融点が150℃以上であると、封止フィルム1の電解液耐性を確保しやすい。また、封止フィルム1に耐熱性を付与することができる。
基材層4を構成する樹脂の融点が170℃以下であると、封止フィルム1に柔軟性を与えることができる。そのため、電極リード線11および収容容器と、封止フィルム1との間に隙間が生じにくくなる。
【0081】
基材層4を構成する樹脂の融点M4は、第1接着層2を構成する樹脂の融点M2、または、第2接着層3を構成する樹脂の融点M3より高い。すなわち、融点M4は、融点M2または融点M3より高い。融点M4は、融点M2と融点M3のいずれよりも高いことが望ましい。換言すれば、融点M4は、融点M2と融点M3の少なくとも一方よりも高いことが望ましい。
【0082】
融点M4が融点M2より高いと、第1接着層2と電極リード線11との接着強度を低下させることなく、封止フィルム1の電解液耐性を確保しやすくなる。融点M4が融点M3より高いと、第2接着層3と収容容器との接着強度を低下させることなく、封止フィルム1の電解液耐性を確保しやすくなる。
融点M4が融点M2または融点M3より高いと、封止フィルム1に耐熱性を付与しやすいという利点もある。
【0083】
本実施形態の封止フィルムは、第1接着層は酸変性ポリプロピレン及びエポキシ樹脂系化合物を含み、基材層はポリプロピレンを含み、第2接着層はポリプロピレン又は酸変性ポリプロピレンを含むことが好ましい。
第1接着層、基材層、第2接着層が上記の組み合わせであると、電極リード線に対する接着強度が高く、かつ電解液に対する耐性を備えた封止フィルムが得られやすくなる。
【0084】
<電極リード線部材>
図2に示すように、電極リード線部材10は、電極リード線11と、一対の封止フィルム1とを有する。
一対の封止フィルム1は、第1接着層2が向かい合って配置される。一対の封止フィルム1は、電極リード線11を挟持する。一対の封止フィルム1は、それぞれ電極リード線11の一方の面および他方の面に相当する領域に接する。そのため、一対の封止フィルム1は、全体として電極リード線11の全周に接している。
【0085】
電極リード線11は、リード線本体111と、表面処理層112とを有する。電極リード線11は、一方向に直線的に延在する。電極リード線11は、金属製である。
【0086】
電極リード線11は、導電性を有する。電極リード線11は、リチウムイオン電池30(図3参照)と電気的に接続される。電極リード線11は、リチウムイオン電池30と外部機器とを通電させる。
リード線本体111の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、金、白金、各種合金など、公知の金属を用いることができる。なかでも、導電性に優れ、コスト的にも有利なことから、アルミニウムおよび銅が好ましい。
【0087】
リード線本体111は、表面がニッケルめっきされていてもよい。リード線本体111のニッケルめっきは、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硼酸等を主成分とするワット浴を用いて電気メッキによって形成してもよい。リード線本体111のニッケルめっきは、スルファミン酸ニッケルと硼酸を主成分とするスルファミン酸ニッケルめっき浴を用いて行うと好ましい。この方法で形成されるめっき被膜は、柔軟性に優れ、めっき被膜の割れが生じにくくなる。
リード線本体111は、アルミニウム板またはニッケルめっき銅板が好ましい。
【0088】
表面処理層112は、リード線本体111の表面に形成されている。表面処理層112は、耐食性を有する。「耐食性」とは、電池内部の電解液による腐食を受けにくい性質を指す。表面処理層112としては、例えばリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物またはトリアジンチオール化合物等を形成材料とする耐酸性被膜を挙げることができる。耐酸性被膜は、リード線本体111に化成処理を施すことで形成可能である。
【0089】
図2では、表面処理層112は、リード線本体111の表面の一部に形成されているが、表面処理層112は、リード線本体111の表面の全領域に形成されていてもよい。なお、電極リード線は、表面処理層が形成されていなくてもよい。
【0090】
封止フィルム1は、第1接着層2、基材層4および第2接着層3の構成が前述の範囲にあるため、電極リード線11に対する接着強度が良好であり、かつ電解液に対する耐性を備える。封止フィルム1は、電極リード線11に対する接着強度が良好であるため、外部から収容容器内部へ水が浸入するのを抑制できる。封止フィルム1は、電解液に対する耐性を備えるため、劣化しにくく信頼性が高い電池100を実現できる。
【0091】
封止フィルム1は、第1接着層2の形成材料として酸変性ポリオレフィンを含む。そのため、第1接着層2は電極リード線11と熱融着しやすく、電極リード線11と封止フィルム1との界面を封止できる。よって、外部から収容容器内部へ水が浸入するのを抑制できる。
【0092】
封止フィルム1は、第2接着層3の形成材料として酸変性ポリオレフィンを含む。そのため、第2接着層3は電池の収容容器を構成する樹脂材料と熱融着しやすく、収容容器と封止フィルム1との界面を封止しやすい。
【0093】
電極リード線部材10は、封止フィルム1を備えるため、外部から収容容器内部へ水が浸入するのを抑制できる。
【0094】
<電池>
図3は、実施形態の電池100を示す概略斜視図である。
図3に示すように、電池100は、上述した電極リード線部材10と、収容容器20と、リチウムイオン電池30(電池本体)とを有する。
【0095】
収容容器20は、容器本体21と蓋22とを有する。収容容器20は、「第2基体」の一例である。
容器本体21は、リチウムイオン電池30を収容する凹部を形成する成形部21aを有する。容器本体21は、電池外装用積層体を絞り成形して得られる。蓋22は、電池外装用積層体で構成され、容器本体21と同等の平面視面積を有する。電池外装用積層体については後述する。
収容容器20は、容器本体21と蓋22とを重ね合わせ、周縁部25をヒートシールして形成される。
【0096】
図4は、図3の線分I-Iにおける矢視断面図である。
図4に示すように、容器本体21と蓋22との構成材料である電池外装用積層体は、第1フィルム基材201、第2フィルム基材202、金属箔203、シーラント層204がこの順で積層された積層体である。
【0097】
第1フィルム基材201および第2フィルム基材202を構成する樹脂は、特に制限はないが、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂、ポリプロピレン等が好適である。
金属箔203としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔、鉄箔などが好ましい。
【0098】
シーラント層204は、封止フィルム1の第2接着層3と接して熱融着している。シーラント層204を構成する樹脂としては、封止フィルム1と融着可能な樹脂が選ばれる。シーラント層204を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンの共重合体等を用いることができる。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を用いてもよい。
【0099】
図3および図4に示すように、電池100において、電極リード線11は、収容容器20の内部(成形部21aの内部)のリチウムイオン電池30から収容容器20の外部に引き出されている。電極リード線11は、封止フィルム1を介して収容容器20のシーラント層204と融着している。
【0100】
電池100によれば、電極リード線部材10が上述の封止フィルム1を有するため、外部から収容容器内部へ水が浸入するのを抑制できる。そのため、劣化しにくく信頼性が高い電池100を実現できる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。例えば、第1接着層および第2接着層は、ポリオレフィン以外の樹脂を含んでいてもよい。
【実施例0102】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0103】
<封止フィルムの作製>
第1接着層、基材層、および第2接着層がこの順に積層された封止フィルムを作製した。
具体的には、各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々に加熱溶融し、同時多層押出成形が可能な押出機を用いて同時多層製膜を行うことで積層体を得た。
この積層体を所定の大きさに切断することで、各実施例、比較例の封止フィルムを得た。封止フィルムは、帯状(幅15mm、厚さ100μm)に形成した。
【0104】
第1接着層、基材層、および第2接着層の構成材料は以下のとおりである。
第1接着層:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(融点140℃)とエポキシ樹脂系化合物からなる層。
エポキシ樹脂系化合物は、DIC株式会社製のビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂:EPICLON 「N-885」を用いた。
基材層:ポリプロピレンICP(融点161℃)。
第2接着層:プロピレンとエチレンとのランダム共重合体(融点140℃)。
第1接着層、基材層及び第2接着層が含むエポキシ樹脂系化合物の含有割合は、表1及び2にそれぞれ示す。
【0105】
表1中、例えば実施例1は第1接着層のエポキシ樹脂系化合物の添加量は0.1%であるが、残りの99.9%が無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。他の実施例及び比較例についても同様の意味である。
【0106】
無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体に無水マレイン酸をグラフト重合した重合体である。
ポリプロピレンICPは、第1相のなかに第2相が分散する構造(海島構造)を有する。第1相は、ホモPPで構成される。第2相は、エチレンプロピレンラバーとポリエチレンとを含む。ポリプロピレンICPは、PPとエチレンプロピレンラバーとポリエチレンとを含む混合物である。
【0107】
<電極リード線の作製>
リード線本体と、リード線本体の表面に形成された表面処理層とを有する電極リード線を作製した。リード線本体としては、幅45mm×長さ52mmの矩形状のニッケルめっき銅箔を用いた。
【0108】
<電池外装用積層体の作製>
厚さ12μmのPETフィルム、厚さ15μmのナイロンフィルム、厚さ40μmのアルミニウム箔、厚さ80μmのPPフィルムをドライラミネートで積層し、電池外装用積層体を得た。
【0109】
PETフィルム、ナイロンフィルム、アルミニウム箔、およびPPフィルムは、それぞれ第1フィルム基材201、第2フィルム基材202、金属箔203およびシーラント層204に相当する(図4参照)。
【0110】
<電極リード線に対する接着強度の測定>
電極リード線に対する封止フィルムの接着強度を次のようにして測定した。
封止フィルムと電極リード線とを重ね合わせ、ヒートシールにより接着して得られた積層体を帯状(幅10mm×長さ120mm)に切断して測定用検体を得た。ヒートシールの条件は、180℃、0.5MPa、10秒間とした。
【0111】
この測定用検体について、試験機(株式会社島津製作所製の卓上形精密万能試験機:オートグラフAGS-500NX)を用いて、180度剥離強度を次のようにして測定した。
封止フィルムの端部と、電極リード線の端部とを試験機の把持部で把持し、180度剥離となる条件で、封止フィルムを電極リード線から剥離させた。剥離速度は50mm/minとした。
【0112】
剥離強度が10N/15mm以上となった場合を接着強度「〇」(OK)と判定した。剥離強度が10N/15mm未満となった場合を接着強度「×」(NG)と判定した。結果を表1及び2に示す。
【0113】
<電解液に対する耐性試験>
電解液に対する封止フィルムの耐性を次のようにして評価した。
電池外装用積層体を用いて包装袋を作製し、その中に、LiPFを1.0mol/リットル含む電解液(DMC:EMC:EC=4:3:3)を入れた。電解液には、純水を0.2質量%(2000ppm)添加した。
【0114】
この包装袋に、前述の<電極リード線に対する接着強度の測定>と同様にして作製した測定用検体を入れ、電解液に浸漬させた。測定用検体を入れた包装袋を85℃のオーブンに7日間保管した後、<電極リード線に対する接着強度の測定>と同様にして剥離強度を測定した。
【0115】
剥離強度が10N/10mm以上となった場合を電解液耐性「〇」(OK)と判定した。剥離強度が10N/10mm未満となった場合を電解液耐性「×」(NG)と判定した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
表1及び2に示すように、比較例1では、第1接着層がエポキシ樹脂系化合物を含有しないため、電解液と接した場合に電極リード線に対する接着強度を維持できなかったと考えられる。
【0119】
これに対し、実施例1~12では、電極リード線に対する接着強度が高く、かつ電解液に対する耐性を備えることがわかった。
【0120】
なお、実施例1~12のうち、実施例1~5及び7~12は同時多層押出成形をする際に、各層がそれぞれ均一な厚さとなり、効率的に多層フィルムを製造することができた。
【符号の説明】
【0121】
1…封止フィルム、2…第1接着層、3…第2接着層、4…基材層、10…電極リード線部材、11…電極リード線(第1基体)、20…収容容器(第2基体)、30…リチウムイオン電池(電池本体)、100…電池
図1
図2
図3
図4