(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110631
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】半導体ウェハ及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230802BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230802BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 Q
B24B41/06 Z
B24B27/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012207
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神戸 敏文
(72)【発明者】
【氏名】黒木 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】土井 祐樹
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034DD10
3C034DD20
3C158AA03
3C158AB04
3C158CA01
3C158CB02
3C158DA17
5F063AA07
5F063AA33
5F063AA36
5F063BA07
5F063BA13
5F063BA22
5F063CA02
5F063CA04
5F063DD85
5F063EE21
(57)【要約】
【課題】電極の剥がれを抑制する。
【解決手段】半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された複数の回路部と、前記半導体基板の裏面に前記複数の回路部に対応して形成された複数の電極と、を備え、前記半導体基板と前記複数の電極との接着面積よりも、前記複数の電極上にダイシングテープを貼り付けた際の前記ダイシングテープと前記複数の電極との接着面積の方が小さい。
【選択図】
図2H
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成された複数の回路部と、
前記半導体基板の裏面に前記複数の回路部に対応して形成された複数の電極と、
を備え、
前記半導体基板と前記複数の電極との接着面積よりも、前記複数の電極上にダイシングテープを貼り付けた際の前記ダイシングテープと前記複数の電極との接着面積の方が小さい、
半導体ウェハ。
【請求項2】
前記半導体基板を側面から見た場合における前記複数の電極により形成される溝の形状が、前記半導体基板に向かうに従って先細りする形状である、
請求項1記載の半導体ウェハ。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成された複数の回路部と、
前記半導体基板の裏面に形成された電極と、
を備え、
前記電極の前記半導体基板側と反対側の面における前記複数の回路部の境界部に溝が形成されている、
半導体ウェハ。
【請求項4】
半導体基板の表面に複数の回路部を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面における前記複数の回路部の境界部に、前記半導体基板を側面から見た場合に前記半導体基板に向かうに従って先細りする形状のマスクを配置する工程と、
前記半導体基板の裏面に電極を形成する工程と、
前記マスクを除去する工程と、
前記電極上にダイシングテープを貼付する工程と、
前記半導体基板の表面側からダイシングブレードにより前記境界部をダイシングすることにより半導体装置に個片化する工程と、
前記ダイシングテープから前記半導体装置を取り出す工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板の表面に複数の回路部を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面における前記複数の回路部の境界部に溝を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面に電極を形成する工程と、
前記電極上にダイシングテープを貼付する工程と、
前記半導体基板の表面側からダイシングブレードにより前記境界部をダイシングすることにより半導体装置に個片化する工程と、
前記ダイシングテープから前記半導体装置を取り出す工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記溝を形成する工程は、前記ダイシングブレードよりも幅が大きいブレードを用いて前記半導体基板の裏面をハーフカットすることにより前記溝を形成する
請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、半導体ウェハ及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、P型半導体とN型半導体が接合し、表面及び裏面に電極を備えたPN接合型半導体基板を表面から裏面に向けて切断して半導体素子を製造する方法において、裏面電極の切断部分に電極を形成しないストリート部を設け、かつダイシングブレードの先端の位置を裏面の電極の位置と同等ないしそれより上にして切断することを特徴とする半導体素子の製造方法が開示されている。
【0003】
半導体ウェハをダイシングして半導体装置(半導体チップ)をピックアップするまでの一般的な製造工程を
図4A~4Eに示す。
【0004】
まず、
図4Aに示すように、シリコン基板等の半導体基板100の表面に複数の回路部102が形成された半導体ウェハ140の裏面に電極120を形成し、ダイシングをした後に半導体装置が飛散しないように、電極120上にダイシングテープ124を貼り付ける。
【0005】
次に、
図4B、4Cに示すように、複数の回路部102の境界部160、すなわちスクライブラインに沿って半導体基板100の表面からダイシングブレード126を用いて半導体基板100及び電極20をダイシングすることにより隣接する回路部102を分離させる。
【0006】
次に、
図4Dに示すように、ダイシングテープ124から半導体装置128を剥がして取り出す。
【0007】
その後は、半導体ウェハ14の表面側から半導体装置128を順次ピックアップし、次工程へと進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図4Cに示すように、ダイシングブレード126を用いて半導体基板100及び電極120をダイシングした際に、物理的な振動等により半導体基板100と電極120との界面130にダメージが発生する場合がある。これは、例えば電極120の材料がTi(チタン)、半導体基板100の材料がSi(シリコン)の場合、共晶が弱く密着力が低くなることがあるためである。
【0010】
この場合、
図4D、4Eに示すように、半導体装置128をダイシングテープ124から剥がしてピックアップする際に半導体装置128の外周部の電極120の一部が半導体基板100から剥がれてしまう場合がある。電極120の一部が剥がれてしまうと、半導体装置128の正常な製品特性が得られず、歩留まりの低下及び製品の信頼性低下につながる虞がある。
【0011】
開示の技術は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電極の剥がれを抑制することができる半導体ウェハ及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様に係る半導体ウェハは、半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された複数の回路部と、前記半導体基板の裏面に前記複数の回路部に対応して形成された複数の電極と、を備え、前記半導体基板と前記複数の電極との接着面積よりも、前記複数の電極上にダイシングテープを貼り付けた際の前記ダイシングテープと前記複数の電極との接着面積の方が小さい。
【0013】
第2の態様に係る半導体ウェハは、半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された複数の回路部と、前記半導体基板の裏面に形成された電極と、を備え、前記電極の前記半導体基板側と反対側の面における前記複数の回路部の境界部に溝が形成されている。
【0014】
第3の態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面に複数の回路部を形成する工程と、前記半導体基板の裏面における前記複数の回路部の境界部に、前記半導体基板を側面から見た場合に前記半導体基板に向かうに従って先細りする形状のマスクを配置する工程と、前記半導体基板の裏面に電極を形成する工程と、前記マスクを除去する工程と、前記電極上にダイシングテープを貼付する工程と、前記半導体基板の表面側からダイシングブレードにより前記境界部をダイシングすることにより半導体装置に個片化する工程と、前記ダイシングテープから前記半導体装置を取り出す工程と、を含む。
【0015】
第4の態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面に複数の回路部を形成する工程と、前記半導体基板の裏面における前記複数の回路部の境界部に溝を形成する工程と、前記半導体基板の裏面に電極を形成する工程と、前記電極上にダイシングテープを貼付する工程と、前記半導体基板の表面側からダイシングブレードにより前記境界部をダイシングすることにより半導体装置に個片化する工程と、前記ダイシングテープから前記半導体装置を取り出す工程と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
開示の技術によれば、電極の剥がれを抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2A】第1実施形態に係る回路部が形成された半導体基板の断面図である。
【
図2B】第1実施形態に係る半導体基板の裏面にマスクが配置された状態の断面図である。
【
図2C】第1実施形態に係る半導体基板の裏面に電極が形成された状態の断面図である。
【
図2D】第1実施形態に係る半導体基板の裏面からマスクが除去された状態の断面図である。
【
図2E】第1実施形態に係る電極上にダイシングテープが貼り付けられた状態の断面図である。
【
図2F】第1実施形態に係るダイシングブレードによりダイシングされている状態の断面図である。
【
図2G】第1実施形態に係るダイシングが終了した状態の断面図である。
【
図2H】第1実施形態に係るダイシングテープから半導体装置が取り出された状態の断面図である。
【
図3A】第2実施形態に係る回路部が形成された半導体基板の断面図である。
【
図3B】第2実施形態に係る半導体基板の裏面に溝が形成された状態の断面図である。
【
図3C】第2実施形態に係る半導体基板の裏面に電極が形成された状態の断面図である。
【
図3D】第2実施形態に係る電極上にダイシングテープが貼り付けられた状態の断面図である。
【
図3E】第2実施形態に係るダイシングブレードによりダイシングされている状態の断面図である。
【
図3F】第2実施形態に係るダイシングが終了した状態の断面図である。
【
図3G】第2実施形態に係るダイシングテープから半導体装置が取り出された状態の断面図である。
【
図4A】従来例に係る回路部が形成された半導体基板の裏面に電極が形成され、電極上にダイシングテープが貼り付けられた状態の断面図である。
【
図4B】従来例に係るダイシングブレードによりダイシングされている状態の断面図である。
【
図4C】従来例に係るダイシングブレードによりダイシングされている状態の断面図である。
【
図4D】従来例に係るダイシングが終了した状態の断面図である。
【
図4E】従来例に係るダイシングが終了した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されている場合があり、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
<第1実施形態>
【0020】
第1実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0021】
半導体装置(半導体チップ)は、
図1に示すように、シリコン等の半導体基板10上に複数の回路部12が形成された半導体ウェハ14に対して、複数の回路部12の境界部16、すなわちスクライブラインに沿ってダイシングブレード等によりダイシングしてチップ化することにより製造される。
【0022】
具体的には、まず
図2Aに示すように、公知のウェハプロセスにより、シリコン等の半導体基板10の表面に複数の回路部12を形成する。また、半導体基板10の厚さが所望の厚さとなるように半導体基板10の裏面を加工する。
【0023】
なお、
図2A~Hでは、説明の便宜上、半導体基板10の表面が下側、裏面が上側となるように記載すると共に、隣接する2つの回路部12のみ記載している。
【0024】
次に、
図2Bに示すように、半導体基板10の裏面における複数の回路部12の境界部16に、半導体基板10を側面から見た場合に半導体基板10に向かうに従って先細りする形状のマスク18を配置する。
【0025】
次に、
図2Cに示すように、半導体基板10の裏面に電極20を例えば蒸着又はスパッタリングにより形成する。電極20は、第1実施形態では一例として3層構造であり、電極20A、20B、20Cから成り、電極20A、20B、20Cの順番に形成される。電極20Aは、例えばTi(チタン)で構成される。また、電極20Bは、例えばNi(ニッケル)で構成される。また、電極20Cは、例えばAu(金)で構成される。なお、電極20は上記の構成に限られるものではない。例えば電極20を1層又は2層にしてもよいし、4層以上にしてもよい。また、電極20を構成する材料もTi、Ni、Auに限られるものではなく、他の材料を用いてもよい。
【0026】
次に、
図2Dに示すように、マスク18を除去する。これにより、半導体基板10と、半導体基板10の表面に形成された複数の回路部12と、半導体基板10の裏面に複数の回路部12に対応して形成された複数の電極20と、を備え、半導体基板10を側面から見た場合における複数の電極20により形成される溝22の形状が、半導体基板10に向かうに従って先細りする形状となっている、半導体ウェハ14が得られる。
【0027】
次に、
図2Eに示すように、電極20上にダイシングテープ24を貼付する。
【0028】
次に、
図2Fに示すように、半導体基板10の表面側からダイシングブレード26により境界部16をダイシングする。すなわちカットする。なお、ダイシングブレード26の幅(X方向の長さ)は、電極20間の溝22の底面の幅(X方向の長さ)よりも小さい。これにより、
図2Gに示すように、半導体基板10が境界部16でカットされ、隣接する2つの回路部12が分離される。
【0029】
そして、複数の回路部12の境界部16の全てについてダイシングすることにより、複数の回路部12の全てが分離され、半導体装置28としてチップ化、すなわち個片化される。
【0030】
次に、
図2Hに示すように、ダイシングテープ24から半導体装置28を剥がすことにより取り出す。これにより、半導体ウェハ14から複数の半導体装置28が製造される。
【0031】
ここで、
図2Fに示すように、半導体基板10の裏面の境界部16には、電極20が形成されておらず、半導体基板10とダイシングテープ24との間は空間となっている。さらに、電極20間の溝22の形状が、半導体基板10に向かうに従って先細りする形状となっている。すなわち、半導体基板10を側面から見た場合に電極20の側面は半導体基板10に対して傾斜しており、半導体基板10と電極20との接着面積よりも、ダイシングテープ24と電極20との接着面積の方が小さくなっている。このため、ダイシングブレード26により境界部16をダイシングした際に、半導体基板10と電極20との界面30にダメージが発生したとしても、半導体装置28をダイシングテープ24から剥がして取り出す際に電極20が剥がれてしまうのを抑制することができる。これにより、半導体装置28の製品特性の劣化や、歩留まりの低下、製品の信頼性低下等を抑制することができる。
【0032】
<第2実施形態>
【0033】
次に、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。なお、第1実施形態と同一部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0034】
まず
図3Aに示すように、公知のウェハプロセスにより、シリコン等の半導体基板10の表面に複数の回路部12を形成する。また、半導体基板10の厚さが所望の厚さとなるように半導体基板10の裏面を加工する。
【0035】
なお、第1実施形態と同様に、
図3A~Gでは、説明の便宜上、半導体基板10の表面が下側、裏面が上側となるように記載すると共に、隣接する2つの回路部12のみ記載している。
【0036】
次に、
図3Bに示すように、半導体基板10の裏面の複数の回路部12の境界部16に溝23を形成する。溝23の幅(X方向の長さ)が、ダイシングブレード26の幅(X方向の長さ)より広く、且つ、溝23の深さ(Z方向の長さ)が、ダイシングテープ24の接着剤または糊が溝23の底面に届かない深さとなるように、溝23を形成する。
【0037】
具体的には、例えばフォトリソグラフィ及びエッチング等の公知の技術を用いて溝23を形成してもよいし、ダイシングブレード26よりも幅が大きいブレードを用いて半導体基板10の裏面をハーフカットすることにより溝23を形成してもよい。
【0038】
次に、
図3Cに示すように、半導体基板10の裏面に電極20を例えば蒸着又はスパッタリングにより形成する。電極20は、第1実施形態と同様に3層構造であり、電極20A、20B、20Cから成り、電極20A、20B、20Cの順番に形成されるが、電極20の構成はこれに限られるものではない。
【0039】
これにより、半導体基板10と、半導体基板10の表面に形成された複数の回路部12と、半導体基板10の裏面に複数の回路部12に対応して形成された電極20と、を備え、電極20の半導体基板10側と反対側の面における複数の回路部12の境界部16に溝23が形成されている、半導体ウェハ34が得られる。
【0040】
次に、
図3Dに示すように、電極20上にダイシングテープ24を貼付する。
【0041】
次に、
図3Eに示すように、半導体基板10の表面側からダイシングブレード26により境界部16をダイシングする。すなわちカットする。なお、ダイシングブレード26の幅(X方向の長さ)は、電極20A間の溝23の底面の幅(X方向の長さ)よりも小さい。これにより、
図3Fに示すように、半導体基板10が境界部16でカットされ、隣接する2つの回路部12が分離される。
【0042】
そして、複数の回路部12の境界部16の全てについてダイシングすることにより、複数の回路部12の全てが分離され、半導体装置28としてチップ化される。すなわち個片化される。
【0043】
次に、
図3Gに示すように、ダイシングテープ24から半導体装置28を剥がすことにより取り出す。これにより、半導体ウェハ14から複数の半導体装置28が製造される。
【0044】
ここで、
図3Eに示すように、境界部16において、電極20とダイシングテープ24との間は空間となっている。このため、半導体装置28をダイシングテープ24から剥がして取り出す際に電極20が剥がれてしまうのを抑制することができる。これにより、半導体装置28の製品特性の劣化や、歩留まりの低下、製品の信頼性低下等を抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 半導体基板
12 回路部
14 半導体ウェハ
16 境界部
18 マスク
20 電極
22、23 溝
24 ダイシングテープ
26 ダイシングブレード
28 半導体装置
30 界面
34 半導体ウェハ