(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110639
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】駆動伝達装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
G03G21/16 161
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012219
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】清水 真也
【テーマコード(参考)】
2H171
【Fターム(参考)】
2H171FA03
2H171FA04
2H171GA09
2H171GA31
2H171JA02
2H171JA04
2H171JA06
2H171JA14
2H171JA23
2H171JA24
2H171JA34
2H171JA43
2H171JA48
2H171KA05
2H171KA06
2H171KA16
2H171KA22
2H171KA23
2H171KA26
2H171KA27
2H171LA05
2H171LA06
2H171LA08
2H171LA17
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171QC22
2H171SA11
2H171SA14
2H171SA19
2H171SA22
2H171SA26
(57)【要約】
【課題】電磁クラッチへの潤滑剤の侵入を防止することができ、動作信頼性の高い駆動伝達装置を提供する。
【解決手段】駆動力の伝達対象となる被駆動体を搭載した本体装置に対して着脱可能に装着される駆動伝達装置であって、駆動源からの駆動力を受けて回転する回転軸部材114と、回転軸部材114が挿通される軸受部材140と、間隔をあけて対向して配置される、貫通孔が形成された二つの保持部材102、103と、二つの保持部材の間に配設される電磁クラッチ部材108と、を備え、回転軸部材114は、軸方向の一端側が一方の保持部材103の貫通孔に軸受部材140を介して挿通され、他端側が他方の保持部材102の貫通孔に挿通され、回転軸部材114と軸受部材140とが、回転軸の円周方向に沿って互いに係合する係合構造を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の伝達対象となる被駆動体を搭載した本体装置に対して着脱可能に装着される駆動伝達装置であって、
駆動源からの駆動力を受けて回転する回転軸部材と、
前記回転軸部材が挿通される軸受部材と、
間隔をあけて対向して配置される、貫通孔が形成された二つの保持部材と、
二つの前記保持部材の間に配設される電磁クラッチ部材と、を備え、
前記回転軸部材は、軸方向の一端側が一方の前記保持部材の前記貫通孔に前記軸受部材を介して挿通され、他端側が他方の前記保持部材の前記貫通孔に挿通され、
前記回転軸部材と前記軸受部材とが、回転軸の円周方向に沿って互いに係合する係合構造を有することを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記係合構造が、前記軸受部材に形成された凸部と、前記回転軸部材に形成された凹部であることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記係合構造が、前記軸受部材の前記電磁クラッチと対向する端部側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記係合構造の前記軸受部材に形成された凸部が、回転軸の円周方向にわたって設けられたリブ構造であることを特徴とする請求項2または3に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記回転軸部材が樹脂材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の駆動伝達装置。
【請求項6】
二つの前記保持部材は、一方が樹脂材料からなる部材であり、他方が金属材料からなる部材であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の駆動伝達装置。
【請求項7】
被駆動体を駆動させる駆動伝達手段を備えた画像形成装置において、
前記駆動伝達手段として、請求項1から6のいずれかに記載の駆動伝達装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等に搭載される駆動伝達装置としては、間隙を形成しながら対向する二つの対向部材と、その間隙内で回転するギヤとを有し、駆動力の伝達対象となる被駆動体を搭載した本体装置に対して着脱可能に構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、駆動部品がと一体化した回転軸部材を金属板及びモールドカバーの両方に貫通するように複数本配置し、回転軸部材とスタッド軸とによって金属板とモールドカバーの位置決めを行うことにより、小型化と品質向上を実現した駆動伝達装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成のように、回転軸部材の摺動部に軸受部材を設けない駆動伝達装置では、摺動部の耐磨耗性の向上や騒音の低減が要求される。これらの要求を実現するために、例えば、回転軸部材の外周面にはグリス等の潤滑剤が塗布される。
【0005】
しかしながら、塗布された潤滑剤は、経時で回転軸に沿って流出し、他の部材に付着したり他の部材の内部に侵入したりすることがある。特に、電磁クラッチを備える態様では、油分を含む潤滑剤が電磁クラッチの動作に影響を及ぼし、動作不良をまねくおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、電磁クラッチへの潤滑剤の侵入を防止することができ、動作信頼性の高い駆動伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の駆動伝達装置は、駆動力の伝達対象となる被駆動体を搭載した本体装置に対して着脱可能に装着される駆動伝達装置であって、駆動源からの駆動力を受けて回転する回転軸部材と、前記回転軸部材が挿通される軸受部材と、間隔をあけて対向して配置される、貫通孔が形成された二つの保持部材と、二つの前記保持部材の間に配設される電磁クラッチ部材と、を備え、前記回転軸部材は、軸方向の一端側が一方の前記保持部材の前記貫通孔に前記軸受部材を介して挿通され、他端側が他方の前記保持部材の前記貫通孔に挿通され、前記回転軸部材と前記軸受部材とが、回転軸の円周方向に沿って互いに係合する係合構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電磁クラッチへの潤滑剤の侵入を防止することができ、動作信頼性の高い駆動伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】
図1の画像形成装置が備える作像ユニットの説明図である。
【
図4】
図3の駆動伝達装置を逆方向から見た斜視図である。
【
図6】回転軸部材、軸受部材及び電磁クラッチを示す斜視図である。
【
図7】駆動伝達装置の一例を模式的に示す側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る駆動伝達装置の要部断面図である。
【
図9】
図8の破線で囲まれた部位の拡大説明図である。
【
図10】(A)は本発明に係る駆動伝達装置の回転軸部材の一例を示す斜視図であり、(B)は従来例である。
【
図11】(A)は本発明に係る駆動伝達装置の軸受部材の一例を示す斜視図であり、(B)は従来例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の駆動伝達装置および画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
〔画像形成装置〕
本発明に係る画像形成装置は、被駆動体を駆動させる駆動伝達手段として、後述する本発明に係る駆動伝達装置を備えている。
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としての電子写真方式のプリンタの概略構成図である。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)のトナー像を作像するための四つの作像ユニット26K,26C,26M,26Yを備えている。
図2は、四つの作像ユニット26K,26C,26M,26Yのうちの一つを拡大して示す拡大説明図である。同図では、各部品に付された符号の末尾に添えるK,C,M,Yという添字の記載を省略している。
【0013】
作像ユニット26では、図中時計回りに回転駆動される潜像担持体としての感光体24の表面を帯電装置25で一様帯電する。一様帯電された感光体24の表面は、光書込ユニット27が照射するレーザー光Lによって露光走査されて各色用の静電潜像を担持する。この静電潜像は、トナーを用いる現像ユニット23によってトナー像に現像される。そして、このトナー像が中間転写ベルト22上に一次転写される。
【0014】
一次転写工程を経た後の感光体24の表面は感光体クリーニング装置83で転写残トナーが除去され、また、除電装置で残留電荷を除電され、次の画像形成に備えられる。
【0015】
図示の現像ユニット23は、現像剤としてのトナーを収容する縦長のホッパ部86と、現像部87とを有している。ホッパ部86内には、駆動手段によって回転駆動されるアジテータ88、トナー供給ローラ80などが配設されている。現像ユニット23の現像部87内には、現像ローラ81や、薄層化ブレード82などが配設されている。
【0016】
図2に示すように、作像ユニット26K,26C,26M,26Yの鉛直方向上方には、潜像書込装置としての光書込ユニット27が配設されている。
【0017】
また、作像ユニット26K,26C,26M,26Yの鉛直方向下方には、転写ユニット75が配設されている。転写ユニット75は、中間転写ベルト22、駆動ローラ76、テンションローラ20、四つの一次転写ローラ74K,74C,74M,74Y、二次転写ローラ21、ベルトクリーニング装置71、クリーニングバックアップローラ72などを備えている。
【0018】
転写ユニット75の鉛直方向下方には、給紙カセット41が配設されている。この給紙カセット41は、紙束の一番上の記録紙に給紙ローラ42を当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙を給紙路に向けて送り出す。
【0019】
給紙路の末端付近には、二つのレジストローラから構成されるレジストローラ対43が配設されている。このレジストローラ対43は、記録紙を上述の二次転写ニップ内で中間転写ベルト22上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに向けて送り出す。なお、給紙路には中継ローラ44も設けられている。
【0020】
二次転写ニップで記録紙に密着された中間転写ベルト22上の四色トナー像は、二次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙上に一括二次転写される。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙は、二次転写ニップを通過すると、二次転写ローラ21や中間転写ベルト22から曲率分離され、定着手段としての定着装置40に送り込まれる。
【0021】
定着装置40は、ハロゲンランプ等の発熱源45aを内包する定着ローラ45と加圧ローラ47とによって、送り込まれた記録紙の未定着トナー像を記録紙に定着する。定着装置40から排出された記録紙は、排紙ローラ対90に送られる。
【0022】
片面プリントモードが選択されている場合には、排紙ローラ対90の排紙ニップに挟み込まれた記録紙が排紙ローラ対90の正転駆動によってそのまま機外へと排出され、筐体の上カバーの上面に設けられたスタック部56にスタックされる。
【0023】
両面プリントモードが選択されている場合には、排紙ローラ対90の排紙ニップに挟み込まれた記録紙がある程度まで機外に向けて送られた後、排紙ローラ対90の逆転駆動によって機内に戻され、反転搬送路91に進入する。そして両面搬送ローラ対92の両面搬送ニップを経て上下反転せしめられた後、給紙路に再進入してレジストローラ対43に再搬送される。その後、所定のタイミングで二次転写ニップに送られてもう片方の面にもトナー像が二次転写された後、定着装置40と排紙ローラ対90とを経て、機外へ排出されてスタック部56にスタックされる。
【0024】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト22は、ベルトクリーニング装置71によってベルト表面がクリーニングされる。クリーニングバックアップローラ72は、ベルトクリーニング装置71をループ内側からバックアップする。
【0025】
筐体の側面カバーには、手差しトレイ93が側面カバーに対して開閉可能に設けられている。手差しトレイ93に手差しされた記録紙は、手差し給紙コロ94の回転駆動によって給紙路のレジストローラ対43に送られる。
【0026】
〔駆動伝達装置〕
図1において、給紙カセット41よりも図中の奥側には、給紙ローラ42等に駆動力を伝達するための本発明に係る駆動伝達装置101が配設されている。
この駆動伝達装置101は、給紙ローラ42の他に、レジストローラ対43、両面搬送ローラ対92、及び手差し給紙コロ94にも駆動力を伝達するものであり、筺体に対して着脱可能に構成されている。
【0027】
本発明が適用される駆動伝達装置101の例を
図3、
図4及び
図7に示す。
図3は駆動伝達装置の一例を示す斜視図である。
図4は、各種のクラッチギヤ、各種の中継ギヤ、及び給紙系駆動モーターを取り外した状態の駆動伝達装置を示す斜視図である。
図8は、駆動伝達装置を模式的に示す側面図である。
【0028】
本実施形態の駆動伝達装置101は、駆動力の伝達対象となる被駆動体を搭載した本体装置(例えば、画像形成装置)に対して着脱可能に装着される駆動伝達装置であって、駆動源からの駆動力を受けて回転する回転軸部材114と、回転軸部材114が挿通される軸受部材140と、間隔をあけて対向して配置される、貫通孔が形成された二つの保持部材102,103と、二つの保持部材102,103の間に配設される電磁クラッチ部材108と、を備え、回転軸部材114は、軸方向の一端側が一方の保持部材103の貫通孔に軸受部材140を介して挿通され、他端側が他方の保持部材102の貫通孔に挿通され、回転軸部材114と軸受部材140とが、回転軸の円周方向に沿って互いに係合する係合構造を有している。
【0029】
二つの保持部材102,103は、一方が樹脂材料からなる部材であり、他方が金属材料からなる部材である。
本実施形態では金属ブラケット102と樹脂カバー103である。
金属ブラケット102と樹脂カバー103は互いに非接触の状態で、両者間に回転不能に挟み込ませた固定軸部材たる三つのスタッド121によって接続されている。スタッド121の一端部は、金属ブラケット102に設けられた貫通穴に勘入されることで、金属ブラケット102に固定されている。スタッド121の他端には、軸線方向に延びる雌ネジ部が設けられている。樹脂カバー103に設けられた貫通穴に通されたボルトが、スタッド121の他端に設けられた雌ネジ部に締結される。これにより、スタッド121の他端部が樹脂カバー103に固定されている。
【0030】
このように、足先部のないスタッド121によって金属ブラケット102と樹脂カバー103とを接続することで、足先部のある脚によって接続する場合に比べて、駆動伝達装置101の小型化を図ることができる。
【0031】
また、金属ブラケット102と樹脂カバー103とは、スタッド121が介在していることで間隔をあけて対向して配置され、間隙が形成されている。この間隙内には、回転可能な電磁クラッチ部材としてのレジストクラッチギヤ108、給紙クラッチギヤ105、手差しクラッチギヤ106、及び両面クラッチギヤ107が配設されている。さらに、回転可能な第一中継ギヤ130、第二中継ギヤ131、第三中継ギヤ132、及び第四中継ギヤ133も配設されている。
【0032】
金属ブラケット102及び樹脂カバー103は、レジスト軸ギヤを回転可能に保持している。レジスト軸ギヤは、回転軸部材114とこれの一端部に固定された駆動部品としてのレジストギヤ110とを具備しており、樹脂材料からなる両者は一体的に回転する。
【0033】
同様に、金属ブラケット102及び樹脂カバー103は、給紙軸カップリング、両面軸ギヤ、及び手差し軸ギヤを回転可能に保持している。給紙軸カップリングは、回転軸部材113とこれの一端部に固定された給紙カップリング109とを具備しており、樹脂材料からなる両者は一体的に回転する。また、両面軸ギヤは、回転軸部材115とこれの一端部に固定された両面ギヤ111とを具備しており、樹脂材料からなる両者は一体的に回転する。また、手差し軸ギヤは、回転軸部材116とこれの一端部に固定された手差しギヤ112とを具備しており、樹脂材料からなる両者は一体的に回転する。
【0034】
図4に示すように、いずれの回転軸部材も金属ブラケット102及び樹脂カバー103の両方に貫通した状態で、その両方によって回転自在に受けられている。また、軸方向の一端部に設けられた駆動部品を樹脂カバー103の外側に位置させている。
例えば、回転軸部材114の軸方向一端部に設けられた駆動部品110を樹脂カバー103の外側に位置させ、回転軸部材114は軸受部材(すべり軸受)140によって回転可能に受けられている。
【0035】
図5は、電磁クラッチ部材108を示す斜視図である。電磁クラッチ部材108は、その外周縁部に設けられたギヤ部108aと、その内側に設けられた電磁クラッチ部108bと、その回転中心位置に貫かれた貫通穴108cとを具備している。ギヤ部108aのギヤ形状ははずばギヤになっている。駆動伝達装置101においては、各種のクラッチギヤや各種の中継ギヤが何れもはずばギヤになっている。
電磁クラッチ部108bは、通電されることで、ギヤ部108aと一体となって回転する。この一方で、通電が切られると、自らが回転してもその回転力をギヤ部108aには伝達せずに、ギヤ部108aの内側で空回りする。貫通穴106cの横断面形状は真円状にはなっておらず、アルファベットの「D」のような形状になっている。
【0036】
図6は、レジスト軸ギヤを構成する回転軸部材114、軸受140部材及び電磁クラッチ部材108を示す斜視図である。
回転軸部材114の横断面形状は真円状にはなっておらず、アルファベットの「D」のような形状になっている。電磁クラッチ部材108は、回転軸部材114をレジストクラ貫通穴108cに貫通させることで係合している。レジスト軸ギヤが回転すると、これに係合している電磁クラッチ部108bが一体となって回転する。このとき、電磁クラッチ部108bが通電されていれば、ギヤ部108aも一体となって回転する。これに対して、電磁クラッチ部108bが通電されていないと、ギヤ部108aは回転せずに、電磁クラッチ部108bがギヤ部108aの内側で空回りする。また、ギヤ部108aが外部からの回転力を受けて回転しても、電磁クラッチ部108bは回転せずに、ギヤ部108aが電磁クラッチ部106b上で空回りする。
【0037】
駆動伝達装置101が画像形成装置本体にセットされると、レジスト軸ギヤの駆動部材(レジストギヤ)110がレジストローラ対における一方のレジストローラの軸部に固定されたギヤに噛み合う。これにより、レジストギヤ110の回転力がレジストローラに伝達されるようになる。
【0038】
駆動伝達装置101においては、
図7に示すように、回転可能な回転軸部材114における軸線方向の一端側を一方の対向部材である樹脂カバー103に貫通させて回転可能に保持させている。そして、回転軸部材114を樹脂カバー103の内側(金属ブラケット102に対向する側)で回転させるのに加えて、樹脂カバー103の外側でも回転させることを可能にしている。そして、回転軸部材114における樹脂カバー103外側で回転する箇所に、駆動伝達部としてのギヤ又はカップリングを設けている。
【0039】
駆動ギヤ130からの駆動が電磁クラッチ部材108を介して駆動部材(レジストローラ)110に伝わり、被駆動体であるギヤ150とその軸上のローラ151が回転する。
レジスト軸ギヤの例において、ローラ151は、レジストローラである。図中の給紙クラッチギヤ105、手差しクラッチギヤ106、及び両面クラッチギヤ107においては、それぞれ対応する搬送ローラなどである。
【0040】
本実施形態において、駆動部品110と一体化した回転軸部材114と樹脂カバー103の間には軸受部材140が設けられており、回転軸部材114と軸受部材140の間(
図7中符号Lで示す部位)には摩耗防止および異音防止のためにグリスなどの潤滑剤が塗布されている。
【0041】
しかしながら
図9(B)に示すように、塗布された潤滑剤160は、経時で回転軸部材114に沿って漏れ出すことがある。漏れ出した潤滑剤160は矢印の方向の先に配設されている電磁クラッチ部材108に到達し、その内部まで侵入することがある。
潤滑剤の油分は電磁クラッチの動作に悪影響を及ぼす。例えば、クラッチの連結遮断が正常に動作しないという不具合が生じることがある。
【0042】
これに対し、本発明に係る駆動伝達装置では、
図8及び
図9(A)に示すように、回転軸部材114と軸受部材140とが、回転軸の円周方向に沿って互いに係合する係合構造(114a、140a)を有し、コイル軸受部材140が回転軸部材114を覆うような周壁形状を形成することにより、電磁クラッチ部材108への潤滑剤の付着や侵入を防止することができる。
【0043】
図10は駆動部品110と一体化した回転軸部材114の一例を示す斜視図である。
図10(A)は係合構造114aを有する本実施形態に係る装置が備える回転軸部材114であり、
図10(B)は係合構造を有しない従来の例である。
図11は軸受部材140の一例を示す斜視図である。
図11(A)は係合構造140aを有する本実施形態に係る装置が備える軸受部材140であり、
図11(B)は係合構造を有しない従来の例である。
なお、係合構造140aは、軸受部材140の電磁クラッチ部材108と対向する端部側に形成されている。
【0044】
係合構造の軸受部材140に形成された凸部は、例えば、回転軸の円周方向にわたって設けられたリブ構造である。リブ構造は回転軸の円周方向一周にわたって存在する。
ここで一周とは実質的に360度にわたって存在し、微小な角度だけ切れている箇所を有するもの、複数の凸部に分割して配置されているものを含む。いずれの態様においても、潤滑剤160が電磁クラッチ部材180へ向かって漏れ出すことを防止できる形状であれば、適宜所望の形状に設計し、加工することができる。
【0045】
一方、回転軸部材114に形成された凹部は回転軸の円周方向にわたって設けられた溝状構造である。
このような構造により、従来は平坦であった潤滑剤160の塗布面に段差と周壁が生じ、潤滑剤160が漏れ出すのを抑制することができる。
【0046】
装置の組立て時には回転軸部材114と軸受部材140とが互いに係合するまで圧入され、脱落防止にもなる。また、電磁クラッチ部材108の交換等のメンテナンス時にも、塗布された潤滑剤が回転軸部材114の凹部にとどまるため、メンテナンス性が向上する。
【0047】
本実施形態の駆動伝達装置によれば、電磁クラッチ部材108への潤滑剤付着や進入を防止できる。新たな部品を設けることなく、電磁クラッチ連結遮断等の動作不具合を防止することができ、信頼性の高い駆動伝達装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
102 保持部材(金属ブラケット)
103 保持部材(樹脂カバー)
108 電磁クラッチ部材
108a ギヤ部
108b 電磁クラッチ部
108c 貫通穴
110 駆動部品
114 回転軸部材
114a 係合構造(凸部)
130 中継ギヤ
140 軸受部材
140a 係合構造(凹部)
150 被駆動体(ギヤ)
151 ローラ
160 潤滑剤
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】