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特開2023-110669シリカ粒子の粒子径の調整方法およびシリカ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110669
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】シリカ粒子の粒子径の調整方法およびシリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012256
(22)【出願日】2022-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 修
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB07
4G072DD05
4G072DD06
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ23
4G072JJ38
4G072KK03
4G072LL06
4G072LL11
4G072MM01
4G072MM02
4G072MM03
4G072MM22
4G072MM26
4G072MM28
4G072MM31
4G072MM36
4G072PP17
4G072RR05
4G072RR12
4G072RR15
4G072SS02
4G072SS04
4G072SS12
4G072TT01
4G072TT02
4G072UU07
(57)【要約】
【課題】簡便に、シリカ粒子を所望の粒子径に調整する方法の実現。
【解決手段】本発明のシリカ粒子の粒子径の調整方法は、塩基性触媒と水と有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行う。有機溶媒における、メタノールと炭素数2以上4以下であるアルコールとの質量比に調整することによって、シリカ粒子のレーザ回折散乱法による平均粒子径(体積基準累積50%径)を0.05μm以上0.60μm以下に調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含み、
前記有機溶媒における、メタノールと炭素数2以上4以下であるアルコールとの質量比(メタノール:炭素数2以上4以下であるアルコール)を100:0~0:100に調整することによって、前記シリカ粒子のレーザ回折散乱法による体積基準累積50%径を0.05μm以上0.60μm以下に調整する、シリカ粒子の粒子径の調整方法。
【請求項2】
前記炭素数2以上4以下であるアルコールが、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノールまたは2-ブタノールである、請求項1に記載のシリカ粒子の粒子径の調整方法。
【請求項3】
塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含み、
前記有機溶媒はメタノールおよびイソプロパノールを含み、
前記有機溶媒における、前記メタノールに対する前記イソプロパノールの質量比(イソプロパノール/メタノール)が3/7以上であり、
前記シリカ粒子のレーザ回折散乱法による体積基準累積50%径は0.16μm以上0.44μm未満である、シリカ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子の粒子径の調整方法およびシリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体封止材等の電子材料またはフィルム製造用等の各種樹脂組成物の充填材として、シリカ粒子が用いられている。精密かつ均一な封止のためには、粒子径が制御されたシリカ粒子が求められている。
【0003】
単分散性の高いシリカ粒子を製造する方法として、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合によりシリカ粒子を生成する、いわゆるゾルゲル法が知られている(例えば、特許文献1~3)。例えば、特許文献1には、原料となる金属アルコキシドを反応溶液中の反応液に供給する際の供給速度を特定の範囲とすることにより、単分散性の高いシリカ粒子が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-193950号公報
【特許文献2】国際公開第2018/096876号パンフレット
【特許文献3】特開2021-116225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1~3に記載されるシリカ粉末の製造方法によって得られるシリカ粒子の単分散性を保持し、所望の粒子径に調整することは容易ではない。所望の粒子径のシリカ粒子を得るためには、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行う工程を2段階で行う必要がある。2段階で加水分解および重縮合を行う場合、シリカ粒子の製造に時間を要する。したがって、簡便にシリカ粒子を所望の粒子径に調整する方法の開発が望まれている。
【0006】
本発明の一態様は、簡便に、シリカ粒子を所望の粒子径に調整する方法等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシリカ粒子の粒子径の調整方法は、塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含み、前記有機溶媒における、メタノールと炭素数2以上4以下であるアルコールとの質量比(メタノール:炭素数2以上4以下であるアルコール)を100:0~0:100に調整することによって、前記シリカ粒子のレーザ回折散乱法による体積基準累積50%径(以下、平均粒子径ともいう。)を0.05μm以上0.60μm以下に調整する。
【0008】
本発明の一態様に係るシリカ粒子の粒子径の調整方法は、前記炭素数2以上4以下であるアルコールが、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノールまたは2-ブタノールであってもよい。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシリカ粒子の製造方法は、塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含み、前記有機溶媒はメタノールおよびイソプロパノールを含み、前記有機溶媒における、前記メタノールに対する前記イソプロパノールの質量比(イソプロパノール/メタノール)が3/7以上であり、前記シリカ粒子のレーザ回折散乱法による平均粒子径は0.16μm以上0.44μm未満である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、簡便に、シリカ粒子を所望の粒子径に調整する方法等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】メタノールおよびイソプロパノールの混合比率とシリカ粒子径との関係を示すグラフである。
図2】メタノールおよびイソプロパノールの混合比率と成長後粒子径との関係を示すグラフである。
図3】メタノールおよびエタノールの混合比率とシリカ粒子径との関係を示すグラフである。
図4】メタノールおよびエタノールの混合比率と成長後粒子径との関係を示すグラフである。
図5】メタノールおよび2-ブタノールの混合比率とシリカ粒子径との関係を示すグラフである。
図6】メタノールおよび2-ブタノールの混合比率と成長後粒子径との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態および実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書において「A~B」とは、特に指定しない限りA以上B以下であることを示している。
【0013】
〔シリカ粒子の粒子径の調整方法〕
本発明の一態様に係るシリカ粒子の粒子径の調整方法(以下、「本実施形態の調整方法」と示す場合がある)は、塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含む。
【0014】
本発明者らは、シリカ粒子の粒子径の調整について詳細な検討を重ねた結果、新規の知見を得ることに成功した。すなわち、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合に使用される有機溶媒を特定の組成にすることによって、簡便にシリカ粒子の粒子径を調整できることを独自に見出した。
【0015】
(ケイ素アルコキシド)
本実施形態の調整方法で使用するケイ素アルコキシドとしては、ゾルゲル法によるシリカ粒子の製造に一般的に用いられるケイ素アルコキシド(アルコキシシラン)であれば、特に制限されない。ケイ素アルコキシドとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランおよびテトラブトキシシランが挙げられる。中でも、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランが、入手および取扱いの容易性の観点から好ましい。これらのケイ素アルコキシドは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
(塩基性触媒)
本実施形態の調整方法で使用する塩基性触媒としては、ゾルゲル法の反応によるシリカ粒子の製造に一般的に用いられる塩基性触媒であれば、特に制限されない。塩基性触媒としては、例えば、アミン化合物および水酸化アルカリ金属を挙げることができる。高純度のシリカ粒子を得る観点からは、塩基性触媒はアミン化合物であることが好ましい。アミン化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンおよびトリエチルアミンが挙げられる。揮発性が高く除去しやすいことから、塩基性触媒はアンモニアであることが好ましい。塩基性触媒は、これらのうち1種であってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0017】
塩基性触媒は、例えばアンモニア水のように、水または有機溶媒に溶解して使用してもよい。反応速度を調整する観点からは、塩基性触媒を、水に溶解して濃度を調整した水溶液として使用することが好ましい。塩基性触媒を水溶液として使用する場合、水溶液中における塩基性触媒の濃度は、例えば1~30質量%であってよい。
【0018】
(有機溶媒)
本実施形態の調整方法で使用する有機溶媒は、シリカ粒子の目的の粒子径に応じて、メタノールと炭素数2以上4以下であるアルコールとの質量比(メタノール:炭素数2以上4以下であるアルコール)を100:0~0:100に調整する。
【0019】
メタノールと炭素数2以上4以下であるアルコールとの混合比を調製することによって、平均粒子径が0.05μm以上0.60μm以下であるシリカ粒子を得ることができる。有機溶媒中のメタノールの割合が大きくなる程、平均粒子径が小さいシリカ粒子を得ることができる。シリカ粒子の平均粒子径は、レーザ回折散乱法によって測定される。本明細書において、シリカ粒子の平均粒子径は体積基準累積50%径を示す。
【0020】
炭素数2以上4以下であるアルコールの例として、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノールおよび2-ブタノール等が挙げられる。炭素数2以上4以下であるアルコールは、これらのうち1種であってもよく、2種以上を含むものであってもよい。炭素数2以上4以下であるアルコールは、エタノール、イソプロパノールまたは2-ブタノールが好ましく、イソプロパノールがより好ましい。
【0021】
本実施形態の調整方法で使用する塩基性触媒の量は、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合反応の反応速度等を考慮して適宜選択してもよい。塩基性触媒の使用量は、ケイ素アルコキシドの量に対して、0.1~60質量%とすることが好ましく、0.5~40質量%であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態の調整方法で使用する水の量は、反応液総量を100質量%としたとき、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%とすることがより好ましい。また、本実施形態の調整方法で使用する有機溶媒の量は、反応液総量を100質量%としたとき、50~95質量%であることが好ましく、70~90質量%とすることがより好ましい。なお、反応液総量は、ケイ素アルコキシド、塩基性触媒、有機溶媒および水等、反応に供する原料の総量である。
【0023】
ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合は、例えば、ゾルゲル法の反応によるシリカ粒子の製造に一般的に用いられる反応容器を用いて行ってもよい。このような反応容器は、例えば、撹拌機を有する反応容器等が挙げられる。上記撹拌機の撹拌翼の例として、傾斜パドル翼、タービン翼、三枚後退翼、アンカー翼、フルゾーン翼、ツインスター翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
【0024】
撹拌機を有する反応容器としては、半球状または平底もしくは丸底の円筒状の一般的な形状の反応容器、さらにこれら反応容器内に邪魔板が設置された反応容器を使用してもよい。反応容器の材質は特に限定されず、ガラス製、ステンレススチールなどの金属製(ガラスコーティングもしくは樹脂コーティングされていてもよい)、または樹脂製であってもよい。
【0025】
より粒子径が揃った、粒度分布の狭いシリカ粒子が得られる点で、無次元混合時間(n×θm)が100以下である撹拌機を有する反応容器を使用することが好ましい。nは撹拌翼回転数(1/s)を示し、θmは混合時間を示す。混合時間θmは一般にトレーサー物質が均一に混合するまでの時間を意味し、反応容器の形状、撹拌翼の種類または回転数、混合される液体の粘弾性特性等の影響を受ける。
【0026】
反応容器への投入順序は特に限定されないが、例えば、反応容器に、塩基性触媒、水および有機触媒を添加した後、ケイ素アルコキシド(またはケイ素アルコキシドの有機溶媒溶液)を添加してもよい。また、ケイ素アルコキシドの一部を反応容器に添加した後に、残りのケイ素アルコキシドと塩基性触媒とを同時に添加してもよい。また、ケイ素アルコキシドが2種以上のケイ素アルコキシドを含む場合、各々を同時に添加してもよく、各々を順次に添加してもよい。
【0027】
反応温度は、ケイ素アルコキシド、塩基性触媒および有機触媒の種類等に応じて、適宜選択すればよい。当該反応温度としては、例えば、-10~60℃の範囲であってよい。
【0028】
〔シリカ粒子の製造方法〕
本発明の一態様に係るシリカ粒子の製造方法は、塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含む。
【0029】
上記の製造方法で使用する有機溶媒は、メタノールおよびイソプロパノールを含む。メタノールに対するイソプロパノールの質量比(イソプロパノール/メタノール)は3/7以上である。
【0030】
メタノールとイソプロパノールとの混合比を調製することによって、平均粒子径が0.16μm以上0.44μm以下であるシリカ粒子を得ることができる。有機溶媒中のメタノールの割合が大きくなる程、平均粒子径が小さいシリカ粒子を得ることができる。シリカ粒子の平均粒子径は、レーザ回折散乱法によって測定される。
【0031】
また、塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含み、上記有機溶媒はメタノールおよびエタノールを含む、シリカ粒子の製造方法も、本発明の一態様に含まれる。メタノールとエタノールとの混合比を調製することによって、平均粒子径が0.06μm超0.37μm以下であるシリカ粒子を得ることができる。有機溶媒中のメタノールの割合が大きくなる程、平均粒子径が小さいシリカ粒子を得ることができる。シリカ粒子の平均粒子径は、レーザ回折散乱法によって測定される。
【0032】
また、塩基性触媒と、水と、有機溶媒との存在下で、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行うことによってシリカ粒子を製造する工程を含み、上記有機溶媒はメタノールおよび2-ブタノールを含む、シリカ粒子の製造方法も、本発明の一態様に含まれる。メタノールとエタノールとの混合比を調製することによって、平均粒子径が0.06μm超0.55μm未満であるシリカ粒子を得ることができる。有機溶媒中のメタノールの割合が大きくなる程、平均粒子径が小さいシリカ粒子を得ることができる。シリカ粒子の平均粒子径は、レーザ回折散乱法によって測定される。
【0033】
本発明の一態様に係るシリカ粒子の製造方法によって得られた、所望の粒子径に調整されたシリカ粒子は粒子径が揃っており、更なる大粒子へと成長させるための原料、種粒子としても好適に使用できる。例えば、本発明の一態様に係るシリカ粒子の製造方法によって得られたシリカ粒子に、ケイ素アルコキシド(またはケイ素アルコキシドの有機溶媒)および塩基性触媒を再度添加して、シリカ粒子を成長させてもよい。すなわち、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を2段階行ってもよい。
【0034】
ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を2段階で行う場合は、1段目の反応条件は上述の通り、所望の粒子径に調整されたシリカ粒子を得るために有機溶媒の組成を調整する必要がある。一方、2段目以降の反応条件は1段目の反応条件と同じであってもよいし、異なっていてもよい。1段目の反応条件で使用する有機溶媒の組成に応じて、2段階以上反応させたシリカ粒子の粒子径も調整することができる。
【0035】
本発明の一態様に係るシリカ粒子の製造方法において、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合を行った後に、ゾルゲル法の反応によるシリカ粒子の製造に一般的に行われる処理を行ってもよい。当該処理の例として、ろ過工程、表面処理工程、凝析工程、分離工程、乾燥工程、焼成工程および解砕工程等が挙げられる。以下、各工程について説明する。
【0036】
<ろ過工程>
ろ過工程において、上記所望の粒子径に調整されたシリカ粒子の分散液を湿式でろ過し、分散液に含まれる反応残渣、癒着粒子または凝集塊を除去してもよい。ろ過するシリカ粒子の分散液中のシリカ粒子の濃度は、1~40質量%とすることが好ましく、特に2~25質量%とすることが好ましい。シリカ粒子の濃度が上記の範囲に調整されるよう、極性溶媒、特に水以外の極性溶媒の使用量を調整しておくことが好ましい。
【0037】
ろ材としては、湿式ろ過用フィルターにおいて、目開きが5μm以下のものが、種類を特に限定されずに使用することができ、好適には目開きが3μm以下のものを使用することもできる。
【0038】
フィルターの材質は特に制限されないが、樹脂製(ポリプロピレン、PTFEなど)または金属製が挙げられる。金属不純物の混入を防ぐ観点から、樹脂製のフィルターを用いることが好ましい。
【0039】
<表面処理工程>
後述の凝析工程よりも前に、シリカ粒子の分散液に、シリコーンオイル、シランカップリング剤およびシラザンよりなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤を添加して表面処理を行ってもよい。
【0040】
表面処理を施すことにより、後述する分離工程を効率良く行うことができる。また、乾燥を行う際、強固な凝集塊の生成を抑えることができるため、シリカ粒子について特段の解砕処理を行うことなく種々の用途に使用することが可能である。
【0041】
表面処理工程は、シリカ粒子の分散液において、凝析工程の前であればよく、分散液のろ過工程の前後どちらでも構わないが、反応残渣、癒着粒子または凝集塊が精度よく低減される点で分散液のろ過工程の前に実施することが好ましい。ろ過工程前に実施することにより、表面処理時に生成する凝集塊または表面処理剤の残渣も分散液のろ過工程において取り除くことが可能である。
【0042】
上記シリコーンオイルとしては、通常、シリカ粒子の表面処理に用いられる公知のシリコーンオイルを、特に制限なく使用することが可能であり、必要とする表面処理シリカ粒子の性能等に応じて適宜選択して、使用すればよい。
【0043】
シリコーンオイルの具体例としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を挙げることができる。
【0044】
シリコーンオイルの使用割合は特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用するシリカ粒子100質量部に対して、0.05~80質量部とすることが好ましく、0.1~60質量部とすることがより好ましい。
【0045】
上記シランカップリング剤としては、表面処理に通常用いられている公知のシランカップリング剤を、特に制限なく使用することが可能であり、必要とする表面処理シリカ粒子の性能等に応じて適宜選択して、使用すればよい。
【0046】
シランカップリング剤の具体例としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-スチリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0047】
シランカップリング剤の使用割合は特に制限されないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用するシリカ粒子100質量部に対して、0.05~80質量部とすることが好ましく、0.1~40質量部とすることがより好ましい。
【0048】
上記シラザンとしては、通常表面処理に用いられる公知のシラザンを、特に制限なく使用することが可能である。
【0049】
シラザンの具体例としては、例えばテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン等を挙げることができる。上記のうち、反応性の良さ、取り扱いの良さ等から、ヘキサメチルジシラザンの使用が好適である。
【0050】
シラザンの使用割合は、特に制限はされないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎると後処理が煩雑となるので、使用するシリカ粒子100質量部に対して、0.1~150質量部とすることが好ましく、1~120質量部とすることがより好ましい。
【0051】
上記の表面処理剤は、単独で1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
上記のような表面処理剤のうち、得られる表面処理シリカ粒子の流動性がよいことから、シランカップリング剤及びシラザンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましく、シラザンを使用することがより好ましい。
【0053】
表面処理剤の添加方法は特に制限されない。表面処理剤が常温、常圧で低粘度の液体である場合は、これを分散液中に滴下すればよい。表面処理剤が高粘度液体又は固体である場合には、これを適当な有機溶媒に添加して溶液又は分散液としたうえで、低粘度液体の場合と同様にして添加することができる。ここで使用される有機溶媒としては、上記の極性溶媒と同様のものを挙げることができる。更に、表面処理剤が気体状である場合は、液中に微細な泡状となるように吹き込むことにより添加することができる。
【0054】
表面処理を行う際の処理温度は、使用する表面処理剤の反応性等を勘案して決定すればよいが、処理温度が低すぎると反応の進行が遅く、高すぎると操作が煩雑であるため、10~100℃とすることが好ましく、20~80℃とすることがより好ましい。
【0055】
表面処理を行う際の処理時間は特に制限はされず、使用する表面処理剤の反応性等を勘案して決定すればよい。表面処理反応の十分な進行と、工程時間を短くすることの双方を考慮して、処理時間を0.1~48時間とすることが好ましく、0.5~24時間とすることがより好ましい。
【0056】
<凝析工程>
凝析工程においては、シリカ粒子の分散液中に、凝析剤を添加してもよい。分散液中に凝析剤を添加することにより、分散液中でシリカ粒子の弱い凝集体が形成される。この凝集体は、分散液中に存在する凝析剤またはその誘導体の存在により、分散液中で安定に存在することが可能であり、ろ過により容易に回収することができることとなる。
【0057】
凝析剤の例として、二酸化炭素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム等が挙げられる。凝析剤は、単独で1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
凝析剤の使用割合及び添加方法は、使用する凝析剤の種類に応じて下記のように設定することができる。凝析剤の使用割合は、分散液中でのシリカ粒子の弱い凝集体の形成の程度と、不当に多量の原料を使用することの無駄とのバランスを勘案することによって設定される。以下における凝析剤の使用割合の基準としてのシリカ粒子の質量は、用いたケイ素アルコキシドがすべて加水分解及び重縮合してシリカ粒子となっていると仮定した場合の換算値である。
【0059】
上記凝析剤として二酸化炭素を使用する場合、その使用割合は、分散液中に含有されるシリカ粒子100質量部に対して、0.005質量部以上とすることが好ましく、0.005~300質量部とすることがより好ましい。シリカ粒子に対して表面処理を行わない場合における二酸化炭素の更に好ましい使用割合は、シリカ粒子100質量部に対して、0.05質量部以上であり、0.05~300質量部とすることが特に好ましく、0.25~200質量部とすることがとりわけ好ましい。一方、シリカ粒子に対して表面処理を行う場合における二酸化炭素の更に好ましい使用割合は、シリカ粒子100質量部に対して、15質量部以上であり、15~300質量部とすることが特に好ましく、17~200質量部とすることがとりわけ好ましい。
【0060】
二酸化炭素の添加方法としては、気体の状態で分散液中に吹き込む方法、固体の状態(ドライアイス)で添加する方法等を挙げることができるが、固体の状態で添加することが、操作が簡単であることから好ましい。
【0061】
上記凝析剤として炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはカルバミン酸アンモニウムを使用する場合、その使用割合は、分散液中に含有されるシリカ粒子100質量部に対して、0.001質量部以上とすることが好ましく、0.001~80質量部とすることがより好ましい。シリカ粒子に対して表面処理を行わない場合における炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはカルバミン酸アンモニウムの更に好ましい使用割合は、シリカ粒子100質量部に対して、0.001~15質量部であり、0.001~10質量部とすることが特に好ましい。一方、シリカ粒子に対して表面処理を行う場合における炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはカルバミン酸アンモニウムの更に好ましい使用割合は、シリカ粒子100質量部に対して、15質量部以上であり、15~80質量部とすることが特に好ましく、17~60質量部とすることがとりわけ好ましく、更には20~50質量部とすることが好ましい。
【0062】
炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはカルバミン酸アンモニウムは、固体の状態で添加してもよく、適当な溶媒に溶解した溶液状態で添加してもよい。これらを溶液状態で添加する場合に使用される溶媒としては、これらを溶解するものであれば特に制限されないが、溶解能力が高く、またろ過後の除去が容易であるとの観点から、水を使用することが好ましい。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはカルバミン酸アンモニウム溶液の濃度は、これらが溶解する範囲ならば特に制限されないが、濃度が低すぎると溶液の使用量が多くなり、不経済であるため、2~15質量%とすることが好ましく、特に5~12質量%とすることが好ましい。
【0063】
特に、いわゆる「炭酸アンモニウム」として市販されている、炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムとの混合物は、これをそのまま、または適当な溶媒に溶解した溶液として使用することができる。この場合における、炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムとの合計の使用割合、これを溶液として添加する場合に使用される溶媒の種類および溶液の濃度は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはカルバミン酸アンモニウムの場合と同様である。
【0064】
凝析剤を添加する際のシリカ粒子分散液のpHとしては、分散液中で凝析剤が好ましくない分解を起こさないpHの範囲を選択して設定することが望まれる。このような観点から、分散液のpHはアルカリ性とすることが好ましく、pH9以上とすることがより好ましい。
【0065】
凝析剤を添加する際のシリカ粒子の分散液の温度は、凝析剤の添加によって生成するシリカ粒子の弱い凝集体が安定に存在できる温度を選択して設定することが望まれる。このような観点から、分散液の温度としては、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合の際の反応温度と同じ-10~60℃とすることが好ましく、10~40℃とすることがより好ましい。
【0066】
凝析剤の添加後、熟成を行う、即ち次工程のろ過までに暫く間隔をおくこと、が好ましい。凝析剤添加後に熟成を行うことにより、前記したシリカ粒子の弱い凝集体の形成が促進されることとなり、好ましい。熟成時間は長いほどよいが、長すぎると不経済である。一方、熟成時間が短すぎると、シリカ粒子の弱い凝集体の形成が不十分となる。そこで熟成時間としては、0.5~72時間とすることが好ましく、特に1~48時間とすることが好ましい。熟成の際の分散液の温度は特に制限されず、凝析剤添加の際の好ましい温度と同じ温度範囲で実施することができ、凝析剤の添加を行った際と同じ温度で実施すれば足りる。
【0067】
<分離工程>
分離工程においては、凝析工程において凝析剤を添加し、好ましくは熟成した後の分散液から、シリカ粒子をろ過により回収してもよい。
【0068】
上記凝析剤の添加によって弱い凝集体を形成したシリカ粒子は、ろ過によってろ物として固液を分離させて容易に回収することができる。ろ過の方法は特に制限はされず、例えば減圧濾過、加圧ろ過、遠心ろ過等の公知の方法を適用することができる。
【0069】
ろ過で使用する、ろ紙やフィルター、ろ布等(以下、これらを包括して「ろ紙等」という。)は、工業的に入手可能なものであれば、特に制限なく使用することができ、分離装置(ろ過器)のスケールに応じて適宜選択すればよい。凝析剤の添加によりシリカ粒子が弱く凝集した凝集体となっているため、ろ紙等の孔径は、例えば孔径5μm程度のもので十分である。このようにろ紙等の孔径が大きなものですむため、迅速にろ過することが可能である。
【0070】
ろ過により、シリカ粒子がケークとして回収される。
【0071】
上記の凝析工程において凝析剤として炭酸水素アンモニウム水溶液を使用した場合、得られたケークを、適当な溶媒、例えば水、アルコール等、でリンス処理してもよい。当該処理によって、ケイ素アルコキシドの加水分解および重縮合反応で使用した溶媒、塩基性触媒、未反応の表面処理剤の分解または除去を行うことができる。
【0072】
<乾燥工程>
乾燥工程においては、上記の分離工程によって回収したシリカ粒子を乾燥させてもよい。
【0073】
上記の分離工程によって回収したシリカ粒子のケークの解砕性を向上させる点で、乾燥工程における乾燥温度は、35℃以上の温度とすることが好ましい。この温度における加熱により、上記のろ過、リンス等によっても除去されずにケーク中に残存している凝析剤を、熱分解により容易に除去することができる。
【0074】
乾燥の方法は特に制限はされず、送風乾燥または減圧乾燥等の公知の方法を採用することが可能である。上記の分離工程によって回収したシリカ粒子のケークの解砕性を向上させる点で、減圧乾燥による乾燥が好ましい。
【0075】
乾燥時の温度を高くする方が、凝析剤の分解効率の観点及びより解砕され易いシリカ粒子とすることの観点からは有利である。しかしながら乾燥温度が高すぎると、表面処理によってシリカ粒子の表面に導入された反応性置換基により凝集塊が生成することがあり、好ましくない。したがって、上記のバランスをとるために、乾燥の温度は35~200℃とすることが好ましく、50~200℃とすることがより好ましく、特に80~200℃とすることが好ましく、120~200℃とすることがとりわけ好ましい。
【0076】
乾燥時間は、特に制限はされないが、2~48時間程度とすることにより、シリカ粒子を十分に乾燥することができる。
【0077】
なお、シリカ粒子の分散液からの分散媒の除去を、濃縮および乾燥にわたって連続して行うことも可能である。例えば、シリカ粒子の分散液を加熱濃縮、または減圧濃縮等によって分散媒を揮発させる方法によって行うことにより、シリカ粒子の分散液より分散媒が除去されたシリカ粒子を直接得ることができる。この場合、分散媒を加熱による除去をする際、凝析剤由来の塩が消失する虞があるので、濃縮および乾燥中のシリカ分散液の濃縮物に、凝析剤を適宜添加し、濃縮物中に凝析剤由来の塩が消失しないように行えばよい。
【0078】
上記工程によって、シリカ粒子は、個々の粒子が弱い力で凝集した凝集体の形態を成す乾燥粉体として得られる。そして、係るシリカ粒子は、解砕処理が困難な凝集塊が生成せず、容易に解砕が可能な、分散性に優れたものである。特段の解砕処理を行うことなく、樹脂または溶剤に分散させる際の分散機のシェアにより、容易に解砕され、樹脂または溶剤中で均一に分散させることが可能である。
【0079】
<焼成工程>
乾燥工程後のシリカ粒子は、粒子中に吸収された分散媒が完全に除去されておらず、シラノール基が残存し、また細孔が存在している。該粒子中の分散媒を高度に除去し、粒子表面のシラノール基量を減らして中実のシリカを得るために、用途に応じて、更に焼成処理を行うことが好ましい。即ち、該焼成工程において処理されたシリカ粒子は、粒子表面のシラノール基量が低減されるだけでなく、粒子中に残存する分散媒が除去されている点からも好ましい。粒子中に残存する溶媒は、樹脂の充填剤として用いた場合、加熱を施すと気泡等を発生し収率低下の原因となる。特に、充填率が高い半導体封止材用途または液晶シール剤用途において顕著となる。したがって、特に半導体封止材用途または液晶シール剤用途に用いるシリカ粒子の製造において、当該焼成工程を設けることが好ましい。
【0080】
焼成工程における焼成温度は、低すぎると分散媒成分の除去が困難であり、高すぎるとシリカ粒子の融着が生じるため、300~1300℃で行うことが好ましく、600~1200℃で行うことがより好ましい。
【0081】
焼成工程における焼成時間については、残存する分散媒が除去されれば特に制限されない。焼成時間が長すぎると生産性が落ちるため、目的とする焼成温度まで昇温した後、0.5~48時間、より好ましくは、2~24時間の範囲で保持し焼成を行えば十分である。
【0082】
焼成時の雰囲気も特に制限はされず、アルゴンや窒素などの不活性ガス下、または大気雰囲気下で行うことができる。
【0083】
焼成工程後のシリカ粒子も、前述の通り個々の粒子が弱い力で凝集した凝集体の形態を成す乾燥粉体として得られる。
【0084】
<解砕工程>
焼成工程後のシリカ粒子は、特段の解砕処理を行うことなく種々の用途に使用することが可能であるが、目的に応じて、凝集塊を更に低減させるために、解砕工程を行ってもよい。解砕工程においては、公知の解砕手段により解砕処理を行ってもよい。
【0085】
公知の解砕手段としては、例えば、ボールミルまたはジェットミル等が挙げられる。また、公知の解砕手段を用いずとも、樹脂または溶剤等に分散してシリカ粒子を使用する場合には、高シェアの分散機を使用することによって、樹脂または溶剤への分散と同時にシリカ粒子の解砕を行うことができる。
【実施例0086】
〔製造例1〕シリカ粒子の製造
反応容器として、内容積10Lのジャケット付きガラス反応容器にマックスブレンド翼を有した反応容器を使用した。初期反応液としてメタノール、イソプロパノールおよびアンモニア水(25質量%)207.6gを仕込んだ。そして、反応温度を40℃に設定し、60rpmで撹拌した。初期反応液中のメタノール(MeOH、A)およびイソプロパノール(IPA、B)の量(g)は表1に示す。また、初期反応液に含まれる有機溶媒(MeOHおよびIPA)中のIPA濃度(質量%)も表1に示す。
【0087】
次に、テトラエトキシシラン(TEOS)25.9g、メタノールおよびイソプロパノールのシリカ粒子生成用混合物を300g/min以上の吐出速度で初期反応液に投入し、TEOSの加水分解および重縮合を行い、シリカ粒子を製造した。シリカ粒子生成用混合物中のメタノール(MeOH、C)およびイソプロパノール(IPA、D)の量(g)を表1に示す。また、シリカ粒子生成用混合物に含まれる有機溶媒(MeOHおよびIPA)中のIPA濃度(質量%)も表1に示す。
【0088】
得られたシリカ粒子の平均粒子径(体積基準累積50%径)をレーザ回折散乱法(ベックマンコールター社製、LS13 320)により測定した。シリカ粒子(X)の測定結果を表1に示す。また、縦軸をシリカ粒子の平均粒子径(μm)、横軸をIPA濃度(質量%)でプロットしたグラフを図1に示す。当該IPA濃度は、シリカ粒子生成で使用した有機溶媒中のIPA濃度である。
【0089】
【表1】
【0090】
表1および図1に示すように、メタノールとIPAとの混合比率に応じて、シリカ粒子の粒子径を調整することができることが分かった。
【0091】
さらに、テトラメトキシシラン(TMOS)4150gとメタノール415gを20g/minの吐出速度で上記シリカ粒子液中に供給した。当該供給と同時にアンモニア水(25質量%)1830gを8g/minの吐出速度で供給し、TMOSの加水分解および重縮合を行い、シリカ粒子を成長させた。供給終了後、1時間撹拌を続けた。
【0092】
シリカ粒子を成長させて得られた大粒子(以下、「成長後粒子」と示す場合がある)の平均粒子径および変動係数をレーザ回折散乱法により測定した。成長後粒子(Y)の測定結果を表1に示す。また、縦軸を成長後粒子の平均粒子径(μm)、横軸をシリカ粒子生成で使用した有機溶媒中のIPA濃度(質量%)でプロットしたグラフを図2に示す。
【0093】
表1および図2に示すように、シリカ粒子生成で使用したメタノールとIPAとの混合比率に応じて、シリカ粒子を成長させた成長後粒子の粒子径も調整することができることが分かった。また、個々の成長後粒子は真球状であった。
【0094】
〔製造例2〕シリカ粒子の製造
製造例1と同じ反応容器を使用した。初期反応液としてメタノール、エタノールおよびアンモニア水(25質量%)207.6gを仕込んだ。そして、反応温度を40℃に設定し、60rpmで撹拌した。初期反応液中のメタノール(MeOH、A)およびエタノール(EtOH、B)の量(g)は表2に示す。また、初期反応液中に含まれる有機溶媒(MeOHおよびEtOH)中のEtOH濃度(質量%)も表2に示す。
【0095】
次に、TEOS25.9g、メタノールおよびエタノールのシリカ粒子生成用混合物を300g/min以上の吐出速度で初期反応液に投入し、TEOSの加水分解および重縮合を行い、シリカ粒子を製造した。シリカ粒子生成用混合物中のメタノール(MeOH、C)およびエタノール(EtOH、D)の量(g)を表2に示す。また、シリカ粒子生成用混合物に含まれる有機溶媒(MeOHおよびEtOH)中のEtOH濃度(質量%)も表2に示す。
【0096】
得られたシリカ粒子の平均粒子径をレーザ回折散乱法により測定した。シリカ粒子(X)の測定結果を表2に示す。また、縦軸をシリカ粒子の平均粒子径(μm)、横軸をEtOH濃度(質量%)でプロットしたグラフを図3に示す。当該EtOH濃度は、シリカ粒子生成で使用した有機溶媒中のEtOH濃度である。
【0097】
【表2】
【0098】
表2および図3に示すように、メタノールとエタノールとの混合比率に応じて、シリカ粒子の粒子径を調整することができることが分かった。
【0099】
さらに、TMOS4150gとメタノール415gを20g/minの吐出速度で上記シリカ粒子液中に供給した。当該供給と同時にアンモニア水(25質量%)1830gを8g/minの吐出速度で供給し、TMOSの加水分解および重縮合を行い、シリカ粒子を成長させ、成長後粒子を得た。供給終了後、1時間撹拌を続けた。
【0100】
成長後粒子の平均粒子径および変動係数をレーザ回折散乱法により測定した。成長後粒子(Y)の測定結果を表2に示す。また、縦軸を成長後粒子の平均粒子径(μm)、横軸をシリカ粒子生成で使用した有機溶媒中のEtOH濃度(質量%)でプロットしたグラフを図4に示す。
【0101】
表2および図4に示すように、シリカ粒子生成で使用したメタノールとエタノールとの混合比率に応じて、シリカ粒子を成長させた成長後粒子の粒子径も調整することができることが分かった。
【0102】
〔製造例3〕シリカ粒子の製造
製造例1と同じ反応容器を使用した。初期反応液としてメタノール、2-ブタノールおよびアンモニア水(25質量%)207.6gを仕込んだ。そして、反応温度を40℃に設定し、60rpmで撹拌した。初期反応液中のメタノール(MeOH、A)および2-ブタノール(BuOH、B)の量(g)は表3に示す。また、初期反応液中に含まれる有機溶媒(MeOHおよびBuOH)中のBuOH濃度(質量%)も表3に示す。
【0103】
次に、TEOS25.9g、メタノールおよび2-ブタノールのシリカ粒子生成用混合物を300g/min以上の吐出速度で初期反応液に投入し、TEOSの加水分解および重縮合を行い、シリカ粒子を製造した。シリカ粒子生成用混合物中のメタノール(MeOH、C)および2-ブタノール(BuOH、D)の量(g)を表3に示す。また、シリカ粒子生成用混合物に含まれる有機溶媒(MeOHおよびBuOH)中のBuOH濃度(質量%)も表3に示す。
【0104】
得られたシリカ粒子の平均粒子径をレーザ回折散乱法により測定した。シリカ粒子(X)の測定結果を表3に示す。また、縦軸をシリカ粒子の平均粒子径(μm)、横軸をBuOH濃度(質量%)でプロットしたグラフを図5に示す。当該BuOH濃度は、シリカ粒子生成で使用した有機溶媒中のBuOH濃度である。
【0105】
【表3】
【0106】
表3および図5に示すように、メタノールと2-ブタノールとの混合比率に応じて、シリカ粒子の粒子径を調整することができることが分かった。
【0107】
さらに、TMOS4150gとメタノール415gを20g/minの吐出速度で上記シリカ粒子液中に供給した。当該供給と同時にアンモニア水(25質量%)1830gを8g/minの吐出速度で供給し、TMOSの加水分解および重縮合を行い、シリカ粒子を成長させ、成長後粒子を得た。供給終了後、1時間撹拌を続けた。
【0108】
成長後粒子の平均粒子径および変動係数をレーザ回折散乱法により測定した。成長後粒子(Y)の測定結果を表3に示す。また、縦軸を成長後粒子の平均粒子径(μm)、横軸をシリカ粒子生成で使用した有機溶媒中のBuOH濃度(質量%)でプロットしたグラフを図6に示す。
【0109】
表3および図6に示すように、シリカ粒子生成で使用したメタノールと2-ブタノールとの混合比率に応じて、シリカ粒子を成長させた成長後粒子の粒子径も調整することができることが分かった。
【0110】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態/各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態/実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、例えば、半導体封止材等の電子材料またはフィルム製造用等の各種樹脂組成物の充填材に用いるシリカ粒子の製造に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6