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特開2023-110854銅研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110854
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】銅研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20230802BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230802BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230802BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230802BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
C09G1/02
B24B37/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185107
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0013204
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】沈 秀▲妍▼
(72)【発明者】
【氏名】李 知虎
(72)【発明者】
【氏名】金 龍國
(72)【発明者】
【氏名】崔 世榮
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 慈英
(72)【発明者】
【氏名】金 廷熙
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
3C158CB03
3C158DA12
3C158ED22
3C158ED26
5F057AA03
5F057AA09
5F057AA28
5F057BA15
5F057BB16
5F057BB23
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA16
5F057EA18
5F057EA21
5F057EA22
5F057EA23
5F057EA25
5F057EA29
5F057EA31
(57)【要約】
【課題】ディッシングとエロージョン等の表面欠陥を減らすことにより、研磨平坦度が高い銅研磨用CMPスラリー組成物を提供する。
【解決手段】極性溶媒、非極性溶媒の1種以上の溶媒;研磨剤;および化学式1を有する化合物、化学式2を有する化合物の1種以上の化合物を含む、銅研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒、非極性溶媒の1種以上の溶媒;研磨剤;および下記化学式1を有する化合物、下記化学式2を有する化合物の1種以上の化合物を含む、銅研磨用CMPスラリー組成物:
【化1】
(前記化学式1において、*は元素に対する連結部位であり、
,R,R,Rは、それぞれ独立して単一結合または炭素数1~炭素数5のアルキレン基であり、
,M,M,MはOHまたはO、Nは1価陽イオンであり、
a,b,c,dはそれぞれ0以上であり、a+b+c+dは0ではない)。
【化2】
(前記化学式2で、*は元素に対する連結部位であり、
,R,R,Rは、それぞれ独立して炭素数1~炭素数5のアルキレン基であり、
,MはOHまたはO、Nは1価陽イオンであり、
a,bはそれぞれ0以上であり、a+bは0ではない)。
【請求項2】
前記化合物は重量平均分子量が1000g/mol~5000g/molである、請求項1に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項3】
前記化学式1を有する化合物は、下記化学式3を有する化合物、下記化学式4を有する化合物、下記化学式5を有する化合物の1種以上を含む、請求項1に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物:
【化3】
(前記化学式3で、*は元素に対する連結部位であり、
,Mは、前記化学式1で定義したものと同じであり、
a,bはそれぞれ0以上であり、a+bは0ではない)。
【化4】
(前記化学式4で、*は元素に対する連結部位であり、
,Mは、前記化学式1で定義したものと同じであり、
c,dはそれぞれ0以上であり、c+dは0ではない)。
【化5】
(前記化学式5で、*は元素に対する連結部位であり、
,M,M,Mは、前記化学式1で定義したものと同じであり、
a,b,c,dはそれぞれ0以上であり、a+b+c+dは0ではない)。
【請求項4】
前記化学式1で、aは0~30、bは0~30、cは0~30、dは0~30である、請求項1に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項5】
前記化合物は、前記CMPスラリー組成物中に0.0001重量%~2重量%で含まれる、請求項1に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項6】
前記CMPスラリー組成物は、腐食防止剤、錯化剤、酸化剤の1種以上をさらに含む、請求項1に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項7】
前記CMPスラリー組成物は、前記研磨剤0.001重量%~20重量%、前記化合物0.0001重量%~2重量%、前記腐食防止剤0.001重量%~5重量%、前記錯化剤0.01重量%~20重量%、前記酸化剤0.1重量%~5重量%、および前記溶媒残量を含む、請求項6に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項8】
前記CMPスラリー組成物はpHが5~9である、請求項1に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の銅研磨用CMPスラリー組成物を用いて銅膜を研磨する段階を含む、銅膜研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いた銅膜研磨方法に関する。より詳しくは、本発明は、ディッシング(dishing)とエロージョン(erosion)を下げて研磨平坦度を高め、銅膜に対する研磨速度の減少は最小化させた銅研磨用CMPスラリー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の金属配線層である銅膜を研磨する工程は、十分な研磨速度、バリア金属または誘電体に対する優れた研磨選択比、適切な研磨平坦度、および低い欠陥特性を達成しなければならない。特に、パターン微細化によって配線および層の厚さが減少することにより、高い平坦度を具現するCMPスラリーが要求されている。
【0003】
近年、銅膜のCMP分野では、ディッシングを改善するためのディッシング改善剤の開発が活発に行われている。ディッシングを最小化する方法として、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体を適用する技術が知られている。しかし、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体は、銅膜に対する研磨速度を低下させ、研磨後には有機物欠損(organic defect)を起こし得るという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ディッシングとエロージョン等の表面欠陥を減らすことにより、研磨平坦度が高い銅研磨用CMPスラリー組成物を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、銅膜に対する研磨速度が低下しない銅研磨用CMPスラリー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の銅研磨用CMPスラリー組成物は、極性溶媒、非極性溶媒の1種以上の溶媒;研磨剤;および下記化学式1を有する化合物、下記化学式2を有する化合物の1種以上の化合物を含む:
【0007】
【化1】
(前記化学式1において、*は元素に対する連結部位であり、
,R,R,Rは、それぞれ独立して単一結合または炭素数1~炭素数5のアルキレン基であり、
,M,M,MはOHまたはO、Nは1価陽イオンであり、
a,b,c,dはそれぞれ0以上であり、a+b+c+dは0ではない)。
【0008】
【化2】
(前記化学式2で、*は元素に対する連結部位であり、
,R,R,Rは、それぞれ独立して炭素数1~炭素数5のアルキレン基であり、
,MはOHまたはO、Nは1価陽イオンであり、
a,bはそれぞれ0以上であり、a+bは0ではない)。
【0009】
本発明の銅膜研磨方法は、本発明の銅研磨用CMPスラリー組成物を用いて銅膜を研磨する段階を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ディッシングとエロージョン等の表面欠陥を減らすことにより、研磨平坦度が高い銅研磨用CMPスラリー組成物を提供する。
【0011】
本発明は、銅膜に対する研磨速度が低下しない銅研磨用CMPスラリー組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の銅研磨用CMPスラリー組成物は、極性溶媒、非極性溶媒の1種以上の溶媒;研磨剤;および下記化学式1を有する化合物、下記化学式2を有する化合物の1種以上の化合物を含む。これによって、本発明はディッシングとエロージョン等の表面欠陥を減らすことにより研磨平坦度を高め、銅膜に対する研磨速度が高い銅研磨用CMPスラリー組成物を提供する。
【0013】
一具体例において、前記化合物は、本発明の組成物中のディッシングまたはエロージョン改善剤として使用できる。一具体例において、前記下記化学式1を有する化合物、下記化学式2を有する化合物の1種以上は、本発明の組成物に含有される全ディッシングまたはエロージョン改善剤中に50重量%以上、例えば60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、100重量%で含有できる。
【0014】
以下、本発明にかかる銅CMPスラリー組成物(以下「CMPスラリー組成物」とする)の構成成分について詳しく説明する。
【0015】
CMPスラリー組成物は、下記化学式1を有する化合物、下記化学式2を有する化合物の1種以上を含む:
【0016】
【化3】
(前記化学式1において、*は元素に対する連結部位であり、
,R,R,Rは、それぞれ独立して単一結合または炭素数1~炭素数5のアルキレン基であり、
,M,M,MはOHまたはO、Nは1価陽イオンであり、
a,b,c,dはそれぞれ0以上であり、a+b+c+dは0ではない)。
【0017】
【化4】
(前記化学式2で、*は元素に対する連結部位であり、
,R,R,Rは、それぞれ独立して炭素数1~炭素数5のアルキレン基であり、
,MはOHまたはO、Nは1価陽イオンであり、
a,bはそれぞれ0以上であり、a+bは0ではない)。
【0018】
前記化学式1を有する化合物、前記化学式2を有する化合物は、それぞれ静電気的陰イオン性官能基(electronegative group)である-C(=O)M,-C(=O)M,-C(=O)M,-C(=O)M、または-C(=O)M(M,M,M,M,Mはそれぞれ独立してOHまたはO、Nは1価陽イオン)を有すると同時に主鎖に平面型のリジッド(rigid)したアミド基(-C(=O)-NH-) またはアミド基に似た基を有する。これによって銅膜を広くシールド(shielding)することにより、銅膜に対する吸着効率が高くなり銅膜に対するディッシングとエロージョンを著しく下げることができる。特に、前記化学式1を有する化合物、前記化学式2を有する化合物のうち、側鎖-C(=O)M,-C(=O)M,-C(=O)M,-C(=O)M、または-C(=O)Mは、本発明の組成物内で-C(=O)-Oで陰イオン化されることにより、銅膜に対する吸着効率が高くなり得る。
【0019】
特に、前記化学式1を有する化合物は、側鎖として-C(=O)Mを、主鎖としてアミド基(-C(=O)-NH-)を一つの単位内に同時に有する。よって、本発明の前記化学式1を有する化合物は、側鎖にカルボン酸を有する単位と側鎖にアミド基を有する単位を全て有する従来のアクリル酸とアクリルアミドの共重合体に比べて、同じ効果のために相対的に低い重量平均分子量を有することにより、前記化合物の粘度を下げて銅膜に対する研磨速度の低下をなくしたり、研磨速度の減少を最小化させたりすることができる。
【0020】
前記化学式1、化学式2で、前記「1価陽イオン」は、アルカリ金属の1価陽イオン(例:Li,Na,K等)になり得る。
【0021】
前記化学式1、化学式2で、「炭素数1~5のアルキレン基」は、好ましくは、炭素数2~炭素数3のアルキレン基になり得、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基またはペンチレン基になり得る。
【0022】
前記化学式1、前記化学式2を有する化合物は、ホモ-オリゴマーまたはヘテロ-オリゴマーになり得る。本明細書において「オリゴマー」は、重量平均分子量1,000g/mol~5,000g/mol、具体的には、1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800,1900,2000,2100,2200,2300,2400,2500,2600,2700,2800,2900,3000,3100,3200,3300,3400,3500,3600,3700,3800,3900,4000,4100,4200,4300,4400,4500,4600,4700,4800,4900,5000g/molを有する化合物を意味し得る。重量平均分子量は、当業者に知られている通常の方法で測定できる。例えば、重量平均分子量は、ポリスチレン標準試料を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定できる。
【0023】
一具体例において、前記化学式1を有する化合物は、下記化学式3を有する化合物、下記化学式4を有する化合物、下記化学式5を有する化合物の1種以上を含むことができる。
【0024】
【化5】
(前記化学式3で、*は元素に対する連結部位であり、
,Mは、前記化学式1で定義したものと同じであり、
a,bはそれぞれ0以上であり、a+bは0ではない)。
【0025】
【化6】
(前記化学式4で、*は元素に対する連結部位であり、
,Mは、前記化学式1で定義したものと同じであり、
c,dはそれぞれ0以上であり、c+dは0ではない)。
【0026】
【化7】
(前記化学式5で、*は元素に対する連結部位であり、
,M,M,Mは、前記化学式1で定義したものと同じであり、
a,b,c,dはそれぞれ0以上であり、a+b+c+dは0ではない)。
【0027】
前記化学式1、前記化学式5で、aは0~30、bは0~30、cは0~30、dは0~30になり得る。a, b, c, d は 0, 0を超, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30であってよい。 前記化学式1、前記化学式5で、それぞれの反復単位の配列順序は変更し得る。
【0028】
前記化学式2、前記化学式3、前記化学式4で、aは0~30、bは0~30になり得る。 a, b は 0, 0を超, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30であってよい。
【0029】
前記化合物は、CMPスラリー組成物中に0.0001重量%~2重量%、具体的には、0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.5,1,1.5,2重量%、好ましくは0.0002重量%~1重量%、さらに好ましくは0.0005重量%~0.5重量%、最も好ましくは0.001重量%~0.1重量%で含まれ得る。前記範囲で、銅膜を十分な研磨速度で研磨することができ、ディッシングとエロージョンが発生しなくなることにより、研磨平坦度を改善することができる。
【0030】
前記化合物は、前記化学式1中の反復単位を提供する化合物、前記化学式2中の反復単位を提供する化合物の1種以上を含む単量体の混合物を重合して製造したり、商業的に販売されている製品を購入したりして使用することができる。例えば、前記単量体は、アスパラギン酸、グルタミン酸等の陰イオン性アミノ酸になり得るが、これに制限されるのではない。前記重合は、当業者に知られている通常の方法に従って行うことができる。前記化合物の重量平均分子量は、単量体の含量、重合時間及び/又は重合温度、重合触媒等の含量を調節することにより調節できる。
【0031】
極性溶媒、非極性溶媒の1種以上は、研磨剤で銅膜研磨する際に銅膜に対する研磨剤の摩擦を減らすことができる。極性溶媒、非極性溶媒の1種以上は、水(例えば、超純水)、有機アミン、有機アルコール、有機アルコールアミン、有機エーテル、有機ケトン等になり得る。好ましくは、超純水、つまり脱イオン化水を使用することができる。極性溶媒、非極性溶媒の1種以上は、CMPスラリー組成物中に残量、例えば20重量%~90重量%で含まれ得る。
【0032】
研磨剤は、銅の研磨に使用される通常の研磨剤を含むことができる。例えば、研磨剤は金属または非金属の酸化物研磨粒子になり得る。研磨剤は、例えば、シリカ、アルミナ、セリア、チタニアおよびジルコニアの1種以上を含むことができる。一具現例によると、研磨剤はシリカ(例えば、コロイド性シリカ)になり得るが、これに限定されるのではない。
【0033】
研磨剤は、球形または非球形の粒子であって、一次粒子の平均粒径(D50)が10nm~150nm、例えば20nm~70nmになり得る。前記範囲で、本発明の研磨対象である銅膜に対する研磨速度を上げることができ、且つスクラッチを発生させず、研磨後の銅膜の平坦度を高めることができる。前記「平均粒径(D50)」は、当業者に知られている通常の粒径を意味し、研磨剤を体積基準で最小から最大まで分布させたとき、50体積%に該当する粒子の粒径を意味する。
【0034】
研磨剤は、CMPスラリー組成物中に0.001重量%~20重量%、好ましくは0.005重量%~10重量%、より好ましくは0.01重量%~5重量%、最も好ましくは0.05重量%~3重量%で含まれ得る。前記範囲で、銅膜を十分な研磨速度で研磨することができ、且つスクラッチを発生させず、組成物の分散安定性を良くする助けとなり得る。
【0035】
CMPスラリー組成物は、腐食防止剤、錯化剤、酸化剤をさらに含むことができる。
【0036】
腐食防止剤は、酸化膜と銅膜を含む研磨対象においてトレンチ内銅膜を保護し、追加的なパターン研磨性能を改善させることができる。腐食防止剤は、アゾール系化合物を含むことができる。具体的に、アゾール系化合物は、トリアゾール、テトラゾールの一つ以上を含むことができる。
【0037】
トリアゾールは、5-メチルベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール等を含むメチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、プロピルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール等を含むベンゾトリアゾール系化合物、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール等を含み得る。トリアゾールは、トリアゾール自体またはトリアゾールの塩としてCMPスラリー組成物に含まれてもよい。テトラゾールは、テトラゾール、5-アミノテトラゾール、5-メチルテトラゾール、5-フェニルテトラゾールの1種以上を含むことができるが、これに制限されるのではない。テトラゾールは、テトラゾール自体またはテトラゾールの塩としてCMPスラリー組成物に含まれてもよい。
【0038】
腐食防止剤は、CMPスラリー組成物中に0.001重量%~5重量%、好ましくは0.005重量%~0.5重量%で含まれ得る。前記範囲で、パターンがある部分の研磨時にディッシング、エロージョンを下げて平坦性を高めることができる。
【0039】
錯化剤は、銅膜研磨時に発生する銅イオンをキレーティングさせ、生成された銅酸化物をキレーティングさせる。これによって、銅酸化物が被研磨層である銅膜に再吸着されることを抑制し、銅膜に対する研磨速度を増加させ、表面欠陥を減少させることができる。
【0040】
錯化剤は、有機酸、有機酸の塩、アミノ酸、アミノ酸の塩、ジアルコール、トリアルコール、ポリアルコール等のアルコール類、アミン含有化合物、フォスフェイト、フォスフェイト塩の一つ以上を含むことができる。好ましくは、錯化剤としてアミノ酸を使用できる。前記「有機酸」は、アミノ酸に比べてアミノ基(-NH)を有さない酸を意味する。錯化剤としてアミノ酸を使用したとき、有機酸または有機酸の塩、フォスフェイト塩を使用した場合に比べて銅膜研磨速度を高めることができる。
【0041】
有機酸は、カルボン酸基を1個または2個以上有する有機カルボン酸を含み得る。例えば、有機酸は、グリコール酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ギ酸、サリチル酸、ジメチル酪酸、オクタン酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、クエン酸等を含み得る。例えば、有機酸の塩は、アンモニウムシトレート、アンモニウムアセテート等を含み得る。
【0042】
アミノ酸は、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、プロリン、オキシプロリン、アルギニン、シスチン、ヒスチジン、チロシン、ロイシン、リシン、メチオニン、バリン、イソロイシン、トレオニン、トリプトファン、フェニルアラニンの一つ以上を含み得る。好ましくは、アミノ酸としてグリシンを使用することにより、銅膜研磨速度がより改善され得る。
【0043】
フォスフェイト塩は、トリアンモニウムフォスフェイト、トリアンモニウムフォスフェイトトリハイドレート等を使用できる。
【0044】
錯化剤は、CMPスラリー組成物中に0.01重量%~20重量%、好ましくは 0.1重量%~10重量%で含まれ得る。前記範囲で、銅膜に対する研磨速度、組成物の分散安定性、銅膜の表面特性が良くなり得る。
【0045】
酸化剤は、銅膜を酸化させて銅膜に対する研磨が容易になるようにし、銅膜の表面を均等にして研磨後にも表面粗さを良くすることができる。
【0046】
酸化剤は、無機過化合物、有機過化合物、臭素酸またはその塩、硝酸またはその塩、塩素酸またはその塩、クロム酸またはその塩、ヨウ素酸またはその塩、鉄またはその塩、銅またはその塩、希土類金属酸化物、遷移金属酸化物、重クロム酸カリウムの一つ以上を含むことができる。前記「過化合物」は、一つ以上の過酸化基(-O-O-)を含むか、最高酸化状態の元素を含む化合物である。好ましくは、酸化剤として過化合物を使用することができる。例えば、過化合物は、過酸化水素、過ヨウ素化カリウム、過硫酸カルシウム、フェリシアン化カリウムの一つ以上、好ましくは、過酸化水素になり得る。
【0047】
酸化剤は、CMPスラリー組成物中に0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~2重量%で含まれ得る。前記範囲で、優れた研磨効果を奏し得る。
【0048】
CMPスラリー組成物は、pH調節剤をさらに含んでもよい。pH調節剤は、有機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を含み得る。pH調節剤は、無機酸、例えば、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸の一つ以上を含み得る。pH調節剤は、CMPスラリー組成物中に0重量%~1重量%で含まれ得る。
【0049】
CMPスラリー組成物は、界面活性剤、分散剤、改質剤 等の通常の添加剤をさらに含み得る。
【0050】
CMPスラリー組成物は、pHが5~9、好ましくは6~8になり得る。
【0051】
本発明の銅膜研磨方法は、本発明の銅研磨用CMPスラリー組成物を用いて銅膜を研磨する段階を含む。
【0052】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0053】
実施例1
【0054】
CMPスラリー組成物の総重量に対して、ポリアスパラギン酸(前記化学式3の化合物、前記化学式3で、M,Mは、それぞれOH、重量平均分子量約4,000g/mol)0.01重量%、研磨剤として平均粒径(D50)が50nmのコロイダルシリカ(Nalco,DVSZN-004)1重量%、腐食防止剤として1,2,3-トリアゾール(液相、ジェイエルケム社)0.1重量%、錯化剤としてグリシン(固相、ジェイエルケム社)1.5重量%、残りは超純水を含ませて、CMPスラリー組成物を製造した。pH調節剤(硝酸または水酸化カリウム)を使用してCMPスラリー組成物のpHをpH7に調節した。酸化剤として過酸化水素(液相、ドンウファインケム社)を全組成物中に1.0重量%になるように追加投入した。
【0055】
実施例2
【0056】
実施例1において、ポリアスパラギン酸の含量を0.005重量%に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0057】
実施例3
【0058】
実施例1において、ポリアスパラギン酸の代わりにポリグルタミン酸(前記化学式4の化合物、前記化学式4で、M,Mは、それぞれOH、重量平均分子量約4,000g/mol)0.01重量%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0059】
実施例4
【0060】
実施例3において、ポリグルタミン酸の含量を0.005重量%に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0061】
実施例5
【0062】
実施例1において、ポリアスパラギン酸の代わりに前記化学式5の化合物(前記化学式5でM,M,M,Mは、それぞれOH,10<a<20,10<b<20,10<c<20,10<d<20、重量平均分子量約4000g/mol)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0063】
比較例1
【0064】
実施例1において、ポリアスパラギン酸を添加しなかったことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0065】
比較例2
【0066】
実施例1において、ポリアスパラギン酸の代わりにアクリル酸とアクリルアミドの共重合体(重量平均分子量約800,000g/mol)0.005重量%を含ませたことを除いては、実施例1と同じ方法でCMPスラリー組成物を製造した。
【0067】
実施例と比較例で製造したスラリー組成物に対して、下記表1の物性を評価し、その結果を下記表1に表した。
【0068】
(1)銅研磨速度(単位:Å/30秒):
シリコン酸化膜に銅膜が積層された直径300mmのブランケットウエハ(blanket wafer)研磨対象に対して、下記条件で研磨した後、研磨前後の面抵抗変化をエッチングされた厚さで換算することにより、研磨速度を計算した。
研磨機:Reflexion LK 300mm(AMAT社)
研磨パッド:VP6000(Nextplanar社)
研磨時間:ブランケット研磨量によって研磨時間変更
Flow rate:250mL/min
Pressure:2.2psi
研磨量の測定:面抵抗測定機
【0069】
(2)ディッシング(単位:nm):直径300mmの銅パターンウエハ(MIT 754 pattern(Ta BM)(Adventec社))を(1)と同じ方法で研磨した後、パターンのプロファイルをAFM(XE-300,Park systems)で測定した。ディッシングは、100μm×100μmのトレンチに対して測定した。
【0070】
(3)エロージョン(単位:nm):(1)と同じ方法で研磨した後、パターンのプロファイルをInSight CAP Compact Atomic Profiler(bruker社)で測定した。エロージョンは、研磨したウエハの9/1μmパターン領域でperi oxideとcell oxideの高さの差で計算した。スキャン速度は、100μm/秒、スキャンの長さは2mmにした。
【0071】
【表1】
【0072】
前記表1のように、本発明のCMPスラリー組成物は、ディッシングとエロージョン等の表面欠陥を減らすことにより、研磨平坦度が高く、銅膜に対して研磨速度が低下しなかった。
【0073】
一方、本発明の化合物を含有しない比較例1は、ディッシングとエロージョンの欠陥が多く見られた。本発明の化合物の代わりに、アクリル酸-アクリルアミドの共重合体を含有する比較例2は、0.005%以上添加すると研磨速度が大きく低下し、ディッシングとエロージョンの欠陥が多く見られた。また、前記表1では見られなかったが、前記共重合体は、重量平均分子量が大きいため、研磨後のクリーニング時に除去が容易ではなく有機物欠損があった。
【0074】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施でき、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。