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特開2023-110861ポリオール組成物及びその製造方法、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物、並びに、硬質ポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110861
(43)【公開日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ポリオール組成物及びその製造方法、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物、並びに、硬質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230802BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230802BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230802BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/42 008
C08G18/08 038
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204698
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2022012085
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 佑平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明憲
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF17
4J034DF22
4J034DH02
4J034DH06
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HC12
4J034HC35
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KB05
4J034KC02
4J034KD01
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD08
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA04
4J034MA14
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA07
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QA07
4J034QB01
4J034QB16
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA10
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】層状ケイ酸塩が良好に分散したポリオール組成物を提供すること。
【解決手段】層状ケイ酸塩と、第4級アンモニウムカチオンとを、水を含む液状媒体中で共存させることにより、有機変性層状ケイ酸塩を得る工程と、有機変性層状ケイ酸塩をポリオールと混合する工程と、を含み、層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量が25~90meq/100gであり、第4級アンモニウムカチオンの配合量が、陽イオン交換容量から算出される層状ケイ酸塩中の層間イオン1.0当量に対し、1.0当量以上である、ポリオール組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状ケイ酸塩と、下記式(1)で表される第4級アンモニウムカチオンとを、水を含む液状媒体中で共存させることにより、前記層状ケイ酸塩中の層間イオンを前記第4級アンモニウムカチオンに交換し、有機変性層状ケイ酸塩を得る工程と、
前記有機変性層状ケイ酸塩をポリオールと混合する工程と、を含み、
前記層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量が25~90meq/100gであり、
前記第4級アンモニウムカチオンの配合量が、前記陽イオン交換容量から算出される前記層状ケイ酸塩中の層間イオン1.0当量に対し、1.0当量以上である、ポリオール組成物の製造方法。
【化1】

[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換又は未置換の炭化水素基を示し、R~Rのうちの少なくとも1つが、炭素数8以上の脂肪族炭化水素基であり、R~Rのうちの少なくとも1つが、芳香族炭化水素基である。]
【請求項2】
前記層状ケイ酸塩が、前記層間イオンとして、Li、Na、K、Ca2+及びMg2+からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項3】
前記層状ケイ酸塩がスメクタイトである、請求項1又は2に記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項4】
前記層状ケイ酸塩を準備する準備工程を更に含み、
前記準備工程が、層間イオンとしてLiを含むLi型層状ケイ酸塩を150℃以上の温度で加熱処理する工程を含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項5】
前記準備工程が、前記加熱処理後のLi型層状ケイ酸塩を、アンモニアを含む水溶液で処理する工程を更に含む、請求項4に記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項7】
少なくともポリオールと有機変性層状ケイ酸塩とが配合されてなるポリオール組成物であって、
前記有機変性層状ケイ酸塩は、層状ケイ酸塩の陽イオン交換による有機変性体であり、ケイ酸塩層間に下記式(1)で表される第4級アンモニウムカチオンを含み、
前記有機変性層状ケイ酸塩における前記第4級アンモニウムカチオンの吸着量が、25~90meq/100gである、ポリオール組成物。
【化2】

[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換又は未置換の炭化水素基を示し、R~Rのうちの少なくとも1つが、炭素数8以上の脂肪族炭化水素基であり、R~Rのうちの少なくとも1つが、芳香族炭化水素基である。]
【請求項8】
前記層状ケイ酸塩がスメクタイトである、請求項7に記載のポリオール組成物。
【請求項9】
前記ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含む、請求項7又は8に記載のポリオール組成物。
【請求項10】
硬質ポリウレタンフォームの形成に用いられる、請求項7又は8に記載のポリオール組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートと、を含む、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物の反応発泡体である、硬質ポリウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物及びその製造方法、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物、並びに、硬質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止、資源消費抑制等の観点から、住宅の高断熱化による冷暖房消費エネルギー抑制が求められている。硬質ポリウレタン(PU)フォームは優れた断熱性能を有するため、住宅用断熱材として幅広く使用される。
【0003】
断熱性向上への要求は年々高まっており、より熱伝導率の低い断熱材の他、20~50年に及ぶ住宅寿命全体に渡って断熱性能の経年劣化が少ない断熱材が求められる。これに対し、例えば、特許文献1では、ポリマーの総重量を基準として約10重量%までのナノクレーを分散させたポリマーフォーム組成物に関する技術が開示されている。この技術によれば、ナノクレーが発泡プロセスにおいて成核剤としての働きをして微細セル構造を構成する他、ナノクレーが気体遮断材としての働きをして、空気がフォームのセル中に入り込むのを減じたり、発泡剤がフォームのセルの外に拡散するのを軽減したりすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-212330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ナノクレーとして、スメクタイト等の層状ケイ酸塩(層状ケイ酸塩鉱物)が使用されている。層状ケイ酸塩は、ケイ酸塩の単位結晶を含む板状の単位層(「ケイ酸塩層」ともいう。)が、層間イオンを介して積み重なった積層構造を有しており、層間イオンの存在により、ケイ酸塩層同士が近接し、ポリマー分子鎖のインターカレーションによる層剥離が起こり難い状態となっている。そのため、上記特許文献1の組成物では、層状ケイ酸塩の大部分が上記積層構造を維持したままでポリマー中に存在していると考えられる。
【0006】
しかしながら、層状ケイ酸塩による初期及び長期断熱性の向上効果は、層状ケイ酸塩層由来の迷路効果によってガスバリア性が向上することで得られると考えられることから、初期及び長期断熱性の向上効果を高めるためには、ポリマー分子鎖のインターカレーションによるケイ酸塩層同士の層剥離を促進し、層状ケイ酸塩をポリマー中に良好に分散させることが望ましい。
【0007】
そこで、本発明の一側面は、層状ケイ酸塩が良好に分散したポリオール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも下記[1]~[12]を提供する。
【0009】
[1] 層状ケイ酸塩と、下記式(1)で表される第4級アンモニウムカチオンとを、水を含む液状媒体中で共存させることにより、前記層状ケイ酸塩中の層間イオンを前記第4級アンモニウムカチオンに交換し、有機変性層状ケイ酸塩を得る工程と、前記有機変性層状ケイ酸塩をポリオールと混合する工程と、を含み、前記層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量が25~90meq/100gであり、前記第4級アンモニウムカチオンの配合量が、前記陽イオン交換容量から算出される前記層状ケイ酸塩中の層間イオン1.0当量に対し、1.0当量以上である、ポリオール組成物の製造方法。
【化1】

[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換又は未置換の炭化水素基を示し、R~Rのうちの少なくとも1つが、炭素数8以上の脂肪族炭化水素基であり、R~Rのうちの少なくとも1つが、芳香族炭化水素基である。]
【0010】
[2] 前記層状ケイ酸塩が、前記層間イオンとして、Li、Na、K、Ca2+及びMg2+からなる群より選択される少なくとも一種を含む、[1]に記載のポリオール組成物の製造方法。
【0011】
[3] 前記層状ケイ酸塩がスメクタイトである、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物の製造方法。
【0012】
[4] 前記層状ケイ酸塩を準備する準備工程を更に含み、前記準備工程が、層間イオンとしてLiを含むLi型層状ケイ酸塩を150℃以上の温度で加熱処理する工程を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【0013】
[5] 前記準備工程が、前記加熱処理後のLi型層状ケイ酸塩を、アンモニアを含む水溶液で処理する工程を更に含む、[4]に記載のポリオール組成物の製造方法。
【0014】
[6] 前記ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含む、[1]~[5]のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【0015】
[7] 少なくともポリオールと有機変性層状ケイ酸塩とが配合されてなるポリオール組成物であって、前記有機変性層状ケイ酸塩は、層状ケイ酸塩の陽イオン交換による有機変性体であり、ケイ酸塩層間に下記式(1)で表される第4級アンモニウムカチオンを含み、前記有機変性層状ケイ酸塩における前記第4級アンモニウムカチオンの吸着量が、25~90meq/100gである、ポリオール組成物。
【化2】

[式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換又は未置換の炭化水素基を示し、R~Rのうちの少なくとも1つが、炭素数8以上の脂肪族炭化水素基であり、R~Rのうちの少なくとも1つが、芳香族炭化水素基である。]
【0016】
[8] 前記層状ケイ酸塩がスメクタイトである、[7]に記載のポリオール組成物。
【0017】
[9] 前記ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含む、[7]又は[8]に記載のポリオール組成物。
【0018】
[10] 硬質ポリウレタンフォームの形成に用いられる、[7]~[9]のいずれかに記載のポリオール組成物。
【0019】
[11] [10]に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートと、を含む、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物。
【0020】
[12] [11]に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物の反応発泡体である、硬質ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一側面によれば、層状ケイ酸塩が良好に分散したポリオール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、「層」とは、シート状であることを意味し、必ずしも積層構造の一部を意味しない。
【0023】
<ポリオール組成物>
一実施形態のポリオール組成物は、少なくともポリオールと有機変性層状ケイ酸塩とが配合されてなる。このポリオール組成物は、例えば、ポリオールと、ポリオール中に分散した有機変性層状ケイ酸塩由来成分(ケイ酸塩層及び後述する第4級アンモニウムカチオン)と、を含む。
【0024】
ポリオール組成物は、例えば、硬質ポリウレタンフォームの形成に用いられる組成物(硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物)である。硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物は、上記以外に、触媒、難燃剤、発泡剤、整泡剤等の添加剤を含むことができる。硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物は、ポリイソシアネートと組み合わせて、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物として提供されてよい。硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物において、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物とポリイソシアネートとは、それぞれ独立して存在していてよく、互いに混合されていてもよい。すなわち、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物は、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物からなる第1液と、ポリイソシアネート又はポリイソシアネート組成物からなる第2液とを別々に含む多液型組成物(例えば2液型組成物)であってよく、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物中の各成分とポリイソシアネート又はポリイソシアネート組成物中の各成分とを1液中に含む1液型組成物であってもよい。多液型組成物は、硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物セットということもできる。
【0025】
以下、ポリオール組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0026】
(ポリオール)
ポリオールは2以上の水酸基を有する化合物である。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリプカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。ポリオールは、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ポリオールとしては、より高い断熱性能(初期及び長期断熱性)が得られやすくなる観点から、芳香族ポリエステルポリオールが好ましく用いられる。ここで、芳香族ポリエステルポリオールとは、分子内に芳香環を有するポリエステルポリオールである。芳香族ポリエステルポリオールとして、例えば、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸並びにこれらの無水物からなる群より選択される少なくとも1種を含む酸成分と、多官能アルコールとの縮重合反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0028】
多官能アルコールは、好ましくは分子量500以下の低分子量ポリオールである。多官能アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0029】
芳香族ポリエステルポリオールとしては、より高い断熱性能(初期及び長期断熱性)が得られやすくなる観点から、フタル酸、イソフタル酸若しくはテレフタル酸又はこれらの無水物のうちの少なくとも1種を含む酸成分と、エチレングリコール及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種を含む多官能アルコールとの縮重合反応物が好ましく用いられる。
【0030】
ポリオールの数平均分子量は、より高い断熱性能(初期及び長期断熱性)が得られやすくなる観点から、300~1500であってよく、350~1000又は400~700であってもよい。上記ポリオールの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0031】
ポリオールの水酸基価は、より高い断熱性能(初期及び長期断熱性)が得られやすくなる観点から、70~800mgKOH/gであってよく、100~650mgKOH/g又は150~450mgKOH/gであってもよい。なお、水酸基価は、JIS K1557-1に準じて測定される値である。
【0032】
(有機変性層状ケイ酸塩)
有機変性層状ケイ酸塩は、層状ケイ酸塩の陽イオン交換による有機変性体であり、ケイ酸塩層間(隣り合うケイ酸塩層の間)に吸着した第4級アンモニウムカチオンを含む。換言すれば、有機変性層状ケイ酸塩は、層状ケイ酸塩の層間イオンを第4級アンモニウムカチオンで陽イオン交換することで有機変性してなる、層状ケイ酸塩の有機変性体である。有機変性層状ケイ酸塩のケイ酸塩層の少なくとも一部はポリオール中に分散した状態(例えば、層剥離した状態)で存在している。
【0033】
有機変性層状ケイ酸塩は、層状ケイ酸塩由来のケイ酸塩層(単位層)が第4級アンモニウムカチオンを介して積み重なった層状構造(積層構造)を有している。層状ケイ酸塩由来のケイ酸塩層は、ケイ酸塩の単位結晶を含む層であり、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、スメクタイト、バーミキュライト、イライト、マイカ等に由来する層である。これらの中でも、より優れた分散性が得られる観点から、スメクタイトに由来する層であることが好ましい。スメクタイトに由来する層は、Al(OH)、Mg(OH)等の八面体シートが、2つのSiO四面体シートに挟まれてなる2:1型の層構造を有する。スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、スティブンサイト、ヘクトライト等が挙げられる。スメクタイトの中でも、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト及びスティブンサイトが好ましい。ケイ酸塩層の厚さは、例えば、0.4~1.0nmであり、アスペクト比(平面方向寸法の厚さに対する比)は、例えば、30~1000である。
【0034】
第4級アンモニウムカチオンは、下記式で表される構造を有する。
【化3】
【0035】
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換又は未置換の炭化水素基を示す。置換基としては、例えば、水酸基、カルボニル基、アルコキシ基、スルホニル基等が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよい。
【0036】
脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。脂肪族炭化水素基は脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環を有する基)であってもよい。脂肪族炭化水素基の炭素数は1以上であればよく、例えば、1~24又は1~18であってよい。脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、アダマンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの脂肪族炭化水素基の水素原子の一部は、上記置換基で置換されていてよい。
【0037】
芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素環を有する基である。芳香族炭化水素環は、式(1)のN原子に直接結合していてよく、脂肪族炭化水素基等を介して間接的に式(1)のN原子に結合していてもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基の水素原子の一部は、上記置換基で置換されていてよい。
【0038】
式(1)中、R~Rのうちの少なくとも1つは、炭素数8以上の脂肪族炭化水素基であり、R~Rのうちの少なくとも1つは、芳香族炭化水素基である。R~Rのうちの2つ以上が炭素数8以上の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であってもよいが、有機変性層状ケイ酸塩のポリオール中での分散性がより良好となり、より高い断熱性能(初期及び長期断熱性)が得られやすくなる観点では、R~Rのうちの1つが炭素数8以上の脂肪族炭化水素基であり、R~Rのうちの1つが芳香族炭化水素基であってよい。この場合、R~Rのうちの少なくとも1つは、炭素数が1~6の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0039】
第4級アンモニウムカチオンの具体例としては、ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムイオン、ドデシルベンジルジメチルアンモニウムイオン、テトラデシルベンジルジメチルアンモニウムイオン、及びオクタデシルベンジルジメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。有機変性層状ケイ酸塩に含まれる第4級アンモニウムカチオンは一種であっても複数種であってもよい。
【0040】
有機変性層状ケイ酸塩における第4級アンモニウムカチオンの吸着量は、25~90meq/100gである。本実施形態では、第4級アンモニウムカチオンの吸着量が上記範囲であることで、有機変性層状ケイ酸塩がポリオール中に良好に分散されている。上記第4級アンモニウムカチオンの吸着量は、より優れた分散性が得られる観点から、30meq/100g以上、35meq/100g以上、40meq/100g以上、50meq/100g以上、60meq/100g以上又は70meq/100g以上であってもよい。上記第4級アンモニウムカチオンの吸着量は、より優れた分散性が得られる観点から、85meq/100g以下、80meq/100g以下、70meq/100g以下又は60meq/100g以下であってもよい。これらの観点から、上記第4級アンモニウムカチオンの吸着量は、30~85meq/100g、35~80meq/100g、40~70meq/100g、40~60meq/100g、50~90meq/100g、50~70meq/100g、60~90meq/100g又は70~90meq/100gであってもよい。ポリオール組成物中では、上記範囲の量の第4級アンモニウムカチオンが、ケイ酸塩層(単位層)に吸着していてよい。なお、上記第4級アンモニウムカチオンの吸着量は、層状ケイ酸塩に吸着している第4級アンモニウムカチオンの量を示し、具体的には、有機変性層状ケイ酸塩から第4級アンモニウムカチオンを除いた部分([有機変性層状ケイ酸塩の質量]-[有機変性層状ケイ酸塩に吸着している第4級アンモニウムカチオンの質量])100gあたりの、有機変性層状ケイ酸塩に吸着している第4級アンモニウムカチオンの当量数(ミリグラム当量)を示す。
【0041】
上記第4級アンモニウムカチオンの吸着量の定量法としては、例えば、第4級アンモニウムカチオンの熱重量-示差熱(TG-DTA)測定により求められる重量減少量から算出する方法、有機元素分析により求められる炭素含有量から算出する方法、ガスクロマトグラフィー測定により定量する方法等が挙げられる。いずれの方法により測定される場合であっても測定値は略同一であるが、測定値に差が生じる場合には、有機元素分析により求められる炭素含有量から算出する方法によって算出される値を採用するものとする。
【0042】
有機変性層状ケイ酸塩は、より優れた分散性が得られる観点から、ケイ酸塩層間に無機金属イオン(例えば、層状ケイ酸塩の層間イオン由来の陽イオン)を含まないことが好ましい。ケイ酸塩層間に存在する無機金属イオン(例えば、層状ケイ酸塩の層間イオン由来の陽イオン)の吸着量は、好ましくは8meq/100g以下であり、より好ましくは5meq/100g以下であり、更に好ましくは2meq/100g以下である。本実施形態では、無機金属イオンに限らず、ケイ酸塩層間に存在する上記第4級アンモニウムカチオン以外の全て陽イオンの吸着量(総量)が上記範囲であってもよい。ケイ酸塩層間に含まれる陽イオンが上記第4級アンモニウムカチオンのみであってもよい。
【0043】
有機変性層状ケイ酸塩の配合量は、より高い断熱性能(初期及び長期断熱性)が得られやすくなる観点から、ポリオール100質量部を基準として、0.5質量部以上であってよく、1質量部以上であってもよい。有機変性層状ケイ酸塩の配合量は、ポリイソシアネートと混合しやすくなる観点から、ポリオール組成物の全質量を基準として、15質量部以下であってよく、10質量部以下又は8質量部以下であってもよい。これらの観点から、有機変性層状ケイ酸塩の配合量は、ポリオール100質量部を基準として、0.5~15質量部、1~10質量部又は1~8質量部であってよい。
【0044】
(添加剤)
添加剤としては、触媒、難燃剤、発泡剤、整泡剤等が挙げられる。
【0045】
触媒としては、本技術分野において公知である各種のウレタン化触媒、イソシアヌレート化触媒等を使用できる。ウレタン化触媒と、イソシアヌレート化触媒とを併用してもよい。
【0046】
ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン等のアミン化合物類、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール等のアルカノールアミン類などが挙げられる。これらのウレタン化触媒は、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
イソシアヌレート化触媒としては、例えば4級アンモニウム塩類、炭素数2~12のカルボン酸のアルカリ金属塩、アセルチアセトン、サリチルアルデヒド等のアルカリ金属塩、アミンのルイス酸錯体塩、金属触媒などが挙げられる。これらのイソシアヌレート化触媒は、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
触媒の配合量(含有量)は、ポリオール100質量部を基準として、0.1~20質量部であってよい。
【0049】
難燃剤としては、公知の難燃剤を使用できる。難燃剤は、好ましくは常温(例えば25℃)で液状である。難燃剤の具体例としては、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のリン酸エステル類、メトキシフェノキシシクロホスファゼン等のオルガノホスファゼン類などが挙げられる。
【0050】
難燃剤の配合量(含有量)は、ポリオール100質量部を基準として、0~100質量部であってよい。
【0051】
発泡剤は、例えば水である。水はイソシアネート基との反応で炭酸ガスを発生し、これにより発泡する。発泡剤として、化学発泡剤である水に加えて、物理発泡剤を使用することもできる。物理発泡剤は、炭化水素化合物、HFC類、HFO類、HCFO類等の、従来公知のものが使用できる。これらの物理発泡剤は、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。発泡剤自体の地球温暖化係数が低くなりやすい観点、及び、高い断熱性能(初期及び長期断熱性)が得られやすくなる観点から、HFO類及びHCFO類からなる群より選択される少なくとも一種と水とを併用することが特に好ましい。
【0052】
化学発泡剤の配合量は、ポリオール100質量部を基準として、0.1~10質量部であってよい。物理発泡剤の配合量は、ポリオール100質量部全質量を基準として、1~80質量部であってよい。
【0053】
整泡剤としては、本技術分野において公知である硬質ポリウレタンフォーム形成用の整泡剤を使用できる。整泡剤は、例えば、界面活性剤であり、有機シリコーン系界面活性剤等の非イオン系界面活性剤であってよい。整泡剤は、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
整泡剤として市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、モーメンティブ社製L5420、L5340、L6188、L6877、L6889、L6900、L6866、L6643、L6978、エボニック社製B8040、B8155、B8239、B8244、B8330、B8443、B8450、B8460、B8462、B8465、B8466、B8467、B8481、B8484、B8485、B8486、B8496、B8870、B8871、東レ・ダウコーニング社製SZ-1328、SZ-1642、SZ-1677、SH-193、エアープロダクツ社製DC-193、DC5598等が挙げられる。
【0055】
整泡剤の配合量は、ポリオール組成物の全質量を基準として、0.1~10質量%であってよい。
【0056】
ポリオール組成物は、上記の他に、硬質ポリウレタンフォームの形成用として公知である種々の添加剤(可塑剤、着色剤等)を含んでいてもよい。
【0057】
<ポリオール組成物の製造方法>
一実施形態のポリオール組成物の製造方法は、層状ケイ酸塩と、上記式(1)で表される第4級アンモニウムカチオンとを、水を含む液状媒体中で共存させることにより、層状ケイ酸塩中の層間イオンを該第4級アンモニウムカチオンに交換し、有機変性層状ケイ酸塩を得る工程(有機変性工程)と、有機変性層状ケイ酸塩をポリオールと混合する工程(混合工程)と、を含む。この方法では、有機変性工程において、陽イオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)が25~90meq/100gである層状ケイ酸塩を用いるとともに、第4級アンモニウムカチオンの配合量を、前記陽イオン交換容量から算出される前記層状ケイ酸塩中の層間イオン1.0当量に対し、1.0当量以上とする。この方法によれば、層状ケイ酸塩が良好に分散したポリオール組成物を得ることができる。この方法で得られるポリオール組成物は、例えば、上記実施形態のポリオール組成物である。
【0058】
ポリオール組成物の製造方法は、上記有機変性工程で使用される層状ケイ酸塩を準備する準備工程を更に含んでいてよい。
【0059】
以下、各工程について詳細に説明する。ただし、有機変性工程に用いられる層状ケイ酸塩及び第4級アンモニウムカチオン、混合工程に用いられる有機変性層状ケイ酸塩及びポリオールポリオール等、上述した内容と重複するものについては説明を省略する。
【0060】
(準備工程)
準備工程は、層間イオンとしてリチウムイオン(Li)を含む層状ケイ酸塩(以下、「Li型層状ケイ酸塩」という。)を150℃以上の温度で加熱処理する工程(加熱処理工程)を含んでいてよい。準備工程は、該加熱処理後のLi型層状ケイ酸塩を、アンモニアを含む水溶液で処理する工程(アンモニア処理工程)を更に含んでいてもよい。
【0061】
加熱処理工程では、脱水に伴い層間イオンであるリチウムイオンが固定化され、Li固定型層状ケイ酸塩が得られる。上記リチウムイオンの固定化は、リチウムイオンがケイ酸塩層中の八面体シート内の空席に移動することで生じると考えられており、加熱処理によって、Li型層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量(CEC)は減少する。加熱処理条件(加熱処理温度、加熱処理時間等)は、目的とするCECに応じて調整可能であるが、例えば、150~600℃で0.5~48時間加熱する条件であってよい。加熱処理は、多段階で行ってもよい。この場合、150℃以上の温度で加熱する段階を含めばよい。例えば、100~120℃で0.5~3時間の加熱処理を行った後に、150~400℃で1~48時間加熱処理を行ってもよい。
【0062】
アンモニア処理工程では、Li固定型層状ケイ酸塩のCECを上昇させることができる。CECが上昇する原因は定かではないが、加熱処理により固定されたLiのうちの一部が脱着し、ケイ酸塩層間に移動するためと考えられる。
【0063】
アンモニアを含む水溶液におけるアンモニアの含有量は、例えば、水溶液の全質量を基準として、1~22.4質量%であってよい。アンモニアを含む水溶液は、アンモニア及び水以外の成分を更に含んでいてもよい。具体的には、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒が挙げられる。極性有機溶媒の含有量は、例えば、水溶液の全質量を基準として、20~70質量%であってよい。アンモニアを含む水溶液の使用量は、例えば、処理されるLi固定型層状ケイ酸塩(加熱処理後のLi型層状ケイ酸塩)100質量部に対して、0.02~125質量部であってよい。
【0064】
アンモニア処理の方法は、アンモニアを含む水溶液をLi固定型層状ケイ酸塩に接触させることができる方法であればよい。例えば、Li固定型層状ケイ酸塩をアンモニアを含む水溶液に添加して混合液を得た後、該混合液を攪拌することにより、Li固定型層状ケイ酸塩のアンモニア処理を行ってよい。混合液の攪拌は、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー等を用いて行うことができる。混合液の攪拌は、例えば、100~1000rpmで0.5~24時間行ってよい。混合液の攪拌は、混合液を加熱しながら行ってもよい。攪拌時の混合液の温度は、例えば、5~80℃であってよい。
【0065】
上記準備工程(加熱処理工程及びアンモニア処理工程)は、本実施形態のポリオール組成物の製造方法とは別に実施されてもよい。換言すれば、ポリオール組成物の製造方法では、上記準備工程を実施することなく、予め上記方法で準備された層状ケイ酸塩を使用してもよい。
【0066】
(有機変性工程)
有機変性工程では、例えば、層状ケイ酸塩と第4級アンモニウムカチオンを含む有機変性剤とを、水を含む液状媒体中に添加することで、層状ケイ酸塩と第4級アンモニウムカチオンとを共存させ、イオン交換による有機変性を行う。この工程では、層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量に対して充分量(陽イオン交換容量から算出される層状ケイ酸塩中の層間イオン1.0当量に対し、1.0当量以上)の第4級アンモニウムカチオンが使用されるため、層状ケイ酸塩の層間イオンが略一様に第4級アンモニウムカチオンに交換される。その結果、例えば、第4級アンモニウムカチオンの吸着量が25~90meq/100gである、有機変性層状ケイ酸塩が得られる。
【0067】
層状ケイ酸塩に含まれる層間イオンは、交換性陽イオンとして知られる公知の金属イオンであってよい。層間イオンは、有機変性(イオン交換)の効率を高める観点から、Li、Na、Mg2+、K及びCa2+からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。上記層状ケイ酸塩は、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量は、ポリオールへの分散性により優れる有機変性層状ケイ酸塩が得られやすい観点から、25meq/100g以上、30meq/100g以上、35meq/100g以上、40meq/100g以上、50meq/100g以上、60meq/100g以上又は70meq/100g以上であってもよい。層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量は、ポリオールへの分散性により優れる有機変性層状ケイ酸塩が得られやすい観点から、90meq/100g以下、85meq/100g以下、80meq/100g以下、70meq/100g以下又は60meq/100g以下であってもよい。これらの観点から、層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量は、25~90meq/100g、30~85meq/100g、35~80meq/100g、40~70meq/100g、40~60meq/100g、50~90meq/100g、50~70meq/100g、60~90meq/100g又は70~90meq/100gであってもよい。層状ケイ酸塩の陽イオン交換容量は、例えば、Jornal of Ceramic Society of Japan、2008年、116巻、12号、p.1309-1313に準じた方法で測定することができる。
【0069】
有機変性剤は、例えば、第4級アンモニウム塩である。第4級アンモニウム塩における第4級アンモニウムカチオンの対イオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)などが挙げられる。有機変性剤は、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
有機変性剤は、第4級アンモニウムカチオンの配合量が、陽イオン交換容量(CEC)から算出される層状ケイ酸塩中の層間イオン1.0当量に対し、1.0当量以上となるように用いられる。例えば、第4級アンモニウムカチオンがヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリドであり、層状ケイ酸塩のCECが80meq/100gであり、層状ケイ酸塩の配合量が10gである場合、CECから算出される層状ケイ酸塩中の層間イオンのイオン当量は8ミリ当量と算出されるため、第4級アンモニウムカチオン(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムカチオン)の配合量は、8ミリ当量(3.17g)以上である。第4級アンモニウムカチオンの配合量に特に上限はないが、例えば、CECから算出される層状ケイ酸塩中の層間イオン1.0当量に対し、10.0当量以下であってよい。
【0071】
水を含む液状媒体は、水のみからなっていてよく、水以外の成分を更に含んでいてもよい。水以外の成分としては、極性有機溶媒が挙げられる。極性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、有機変性(イオン交換)の効率を高める観点から、エタノールを用いることが好ましい。極性有機溶媒の含有量は、有機変性(イオン交換)の効率を高める観点から、水100質量部に対して、25~250質量部であってよく、75~150質量部又は60~120質量部であってもよい。
【0072】
液状媒体は、水及び極性有機溶媒以外に、アンモニアを更に含んでいてもよい。層状ケイ酸塩としてリチウム固定型層状ケイ酸塩(又はそのアンモニア処理物)が用いられる場合には、液状媒体がアンモニアを含むことが好ましい。
【0073】
水を含む液状媒体の使用量は、有機変性(イオン交換)の効率を高める観点から、層状ケイ酸塩100質量部に対して、250~10000質量部であってよく、500~8000質量部又は1000~6000質量部であってもよい。
【0074】
有機変性工程では、層状ケイ酸塩と有機変性剤とを液状媒体中に添加して混合液を得た後、該混合液を攪拌してもよい。混合液の攪拌は、マグネチックスターラー、メカニカル撹拌機等を用いて行うことができる。混合液の攪拌は、例えば、50~1000rpmで0.5~48時間行ってよい。混合液の攪拌は、混合液を加熱しながら行ってもよい。攪拌時の混合液の温度は、例えば、5~80℃であってよい。
【0075】
有機変性工程後は、混合工程の前に、有機変性層状ケイ酸塩の洗浄等の処理を行ってよい。
【0076】
(混合工程)
混合工程では、有機変性層状ケイ酸塩をポリオールと混合してポリオール中に分散させる。混合は、例えば、マグネチックスターラー、メカニカル撹拌機、メカノケミカル撹拌機、自転公転式撹拌機、攪拌式ホモジナイザー、高圧式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、プラネタリーミキサー等を用いて行うことができる。混合時間は、例えば、0.5~48時間であってよい。混合は、混合液を加熱しながら行ってもよい。攪拌時の混合液の温度は、例えば、5~100℃であってよい。
【0077】
混合工程では、少なくとも有機変性層状ケイ酸塩とポリオールとを混合すればよく、これら以外の成分を更に混合成分として追加してもよい。有機変性層状ケイ酸塩及びポリオール以外の成分としては、上述した硬質ポリウレタンフォームの形成用として公知の添加剤(触媒、難燃剤、発泡剤、整泡剤等)であってよい。添加剤の混合順序は特に限定されず、有機変性層状ケイ酸塩とポリオールとを混合して混合液を調製した後に、該混合液と添加剤とを混合してよく、有機変性層状ケイ酸塩とポリオールと添加剤とを略同時に混合してもよい。また、例えば、添加剤を複数回に分けて添加(混合)してもよい。添加剤の一部(例えば物理発泡剤)を添加するタイミングが、硬質ポリウレタンフォームの形成直前であってもよい。
【0078】
<硬質ポリウレタンフォーム>
一実施形態の硬質ポリウレタンフォームは、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物(例えば、上記実施形態のポリオール組成物とポリイソシアネート又はポリイソシアネート組成物との混合物)の反応発泡体である。ここで、反応発泡体とは、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物中のポリオールとポリイソシアネートとが反応してポリウレタンを形成するとともに発泡することで得られる発泡体を意味する。この硬質ポリウレタンフォームでは、上記実施形態のポリオール組成物における層状ケイ酸塩(有機変性層状ケイ酸塩)の優れた分散性に起因して、初期及び長期断熱性に優れる傾向がある。
【0079】
硬質ポリウレタンフォームは、例えば、上記実施形態のポリオール組成物とポリイソシアネート又はポリイソシアネート組成物とを撹拌混合することで得られた混合物(1液型組成物)を、金型等に導入することにより得ることができる。硬質ポリウレタンフォームの製造方法は従来公知の方法であってよい。
【0080】
ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートを含む組成物である。ポリイソシアネートは、イソシアネート基を複数有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(P-MDI)、MDI又はP-MDIの各種変性体(ウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ヌレート変性体、ビュウレット変性体等)などが挙げられる。ポリイソシアネートは一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートの他に、硬質ポリウレタンフォームの形成用として公知である種々の添加剤(可塑剤、着色剤等)を更に含んでいてもよい。
【0082】
上記硬質ポリウレタンフォームは、例えば、建築物の屋根、壁、地下構造物、橋梁の床板、水槽、タンク、冷蔵庫等の筐体内部などに好適に用いることができる。
【0083】
硬質ポリウレタンフォーム中の有機変性層状ケイ酸塩の含有量は、初期及び長期断熱性の向上効果が得られやすい観点から、硬質ポリウレタンフォームの全質量を基準として、0.1~10質量%、0.2~8質量%又は0.4~5質量%であってよい。同様の観点から、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物中の有機変性層状ケイ酸塩の含有量は、硬質ポリウレタンフォーム形成性組成物の全質量を基準として、0.1~10質量%、0.2~8質量%又は0.4~5質量%であってよい。
【実施例0084】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
実施例及び比較例では、下記材料を用いた。
・ベンゲルA(株式会社ホージュン製、商品名、Na型モンモリロナイト、CEC=86meq/100g)
・クニピアF(クニミネ工業株式会社製、商品名、Na型モンモリロナイト、CEC=119meq/100g)
・クニピアM(クニミネ工業株式会社製、商品名、Li型モンモリロナイト、CEC=119meq/100g)
・スメクトンSA(クニミネ工業株式会社製、商品名、Na型合成サポナイト、CEC=73meq/100g)
・スメクトンST(クニミネ工業株式会社製、商品名、Na型合成スティブンサイト、CEC=68meq/100g)
・ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(シグマアルドリッチ社製)
・テレフタル酸系ポリエステルポリオール(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製、商品名:マキシモール RFK-556、グリコール成分としてエチレングリコール及びジエチレングリコールを含む)
【0086】
<実施例1>
(有機変性工程)
水とエタノールの混合液(水:エタノール=1:1)40mL中に、層状ケイ酸塩(ベンゲルA)を0.5gと、CECから算出される層状ケイ酸塩中の層間イオン(Na)のイオン当量に対する当量比で1.1倍量の有機変性剤(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、0.185g)と、を添加した。次いで、得られた分散液を24時間攪拌した。次いで、混合液中の固形分を取り出し、水とエタノールの混合液(水:エタノール=1:1)で洗浄した。洗浄後の固形分を50℃で24時間乾燥させた。以上の操作により、層状ケイ酸塩(ベンゲルA)中の層間イオン(Na)を有機変性剤の有機イオン(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウム)に交換し、実施例1の有機変性層状ケイ酸塩を得た。得られた有機変性層状ケイ酸塩における有機イオン吸着量(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムイオンの吸着量)は82meq/100gであり、回折角(2θ)は4.98deg.であった。
【0087】
なお、本実施例中の有機イオン吸着量は、有機元素分析により求められる有機物含有量から算出した。具体的には、有機元素分析装置(Elementar社製、商品名:varioMACROcube)を用いて、乾燥状態の有機変性層状ケイ酸塩中の炭素含有量を定量した。次いで、測定されたC元素含有量を用いてアンモニウムイオンの含有量を算出し、層状ケイ酸塩(有機変性層状ケイ酸塩からアンモニウムイオンを除いた部分)100gあたりの、アンモニウムイオン当量数(meq/100g)を求めた。
【0088】
また、本実施例中の回折角(2θ)は、X線回折装置(株式会社リガク社製、商品名:MiniFlex-600)を用いて、以下の条件で測定した。
[条件]
・走査範囲2°~70°
・ステップ0.01°走査速度2°/分
・X線波長CuKα 1.541nm
【0089】
(混合工程)
上記で得られた有機変性層状ケイ酸塩0.3gを、芳香族ポリエステルポリオール19.7gと混合し、24時間攪拌することにより、実施例1のポリオール組成物を得た。
【0090】
<比較例1>
層状ケイ酸塩として、ベンゲルAに代えてクニピアFを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機変性層状ケイ酸塩及びポリオール組成物を得た。有機変性層状ケイ酸塩における有機イオン吸着量(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムのイオンの吸着量)は107meq/100gであり、回折角(2θ)は4.39deg.であった。
【0091】
<比較例2>
層状ケイ酸塩として、ベンゲルAに代えてクニピアMを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の有機変性層状ケイ酸塩及びポリオール組成物を得た。有機変性層状ケイ酸塩における有機イオン吸着量(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムのイオンの吸着量)は105meq/100gであり、回折角(2θ)は4.41deg.であった。
【0092】
<実施例2>
クニピアMを110℃で1時間加熱した後、235℃で1.5時間更に加熱することで、クニピアMの加熱処理を行った。加熱処理後のクニピアMの陽イオン交換容量は、29meq/100gであった。なお、陽イオン交換容量の測定は、Jornal of Ceramic Society of Japan、2008年、116巻、12号、p.1309-1313に準じた方法により行った。
【0093】
次いで、上記加熱処理後のクニピアMのアンモニア処理を行った。具体的には、水とエタノールの混合液(水:エタノール=1:1)20mL中に、アンモニア水(濃度:28質量%)0.5mLと、上記加熱処理後のクニピアM0.5gとを加えて、70℃で1時間攪拌し、第1の混合液を得た。この際、攪拌速度は600rpmとした。ここで、実施例2と同様にしてアンモニア処理後のクニピアMの陽イオン交換容量を測定したところ、陽イオン交換容量は52meq/100gであった。
【0094】
次いで、水とエタノールの混合液(水:エタノール=1:1)10mLに、CECから算出される層状ケイ酸塩(上記アンモニア処理後のクニピアM)中の層間イオン(Li)のイオン当量に対する当量比で2.5倍量の有機変性剤(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、0.259g)を加えて添加液を調製した。得られた添加液を、上記第1の混合液(水とエタノールとアンモニアとクニピアMとの混合液)に加えて、70℃で1時間攪拌し、第2の混合液を得た。次いで、第2の混合液中の固形分を取り出し、水とエタノールの混合液(水:エタノール=1:1)で洗浄した。洗浄後の固形分を50℃で24時間乾燥させることにより、有機変性層状ケイ酸塩を得た。得られた有機変性層状ケイ酸塩における有機イオン吸着量(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムイオンの吸着量)は51meq/100gであり、回折角(2θ)は6.11deg.であった。
【0095】
次いで、上記で得られた有機変性層状ケイ酸塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のポリオール組成物を得た。
【0096】
<実施例3>
ベンゲルAに代えてスメクトンSAを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の有機変性層状ケイ酸塩及びポリオール組成物を得た。有機変性層状ケイ酸塩における有機イオン吸着量(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムイオンの吸着量)は77meq/100gであり、回折角(2θ)は5.27deg.であった。
【0097】
<実施例4>
ベンゲルAに代えてスメクトンSTを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の有機変性層状ケイ酸塩及びポリオール組成物を得た。有機変性層状ケイ酸塩における有機イオン吸着量(ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムイオンの吸着量)は66meq/100gであり、回折角(2θ)は5.33deg.であった。
【0098】
<評価1>
(分散性評価)
実施例及び比較例の組成物における有機変性層状ケイ酸塩の分散性を、組成物のSAXS(X線小角散乱)チャートにおける有機変性層状ケイ酸塩の層間距離に由来するピーク(P1)の検出有無と形状に基づき評価した。該ピークは、ポリオールと混合前の有機変性層状ケイ酸塩のXRDチャートにおける回折角(2θ)よりも低角側に観察される単一ピークである。該ピーク(P1)がシャープで明瞭であるほど、有機変性層状ケイ酸塩の積層構造が維持されており、有機変性層状ケイ酸塩の分散性が低いことを意味する。反対に、該ピーク(P1)が不明瞭でブロードであるほど、有機変性層状ケイ酸塩の積層構造の規則性が崩れており、有機変性層状ケイ酸塩の分散性が高いことを意味する。
【0099】
具体的には、まず、小角X線回折装置(株式会社リガク製、商品名:SmartLab)を用いて、以下の条件で測定することにより、実施例及び比較例の組成物のSAXSチャートを取得した。
[条件]
・走査範囲0.5°~8°
・ステップ0.02°走査速度0.2°/分
・X線波長CuKα 1.541nm
次いで、以下の基準に基づき、有機変性層状ケイ酸塩の分散性を評価した。結果を表1に示す。なお、評価値が高いほど分散性に優れることを示す。
3:SAXSチャートにおいてピーク(P1)が観察(検出)されなかった。
2:ピーク(P1)は検出されるが形状がブロードであり、ピークトップ位置が不明瞭であった。
1:ピーク(P1)が明確に検出され、ピークトップ位置を特定可能であった。
【0100】
(分散安定性評価)
実施例及び比較例の組成物における有機変性層状ケイ酸塩の分散安定性を、以下の方法で評価した。
まず、内径13mmのガラス管にポリオール組成物を液面高さ100mmまで充填し、23±2℃の恒温室で静置保管した。1週間保管後、ポリオール組成物下層部と上層部における有機変性ケイ酸塩の濃度勾配、及び沈殿物の有無を目視で確認した。なお、「ポリオール組成物下層部」とはガラス管底面部から高さ50mmまでの部分を指し、「上層部」とは高さ50mmから液面最上部までの部分を指す。
評価基準を以下に示し、結果を表1に示す。なお、評価値が高いほど分散安定性に優れる。
3:上層部と下層部の透明度(濃度)に視認可能な差がなく、沈殿物も生じていない。
2:上層部と下層部の透明度(濃度)に視認可能な程度に差があり、有機変性ケイ酸塩が下層部に偏っていることが示唆されるが、目視可能な沈殿物は生じていない。
1:上層部と下層部の透明度(濃度)に視認可能な程度に差があり、ガラス管底面部に視認可能な沈殿物が3mm以上の高さまで堆積している。
【0101】
【表1】
【0102】
<実施例5>
300mLセパラブルフラスコに、下記ポリオールAと下記ポリオールBとを投入した後、上記実施例2で合成した有機変性層状ケイ酸塩(表2中、「有機変性層状ケイ酸塩(1)」)を投入し、系内の温度を70℃に調整しながら3500rpmで30分間撹拌した。これにより、有機変性層状ケイ酸塩がポリオール(ポリオールAとポリオールBとの混合液)に分散してなる混合液を得た。次いで、得られた混合液の液温を30℃以下に冷却した後、該混合液に、難燃剤、整泡剤、ウレタン化触媒、三量化触媒、及び、水を加え、15℃~30℃の液温を維持しながら300rpmで5分間撹拌した。これにより、実施例5のポリオール組成物(表3中、「ポリオール組成物(1)」)を得た。各成分の配合量は表2に記載のとおりであり、使用したポリオールA、ポリオールB、整泡剤及び触媒の詳細は以下のとおりである。なお、表2に示す配合量の単位は質量部である。
・ポリオールA:マキシモールRFK-505(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製、フタル酸系ポリエステルポリオール、水酸基価250mgKOH/g)
・ポリオールB:マキシモールRFK-556(エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製、フタル酸系ポリエステルポリオール、水酸基価250mgKOH/g)
・難燃剤:TMCPP(第八化学工業社製、トリス(クロロプロピル)ホスフェート)
・整泡剤:NIAX SILICONE L-6978(モメンティブ社製)
・ウレタン化触媒:DM70(東ソー株式会社製、イミダゾール系触媒)
・三量化触媒:TOYOCAT TRX (東ソー株式会社製、四級アンモニウム塩)
【0103】
<比較例3>
実施例2で合成した有機変性層状ケイ酸塩に代えて、上記比較例1で合成した有機変性層状ケイ酸塩(表2中、「有機変性層状ケイ酸塩(2)」)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして比較例3のポリオール組成物(表3中、「ポリオール組成物(2)」)を得た。
【0104】
<比較例4>
300mLセパラブルフラスコに、ポリオールA、ポリオールB、難燃剤、整泡剤、ウレタン化触媒、三量化触媒、及び、水を加え、15℃~30℃の液温を維持しながら300rpmで5分間撹拌した。これにより、比較例4のポリオール組成物(表3中、「ポリオール組成物(3)」)を得た。各成分の配合量は表2に記載のとおりであり、使用したポリオールA、ポリオールB、整泡剤及び触媒の詳細は実施例5と同じである。
【0105】
【表2】
【0106】
<評価2>
(硬質ポリウレタンフォームの作製)
実施例5及び比較例3~4のポリオール組成物を用いてポリウレタンフォームを作製した。具体的には、まず、蓋を備えたアルミ製モールド(モールド内寸:高さ250mm、幅250mm、厚み50mm)を恒温槽内で60℃に調整した。次いで、実施例5のポリオール組成物と物理発泡剤であるHFO-1233zd(Solstice LBA、ハネウェル社製)とを、表2に示す質量比率で混合した。次いで、得られた混合液を20℃に調整して500mLのポリプロピレン製のカップに投入し、ここに、別途20℃に調整したポリイソシアネート(ミリオネートMR-200、東ソー社製ポリメリックMDI、NCO含量31質量%)を投入してラボミキサーを用いて6000rpmで3秒間混合した。この際、ポリイソシアネートの投入量は、イソシアネート指数が200となるように調整した。配合成分の全量を基準とする有機変性層状ケイ酸塩の含有量は0.4質量%であった。次いで、得られた混合液約133g(133±2g)を上記モールド内に投入し、直ちに蓋をして60℃恒温槽内で20分間加熱することで反応させ、発泡及び硬化させた。これにより、直方体状の硬質ポリウレタンフォームを得た。得られた硬質ポリウレタンフォームは、反応終了後直ちに型から取り出し、フォーム密度及びコア密度の測定、並びに、熱伝導率評価に使用した。
【0107】
(フォーム密度及びコア密度の測定)
脱型直後の硬質ポリウレタンフォームの質量と寸法を測定し、JIS A9521に従って、硬質ポリウレタンフォームのフォーム密度を算出した。次いで、直ちに6面全てのスキン層を切り落とすことにより、硬質ポリウレタンフォームの中心部からコアパネルを切り出し、コアパネルの質量及び寸法を測定してコア密度を算出した。結果を表3に示す。なお、コアパネルの寸法は、200mm×200mm×14mmであった。
【0108】
(熱伝導率の測定)
硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率の経時測定により、断熱性能の経時変化量を評価した。具体的には、JIS A1412に示される熱流計法により、英弘精機社製オートλHC-074/314を用いて平均温度23℃で、切り出し直後の上記コアパネルの熱伝導率λ(初期値)、及び、保管試験後の上記コアパネルの熱伝導率λを測定した。保管試験は、初期値測定後のコアパネルを23℃/50%R.H.の恒温恒湿室に50日間保管することにより行った。なお、本試験は、JISA1486に示されるスケーリング係数の考えに基づく促進試験であり、上記14mm厚のコアパネルの50日間経時は、50mm厚のコアパネルの約1.7年間経時に相当する。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】