(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023110951
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230803BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230803BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20230803BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20230803BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20230803BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230803BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230803BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H01L29/78 657A
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/86 301F
H01L29/86 301M
H01L29/86 301D
H01L29/48 F
H01L29/48 M
H01L29/48 D
H01L29/78 652M
H01L29/78 652S
H01L29/48 P
H01L29/86 301P
H01L29/78 658F
H01L21/28 301S
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012507
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】馬場 正和
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
【テーマコード(参考)】
4M104
5F048
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB02
4M104BB03
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4M104GG03
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4M104GG18
5F048AA05
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5F048AC06
5F048AC10
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5F048BF16
5F048BF17
5F048BF18
5F048CB07
(57)【要約】
【課題】寄生ダイオードの順方向特性劣化を抑制するか、または寄生ダイオードの順方向特性劣化の抑制および短絡耐量の向上と、内蔵SBDの低抵抗化と、を実現できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】トレンチ型SBD30は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間のショットキートレンチ31と、ショットキートレンチ31を埋め込む導電膜32と、で構成される。導電膜32は、材料の異なる第1,2金属膜32a,32bで構成される。第1金属膜32aは、ショットキートレンチ31の側壁においてn型電流拡散領域3にショットキー接触するチタン膜、ニッケル膜またはタングステン膜である。第2金属膜32bは、第1金属膜32aよりも電気抵抗率の低いアルミニウム膜またはタングステン膜であり、第1金属膜32aよりもショットキートレンチ31の中央部側に埋め込まれ、深さ方向Zに直線状に延在する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板のおもて面と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板のおもて面と前記第2半導体領域との間に選択的に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、
前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達する複数のトレンチと、
複数の前記トレンチのうちの一部の第1トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
複数の前記トレンチのうちの、前記第1トレンチと異なる第2トレンチに埋め込まれた、材料の異なる複数の金属膜を積層してなる導電膜と、
前記第2半導体領域、前記第3半導体領域および前記導電膜に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
前記導電膜と前記第1半導体領域との接合面に形成されるショットキー障壁の整流性を利用したショットキーバリアダイオードと、
を備え、
前記導電膜は、
前記第2トレンチの内壁に沿って設けられ、前記第2トレンチの内壁で前記第1半導体領域にショットキー接触する第1金属膜と、
前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側に設けられた、前記第1金属膜よりも電気抵抗率の低い第2金属膜と、を有し、
前記第1金属膜はニッケル膜であり、
前記第2金属膜はタングステン膜であることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板のおもて面と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板のおもて面と前記第2半導体領域との間に選択的に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、
前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達する複数のトレンチと、
複数の前記トレンチのうちの一部の第1トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
複数の前記トレンチのうちの、前記第1トレンチと異なる第2トレンチに埋め込まれた、材料の異なる複数の金属膜を積層してなる導電膜と、
前記第2半導体領域、前記第3半導体領域および前記導電膜に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
前記導電膜と前記第1半導体領域との接合面に形成されるショットキー障壁の整流性を利用したショットキーバリアダイオードと、
を備え、
前記導電膜は、
前記第2トレンチの内壁に沿って設けられ、前記第2トレンチの内壁で前記第1半導体領域にショットキー接触する第1金属膜と、
前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側に設けられた、前記第1金属膜よりも電気抵抗率の低い第2金属膜と、
前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側に設けられた、前記第2金属膜よりも融点の高い第3金属膜と、を有することを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第3金属膜は、前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側において、前記第2トレンチの底面側に埋め込まれ、
前記第2金属膜は、前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側において、前記第3金属膜よりも前記第1電極側に埋め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第1金属膜は、チタン膜またはニッケル膜であり、
前記第2金属膜は、アルミニウム膜であり、
前記第3金属膜は、タングステン膜であることを特徴とする請求項2または3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1金属膜は、前記第2トレンチの内壁において前記第1半導体領域の上にのみ設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第1金属膜の厚さは、前記第2トレンチの底面部分で前記第2トレンチの側壁部分よりも厚いことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第1金属膜の厚さは、100nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記第2トレンチの内部に複数の前記金属膜を堆積して前記導電膜を形成する堆積工程を含み、
前記堆積工程では、前記導電膜の複数の前記金属膜のうちのタングステン膜を化学気相成長で形成することを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記第2トレンチの内部に複数の前記金属膜を堆積して前記導電膜を形成する堆積工程を含み、
前記堆積工程では、前記導電膜の複数の前記金属膜のうちのアルミニウム膜をリフロースパッタ法で形成することを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素(SiC)を半導体材料として用いた半導体装置(以下、炭化珪素半導体装置とする)として、トレンチゲート型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)と同一の半導体基板(半導体チップ)に、トレンチ型ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)を内蔵した装置が知られている。
【0003】
同一の半導体基板にSBDを内蔵したMOSFETでは、MOSFETのスイッチング動作時に、MOSFETのベース領域とドリフト領域とのpn接合で形成される寄生ダイオード(ボディーダイオード)よりも順方向電圧の低い内蔵SBDが優先的に動作する。このため、寄生ダイオードの逆回復損失が低減される。また、寄生ダイオードの順方向通電時に発生する積層欠陥の拡張が内蔵SBD動作に伴う電圧分布によって抑制され、寄生ダイオードの順方向特性劣化が抑制される。
【0004】
図9は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図9に示す従来の炭化珪素半導体装置110は、炭化珪素からなる同一の半導体基板140にトレンチ型SBD130を内蔵したトレンチゲート型MOSFETであり、半導体基板140のおもて面側に、MOSFETのゲート電極109を埋め込んだトレンチ(以下、ゲートトレンチとする)107と、トレンチ型SBD130の導電膜132を埋め込んだトレンチ(以下、ショットキートレンチとする)131と、を備える。
【0005】
MOSFETのソース電極112は、半導体基板140のおもて面に設けられたニッケルシリサイド(NiSi)膜121、窒化チタン(TiN)膜122、チタン(Ti)膜123およびアルミニウム(Al)膜124で構成される。ニッケルシリサイド膜121は、半導体基板140のおもて面の、層間絶縁膜111のコンタクトホールに露出された部分に設けられ、n+型ソース領域105およびp++型コンタクト領域106にオーミック接触している。窒化チタン膜122は、層間絶縁膜111の表面のみを覆う。
【0006】
チタン膜123は、ニッケルシリサイド膜121および窒化チタン膜122を覆う。アルミニウム膜124は、層間絶縁膜111のコンタクトホールに埋め込まれて、チタン膜123およびニッケルシリサイド膜121を介してn+型ソース領域105およびp++型コンタクト領域106に電気的に接続されている。符号101,102,104,108,113,114は、それぞれMOSFETのn+型ドレイン領域、n-型ドリフト領域、p型ベース領域、ゲート絶縁膜、p+型領域およびドレイン電極である。
【0007】
トレンチ型SBD130は、ショットキートレンチ131と、このショットキートレンチ131の内部に埋め込まれた導電膜132と、を備える。トレンチ型SBD130は、ショットキートレンチ131の両側壁において導電膜132とn型電流拡散領域103との接合面133(二点鎖線の円で囲む2箇所)に形成されるショットキー障壁の整流性を利用したダイオードである。導電膜132は単層のチタン膜であり、ソース電極112を構成するチタン膜123およびアルミニウム膜124に接して電気的に接続されている。
【0008】
内蔵SBDを有する従来のトレンチゲート型MOSFETとして、互いに隣り合うゲートトレンチ間に設けられたショットキートレンチの側壁でドリフト領域にショットキー接触する金属層と、ショットキートレンチを充填するソース電極と、を備えた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。下記特許文献1では、ドリフト領域とショットキー接触する金属層の材料がチタン、ニッケル、金、タングステン、白金またはクロム等であり、ソース電極の材料がアルミニウムであることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の炭化珪素半導体装置110(
図9参照)では、ショットキートレンチ131に埋め込む導電膜132の材料にショットキー障壁の低いチタンまたはニッケル(Ni)などの単一金属を用いることで、トレンチ型SBD130を動作しやすくして、MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化を抑制している。しかしながら、チタンやニッケルは、MOSFETの一般的な電極材料であるアルミニウム(Al)等と比べて抵抗率が高い。トレンチ型SBD130の電流経路がショットキートレンチ131によって深さ方向に長くなっていることで、トレンチ型SBD130が高抵抗になる虞がある。
【0011】
また、ショットキートレンチ131に埋め込む導電膜132の材料にショットキー障壁の低いチタンやニッケルを用いると、MOSFETの短絡耐量が小さくなることが確認されている。一方、MOSFETの短絡耐量を大きくするために導電膜132の材料にチタンおよびニッケル以外の金属を用いると、トレンチ型SBD130のショットキー特性が低くなってしまう。このため、MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化の抑制と、MOSFETの短絡耐量の向上と、トレンチ型SBD130の低抵抗化と、を両立させることが難しい。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、同一の半導体基板にSBDを内蔵した炭化珪素半導体装置であって、寄生ダイオードの順方向特性劣化を抑制するか、または寄生ダイオードの順方向特性劣化の抑制および短絡耐量の向上を実現するとともに、内蔵SBDを低抵抗化することができる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素からなる半導体基板の内部に、第1導電型の第1半導体領域が設けられている。前記半導体基板のおもて面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型の第2半導体領域が設けられている。前記半導体基板のおもて面と前記第2半導体領域との間に、第1導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。複数のトレンチが前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達する。複数の前記トレンチのうちの一部の第1トレンチの内部に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられている。複数の前記トレンチのうちの、前記第1トレンチと異なる第2トレンチに、導電膜が埋め込まれている。前記導電膜は、材料の異なる複数の金属膜を積層してなる。
【0014】
第1電極は、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域および前記導電膜に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の裏面に設けられている。前記導電膜と前記第1半導体領域との接合面に形成されるショットキー障壁の整流性を利用したショットキーバリアダイオードが設けられている。前記導電膜は、第1金属膜および第2金属膜を有する。前記第1金属膜は、前記第2トレンチの内壁に沿って設けられ、前記第2トレンチの内壁で前記第1半導体領域にショットキー接触する。前記第2金属膜は、前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側に設けられている。前記第2金属膜は、前記第1金属膜よりも電気抵抗率が低い。前記第1金属膜はニッケル膜である。前記第2金属膜はタングステン膜である。
【0015】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、炭化珪素からなる半導体基板の内部に、第1導電型の第1半導体領域が設けられている。前記半導体基板のおもて面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型の第2半導体領域が設けられている。前記半導体基板のおもて面と前記第2半導体領域との間に、第1導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。複数のトレンチが前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達する。複数の前記トレンチのうちの一部の第1トレンチの内部に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられている。複数の前記トレンチのうちの、前記第1トレンチと異なる第2トレンチに、導電膜が埋め込まれている。前記導電膜は、材料の異なる複数の金属膜を積層してなる。
【0016】
第1電極は、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域および前記導電膜に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の裏面に設けられている。前記導電膜と前記第1半導体領域との接合面に形成されるショットキー障壁の整流性を利用したショットキーバリアダイオードが設けられている。前記導電膜は、第1金属膜、第2金属膜および第3金属膜を有する。前記第1金属膜は、前記第2トレンチの内壁に沿って設けられ、前記第2トレンチの内壁で前記第1半導体領域にショットキー接触する。前記第2金属膜および前記第3金属膜は、前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側に設けられている。前記第2金属膜は、前記第1金属膜よりも電気抵抗率が低い。前記第3金属膜は、前記第2金属膜よりも融点が高い。
【0017】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3金属膜は、前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側において、前記第2トレンチの底面側に埋め込まれている。前記第2金属膜は、前記第1金属膜よりも前記第2トレンチの中央部側において、前記第3金属膜よりも前記第1電極側に埋め込まれていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1金属膜は、チタン膜またはニッケル膜である。前記第2金属膜は、アルミニウム膜である。前記第3金属膜は、タングステン膜であることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1金属膜は、前記第2トレンチの内壁において前記第1半導体領域の上にのみ設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1金属膜の厚さは、前記第2トレンチの底面部分で前記第2トレンチの側壁部分よりも厚いことを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1金属膜の厚さは、100nm以上200nm以下であることを特徴とする。
【0022】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、前記第2トレンチの内部に複数の前記金属膜を堆積して前記導電膜を形成する堆積工程を含む。前記堆積工程では、前記導電膜の複数の前記金属膜のうちのタングステン膜を化学気相成長で形成することを特徴とする。
【0023】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、前記第2トレンチの内部に複数の前記金属膜を堆積して前記導電膜を形成する堆積工程を含む。前記堆積工程では、前記導電膜の複数の前記金属膜のうちのアルミニウム膜をリフロースパッタ法で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、寄生ダイオードの順方向特性劣化を抑制するか、または寄生ダイオードの順方向特性劣化の抑制および短絡耐量の向上を実現するとともに、内蔵SBDを低抵抗化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図3】
図1のトレンチ型SBDの別例を示す断面図である。
【
図4】
図1のトレンチ型SBDの別例を示す断面図である。
【
図5】
図1のトレンチ型SBDの逆回復時の動作を示す説明図である。
【
図6】
図9のトレンチ型SBDの逆回復時の動作を示す説明図である。
【
図7】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図8】
図7のトレンチ型SBDの別例を示す断面図である。
【
図9】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素(SiC)半導体装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図1には、
図2の活性領域51の状態を示す。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図2には、ゲートトレンチ7およびショットキートレンチ31のレイアウトを示す。
図2には、ゲート絶縁膜8を図示省略する。
図3,4は、
図1のトレンチ型SBDの別例を示す断面図である。
【0028】
図1,2に示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10は、炭化珪素からなる同一の半導体基板(半導体チップ)40にトレンチ型SBD30を内蔵したトレンチゲート構造の縦型MOSFETである。活性領域51において半導体基板40のおもて面側に、MOSFETのトレンチゲート構造を構成するゲート電極9を埋め込んだトレンチ(ゲートトレンチ:第1トレンチ)7と、トレンチ型SBD30を埋め込んだトレンチ(ショットキートレンチ:第2トレンチ)31と、が設けられている。
【0029】
活性領域51は、MOSFETがオン状態のときに主電流(ドリフト電流)が流れる領域であり、MOSFETの複数の単位セル(素子の機能単位)が隣接して配置される。
図1には、活性領域51の複数の単位セルのうちの一部を示す。エッジ終端領域52は、活性領域51と半導体基板40の端部(チップ端部)との間の領域であり、活性領域51の周囲を囲み、半導体基板40のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する。耐圧とは、炭化珪素半導体装置10が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0030】
エッジ終端領域52には、フィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)や接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)構造等の耐圧構造が配置される。トレンチ型SBD30は、p++型コンタクト領域6、p型ベース領域(第2半導体領域)4およびp+型領域13と、n型電流拡散領域3、n-型ドリフト領域(第1半導体領域)2およびn+型ドレイン領域1とのpn接合で形成される寄生ダイオード(ボディーダイオード)の順方向特性劣化を防止する機能を有する。
【0031】
半導体基板40は、n+型出発基板41のおもて面上に、n-型ドリフト領域2およびp型ベース領域4となる各炭化珪素層42,43を順にエピタキシャル成長させてなる。半導体基板40のp型炭化珪素層43側の主面をおもて面とし、n+型出発基板41側の主面を裏面とする。半導体基板40のおもて面側に、トレンチゲート構造のMOSゲートが設けられている。MOSゲートは、p型ベース領域4、n+型ソース領域(第3半導体領域)5、p++型コンタクト領域6、ゲートトレンチ7、ゲート絶縁膜8およびゲート電極9で構成される。
【0032】
n+型出発基板41は、n+型ドレイン領域1である。n-型ドリフト領域2は、n-型炭化珪素層42の、後述するp+型領域13および後述するn型電流拡散領域3を除く部分であり、p+型領域13およびn型電流拡散領域3とn+型出発基板41との間に、これらの領域に接して設けられている。p型ベース領域4は、p型炭化珪素層43の、後述するn+型ソース領域5および後述するp++型コンタクト領域6を除く部分であり、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域2との間に設けられている。
【0033】
n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、半導体基板40のおもて面とp型ベース領域4との間にそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、p型ベース領域4に接し、かつ半導体基板40のおもて面に露出されている。p++型コンタクト領域6は設けられていなくてもよい。p++型コンタクト領域6が設けられていない場合、p++型コンタクト領域6に代えて、p型ベース領域4が半導体基板40のおもて面に露出される。
【0034】
n-型ドリフト領域2とp型ベース領域4との間に、n-型ドリフト領域2およびp型ベース領域4に接して、n型電流拡散領域3が設けられている。n型電流拡散領域3は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)である。n型電流拡散領域3は、半導体基板40のおもて面に平行な方向にゲートトレンチ7および後述するショットキートレンチ31に隣接し、これらの底面よりもn+型ドレイン領域1側に深い位置に達する。
【0035】
p+型領域13は、ゲートトレンチ7の底面よりもn+型ドレイン領域1側に深い位置に、p型ベース領域4と離れて複数設けられている。各p+型領域13は、それぞれ深さ方向Zに異なるゲートトレンチ7の底面に対向する。p+型領域13は、ゲートトレンチ7の底面に露出されていてもよい。ゲートトレンチ7の底面に露出とは、ゲートトレンチ7の底面に対向する位置でゲートトレンチ7の底面の周囲を囲むように設けられ、ゲートトレンチ7の底面でゲート絶縁膜8に接することである。
【0036】
上述したようにp
+型領域13はゲートトレンチ7の底面よりもn
+型ドレイン領域1側に深い位置に達していればよく、p
+型領域13の深さは種々変更可能である。例えば、p
+型領域13は、n型電流拡散領域3よりも深い位置に達して(
図1参照)、もしくはn
+型ドレイン領域1側にn型電流拡散領域3と同じ深さで終端して(不図示)n
-型ドリフト領域2に接するか、またはn
+型ドレイン領域1側にn型電流拡散領域3よりも浅い位置で終端して、n型電流拡散領域3に周囲を囲まれてもよい(不図示)。
【0037】
p+型領域13は、図示省略する部分でソース電極(第1電極)12に電気的に接続されており、MOSFETのオフ時に空乏化して、ゲートトレンチ7の底面にかかる電界を緩和させる機能を有する。n型電流拡散領域3は設けられていなくてもよい。n型電流拡散領域3が設けられていない場合、p型ベース領域4とn-型ドリフト領域2とが接する。p+型領域13は、n-型ドリフト領域2に周囲を囲まれる。かつ、後述する説明中のn型電流拡散領域3をn-型ドリフト領域2に読み替えればよい。
【0038】
ゲートトレンチ7は、深さ方向Zにn+型ソース領域5およびp型ベース領域4を貫通してn型電流拡散領域3に達する。ゲートトレンチ7は、例えば、半導体基板40のおもて面に平行な第1方向Xにストライプ状に延在する。互いに隣り合うゲートトレンチ7間において、p型ベース領域4、n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6およびp+型領域13は、ゲートトレンチ7に平行に第1方向Xに直線状に延在している。p++型コンタクト領域6は、ゲートトレンチ7に平行に第1方向Xに点在してもよい。
【0039】
ゲートトレンチ7の内部には、ゲート絶縁膜8を介してゲート電極9が設けられている。すべての互いに隣り合うゲートトレンチ7の中心間がトレンチゲート型MOSFETの1つの単位セルである。ショットキートレンチ31は、すべての互いに隣り合うゲートトレンチ7間にそれぞれ設けられ、深さ方向Zにp++型コンタクト領域6およびp型ベース領域4を貫通してn型電流拡散領域3に達する。ショットキートレンチ31は、例えばゲートトレンチ7よりも短い長さで、ゲートトレンチ7に平行に第1方向Xに延在する。
【0040】
ショットキートレンチ31とゲートトレンチ7とは、半導体基板40のおもて面に平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Yに交互に繰り返し配置される。深さ方向Zに各ショットキートレンチ31の底面に対向する位置に、これに加えて当該底面に露出して、ゲートトレンチ7の底面付近のp+型領域13と同様に、それぞれp+型領域13が選択的に設けられている。ショットキートレンチ31の底面に露出とは、ショットキートレンチ31の底面の周囲を囲んで当該底面で後述する導電膜32に接することである。
【0041】
ショットキートレンチ31と、このショットキートレンチ31に埋め込まれた導電膜32と、でトレンチ型SBD30の1つの単位セルが構成されている。トレンチ型SBD30は、ショットキートレンチ31の側壁において導電膜32とn型電流拡散領域3との接合面33(二点鎖線の円で囲む2箇所)に形成されるショットキー障壁の整流性を利用したダイオードである。トレンチ型SBD30は、ショットキートレンチ31の両側壁に沿って第1方向Xに延在する。ショットキートレンチ31は、導電膜32で完全に埋め込まれていることがよい。
【0042】
導電膜32は、ショットキートレンチ31に個々に埋め込まれた材料の異なる複数の金属膜で構成されている。すなわち、導電膜32を構成する複数の金属膜は、ショットキートレンチ31の内部に層状をなす。導電膜32を構成する複数の金属膜の組み合わせは目的(所望する作用効果)に応じて種々変更可能である。例えば、導電膜32を構成する複数の金属膜の組み合わせは、炭化珪素に対するショットキー障壁の大きさ、電気抵抗率および融点などのパラメータに基づいて行われる。
【0043】
導電膜32を構成する複数の金属膜の組み合わせにより、MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化の抑制(寄生ダイオードの不活性化)もしくはMOSFETの短絡(ソース・ゲート間短絡)耐量の向上、またはその両方を実現するとともに、トレンチ型SBD30の低抵抗化(トレンチ型SBD30の静特性改善)を図ることができる。MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化を抑制するには、金属全般でみて相対的に炭化珪素に対するショットキー障壁の小さい金属材料を後述する第1金属膜32aに用いることがよい。
【0044】
MOSFETの短絡耐量を向上するには、金属全般でみて相対的に炭化珪素に対するショットキー障壁の大きい金属材料を第1金属膜32aに用いるか、もしくはMOSFETの短絡時の半導体基板40の発熱により溶融しない金属材料を後述する第2金属膜32bに用いるか、またはこれら両方の金属材料をそれぞれ用いた第1,2金属膜32a,32bとすることがよい。トレンチ型SBD30を低抵抗化するには、第1金属膜32aよりも電気抵抗率の低い金属材料を後述する第2金属膜32bに用いることがよい。
【0045】
具体的には、導電膜32は、ショットキートレンチ31の側壁においてn型電流拡散領域3(n型電流拡散領域3が設けられていない場合にはn-型ドリフト領域2)に接触して当該n型電流拡散領域3との接合面33に例えば1.1eV以上1.5eV以下程度のショットキー障壁を形成する第1金属膜32aと、第1金属膜32aよりも電気抵抗率の低い第2金属膜32bと、を有する。第1,2金属膜32a,32bは、炭化珪素に対するショットキー障壁が略同程度であってもよい。
【0046】
第1金属膜32aは、ショットキートレンチ31の側壁に沿って設けられ、n型電流拡散領域3にショットキー接触する。第1金属膜32aの、ショットキートレンチ31の側壁部分の厚さt1は、所定のショットキー特性が得られる程度に可能な限り薄くかつ略均一な厚さで形成されることがよい。第1金属膜32aの当該厚さt1を略均一にすることで、トレンチ型SBD30のショットキー特性のばらつきを抑制可能である。厚さが略均一とは、プロセスのばらつきの許容誤差を含む範囲で同じ厚さであることを意味する。
【0047】
第1金属膜32aの、ショットキートレンチ31の側壁部分の厚さt1を薄くするほど、導電膜32の電気抵抗率を低くすることができる。ショットキートレンチ31の第2方向Yの幅wは例えば0.1μm以上0.4μm以下程度であり、第1金属膜32aは、少なくともショットキートレンチ31の側壁部分の厚さt1を例えば100nm以上200nm以下程度に薄くすることがよい。第1金属膜32aは、ショットキートレンチ31の底面部分の厚さt2を側壁部分の厚さt1よりも厚くしてもよい(
図4)。
【0048】
第1金属膜32aは、ショットキートレンチ31の内壁全面(側壁および底面)に設けられてもよいし(
図1)、ショットキートレンチ31の側壁のみに設けられ、ショットキートレンチ31の底面に設けられていなくてもよい(不図示)。第1金属膜32aは、ショットキートレンチ31の側壁で少なくともn型電流拡散領域3に接していればよく、ショットキートレンチ31の内壁の一部、例えばp型ベース領域4とn型電流拡散領域3とのpn接合面から底面側のみに設けられてもよい(
図3)。
【0049】
図3のトレンチ型SBD30に
図4のトレンチ型SBD30を適用して、第1金属膜32aは、p型ベース領域4とn型電流拡散領域3とのpn接合面からショットキートレンチ31の底面側において、ショットキートレンチ31の側面および底面に設けられるとともに、ショットキートレンチ31の底面部分の厚さt2を側壁部分の厚さt1よりも厚くしてもよい。この場合、第2金属膜32bは、ショットキートレンチ31の開口側および底面で炭化珪素部(ショットキートレンチ31の内壁に露出する領域)に接する。
【0050】
第2金属膜32bは、ショットキートレンチ31の内部において第1金属膜32a上に埋め込まれている。第2金属膜32bは、第1金属膜32aよりもショットキートレンチ31の略中央部(第1,2方向X,Yの中央部)側に埋め込まれて、深さ方向Zにショットキートレンチ31の内部を直線状に延在している。第1金属膜32aがショットキートレンチ31の内壁全面に設けられている場合、第2金属膜32bは、第1金属膜32aに周囲全体を囲まれて炭化珪素部に接していない。
【0051】
第2金属膜32bが深さ方向Zに延在する長さが短くなるほどトレンチ型SBD30を低抵抗化する効果が小さくなるが、第2金属膜32bは、ショットキートレンチ31の底面付近まで達していなくてもよい。
図4には、第2金属膜32bが深さ方向Zにp型ベース領域4とn型電流拡散領域3とのpn接合付近で終端する場合を示す。このように第1,2金属膜32a,32bを順に積層してなる導電膜32がショットキートレンチ31に埋め込まれている。導電膜32は、後述するソース電極12に電気的に接続されている。
【0052】
第1,2金属膜32a,32bの材料にMOSFETの一般的な電極材料(ソース電極12や後述するドレイン電極(第2電極)14の材料)であるアルミニウム(Al)、チタン(Ti)およびニッケル(Ni)や、配線部材の材料であるタングステン(W)を種々組み合わせて用いることができる。チタンおよびアルミニウムは、炭化珪素に対するショットキー障壁が略同じである。ニッケルおよびタングステンは、チタンおよびアルミニウムよりも炭化珪素に対するショットキー障壁が大きい。
【0053】
アルミニウムおよびタングステンは、チタンおよびニッケルよりも電気抵抗率が低い。アルミニウムは、チタン、ニッケルおよびタングステンよりも融点が非常に低い。タングステンは、チタンおよびニッケルよりも融点が高い。これらの金属間の物理的性質の大小(もしくは高低)について各金属の元素記号と不等号とであらわすと、炭化珪素に対するショットキー障壁はAl≒Ti<W<Niであり、電気抵抗率はAl<W<Ni<Tiであり、融点はAl≪Ni<Ti<Wである。
【0054】
この場合、第1金属膜32aはチタン膜、ニッケル膜またはタングステン膜である。第2金属膜32bは、アルミニウム膜またはタングステン膜である。チタン膜およびニッケル膜は、例えばスパッタ法で形成される。アルミニウム膜は、例えばスパッタ法により堆積しながら熱処理(リフロー)により軟化させてトレンチに埋め込むリフロースパッタ法で形成される。タングステン膜は、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法で形成される。
【0055】
第1金属膜32a(チタン膜、ニッケル膜またはタングステン膜)によるショットキー障壁によって、MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化が抑制される。第1金属膜32aは、チタン膜である場合にはソース電極12のチタン膜23と同時に形成されてもよい。第1金属膜32aがニッケル膜またはタングステン膜である場合、チタン膜と比べてショットキー障壁が大きいことで、MOSFETの短絡耐量が向上する。
【0056】
第1金属膜32aよりも電気抵抗率の低い第2金属膜32b(アルミニウム膜またはタングステン膜)によって、トレンチ型SBD30の導電性が改善される。第2金属膜32bは、タングステン膜である場合にはMOSFETの短絡時など半導体基板40の発熱(例えば800℃以上程度の高温)により溶融しない。このため、MOSFETの短絡耐量が向上する。第2金属膜32bは、アルミニウム膜である場合においてもソース電極12のアルミニウム膜24と同時に形成せずに、ショットキートレンチ31への埋め込み性の高い例えばリフロースパッタ法で形成することがよい。
【0057】
層間絶縁膜11は、半導体基板40のおもて面の全面に設けられ、ゲート電極9を覆う。隣り合うゲートトレンチ7間に、それぞれ、層間絶縁膜11を深さ方向Zに貫通して半導体基板40に達するコンタクトホール11aが設けられている。コンタクトホール11aには、n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6、導電膜32(少なくとも第2金属膜32b)が露出されている。ソース電極12は、コンタクトホール11aにおける半導体基板40のおもて面から層間絶縁膜11の表面にわたって設けられている。
【0058】
ソース電極12は、半導体基板40のおもて面上に設けられたニッケルシリサイド(NixSiy、ただしx、yは正数)膜21、窒化チタン(TiN)膜22、チタン膜23およびアルミニウム膜24で構成される。ニッケルシリサイド膜21は、コンタクトホール11aにおける半導体基板40のおもて面上に設けられ、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6にオーミック接触している。窒化チタン膜22は、層間絶縁膜111の表面全面に設けられ、層間絶縁膜11の表面のみを覆う。
【0059】
チタン膜23は、コンタクトホール11aにおける半導体基板40のおもて面上から層間絶縁膜11の表面に沿って設けられ、ニッケルシリサイド膜21および窒化チタン膜22を覆う。アルミニウム膜24は、コンタクトホール11aを埋め込むように、チタン膜23および導電膜32の上に設けられている。アルミニウム膜24は、ニッケルシリサイド膜21、窒化チタン膜22およびチタン膜23を介してn+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6に電気的に接続されている。
【0060】
アルミニウム膜24は、トレンチ型SBD30の導電膜32(第2金属膜32b、もしくは第1,2金属膜32a,32bの両方)に接し、導電膜32(第1,2金属膜32a,32b)に電気的に接続されている。アルミニウム膜24に代えて、例えばアルミニウムシリコン(Al-Si)膜等のアルミニウム合金膜が設けられていてもよい。半導体基板40の裏面(n+型出発基板41の裏面)には、半導体基板40の裏面にオーミック接触するドレイン電極14が設けられている。
【0061】
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10の動作について説明する。
図5は、
図1のトレンチ型SBDの逆回復時の動作を示す説明図である。
図6は、
図9(従来の炭化珪素半導体装置110)のトレンチ型SBDの逆回復時の動作を示す説明図である。
図5には、
図1のトレンチ型SBD30付近を示す。図示省略するが、
図3,4の別例のトレンチ型SBD30においても
図5のトレンチ型SBD30と同様に動作する。
図6には、
図9のトレンチ型SBD130付近を示す。
【0062】
図5に示すように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10において、MOSFETのp
++型コンタクト領域6、p型ベース領域4およびp
+型領域13と、n型電流拡散領域3、n
-型ドリフト領域2およびn
+型ドレイン領域1とのpn接合で形成される寄生ダイオードの順方向バイアス時、導電膜32の第1金属膜32aの電気的性質で決まるショットキー障壁によって当該寄生pnダイオードよりも順方向電圧が低く設定されたトレンチ型SBD30が当該寄生pnダイオードよりも早く導通する(不図示)。
【0063】
したがって、半導体基板40の内部のn型電流拡散領域3、p型ベース領域4およびn+型ソース領域5で形成される縦型の寄生npnバイポーラトランジスタ(ボディーダイオード)が動作しない。これによって、導電膜32の第1金属膜32aによって、MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化が抑制されるとともに、逆回復損失を低減させることができる。また、導電膜32の第1金属膜32aがニッケル膜またはタングステン膜である場合には、さらにMOSFETの短絡耐量を向上させることができる。
【0064】
一方、MOSFETの寄生pnダイオードの逆方向バイアス時(逆回復時)、トレンチ型SBD30も逆回復する。逆回復時にMOSFETのドレイン電極14からn+型ドレイン領域1、n-型ドリフト領域2およびn型電流拡散領域3を通ってソース電極12へ向かう方向(逆方向)に流れる逆回復電流I1は、寄生pnダイオードよりも逆回復時間の短いトレンチ型SBD30の導電膜32の第1,2金属膜32a,32bのうちの相対的に電気抵抗率の低い第2金属膜32bを介してソース電極12へ流れる。
【0065】
このようなMOSFETの寄生pnダイオードの逆回復時、例えば、
図6に示す従来構造では、トレンチ型SBD130のショットキートレンチ131に埋め込まれた導電膜132が単一金属で構成されていることで、逆回復電流I101がn型電流拡散領域103からトレンチ型SBD130の電気抵抗率の高い導電膜132(単層のチタン膜または単層のニッケル膜)を介してソース電極112へ流れることとなる。このため、逆回復電流I1の電流量が小さくなり、トレンチ型SBD130が高抵抗になってしまう。
【0066】
それに対して、実施の形態1においては、ショットキートレンチ31の側壁に沿って設けられた第1金属膜32aを厚さt1方向に抜けて、第1金属膜32aよりもショットキートレンチ31の中央部側の、第1金属膜32aよりも電気抵抗率の低い第2金属膜32bを逆回復電流I1が流れる。このため、逆回復電流I1の電流量が維持されやすく、第1金属膜32aの厚さを薄くするほど、トレンチ型SBD30が低抵抗化される。また、第2金属膜32bがタングステン膜である場合、MOSFETの短絡時に第2金属膜32bが溶融しにくいため、さらにMOSFETの短絡耐量を向上させることができる。
【0067】
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10の製造方法について説明する。まず、炭化珪素からなるn+型出発基板(半導体ウエハ)41を用意する。n+型出発基板41は、n+型ドレイン領域1となる。次に、n+型出発基板41のおもて面に、製品完成後のn-型炭化珪素層42の製品厚さdよりも薄い厚さで、n-型炭化珪素層42をエピタキシャル成長させる。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、n-型炭化珪素層42の表面領域にp+型領域13を選択的に形成する。
【0068】
次に、p+型領域13の形成に用いたイオン注入用マスク(不図示)を除去した後、フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、例えば、活性領域の全域にわたって、n-型炭化珪素層42の表面領域にn型電流拡散領域3を形成する。n型電流拡散領域3とp+型領域13との形成順序を入れ替えてもよい。n型電流拡散領域3やp+型領域13または後述するイオン注入で形成される拡散領域の形成に用いるイオン注入用マスクは、例えば、酸化膜(SiO2膜)であってもよいし、レジスト膜であってもよい。
【0069】
n-型炭化珪素層42の、n型電流拡散領域3およびp+型領域13とn+型出発基板41との間に残るイオン注入されていない部分がn-型ドリフト領域2となる。次に、n型電流拡散領域3の形成に用いたイオン注入用マスク(不図示)を除去した後、n-型炭化珪素層42上にさらにn-型炭化珪素層をエピタキシャル成長させて厚さを増やし、n-型炭化珪素層42を製品厚さdにする。n-型炭化珪素層42の厚さを増した部分の不純物濃度は、例えば、n-型ドリフト領域2の不純物濃度と略同じであってもよい。
【0070】
次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、n-型炭化珪素層42の厚さを増した部分にp型不純物を選択的に導入し、p+型領域13の厚さを厚くする。次に、p+型領域13の形成に用いたイオン注入用マスク(不図示)を除去した後、フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、n-型炭化珪素層42の厚さを増した部分に活性領域の全域にわたってn型不純物を導入し、n型電流拡散領域3の厚さを厚くする。n型電流拡散領域3とp+型領域13との形成順序を入れ替えてもよい。
【0071】
次に、n-型炭化珪素層42の表面に、p型炭化珪素層43をエピタキシャル成長させる。これにより、n+型出発基板41のおもて面上に炭化珪素層42,43を順にエピタキシャル成長させた半導体基板40が完成する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、p型炭化珪素層43のエッジ終端領域52の部分を除去して、活性領域51にのみp型炭化珪素層43を残す。エッジ終端領域52において半導体基板40のおもて面にはn-型炭化珪素層42が露出される。
【0072】
次に、p型炭化珪素層43を部分的に除去するために用いたエッチング用マスク(不図示)を除去する。次に、フォトリソグラフィ、不純物のイオン注入およびイオン注入用マスク(不図示)の除去を1組とする工程を異なる条件で繰り返し行うことで、活性領域51においてp型炭化珪素層43の表面領域にn+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6をそれぞれ選択的に形成するとともに、エッジ終端領域52においてn-型炭化珪素層42の表面領域に耐圧構造を構成するp-型領域(不図示)を形成する。
【0073】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、深さ方向Zにp+型領域13に対向する位置に、n+型ソース領域5およびp型ベース領域4を貫通してn型電流拡散領域3に達するゲートトレンチ7と、深さ方向Zにp++型コンタクト領域6およびp型ベース領域4を貫通してn型電流拡散領域3に達するショットキートレンチ31と、を形成する。このとき、エッチング用マスク(不図示)として酸化膜を用いたドライエッチングであってもよい。そして、トレンチの形成に用いたエッチング用マスクを除去する。
【0074】
ゲートトレンチ7およびショットキートレンチ31を同時に形成してもよいし、それぞれ別工程で形成してゲートトレンチ7とショットキートレンチ31とを異なる深さにしてもよい。ゲートトレンチ7およびショットキートレンチ31の形成後に、ゲートトレンチ7およびショットキートレンチ31の内壁や上端部を円滑化させるために、水素(H2)雰囲気中での熱処理を行ってもよい。トレンチの上端部とは、半導体基板40のおもて面とトレンチの側壁との境界である。
【0075】
次に、犠牲酸化により、半導体基板40のおもて面およびゲートトレンチ7およびショットキートレンチ31の内壁に沿って犠牲酸化膜(不図示)を形成する。次に、CVD法により、半導体基板40のおもて面の犠牲酸化膜上に堆積酸化膜(不図示)を形成する。これら犠牲酸化膜および堆積酸化膜で、半導体基板40のおもて面上にフィールド酸化膜が形成される。堆積酸化膜は、ショットキートレンチ31の内部の犠牲酸化膜上にも堆積して、ショットキートレンチ31に埋め込む。
【0076】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによりフィールド酸化膜を選択的に除去して、エッジ終端領域52における半導体基板40のおもて面上にフィールド酸化膜を残す。このとき、活性領域51においては、ゲートトレンチ7の内壁と、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6とを露出させる。ショットキートレンチ31の内部には、フィールド酸化膜(堆積酸化膜)を残してショットキートレンチ31の内壁を保護する。次に、ゲートトレンチ7の内壁に沿ってゲート絶縁膜8を形成する。
【0077】
次に、例えば一酸化窒素(NO)雰囲気での熱処理(POA:Post Oxidation Anneal)により、ゲート絶縁膜8と炭化珪素(半導体基板40)との界面特性を改善させる。次に、半導体基板40のおもて面にポリシリコン(poly-Si)を堆積して、ゲートトレンチ7をポリシリコンで埋める。このとき、半導体基板40のおもて面上にもポリシリコン層が形成されるため、当該ポリシリコン層をパターニングして、ポリシリコン層の、ゲート電極9となる部分のみをゲートトレンチ7の内部に残す。
【0078】
次に、ポリシリコン層のパターニング用マスク(不図示)を除去した後、CVD法により、半導体基板40のおもて面上に、層間絶縁膜11となる堆積酸化膜を堆積する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜11を選択的に除去してコンタクトホール11aを開口し、コンタクトホール11aにn+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6を再度露出させる。次に、スパッタ法により、半導体基板40のおもて面に、ニッケルシリサイド膜21の材料膜となるニッケル膜を堆積する。
【0079】
次に、例えば400℃以上600℃以下程度の温度での熱処理により、当該ニッケル膜の、半導体基板40のおもて面上の部分をシリサイド化する。次に、ニッケル膜のシリサイド化されていない部分を例えばウェットエッチングすることで、ニッケル膜の、層間絶縁膜11およびフィールド酸化膜の上の部分を除去する。これによって、ニッケル膜のシリサイド化された部分がニッケルシリサイド膜21となり、コンタクトホール11a内において半導体基板40のおもて面上に残る。
【0080】
次に、半導体基板40の裏面に例えばニッケル膜およびチタン膜を順に堆積し、例えば800℃以上1000℃以下程度の温度での熱処理によりシリサイド化することで、ドレイン電極14を形成する。
【0081】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより層間絶縁膜11を選択的に除去してショットキートレンチ31の内部の堆積酸化膜を除去して、ショットキートレンチ31の内壁を露出させる。次に、スパッタ法により、半導体基板40のおもて面に、トレンチ型SBD30の第1金属膜32aの材料膜となるニッケル膜を堆積する。このニッケル膜は、ショットキートレンチ31の内壁に沿って形成され、ショットキートレンチ31の内壁でのみ、炭化珪素部(半導体基板40)に接する。次に、例えば400℃以上600℃以下程度の温度での熱処理により、当該ニッケル膜の、ショットキートレンチ31の内壁上の部分をシリサイド化する。
【0082】
次に、ニッケル膜のシリサイド化されていない部分を例えばウェットエッチングすることで、ニッケル膜の、ショットキートレンチ31の内壁以外の部分を除去する。これによって、ニッケル膜のシリサイド化された部分が第1金属膜32aとなり、ショットキートレンチ31の内壁に沿って残る。トレンチ型SBD30の第1金属膜32aがチタン膜またはタングステン膜である場合、ショットキートレンチ31の内壁に沿ってニッケル膜を形成する工程と、このニッケル膜をシリサイド化する工程と、を省略して、ドレイン電極14の形成後に、後述する工程(窒化チタン膜22の形成以降の工程)を行えばよい。
【0083】
次に、例えばスパッタ法により、半導体基板40のおもて面に窒化チタン膜22を堆積し、層間絶縁膜11の表面にのみ残す。次に、例えばスパッタ法により、半導体基板40のおもて面にチタン膜23を堆積する。チタン膜23は、ニッケルシリサイド膜21および窒化チタン膜22を覆う。このとき、ショットキートレンチ31の内壁にもチタン膜が形成される。トレンチ型SBD30の第1金属膜32aがチタン膜である場合、ショットキートレンチ31の内部を完全に埋め込まないようにスパッタ時間等を調整してチタン膜23を堆積し、このチタン膜23の、ショットキートレンチ31の内壁に沿って形成された部分を第1金属膜32aとすればよい。トレンチ型SBD30の第1金属膜32aがニッケル膜またはタングステン膜である場合、ショットキートレンチ31の内壁のチタン膜を除去すればよい。
【0084】
次に、例えば400℃以上600℃以下程度でのアニールにより、チタン膜23を焼成する。窒化チタン膜22およびチタン膜23は、バリアメタルとして機能する。バリアメタルは、バリアメタルを構成する各金属膜間またはバリアメタルを挟んで対向する領域間での相互反応を防止する機能を有する。ショットキートレンチ31の内壁の第1金属膜32aはアニールしない。これにより、導電膜32の第1金属膜32aとn型電流拡散領域3との接合面33にショットキー障壁(ショットキー接合)が形成される。
【0085】
次に、第2金属膜32bを堆積して、ショットキートレンチ31の内部において第1金属膜32a上に第2金属膜32bを埋め込む。トレンチ型SBD30の第2金属膜32bがアルミニウム膜である場合、例えばリフロースパッタ法によりアルミニウム膜を堆積する。トレンチ型SBD30の第2金属膜32bがタングステン膜である場合、例えばCVD法によりタングステン膜を堆積する。これによって、ショットキートレンチ31が第2金属膜32bで埋め込まれる。また、半導体基板40のおもて面上にも第2金属膜32bが形成される。
【0086】
次に、第2金属膜32bの、半導体基板40のおもて面上の部分を例えば化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)やエッチング等により除去して、第2金属膜32bをショットキートレンチ31の内部のみに残す。第2金属膜32bがショットキートレンチ31の内部から外側(上方)へ突出していてもよい。ここまでの工程で、第1,2金属膜32a,32bからなる導電膜32をショットキートレンチ31に埋め込んでなるトレンチ型SBD30が形成される。
【0087】
次に、例えば物理気相成長(PVD:physical vapor deposition)法やCVD法により、チタン膜23および導電膜32の上にアルミニウム膜24を堆積する。そして、熱処理により、当該アルミニウム膜24を焼成する。ニッケルシリサイド膜21、窒化チタン膜22、チタン膜23およびアルミニウム膜24でソース電極12が構成される。その後、半導体基板(半導体ウエハ)40をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、
図1,2の炭化珪素半導体装置10が完成する。
【0088】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、トレンチ型SBDのショットキートレンチに埋め込まれる導電膜を材料の異なる2つの金属膜(チタン膜、ニッケル膜またはタングステン膜と、アルミニウム膜またはタングステン膜と、の2種類)で構成する。チタン膜、ニッケル膜およびタングステン膜によるショットキー特性により、MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化が抑制される。ニッケル膜およびタングステン膜によるショットキー特性により、MOSFETの短絡耐量が向上する。電気抵抗率の低いアルミニウム膜およびタングステン膜により、トレンチ型SBDが低抵抗化される。
【0089】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図7は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図7には、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60のトレンチ型SBD61付近のみを示す。
図8は、
図7のトレンチ型SBDの別例を示す断面図である。
図7,8に示す実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60のトレンチ型SBD61の導電膜62以外の構成は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10(
図1,2参照)と同様である。
【0090】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10と異なる点は、トレンチ型SBD61の導電膜62が3つの金属膜(以下、第1~3金属膜とする)32a~32cで構成されている点である。具体的には、実施の形態2において、導電膜62の第1金属膜32aは、ショットキートレンチ31の内壁に沿って設けられたチタン膜またはニッケル膜である。導電膜62の第1金属膜32aの配置および機能は、実施の形態1の第1金属膜32aと同じである。
【0091】
導電膜62の第2金属膜32bは、第1金属膜32aよりもショットキートレンチ31の中央部側に部分的に埋め込まれたアルミニウム膜である。導電膜62の第2金属膜32bの機能は、実施の形態1の第2金属膜32bをアルミニウム膜とした場合と同じである。導電膜62の第3金属膜32cは、第1金属膜32aよりもショットキートレンチ31の中央部側に部分的に設けられたタングステン膜である。導電膜62の第3金属膜32cは、実施の形態1の第2金属膜32bをタングステン膜とした場合と同じである。
【0092】
第3金属膜32cは、第1金属膜32aと第2金属膜32bとの間において、ショットキートレンチ31の内壁全面に沿って設けられてもよい(
図7)。この場合、第2金属膜32bは、第3金属膜32cよりもショットキートレンチ31の中央部側に埋め込まれる。また、第1金属膜32aよりもショットキートレンチ31の中央部側において、第3金属膜32cをショットキートレンチ31の底面側に埋め込み、第2金属膜32bを第3金属膜32cよりもソース電極12側に埋め込んでもよい(
図8)。
【0093】
図7,8に示す実施の形態2のトレンチ型SBD61においては、MOSFETのソース・ゲート間短絡時の発熱箇所(ゲートトレンチ7の底面付近)と、導電膜62を構成する低融点の第2金属膜32b(アルミニウム膜)と、の間の高融点の第3金属膜32cによって、MOSFETの短絡時の第2金属膜32bの温度上昇を遅らせることができる。これによって、MOSFETの短絡時に第2金属膜32b(アルミニウム膜)が融解しにくくなるため、MOSFETの短絡耐量をさらに向上させることができる。
【0094】
特に、
図8に示す実施の形態2のトレンチ型SBD61においては、ショットキートレンチ31の底面付近に比較的厚い第3金属膜32c(タングステン膜)を配置することで、導電膜62の融点を、MOSFETの短絡時の発熱箇所(ゲートトレンチ7の底面付近)に近い位置で部分的に高くすることができる。これによって、MOSFETの短絡時の第2金属膜32bの温度上昇をより遅らせることができ、第2金属膜32bがさらに融解しにくくなるため、MOSFETの短絡耐量をさらに向上させることができる。
【0095】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60の製造方法は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10の製造方法において、導電膜62の第1金属膜32aをショットキートレンチ31の内壁に沿って形成した後、リフロースパッタ法により導電膜62の第2金属膜32b(アルミニウム膜)をショットキートレンチ31に埋め込む前に、CVD法により、導電膜62の第3金属膜32c(タングステン膜)を、第1金属膜32aの表面全面に沿って形成するか、またはショットキートレンチ31の底面側において第1金属膜32a上に埋め込めばよい。
【0096】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60に
図3,4に示すトレンチ型SBD30の第1金属膜32aの構成を適用して、トレンチ型SBD61の第1金属膜32aをショットキートレンチ31の内壁の一部のみに設けたり(
図3参照)、トレンチ型SBD61の第1金属膜32aの厚さを、ショットキートレンチ31の底面部分で側壁部分よりも厚くしてもよい(
図4参照)。トレンチ型SBD61の第1金属膜32aをショットキートレンチ31の内壁の一部のみに設ける場合(
図3参照)、導電膜62の第3金属膜32cが炭化珪素部に接してもよい。
【0097】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、トレンチ型SBDのショットキートレンチに埋め込まれる導電膜を構成する材料の異なる3つの第1~3金属膜(チタン膜もしくはニッケル膜と、アルミニウム膜と、タングステン膜との3種類)の各物性(熱的性質、電気的性質)に基づく効果を得ることができる。これによって、実施の形態1で得られるすべての効果(MOSFETの寄生ダイオードの順方向特性劣化の抑制、MOSFETの短絡耐量の向上、トレンチ型SBD30の低抵抗化)をさらに得ることができる。
【0098】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した各実施の形態において、半導体基板内の各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、本発明は、MOSFETと同一の半導体基板にトレンチ型SBDを備えた半導体装置に適用可能であり、当該半導体基板にさらに他の素子や回路等が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 n+型ドレイン領域
2 n-型ドリフト領域
3 n型電流拡散領域
4 p型ベース領域
5 n+型ソース領域
6 p++型コンタクト領域
7 ゲートトレンチ
8 ゲート絶縁膜
9 ゲート電極
10,60 炭化珪素半導体装置
11 層間絶縁膜
11a コンタクトホール
12 ソース電極
13 p+型領域
14 ドレイン電極
21 ニッケルシリサイド膜
22 窒化チタン膜
23 チタン膜
24 アルミニウム膜
30,61 トレンチ型SBD
31 トレンチ型SBDのショットキートレンチ
32,62 トレンチ型SBDの導電膜
32a ショットキートレンチの側壁に沿って設けられてトレンチ型SBDの導電膜を構成する第1金属膜
32b,32c 第1金属膜よりもショットキートレンチの中央部側に設けられてトレンチ型SBDの導電膜を構成する第2,3金属膜
33 トレンチ型SBDの導電膜とMOSFETのn型電流拡散領域との接合面
40 半導体基板
41 n+型出発基板
42 n-型炭化珪素層
43 p型炭化珪素層
51 活性領域
52 エッジ終端領域
I1 トレンチ型SBDの逆回復電流
t1 トレンチ型SBDの第1金属膜のショットキートレンチの側壁部分の厚さ
t2 トレンチ型SBDの第1金属膜のショットキートレンチの底面部分の厚さ
w ショットキートレンチの幅
d n-型炭化珪素層の厚さ
X 半導体基板のおもて面に平行な第1方向
Y 半導体基板のおもて面に平行な方向でかつ第1方向と直交する第2方向
Z 深さ方向