(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111035
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】回転機械を備えた流体移送装置の情報表示器、および情報表示方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20230803BHJP
F04B 51/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G08B21/00 A
F04B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012658
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】堤 康太
【テーマコード(参考)】
3H145
5C086
【Fターム(参考)】
3H145FA16
3H145FA23
3H145FA24
3H145FA28
5C086AA05
5C086AA60
5C086BA17
5C086CA15
5C086CA30
5C086CB01
5C086CB20
5C086DA40
5C086FA17
5C086FA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】専門の作業員以外でも、異常の発生要因の解消を少なくとも補助する情報表示器および情報表示方法を提供する。
【解決手段】流体移送装置において、情報表示器61は、回転機械を備えた流体移送装置からの情報を受信可能に構成される通信部62と、通信部62が受信した情報を処理する演算部65と、演算部65が処理した情報を表示するディスプレイ64と、を備える。通信部62は、流体移送装置で発生した警報の内容を受信し、演算部65は、警報の内容と、該警報を解除するために確認すべきチェック項目が記載されたチェックリストと、を含む警報情報をディスプレイ64に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械を備えた流体移送装置からの情報を受信可能に構成される通信部と、
前記通信部が受信した情報を処理する演算部と、
演算部が処理した情報を表示するディスプレイと、を備え、
前記通信部は、前記流体移送装置で発生した警報の内容を受信し、
前記演算部は、前記警報の内容と、該警報を解除するために確認すべきチェック項目が記載されたチェックリストと、を含む警報情報を前記ディスプレイに表示する、情報表示器。
【請求項2】
前記演算部は、警報リセットの信号を前記流体移送装置に送信するための警報リセットボタンを前記ディスプレイに表示する、請求項1に記載の情報表示器。
【請求項3】
前記演算部は、管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバのうちの少なくとも1つに、前記チェックリストのチェック結果を送信するためのデータ送信ボタンを前記ディスプレイに表示する、請求項2に記載の情報表示器。
【請求項4】
前記演算部は、前記データ送信ボタンがタップされた場合に、前記流体移送装置の特定情報を前記管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信し、
前記特定情報は、前記流体移送装置の機器情報、前記流体移送装置の使用者の連絡先、および前記流体移送装置の運転状態情報のうちの少なくとも1つを含む情報である、請求項3に記載の情報表示器。
【請求項5】
前記演算部は、前記警報リセットボタンをタップした後に、前記警報と同じ内容の警報が再度発せられた場合に、前記警報の内容と、前記チェックリストに記載のチェック項目を確認するだけでは発生した異常を解消できなかったことと、を含む情報を管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信するための連絡ボタンを、前記ディスプレイに表示させる、請求項2に記載の情報表示器。
【請求項6】
前記演算部は、前記警報が前記流体移送装置に発生している異常の発生要因を使用者が確認可能な警報のときのみ、前記チェックリストを前記ディスプレイに表示する、請求項1に記載の情報表示器。
【請求項7】
回転機械を備えた流体移送装置で発生した警報の内容を受信し、
前記警報の内容と、該警報を解除するために確認すべきチェック項目が記載されたチェックリストと、を含む警報情報をディスプレイに表示する、情報表示方法。
【請求項8】
警報リセットの信号を前記流体移送装置に送信するための警報リセットボタンを前記ディスプレイに表示する、請求項7に記載の情報表示方法。
【請求項9】
管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに、前記チェックリストのチェック結果を送信するためのデータ送信ボタンを前記ディスプレイに表示する、請求項8に記載の情報表示方法。
【請求項10】
前記データ送信ボタンがタップされた場合に、前記流体移送装置の特定情報を前記管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信し、
前記特定情報は、前記流体移送装置の機器置情報、前記流体移送装置の使用者の連絡先、および前記流体移送装置の運転状態情報のうちの少なくとも1つを含む情報である、請求項9に記載の情報表示方法。
【請求項11】
前記警報リセットボタンをタップした後に、前記警報と同じ内容の警報が再度発せられた場合に、前記警報の内容と、前記チェックリストに記載のチェック項目を確認するだけでは発生した異常を解消できなかったことと、を含む情報を管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信するための連絡ボタンを、前記ディスプレイに表示させる、請求項8に記載の情報表示方法。
【請求項12】
前記警報が前記流体移送装置に発生している異常の発生要因を使用者が確認可能な警報のときのみ、前記チェックリストを前記ディスプレイに表示する、請求項7に記載の情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置、陸上ポンプ、水中ポンプ、コンプレッサ、および送風機などの回転機械を備えた流体移送装置の情報表示器、および情報表示方法に関し、特に、流体移送装置の警報を表示する情報表示器、および情報表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または気体である流体を、給水装置、陸上ポンプ、水中ポンプ、コンプレッサ、または送風機などの回転機械を用いて移送する流体移送装置が様々な分野で用いられている。例えば、給水装置は、水を圧送するための回転機械であるポンプと、このポンプを駆動するための電動機(モータ)と、この電動機の運転を制御する制御装置とを備えており、オフィスビルやマンションなどの建物に水を供給するための装置として使用されている(例えば、特許文献1参照)。給水装置は、水道本管に直接、または受水槽を介して接続され、水道本管を流れる水を建物内の給水器具(例えば、蛇口)に所定の圧力で移送する。
【0003】
また、近年、流体移送装置の小型化、並びに電動機の高効率化および省エネルギー化を目的として、インバータ一体型電動機が用いられるようになってきた(例えば、特許文献2参照)。このインバータ一体型電動機によれば、電動機を高効率で運転できるだけでなく、インバータ制御による可変速運転を組み合わせることで大幅な省エネルギー効果が得られる。さらに、電動機とインバータとの一体化によって、流体移送装置の小型化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-165433号公報
【特許文献2】特開2021-87300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体移送装置で異常が発生し、警報が流体移送装置から発せられた場合に、異常の発生要因が軽微なものであれば、専門の作業員(例えば、流体移送装置の製造者のサービスマン)以外の人間(例えば、流体移送装置の所有者および使用者)でも、異常の発生要因の解消、ひいては警報解除を行うことが可能な場合がある。
【0006】
しかしながら、専門の作業員以外の人間では、流体移送装置に発生した異常の発生要因が軽微なものであるか否か、さらには、どこに異常の発生要因があるのかを判断するのが困難な場合が多い。
【0007】
専門の作業員以外の人間が異常の発生要因を早期に解消できれば、回転機械の停止などの重大な故障の発生を未然にまたは早期に解消できる可能性が高まる。特に、給水装置などのインフラ設備として用いられる流体移送装置の場合は、回転機械の停止(例えば、給水装置のポンプ停止)は、人間の生命活動を維持するために必要不可欠な物質(例えば、水)を需要者に供給できなくなり、大きな問題となる。
【0008】
そこで、本発明は、専門の作業員以外でも、異常の発生要因の解消を少なくとも補助することが可能な情報表示器を提供することを目的とする。また、本発明は、異常の発生要因の解消を少なくとも補助することが可能な情報を情報表示器に表示させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、回転機械を備えた流体移送装置からの情報を受信可能に構成される通信部と、前記通信部が受信した情報を処理する演算部と、演算部が処理した情報を表示するディスプレイと、を備え、前記通信部は、前記流体移送装置で発生した警報の内容を受信し、前記演算部は、前記警報の内容と、該警報を解除するために確認すべきチェック項目が記載されたチェックリストと、を含む警報情報を前記ディスプレイに表示する、情報表示器が提供される。
【0010】
一態様では、前記演算部は、警報リセットの信号を前記流体移送装置に送信するための警報リセットボタンを前記ディスプレイに表示する。
一態様では、前記演算部は、管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバのうちの少なくとも1つに、前記チェックリストのチェック結果を送信するためのデータ送信ボタンを前記ディスプレイに表示する。
一態様では、前記演算部は、前記データ送信ボタンがタップされた場合に、前記流体移送装置の特定情報を前記管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信し、前記特定情報は、前記流体移送装置の機器情報、前記流体移送装置の使用者の連絡先、および前記流体移送装置の運転状態情報のうちの少なくとも1つを含む情報である。
【0011】
一態様では、前記演算部は、前記警報リセットボタンをタップした後に、前記警報と同じ内容の警報が再度発せられた場合に、前記警報の内容と、前記チェックリストに記載のチェック項目を確認するだけでは発生した異常を解消できなかったことと、を含む情報を管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信するための連絡ボタンを、前記ディスプレイに表示させる。
一態様では、前記演算部は、前記警報が前記流体移送装置に発生している異常の発生要因を使用者が確認可能な警報のときのみ、前記チェックリストを前記ディスプレイに表示する。
【0012】
一態様では、回転機械を備えた流体移送装置で発生した警報の内容を受信し、前記警報の内容と、該警報を解除するために確認すべきチェック項目が記載されたチェックリストと、を含む警報情報をディスプレイに表示する、情報表示方法が提供される。
【0013】
一態様では、警報リセットの信号を前記流体移送装置に送信するための警報リセットボタンを前記ディスプレイに表示する。
一態様では、管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに、前記チェックリストのチェック結果を送信するためのデータ送信ボタンを前記ディスプレイに表示する。
一態様では、前記データ送信ボタンがタップされた場合に、前記流体移送装置の特定情報を前記管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信し、前記特定情報は、前記流体移送装置の機器置情報、前記流体移送装置の使用者の連絡先、および前記流体移送装置の運転状態情報のうちの少なくとも1つを含む情報である。
【0014】
一態様では、前記警報リセットボタンをタップした後に、前記警報と同じ内容の警報が再度発せられた場合に、前記警報の内容と、前記チェックリストに記載のチェック項目を確認するだけでは発生した異常を解消できなかったことと、を含む情報を管理拠点、クラウドサーバ、および外部サーバの少なくとも1つに送信するための連絡ボタンを、前記ディスプレイに表示させる。
一態様では、前記警報が前記流体移送装置に発生している異常の発生要因を使用者が確認可能な警報のときのみ、前記チェックリストを前記ディスプレイに表示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ディスプレイに警報を解除するためのチェックリストを表示させることで、専門の作業員ではない使用者であっても、流体移送装置で発生した異常の発生要因を解消して、警報を解除できる可能性を高めることができる。すなわち、ディスプレイに表示されるチェックリストを、使用者が異常の発生要因を解消する補助とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る流体移送装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、インバータ一体型電動機の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、情報表示器のディスプレイに表示された警報情報の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すチェック項目「温度センサのコネクタの差し込み状態を確認」をタップした際に情報表示器のディスプレイに表示される画像データの一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すチェック項目の確認が完了した後のディスプレイの表示の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、連絡ボタンが表示されたディスプレイの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1乃至
図6において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る流体移送装置を示す模式図である。
図1に示す流体移送装置は、オフィスビルやマンションなどの建物に使用される直結式の給水装置である。以下では給水装置が流体移送装置の一例として説明される。
【0018】
図1に示すように、給水装置の吸込口は、導入管5を介して水道本管4に接続されている。給水装置の吐出口には配水管7が接続されており、この配水管7は、建物の内部に配置された給水器具(例えば蛇口)に連通している。給水装置は、水道本管4からの水を所定の圧力に増圧して建物の各給水器具に水を供給する。
【0019】
図1に示すように、給水装置は、導入管5を介して水道本管4に連結されるポンプ2と、このポンプ2を駆動する駆動源としての電動機(モータ)3と、ポンプ2の温度を測定する温度センサ18と、電動機3を変速可能とするインバータ21と、給水装置の給水動作(すなわちポンプ2の運転)を制御する制御装置20と、ポンプ2の下流側に配置された逆止弁22と、逆止弁22の下流側に配置された流量検出器(フロースイッチ)24、吐出側圧力センサ26、および圧力タンク28と、運転状態情報を表示するディスプレイ49とを備えている。本実施形態では、これら構成要素は、キャビネット30内に収容されている。一実施形態では、上記構成要素のうちいくつかのみ(例えば、制御装置20およびインバータ21のみ)をキャビネット30内に収容してもよい。
【0020】
逆止弁22は、ポンプ2の吐出口に接続された吐出管8に設けられており、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止するための弁である。流量検出器24は吐出管8を流れる水の流量が所定の小水量以下であること(すなわち、小水量状態)を検出する装置である。流量検出器24は、例えば、フラップが接点と接触したことにより、小水量状態を検出するフラップ式流量検出器である。あるいは、流量検出器24は、例えば、フロートが接点と接触したことにより、小水量状態を検出するフロート式流量検出器であってもよい。吐出側圧力センサ26は、ポンプ2の吐出側圧力を測定するための水圧測定器である。圧力タンク28は、ポンプ2が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。配水管7は吐出管8に接続されている。
【0021】
ポンプ2の吸込口には吸込管9の一端が接続されており、吸込管9の他端は導入管5に接続されている。吸込管9には、図示しない逆流防止器と吸込側圧力センサが取り付けられている。逆流防止器は、水道本管4への水の逆流を確実に防止するために設置されている。
【0022】
給水装置は、ポンプ2を迂回するバイパス管11を備えている。バイパス管11の上流側端部は吸込管9に接続され、バイパス管11の下流側端部は吐出管8に接続されている。バイパス管11には逆止弁16が取り付けられており、バイパス管11内での水の逆流を防止している。このバイパス管11は、ポンプ2が停止しているときでも、流入圧のみで給水を可能とするために設けられている。
【0023】
インバータ21、流量検出器24、吐出側圧力センサ26、および温度センサ18は、制御装置20に信号線を介して接続されている。小水量状態が流量検出器24により検出されると、制御装置20はポンプ2の運転速度を一時的に上げるようインバータ21に指令を出し、圧力タンク28に蓄圧してからポンプ2の運転を停止させるようになっている(小水量停止)。一方、吐出側圧力(吐出管8内の水圧)が所定の値(始動圧力)まで低下すると、制御装置20はポンプ2の運転を開始するようインバータ21に指令を出す。
【0024】
制御装置20は、インバータ21および電動機3の動作を制御することによって、ポンプ2の動作を制御する。より具体的には、制御装置20は、吐出側圧力センサ26の出力信号に基づいて、ポンプ2の運転速度(すなわち回転速度)を制御する。一般的には、吐出側圧力センサ26により測定された圧力信号が設定された目標圧力と一致するようにポンプ2の運転速度を制御してポンプ2の吐出圧力が一定になるように制御する吐出圧力一定制御や、ポンプ2の吐出圧力の目標値を適切に変化させることにより給水栓における水圧を一定に制御する推定末端圧力一定制御などが行われる。
【0025】
次に、制御装置20の一例について、
図1を参照してより詳細に説明する。
図1に示す制御装置20は、設定部46、記憶部47、演算部48、I/O部50、および運転パネル51を備えている。運転パネル51は、ヒューマンインターフェースとして機能する。設定部46には、ポンプ2の運転制御に関する各種設定値が入力される。上記したディスプレイ49は、設定部46とともに運転パネル51に設けられている。本実施形態では、ディスプレイ49は液晶パネルであり、設定部46はタッチパネル式操作器である。
図1に示すディスプレイ49は、制御装置20に取り付けられているが、ディスプレイ49は制御装置20から離れて配置されてもよい。また、ディスプレイ49は液晶パネルと7セグメントLEDや表示灯を組み合わせた構成でもよい。
【0026】
記憶部47は、給水装置の運転状態情報を記憶する。給水装置の運転状態情報は、例えば、ポンプ2の稼働状況(例えば、ポンプ2の運転のON/OFF状態、インバータ21への指令値、および電動機3の回転数)、ポンプ2および電動機3の積算運転時間、インバータ21への指令値の履歴、温度センサ18、流量検出器24、および吐出側圧力センサ26などの各種機器の出力値および警報設定値、並びにこれら機器18,21,24,26の故障の有無および故障履歴などを含む。演算部48としては、CPUが使用される。ディスプレイ49は、ヒューマンインターフェースとして機能し、運転情報を表示可能に構成される。使用者は、設定部46上のクリアボタン53を押すことにより、ディスプレイ49での表示を消去することができる。
【0027】
図1に示す制御装置20は、通信部60をさらに備えている。制御装置20の通信部60は、有線通信または無線通信によって、後述する情報表示器61に接続可能に構成されている。情報表示器61の例としては、スマートフォン、携帯電話、およびタブレット端末などの汎用のモバイル端末器が挙げられる。本実施形態では、情報表示器61は、液晶画面であるディスプレイ64を備え、ディスプレイ64へのタッチ入力方式や押圧ボタン方式を使用可能な高機能表示器の一例であるスマートフォンである。
【0028】
図1に示す情報表示器61は、制御装置20の通信部60と有線通信または無線通信で接続される通信部62と、上記したディスプレイ64と、CPUである演算部65と、記憶部66と、を備えている。本実施形態では、情報表示部61の通信部62は、NFCまたはBluetooth(登録商標)などの無線通信手段を用いて制御装置20の通信部60と各種情報を送受信可能に接続可能であるように構成されている。給水装置の制御装置20は、通信部60を介して情報表示部61の通信部62に上記した運転状態情報を送信する。さらに、情報表示器61の通信部62は、インターネット等のネットワークを介して、クラウドサーバ70、および/または外部サーバ71などの外部記憶装置との間で通信可能であるように構成されている。
【0029】
情報表示部61の演算部65は、通信部62が受信した給水装置の運転状態情報を処理可能なように構成されている。例えば、演算部65は、通信部62が受信した運転状態情報の全部または一部を記憶部66に格納したり、情報表示器61の使用者の操作に基づいて運転状態情報をディスプレイ64に表示したりする。このような操作を可能とするアプリケーションは、例えば、クラウドサーバ70または外部サーバ71からインターネット等のネットワークを介して情報表示器61に適宜ダウンロードされ、記憶部66に格納される。
【0030】
図1に示す給水装置では、インバータ21は、電動機3と離れて設置されているが、給水装置は、インバータ21を電動機3と一体化させたインバータ一体型電動機を有していてもよい。
図2は、インバータ一体型電動機の一例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0031】
図2に示すように、インバータ一体型電動機80は、電動機3とインバータ21とが一体化されて構成されている。電動機3は、インバータ21によって駆動されることで、ポンプ2を駆動する。電動機3は、例えば、永久磁石同期モータである。一実施形態では、電動機3は、例えば、誘導モータおよびDCブラシレスモータなどの様々な種類のモータであってもよい。電動機3の駆動軸は、ポンプ2に直接またはカップリング等を介して間接的に連結され、給水装置のキャビネット30(
図1参照)に収容されている。一実施形態では、インバータ一体型電動機80は、給水装置のキャビネット30の外部に配置されていてもよい。さらに、インバータ一体型電動機80は、屋外または屋内に配置された配管を流れる流体を圧送するための単体のポンプ装置(流体移送装置)として用いられてもよい。
【0032】
図2に示すインバータ一体型電動機80のインバータ21も、
図1に示すインバータ21と同様に、ポンプ2の可変速手段として機能し、インバータ一体型電動機80は、上述した制御装置20と同様の構成を有する制御装置(例えば、制御基板)81を内蔵している。より具体的には、制御装置81は、吐出側圧力センサ26の出力信号に基づいて、インバータ21から電動機3へ発する指令値を演算する演算部48と、給水装置の運転状態情報を記憶する記憶部47と、を有している。さらに、インバータ一体型モータ80は、有線通信または無線通信によって上述した情報表示器61の通信部62に接続可能なように構成された通信部60を有している。なお、
図2に示す情報表示器61も、
図1に示す情報表示器61と同様の構成を有するスマートフォン(モバイル端末)である。
【0033】
給水装置で異常が発生すると、制御装置20は、警報を発して、給水装置の使用者および/または所有者(以下、単に「使用者」と称する)に異常の発生を伝達する。警報を受けた使用者は、情報表示器61を用いて、警報の内容を給水装置から受信することができる。
【0034】
情報表示器61が警報の内容を給水装置から受信すると、情報表示器61の演算部65は、受信した警報の内容とともに、該警報に対応する異常の発生要因を解除するためのチェックリストと、警報リセットボタンを情報表示器61のディスプレイ64に表示する。このようなチェックリストは、給水装置で発生する全ての警報のそれぞれに対応して予め作成されており、例えば、データベースとして情報表示器61の記憶部66に予め格納されている。一実施形態では、情報表示器61の演算部65は、通信部62を介して、受信した警報に対応するチェックリストをクラウドサーバ70または外部サーバ71などの外部記憶装置から読み出してもよい。本明細書では、警報の内容と、この警報を解除するためのチェックリストとを少なくとも含む情報を、「警報情報」と称する。なお、給水装置の型式が変わると、同一の警報であっても、ディスプレイ64に表示させるチェックリストを含む警報情報が異なることがある。そのため、警報情報は、給水装置の型式に応じて作成されている。さらに、本実施形態では、給水装置を流体移送装置の一例として説明しているが、流体移送装置の種類が異なる場合も、警報情報が異なる。そのため、警報情報は、本実施形態の対象となる流体移送装置で発生する警報に応じて作成される。
【0035】
図3は、情報表示器61のディスプレイ64に表示された警報情報の一例を示す模式図である。
図3に示す警報情報は、温度センサ18(
図1参照)の測定値が警報設定値を超過した際に発生される「ポンプ過熱」の警報に対応する警報情報である。
図3に示すように、ディスプレイ64には、警報の内容である「ポンプ過熱」が表示されており、さらには、「ポンプ過熱」の異常の発生要因を解消して、警報を解除するために使用者が確認すべき少なくとも1つの(図示した例では、3つの)チェック項目が表示されている。
【0036】
図3に示す例では、ポンプ過熱の異常の発生要因が、「1.圧力タンク28の異常」、「2.温度センサ18のコネクタの差し込み不良」、および「3.給水装置に流入する水の温度異常」であると想定した例を示している。使用者は、チェックリストの項目にしたがって、チェック項目に示された給水装置の状態および/または各種機器の状態を容易に確認することができる。
【0037】
チェック項目に記載の給水装置の状態および/または機器の状態の確認が使用者には困難であると想定される場合がある。このような場合は、チェック項目をタップすることで、チェック対象機器を特定可能な画像データをディスプレイ64に表示させてもよい。
図4は、
図3に示すチェック項目「温度センサのコネクタの差し込み状態を確認」をタップした際に情報表示器61のディスプレイ64に表示される画像データの一例を示す模式図である。
【0038】
図4に示す画像データの例では、制御装置20内に配置された制御基板の画像と、該制御基板に配置された温度センサ18のコネクタを囲む記号(
図4では○)が示されている。このような画像データをディスプレイ64に表示することで、使用者が容易に確認すべき温度センサ18のコネクタを特定できる。一実施形態では、チェック対象機器を特定可能な画像データに代えて、またはこれに加えて、チェック対象機器を特定するための動画データをディスプレイ64に表示させてもよい。
【0039】
図5は、
図3に示すチェック項目の確認が完了した後のディスプレイの表示の一例を示す模式図である。使用者は、チェック項目を確認するたびに、チェック項目の先頭に付されたボックスをタップする。全てのチェック項目のボックスがタップされると、ディスプレイ64の下部に記載された警報リセットボタンをタップすることができるようになる。一実施形態では、タップされたチェック項目の数に拘わらず(例えば、タップされたチェック項目がない場合でも)、警報リセットボタンをタップできてもよい。さらに、チェックボックスをタップできないチェック項目が1つでもある場合、情報表示装置61の演算部65は、使用者が警報リセットボタンをタップすることができないようにディスプレイ64の表示を制御してもよい。あるいは、情報表示器61の演算部65は、全てのチェック項目のボックスがタップされた場合に、警報リセットボタンをディスプレイ64に表示させてもよい。
【0040】
警報リセットボタンをタップすると、情報表示器61の演算部65は、通信部62を介して警報リセット信号を給水装置の通信部60に送信する。給水装置の通信部60が警報リセット信号を受信すると、給水装置の制御装置20は、警報をリセットする。一実施形態では、チェックボックスをタップできないチェック項目が1つでもあるにもかかわらず、使用者が警報リセットボタンをタップした場合、情報表示装置61の演算部65は、警報リセット信号の給水装置20への送信をキャンセルしてもよい。
【0041】
このように、ディスプレイ64に警報を解除するためのチェックリストを表示させることで、専門の作業員ではない使用者であっても、給水装置で発生した異常の発生要因を解消して、警報を解除できる可能性が高まる。すなわち、ディスプレイ64に表示されるチェックリストは、使用者が異常の発生要因を解消する補助となる。使用者が異常の発生要因を解消し、警報を解除できれば、重大な故障の発生を未然にまたは早期に解消できる可能性が高まる。
【0042】
チェックリストは、例えば、専門の作業員ではない使用者が確認可能なチェック項目のみで構成してもよい。この場合、専門の作業員でなければ確認が困難であるか、または不可能であるチェック項目は、チェックリストから除外される。このようなチェックリストをディスプレイ64に表示することで、使用者の誤操作による新たな異常の発生、および既に発生している異常の拡大を防止することができる。
【0043】
使用者が確認できないチェック項目があることで、いくつかのチェック項目をタップできない場合がある。さらに、使用者がチェック項目を確認した際に、対象機器が故障しているなどで、チェック項目をタップできない場合がある。例えば、
図3に示すチェック項目「圧力タンクは正常に稼働しているか?」にしたがって、作業員が圧力タンク28(
図1参照)を確認した際に、圧力タンク28が破損している場合がある。この場合は、使用者は、チェック項目「圧力タンクは正常に稼働しているか?」のチェックボックスをタップすることができない。
【0044】
さらに、チェックリストのチェック項目に記載された機器とは異なる機器に異常が発生している場合、全てのチェック項目をタップして、警報リセットボタンをタップした後に(例えば、直後に)、先の警報と同じ警報が発せられるおそれもある。このような不具合が発生した場合にそなえて、情報表示器61の演算部65は、ディスプレイ64にデータ送信ボタン(
図3参照)を表示させてもよい。データ送信ボタンは、異常の発生要因の解消ができない場合に使用者がタップするボタンである。
【0045】
本実施形態では、データ送信ボタンがタップされると、情報表示器61の演算部65は、チェックリストのチェック結果を専門の作業員が在籍している拠点(例えば、給水装置のサービスセンター)などの適切な場所に送信する。本明細書では、チェックリストのチェック結果が送信されるべき適切な場所を「管理拠点」と総称する。情報表示部61の記憶部66は、チェックリストのチェック結果を送信するためのデータ(例えば、電子メールのアドレス)を予め記憶している。一実施形態では、情報表示器61の演算部65は、チェックリストのチェック結果を、管理拠点、クラウドサーバ70、および外部サーバ71のうちの少なくとも1つに送信してもよいし、クラウドサーバ70、および/または外部サーバ71を介して管理拠点に送信してもよい。
【0046】
チェック結果を送信することにより、使用者では解消が困難な異常が給水装置に発生していることを、専門の作業員にいち早く知らせることができる。さらに、送信されたチェック結果は、専門の作業員が給水装置のどこに異常が発生しているかを判断または推定するのに役立つ。例えば、専門の作業員は、送信されたチェック結果から、交換を必要とする部品があるか否かをいち早く知ることができる。その結果、専門の作業員によって給水装置の異常の発生要因を出来るだけ早く解消することができる。
【0047】
データ送信ボタンをタップしたことにより送信される情報に、上記したチェック結果に加えて、警報が発せられている給水装置の特定情報を含めてもよい。特定情報は、給水装置の機器情報、使用者の連絡先、および給水装置の運転状態情報のうちの少なくとも1つを含む情報である。
【0048】
給水装置の機器情報は、給水装置の型式、給水装置の設置場所(例えば、住所)、および給水装置のシリアル番号のうちの少なくとも1つを含む情報である。機器情報は、専門の作業員をいち早く給水装置の設置場所に派遣させることに役立ち、さらには、給水装置の過去の故障発生履歴および修復履歴を確認するのに役立つ。使用者の連絡先は、専門の作業員が使用者へいち早く連絡することを可能にする。そのため、専門の作業員は、使用者から給水装置の現在の状況を即座に確認することができる。給水装置の運転状態情報は、専門の作業員が給水装置の異常がどこで発生しているか、および/または異常の発生要因が何かを判断または推定するのに役立つ。そのため、給水装置の運転状態情報によって、給水装置の設置場所に派遣される専門の作業員が給水装置の異常の発生要因を解消するための適切な準備を行うことができる。
【0049】
一実施形態では、全てのチェック項目をタップして、警報リセットボタンをタップした後に(例えば、直後に)、先の警報と同じ内容の警報が再度発せられた場合に、情報表示装置61の演算部65は、ディスプレイ64に連絡ボタンを表示してもよい。
図6は、連絡ボタンが表示されたディスプレイの一例を示す模式図である。
【0050】
作業員が連絡ボタンをタップすると、管理拠点に、給水装置で発生している警報の内容とともに、チェックリストに記載のチェック項目を確認するだけでは発生した異常を解消できなかったことが送信される。この情報によって、専門の作業員をいち早く給水装置の設置場所に派遣できるとともに、専門の作業員が給水装置の異常の発生要因を解消するための適切な準備を行うことができる。
【0051】
図6に示すように、ディスプレイ64には、連絡ボタンに加えて、異常の発生要因を解消するには、専門の作業員による点検・修復作業が必要なことを作業者に知られる通知が表示されるのが好ましい。さらに、上述したデータ送信ボタンをタップした場合と同様に、連絡ボタンをタップしたことにより送信される情報に、上述した給水装置の特定情報を含めてもよい。
【0052】
一実施形態では、情報表示器61の演算部65は、給水装置に発生している異常の発生要因を使用者が確認可能な警報のときのみ、上述したチェックリストと警報リセットボタン(
図3参照)をディスプレイ64に表示してもよい。さらに、情報表示器61の演算部65は、専門の作業員による点検・修復作業が必要な警報のときは、
図6に示す連絡ボタンを表示してもよい。情報表示器61の記憶部66は、使用者が確認可能な警報と、専門の作業員による点検・修復作業が必要な警報と、を予め記憶している。
【0053】
使用者が確認可能な警報は、例えば、給水装置のポンプ2(
図1参照)の緊急停止を行わない軽故障の警報である。このような軽故障の警報の例としては、流量検出器24の故障などが挙げられる。専門の作業員による点検・修復作業が必要な警報は、例えば、使用者が確認可能な警報以外の警報であり、給水装置のポンプ2(
図1参照)の緊急停止を行う重故障の警報である。このような重故障の警報の例としては、インバータトリップ、および漏電トリップなどが挙げられる。
【0054】
このように警報の種類に応じて、情報表示器61のディスプレイ64に表示させるボタンを異ならせることで、軽微な警報に関しては、使用者に異常の発生要因を解消させ、重大な警報のときのみ専門の作業員を派遣することができる。
【0055】
上述した実施形態では、情報表示器61のディスプレイ64に表示される各種ボタンをタップする例が説明されたが、本実施形態は、これらの例に限定されない。例えば、情報表示器61が音声認識機能を有している場合は、使用者が発する音声によって、警報リセットボタン、データ送信ボタン、および連絡ボタンをタップしたときと同様の効果を発生させてもよい。
【0056】
さらに、情報表示器61が指紋認証機能を有している場合は、警報リセットボタン、データ送信ボタン、および連絡ボタンをタップする前に、指紋認証を必要とさせてもよい。例えば、情報表示器61が指紋認証ボタン85を有している場合は、情報表示器61の演算部65は、指紋認証ボタン85を用いた指紋認証を、警報リセットボタン、データ送信ボタン、および連絡ボタンをタップ可能とする条件としてもよいし、音声認識による警報リセット、データ送信、および連絡を開始する条件としてもよい。
【0057】
これまで、給水装置を、回転機械を備えた流体移送装置の一例として情報表示器61の説明をしてきたが、流体移送装置は給水装置に限定されない。例えば、水中ポンプを備えた流体移送装置、およびファンを備えた送風機などの流体移送装置にも、上述した情報表示器61を適用することができる。
【0058】
チェックリストを含む警報情報、警報リセットボタン、データ送信ボタン、および連絡ボタンを、例えば、チャットボットなどの対話型アプリケーションを利用して、ディスプレイ64に表示させてもよい。例えば、対話型アプリケーションを用いて、警報情報のチェックリストのチェック項目を1つずつディスプレイ64に表示させてもよいし、複数のチェック項目の全てまたはいくつかを同時にディスプレイ64に表示させてもよい。さらに、対話型アプリケーションに、管理拠点への連絡を促す質問をさせることで、使用者がデータ送信ボタンおよび/または連絡ボタンをタップできるようにしてもよい。
【0059】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0060】
2 ポンプ
3 電動機
4 水道本管
5 導入管
7 配水管
8 吐出管
9 吸込管
11 バイパス管
16 逆止弁
18 温度センサ
20 制御装置
21 インバータ
22 逆止弁
24 流量検出器
26 吐出側圧力センサ
28 圧力タンク
30 キャビネット
46 設定部
47 記憶部
48 演算部
49 ディスプレイ
50 I/O部
51 運転パネル
53,66 クリアボタン
60 通信部
61 情報表示器
62 通信部
64 ディスプレイ
65 演算部
66 記憶部
70 クラウドサーバ(外部記憶装置)
71 外部サーバ(外部記憶装置)
80 インバータ一体型電動機
81 制御装置
85 指紋認証ボタン