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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111081
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20230803BHJP
   B65D 90/02 20190101ALI20230803BHJP
   F17C 1/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B63B25/16 P
B63B25/16 101B
B63B25/16 101A
B65D90/02 F
F17C1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012727
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA04
3E170AB29
3E170QA02
3E170SA01
3E170SA05
3E170SA20
3E172AA02
3E172AA06
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB06
3E172BD01
3E172CA10
3E172DA32
3E172KA02
(57)【要約】
【課題】十分な容量を備えつつ船舶への配置性を向上した燃料タンクを提供する。
【解決手段】略球形状に形成される外殻2と、この外殻2の内周面から中心に向かって突設される補強部材3とを備える燃料タンク1において、外殻2を上下方向zに貫通する仮想の中心軸Cと外殻2との交点に位置する頂部2aと底部2bとを外殻2が有していて、頂部2aから底部2bに至る略C字型に形成される補強部材3が外殻2の内周面に三つ以上固定されて、外殻2の外周面に突起部材が突設されて、この突起部材が底部2bの近傍であり且つ補強部材3に対応する位置に固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略球形状に形成される外殻と、この外殻の内周面から中心に向かって突設される補強部材とを備える燃料タンクにおいて、
前記外殻を上下方向に貫通する仮想の中心軸と前記外殻との交点に位置する頂部と底部とを前記外殻が有していて、
前記補強部材が、前記頂部から前記底部に至る略C字型に形成されるとともに前記外殻の内周面に三つ以上固定される構成を有していて、
前記外殻の外周面に突設される突起部材を備えていて、前記突起部材が前記底部の近傍であり且つ前記補強部材に対応する位置に固定されることを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記仮想の中心軸と平行に前記頂部の側から前記燃料タンクを見通したときに、
前記仮想の中心軸に対する周方向に前記補強部材が等間隔に配置される請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記燃料タンクが設置される固定面と前記外殻との間に配置されて前記外殻の前記補強部材に対応する位置を下方から支持する支持台を備えていて、
前記支持台が、前記外殻の外周面に沿って湾曲する上面と、この上面に形成されていて前記突起部材が貫入される溝部とを有する請求項1または2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記仮想の中心軸と平行に前記頂部の側から前記燃料タンクを見通したときに、
前記支持台が前記仮想の中心軸から放射状に延設される複数の前記上面を有していて、前記補強部材の数と同数の前記上面を前記支持台が有する請求項3に記載の燃料タンク。
【請求項5】
三つの前記補強部材を備える請求項1~4のいずれかに記載の燃料タンク。
【請求項6】
前記外殻が、内側の前記底部の近傍に配置されるポンプ収容部を有していて、
前記ポンプ収容部が、上下方向を軸方向として上端が開放されて下端が前記外殻に固定される筒状体で構成されていて、この筒状体の外周面に前記補強部材の下端が固定される請求項1~5のいずれかに記載の燃料タンク。
【請求項7】
前記補強部材の上端近傍に形成されていて気体を通過可能とする上部貫通孔を前記補強部材が有する請求項1~6のいずれかに記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに関するものであり、詳しくは十分な容量を備えつつ船舶への配置性を向上した燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶から排出される二酸化炭素を抑制するために、船舶の燃料を重油から天然ガスや水素やアンモニアに切り替えることが求められている。貨物であるLNGを貯留するガスタンクを有する船舶が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、貨物であるLNGを船舶の燃料として使用することが開示されている。
【0003】
一方でばら積み船やコンテナ船などは、船舶の燃料を天然ガス等に切り替えるためには別途燃料タンクが必要となる。十分な容量を備えつつ船舶への配置性を向上した燃料タンクが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2021-85423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は十分な容量を備えつつ船舶への配置性を向上した燃料タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための燃料タンクは、略球形状に形成される外殻と、この外殻の内周面から中心に向かって突設される補強部材とを備える燃料タンクにおいて、前記外殻を上下方向に貫通する仮想の中心軸と前記外殻との交点に位置する頂部と底部とを前記外殻が有していて、前記補強部材が、前記頂部から前記底部に至る略C字型に形成されるとともに前記外殻の内周面に三つ以上固定される構成を有していて、前記外殻の外周面に突設される突起部材を備えていて、前記突起部材が前記底部の近傍であり且つ前記補強部材に対応する位置に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、頂部から底部に至る範囲に補強部材が配置されているため、外殻を下方から支持台等で支持することが可能となる。簡易な構造の支持台で外殻を船舶に配置することが可能となる。船舶への配置性を向上するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】燃料タンクの概略を例示する説明図である。
図2】補強部材を例示する説明図である。
図3図2のAA端面を例示する説明図である。
図4図1の燃料タンクをBB矢視で例示する説明図である。
図5図1の燃料タンクをCC矢視で例示する説明図である。
図6】外殻に配置される突起部材の概略を例示する説明図である。
図7】補強部材と突起部材の位置関係を例示する説明図である。
図8図6のDD端面を例示する説明図である。
図9】支持台の概略を例示する説明図である。
図10】支持台の溝部を拡大して例示する説明図である。
図11】燃料タンクが船舶に配置される状態を例示する説明図である。
図12図4の補強部材の配置構造の変形例を例示する説明図である。
図13図5の補強部材の配置構造の変形例を例示する説明図である。
図14】外殻の変形例を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の燃料タンクを図に示した実施形態に基づいて説明する。なお、図中では燃料タンクの上下方向を矢印z、この上下方向に直交する縦方向を矢印y、縦方向を直角に横断する横方向を矢印xで示している。
【0010】
図1に例示するように本発明の燃料タンク1は、略球形状に形成される外殻2と、この外殻2の内周面から外殻2の中心に向かって突設される補強部材3とを備えている。外殻2は、略球形状に形成されていて内部に燃料を貯留するための空洞を有している。外殻2の形状は、完全な球形状に限定されず、部分的に円環状の平行部分を有する形状であってもよい。
【0011】
外殻2を上下方向zに貫通する仮想の中心軸Cと、外殻2との交点に位置する頂部2aと底部2bとを、外殻2は有している。図1では説明のため仮想の中心軸Cを一点鎖線で示している。仮想の中心軸Cと外殻2との交点のうち、上方となる位置を頂部2a、下方となる位置を底部2bという。
【0012】
外殻2は例えば炭素鋼で構成される。また外殻2は例えば直径が約23mで容量が約5000mに構成される。
【0013】
図1および図2に例示されるように補強部材3は、外殻2の内周面に沿って頂部2aから底部2bに至る範囲に配置されている。補強部材3は、外殻2の内周面に沿って上下方向zに延設されているとも言える。補強部材3は溶接等により外殻2の内周面に固定される。図1では説明のため補強部材3を破線で示している。
【0014】
図2に例示するように補強部材3は略C字型に形成されている。対置される二つの補強部材3を合わせると円環状となる。補強部材3は円形の板状部材の中心を円形にくり抜き、さらに半円状に二分割した形状とも言える。複数の部材を組み合わせて略C字型の一つの補強部材3が構成されていてもよい。本明細書では以下、頂部2aから底部2bに至る略C字型の補強部材3を一つとして数える。
【0015】
図3に例示するように補強部材3は端面の形状がT字型に構成されている。外殻2の内周面から立設される桁板部3aと、桁板部3aの端部から側方に延設される面材部3bとを、補強部材3は有している。例えば桁板部3aの上下方向zの長さは1000mm、縦方向yにおける面材部3bの長さは400mm、桁板部3aおよび面材部3bの板厚は20mmに構成される。
【0016】
補強部材3の端面の形状は、面材部3bを有さないI字型に構成されてもよく、桁板部3aから一方向のみに面材部3bが延設されるL字型に構成されてもよい。I字型よりもL字型、L字型よりもT字型に構成する方が、補強部材3により外殻2を補強する効果は大きくなる。
【0017】
図2に例示するように補強部材3は、上端近傍に形成される上部貫通孔3cを有している。上部貫通孔3cは、外殻2の頂部2aの近傍に配置される状態となり、気体が通過可能な大きさに形成されている。また補強部材3は、下端近傍に形成される下部貫通孔3dを有している。下部貫通孔3dは、外殻2の底部2bの近傍に配置される状態となり、液体が通過可能な大きさに形成されている。この実施形態では上部貫通孔3cおよび下部貫通孔3dは、補強部材3の桁板部3aの縁の一部を切り欠く状態で形成されている。上部貫通孔3cおよび下部貫通孔3dは、桁板部3aに形成される円形の貫通孔で構成されてもよい。また一つの補強部材3に形成される上部貫通孔3cや下部貫通孔3dの数は一つに限らず二つ以上であってもよい。
【0018】
図4に例示するように仮想の中心軸Cと平行となる方向に見通したときに、十字形となる状態で四つの補強部材3が外殻2に固定されている。仮想の中心軸Cを中心とする周方向pに補強部材3は等間隔に配置されている。周方向pに隣接する補強部材3どうしの間の角度θは90°となる。
【0019】
補強部材3の配置構造は上記に限らず、複数の補強部材3が周方向pに等間隔ではない状態で配置されていてもよい。例えばある補強部材3に対して、周方向pの一方側に隣接する補強部材3との間の角度θが60°であり他方側に隣接する補強部材3との間の角度θが120°であってもよい。
【0020】
四つの補強部材3はその上端を、外殻2の頂部2aの近傍で溶接等により互いに固定される状態となっている。四つの補強部材3の上端を連結するために、周方向pに隣接する補強部材3どうしの面材部3bの高さが異なる状態に補強部材3は構成されている。
【0021】
頂部2aの近傍であり補強部材3が配置されていない場所に、パイプ貫通部6が形成されてもよい。パイプ貫通部6は、外殻2の内部の燃料を外部に搬送するためのパイプが貫通する状態で配置される。
【0022】
図5に例示するように外殻2が、内側の底部2bの近傍に配置されるポンプ収容部7を有していてもよい。この実施形態ではポンプ収容部7は、底部2bの真上に配置されている。ポンプ収容部7は、上下方向zを軸方向として上端が開放されて下端が外殻2に固定される筒状体で構成されている。ポンプ収容部7の形状は円筒状に限らず、四角筒や六角筒などの角筒状に形成されてもよい。ポンプ収容部7を形成する筒状体の外周面に、補強部材3の下端が溶接等により固定される。ポンプ収容部7には、外殻2の内部の燃料を外部に搬送するためのポンプが配置される。燃料はポンプ収容部7に配置されるポンプおよびパイプ貫通部6に配置されるパイプを介して、外殻2の頂部2aから外部に汲み出される。
【0023】
ポンプ収容部7は必須の構成要件ではない。外殻2がポンプ収容部7を有さない場合は、補強部材3の下端どうしが底部2bの近傍で溶接等により互いに連結される。ポンプ収容部7と同様に筒状体を頂部2aの近傍に配置して、パイプ貫通部6として構成してもよい。この場合パイプ貫通部6を構成する筒状体の外周面に、補強部材3の上端が溶接等により固定される。
【0024】
図6に例示するように燃料タンク1は、外殻2の外周面に突設される突起部材8を備えている。突起部材8は、外殻2から外側に向かって突設されている。突起部材8は、外殻2の底部2bの近傍であり且つ補強部材3に対応する位置に固定されている。この実施形態では四つの突起部材8が外殻2に溶接等により固定されている。突起部材8は、補強部材3の桁板部3aと同様の構成を有している。つまり突起部材8は、端面がI字型となる状態に構成されている。図6では説明のため外殻2を破線で示している。
【0025】
図7に例示するように突起部材8は、補強部材3に対応する位置に溶接等により固定されている。補強部材3に対応する位置とは、補強部材3の桁板部3aと突起部材8とが外殻2の内外で重なる位置に配置されている状態をいう。補強部材3の桁板部3aに対して突起部材8の少なくとも一部が周方向pにおいて重なる位置にあればよい。
【0026】
図8に例示するように突起部材8が配置される範囲は、外殻2の底部2bの近傍である。外殻2の底部2bの近傍とは、仮想の中心軸Cと平行となる方向の外殻2の断面において、底部2bを中心に中心角φが0°より大きく180°以下となる範囲を言う。中心角φの上限値は90°以上180°以下の範囲で任意に決定できる。図8に例示する実施形態では中心角φ1が180°となる範囲に突起部材8が配置されている。中心角φ2が90°となる範囲に突起部材8が配置されてもよい。図8では説明のため中心角φ1=180°となる範囲、および中心角φ2=90°となる範囲を二点鎖線で示している。
【0027】
図9に例示するように燃料タンク1は、支持台9を備えていてもよい。支持台9は、燃料タンク1が載置される船舶の固定面と外殻2との間に配置される。支持台9は、補強部材3に対応する位置で外殻2を下方から支持する構成を有している。この実施形態では支持台9は、外殻2の外周面に沿って湾曲する上面10aを有する梁部材10と、梁部材10に固定されて上下方向zに沿って延設される柱部材11とを有している。梁部材10の下端は外殻2の底部2bの近傍となる位置で互いに固定されている。柱部材11は、梁部材10の上端から下方に向かって延設されている。梁部材10の途中部分や下端近傍に柱部材11が配置されていてもよい。支持台9が柱部材11を有さず、支持台9が設置される面まで梁部材10が延在する形状を有していてもよい。
【0028】
図10に例示するように支持台9を構成する梁部材10は、外殻2の外周面と接触して外殻2を支持する上面10aと、この上面10aに形成されていて突起部材8が貫入される溝部10bとを有している。
【0029】
図9に例示する実施形態では、仮想の中心軸Cに平行となる方向に見通したときに、四つの梁部材10が十字形となる状態に配置されている。外殻2に固定されている四つの突起部材8に対応する位置に、四つの梁部材10は配置されている。そのため支持台9を構成する四つの梁部材10は、補強部材3に対応する位置に配置される状態となる。
【0030】
突起部材8が配置される中心角φに対応する範囲に、支持台9の梁部材10は形成される。支持台9の大きさに合わせて突起部材8が設置される範囲(中心角φ)は決定される。
【0031】
支持台9は、仮想の中心軸Cに平行となる方向に見通したときに四角形であり、外殻2の外周面と接触する半球状の上面10aを有する構成であってもよい。ただし補強部材3に対応する位置のみで支持する十字形の方が外殻2の変形を抑制するには有利である。支持台9から外殻2に発生する垂直抗力が、補強部材3を配置されていない部分に発生しないためである。また支持台9を十字形とする方が、船体側構造の製造コストおよび支持台9の製造コストを抑制できる。
【0032】
燃料タンク1を船舶に設置する際には、まず船舶の上甲板等の固定面に支持台9を固定する。その後、支持台9に外殻2を載置する。このとき外殻2の突起部材8を支持台9の溝部10bに貫入させる。上面10aや溝部10bと外殻2との間に樹脂を流し込んだ後に硬化させる構成としてもよい。外殻2の外周面に支持台9の上面10a等が隙間なく密着する状態となるため、外殻2の重量を支持台9の全体で支持することが可能となる。
【0033】
樹脂が配置されていない場合、外殻2は支持台9に対して滑りながら変形することができる。外殻2が支持台9に対して溶接等で固定されていないため、熱により外殻2が変形する場合であっても外殻2に不要な応力が発生することを抑制できる。また樹脂を使用する場合は、樹脂と突起部材8との間に例えば積層木材やウレタンで構成されるスライドパッドを設けることで、外殻2の変形による不要な応力の発生を抑制できる。
【0034】
外殻2に貯留される燃料の種別や温度条件等から、外殻2が熱変形する可能性が低い場合は、外殻2と支持台9とを溶接等で固定してもよい。
【0035】
支持台9の上面10aは、外殻2よりも曲率の大きい湾曲面で構成されてもよい。外殻2を支持台9に載置する際の作業性が向上する。この場合は梁部材10の下端から上端に向かってで外殻2との隙間が大きくなるため、上面10aと外殻2との間に樹脂を配置することが望ましい。
【0036】
燃料タンク1は、補強部材3に対応する位置を支持台9で支持する構成であるため、外殻2を下方から支持することが可能となる。比較的簡易な構造の支持台9で外殻2を船舶に配置することが可能となる。燃料タンク1は船舶への配置性を向上できる。
【0037】
図11に例示するように燃料タンク1を船舶12の上甲板12aに配置することが可能となる。具体的には居住区12bの後方に燃料タンク1を配置できる。船倉など貨物を配置するための区画を圧迫しないため、船舶12における燃料タンク1の配置性を向上できる。
【0038】
支持台9の梁部材10が十字形に配置されているため、縦方向yおよび横方向xの動きに対して支持台9が外殻2を安定して支持できる。外殻2において支持台9が接触する箇所には補強部材3が配置されているため、自重により外殻2が変形する等の不具合を回避するには有利である。
【0039】
従来の球形LNGタンク等はタンクを下方から支持する場合には自重で潰れるおそれがあるため、一般的には球形LNGタンクの赤道上を支持することが一般的であり、下方から支持する構成は実現困難であった。球形LNGタンクの赤道上を支持する場合は、周方向に均等に支持する必要があるため、船舶の上甲板に配置しようとすると支持台が大規模となり、実現が困難であった。支持台を含めた燃料タンクの製造コストも大きくなる傾向にあった。
【0040】
燃料タンク1の外殻2は球形であるため、十分な量の燃料を船舶12に搭載できる。外殻2を大型化する際の構造的な制限が、他の形状と比べて球形の場合は少ない。燃料タンク1は、外殻2の大容量化を比較的容易に実現できる。
【0041】
燃料タンク1の外殻2は球形であるため、耐圧性に優れる。例えば円筒形状のタンクなど他の形状に比べて肉厚を小さくしつつ外殻2の耐圧性能を向上できる。燃料タンク1は、例えば加圧した液体アンモニアを常温で貯留することが可能となる。
【0042】
図8に例示するように外殻2に貯留されている液体燃料の水位Hwが高い場合に、補強部材3により区切られる部屋ごとの液体燃料の水位が不均衡となり、補強部材3に不要な応力が発生する場合がある。補強部材3の上端近傍に上部貫通孔3cが形成されている場合は、上部貫通孔3cを介して気体が移動できるのでこの不具合の発生を回避できる。
【0043】
外殻2に貯留されている液体燃料の水位Lwが低い場合に、補強部材3により区切られる部屋ごとの液体燃料の水位が不均衡となり、液体燃料が残っているにもかかわらずポンプで燃料を汲み上げられないことがある。補強部材3の下端近傍に下部貫通孔3dが形成されている場合は、下部貫通孔3dを介して液体燃料が移動できるのでこの不具合の発生を回避できる。燃料タンク1がポンプ収容部7を備える場合は、ポンプ収容部7を構成する筒状体にも上記と同様に液体燃料が移動するための貫通孔を形成することが望ましい。
【0044】
図12に例示するように仮想の中心軸Cと平行となる方向に見通したときに、略Y字型になる状態で三つの補強部材3が外殻2に固定される構成としてもよい。図12図4の変形例を示している。この実施形態では、仮想の中心軸Cを中心とする周方向pに三つの補強部材3が等間隔に配置されている。周方向pに隣接する補強部材3どうしの間の角度θは120°となっている。
【0045】
三つの補強部材3はその上端を、外殻2の頂部2aの近傍で溶接等により互いに固定される状態となっている。三つの補強部材3の桁板部3aおよび面材部3bが互いに固定されている。また頂部2aの近傍であり補強部材3が配置されていない場所に、パイプ貫通部6が形成されてもよい。
【0046】
図13に例示するように突起部材8は、補強部材3に対応する位置に固定されている。仮想の中心軸Cと平行となる方向に見通したときに、略Y字型になる状態で三つの突起部材8が外殻2に固定されている。図13図5の変形例を示している。
【0047】
この実施形態では燃料タンク1は、補強部材3に対応する位置で外殻2を下方から支持する支持台9を備えている。仮想の中心軸Cに平行となる方向に見通したときに、三つの梁部材10が略Y字型となる状態に配置されている。
【0048】
支持台9が略Y字型に構成されるため、図5に例示される十字形と比べて支持台9の製造コストを抑制できる。略Y字型の支持台9であっても、縦方向yおよび横方向xのいずれにおいても外殻2を支持できる。燃料タンク1は三つ以上の梁部材10を備えることで、縦方向yおよび横方向xにおいて外殻2を安定的に固定することができる。
【0049】
図13に例示するようにポンプ収容部7が、上下方向zを軸方向として上端が開放されて下端が外殻2に固定される三角筒で構成されてもよい。
【0050】
図11に例示するように燃料タンク1が、ストッパ13を備えていてもよい。この実施形態ではストッパ13は、外殻2の外側で頂部2aの近傍に固定される第一ストッパ13aと、この第一ストッパ13aの上方となる位置であり支持台9の側に固定される第二ストッパ13bとを有している。ストッパ13は、船舶12が事故等により沈没する際に、外殻2が船舶12から離れて漂流することを防止する。支持台9の側に固定される第二ストッパ13bにより、外殻2が浮力を得て浮き上がり支持台9から離れる不具合を回避できる。第二ストッパ13bは、支持台9に固定される構成に限らず、船舶12の他の構造物等に固定されてもよい。
【0051】
図14に例示するように略球形状に形成される外殻2は、部分的に円環状の平行部分2cを有する形状であってもよい。球形部分2dの半径rに対して、平行部分2cの軸方向の長さLが20%以下となる範囲であればよい。図14に例示する平行部分2cを有する外殻2の形状も略球形状に含まれる。図14では説明のため平行部分2cと球形部分2dとの境界を破線で示している。
【0052】
平行部分2cの長さLが大きいほど外殻2の容量を増大させることができる。平行部分2cの長さLが小さいほど外殻2の耐圧性能を向上することができる。燃料タンク1に貯留する燃料の圧力と、必要な容量とに応じて平行部分2cの長さLを適宜調整することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 燃料タンク
2 外殻
2a 頂部
2b 底部
2c 平行部分
2d 球形部分
3 補強部材
3a 桁板部
3b 面材部
3c 上部貫通孔
3d 下部貫通孔
6 パイプ貫通部
7 ポンプ収容部
8 突起部材
9 支持台
10 梁部材
10a 上面
10b 溝部
11 柱部材
12 船舶
12a 上甲板
12b 居住区
13 ストッパ
13a 第一ストッパ
13b 第二ストッパ
x 横方向
y 縦方向
z 上下方向
C 中心軸
p 周方向
θ (補強部材の間の)角度
φ、φ1、φ2 中心角
L (平行部分の)長さ
r (球形部分の)半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14