(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111361
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ニッケル酸化鉱石の製錬方法
(51)【国際特許分類】
C22B 23/02 20060101AFI20230803BHJP
C22C 33/04 20060101ALI20230803BHJP
C22B 1/242 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C22B23/02
C22C33/04 H
C22B1/242
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013177
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】井関 隆士
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001AA19
4K001BA02
4K001BA05
4K001CA23
4K001FA14
4K001GA13
4K001GA19
4K001HA01
4K001HA11
4K001HA12
(57)【要約】
【課題】ニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を含む混合物を還元することでメタルを製造する製錬方法において、得られるメタルの品位を高めることができ、高品質のメタルを効率的に製造することができるニッケル酸化鉱石の製錬方法を提供する。
【解決手段】ニッケル酸化鉱石からペレットを形成し、ペレットを還元することによってフェロニッケルを製造する製錬方法であって、ニッケル酸化鉱石と第1の還元剤とを混合して混合物を得る混合処理工程と、得られる混合物を成形してペレットとする混合物成形工程と、床敷材を還元炉の炉床に敷いて、ペレットを該床敷材の上に載置して、還元処理を施す還元工程と、を有し、床敷材は、第2の還元剤と、金属酸化物と、の混合物であるニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル酸化鉱石からペレットを形成し、該ペレットを還元することによってフェロニッケルを製造する製錬方法であって、
前記ニッケル酸化鉱石と第1の還元剤とを混合して混合物を得る混合処理工程と、
得られる混合物を成形してペレットとする混合物成形工程と、
床敷材を還元炉の炉床に敷いて、前記ペレットを該床敷材の上に載置して、還元処理を施す還元工程と、を有し、
前記床敷材は、第2の還元剤と、金属酸化物と、の混合物である
ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項2】
前記第2の還元剤は植物由来成分を含有する、
請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項3】
前記植物由来成分は澱粉を含有する、
請求項2に記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項4】
前記還元工程では、
前記第2の還元剤を、該ペレットを構成する前記ニッケル酸化鉱石に含まれる酸化鉄及び酸化ニッケルを過不足なく還元するために必要な還元剤の量を100質量%としたとき、5質量%以上100質量%以下の割合となるように含有する、
請求項1から3のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項5】
前記還元工程を経て得られる還元物からスラグを分離してフェロニッケルを得る分離工程をさらに有する、
請求項1から4のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法に関する
【背景技術】
【0002】
リモナイトあるいはサプロライトと呼ばれるニッケル酸化鉱石の製錬方法として、熔錬炉を使用して硫黄と共に硫化焙焼してニッケルマットを製造する乾式製錬方法、ロータリーキルンあるいは移動炉床炉を使用し還元剤を用いて還元することによって鉄-ニッケル合金(以下、「フェロニッケル」ともいう)を製造する乾式製錬方法、オートクレーブを使用して硫酸でニッケルやコバルトを浸出して得た浸出液に硫化剤を添加して混合硫化物(ミックスサルファイド)を製造する湿式製錬方法等が知られている。
【0003】
上述した種々の製錬方法の中で、炭素源と共に還元してニッケル酸化鉱石を製錬する場合、先ず、その原料鉱石を塊状物化やスラリー化等するための前処理が行われる。具体的に、ニッケル酸化鉱石を塊状物化、すなわち粉状や微粒状から塊状にする際には、そのニッケル酸化鉱石をバインダーや還元剤等と混合し、さらに水分調整等を行った後に塊状物製造機に装入して、例えば10mm~30mm程度の塊状物(ペレット、ブリケット等を指す。以下、単に「ペレット」という)とするのが一般的である。
【0004】
ペレットには、含有する水分を飛ばすために、ある程度の通気性が必要となる。また、ペレット内で均一に還元が進まないと、得られる還元物の組成が不均一にとなり、メタルが分散したり偏在したりする等の不都合が生じるため、混合物を均一に混合し、またペレットを還元処理する際には可能な限り均一な温度を維持することが重要となる。
【0005】
加えて、還元されて生成したフェロニッケルを粗大化させることも重要である。なぜなら、生成したフェロニッケルが、例えば数10μm~数100μm以下の細かな大きさであった場合、同時に生成したスラグと分離することが困難となり、フェロニッケルとしての回収率(収率)が大きく低下する。このことから、還元後のフェロニッケルを粗大化する処理も必要となる。
【0006】
また、製錬コストの低減も重要な技術課題であり、コンパクトな設備で操業できる連続処理が望まれている。
【0007】
例えば、特許文献1には、金属酸化物と還元剤とを含む塊成物を、移動床型還元溶融炉の炉床上に供給して加熱し、金属酸化物を還元溶融させる粒状金属の製造方法において、塊成物同士の距離を0としたときの塊成物の炉床への最大投影面積率に対する、塊成物の炉床への投影面積率の相対値を敷密度としたとき、平均直径が19.5mm以上32mm以下の塊成物を、敷密度が0.5以上0.8以下になるように炉床上に供給して加熱する方法が開示されている。この方法では、塊成物の敷密度と平均直径とを併せて制御することで、粒状金属鉄の生産性を高められることが開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の方法は、塊成物の外側で起こる反応を制御するための技術であり、還元反応において最も重要な因子である、塊成物の内部で起きる反応の制御については着目していない。他方で、塊成物の内部で起きる反応を制御することで、反応効率を高め、還元反応をより均一に進めることで、より高品質のフェロニッケルを得ることが求められている。
【0009】
また、特許文献1にあるような、特定の直径を有するものを塊成物として用いる方法では、特定の直径を有しないものを取り除く必要がある。そのため、塊成物を作製する際の収率は低いものであった。また、特許文献1に開示される方法は、塊成物の敷密度を0.5以上0.8以下に調整する必要があり、塊成物を積層させることもできないため、生産性の低い方法でもあった。また、これらの理由により、製造コストが上昇させる要因にもなっていた。
【0010】
このように、ニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を混合及び還元して金属や合金を製造する技術には、生産性を高め、製造コストを低減させ、メタルの品質を高めるという点で、多くの技術的課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を含む混合物を還元することでメタルを製造する製錬方法において、得られるメタルの品位を高めることができ、高品質のメタルを効率的に製造することができるニッケル酸化鉱石の製錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、還元剤と、金属酸化物とを含有する床敷材を還元炉の炉床に敷いて、ペレットを床敷材の上に載置して、還元処理を施すことで、高品質なフェロニッケルを効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の第1は、ニッケル酸化鉱石からペレットを形成し、該ペレットを還元することによってフェロニッケルを製造する製錬方法であって、前記ニッケル酸化鉱石と第1の還元剤とを混合して混合物を得る混合処理工程と、得られる混合物を成形してペレットとする混合物成形工程と、床敷材を還元炉の炉床に敷いて、前記ペレットを該床敷材の上に載置して、還元処理を施す還元工程と、を有し、前記床敷材は、第2の還元剤と、金属酸化物と、の混合物であるニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【0015】
本発明の第2は、第1の発明において、前記第2の還元剤は植物由来成分を含有する、ニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【0016】
本発明の第3は、第2の発明において、前記植物由来成分は澱粉を含有する、ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【0017】
本発明の第4は、第1から第3のいずれかの発明において、前記還元工程では、前記第2の還元剤を、該ペレットを構成する前記ニッケル酸化鉱石に含まれる酸化鉄及び酸化ニッケルを過不足なく還元するために必要な還元剤の量を100質量%としたとき、5質量%以上100質量%以下の割合となるように含有する、ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【0018】
本発明の第5は、第1から第4のいずれかの発明において、前記還元工程を経て得られる還元物からスラグを分離してフェロニッケルを得る分離工程をさらに有する、ニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ニッケル酸化鉱石からペレットを形成して還元してフェロニッケルを製造する方法において、高品質のフェロニッケルを効率よく製造することができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0022】
≪1.ニッケル酸化鉱石の製錬方法≫
本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石からペレットを形成し、ペレットに対して還元処理を施すことによりフェロニッケルメタルとスラグとを生成させる方法である。具体的には、ペレットを構成するニッケル酸化鉱石中のニッケル(酸化ニッケル)と鉄(酸化鉄)を還元することで、鉄-ニッケル合金であるフェロニッケルメタルとスラグを生成させ、そのメタルをスラグと分離することでフェロニッケルを製造する。
【0023】
そして、この製錬方法は、還元剤と金属酸化物と、を混合して得られる混合物を床敷材として還元炉の炉床に敷いて、ニッケル酸化鉱石と還元剤とを混合して得られる混合物をこの床敷材に載置して、還元処理を施すことを特徴としている。
【0024】
このような方法によれば、還元剤と金属酸化物との混合物を炉床に載置してニッケル酸化鉱石を含有する混合物に対して還元処理を施すことにより、得られるメタルの品位を高めることができる。
【0025】
図1は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す図である。
図1に示すように、この製錬方法は、ニッケル酸化鉱石を原料として第1の還元剤と混合して混合物を得る混合処理工程S1と、得られた混合物を所定の形状に成形してペレットとする混合物成形工程S2と、ペレットに還元処理を施す還元工程S3と、還元により生成した還元物からスラグを分離してフェロニッケルメタルを得る分離工程S4と、を有する。
【0026】
[混合処理工程]
混合処理工程S1は、ニッケル酸化鉱石を含む原料粉末を混合して混合物を得る工程である。具体的には、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に第1の還元剤を添加して混合し、また任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分、バインダー等の、例えば粒径が0.2mm~0.8mm程度の粉末に混合処理を施し混合物を得る。
【0027】
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。ニッケル酸化鉱石の代表的な構成成分としては、酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)を含有する。
【0028】
第1の還元剤としては、特に限定されないが、例えば、石炭粉、コークス粉等の炭素質還元剤が挙げられる。また、その一部または全てを植物由来成分、例えば澱粉等で構成してもよい。炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石の粒度や粒度分布と同等の大きさのものであると、均一に混合し易く、還元反応も均一に進みやすくなるため好ましい。
【0029】
第1の還元剤の混合量としては、特に限定されないが、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な還元剤の量を100質量%としたとき、50質量%以下とすることが好ましく、40質量%以下とすることがより好ましい。なお、酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な第1の還元剤の量とは、ペレットに含まれる酸化ニッケルの全量をニッケルメタルに還元するのに必要な化学当量と、ペレットに含まれる酸化鉄を鉄メタルに還元するのに必要な化学当量との合計値(以下、「化学当量の合計値」ともいう)と定義できる。
【0030】
また、第1の還元剤の混合量の下限値としては、特に限定されないが、化学当量の合計値を100%としたときに、20質量%以上とすることが好ましく、23質量%以上とすることがより好ましい。
【0031】
このように、ペレットに含まれる第1の還元剤の量(第1の還元剤の混合量)を、化学当量の合計値を100重量%としたときに20質量%以上50重量%以下の割合とすることで、還元反応を効率的に進行させることができ、ニッケル品位の高いフェロニッケルを効率的に製造することができる。
【0032】
任意成分として添加する添加剤である鉄鉱石としては、特に限定されないが、例えば、鉄品位が50質量%程度以上の鉄鉱石、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。また、フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。
【0033】
下記表1に、混合処理工程S1にて混合する、一部の原料粉末の組成(質量%)の一例を示す。なお、原料粉末の組成としてはこれに限定されない。
【0034】
【0035】
混合処理工程S1では、ニッケル酸化鉱石を含む原料粉末の混合を、混合機等を用いて行うことができる。また、原料粉末を混合して混合物を得る際、混合性を高めるために原料粉末に対して混練処理を施してもよい。これにより、混合物にせん断力が加えられ、第1の還元剤や原料粉末等の凝集が解けてより均一に混合できるとともに、各々の粒子の密着性を向上させ、また空隙を減少させることができるため、均一な還元処理を行い易くすることができ、還元反応の反応時間を短縮することができる。また、品質のばらつきを抑えることができる。
【0036】
混練処理は、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸混練機、二軸混練機等を用いて行うことができる。
【0037】
[混合物成形工程]
混合物成形工程S2は、混合処理工程S1にて得られた原料粉末の混合物を成形してペレットを得る工程である。混合物成形工程は必須の工程ではないが、混合物を所定の形状に成形することで取り扱い性を向上させることができる。ペレットの形状としては、還元炉の炉床に積層できる形状であればよいが、例えば、球状、直方体状、立方体状、円柱状等の形状であることが好ましい。混合物をこのような形状に成形することで、混合物の成形が容易になるため、成形にかかるコストを抑えることができる。また、成形する形状が複雑でないため、成形不良のペレットの発生を低減でき、ペレットの強度も維持しやすくなる。
【0038】
混合物成形工程S2では、例えば、ペレット成形装置を用いて混合物を成形することができる。ペレット成形装置としては、特に限定されないが、高圧、高せん断力で混合物を混練して成形できるものであることが好ましい。高圧、高せん断で混合物を混練することにより、原料粉の混合物の凝集を解くことができ、また効果的に混練することができるうえ、得られるペレットの強度を高めることができる。
【0039】
また、得られたペレットに対し乾燥処理を施してもよい。乾燥工程は必須の工程ではないが、ペレット形状に塊状化の処理を行って得られた塊状物は、その水分が例えば50質量%程度と過剰に含まれている。そのため、過剰の水分を含むペレットを急激に還元温度まで昇温すると、水分が一気に気化し、膨張して塊状物が破壊することがある。そこで、得られたペレットに対して乾燥処理を施し、例えば固形分が70質量%程度で、水分が30質量%程度となるようにすることで、次工程の還元工程S3における還元加熱処理においてペレットが崩壊することを防ぐことができる。またそれにより、還元炉からの取り出しが困難になることを防ぐことができる。さらに、ペレットは、過剰な水分によりべたべたした状態となっていることが多いため、乾燥処理を施すことで、取り扱いを容易にすることができる。
【0040】
ペレットを乾燥する方法は、特に限定されず、ペレットを所定の乾燥温度(例えば、200℃以上400℃以下)に保持する方法や所定の乾燥温度の熱風を混合物に対して吹き付けて乾燥させる方法等、従来公知の手段を用いることができる。このような乾燥処理により、例えば、ペレットの固形分が70質量%程度で、水分が30質量%程度となるようにする。なお、この乾燥処理時における混合物自身の温度としては、100℃未満とすることが好ましく、これにより水分の突沸等による混合物の破裂を抑制することができる。
【0041】
なお、この乾燥工程は、後述する還元炉の外で行ってもよいし、後述する還元炉内に塊状物を装入して還元炉内で乾燥処理を施してもよい。
【0042】
ここで、特に体積の大きなペレットを乾燥させる場合、乾燥前や乾燥後のペレットにひびや割れが入っていてもよい。ペレットの体積が大きい場合には、還元時にペレットが熔融して収縮するため、ひびや割れが生じることが多い。しかしながら、ペレットの体積が大きい場合には、ひびや割れによって生じる表面積の増加等の影響は僅かであるため、大きな問題は生じ難い。そのため、還元前のペレットにひびや割れがあってもよい。
【0043】
また、乾燥処理は連続して一度に行ってもよいし複数回に分けて行ってもよい。乾燥処理を複数回に分けて行うことにより混合物の破裂をより効果的に抑制することができる。なお、乾燥処理を複数回に分けて行った場合において、2回目以降の乾燥温度としては、150℃以上400℃以下が好ましい。この範囲で乾燥することにより、還元反応が進むことなく乾燥することが可能となる。
【0044】
下記表2に、乾燥処理後のペレット(混合物)における固形分中組成(質量部)の一例を示す。なお、塊状物(混合物)の組成としては、これに限定されるものではない。
【0045】
【0046】
[還元工程]
還元工程S3は、混合物成形工程S2で得られたペレットに還元処理を施す。具体的には、得られた塊状物(ペレット)を還元炉の炉床に載置し、還元炉により混合物に加熱還元処理を施す。還元工程S4における加熱還元処理により、混合物中の還元剤(第1の還元剤)に基づいて製錬反応(還元反応)が進行して、混合物中では、フェロニッケルメタル(以下、単に「メタル」という)と、フェロニッケルスラグ(以下、単に「スラグ」という)とが分かれて生成する。
【0047】
加熱還元処理では、例えば1分程度のわずかな時間で、先ず還元反応の進みやすい混合物の表面近傍において混合物中の酸化ニッケル及び酸化鉄が還元されメタル化してフェロニッケルとなり、殻(シェル)を形成する。一方で、殻の中では、その殻の形成に伴ってスラグ成分が徐々に熔融して液相のスラグが生成する。これにより、混合物中では、メタルと、スラグとが分かれて生成する。
【0048】
そして、処理時間が10分程度経過すると、還元反応に関与しない余剰の還元剤がメタルに取り込まれて融点を低下させて、メタルも液相となる。
【0049】
そして、還元工程S3では、第2の還元剤と、金属酸化物と、の混合物である床敷材を還元炉の炉床に敷いて、塊状物(ペレット)を床敷材の上に載置して還元処理を施すことを特徴としている。金属酸化物を含有する床敷材の上に塊状物(混合物)を載置して還元処理を施すことで、ペレットが炉床に焼付いたりしないようにすることができる。
【0050】
しかも、第2の還元剤を含有する床敷材の上に塊状物(混合物)を載置して還元処理を施すことで、得られるメタルの品位を高めることができる。還元炉内には、不活性雰囲気にした場合であっても不可避的に大気中の酸素が混入することがある。また、還元炉の加熱手段として、燃料ガスを必要とするバーナーを使用する場合には、燃焼ガスが還元炉内に混入することや、燃料に含まれる炭化水素が燃焼することで水が発生することがある。すると、得られるメタルの一部が酸化されて、メタルの品位が低下することがあった。
【0051】
そこで、床敷材として第2の還元剤と、金属酸化物と、の混合物を使用することで、炉床を保護しつつ、メタルの再酸化を防ぎ、併せて再酸化したものを再度還元することが可能となり、得られるメタルの品位を高めることができる。
【0052】
しかも、第2の還元剤と、還元剤としての機能を有さない金属酸化物と、の混合物を床敷材として使用することで、第2の還元剤のみを床敷材として使用する場合と比較して、第2の還元剤と、還元炉内での雰囲気と、の接触面を減らすことができるので、第2の還元剤による還元の持続時間を増加させることが可能となる。これにより、得られるメタルの品位をさらに高めることができる。
【0053】
また、床敷材に含まれる金属酸化物がペレット中の還元剤と反応して還元されることにより、床敷材自体がペレットに付着することがある。金属酸化物とともに第2の還元剤を含有する床敷材は、金属酸化物のみを含有する床敷材と比較して、濡れ性を低下させることが可能となるので、床敷材自体がペレットに付着することを抑制できる効果をも有する。
【0054】
なお、「床敷材を還元炉の炉床に敷く」とは、混合物を床敷材の上に載置する際に混合物の下部(載置部)と第2の還元剤とが接触すればよい。例えば、還元炉の炉床の少なくとも一部に床敷材を敷くような態様であっても、還元炉の炉床の全部に床敷材を敷き詰めるような態様であってもよい。
【0055】
床敷材に含有される第2の還元剤は、上述した第1の還元剤と同様のものを使用してもよく、異なるものであってもよい。例えば、石炭粉、コークス粉等の炭素質還元剤が挙げられる。
【0056】
また、第2の還元剤としては、少なくともその一部に、植物由来還元剤を含むものが好ましい。植物由来還元剤とは、植物に由来し、酸化鉱石を還元する機能を有する植物由来の有機物還元剤や、植物に由来する木材や竹材を炭化させた木炭や竹炭やこれらを含有する廃材や食品廃棄物等であってもよい。このように、還元炉の炉床に植物由来成分を少なくとも一部に含む床敷材を敷き詰めて混合物をその床敷材の上に載置して還元処理を施すことで、安価にかつ効率よく還元処理を施すことができるとともに、生成したメタルの再酸化を効果的に抑制することができる。
【0057】
特に、植物由来還元剤としては、澱粉を用いることが好ましい。澱粉は、化石燃料に比較して安価であり、枯渇の心配もない。また、植物由来成分の製造から消費までを考慮すると、温室効果ガスとされるCO2が増加することもなく、非常に環境にやさしい材料である。さらに、澱粉は、高純度で品質のばらつきが小さい製品を容易に入手できるため、還元剤に起因するコンタミを避けることができ、その結果、高品質なフェロニッケルを得ることができる。
【0058】
具体的に、澱粉は、下記化学式に示すように、炭素(C)、水素(H)、及び酸素(O)からなる構造体である。この澱粉が、還元工程における処理等で加熱され分解していくと、まずH2Oなどに分解されて揮発し、炭素分が残る。その結果、酸素や水素が抜けた細かい炭素が還元剤となるため反応性に富むものとなる。これにより、均一に鉱石を還元して品質ばらつきの小さい高品質なフェロニッケルを生成することができる。なお、澱粉としては、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、豆類の澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、片栗粉、ワラビ粉、葛粉等を挙げることができる。
【0059】
【0060】
床敷材に含有される第2の還元剤の量は、特に限定されないが、ペレットを構成するニッケル酸化鉱石に含まれる酸化鉄及び酸化ニッケルを過不足なく還元するために必要な還元剤の量を100質量%としたとき、5質量%以上100質量%以下の範囲の割合となるようにすることが好ましい。第2の還元剤の量が5質量%以上であることで、生成したメタルの再酸化をより効果的に抑制することができる。また、第2の還元剤の量が100質量%以下であることで、過還元となる可能性を軽減できるので、メタル中のニッケル品位の低下を抑制することができる。
【0061】
床敷材に含有される金属酸化物としては、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカあるいはこれらのセメントから選択される1種以上から構成されるものを用いることが好ましい。このような金属酸化物を含有させた床敷材を用いることにより、混合物と炉床との反応及び混合物と床敷材との反応を抑制して床敷材を保護することが可能となるので、その結果として、製錬のコストを低下させることができる。
【0062】
床敷材に含まれる第2の還元剤と金属酸化物との含有率(第2の還元剤の含有量:金属酸化物の含有量)は、ペレットを構成する酸化鉱石の量やペレットの大きさや形状や還元炉内での雰囲気等にもよるが、80:20~20:80であることが好ましく、70:30~30:70がより好ましい。
【0063】
第2の還元剤と金属酸化物とを混合する方法は、とくに限定されるものではなく、すり鉢等を使用して手動で混合してもよいし、混合機等を用いて混合してもよい。
【0064】
第2の還元剤として植物由来の有機物還元剤を使用する場合には、加熱還元処理の途中で混合物中の植物由来の有機物還元剤や還元炉の炉床に敷いた植物由来の有機物還元剤が燃えてしまう可能性がある。そこで、還元炉内を低酸素濃度の雰囲気下にして混合物に還元処理を施すことが好ましい。低酸素濃度の雰囲気下とは、例えば酸素濃度が3.0体積%以下である雰囲気下で還元処理を施すことが好ましく、1.0体積%以下である雰囲気下で還元処理を施すことがより好ましい。また、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で還元処理を施してもよい。
【0065】
還元処理における温度(還元温度)としては、特に限定されないが、1200℃以上1450℃以下の範囲とすることが好ましく、1300℃以上1400℃以下の範囲とすることがより好ましい。このような温度範囲で還元することによって、均一に還元反応を生じさせることができ、品質のばらつきを抑制したフェロニッケルを生成させることができる。また、より好ましくは1300℃以上1400℃以下の範囲の還元温度で還元することで、比較的短時間で所望の還元反応を生じさせることができる。
【0066】
還元処理における時間(処理時間)としては、還元炉の温度に応じて設定されるが、10分以上であることが好ましく、15分以上であることがより好ましい。他方で、還元加熱処理を行う時間の上限は、製造コストの上昇を抑える観点から、50分以下としてもよく、40分以下としてもよい。
【0067】
なお、還元温度(℃)と還元時間(分)の数値を乗じた値を還元に要した熱量は、20000(℃×分)以上40000(℃×分)以下の範囲であることが好ましい。高品質なメタルを効率的に製造することができる。
【0068】
また、還元加熱処理においては、還元反応の途中において還元剤(第3の還元剤)をペレットに追加添加してもよい。還元反応がある程度進むと炉内に不可避的に持ち込まれる酸素や燃料の燃焼によって発生する水分によって、生成したメタルの酸化が起きることがある。このとき、還元反応の途中でペレットに対して第3の還元剤を追加添加することで、メタルの再酸化を防ぐことができる。第3の還元剤の添加は、ペレットの上部から行われることが好ましい。生成したメタルの酸化がガスと接する頻度の高いペレット上部から添加することによって効率的に再酸化を防ぐことができる。
【0069】
第3の還元剤は、上述した第1の還元剤や第2の還元剤と同様のものを使用してもよく、異なるものであってもよい。
【0070】
なお、還元剤の追加添加における第3の還元剤の割合としては、特に限定されないが、加熱還元処理に供するペレットに含まれる還元剤(第1の還元剤と第2の還元剤の合計)を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下程度の範囲とすることが好ましい。このような範囲で追加添加することで、効率的に酸化の抑制をできるとともに過還元となることも防ぐことができる。
【0071】
還元加熱処理に用いる還元炉としては、特に限定されない。例えば、固定炉床を用いても移動式炉床炉を用いてもよいが、移動式炉床炉を用いることが好ましい。このような還元炉として移動炉床炉を使用することにより、混合物をより効率的に処理することができる。また、移動炉床炉を用いることで、連続的に還元反応が進行し、一つの設備で反応を完結させることができ、各工程における処理を別々の炉を用いて行うよりも処理温度の制御を的確に行うことができる。さらに、各処理間でのヒートロスを低減して、より効率的な操業が可能となる。
【0072】
還元炉の加熱手段は、特に制限はされないが、バーナーであっても、電気等を用いたものであってもよい。短時間で混合物に有効に加熱還元処理を施すことができることからバーナーであることが好ましい。また、バーナーを有する還元炉を用いる場合、燃料としては、例えばLPG、LNG、石炭、コークス、微粉炭等が用いられる。これらの燃料のコストは非常に安価であり、設備費やメンテナンス費に関しても電気炉等と比較して格段に安価に抑えることができる。
【0073】
[分離工程]
分離工程S4は、還元工程S3にて生成したメタルとスラグとを分離してメタルを回収する工程である。具体的には、ペレットに対する還元加熱処理によって得られた、メタル相(メタル固相)とスラグ相(スラグ固相)とを含む混在物(還元物)から、メタル相を分離して回収する。
【0074】
固体として得られたメタル相とスラグ相との混在物からメタル相とスラグ相とを分離する方法としては、例えば、篩い分けによる不要物の除去に加えて、比重による分離や、磁力による分離等の方法を利用することができる。
【0075】
また、得られたメタル相とスラグ相は、濡れ性が悪いことから容易に分離することができ、上述した還元工程S3によって得られる大きな混在物に対して、例えば、所定の落差を設けて落下させ、あるいは篩い分けの際に所定の振動を与える等の衝撃を付与することで、その混在物からメタル相とスラグ相とを容易に分離することができる。
【実施例0076】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
[原料粉末の混合]
各試料について原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び第1の還元剤(石炭粉(炭素含有量:52重量%、平均粒径:約147μm))を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を得た。そして、第1の還元剤を原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを過不足なく還元するのに必要な量を100質量%としたときに、下記表4~7に示す割合で含有させた。
【0078】
[混合物の成形]
次に、各試料について得られた混合物をペレタイザーでペレット形状に成形した。その後、得られたペレットを篩って直径16±0.3mmのペレットを回収し試験に用いた。
【0079】
次に、各々の試料に対して、固形分が70質量%程度、水分が30質量%程度となるように、150℃~200℃の窒素の熱風を吹き付けて乾燥処理を施した。下記表3に、乾燥処理後のペレットの固形分組成(炭素を除く)を示す。
【0080】
【0081】
(実施例1)
実施例1では、床敷材に含有させる第2の還元剤として、微粉炭、石炭、コークスを使用した。
[ペレットに対する還元加熱処理]
乾燥処理後の試料のペレットを、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした還元炉に装入した。なお、還元炉内の装入時の温度条件としては500±20℃とした。
【0082】
実施例1-1~1-13については、炉床に床敷材としてアルミナ粒(金属酸化物)と第2の還元剤とを混合した混合物を敷き詰めて還元処理を行った。具体的に、床敷材を構成する還元剤(第2の還元剤)として、実施例1-1~1-12では微粉炭を、実施例1-13では石炭を、実施例1-14ではコークスを用いた。また比較例1-1~1-3については、アルミナ粒(金属酸化物)を含有し、第2の還元剤を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を該床敷材の上に載置して還元処理を施した。比較例1-4については、第2の還元剤を含有し、アルミナ粒(金属酸化物)を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を該床敷材の上に載置して還元処理を施した。
【0083】
次に、下記表4、5に示す温度及び時間で、ペレットに対して還元加熱処理を施した。還元処理後は、窒素雰囲気中で速やかに室温まで冷却して、試料を大気中へ取り出した。
【0084】
還元加熱処理後の各試料について、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有率を、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S-8100型)により分析して算出した。具体的に、ニッケルメタル化率、メタル中のニッケル含有率は、以下の式により算出した。
ニッケルメタル化率=混合物中のメタル化したNi量÷(混合物中の全てのNi量)×100(%)
メタル中のニッケル含有率=混合物中のメタル化したNi量÷(混合物中のメタルしたNiとFeの合計量)×100(%)
【0085】
また、還元加熱処理後の各試料について、湿式処理よる粉砕後、磁力選別によってメタルを回収した。そして、還元炉に装入したペレット積層体におけるニッケル酸化鉱石の含有量と、ニッケル酸化鉱石におけるニッケル含有率と、回収されたニッケル量からニッケルメタル回収率を算出した。なお、ニッケルメタル回収率は、以下の式により算出した。
ニッケルメタル回収率=回収されたNi量÷(装入した酸化鉱石の量×酸化鉱石中のNi含有率)×100(%)
【0086】
下記表4、5に、それぞれの試料における、ニッケルメタル化率、メタル中のニッケル含有率、及びニッケルメタル回収率を示す。
【0087】
【0088】
【表5】
(表中、「第1の還元剤」の量とは、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な還元剤の量を100質量%としたときの含有量を意味し、「第2の還元剤」の量とは、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な還元剤の量を100質量%としたときの含有量を意味する。表中、「床敷材」における「混合物」とは、床敷材として第2の還元剤と、金属酸化物と、の混合物を使用したことを意味し、「床敷材」における「金属酸化物」とは、床敷材として金属酸化物を使用したことを意味し、「床敷材」における「第2の還元剤」とは、床敷材として第2の還元剤を使用したことを意味する。)
【0089】
表4、5の結果に示されるように、還元剤と、金属酸化物とを含有する床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を床敷材の上に載置して、還元処理を施した実施例1-1~1-14では、ニッケルメタル化率、及びメタル中ニッケル含有率において良好な結果が得られた。このことから、本発明に係る酸化鉱石の製錬方法は、高品質なメタルを効率的に製造することができることが分かる。
【0090】
一方、還元剤を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を床敷材の上に載置して、還元処理を施した比較例1-1~1-3ではNiメタル化率、Ni含有率、メタル回収率のいずれにおいても実施例に比べて低い値となっており、本発明の効果を奏するものとはなっていない。また、金属酸化物を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を床敷材の上に載置して、還元処理を施した比較例1-4では得られるメタルの品位を十分に高めるものとはなっていない。
【0091】
なお、実施例1-1~1-14及び比較例1-1~1-3では、ペレットが炉床に焼付いたりせず、床敷材としての機能を奏するものであった。一方、床敷材として金属酸化物を含まないものを使用した比較例1-4では微粉炭中の炭素が消費されて残った微粉炭残物の量が多くないためペレットが炉床に焼付いてしまい、床敷材としての機能を奏するものとなっていなかった。
【0092】
(実施例2)
実施例2では、床敷材に含有させる第2の還元剤として、植物由来成分を使用した。
[ペレットに対する還元加熱処理]
乾燥処理後の試料のペレットを、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした還元炉に装入した。なお、還元炉内の装入時の温度条件としては500±20℃とした。
【0093】
実施例2-1~2-14については炉床に床敷材としてアルミナ粒(金属酸化物)と第2の還元剤とを混合した混合物を敷き詰めて還元処理を行った。具体的には実施例2-1~2-11については第2の還元剤として澱粉を使用し、実施例2-12については第2の還元剤として澱粉と微粉炭の混合物を使用した。また比較例2-1~2-3については、アルミナ粒(金属酸化物)を含有し、第2の還元剤を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を該床敷材の上に載置して還元処理を施した。比較例2-4については、第2の還元剤を含有し、アルミナ粒(金属酸化物)を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を該床敷材の上に載置して還元処理を施した。
【0094】
次に、下記表6、7に示す温度及び時間で、ペレットに対して還元加熱処理を施した。還元処理後は、窒素雰囲気中で速やかに室温まで冷却して、試料を大気中へ取り出した。
還元加熱処理後の各試料について、上記実施例1と同様に、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有率を算出した。
【0095】
下記表6、7に、それぞれの試料における、ニッケルメタル化率、メタル中のニッケル含有率、及びニッケルメタル回収率を示す。
【0096】
【0097】
【表7】
(表中、「第1の還元剤」の量とは、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な還元剤の量を100質量%としたときの含有量を意味し、「第2の還元剤」の量とは、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な還元剤の量を100質量%としたときの含有量を意味する。表中、「床敷材」における「混合物」とは、床敷材として第2の還元剤と、金属酸化物と、の混合物を使用したことを意味し、「床敷材」における「金属酸化物」とは、床敷材として金属酸化物を使用したことを意味し、「床敷材」における「第2の還元剤」とは、床敷材として第2の還元剤を使用したことを意味する。)
【0098】
表6、7の結果に示されるように、還元剤と、金属酸化物とを含有する床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を床敷材の上に載置して、還元処理を施した実施例2-1~2-12では、ニッケルメタル化率、及びメタル中ニッケル含有率において良好な結果が得られた。このことから、本発明に係る酸化鉱石の製錬方法は、高品質なメタルを効率的に製造することができることが分かる。
【0099】
一方、還元剤を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を床敷材の上に載置して、還元処理を施した比較例2-1~2-3ではNiメタル化率、Ni含有率、メタル回収率のいずれにおいても実施例に比べて低い値となっており、本発明の効果を奏するものとはなっていない。また、金属酸化物を含有しない床敷材を還元炉の炉床に敷いて、混合物を床敷材の上に載置して、還元処理を施した比較例2-4では得られるメタルの品位を十分に高めるものとはなっていない。
【0100】
なお、床敷材として金属酸化物を含むものを使用した実施例2-1~2-12及び比較例2-1~2-3では、ペレットが炉床に焼付いたりせず、床敷材としての機能を奏するものであった。一方、床敷材として金属酸化物を含まないものを使用した比較例2-4では澱粉中の炭素が消費されて残った澱粉残物がほとんどないためペレットが炉床に焼付いてしまい、床敷材としての機能を奏するものとなっていなかった。