(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111500
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】成形品、容器、および容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230803BHJP
B65D 77/30 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D77/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013376
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB81
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB32
3E067GC01
4F100AK02A
4F100AK02C
4F100AK03B
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100EC03C
4F100GB16
4F100GB23
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】高温滅菌処理においても耐熱性に優れ、かつ、溶着時に液体収容部との間で隙間を抑制することが可能な成形品、この成形品を備える容器、および容器の製造方法を提供する。
【解決手段】排出口13を有する成形品10であって、排出口13の排出路14に交差する断面が、排出路14を形成する最内層15と、排出口13の外周部を形成する表層16とを有し、最内層15が環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成され、最内層15の一部が表層16の側に露出されており、表層16の主要部18が、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂から形成され、表層16の主要部18の外面にフィン19が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出口を有する成形品であって、
前記排出口の排出路に交差する断面が、前記排出路を形成する最内層と、前記排出口の外周部を形成する表層とを有し、
前記最内層が環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成され、前記最内層の一部が前記表層の側に露出されており、
前記表層の主要部が、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂から形成され、
前記表層の主要部の外面にフィンが形成されていることを特徴とする成形品。
【請求項2】
前記フィンは、前記成形品の溶着時において、前記最内層の一部の上に伸長することができることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
前記表層の主要部が、前記フィンと対応する位置で、前記最内層の一部が前記表層の側に露出された箇所から離れた側に、前記成形品が把持される平面部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の成形品の前記表層に、積層体から形成された液体収容部が溶着された容器であって、前記フィンは、前記最内層の一部の上に伸長していることを特徴とする容器。
【請求項6】
前記積層体は、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されたシーラントを有し、前記シーラントが、前記成形品に対して、前記表層の側に露出された前記最内層に接合されていることを特徴とする請求項5に記載の容器。
【請求項7】
請求項5または6に記載の容器の製造方法であって、
前記フィンが前記表層の主要部の外面に形成された前記成形品を前記積層体に溶着し、前記フィンを前記最内層の一部の上に伸長させることを特徴とする容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品、容器、および容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品等の薬剤をプラスチック樹脂等で成形された容器に充填したソフトバッグが知られている。特許文献1には、薬剤の吸着性及び透過性がない材料として、多層フィルムからなる容器のシーラントおよび排出口の排出路を形成する最内層等に環状オレフィン系樹脂層を有する多層液体容器が記載されている。
【0003】
また、特許文献2の段落0003および段落0062には、ポートがバッグに溶着される箇所が舟形形状であると、内容液が残液となりやすいため、円筒状であることが好ましい趣旨の記載がある。
また、特許文献3の段落0029には、スパウトの外面で、2枚のシートが溶着される箇所にフィンを突出させ、隙間を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-36954号公報
【特許文献2】特開2014-57723号公報
【特許文献3】特開2009-220835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の容器は、最内層が環状オレフィン系樹脂、表層の主要部がメタロセン系ポリエチレンを主成分として、かつ、表層の一部分に環状オレフィンが露出した排出口を有する。さらに、特許文献1に記載の容器では、排出口が、環状オレフィン系樹脂を主成分とするシーラントに溶着されている。これにより、排出口を形成する樹脂への吸着を防止しつつ、高温蒸気滅菌が可能であり、高い溶着強度を有する。
【0006】
しかし、2種類の材料を組み合わせた成形品にフィンを形成するには、フィンの位置合わせが難しい。特に、環状オレフィン系樹脂は高温における流動性が低い場合があり、耐熱性には寄与するが、小さなフィンを形成することが難しい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温滅菌処理においても耐熱性に優れ、かつ、溶着時に液体収容部との間で隙間を抑制することが可能な成形品、この成形品を備える容器、および容器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、排出口を有する成形品であって、前記排出口の排出路に交差する断面が、前記排出路を形成する最内層と、前記排出口の外周部を形成する表層とを有し、前記最内層が環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成され、前記最内層の一部が前記表層の側に露出されており、前記表層の主要部が、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂から形成され、前記表層の主要部の外面にフィンが形成されていることを特徴とする成形品を提供する。
【0009】
前記フィンは、前記成形品の溶着時において、前記最内層の一部の上に伸長することができてもよい。
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種を含んでもよい。
前記表層の主要部が、前記フィンと対応する位置で、前記最内層の一部が前記表層の側に露出された箇所から離れた側に、前記成形品が把持される平面部を有してもよい。
【0010】
また、本発明は、前記成形品の前記表層に、積層体から形成された液体収容部が溶着された容器であって、前記フィンは、前記最内層の一部の上に伸長していることを特徴とする容器を提供する。
前記積層体は、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されたシーラントを有し、前記シーラントが、前記成形品に対して、前記表層の側に露出された前記最内層に接合されていてもよい。
【0011】
また、本発明は、前記容器の製造方法であって、前記フィンが前記表層の主要部の外面に形成された前記成形品を前記積層体に溶着し、前記フィンを前記最内層の一部の上に伸長させることを特徴とする容器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温滅菌処理においても耐熱性に優れ、かつ、溶着時に液体収容部との間で隙間を抑制することが可能な成形品、この成形品を備える容器、および容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の成形品の一例を示す断面図である。
【
図2】実施形態の成形品の一例を示す底面図である。
【
図4】成形品と液体収容部との溶着部を示す断面図である。
【
図6】フィンのさらに別の形状を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
図1に、実施形態の成形品10の一例を示す。
図2に、成形品10の底面図を示す。
図3に、成形品10を用いた容器30の一例を示す。
図4は、成形品10と液体収容部20との溶着部を示し、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【0015】
図1に示すように、実施形態の成形品10は、排出口13を有する。排出口13の排出路14に交差する断面が、排出路14を形成する最内層15と、排出口13の外周部を形成する表層16とを有する。
【0016】
最内層15は、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されている。この最内層15の一部は、表層16の側に露出されている。すなわち、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂からなる第1層11が、最内層15の全部と、表層16の一部である従属部17とを形成している。
【0017】
表層16のうち、従属部17を除く主要部18は、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されている。すなわち、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂からなる第2層12が、表層16の主要部18を形成している。表層16の主要部18を形成するポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種を含んでもよい。
【0018】
図1に示すように、表層16の主要部18の外面にフィン19が形成されている。フィン19の設計としては、
図3~4に示すように、液体収容部20のフィルム(積層体23)との隙間を埋めることを目的としていることから、シール幅全体を通して全ての隙間が埋められるような寸法・形状とすることが望ましい。ただし、フィルムとの隙間の大きさは、フィルムの柔軟性や厚みにより異なるため、一概には定められないが、排出路14の軸方向に沿ったフィン19の長さや主要部18の外面からフィン19が突出する高さを調整し形成することができる。
【0019】
図2に示すように、フィン19は、排出路14を取り囲んで筒状に形成される成形品10の外面で、互いに対向する2か所に形成されている。主要部18の上で排出路14の軸方向に沿ったフィン19の長さは、特に限定されないが、例えば、1~20mmであり、好ましくは2~15mm、より好ましくは3~10mmの範囲である。主要部18の外面からフィン19が突出する高さは、特に限定されないが、例えば、0.1~10mmであり、0.2~2.5mm程度であってもよい。
【0020】
成形品10の表層16には、積層体23から形成された液体収容部20が接合されている。実施形態の容器30は、成形品10と液体収容部20とを備えている。積層体23は、成形品10と接合される側の面にシーラント21を有する。シーラント21は、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されることが好ましい。積層体23は、フィルム状、シート状、チューブ状等であってもよい。
【0021】
シーラント21は、成形品10に対して、表層16の側に露出された最内層15に接合されている。すなわち、少なくとも表層16の従属部17において、成形品10の第1層11と液体収容部20のシーラント21とが接合されている。積層体23は、基材22を有してもよい。シーラント21は、基材22の片面に形成されている。シーラント21と接合される従属部17の幅は、特に限定されないが、例えば、1~20mmであり、好ましくは2~15mm、より好ましくは3~10mmの範囲である。
【0022】
図1に示す成形品10のフィン19は、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されているため、成形品10の溶着時に溶融する。成形品10が液体収容部20に溶着されるとき、
図3に示すように、フィン19が主要部18上から従属部17上まで伸長する。伸長部19Aは、フィン19が従属部17上に伸長した部分であり、従属部17とシーラント21との間に溶着することができる。
【0023】
従属部17は、最内層15の一部であるため、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されるのに対し、フィン19は、表層16の主要部18と一体で、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂から形成されている。このため、成形品10のフィン19は成形が容易になる。また、
図4に示すように、溶着後には伸長部19Aが従属部17の上まで伸長するので、成形品10と積層体23との隙間を抑制することができる。
【0024】
成形品10が積層体23と接する外面の形状は、フィン19を除くと円筒面であることが好ましい。これにより、点滴など排出口13を下向きにして容器30を吊るして自重で内容液を排出する際、液体収容部20の内面が成形品10付近まで表裏の積層体23間に隙間が生じにくくなり、残液を抑制することができる。
【0025】
表層16の主要部18が、フィン19と対応する位置であって、表層16の従属部17から離れた側に、成形品10が把持される平面部24を有してもよい。平面部24に治具等を接触させて成形品10を把持することにより、2枚の積層体23またはチューブ状の積層体23が2箇所で向かい合う箇所にフィン19を位置合わせすることが容易になる。
【0026】
成形品10のフィン19の断面形状は特に限定されないが、成形品10の外面と積層体23の内面との隙間に合わせた略三角形状でもよい。
図5に示すように、略四角形状のフィン191でもよい。
図6に示すように、先端部が略半円状のフィン192でもよい。フィン19,191,192の断面形状および断面寸法が、排出路14の軸方向に沿って一様であってもよい。フィン19,191,192の断面形状が軸方向に沿って変化してもよい。フィン19,191,192の断面寸法がテーパ状に変化してもよい。
【0027】
実施形態の成形品10において、表層16の主要部18を形成する樹脂は、ポリプロピレン(PP)系樹脂を含有することが好ましい。PP系樹脂は比較的高融点であるため、表層16の主要部18の耐熱性を高めることにより、成形品10全体の耐熱性を向上することができる。PP系樹脂は、融点がより高い樹脂、あるいは、メルトフローレート(MFR)がより低い樹脂を選択することが好ましい。PP系樹脂の場合、MFRの測定条件としては、例えば試験温度230℃、公称荷重2.16kgが挙げられる。
【0028】
実施形態の成形品10において、表層16の主要部18を形成する樹脂は、ポリエチレン(PE)系樹脂を含有することが好ましい。PE系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0029】
実施形態の成形品10において、表層16の主要部18を形成する樹脂は、スチレン系エラストマーを含有することが好ましい。これにより、表層16の主要部18の柔軟性、変形性が改善され、第1層11と第2層12との溶着強度、成形品10の落下強度等を向上することができる。
【0030】
表層16の主要部18に含まれる樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーとを含有する樹脂から構成されてもよく、PP系樹脂とPE系樹脂とスチレン系エラストマーとを含有する樹脂から構成されてもよい。表層16の主要部18は、樹脂成分以外に、添加剤成分を含んでもよい。
【0031】
表層16の主要部18に使用可能なPP系樹脂としては、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンとエチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体であってもよい。PP系樹脂が、シングルサイト系触媒を用いて重合されたプロピレン系共重合体であってもよい。PP系樹脂に共重合されるコモノマーの具体例としては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。PP系樹脂は、ランダム共重合体でもよいし、ブロック共重合体でもよい。表層16の主要部18は、1種のPP系樹脂を含有してもよく、2種以上のPP系樹脂を含有してもよい。
【0032】
表層16の主要部18に使用可能なPE系樹脂は、炭素数4以上のα-オレフィンを共重合させてもよい。短鎖の分岐を導入することで、長鎖の分岐が少なく、直鎖状の分子構造を付与することができる。PE系樹脂に共重合されるα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。PE系樹脂にα-オレフィン以外のオレフィン類が共重合されてもよい。表層16の主要部18は、1種のPE系樹脂を含有してもよく、2種以上のPE系樹脂を含有してもよい。
【0033】
表層16の主要部18に使用可能なPE系樹脂の種類としては、チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合された樹脂、シングルサイト系触媒を用いて重合された樹脂等が挙げられる。シングルサイト系触媒を用いて重合されたPE系樹脂は、分子量分布が狭く、機械的特性に優れるので好ましい。シングルサイト系触媒としては、メタロセン系触媒が挙げられる。メタロセン系触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含み、金属がジルコニウム、ハフニウム等であるメタロセン化合物を含む触媒が挙げられる。
【0034】
表層16の主要部18に使用可能なスチレン系エラストマーとしては、スチレンと脂肪族オレフィンとの共重合体が挙げられる。スチレン系エラストマーの分子中において、スチレンを含むブロックがハードブロックを構成し、脂肪族オレフィンを含むブロックがソフトブロックを構成する。分子中のスチレン含有量が高いほど強固な接着強度を発現することができる。しかし、スチレン含有量が高すぎると、柔軟性が損なわれるおそれがある。スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量は、例えば、10~50重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましく、10~20重量%が更に好ましい。
【0035】
表層16の主要部18に使用可能なスチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)、水添スチレン-ブタジエンゴム(HSBR)、等の1種または2種以上が挙げられる。
【0036】
スチレン系エラストマーの中でも、SEBS、SEPS、SEBC、HSBRから選択される1種以上が好ましく、特にSEBSが好ましい。なお、SEBSは、一般的には、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加(水添)で、ブタジエンユニットをエチレンユニット2つまたはブチレンユニットに変換して得られるものであるが、変性や選択的水素添加等がなされたものでもよい。
【0037】
最内層15および表層16の従属部17を形成する第1層11と、積層体23のシーラント21は、いずれも、環状オレフィン系樹脂を含む環状オレフィン系樹脂層から形成されることが好ましい。環状オレフィン系樹脂は、1種以上のオレフィンモノマーからなる重合体またはその二重結合が水素化された重合体であって、オレフィンモノマーのうち少なくとも1種が環状オレフィン系モノマーである。環状オレフィン系モノマーは、環状炭化水素骨格を有する。
【0038】
環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン系モノマー1種の重合体であってもよく、環状オレフィン系モノマー2種以上の共重合体でもよく、環状オレフィン系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよく、これらの重合体または共重合体の水素添加物であってもよい。中でも、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等は、環状オレフィン系樹脂として好適である。
【0039】
環状オレフィン系モノマーとしては、二環性シクロオレフィン、三環性シクロオレフィン、四環性シクロオレフィン、五環性シクロオレフィン、六環性シクロオレフィンなどが挙げられる。二環性シクロオレフィンとしては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、これらの置換体等が挙げられる。三環性シクロオレフィンとしては、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、これらの置換体等が挙げられる。四環性シクロオレフィンとしては、ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、テトラシクロドデセン、これらの置換体等が挙げられる。五環性シクロオレフィンとしては、トリシクロペンタジエン、ペンタシクロペンタデセン、これらの置換体等が挙げられる。六環性シクロオレフィンとしては、ヘキサシクロヘプタデセンやその置換体等が挙げられる。上述の化合物の置換体としては、1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール等の置換が挙げられる。
【0040】
環状オレフィン系モノマーの少なくとも1種が、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン(ノルボルネン系モノマー)であることが好ましい。ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジヒドロジシクロペンタジエン、またはこれらの環状化合物に1分子以上のシクロペンタジエンがディールス・アルダー反応により付加した化合物、これらの水素添加物、二重結合の位置が異なる異性体、アルキル置換体等が挙げられる。
【0041】
ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合の後、残った二重結合を水素化した重合体、2種以上のノルボルネン系モノマーからなる付加重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとを共重合した付加重合体などを包含する。ノルボルネン系モノマーと共重合される他のモノマーは、ノルボルネン系モノマー以外の環状オレフィン系モノマーでもよく、エチレン、プロピレン、α-オレフィン等の非環状オレフィン系モノマーでもよく、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の極性モノマーでもよい。
【0042】
環状オレフィン系樹脂の製造方法としては、ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合体を水素化する方法、2種以上の環状オレフィンモノマーの共重合反応による方法、環状オレフィンモノマーとα-オレフィンの共重合反応による方法が挙げられる。
【0043】
環状オレフィン系樹脂の市販品としては、日本ゼオン株式会社製の「ZEONEX(登録商標)」や「ZEONOR(登録商標)」、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS(登録商標)」、三井化学株式会社製の「アペル(登録商標)」、JSR株式会社製の「アートン(登録商標)」等が挙げられる。これらの環状オレフィン系樹脂は、バリア性に優れ、入手も容易である。
【0044】
第1層11およびシーラント21を形成する環状オレフィン系樹脂層は、主成分として、環状オレフィン系樹脂を含有することが好ましい。例えば、環状オレフィン系樹脂の少なくとも1種の合計が、50重量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。環状オレフィン系樹脂層は、環状オレフィン系樹脂以外に、他の樹脂成分を含有してもよい。
【0045】
環状オレフィン系樹脂層に含まれてもよい他の樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、シラン系樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0046】
前記スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン系エラストマー等が挙げられる。なかでも、特にスチレンブタジエンブロック共重合体、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体、これらの水素添加物(例えばSEBS、SEPS等)、スチレンブタジエンランダム共重合体等が好ましい。
【0047】
環状オレフィン系樹脂層に含有される他の樹脂成分は、1種または2種以上の合計で0.05~20質量%の範囲内であることが好ましい。環状オレフィン系樹脂層が他の樹脂成分を含有する場合、容器の低温での耐衝撃性や高圧蒸気滅菌処理直後の透明性の維持、柔軟性の向上など、容器として所望の性能の向上を図ることが可能である。環状オレフィン系樹脂層は、樹脂成分以外に、添加剤成分を含んでもよい。
【0048】
環状オレフィン系樹脂層は、環状オレフィン系樹脂のみを樹脂成分としてもよい。環状オレフィン系樹脂層に含まれる樹脂成分が、実質的に、1種または2種以上の環状オレフィン系樹脂であってもよい。環状オレフィン系樹脂層が、環状オレフィン系樹脂以外に添加剤を含有してもよく、添加剤を含まない環状オレフィン系樹脂から形成されてもよい。
【0049】
シーラント21を形成する環状オレフィン系樹脂層の組成は、成形品10の第1層11を形成する環状オレフィン系樹脂層の組成と同一でもよいし、異なってもよい。シーラント21に使用される環状オレフィン系樹脂が、成形品10の第1層11に使用される環状オレフィン系樹脂と同一でもよいし、異なってもよい。溶着性の観点からは、第1層11およびシーラント21が同一の環状オレフィン系樹脂を含有することが好ましい。
【0050】
成形品10または液体収容部20を形成する各層、すなわち、第1層11、第2層12、シーラント21、基材22等を形成する材料には、外観の向上、品質の安定化、その他必要とされる性能を付与するために、安全衛生性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤等を含有してもよい。
【0051】
成形品10は、最内層15を含む第1層11と、表層16の主要部18を形成する第2層12との間に、他の層を有してもよい。他の層としては、樹脂層、接着剤等が挙げられる。他の層を介することなく、第1層11と第2層12とが直接接合されていてもよい。成形品10の製造方法は特に限定されず、成形方法は従来公知の方法を採用することが可能である。例えば、2層以上の樹脂を同時に成形する二色成形または多色成形でもよく、1層ずつ順次成形するインサート成形でもよい。インサート成形の場合は、最内層15を含む第1層11を成形した後に、表層16の主要部18を成形してもよく、表層16の主要部18を成形した後に、最内層15を含む第1層11を成形してもよい。
【0052】
実施形態の成形品10は、外面に突出するフィン19,191,192および平面部24を有するリング状の凸部25は、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む樹脂を用いて、第2層12に形成されている。環状オレフィン系樹脂を含む樹脂から形成される第1層11は円筒状であるため、成形が容易になる。
【0053】
液体収容部20を形成する積層体23は、シーラント21と基材22の2層構成でもよく、必要に応じて他の層を積層した構成でもよい。積層体23の各層間には接着剤層またはアンカー剤層を介しても良いし、層間が直接接するように積層されていても良い。他の層としては、補強層、バリア層、遮光層、印刷層等の1種または2種以上が挙げられる。2枚の積層体23が、互いに同一の構成でもよく、異なる構成でもよい。
【0054】
シーラント21は、積層体23のヒートシールに用いられる層であり、包装材料としては内容品に接する最内層に配置される。シーラント21は、積層体23と成形品10との接合に使用される。積層体23がフィルム、シート等である場合は、シーラント21が積層体23同士の接合に使用されてもよい。ヒートシールは、シーラント21を溶融させることにより接着させる方法である。シール方法には特に制約はなく、熱板シール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等が挙げられる。上述したように、シーラント21が環状オレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0055】
積層体23の基材22としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂などから形成されるフィルムが挙げられる。積層体23が基材22を1層のみ有してもよい。積層体23が2種または2層以上の基材22を有してもよい。基材22は、積層体23のうちシーラント21とは反対側である最外面でもよい。積層体23が、基材22より外側の他の層を有してもよい。
【0056】
積層体23のバリア層は、酸素バリア性、水蒸気バリア性等のバリア性を付与する層である。バリア層として、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、メタキシレンジアミン(MXDA)を多価カルボン酸と重縮合させたナイロン、フッ素系樹脂、アルミナ、シリカ等のバリア性材料を使用することができる。バリア性材料が樹脂である場合は、バリア性フィルムでもよく、バリア性コーティングであってもよい。バリア性材料が無機化合物である場合は、樹脂フィルムに無機化合物を蒸着した蒸着フィルムであってもよい。バリア性材料が金属である場合は、樹脂フィルムに金属を蒸着した蒸着フィルムでもよく、金属箔でもよい。
【0057】
積層体23の製造方法としては、特に限定されることなく、押出ラミネート工法、ドライラミネート工法、共押出工法等、または、2以上の工法の併用が挙げられる。共押出工法は、多層Tダイキャスト成形でもよく、多層インフレーション成形でもよい。
【0058】
積層体23の全体の厚みとしては、特に制限されないが、例えば、50~400μmが挙げられる。シーラント21の厚みは、例えば、5~150μmが好ましく、15~100μmがより好ましい。
【0059】
液体収容部20を形成する容器としては、包装袋(パウチ)、チューブ包装等が挙げられる。液体収容部20は、排出口13を有する成形品10が少なくとも1つ設けられる。排出口13は、充填口、空気口等に用いることも可能である。積層体23から液体収容部20を形成する方法は特に限定されないが、ヒートシール、ブロー成形等が挙げられる。
【0060】
積層体23を成形品10にヒートシールする場合、シーラント21を内側として積層体23を重ね合わせた間に成形品10を挿入してヒートシールしてもよい。2枚の積層体23を重ね合わせた間に成形品10を挿入する場合は、排出路14を挟んだ両側にフィン19,191,192が突出して、2枚の積層体23と成形品10との隙間を抑制することができる。
【0061】
積層体23を成形品10に溶着する方法は、特に限定されないが、熱板溶着、超音波溶着、高周波溶着、インパルス溶着、レーザー溶着等が挙げられる。成形品10の溶着方法は、液体収容部20のヒートシール方法と同じでもよく、異なってもよい。
【0062】
排出口13の先端部は、成形品10を液体収容部20と接合した段階では、開口していてもよい。液体収容部20に内容物を充填した後で、排出口13に中栓、キャップ等を装着してもよい。液体収容部20の周縁部に形成されるヒートシールの一部を省略し、未シール部から内容物を充填した後で、未シール部をヒートシールにより閉鎖してもよい。排出口13を内容物の充填に使用しない場合は、成形品10を液体収容部20と接合する前から、排出口13が中栓、キャップ等により閉鎖されていてもよい。
【0063】
本実施形態の容器30は、薬剤、飲食物、化粧品等を収容するための容器として好適に利用できる。薬剤は、ニトログリセリン、アルブミン、ビタミン類、微量元素、ラジカル捕捉剤等、一般の樹脂に対する吸着性または透過性が高い物質でもよい。容器30は、医療用の液体の収納に好適に使用することができる。容器30を用いることにより、好ましくは105℃以上、より好ましくは115℃以上、特に好ましくは121℃以上の高温滅菌処理にも適用することが可能である。
【0064】
液体収容部20を形成する包装袋の形態は、三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、自立袋等の小型包装袋、パウチ、バッグ等のほか、例えばバッグインボックス用の内袋やドラム缶内装袋などの大型の袋等、特に限定なく適用可能である。
【0065】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10…成形品、11…第1層、12…第2層、13…排出口、14…排出路、15…最内層、16…表層、17…表層の従属部、18…表層の主要部、19,191,192…フィン、19A…伸長部、20…液体収容部、21…シーラント、22…基材、23…積層体、24…平面部、25…凸部、30…容器。