(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111790
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20230803BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20230803BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L33/38
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020101
(22)【出願日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2022012849
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】村本 衛司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 匠
(72)【発明者】
【氏名】山上 勇也
(72)【発明者】
【氏名】西影 治彦
(72)【発明者】
【氏名】神元 将太
(72)【発明者】
【氏名】岸 明徳
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA92
5F241CA93
(57)【要約】
【課題】発光効率が高い発光素子を提供する。
【解決手段】それぞれが窒化物半導体からなる、n側層と、p側層と、n側層とp側層との間に位置し紫外線を発する活性層と、を含む半導体構造体と、n側層に電気的に接続されるn電極と、p側層に接する第1金属層を有し、p側層に電気的に接続されるp電極と、を含み、p側層は、それぞれがp型不純物を含む、第1層と、第1層上に配置される第2層と、第2層上に配置される第3層と、を有し、第2層の表面は、第3層から露出する露出領域を有し、第1層及び第2層は、Alを含み、第3層は、第2層のAl組成比よりも低いAl組成比である層、又は、Alを含まない層であり、第2層の厚さ及び第3層の厚さのそれぞれは、第1層の厚さよりも薄く、第3層のp型不純物濃度は、第2層のp型不純物濃度よりも高く、第1金属層は、第2層の露出領域と、第3層の表面と、に接して配置される発光素子。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが窒化物半導体からなる、n側層と、p側層と、n側層とp側層との間に位置し紫外線を発する活性層と、を含む半導体構造体と、
前記n側層に電気的に接続されるn電極と、
前記p側層に接する第1金属層を有し、前記p側層に電気的に接続されるp電極と、を含み、
前記p側層は、それぞれがp型不純物を含む、第1層と、前記第1層上に配置される第2層と、前記第2層上に配置される第3層と、を有し、
前記第2層の表面は、前記第3層から露出する露出領域を有し、
前記第1層及び前記第2層は、Alを含み、
前記第3層は、前記第2層のAl組成比よりも低いAl組成比である層、又は、Alを含まない層であり、
前記第2層の厚さ及び第3層の厚さのそれぞれは、前記第1層の厚さよりも薄く、
前記第3層のp型不純物濃度は、前記第2層のp型不純物濃度よりも高く、
前記第1金属層は、前記第2層の前記露出領域と、前記第3層の表面と、に接して配置される発光素子。
【請求項2】
前記第1金属層は、Rh又はRuを含む請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1金属層は、Auをさらに含む請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記p電極は、前記第1金属層の表面を被覆し、Niを含む第2金属層をさらに有し、
前記第2金属層と、前記第3層を被覆する絶縁層をさらに有する請求項2又は3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1金属層の厚さは、100nm以上200nm以下である請求項1から4のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項6】
前記第3層の厚さは、前記第2層の厚さ以下である請求項1から5のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項7】
前記第3層のp型不純物濃度は、1×1019/cm3以上1×1021/cm3以下である請求項1から6のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項8】
前記第1層のAl組成比は、前記第2層のAl組成比よりも高い請求項1から7のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項9】
前記活性層は、Alを含む井戸層を有し、
前記井戸層のAl組成比は、30%以上50%以下である請求項1から8のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項10】
前記第2層の厚さは、3nm以上20nm以下であり、
前記第3層の厚さは、3nm以上20nm以下である請求項1から9のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項11】
前記第1層及び前記第2層は、窒化アルミニウムガリウムからなり、
前記第3層は、窒化ガリウムからなる請求項1から10のいずれか1つに記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の窒化物半導体からなる層を有し、深紫外光を発する発光素子が開示されている。このような発光素子において、発光効率を向上することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、発光効率が高い発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る発光素子は、それぞれが窒化物半導体からなる、n側層と、p側層と、n側層とp側層との間に位置し紫外線を発する活性層と、を含む半導体構造体と、n側層に電気的に接続されるn電極と、p側層に接する第1金属層を有し、p側層に電気的に接続されるp電極と、を含み、p側層は、それぞれがp型不純物を含む、第1層と、第1層上に配置される第2層と、第2層上に配置される第3層と、を有し、第2層の表面は、第3層から露出する露出領域を有し、第1層及び第2層は、Alを含み、第3層は、第2層のAl組成比よりも低いAl組成比である層、又は、Alを含まない層であり、第2層の厚さ及び第3層の厚さのそれぞれは、第1層の厚さよりも薄く、第3層のp型不純物濃度は、第2層のp型不純物濃度よりも高く、第1金属層は、第2層の露出領域と、第3層の表面と、に接して配置される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、発光効率が高い発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発光素子の構成を示す模式上面図である。
【
図2】
図1のII-II線における発光素子の構成を示す模式断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る発光素子の構成の一部を示す模式断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る発光素子の構成の一部を示す模式上面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る発光素子の構成の一部を示す模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る発光素子の実施形態について説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係等が誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略することとする。
【0009】
図1は、発光素子1の模式上面図である。
図2は、
図1のII-II線における発光素子1の模式断面図である。
図3は、発光素子1の一部を示す模式断面図である。
図4は、発光素子1の構成の一部を示す模式上面図である。
図5は、発光素子1の構成の一部を示す模式上面図である。なお、
図4、5において、ハッチングで示す領域は、上面視において各部材が配置されている領域を示すものであり、断面を示すものではない。以下、図面を参照しながら各部材の詳細について説明する。
【0010】
図1~3に示すように、発光素子1は、基板10と、基板10上に配置された半導体構造体100を有する。半導体構造体100は、それぞれが窒化物半導体からなる、n側層20と、p側層40と、n側層20とp側層40との間に位置し紫外線を発する活性層30と、を含む。発光素子1は、n側層20に電気的に接続されたn電極50と、p側層40に電気的に接続されたp電極60と、を有する。p電極60は、p側層40に接する第1金属層61を有する。発光素子1は、さらに、n電極50に電気的に接続されたn側端子80と、p電極60に電気的に接続されたp側端子90と、を有する。
【0011】
基板10の材料は、例えば、サファイア、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)等を用いることができる。サファイアからなる基板10は、活性層30からの紫外線に対して高い透光性を有するため好ましい。半導体構造体100は、例えば、サファイア基板のc面に配置することができ、サファイア基板のc面からサファイア基板のa軸方向又はm軸方向に0.2°以上2°以下の範囲で傾斜した面に配置することが好ましい。基板10の厚さは、例えば、150μm以上800μm以下とすることができる。発光素子1は、基板10を有していなくてよい。
【0012】
基板10の上面視形状は、例えば、矩形状である。基板10の上面視形状を矩形状とする場合、一辺の長さを500μm以上2000μm以下程度とすることができる。基板10の上面は、半導体構造体100が配置されている第1領域10aと、半導体構造体100が配置されていない第2領域10bと、を有する。上面視において、第1領域10aは、第2領域10bに囲まれている。第1領域10aと第2領域10bの境界は、例えば、基板10の外縁から10μm以上30μm以下の範囲に位置している。ここで、
図1に示すように、基板10の一辺に平行な方向を第1方向Xとし、第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとする。
【0013】
半導体構造体100は、窒化物半導体からなる複数の半導体層が積層された積層体である。窒化物半導体は、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)からなる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。
【0014】
基板10と半導体構造体100との間にバッファ層を配置してよい。バッファ層には、例えば、AlNからなる層を用いることができる。バッファ層は、基板10と、バッファ層上に配置される窒化物半導体層との格子不整合を緩和する機能を有する。バッファ層の厚さは、例えば、1.5μm以上4μm以下とすることができる。なお、本明細書において各半導体層の厚さとは、半導体構造体100の積層方向における厚さである。
【0015】
n側層20は、1以上のn型半導体層を含む。n型半導体層としては、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等のn型不純物を含有する半導体層が挙げられる。n型半導体層は、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及び窒素(N)を含むAlGaN層であり、インジウム(In)を含んでいてもよい。例えば、Siをn型不純物として含むn型半導体層のn型不純物濃度は、5×1018/cm3以上1×1020/cm3以下である。n側層20は、電子を供給する機能を有していればよく、アンドープの層を含んでいてもよい。ここで、アンドープの層とは、n型不純物やp型不純物を意図的にドープしていない層である。アンドープの層がn型不純物及び/又はp型不純物を意図的にドープした層と隣接している場合は、その隣接した層からの拡散等によって、アンドープの層にn型不純物及び/又はp型不純物が含まれる場合がある。
【0016】
n側層20は、例えば、基板10側から順に、超格子層と、下地層と、nコンタクト層とを含む。
【0017】
超格子層は、第1半導体層と、第1半導体層と格子定数が異なる第2半導体層とが交互に積層された多層構造を有する。超格子層は、超格子層よりも上に配置される半導体層に生じる応力を緩和する機能を有する。超格子層は、例えば、AlN層と窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層とが交互に積層された多層構造とすることができる。超格子層において、第1半導体層と第2半導体層とのペア数は、20ペア以上50ペア以下とすることができる。
【0018】
下地層は、例えば、アンドープのAlGaN層を用いることができる。下地層をAlGaN層とする場合、AlGaN層のAl組成比は、例えば、50%以上とすることができる。
【0019】
nコンタクト層は、例えば、n型不純物が含有されたAlGaNからなる層を用いることができる。nコンタクト層をAlGaN層とする場合、AlGaN層のAl組成比は、例えば、50%以上とすることができる。なお、本明細書において、例えば、Al組成比が50%であるAlGaN層とは、AlXGa1-XNからなる化学式において、組成比xが0.5であるAlGaN層のことを意味する。nコンタクト層のn型不純物濃度は、例えば、5×1018/cm3以上1×1020/cm3以下とすることができる。nコンタクト層は、他の半導体層が配置されていない上面を有する。n電極50は、他の半導体層が配置されていないnコンタクト層の上面の一部に配置される。
【0020】
活性層30は、n側層20とp側層40との間に配置されている。活性層30は、紫外線を発する。活性層30が発する紫外線の発光ピーク波長は、例えば、220nm以上350nmである。
【0021】
活性層30は、Alを含む井戸層と、Alを含む障壁層と、を有する。活性層30は、例えば、複数の井戸層と、複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有する。障壁層のAl組成比は、井戸層のAl組成比よりも大きい。つまり、障壁層のバンドギャップエネルギーは、井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きい。Alを含む井戸層から、その井戸層のバンドギャップエネルギーに応じた発光波長の光が出射される。なお、活性層30は、複数の井戸層を含む多重量子井戸構造に限定されず、単一量子井戸構造としてもよい。井戸層及び障壁層の少なくとも一部に、n型不純物及び/又はp型不純物を含有してもよい。
【0022】
井戸層には、例えば、AlGaNからなる層を用いることができる。障壁層には、例えば、AlGaNからなる層を用いることができる。井戸層のAl組成比は、例えば、30%以上50%以下とすることができることができる。例えば、井戸層からの光の発光ピーク波長を280nm程度とする場合、井戸層にはAl組成比が42%程度のAlGaN層を用いることができる。障壁層のAl組成比は、例えば、30%以上60%以下とすることができる。
【0023】
井戸層の厚さは、例えば、3nm以上6nm以下とすることができる。障壁層の厚さは、例えば、2nm以上4nm以下である。
【0024】
また、活性層30とp側層40との間に電子ブロック層を配置してよい。電子ブロック層は、n側層20から供給される電子のオーバーフローを低減するために配置する。電子ブロック層は、Alを含む複数の半導体層を有する多層構造とすることができる。電子ブロック層には、例えば、活性層30側から順に、AlN層、第1のAlGaN層、及び第2のAlGaN層を有する多層構造とすることができる。第1のAlGaN層のAl組成比は、第2のAlGaN層のAl組成比よりも低く、井戸層のAl組成比よりも高い。電子ブロック層には、障壁層のAl組成比よりも高いAl組成比を有する半導体層を用いることが好ましい。これにより、電子のオーバーフローを低減することができる。また、井戸層からの光が電子ブロック層により吸収されることを低減し、光取り出し効率を向上することができる。電子ブロック層には、例えば、アンドープのAlGaN層、アンドープのAlN層等を用いることができる。電子ブロック層の厚さは、例えば、5nm以上15nm以下とすることができる。
【0025】
一般的に、活性層30からの光が半導体層により吸収されることを低減し光取り出し効率を向上させるためには、p側層40に活性層30からの光に対して高い透光性を有する半導体層を用いることが好ましい。例えば、活性層30に用いる井戸層のAl組成比よりも高いAl組成比を有するAlGaN層をp側層40に用いることで、活性層30からの光がp側層40により吸収されにくくすることができる。しかしながら、高いAl組成比を有するAlGaN層は、GaN層等に比べてバンドギャップエネルギーが大きい。そのため、高いAl組成比を有するAlGaN層をp側層40に用いると、p側層40のp型化が不十分となる、あるいはp電極60とp側層40との間の接触抵抗が大きくなる、といったことが生じやすい。これらのことから、比較的高いAl組成比を有するAlGaNからなる井戸層を含む活性層を用いる発光素子においては、高い光取り出し効率と低い順方向電圧とを両立することが難しい。本実施形態では、以下のようなp側層40にp電極60を配置することにより、p側層40とp電極60との間の接触抵抗を小さくしつつ、光取り出し効率を向上させることができるので、高い発光効率を備える発光素子1とすることができる。
【0026】
p側層40は、1以上のp型半導体層を含む。p型半導体層としては、マグネシウム(Mg)等のp型不純物を含有する半導体層が挙げられる。
図3に示すように、p側層40は、活性層30側から順に、それぞれがp型不純物を含む、第1層41と、第1層41上に配置される第2層42と、第2層42上に配置される第3層43と、を有する。p側層40は、さらに、活性層30と第1層41との間に配置される第4層44を有する。また、第2層42の表面は、第3層43から露出する露出領域42aを有する。
【0027】
第1層41及び第2層42は、Alを含み、第3層43は、第2層のAl組成比よりも低いAl組成比である層、又は、Alを含まない層である。第3層43のp型不純物濃度は、第2層42のp型不純物濃度よりも高い。第1金属層61を、第2層42よりもp型不純物濃度が高い第3層43に接して配置することで、第1金属層61とp側層40との間の接触抵抗を小さくしやすい。しかしながら、第3層43のAl組成比は、第2層42のAl組成比よりも低く、第3層43は第2層42よりも活性層30からの光を吸収しやすく光取り出し効率を悪化させてしまう。
【0028】
本実施形態では、p電極60の第1金属層61を、第2層42の露出領域42aと、第3層43の表面と、に接して配置している。第1金属層61を露出領域42aに接して配置することで、第3層43による活性層30からの光の吸収を低減しつつ、第1金属層61と第2層42との界面において活性層30からの光を効率よく反射することができる。また、第1金属層61を第2層42だけでなく第3層43に接して配置することで、第1金属層61が第2層42のみと接して配置されている場合に比べて、p電極60とp側層40との間の接触抵抗を小さくすることできる。さらに、第1金属層61が第2層42の表面及び第3層43の表面に接していることで、第1金属層61が第3層43の表面のみに接している場合に比べて、p電極60とp側層40との密着性を向上させることができる。
【0029】
また、第2層42の厚さ及び第3層43の厚さのそれぞれは、第1層41の厚さよりも薄い。これにより、第2層42及び第3層43による活性層30からの光の吸収を低減できるので、光取り出し効率を向上することができる。
【0030】
本実施形態によれば、p側層40とp電極60との間の接触抵抗を小さくしつつ、光取り出し効率を向上させることができるので、高い発光効率を備える発光素子1とすることができる。
【0031】
第2層42は、複数の露出領域42aを有し、第1金属層61は、複数の露出領域42aに接して配置されている。第1金属層61と露出領域42aとが接する領域を増加させることで光取り出し効率をより向上させることができる。上面視において、露出領域42aは、例えば、ドット状に配置されている。露出領域42aは、第2層42上に第3層43を形成する際、第2層42の表面が第3層43により部分的に覆われないことで形成される。例えば、第3層43を形成する際の温度、雰囲気等の成長条件を適宜変更し、第3層43を第2層42の表面の一部が露出するように形成することで露出領域42aを形成してよい。また、露出領域42aは、第3層43を形成する第2層42の表面にVピット等による凹みが形成されており、第3層43を形成する際に凹みが存在する第2層42の表面の一部が覆われないことで形成されてもよい。この場合、Vピットが形成されている領域に対応する第2層42の表面に露出領域42aが形成される。また、第2層42上に第3層43を形成した後、第2層42の表面の一部が露出するように第3層43の一部をエッチングすることで露出領域42aを形成してもよい。
【0032】
第1金属層61と露出領域42aとが接する面積は、第1金属層61と第3層43とが接する面積よりも小さいことが好ましい。これにより、第1金属層61と露出領域42aとが接する面積が大きくなることによる順方向電圧Vfの悪化を低減することができる。単位面積当たりにおいて、第1金属層61と露出領域42aとが接する面積は、例えば、第1金属層61と第3層43とが接する面積の3%以上30%以下とすることが好ましく、5%以上20%以下であることが好ましい。
【0033】
第3層43の厚さは、第2層42の厚さ以下であることが好ましい。これにより、第3層43による光吸収を低減することができる。第3層43の厚さは、例えば、第2層42の厚さの60%以上80%以下とすることができる。
【0034】
第1層41の厚さは、例えば、20nm以上40nm以下とすることができる。第2層42の厚さは、例えば、3nm以上20nm以下とすることが好ましく、3nm以上15nm以下とすることがさらに好ましい。第2層42の厚さを3nm以上とすることで、第2層42を配置する前の半導体層の上面に形成された凹みであるVピットを埋め込みやすくできる。第2層42の厚さを20nm以下とすることで、第2層42による光吸収を低減することができる。第3層43の厚さは、例えば、3nm以上20nm以下とすることが好ましく、3nm以上15nm以下とすることがさらに好ましい。第3層43の厚さを3nm以上とすることで、p電極60と第3層43との間の接触抵抗を低減する効果を得やすくできる。第3層43の厚さを20nm以下とすることで、第3層43による光吸収を低減することができる。第4層44の厚さは、第3層43の厚さよりも厚い。第4層44の厚さは、例えば、60nm以上100nm以下とすることできる。
【0035】
第2層42のp型不純物濃度及び第3層43のp型不純物濃度のそれぞれは、第1層41のp型不純物濃度よりも高いことが好ましい。これにより、第2層42及び第3層43のうち第3層43のp型不純物濃度を第1層41のp型不純物濃度よりも高くする場合に比べて、p側層40から活性層30にホールをより供給しやすくなるため、発光素子1の発光効率を向上させることができる。
【0036】
第2層42のp型不純物濃度及び第3層43のp型不純物濃度のそれぞれは、第4層44のp型不純物濃度よりも高い。第1層41、第2層42、第3層43、及び第4層44のp型不純物濃度は、例えば、1×1019/cm3以上1×1021/cm3以下である。
【0037】
第1層41のAl組成比は、第2層42のAl組成比よりも高いことが好ましい。第2層42よりも活性層30の近くに位置する第1層41のAl組成比を第2層42のAl組成比よりも高くし第1層41による光吸収を低減することで、光取り出し効率を向上させることができる。
【0038】
第2層42のAl組成比は、井戸層のAl組成比よりも高いことが好ましい。これにより、第2層42による光吸収をさらに低減し、第2層42と第1金属層61との界面において光を効率よく反射することができるため、光取り出し効率を向上させることができる。
【0039】
第1層41のAl組成比は、例えば、60%以上70%以下とすることができる。第2層42のAl組成比は、例えば、30%以上60%以下とすることが好ましく、40%以上55%以下とすることがさらに好ましい。第2層42のAl組成比を30%以上とすることで、第2層42による光吸収を低減することができる。第2層42のAl組成比を60%以下とすることで、第2層42と第1金属層61との間の接触抵抗の悪化を低減することができる。第3層43のAl組成比は、例えば、3%以下とすることが好ましい。これにより、第3層43におけるp型化を促進させ、発光効率をさらに向上させることができる。第4層44のAl組成比は、第1層41のAl組成比も高く、第4層44と接する電子ブロック層の半導体層(第2のAlGaN層)のAl組成比よりも低い。これにより、p電極60側からのホールを活性層30に供給しやすくできる。
【0040】
第1層41は、例えば、窒化アルミニウムガリウムからなる。第2層42は、例えば、窒化アルミニウムガリウムからなる。第3層43は、例えば、窒化ガリウム、又は窒化アルミニウムガリウムからなる。第4層44は、例えば、窒化アルミニウムガリウムからなる。第1層41、第2層42、第3層43、及び第4層44は、Inを含んでもよい。
【0041】
図4は、発光素子1の構成のうち、基板10、n側層20、及びp側層40のみを示す図である。
図4に示すように、上面視において、p側層40は、第2方向Yに沿って延びる基部40aと、基部40aから第1方向Xに沿って延びる複数の延伸部40bと、を有する。第2方向Yにおいて、p側層40の複数の延伸部40b間には、n側層20が位置している。
【0042】
n電極50は、n側層20のn側層20のnコンタクト層上に配置され、n側層20と電気的に接続される。p電極60は、p側層40の第2層42上及び第3層43上に配置され、p側層40と電気的に接続される。
【0043】
図5は、発光素子1の構成のうち、基板10、n側層20、p側層40、n電極50、及びp電極60のみを示す図である。
図5に示すように、n電極50は、第2方向Yに沿って延びるn側基部50aと、n側基部50aから第1方向Xに沿って延びる複数のn側延伸部50bと、を有する。
【0044】
n電極50には、例えば、銀(Ag)、Al、ニッケル(Ni)、金(Au)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)等の金属、又はこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。n側電極50は、例えば、複数の金属層を含む多層構造とすることができる。n電極50は、例えば、n側層20側から順に、Ti層と、Al合金層と、Ta層と、Ru層と、含む多層構造とすることができる。
【0045】
図5に示すように、上面視において、p電極60は、第2方向Yに沿って延びるp側基部60aと、p側基部60aから第1方向Xに沿って延びる複数のp側延伸部60bと、を有する。第2方向Yにおいて、n側延伸部50bと、p側延伸部60bとは交互に並んで配置されている。複数のp側延伸部60bのうち、第2方向Yにおいて両端に位置するp側延伸部60bの第1方向Xにおける長さは、他のp側延伸部60bの第1方向Xにおける長さよりも長い。また、複数のp側延伸部60bのうち、第2方向Yにおいて両端に位置するp側延伸部60bの第2方向Yにおける長さは、他のp側延伸部60bの第2方向Yにおける長さよりも狭い。p電極60の外縁は、p側層40の外縁よりも内側に位置している。
【0046】
p電極60は、活性層30からp電極60側に向かう光を、n側層20側に反射させるために配置する。p電極60は、第2層42の露出領域42aと、第3層43の表面と、に接して配置される第1金属層61を有する。p電極60には、例えば、上述したn電極50と同様の金属を用いることができる。
【0047】
第1金属層61は、活性層30からの光に対して高い反射率を有する金属層である。第1金属層61は、例えば、活性層30からの光に対して、60%以上の反射率を有する金属を含むことが好ましい。このような金属として、第1金属層61は、例えば、Rh又はRuを含むことが好ましい。
【0048】
第1金属層61は、Auをさらに含むことが好ましい。これにより、第1金属層61が例えばRh又はRuのみからなる場合に比べて、高い反射率を維持しつつ、第1金属層61とp側層40との間の密着性を向上させることができる。第1金属層61は、例えば、Rh層、Au層、及びNi層を含む多層構造、Ru層、Au層、及びNi層を含む多層構造とすることができる。また、第1金属層61は、Rh又はRuと、Au及び/又はNiとを含む合金層を含む多層構造とすることができる。
【0049】
第1金属層61の厚さは、100nm以上200nm以下とすることが好ましい。第1金属層61の厚さを100nm以上とすることで、活性層30からの光を反射する効果を得やすい。第1金属層61の厚さを200nm以下とすることで、発光素子1のコストを低減できる。なお、第1金属層61の厚さとは、第3層43の表面からの厚さである。
【0050】
図2、3に示すように、p電極60は、第1金属層61の表面を被覆する第2金属層62と、第1金属層61の上方に配置された第3金属層63と、を有する。第3金属層63は、第2金属層62を介して第1金属層61と電気的に接続されている。
図1に示すように、第2方向Yにおいて、第3金属層63の幅は、第1金属層61の幅よりも狭い。第2方向Yにおいて、第3金属層63の幅は、例えば、第1金属層61の幅の60%以上80%以下とすることができる。
【0051】
第2金属層62は、Niを含むことが好ましい。第2金属層62の一部は、後述する絶縁層70に被覆されている。第1金属層61の表面をNiを含む第2金属層62により被覆することで、第1金属層61の表面に絶縁層70が接する場合に比べて、p電極60と絶縁層70との密着性を向上させることができる。また、第2金属層62は、第1金属層61と第3金属層63との間に配置されており、第1金属層61と第3金属層63との密着性を向上させることができる。第2金属層62には、NiとAuとを含む合金を用いてもよい。第2金属層62の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下とすることができる。
【0052】
第3金属層63は、Rh、Ru等の金属、又はこれらの金属を主成分とする合金を含む。第3金属層63は、複数の金属層を含む多層構造としてよい。第3金属層63は、第2金属層62側から順に、Ti層、Rh層、及びTi層を含む多層構造、Ti層、Ru層、及びTi層を含む多層構造とすることができる。第3金属層63の厚さは、100nm以上700nm以下とすることができる。第3金属層63を上述した2つのTi層を含む多層構造とする場合、2つのTi層のうち第2金属層62側に位置するTi層は、第2金属層62と第3金属層63との密着性を向上させるために配置する。2つのTi層のうち第2金属層62側に位置するTi層の厚さは、2つのTi層のうちp側端子90側に位置するTi層の厚さよりも厚くすることができる。Ti層は、Rh層やRu層に比べて活性層30からの紫外線を吸収しやすく、光取り出し効率を低減させる金属であるが、本実施形態では活性層30からの光のうち第3金属層63に向かう光を第1金属層61により反射させる構造としている。そのため、2つのTi層のうち第2金属層62側に位置するTi層を比較的厚く配置しても光取り出し効率の悪化を低減しつつ、第2金属層62と第3金属層63との密着性を向上させることができる。2つのTi層のうち第2金属層62側に位置するTi層の厚さは、例えば、30nm以上70nm以下とすることができる。2つのTi層のうちp側端子90側に位置するTi層の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下とすることができる。
【0053】
図1~3に示すように、絶縁層70は、半導体構造体100、n電極50、p電極60、n側端子80、p側端子90を覆っている。また、絶縁層70は、基板10の第2領域10bを覆っている。絶縁層70は、n電極50の表面の一部を露出させる第1開口部71と、p電極60の表面の一部を露出させる第2開口部72と、を有する。絶縁層70は、第2金属層62と、第3金属層63と、第3層43と、を被覆している。絶縁層70には、絶縁性を有する材料を用いる。絶縁層70には、例えば、SiO
2、SiON等を用いることができる。絶縁層70の厚さは、例えば、1μm以上2μm以下とすることができる。
【0054】
n側端子80は、n電極50上に配置され、第1開口部71にてn電極50と電気的に接続されている。n側端子80の一部は、絶縁層70上に配置されている。上面視において、n側端子80は、第1開口部71の形状に対応する形状を有し、n側端子80の外縁は、第1開口部71の縁よりも外側に位置する。
【0055】
n側端子80は、例えば、Ni、Au、Ti、Pt、W等の金属、又はこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。n側端子80は、n電極50側から順に、Ti層と、Pt層と、Au層と、含む多層構造とすることができる。n側端子80の厚さは、例えば、500nm以上1500nm以下とすることができる。
【0056】
p側端子90は、p電極60上に配置され、第2開口部72にてp電極60と電気的に接続されている。p側端子90の一部は、絶縁層70上に配置されている。上面視において、p側端子90は、第2開口部72の形状に対応する形状を有し、p側端子90の外縁は、第2開口部72の縁よりも外側に位置する。
【0057】
p側端子90は、例えば、上述したn側端子80と同様の金属を用いることができる。p側端子90は、例えば、p電極60側から順に、Ti層と、Pt層と、Au層と、含む多層構造とすることができる。p側端子90の厚さは、例えば、500nm以上1500nm以下とすることができる。
【0058】
n側端子80とp側端子90との間に、順方向電圧を印加すると、p側層40とn側層20との間に順方向電圧が印加され、活性層30にホール及び電子が供給されることで活性層30が発光する。
【0059】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0060】
1 発光素子
10 基板
10a 第1領域
10b 第2領域
20 n側層
30 活性層
40 p側層
41 第1層
42 第2層
42a 露出領域
43 第3層
44 第4層
40a 基部
40b 延伸部
50 n電極
50a n側基部
50b n側延伸部
60 p電極
60a p側基部
60b p側延伸部
61 第1金属層
62 第2金属層
63 第3金属層
70 絶縁層
71 第1開口部
72 第2開口部
80 n側端子
90 p側端子
100 半導体構造体