(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111836
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20230803BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20230803BHJP
B42B 5/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
B65H7/02
B42B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187703
(22)【出願日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2022013058
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 保志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 一貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭昌
(72)【発明者】
【氏名】杉山 恵介
【テーマコード(参考)】
3F048
3F108
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB01
3F048BB02
3F048BB10
3F048CA00
3F048DC17
3F108GA01
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA11
(57)【要約】
【課題】圧着綴じを行う媒体へ液体付与を行う部材の保液量を適正に制御する技術を提供する。
【解決手段】媒体を搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された少なくとも一枚の媒体の一部に液体付与をする液体付与手段と、液体付与手段によって液体付与された少なくとも一枚の媒体を含む媒体束を加圧変形させて綴じる圧着手段と、を備え、液体付与手段は、媒体の圧着手段により綴じられる位置に液体付与する液体付与部材と、液体付与部材の保液量を検知する保液量検知部と、を有する媒体処理装置による。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された少なくとも一枚の前記媒体の一部に液体付与をする液体付与手段と、
前記液体付与手段によって液体付与された少なくとも一枚の前記媒体を含む媒体束を加圧変形させて綴じる圧着手段と、を備え、
前記液体付与手段は、前記媒体の前記圧着手段により綴じられる位置に液体付与する液体付与部材と、
前記液体付与部材の保液量を検知する保液量検知部と、を有することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記保液量検知部は、前記液体付与部材に設けられた一対の対電極を導通して取得可能な電気信号に基づいて前記保液量を検知する、請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記保液量検知部は、前記対電極と前記液体付与部材との接触面積に基づいて変化する前記電気信号に基づいて前記保液量を検知する、請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記液体付与手段は、前記液体付与を行う際に、前記媒体を載置する載置部材を有し、
前記載置部材には電極が設けられていて、
前記保液量検知部は、前記載置部材の電極と前記液体付与部材の電極を導通して取得可能な電気信号に基づいて当該液体付与部材の保液量を検知する、請求項2又は3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記保液量検知部は、前記載置部材と前記液体付与部材の接触によって、当該載置部材の電極と前記液体付与部材の電極を導通して取得可能な電気信号に基づいて当該液体付与部材が前記媒体に接触するときの接触面の保液量を検知する、
請求項4に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記液体付与手段は、前記液体付与部材に液体を供給する供給部を有し、
当該供給部は、前記保液量検知部により検知された前記保液量に基づいて、当該液体付与部材への液体の供給を制御する、請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を圧着綴じする請求項1に記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像が形成されたシート状の媒体を積層状にした束(シート束)を形成する綴じ処理を行う媒体処理装置が知られている。また、省資源化や環境負荷の低減を鑑みる観点から、金属製の綴じ針(ステイプル針)を用いずに「針無し」の綴じ処理を行う媒体処理装置も知られている。この媒体処理装置には、凹凸状の綴じ歯でシート束を挟持して加圧変形させる所謂「圧着綴じ」が可能な圧着処理部を備える。なお、シート状の媒体の例として用紙が広く知られている。そこで本明細書では、シート束に関する記載をするとき、複数の媒体としての用紙を束にして構成される「用紙束」を例に用いることとする。
【0003】
圧着綴じでは、用紙束を構成する用紙の枚数が多いほど用紙束に綴じ歯が食い込みにくくなることで、圧着綴じをした用紙が用紙束から剥がれ落ちるなど、綴じ強度を維持することに困難さがあるという課題がある。そこで、圧着綴じを行う媒体処理装置には、綴じ強度を向上させることを目的として、用紙の綴じ歯が接触する位置(以下、「綴じ位置」と表記する。)に対して予め加水をし、綴じ歯が用紙束に食い込み易くする加水処理部を備えるものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の媒体処理装置が備える加水処理部は、水を蓄えている水槽を通過させたベルトの水分によって用紙への加水をする。この従来技術では、加水を行う加水部(ベルト)の保水量を検知できないため、加水部において保持する水分量を制御できず媒体への加水量を適正に保つことに課題がある。
【0005】
本発明は、圧着綴じを行う媒体へ液体付与を行う部材の保液量を適正に制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、媒体処理装置に関し、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された少なくとも一枚の前記媒体の一部に液体付与をする液体付与手段と、前記液体付与手段によって液体付与された少なくとも一枚の前記媒体を含む媒体束を加圧変形させて綴じる圧着手段と、を備え、前記液体付与手段は、前記媒体の前記圧着手段により綴じられる位置に液体付与する液体付与部材と、前記液体付与部材の保液量を検知する保液量検知部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧着綴じを行う媒体へ液体付与を行う部材の保液量を適正に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第一実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図。
【
図3】端綴じ処理部を搬送方向の上流側から見た模式図。
【
図4】端綴じ処理部を主走査方向の液体付与手段側から見た模式図。
【
図6】第一実施形態に係る後処理装置の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図。
【
図8】綴じ処理中における液体付与手段及び圧着手段の位置を示す図。
【
図9】液体付与部材状態判定処理のフローチャート。
【
図11】液体付与部材の保液量を検知する態様の第一例を示す図。
【
図12】液体付与部材の保液量を検知する態様の第一例の別態様を示す図。
【
図13】液体付与部材の保液量を検知する態様の第一変形例を示す図。
【
図14】液体付与部材の保液量を検知する態様の第二変形例を示す図。
【
図15】液体付与部材の保液量を検知する態様の第三変形例を示す図。
【
図16】液体付与部材の保液量を検知する態様の第四変形例を示す図。
【
図17】第二実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図。
【
図18】第二実施形態に係る内部トレイを用紙の厚み方向から見た図。
【
図19】第二実施形態に係る圧着手段を搬送方向の上流側から見た模式図。
【
図20】第二実施形態に係る液体付与部を用紙の厚み方向から見た図。
【
図23】第二実施形態に係る後処理装置の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図。
【
図24】第二実施形態に係る後処理装置の後処理フローチャート。
【
図25】画像形成システムの変形例の全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る画像形成システム1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、シート状の媒体としての用紙Pに画像を形成し、画像が形成された用紙Pに対して後処理を施す機能を有する。
図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置としての画像形成装置2と、本発明に係る媒体処理装置としての後処理装置3と、を連動するように構成されている。
【0010】
画像形成装置2は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを後処理装置3に排出する。画像形成装置2は、用紙Pが収容される収容トレイと、収容トレイに収容された用紙Pを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された用紙Pに画像を形成する画像形成部とを備える。画像形成部は、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成装置2の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0011】
図2は、後処理装置3の内部構造を示す図である。後処理装置3は、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pに所体の後処理を施す。本実施形態に係る後処理は、画像が形成された複数の用紙Pの束を、綴じ針を用いずに綴じる圧着綴じ処理としての綴じ処理である。以下、用紙Pの束を媒体束としての「用紙束Pb」と表記する。より詳細には、本実施形態に係る綴じ処理は、綴じ位置で用紙束を加圧変形させる所謂「圧着綴じ」である。なお、後処理装置3において実行可能な綴じ処理は、用紙束Pbの端を綴じる端綴じ処理と、用紙束Pbの中央を綴じる中綴じ処理と含むものとする。
【0012】
後処理装置3は、搬送ローラ対10~19(搬送部)と、切替爪20とを備える。搬送ローラ対10~19は、後処理装置3の内部において、画像形成装置2から供給された用紙Pを搬送する。より詳細には、搬送ローラ対10~13は、第一搬送路Ph1に沿って用紙Pを搬送する。また、搬送ローラ対14~15は、第二搬送路Ph2に沿って用紙Pを搬送する。さらに、搬送ローラ対16~19は、第三搬送路Ph3に沿って用紙Pを搬送する。
【0013】
第一搬送路Ph1は、画像形成装置2からの用紙Pの供給口から排出トレイ21に至る経路である。第二搬送路Ph2は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、内部トレイ22を通じて排出トレイ26に至る経路である。第三搬送路Ph3は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、排出トレイ30に至る経路である。
【0014】
切替爪20は、第一搬送路Ph1及び第二搬送路Ph2の分岐位置に配置されている。切替爪20は、第一搬送路Ph1を通じて用紙Pを排出トレイ21に排出する第一位置と、第一搬送路Ph1を搬送される用紙Pを第二搬送路Ph2に導く第二位置とに切り替え可能に構成されている。また、第二搬送路Ph2に進入した用紙Pの後端が搬送ローラ対11を通過したタイミングで、搬送ローラ対14を逆回転させることによって、当該用紙Pが第三搬送路Ph3に導かれる。また、後処理装置3は、各搬送路Ph1、Ph2、Ph3上の用紙Pの位置を検知する複数のセンサを備える。なお、複数のセンサは、
図2において黒塗り三角形(▲)で示している。
【0015】
後処理装置3は、排出トレイ21を備える。排出トレイ21は、第一搬送路Ph1を通じて排出された用紙Pを載置する。排出トレイ21には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、綴じ処理が施されない用紙Pが排出される。
【0016】
また、後処理装置3は、載置トレイとしての内部トレイ22と、エンドフェンス23と、サイドフェンス24L、24Rと、端綴じ処理部25と、排出トレイ26とを備える。内部トレイ22、エンドフェンス23、サイドフェンス24L、24R、及び端綴じ処理部25は、第二搬送路Ph2を搬送される用紙Pに端綴じ処理を施す。排出トレイ26には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、端綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0017】
以下、搬送ローラ対15からエンドフェンス23に向かう方向を、「搬送方向」と定義する。また、用紙Pの厚み方向及び搬送方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。
【0018】
載置トレイとしての内部トレイ22は、第二搬送路Ph2を順番に搬送される複数の用紙Pを一時的に載置する。エンドフェンス23は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの搬送方向の位置を揃える。サイドフェンス24L、24Rは、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える。端綴じ処理部25は、エンドフェンス23及びサイドフェンス24L、24Rによって揃えられた用紙束Pbの端部を綴じる。そして、搬送ローラ対15は、端綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0019】
[端綴じ処理部25の詳細説明]
図3は、端綴じ処理部25を、搬送方向の上流側から見た模式図である。
図4は、端綴じ処理部25を主走査方向の液体付与手段31側から見た模式図である。
図3に示すように、端綴じ処理部25は、液体付与手段31と、圧着綴じ処理部としての圧着手段32とを備える。液体付与手段31及び圧着手段32は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に隣接して配置されている。
【0020】
液体付与手段31は、貯液タンク43に貯留された液体(例えば、水)を、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに付与する。以下、用紙P又は用紙束Pbに対して液体を付与することを「液体付与」と表記し、液体付与を行うための処理を「液体付与処理」と表記する。
【0021】
ここで、「液体付与」するための貯液タンク43に貯留された液体とは、さらに詳しくは、化学式H2Oで表される水素と酸素の化合物の液体状態を主成分とするものである。液体状態であれば、その温度状態は問わず、いわゆる温水や熱水であってもよい。また、純水に限らず、精製水はもちろんのこと、イオン化した塩類が含まれていても良い。金属イオン含有量もいわゆる軟水から超硬水まで硬度は問わない。
【0022】
また主成分に加えて添加物が加えられていてもよい。水道水として用いられる残留塩素を含んでいてもよいし、着色剤・浸透剤・pH調整剤・フェノキシエタノールなどの防腐剤・グリセリンなどの乾燥防止剤等が添加されていることも望ましい。さらには、インクジェット方式の印刷装置で用いられるインクや、水性ペンに用いられるインクも成分として水を用いているので、これを「液体付与」として用いても良い。
【0023】
ここで具体的に挙げたものに限らず、次亜塩素酸水や消毒用に希釈したエタノール水溶液など広義の「水」であっても機能するが、圧着綴じとして機能させるためだけの用途であれば入手・管理が容易な水道水を用いればよい。又、液体としては、上記に例示したような水を主成分とする液体を用いる方が、水を主成分としていない液体を用いるよりも用紙束Pbの綴じ強度を向上させることができる。
【0024】
図3及び
図4に示すように、液体付与手段31は、用紙P又は用紙束Pbの載置台としての下押圧板33と、上押圧板34と、液体付与部移動機構35と、液体付与機構36とを備える。液体付与手段31の構成部品(下押圧板33、上押圧板34、液体付与部移動機構35、液体付与機構36)は、液体付与フレーム31a及びベース部材48により保持されている。
【0025】
下押圧板33及び上押圧板34は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。下押圧板33は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbを下側から支持する。下押圧板33は、下押圧板保持体331上に設けられている。上押圧板34は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbbの上方において、用紙Pの厚み方向に移動(昇降)に構成されている。すなわち、下押圧板33及び上押圧板34は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbを挟んで、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向(以下、単に「厚み方向」と表記する。)に対向して配置されている。さらに、上押圧板34には、ベースプレート40に取り付けられた液体付与部材44の先端に対面する位置に、厚み方向に貫通する貫通口34aが形成されている。
【0026】
液体付与部材44の先端部分には、液体付与部材44の保液量を検知するための保液量センサ60が設けられている。保液量検知部としての保液量センサ60は、液体付与部材44が下押圧板33に載置された状態の用紙P又は用紙束Pbに接触する部分近傍に設けられている。例えば
図4に示すように、保液量センサ60は、一対の対電極(第一電極61と第二電極62)により構成されていて、液体付与部材44に導通して電気信号の変化を取得可能なものである。なお、液体付与部材44に導通して保液量によって変化する電気信号を取得可能な構成であれば、対電極に限定するものではない。
【0027】
保液量センサ60が取得した電気信号は、後述する制御部としてのコントローラ100(
図6参照)に通知されて、液体付与部材44の保液量の検知に用いられる。したがって、保液量センサ60によって取得される電気信号は、液体付与部材44を含む電気回路における電流値、電圧値、抵抗値など、電気的特性を表す信号をコントローラ100において算出可能なものであればよく、その種類を問わないものとする。
【0028】
液体付与部移動機構35は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に移動させる。本実施形態に係る液体付与部移動機構35は、単一の液体付与部移動モータ37によって、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を連動して移動させる。液体付与部移動機構35は、例えば、液体付与部移動モータ37と、台形ネジ38と、ナット39と、ベースプレート40と、柱状部材41a、41bと、コイルバネ42a、42bとを備える。
【0029】
たとえば、用紙Pが無い状態で液体付与部材44を下降させて下押圧板33に接したときに、保液量センサ60が、下押圧板33に設置されている第三電極63と第二の保液量センサ60を構成し、液体付与部材44の保液量を検知可能にしてもよい。この場合、液体付与部材44が用紙Pに接触する接触面の保液量を検知することもできる。
【0030】
液体付与部移動モータ37は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を移動させる駆動力を発生させる。台形ネジ38は、上下方向に延設されると共に、液体付与フレーム31aに回転可能に取り付けられている。また、台形ネジ38は、プーリやベルト等を介して液体付与部移動モータ37の出力軸に接続されている。ナット39は、台形ネジ38に螺合されている。そして、液体付与部移動モータ37の駆動力が伝達されて台形ネジ38が回転することによってナット39が移動する。
【0031】
ベースプレート40は、上押圧板34より上方に配置されている。また、ベースプレート40は、液体付与部材44の先端を下方に突出させた状態で、液体付与部材44を保持している。さらに、ベースプレート40は、台形ネジ38に接続されて、台形ネジ38と共に移動可能に構成されている。そして、ベースプレート40の上下方向の位置は、移動センサ40a(
図6参照)によって検知される。
【0032】
柱状部材41a、41bは、液体付与部材44の先端の周囲において、ベースプレート40から下方に突出している。また、柱状部材41a、41bは、ベースプレート40に対して厚み方向に相対的に移動可能に構成されている。さらに、柱状部材41a、41bは、下端で上押圧板34を保持している。又、柱状部材41a、41bの上端には、柱状部材41a、41bがベースプレート40から外れるのを防止する抜け止めが設けられている。コイルバネ42a、42bは、ベースプレート40と上押圧板34との間において、柱状部材41a、41bに外挿されている。そして、コイルバネ42a、42bは、上押圧板34及び柱状部材41a、41bを、ベースプレート40に対して下方に付勢する。
【0033】
液体付与機構36は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに液体付与する。より詳細には、液体付与機構36は、液体付与部材44の先端を用紙P又は用紙束Pbに接触させることによって、用紙束Pbを構成する少なくとも一枚の用紙Pに液体付与する。液体付与機構36は、貯液タンク43と、液体付与部材44と、供給部材45と、ジョイント46とを備える。
【0034】
貯液タンク43は、用紙P又は用紙束Pbに供給するための液体を貯留する。貯液タンク43に貯留された液体の量は、液量センサ43aによって検知される。液体付与部材44は、貯液タンク43に貯液された液体を用紙束Pbに供給する。液体付与部材44は、先端が下方を向けてベースプレート40に支持されている。また、液体付与部材44は、吸液率の高い材料(例えば、スポンジ、繊維)で構成されている。
【0035】
供給部材45は、基端が貯液タンク43に貯留された液体に浸漬され、先端が液体付与部材44に接続された長尺の部材である。また、供給部材45は、例えば、液体付与部材44と同様に、吸液率の高い材料で構成されている。これにより、供給部材45の基端から吸収された液体が、毛細管現象によって液体付与部材44に供給される。
【0036】
保護部材45aは、供給部材45に外挿される長尺の筒体(例えば、チューブ)である。これにより、供給部材45が吸収した液体の漏洩や、蒸発を防止できる。また、供給部材45及び保護部材45aは、可撓性を有する材料で形成されている。ジョイント46は、液体付与部材44をベースプレート40に固定するものである。これにより、液体付与部材44は、液体付与部移動機構35によって移動されても、ベースプレート40から下方に突出すると共に、先端が下方を向いた状態が維持される。
【0037】
また、供給部材45には貯液タンク43に貯留されている液体を毛細管現象によらずに液体付与部材44へ液体を補給可能にするための補液部としてのチューブポンプ70が配置されている。チューブポンプ70は、後述する後処理装置3の制御ブロックによって動作が制御される。チューブポンプ70は液体付与部材44の保液量を適正に維持するために、毛細管現象(自然現象)のみで供給するのでは足りないときに動作する。
【0038】
圧着手段32は、凹凸状の綴じ歯32b、32cで用紙束Pbを加圧変形させることによって、用紙束Pbを綴じる。すなわち、圧着手段32は、綴じ針を用いずに、用紙束Pbを綴じることができる。圧着手段32の構成部品(綴じ歯32b(上圧着歯)、綴じ歯32c(下圧着歯))は、圧着フレーム32aに設けられている。以下、圧着手段32によって用紙束Pbの所定の位置を加圧変形させることで綴じることを単に「圧着綴じ」と表記する。
【0039】
[圧着手段32の構成]
図5は、圧着手段32の構成を示す模式図である。
図5に示すように、圧着手段32は、一対の綴じ歯32b、32cを備える。一対の綴じ歯32b、32cは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbを挟んで、用紙束Pbの厚み方向に対向して配置されている。一対の綴じ歯32b、32cの互いに対向する面は、凹部及び凸部が交互に形成された凹凸状に形成されている。また、一対の綴じ歯32b、32cは、互いに噛合うように、凹部及び凸部がずれて形成されている。そして、一対の綴じ歯32b、32cは、接離モータ32d(
図6参照)の駆動力によって接離する。
【0040】
用紙束Pbを構成する複数の用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、
図5(A)に示すように、一対の綴じ歯32b、32cは互いに離間している。そして、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pが内部トレイ22に載置されると、
図5(B)に示すように、一対の綴じ歯32b、32cが噛み合って、用紙束Pbを厚み方向から加圧変形させる。これにより、内部トレイ22に載置された用紙束Pbが圧着綴じされる。また、圧着綴じされた用紙束Pbは、搬送ローラ対15によって、排出トレイ26に排出される。
【0041】
尚、圧着手段32の構成としては、圧着機構を構成する一対の綴じ歯32b、32cが噛み合えばよいので、本実施例に限定されない。例えば、正転のみ、又は正逆転する駆動源とリンク機構を使って一対の綴じ歯32b、32cbの圧着及び離間動作を行うリンク機構方式の圧着機構(例えば、特許6057167号に開示されているもの)であっても良いし、駆動源の回転運動を直線運動に変換するねじ機構により、一対の綴じ歯32b、32cの圧着及び離間動作を直線的に行う直動方式の圧着機構であってもよい。
【0042】
また、
図3に示すように、端綴じ処理部25は、端綴じ処理部移動機構47を備える。端綴じ処理部移動機構47は、内部トレイ22に載置された搬送方向の下流側の端部に沿うように、端綴じ処理部25(すなわち、液体付与手段31及び圧着手段32)を主走査方向に移動させる。端綴じ処理部移動機構47は、例えば、ベース部材48と、案内軸49と、端綴じ処理部移動モータ50と、位置センサ51とを備える。
【0043】
液体付与手段31及び圧着手段32は、主走査方向に隣接させた状態でベース部材48に取り付けられている。案内軸49は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に延設されている。また、案内軸49は、ベース部材48を主走査方向に移動可能に保持している。端綴じ処理部移動モータ50は、端綴じ処理部25を移動させるための駆動力を発生させる。端綴じ処理部移動モータ50の駆動力は、プーリやタイミングベルトを介してベース部材48に伝達される。
【0044】
これにより、ベース部材48によって一体化された液体付与手段31及び圧着手段32
は、案内軸49に沿って主走査方向に移動する。液体付与手段31及び圧着手段32の位置は、例えば、端綴じ処理部移動モータ50の出力軸に取り付けられたエンコーダセンサによって把握することができる。また、位置センサ51は、端綴じ処理部25が待機位置HP(
図8参照)に到達したことを検知する。
【0045】
さらに、
図3に示すように、端綴じ処理部25は、回動機構52を備える。回動機構52は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbの厚み方向(すなわち、搬送方向及び主走査方向に直交する方向)に延びる圧着手段回動軸54周りに回動させる。回動機構52は、液体付与手段回動軸53と、圧着手段回動軸54と、連結機構55と、回動モータ56(駆動源)とを備える。
【0046】
液体付与手段回動軸53及び圧着手段回動軸54は、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に延設されている。すなわち、液体付与手段回動軸53及び圧着手段回動軸54は、主走査方向に離間した位置において、互いに平行に延設されている。液体付与手段回動軸53は、液体付与フレーム31aに対して液体付与部材44を回動可能に支持する。圧着手段回動軸54は、ベース部材48に対して圧着フレーム32aを回動可能に支持する。連結機構55は、圧着フレーム32aと液体付与手段回動軸53とを相互に連結する。
【0047】
回動モータ56は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を回動させるための駆動力を発生させる。回動モータ56の駆動力は、プーリやタイミングベルトを介して圧着手段回動軸54に伝達される。これにより、圧着フレーム32aは、一対の綴じ歯32b、32cと共に、圧着手段回動軸54周りに回動する。また、圧着フレーム32aの回動は、連結機構55を介して液体付与手段回動軸53に伝達される。これにより、液体付与部材44は、液体付与フレーム31aに対して、液体付与手段回動軸53周りに回動する。
【0048】
[端綴じ処理部25の主走査方向の移動]
ここで、ベース部材48によって一体化された液体付与手段31及び圧着手段32の主走査方向の移動態様について
図8を用いて説明する。
図8(A)に示すように、待機位置HPは、内部トレイ22に載置された用紙Pから幅方向に外れた位置である。また、
図8(B)及び
図8(C)に示すように、液体付与手段31及び圧着手段32は、端綴じ処理部移動機構47によって綴じ位置B1に移動することができる。綴じ位置B1は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに対面する位置であって、液体付与及び圧着綴じを実行する位置である。すなわち、待機位置HP及び綴じ位置B1は、主走査方向に離間した位置である。さらに、本実施形態に係る液体付与手段31は、圧着手段32に隣接して配置され、待機位置P1において圧着手段32よりも綴じ位置B1に近い。
【0049】
又、液体付与手段31は、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力が伝達されることによって、圧着手段32と共に主走査方向に移動可能に構成されている。液体付与手段31によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置(液体付与位置)は、圧着手段32による圧着綴じを行う予定である綴じ位置に対応する。よって、以下において液体付与位置と綴じ位置には同一符号を付して説明する。
【0050】
図2に戻って、後処理装置3は、エンドフェンス27と、中綴じ処理部28と、用紙折りブレード29と、排出トレイ30とをさらに備える。エンドフェンス27、中綴じ処理部28、及び用紙折りブレード29は、第三搬送路Ph3を搬送される用紙Pにより構成させる用紙束Pbに中綴じ処理を施す。排出トレイ30には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、中綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0051】
エンドフェンス27は、第三搬送路Ph3を順番に搬送される複数の搬送方向の位置を揃える。また、エンドフェンス27は、用紙束Pbの中央を、中綴じ処理部28に対面させる綴じ位置と、用紙折りブレード29に対面させる折り位置とに移動可能に構成されている。中綴じ処理部28は、綴じ位置のエンドフェンス27によって揃えられた用紙束Pbの中央を綴じる。用紙折りブレード29は、折り位置のエンドフェンス27に支持された用紙束を半分に折って、搬送ローラ対18に挟持させる。搬送ローラ対18、19は、中綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ30に排出する。
【0052】
[後処理装置3の制御構成(ハードウェア)]
図6は、後処理装置3の制御構成におけるハードウェア構成図である。
図6に示すように、後処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0053】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0054】
後処理装置3は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3の動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0055】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、液体付与部移動モータ37、端綴じ処理部移動モータ50、回動モータ56、移動センサ40a、液量センサ43a、位置センサ51、操作パネル110、保液量センサ60及びチューブポンプ70を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、液体付与部移動モータ37、端綴じ処理部移動モータ50、チューブポンプ70を動作させ、移動センサ40a、液量センサ43a、位置センサ51、及び保液量センサ60の検知結果を取得する。なお、
図6には端綴じ処理を実行する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0056】
図1に示すように、画像形成装置2は、操作パネル110を備えている。操作パネル110は、ユーザからの操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。なお、報知部の具体例はディスプレイに限定されず、LEDランプやスピーカ等でもよい。又、後処理装置3に上記と同様の操作パネル110を備えるようにしてもよい。
【0057】
[圧着綴じ処理のフローチャート]
図7は、コントローラ100において実行される制御処理により実現される綴じ処理の流れを例示するフローチャートである。コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から綴じ処理の実行指示(以下、「綴じ処理指示」と表記する。)を取得したタイミングで、
図9に示す綴じ処理を開始する。
【0058】
綴じ処理指示は、例えば、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数」と表記する。)と、綴じ処理を施すべき用紙束Pbの数(以下、「必要部数」と表記する。)と、用紙束Pbの綴じ位置と、端綴じ処理部25の綴じ姿勢とを含む。また、液体付与手段31及び圧着手段32は、
図8(A)に示すように、内部トレイ22に載置される用紙Pから幅方向に外れた位置である待機位置HPに、綴じ処理の開始時点において、位置しているものとする。
【0059】
コントローラ100は、待機位置HPにと端綴じ処理部25が位置するときに、保液量センサ60を用いて液体付与部材44の保液量を判定する(S701)。液体付与部材44の保液量が適正であれば、処理を次に移行する。液体付与部材状態判定処理(S701)の詳細は後述する。
【0060】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に用紙Pが供給される前に、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、綴じ処理指示で示される綴じ位置B1に液体付与手段31が対面し得るように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる(S702)。
【0061】
次に、コントローラ100は、
図8(B)に示すように、綴じ位置B1に対面し得る位置に液体付与手段31を配置した状態で、搬送ローラ対10、11、14、15を回転させることによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pを内部トレイ22に収容する(S703)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)処理を実行する。
【0062】
次に、コントローラ100は、直前のステップS702で内部トレイ22に載置された用紙Pの綴じ位置B1に対して、液体付与手段31に液体付与させる(S704)。すなわち、コントローラ100は、液体付与部移動モータ37を駆動して、内部トレイ22に載置された用紙Pの綴じ位置B1に液体付与部材44を接触させる。
【0063】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が、綴じ処理指示で指示された所定枚数Nに達したか否かを判定する(S705)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達していないと判定したことに応じて(S705:No)、ステップS703~S704の処理を再び実行する。
【0064】
すなわち、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって内部トレイ22に用紙Pが搬送される度に、ステップS703~S704の処理を実行する。但し、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pに液体付与する必要はない。他の例として、コントローラ100は、n(n<N)枚に1枚の間隔で、綴じ位置B1に対して液体付与手段31に液体付与させてもよい。
【0065】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達したと判定したことに応じて(S705:Yes)、
図8(C)に示すように、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、圧着手段32が綴じ位置B1に対面するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる(S706)。
【0066】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbに圧着綴じを施して、排出トレイ26に排出する(S707)。すなわち、コントローラ100は、接離モータ32dを駆動して、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの綴じ位置B1を、一対の綴じ歯32b、32cに挟持させる。また、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0067】
そして、コントローラ100は、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、端綴じ処理部25を待機位置HPに移動させる(S707)。
【0068】
なお、内部トレイ22に載置された用紙束Pb上において、ステップS706で一対の綴じ歯32b、32cが挟持する圧着領域は、ステップS704で液体付与部材44の先端面が接触した液体付与領域に重なる。換言すれば、圧着手段32は、内部トレイ22に載置された用紙束Pb上において、液体付与手段31によって液体付与された領域内を圧着綴じする。
【0069】
[液体付与部材状態判定処理(S701)の詳細]
ここで、液体付与部材状態判定処理(S701)の詳細な流れについて
図9のフローチャートを用いて説明する。液体付与処理(
図7:S704)を行う前に液体付与部材44の保液量が適正なものであるか否かを判定し、仮に保液量が足りない状態であれば補給する動作を行うようにする。
【0070】
例えば、液体付与部材44を挟持するように配置されている対電極(保液量センサ60)に対して所定の電流を流し、液体付与部材44を通過した電気信号をコントローラ100が取得する。この電気信号に基づいて液体付与部材44の保液量を算出する(S901)。
【0071】
算出された保液量が既定の保液閾値を下回っているとき(S902:Yes)、液体付与部材44へ液体を補給(供給)する必要がある。そこで、補給処理を実行する(S903)。ここで、補給処理の詳細を
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
まずチューブポンプ70を動作させる(S1001)。続いて、チューブポンプ70によって液体が補給されることで変化する液体付与部材44の保液量が、既定の閾値を上回るまで(S1002:No)、液体補給を継続する。
【0073】
液体付与部材44の保液量が規定値を上回って適正値になれば(S1002:Yes)チューブポンプ70の動作を停止する(S1003)。以上の処理により、液体付与部材44の保液量を適正に保つ。
【0074】
図9に戻る。液体付与部材44の保液量が適正である状態にした後、続いて、液体付与部材44に設けられた保液量センサ60としての対電極のいずれか一方又は両方と、ステージとしての下押圧板33との導通により通知される電気信号に基づいて、液体付与部材44の表面保液量を検知する(S904)。
【0075】
表面保液量は液体付与部材44が用紙Pに接触して液体付与する面の保液量をいう。液体付与部材44の保液量が適正であるか否かの検知は液体付与部材44に設けられている対電極への導通で行われる。この対電極の位置と液体付与部材44が用紙Pに接する接触面の位置は違う位置に相当する。この場合、液体付与のための液体が適正量であるかどうかをより精度よく維持するには、接触面の保液量も検知することが望ましい。
【0076】
そこで、下押圧板33に設置されている第三電極63と、液体付与部材44に設置されている電極(第一電極61若しくは第二電極62、又はこれら両方)との導通により検出される電気信号に基づいて、表面保液量を算出する。表面保液量は、液体付与部材44が下押圧板33に接触する面積(接触面積)に応じて変化するか、又は、接触面を含む部分の保液量に応じて変化する。そして、算出された表面保液量が規定の保液閾値を下回っているとき(S905:Yes)、補給処理(S906)を行い、保液閾値を上回っていれば(S905:No)、液体付与部材状態判定処理を終了する。
【0077】
なお、S906における補給処理は、S903における補給処理と同じ処理に相当するので詳細な説明を省略する。
【0078】
[保液量センサ60の基本例]
次に、本発明に係る媒体処理装置の実施形態である後処理装置3が備える液体付与部材44の保液量を検知するための構成の例について説明する。
図11は、すでに説明したとおり、液体付与部材44を挟持するように設けられた一対の対電極(第一電極61と第二電極62)によって保液量センサ60を構成する。また、ステージ部材としての下押圧板33に第三電極63を設置し、この第三電極63と、第一電極61若しくは第二電極62、又はこれら両方によって保液量センサ60を構成する。
【0079】
図11(A)に示すように、対電極(第一電極61と第二電極62)の設置位置が、液体付与部材44の高さ位置の途中(中央付近)であるとき、この高さ位置よりも液体量が保持されていると、補給は不要である。一方、
図11(B)に示すように、対電極の位置を液体が下回ると、対電極が導通しなくなる。その結果、保液量が既定の閾値以下であることを判定できる。この場合、補給処理(S903)を実行することで、液体付与部材44の保液量を維持する。
【0080】
また、
図12(B)に例示するように、液体付与部材44と下押圧板33が接触させたときに、接触面の保液量が低いと第三電極63を介した導通はしないので、表面保液量が閾値以下であると判定できる。この場合、補給処理(S906)を実行することで、液体付与部材44の保液量を維持する。
【0081】
[保液量センサ60の第一変形例]
保液量センサ60を構成するための電極の配置には様々な態様がある。
図13は、液体付与部材44に対して対電極(第一電極61と第二電極62)の設置態様が、液体付与部材44の高さ方向に対して長尺であるように配置した例である。
【0082】
図13の電極配置態様の場合、液体付与部材44の保液量が高さ方向において充満していたときの導通状態で検知される液体付与部材44の電気抵抗値に対して、保液量の高さ位置が低下した場合に抵抗値が増加することになる。そこで、液体付与部材44を挟持している対電極(第一電極61と第二電極62)が検知する抵抗値が、所体の閾値を下回ったときに保液閾値以下(S902:Yes)と判定すればよい。
【0083】
第一変形例は、基本例と比較すると、液体付与部材44の保液量の検知ステップをより細かく精度良くすることができる。また、液体付与部材44の保液量の残量検知を行うこともできる。
【0084】
[保液量センサ60の第二変形例]
図14は、液体付与部材44の高さ方向に対して長尺の対電極を複数組配置した例である。
図14の例では、長さ方向の寸法が異なる複数の電極対を設置している。
図14(A)は、液体付与部材44の保液量が「100%」の場合を例示している。
図14(B)は、液体付与部材44の保液量が「50%」の場合を例示している。
図14(C)は、液体付与部材44の保液量が「10%」の場合を例示している。
図14(D)は、液体付与部材44の保液量が「0%」の場合を例示している。各電極対の組において検出される電気抵抗値を算出すれば、液体付与部材44の保液量の検知精度及び、残液量の検知精度を、第一変形例よりも精度良くすることができる。
【0085】
[保液量センサ60の第三変形例]
図15は、液体付与部材44と下押圧板33が非接触状態のときと、接触状態のときの保液量検知方法を模式的に示した図である。
図15(A)に示すように、液体付与部材44に対する対電極(第一電極61と第二電極62)の設置態様が水平方向であるとき、非接触状態では対電極(第一電極61と第二電極62)によって保液量センサ60を構成する。
【0086】
また、
図15(B)に示すように、接触状態では、対電極のいずれか一方、例えば、第二電極62と第三電極63の対によって第二の保液量センサ60を構成する。
【0087】
なお、液体付与部材44に対する対電極(第一電極61と第二電極62)の設置態様が高さ方向であっても、非接触状態では対電極によって保液量センサ60を構成し、接触状態では第三電極63を含んで第二の保液量センサ60を構成すればよい。
【0088】
[保液量センサ60の第四変形例]
図16に示すように、液体付与部材44と下押圧板33が非接触状態のときの液体付与部材44の高さ位置から(
図16(A))、液体付与部材44と下押圧板33が接触状態になるまでの液体付与部材44の移動量Xをコントローラ100が検出することもできる。これによって、液体付与部材44の高さ位置の初期値の補正(ゼロ点補正)をすることもできる。
【0089】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。液体付与部材44の保液量を検知することができるので、安定した液体付与処理を行うことができる。
【0090】
また、液体付与量が既定の閾値よりも下回っているときには、補給をすることで液体付与部材44の保液量を最適にできる。
【0091】
また、液体付与部材44を挟持するように配置された、複数の長さの対電極によって液体付与部材44の保液量を精度よく検知することもできる。
【0092】
また、液体付与部材44が用紙Pに接触する面の保液量の検知も行うことができる。
【0093】
そして、液体付与部材44が用紙Pに液体付与する動作を行うときの移動開始位置から、接触面が導通するまでの移動量Xを検知することによって、液体付与部材44の液体付与動作のゼロ点補正をすることもできる。
【0094】
[第二実施形態]
次に、
図17~
図25を参照して、第二実施形態に係る後処理装置3Aを説明する。なお、第一実施形態と共通の構成要素には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略することがある。
【0095】
第二実施形態に係る後処理装置3Aは、液体付与手段31と圧着手段32が併設された第一実施形態に係る後処理装置3とは異なり、液体付与手段131のみを搬送路の上流側に設けている。これにより、液体付与処理後に用紙Pを所定枚数プレスタックして、下流側に設けられた端綴じ処理部25の圧着手段32へ搬送することができるので、圧着手段32での綴じ処理の生産性を向上させることが可能となる。又、搬送ローラ対10、11、14が用紙Pを搬送する方向は、上述で定義した「搬送方向」とは、逆方向であるため、「逆搬送方向」と定義する。また、逆搬送方向及び用紙Pの厚み方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。
【0096】
図17は、第二実施形態に係る後処理装置3Aの内部構造を示す図である。端綴じ処理部25は、
図18に示すように、圧着手段32及び針綴じ手段32´を備えている。
図17に示すように、圧着手段32及び針綴じ手段32´は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。また、圧着手段32及び針綴じ手段32´は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの搬送方向の下流側の端部に対面し得る位置において、主走査方向に移動可能に構成されている。さらに、圧着手段32及び針綴じ手段32´は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの厚み方向に延びる回動軸線回りに回動可能に構成されている。すなわち、圧着手段32及び針綴じ手段32´は、コーナー斜め綴じ、平行一箇所綴じ、平行二箇所綴じなどのように、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの主走査方向の任意の位置を、任意の角度で綴じることができる。
【0097】
また、圧着手段32は、凹凸状の綴じ歯32b、32cで用紙束Pbを加圧変形させることによって、用紙束Pbを綴じる(以下、「圧着綴じ」と表記する。)。一方、針綴じ手段32´は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの綴じ位置に綴じ針を貫通させることによって、当該用紙束Pbを針綴じすることができる。
【0098】
図18は、内部トレイ22を用紙束Pbの厚み方向から見た模式図である。
図19は、圧着手段32を搬送方向上流側から見た模式図である。
図18に示すように、圧着手段32及び針綴じ手段32´は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。圧着手段32は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの表面に沿って主走査方向に移動可能で、且つ内部トレイ22に載置された用紙束Pbの厚み方向に延びる回動軸340を中心として、回動可能に構成されている。又、針綴じ手段32´についても同様に、用紙束Pbの主走査方向に移動可能で、且つ用紙束Pbの厚み方向に延びる回動軸341を中心として、回動可能に構成されている。
【0099】
より詳細には、
図19に示すように、内部トレイ22より搬送方向の下流側には、ガイドレール337が主走査方向に延設されている。圧着手段32は、圧着手段移動モータ238の駆動力が駆動伝達機構240(プーリやタイミングベルト)により伝達されることによって、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの表面(換言すれば、ガイドレール337)に沿って、主走査方向に移動する。さらに、圧着手段32の構成品を保持する圧着フレーム32aは、その底面に回動軸340が固定されている。回動軸340は、圧着フレーム32aが設けられるベース部材48に回転可能に保持されている。そして、圧着手段32は、回動モータ239の駆動力が回動軸340に伝達されることによって、内部トレイ22に載置された用紙Pの厚み方向に延びる回動軸340を中心として回動する。ガイドレール337、圧着手段移動モータ238、回動モータ239、回動軸340、及び駆動伝達機構240は、圧着手段32の駆動機構の一例を構成する。
【0100】
圧着手段32は、
図18(A)に示す待機位置HPと、
図18(B)及び
図18(C)に示す綴じ位置B1に対面する位置とに移動可能に構成されている。待機位置HPは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbから主走査方向の一方側に外れた位置である。綴じ位置B1は、内部トレイ22に載置された用紙束Pb上の位置である。但し、綴じ位置B1の具体的な位置は、
図18の例に限定されず、用紙Pの搬送方向の下流側の端部における主走査方向の任意の位置で、かつ複数であってもよい。
【0101】
また、圧着手段32は、
図18(B)に示す平行綴じ姿勢と、
図18(C)に示す斜め綴じ姿勢とに姿勢変化(回動)する。平行綴じ姿勢とは、一対の32b、32c(換言すれば、長方形の圧着綴じ痕)の長手方向が主走査方向を向く圧着手段32の姿勢である。又、斜め綴じ姿勢とは、一対の綴じ歯32b、32c(換言すれば、長方形の圧着綴じ痕)の長手方向が主走査方向に対して傾いた圧着手段32の姿勢である。
【0102】
なお、斜め綴じ姿勢における回動角度(主走査方向に対する一対の綴じ歯32b、32cの角度)は、
図18(C)の例に限定されず、内部トレイ22に載置された用紙束Pbに一対の綴じ歯32b、32cが対面していれば、任意の角度でよい。
【0103】
後処理装置3Aは、液体付与手段131と、パンチ孔穿設手段132(処理部)とを備える。液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132は、内部トレイ22より逆搬送方向の上流側に配置されている。また、液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10~19によって搬送される1枚の用紙Pに同時に対面し得る位置において、逆搬送方向にずれて配置されている。本実施形態に係る液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10、11の間に配置されている。但し、液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132の配置は、
図17の例に限定されない。例えば、
図25に示すように画像形成装置2と後処理装置3の間にインサーター6が配置されている場合は、液体付与手段131を後処理装置3の上流側に位置するインサーター6内に設けることもできる。
【0104】
又、搬送ローラ対11は、
図20(A)に示すように、液体付与手段131の液体付与ヘッド146により液体が付与された用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置されている。これは、搬送ローラ対11が用紙Pを搬送する際に、複数のローラ対が、液体付与位置B1を押圧することにより液体付与位置B1の液量が減少することを防止するためである。その結果、用紙Pが、液体付与手段131よりも逆搬送方向の下流側に設けられた圧着手段32に到達した時点で、液体付与位置B1の液量は、綴じ強度を維持するのに必要な液量を確保できているので、搬送過程で液体付与位置B1の液量が減少することによる用紙束Pbの綴じ強度の低下を防止することができる。
更に、搬送ローラ対11を構成する複数のローラ対を、用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置することにより、複数のローラ対に液体が付着して用紙Pの搬送性が悪化したり、そのことが原因で生じる搬送ジャムを防止することができる。尚、以上では搬送ローラ対11についてのみ説明したが、搬送ローラ対14~15を構成する複数のローラ対も同様に、用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置することが好ましい。
【0105】
液体付与手段131は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに液体(例えば、水)を付与(以下、「液体付与」と表記する。)する。パンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに、厚み方向に貫通するパンチ孔を穿つ。なお、液体付与手段131に近接して設けられる処理部は、パンチ孔穿設手段132に限定されず、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pの傾き(スキュー)を補正する傾き補正部でもよい。
【0106】
図20は、第二実施形態に係る液体付与手段131を用紙Pの厚み方向から見た図である。
図21は、
図20のXXV-XXVにおける断面図である。
図22は、
図20のXXVI-XXVIにおける断面図である。
図20~
図22に示すように、液体付与手段131は、一対のガイド軸133a、133bと、一対のプーリ134a、134bと、無端環状ベルト135、136と、液体付与手段移動モータ137と、待機位置センサ138(
図23参照)と、液体付与ユニット140とを備える。
【0107】
一対のガイド軸133a、133bは、逆搬送方向に離間した位置において、各々が主走査方向に延設されている。また、一対のガイド軸133a、133bは、後処理装置3Aの一対の側板4a、4bに支持されている。そして、一対のガイド軸133a、133bは、液体付与ユニット140を主走査方向に移動可能に支持する。
【0108】
一対のプーリ134a、134bは、逆搬送方向における一対のガイド軸133a、133bの間に配置されている。また、一対のプーリ134a、134bは、主走査方向に離間して配置されている。さらに、一対のプーリ134a、134bは、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸線回りに回転可能に、後処理装置3Aのフレームに支持されている。
【0109】
無端環状ベルト135は、一対のプーリ134a、134bに掛け渡されている。また、無端環状ベルト135には、接続部35aによって液体付与ユニット140に接続されている。無端環状ベルト136は、プーリ134aと液体付与手段移動モータ137の出力軸に固定された駆動プーリ137aとに掛け渡されている。液体付与手段移動モータ137は、液体付与ユニット140を主走査方向に移動させるための駆動力を発生させる。
【0110】
液体付与手段移動モータ137が回転することによって、プーリ134a及び駆動プーリ137aの間を無端環状ベルト136が周回し、プーリ134aを回転させる。また、プーリ134aが回転することによって、一対のプーリ134a、134bの間を無端環状ベルト135が周回する。これにより、液体付与ユニット140は、一対のガイド軸133a、133bに沿って主走査方向に移動する。また、液体付与手段移動モータ137の回転方向を切り替えることによって、液体付与ユニット140は、主走査方向に往復移動する。
【0111】
待機位置センサ138は、液体付与ユニット140が主走査方向の待機位置に到達したことを検知し、検知結果を示す待機位置信号を後述するコントローラ100(
図22参照)に出力する。待機位置センサ138は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、待機位置の液体付与ユニット140は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、待機位置センサ138は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、待機位置信号を出力する。但し、待機位置センサ138の具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0112】
図21に示すように、後処理装置3A内の搬送路は、用紙Pの厚み方向に離間して配置された上ガイド板5a及び下ガイド板5bによって画定される。そして、液体付与ユニット140は、上ガイド板5aに設けられた開口に対面する位置に配置されている。すなわち、液体付与ユニット140は、上ガイド板5aの開口を通じて搬送路(すなわち、用紙Pに対面し得る位置)に対面して配置されている。
【0113】
図20~
図22に示すように、液体付与ユニット140は、ベース部材141と、回転ブラケット142と、貯液タンク143と、移動手段144と、保持部材145と、液体付与ヘッド146と、柱状部材147a、147bと、押圧板148と、コイルバネ149a、149bと、回転モータ150と、移動モータ151(
図23参照)と、待機角度センサ152(
図23参照)とを備える。
【0114】
ベース部材141は、主走査方向にスライド可能に一対のガイド軸133a、133bに支持されている。また、ベース部材141は、接続部35aによって無端環状ベルト135に接続されている。さらに、ベース部材141は、液体付与ユニット140の構成部品142~152を支持している。
【0115】
回転ブラケット142は、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸線回りに回動可能にベース部材141の下面に支持されている。また、回転ブラケット142は、回転モータ150の駆動力が伝達されることによって、ベース部材141に対して回転する。さらに、回転ブラケット142は、貯液タンク143、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bを支持している。
【0116】
待機角度センサ152(
図23参照)は、回転ブラケット142が待機角度に到達したことを検知し、検知結果を示す待機角度信号をコントローラ100に出力する。待機角度とは、例えば、平行綴じするときの角度である。待機角度センサ152は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、待機角度の回転ブラケット142は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、待機角度センサ152は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、待機角度信号を出力する。但し、待機角度センサ152の具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0117】
尚、
図20(A)に示した回転ブラケット142は、液体付与手段131より下流側の圧着手段32が平行綴じする際の状態を示している。又、
図20(B)に示した回転ブラケット142は、液体付与手段131より下流側の圧着手段32が斜め綴じ(角綴じ)する際の状態を示している。
【0118】
貯液タンク143は、用紙Pに付与するための液体を貯留する。移動手段144は、用紙Pの厚み方向に移動(例えば昇降)可能に貯液タンク143に支持されている。また、移動手段144は、移動モータ151の駆動力が伝達されることによって、貯液タンク143に対して移動する。保持部材145は、移動手段144の下端に取り付けられている。液体付与ヘッド146は、保持部材145から搬送路に向けて(本実施形態では、下方)に突出している。また、液体付与ヘッド146には、貯液タンク143に貯留された液体が供給される。さらに、液体付与ヘッド146は、吸液率の高い材料(例えば、スポンジ、繊維)で構成されている。
【0119】
柱状部材147a、147bは、液体付与ヘッド146の周囲において、保持部材145から下方に突出している。また、柱状部材147a、147bは、保持部材145に対して厚み方向に相対移動可能に構成されている。さらに、柱状部材147a、147bは、下端で押圧板148を保持している。押圧板148には、液体付与ヘッド146に対面する位置に貫通口148aが形成されている。コイルバネ149a、149bは、保持部材145と押圧板148との間において、柱状部材147a、147bに外挿されている。そして、コイルバネ149a、149bは、柱状部材147a、147b及び押圧板148を、保持部材145に対して下方に付勢する。
【0120】
図21(A)及び
図22(A)に示すように、上ガイド板5aの開口に対面する位置に用紙Pが搬送される前の段階では、押圧板148は開口の位置または開口より上方に位置している。次に、搬送ローラ対10、11によって搬送された用紙Pの液体付与位置B1が開口に対面する位置で停止すると、移動モータ151を第1方向に回転させる。これにより、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bが一体となって下降して、押圧板148が用紙Pに当接する。なお、液体付与位置B1とは、端綴じ処理部25によって圧着綴じされる予定の位置(すなわち、綴じ位置)である。
【0121】
そして、押圧板148が用紙Pに当接した後も移動モータ151を第1方向に回転させることによって、コイルバネ149a、149bが圧縮されて、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、及び柱状部材147a、147bがさらに下降する。そして、
図21(B)及び
図22(B)に示すように、液体付与ヘッド146の下面が貫通口148aを通じて用紙Pに当接する。その結果、液体付与ヘッド146に含まれる液体が用紙Pに付与される。
【0122】
さらに、
図21(C)及び
図22(C)に示すように、移動モータ151をさらに第1方向に回転させることによって、液体付与ヘッド146を用紙Pにさらに強く押し付けることができる。これにより、用紙Pに対する液体付与量が増加する。すなわち、液体付与手段131は、用紙Pに対する液体付与ヘッド146の押し付け力を変更することによって、液体付与量を調整することができる。
【0123】
一方、移動モータ151を第1方向と逆向きの第2方向に回転させることによって、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bが一体となって上昇する。これにより、
図21(A)及び
図22(A)に示すように、液体付与ヘッド146及び押圧板148が用紙Pから離間する。すなわち、液体付与手段131は、用紙Pに切離可能な液体付与ヘッド146を備える。
【0124】
図23は、第二実施形態に係る後処理装置3Aの動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図である。
図22に示すように、後処理装置3Aは、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0125】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3A全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0126】
後処理装置3Aは、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3Aの種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3Aに搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3Aの機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3Aの動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0127】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、圧着手段32、液体付与手段131、パンチ孔穿設手段132、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、圧着手段32、液体付与手段131、及びパンチ孔穿設手段132の動作を制御する。なお、
図22には端綴じ処理を実行する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0128】
操作パネル110は、ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。
【0129】
図24は、第二実施形態に係る後処理装置3Aの後処理のフローチャートである。具体的には、
図18に示す一箇所綴じを実行する際のフローチャートである。コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から後処理の実行指示(以下、「後処理指示」と表記する。)を取得したことに応じて、
図24に示す後処理を実行する。後処理指示は、例えば、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数N」と表記する。)と、綴じ位置(=液体付与位置B1)及び綴じ角度(=液体付与角度)と、液体付与処理と並行して実行される処理(本実施形態では、パンチ孔の穿設)とを含む。なお、後処理の開始時点において、液体付与ユニット140は待機位置HP(
図12の待機位置HPに相当する位置)に位置し、回転ブラケット142は待機角度に保持されているものとする。
【0130】
まず、コントローラ100は、液体付与手段移動モータ137を駆動することによって、液体付与ユニット140を主走査方向に移動させることで、液体付与ヘッド146を待機位置HPから液体付与位置B1(
図12の綴じ位置B1に相当する位置)に対面し得る位置に移動させる。また、コントローラ100は、回転モータ150を駆動し、回転ブラケット142を回転させることで、液体付与ヘッド146を待機角度から液体付与角度に回転させる(S801)。液体付与ヘッド146が液体付与位置B1に対面し得る位置及び液体付与角度に達したことは、液体付与手段移動モータ137及び回転モータ150のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。又、コントローラ100は、圧着手段移動モータ238を駆動することによって、
図18(A)、(B)に示すように、圧着手段32を待機位置HPから綴じ位置B1に対面し得る位置に移動させる(S801)。また、コントローラ100は、回動モータ239を駆動することにより、圧着手段32を待機角度から圧着綴じ角度に回転させる(S801)。圧着手段32が、綴じ位置B1に対面し得る位置、及び圧着綴じ角度に達したことは、圧着手段移動モータ238及び回動モータ239のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0131】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11を駆動することによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pの搬送を開始する(S802)。コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ユニット140(より詳細には、液体付与ヘッド146)に対面するまで(S803:No)、搬送ローラ対10、11の駆動を継続する。そして、コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ヘッド146に対面したことに応じて(S803:Yes)、搬送ローラ対10、11を停止する(S804)。用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ヘッド146に対面したことは、搬送ローラ対10、11を駆動するモータのロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0132】
コントローラ100は、液体付与手段131によって用紙Pの液体付与位置B1に液体を付与する処理と、パンチ孔穿設手段132によって用紙Pにパンチ孔を穿設させる処理とを並行して実行する(S805)。より詳細には、コントローラ100は、移動モータ151を第1方向に回転させることによって、液体付与ヘッド146を用紙Pの液体付与位置B1に当接させる。また、コントローラ100は、用紙Pに対する液体付与量に応じて、液体付与ヘッド146の押し付け力(すなわち、移動モータ151の回転量)を変更する。
【0133】
用紙Pに対する液体付与量は、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pに対して同一でもよいし、用紙P毎に異なっていてもよい。例えば、コントローラ100は、後に搬送される用紙Pほど液体付与量を減少させてもよい。また、移動モータ151の回転量は、移動モータ151のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0134】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を駆動することによって、用紙Pを内部トレイ22に載置する(S806)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)。
【0135】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が、後処理指示で指示された所定枚数Nに達したか否かを判定する(S807)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達していないと判定したことに応じて(S807:No)、ステップS802~S806の処理を再び実行する。
【0136】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達したと判定したことに応じて(S807:Yes)、液体付与手段131によって液体を付与された用紙束Pbの綴じ位置B1(=液体付与位置B1)を、圧着手段32に圧着綴じさせる。さらに、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する(S808)。そして、コントローラ100は、液体付与手段移動モータ137を駆動して液体付与手段131を待機位置HPに移動させるとともに、圧着手段移動モータ238を駆動して圧着手段32を待機位置HPに移動させる。
【0137】
また、本発明は、端綴じ処理を実行する端綴じ処理部25のみならず、中綴じ処理を実行する中綴じ処理部28にも適用することができる。
【0138】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0139】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された少なくとも一枚の前記媒体の一部に液体付与をする液体付与手段と、
前記液体付与手段によって液体付与された少なくとも一枚の前記媒体を含む媒体束を加圧変形させて綴じる圧着手段と、を備え、
前記液体付与手段は、前記媒体の前記圧着手段により綴じられる位置に液体付与する液体付与部材と、
前記液体付与部材の保液量を検知する保液量検知部と、を有することを特徴とする媒体処理装置である。
<2>
前記保液量検知部は、前記液体付与部材に設けられた一対の対電極を導通して取得可能な電気信号に基づいて前記保液量を検知する、前記<1>に記載の媒体処理装置である。
<3>
前記保液量検知部は、前記対電極と前記液体付与部材との接触面積に基づいて変化する前記電気信号に基づいて前記保液量を検知する、前記<2>に記載の媒体処理装置である。
<4>
前記液体付与手段は、前記液体付与を行う際に、前記媒体を載置する載置部材を有し、
前記載置部材には電極が設けられていて、
前記保液量検知部は、前記載置部材の電極と前記液体付与部材の電極を導通して取得可能な電気信号に基づいて当該液体付与部材の保液量を検知する、前記<2>又は前記<3>に記載の媒体処理装置である。
<5>
前記保液量検知部は、前記載置部材と前記液体付与部材の接触によって、当該載置部材の電極と前記液体付与部材の電極を導通して取得可能な電気信号に基づいて当該液体付与部材が前記媒体に接触するときの接触面の保液量を検知する、前記<4>に記載の媒体処理装置である。
<6>
前記液体付与手段は、前記液体付与部材に液体を供給する供給部を有し、
当該供給部は、前記保液量検知部により検知された前記保液量に基づいて、当該液体付与部材への液体の供給を制御する、前記<1>乃至前記<5>のいずれかに記載の媒体処理装置である。
<7>
前記媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を圧着綴じする前記<1>乃至前記<6>に記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システムである。
【符号の説明】
【0140】
1 :画像形成システム
2 :画像形成装置
3 :後処理装置
10 :搬送ローラ対
20 :切替爪
21 :排出トレイ
22 :内部トレイ
23 :エンドフェンス
24L :サイドフェンス
24R :サイドフェンス
25 :端綴じ処理部
28 :中綴じ処理部
30 :排出トレイ
31 :液体付与手段
31a :液体付与フレーム
32 :圧着手段
33 :下押圧板
34 :上押圧板
35 :液体付与部移動機構
36 :液体付与機構
44 :液体付与部材
60 :保液量センサ
61 :第一電極
62 :第二電極
63 :第三電極
70 :チューブポンプ
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
X :移動量
【先行技術文献】
【特許文献】
【0141】