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特開2023-112481液体吐出装置、電極形成装置および多層セパレータ形成装置
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  • 特開-液体吐出装置、電極形成装置および多層セパレータ形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112481
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】液体吐出装置、電極形成装置および多層セパレータ形成装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20230804BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20230804BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230804BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230804BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230804BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20230804BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230804BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230804BHJP
   H01M 4/88 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
H01M4/04 Z
H01M50/403 F
H01M4/66 A
H01M50/449
H01M4/139
H01G13/00 381
H01M4/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014295
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】内田 公一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰久
(72)【発明者】
【氏名】橋本 靖司
(72)【発明者】
【氏名】船田 康平
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5E082
5H017
5H018
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
4F041AA05
4F041AA12
4F041AA18
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA34
4F041BA59
4F042AA06
4F042AA22
4F042AA29
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA10
4F042BA19
4F042BA25
4F042CC02
4F042CC03
4F042CC07
4F042DB17
4F042DB25
4F042DB42
4F042DF17
4F042DH09
5E082AB09
5E082BC38
5E082MM05
5E082MM06
5E082MM09
5E082MM17
5E082MM21
5E082MM22
5E082MM24
5E082PP09
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB08
5H017CC01
5H017EE01
5H018BB08
5H018DD05
5H018DD06
5H018EE05
5H018EE17
5H018HH03
5H021BB12
5H021BB19
5H021CC04
5H021EE04
5H050AA19
5H050BA17
5H050EA23
5H050FA02
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】電極基体の表面のみならず側面も印刷するフチ無し印刷の際に、搬送面に液体を付着させることなく印刷する。
【解決手段】基体を搬送する搬送部と、前記搬送部上に設けられ、前記基体の端部と前記搬送部とに部分的に挟まれる液体付着部材と、前記基体と前記液体付着部材とに対して、液体組成物を吐出する吐出部と、を備え、前記基体は、前記搬送部における前記基体の搬送面に対して傾斜する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体を搬送する搬送部と、
前記搬送部上に設けられ、前記基体の端部と前記搬送部とに部分的に挟まれる液体付着部材と、
前記基体と前記液体付着部材とに対して、液体組成物を吐出する吐出部と、
を備え、
前記基体は、前記搬送部における前記基体の搬送面に対して傾斜する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体付着部材に吐出された前記液体組成物を除去する除去部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出部は、前記搬送部における前記液体付着部材が設けられていない領域には前記液体組成物を吐出しない、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体付着部材は、非浸透性材料である、
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記非浸透性材料は、合成樹脂である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記基体における前記液体付着部材に接する面が有する辺のうちで前記液体付着部材を基準に最も上方に位置する辺と、前記液体付着部材との距離は、30μm以上である、
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記吐出部は、前記基体の搬送方向と直交する幅方向の端部を超えて前記液体組成物を吐出する、
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体付着部材は、前記搬送部における搬送方向上流側に設けられた貼付装置により、前記搬送部上に設置される、
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記吐出部は、液体吐出ヘッドから前記液体組成物を吐出する、
ことを特徴とする請求項1ないし8の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体付着部材は、前記搬送部における前記基体の搬送面と平行かつ搬送方向と直交する方向の一方の片側端部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1ないし8の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記液体付着部材は、前記搬送部における前記基体の搬送面と平行かつ搬送方向と直行する方向の両側端部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1ないし8の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記基体は、電池ケース内部の電極体に蓄えられた電力を、前記電池ケースの外部に取り出すための金属部品である集電体である、
ことを特徴とする請求項1ないし11の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記基体は、電池ケース内部の電極体に蓄えられた電力を、前記電池ケースの外部に取り出すための金属部品である集電体と、前記集電体上に形成された活物質層と、を有する電極素子である、
ことを特徴とする請求項1ないし11の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記吐出部は、絶縁性材料を含む前記液体組成物を吐出する、
ことを特徴とする請求項1ないし13の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記搬送部は、ベルト搬送である、
ことを特徴とする請求項1ないし14の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか一項に記載の液体吐出装置と、
前記液体吐出装置の後段に設けられる後処理機構と、
を備え、
前記基体は、電極基体である、
ことを特徴とする電極形成装置。
【請求項17】
請求項1ないし15の何れか一項に記載の液体吐出装置を備え、
前記基体は、セパレータである、
ことを特徴とする多層セパレータ形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、電極形成装置および多層セパレータ形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池等の蓄電デバイス、燃料電池等の発電デバイス、太陽光発電デバイス等といった電気化学素子に用いられる電極は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散し、かかる液体を電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。上記液体の塗布には、通常、スプレー、ディスペンサ、ダイコータや引き上げ塗工、更にはインクジェットヘッドを用いた印刷が用いられてきた。
【0003】
特許文献1には、液体の塗布後に、空吐出の際に搬送面上に付着した液体を静電気力によって飛翔させて液体除去部材で液体を除去する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によれば、電極基体の表面のみならず側面も印刷するフチ無し印刷のように付着量が多い場合、静電気力で飛翔させるのは非現実的となっている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電極基体の表面のみならず側面も印刷するフチ無し印刷の際に、搬送面に液体を付着させることなく印刷することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、基体を搬送する搬送部と、前記搬送部上に設けられ、前記基体の端部と前記搬送部とに部分的に挟まれる液体付着部材と、前記基体と前記液体付着部材とに対して、液体組成物を吐出する吐出部と、を備え、前記基体は、前記搬送部における前記基体の搬送面に対して傾斜する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極基体の表面のみならず側面も印刷するフチ無し印刷の際に、搬送面に液体を付着させることなく印刷することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる電極印刷装置を模式的に示す図である。
図2図2は、電極印刷装置に設けられたインク除去機構を示す側面図である。
図3図3は、電極印刷装置に設けられたインク除去機構を示す平面図である。
図4図4は、電極印刷装置に設けられたインク除去機構の断面を搬送方向下流側から見た状態を示す正面図である。
図5図5は、電極基体と液体付着部材との位置関係を示す図である。
図6図6は、第2の実施の形態にかかる電極印刷装置に設けられたインク除去機構を示す平面図である。
図7図7は、電極印刷装置に設けられたインク除去機構の断面を搬送方向下流側から見た状態を示す正面図である。
図8図8は、第3の実施の形態にかかる電極形成装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、液体吐出装置、電極形成装置および多層セパレータ形成装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる電極印刷装置1を模式的に示す図である。
【0011】
図1に示すように、電極印刷装置1は、機能層作製用インクとしての液体インクを用いて、基体としての電極基体の表面(以下、「電極基体表面」ともいう)及び活物質層の表面(以下、「活物質層表面」ともいう)の少なくとも何れか一方に位置選択的に機能層を形成する液体吐出装置である。換言すれば、電極印刷装置1は、液体インクを用いて、電極基体表面及び/又は活物質層表面に位置選択的に機能層を形成するものである。
【0012】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、機能層とは、電気化学素子の製造及び/又は使用において、機能を発揮する層である。例えば電極活物質上に絶縁性を有する樹脂層及び/又は無機層を設けた場合は、機能層は絶縁層として機能する。
【0013】
また、以降の実施形態においては、機能層が電極基体上に設けられる構成について説明するが、電極基体ではなくポリプロピレンなどの樹脂や不織布により形成されるセパレータが基体である多層セパレータ形成装置であってもよく、当該セパレータ上に当該セパレータとは異なる層が付与された多層セパレータが基体である多層セパレータ形成装置であってもよい。
【0014】
図1に示すように、電極印刷装置1は、基体である電極基体2及び/又は電極基体2上に活物質層を有する電極を搬送する搬送部としての搬送機構3を備えている。また、電極印刷装置1には、搬送機構3による電極基体2の搬送方向Xの上流側から下流側に沿って順に、画像認識装置9、液体吐出ヘッド4、光源5、ヒータ6、液体吐出ヘッド7、光源5、ヒータ6等が配置されている。
【0015】
電極基体2は、例えば、電池ケース内部の電極体に蓄えられた電力を、電池ケースの外部に取り出すための金属部品である集電体である。または、電極基体2は、例えば、集電体と、当該集電体上に形成された活物質層と、を有する電極素子である。
【0016】
電極基体2は、平面性を有する導電性箔であって、一般に蓄電デバイスである2次電池、キャパシタ、なかでもリチウムイオン2次電池に好適に用いることができる。導電性箔としては、アルミニウム箔(以下、「アルミ箔」という)、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、及びそれらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシタに用いられる穴あき電極基体などが用いられる。
【0017】
電極基体2は、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパー繊維状の電極を不織又は織状で平面状にしたものや、上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものが使用できる。
【0018】
画像認識装置9は、搬送方向Xの最上流側に配置され、電極基体2上に形成された活物質層の表面の欠陥情報や位置情報を取得する情報取得手段として機能する。画像認識装置9は、例えば、カメラやラインセンサなどにより構成される。画像認識装置9は、電極基体2上に既に活物質層が存在する場合に用いられ、電極基体2上の活物質画像の位置や欠陥の位置を認識し記録するものであるため、必須の構成ではなく、必要に応じて設けられる。
【0019】
搬送機構3は、電極基体2が液体吐出ヘッド4、光源5、及びヒータ6の正面を順次通過するように電極基体2を搬送する。搬送機構3は、例えば、電極基体2を移動させるベルトや、空気浮上機構或いはローラを組み合わせたもの、それを駆動するモータなどを備えた駆動機構によって構成することができる。また、搬送機構3には、電極基体2の移動を補助するガイド部材などを更に設けてもよい。
【0020】
液体吐出ヘッド4は、電極基体2上に樹脂層及び/又は無機層作製用インクである液体インク(液体組成物)を吐出してインク層を形成するインク層形成用の液体吐出ヘッドとして機能する。液体吐出ヘッド4は、後述するインク層パターンとしての枠パターンを形成する情報に係る画像信号や、必要に応じて画像認識装置9により取得された欠陥情報に対応して電極基体2上に液体インクを吐出し、樹脂層及び/又は無機層の前駆状態であるインク層を形成する。液体吐出ヘッド4としては、電極基体2の搬送方向Xと直交する幅方向の幅以上の幅を有するライン状に並べたヘッドを使用することができる。液体吐出ヘッド4から液体インクを吐出する圧力発生手段及び駆動方法に特に制限はない。例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力を利用して液体インク滴を飛翔させるサーマルアクチュエータ、圧電素子によって発生する機械的な圧力パルスを利用して液体インク滴を飛翔させる圧電アクチュエータ、或いは、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用してもよい。更には、必要に応じて液体インクの供給系を圧力オンオフして飛翔させてもよい。
【0021】
光源5は、電極基体2上に形成されたインク層に光を照射して、インク層を樹脂層に硬化させる硬化機能を有する。光源5としては、例えば、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EBキュアなどの電子線照射装置、X線照射装置などを使用することができる。なかでも、システムを簡便化できる上から、高周波誘起紫外線発生装置、高・低圧水銀ランプや半導体レーザなどを使用することが好ましい。また、光源5に集光用ミラーや走引光学系を設けてもよい。
【0022】
ヒータ6は、電極基体2上に形成された無機層作製用インクの吐出によって形成されるインク層を加熱して、硬化を促進したり乾燥させたりする硬化・乾燥手段或いは加熱手段・加熱機構としての機能を有する。ヒータ6としては、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風又は熱風を吹き出すブロワ、水蒸気などを用いたボイラー型熱風を導入した炉などを使用することができる。
【0023】
液体吐出ヘッド7は、先に樹脂層を設けた電極基体2に連続して活物質層を形成する場合、必要に応じてさら活物質を塗布する塗布手段として機能する。この液体吐出ヘッド7に代えて、間欠機能を有するダイヘッドや、高速ディスペンサ、ジェットノズル、スプレーノズル、或いは上記と同様な液体吐出ヘッドなどを用い、活物質層作製用インクを塗布してもよい。
【0024】
この場合、液体吐出ヘッド7は、活物質を含有する活物質層作製用インク(液体組成物)を、電極基体2の表面に吐出して活物質層を形成する活物質層作製用の液体吐出ヘッドとして機能する。液体吐出ヘッド7は、適宜必要に応じて設けられるもので、画像認識装置9により取得された欠陥情報に基づき、活物質層の表面の欠陥部位などに、樹脂層及び/又は無機層作製用インクを塗布する塗布手段としても機能する。
【0025】
このように液体吐出ヘッド7は、電極基体2上に樹脂層及び/又は無機層作製用インクである液体インクを吐出してインク層を形成する液体吐出ヘッド4と同様のインク層形成用の液体吐出ヘッドとして機能させてもよい。
【0026】
電極印刷装置1には、搬送機構3、画像認識装置9、液体吐出ヘッド4、光源5、ヒータ6、液体吐出ヘッド7、光源5、ヒータ6等の動作を制御する制御装置が搭載されている。
【0027】
次に、電極印刷装置1の動作について説明する。
【0028】
まず、電極印刷装置1の制御装置は、搬送機構3の駆動によって電極基体2を、図1中、右側から左側へ搬送方向Xに向けて搬送する。この際の電極基体2の搬送速度は、例えば、0.1m/min~数100m/minの範囲内とする。
【0029】
電極印刷装置1の制御装置は、画像認識装置9が電極印刷装置1の上流に設けられている場合には、画像認識装置9により電極表面を観察し、欠陥部位の位置情報を記録するカメラやラインセンサでの読み取りを実施し、欠陥部位及びその位置を認識して、以降の液体吐出ヘッド4による液体インク吐出・印刷へのフィードバックを行う。
【0030】
電極印刷装置1の制御装置は、電極基体2が液体吐出ヘッド4の正面まで搬送されると、画像信号に対応して液体吐出ヘッド4を制御して上記の液体インクを吐出する。これにより、電極基体2上にインク層が形成される。
【0031】
次に、電極印刷装置1の制御装置は、インク層が形成された電極基体2を光源5の正面へと搬送する。この電極基体2が光源5の正面を通過する際、電極印刷装置1の制御装置は、光源5を駆動して電極基体2上に形成されたインク層に向けて光を照射し、インク層を硬化させる。尚、インク層表面の位置における照射光強度は、使用する光源の波長などに応じて異なるが、通常、数mW/cm~1KW/cmの範囲内である。インク層への露光量は、液体インクの感度や被印刷面の移動速度(電極基体2の搬送速度)などに応じて適宜設定することができる。
【0032】
続いて、電極印刷装置1の制御装置は、硬化状態にあるインク層を担持した電極基体2を、ヒータ6内或いはその近傍へ搬送する。この電極基体2がヒータ6内或いはその近傍を通過する際、電極印刷装置1の制御装置は、ヒータ6を駆動して電極基体2上に形成されたインク層を加熱して、インク層が含む溶媒を乾燥させることで絶縁層を形成する。ヒータ6は、インク層中の溶剤を除去するために十分な加熱が必要なため、搬送機構3の速度と溶剤の沸点などに依存して能力が決められる。そのため、ヒータ6では、通常は最高到達温度が例えば200℃程度以下、好ましくは80℃~200℃或いは60℃~180℃程度の比較的高い温度となるように加熱を行ない、乾燥時間はインク層の厚さにも依存するが、通常0.5分~60分程度、より好ましくは1分~10分の加熱となることが好ましい。また本加熱中での架橋反応を促進してもよい。尚、この場合は、図1に示す電極印刷装置1においては、通常、ヒータ6による加熱時間は数秒~数10秒程度と比較的短い。従って、ヒータ6によりインク層の硬化をほぼ完全に進行させる場合は、最高到達温度が例えば200℃程度以下、好ましくは80℃~200℃或いは60℃~180℃程度の比較的高い温度となるように加熱を行なう。
【0033】
続いて、電極印刷装置1の制御装置は、電極基体2上にまだ活物質層が形成されていない場合、液体吐出ヘッド7などによって、活物質層作製用インクを電極基体2の表面に吐出して活物質層を形成し、ヒータ6でそれを乾燥させる。ヒータ6は、活物質中の溶剤を除去するために十分な加熱が必要なため、搬送機構3の速度と溶剤の沸点などに依存して能力が決められる。そのため、ヒータ6では、通常は最高到達温度が例えば200℃程度以下、好ましくは80℃~200℃或いは60℃~180℃程度の比較的高い温度となるように加熱を行ない、乾燥時間は活物質層の厚さにも依存するが、通常0.5分~60分程度、より好ましくは1分~10分の加熱となることが好ましい。
【0034】
その後、電極印刷装置1の制御装置は、電極基体2を、帯状の場合には巻き取り、或いはストッカ(薄膜電極を収納する容器)へと搬送する。これにより、電極印刷が完了する。
【0035】
インク層を加熱するための加熱手段は、通常熱源として知られ、制御可能なものであればいかなる物でも構わないが、光源5として、例えば可視光に加えて赤外光を発生し得るものを使用した場合には、光照射と同時に加熱を行なうことができる。この場合には、硬化を促進させることができるのでより好ましい。
【0036】
インク層に光を照射すると、光源5から発生する熱によってインク層が加熱されるため、加熱手段は、ヒータ6のように必ずしも独立した部材として設ける必要はない。しかしながら、光源5からの熱のみで常温で放置してインク層を完全に硬化させるには長時間を要する。従って、常温放置は、完全硬化までに充分に長い時間を確保できる用途に適用することが望まれる。例えば、翌日に配布される新聞広告のような印刷物は、硬化までに要する時間を一昼夜程度と長く確保することができるので、常温放置でも完全硬化させることができる。
【0037】
かかる光源の例として例えばライトハンマーシリーズ(フュージョンUVシステムズ社製)などが例示される。また、日亜化学工業株式会社に代表されるLEDメーカーから1W以上の高輝度のUV-LEDやレーザーダイオードなどが販売されており、これらを線又は平面上に並べることによって好適に用いることができる。また、活物質粉体の隙間にしみ込んだりして、光の届きにくい場合には、電子線やX線照射装置を光源として用いることができ、例えば岩崎電気株式会社製の小型EB射装置等が好適に用いられる。
【0038】
本実施形態に係る液体インクを吐出する装置である電極印刷装置1においては、異なる液体インク(例えば樹脂層及び無機層の両方の液体インク層)を吐出する2つ以上の液体吐出ヘッドを設けて、多層同時印字や着弾点での液体インク同士の混合に適用することができる。
【0039】
上述の電極印刷装置1においては、液体吐出ヘッド4或いは7などに対して電極基体2を相対移動させるために、所望の厚さの樹脂層及び/又は無機層を形成するために電極基体2を搬送する搬送機構3を設けて電極基体2を移動させているが、液体吐出ヘッド4などを必要に応じて搬送方向Xに移動させてもよい。また、電極基体2と液体吐出ヘッド4或いは7などとの双方を移動させてもよい。
【0040】
更に、本実施形態で説明した技術を適宜利用することにより、重ね印刷や比較的厚みのある樹脂層及び/又は無機層パターンを形成することも可能となる。即ち、電極基体の所定の領域内で液体インクの吐出と、それにより得られるインク層の硬化とを複数回繰り返すことによって、数10μm以上の厚さを有する樹脂層及び/又は無機層などを形成することも可能である。
【0041】
電極活物質層が電極基体2上に形成されていて、液体吐出ヘッド4或いは7を用いて、樹脂層又は無機層を形成する際に、電極印刷装置1の制御装置は、画像認識装置9を用いて、得られた電極活物質層の不具合をフィードバックして、液体吐出ヘッド4或いは7でそれぞれ吐出する濃度、厚み又は液体種を変更する等により、電極活物質層の不具合を活物質、樹脂層、無機層、及び無機層をパターンニングする際に、良化させるものである。
【0042】
本実施形態に係る薄膜電極は、その単体の厚さが典型的には1mm以下、より好ましくは500μm以下のものを対象としている。厚さの下限は、特に規定していないが、現在の製箔技術の限界から1μm程度である。上述及び後述の効果を奏する上記厚さの薄膜電極を実現し提供することで、種々のデバイス(特にはリチウムイオン2次電池)に対して、性能が高くより軽量で小型化に寄与できる。
【0043】
ところで、電極印刷装置1においては、吐出部である液体吐出ヘッド4,7から液体(液体組成物)を吐出して電極基体2上にインク層または活物質層を形成する際に、電極基体2の搬送方向Xと直交する幅方向の端部を超えてインクを吐出するフチ無し印刷を実行する。ここで、本実施形態におけるフチ無し印刷は、電極基体2の表面のみならず電極基体2の側面も印刷することを意味し、一般に表面全体に印刷するフチ無し印刷とは異なるものである。そして、このようにフチ無し印刷を実行すると、電極基体2の外に吐出されたインクによって搬送機構3を構成するベルトなどが汚れるという問題がある。
【0044】
そこで、本実施形態に係る電極印刷装置1においては、電極基体2の外に吐出されたインクをインク除去機構によって除去するようにしている。この点について、以下において説明する。
【0045】
ここで、図2は電極印刷装置1に設けられたインク除去機構を示す側面図、図3は電極印刷装置1に設けられたインク除去機構を示す平面図、図4は電極印刷装置1に設けられたインク除去機構の断面を搬送方向下流側から見た状態を示す正面図である。
【0046】
図2ないし図4に示すように、インク除去機構は、搬送機構3を構成するベルト3a上に設けられて液体吐出ヘッド4,7から吐出された液体Lを付着する液体付着部材11と、液体付着部材11上の液体Lを除去する除去部である液体除去部材12と、を備える。
【0047】
液体付着部材11は、長尺のテープ状であって、搬送機構3を構成するベルト3a上の領域であって、電極基体2の搬送面と平行かつ搬送方向Xと直交する方向の一方の片側端部(電極基体2の外に液体Lが吐出される位置)周辺の領域を覆うように設けられる。したがって、液体付着部材11の一部は、電極基体2の端部と搬送機構3を構成するベルト3aとに挟まれることになる。これにより、電極基体2は、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面に対して傾斜することになる。
【0048】
液体付着部材11は、例えば、非浸透性材料で形成される。なお、「非浸透性」とは、液体Lが液体付着部材11の内部に浸透せず、かつ、液体Lが液体付着部材11の裏面に回らない特性をいう。具体的には、液体付着部材11は、例えば、フッ素樹脂、PTFE(Polytetrafluoroetheylene)、PET(Polyethyleneterephthalate)樹脂、ポリイミドフィルム等の合成樹脂で形成される。このように、液体付着部材11を非浸透性材料で形成することにより、電極基体2の外に吐出された液体Lが液体付着部材11に浸透しないので、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面を汚すことはない。
【0049】
なお、液体付着部材11は、搬送機構3における搬送方向上流側に設けられたテープ貼付装置(図示せず)により、搬送機構3を構成するベルト3a上に設置される。このように、液体付着部材11は、搬送機構3における搬送方向上流で設置されることにより、搬送機構3における搬送方向下流において、液体吐出ヘッド4,7から吐出された液体Lを付着することができる。
【0050】
このように非浸透性材料で形成した液体付着部材11を電極基体2の搬送面の一方の端部(電極基体2の外に液体Lが吐出される位置)を覆うように設けることにより、液体吐出ヘッド4,7から電極基体2の外に吐出された液体Lが液体付着部材11に付着するため、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面に電極基体2の外に吐出された液体Lが付着することを防ぐことができる。
【0051】
また、液体除去部材12は、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送方向下流側のローラ3bの近傍に設けられる。液体除去部材12は、例えば、液体付着部材11上の液体Lをブラシで掻きとり、かつ、吸引することにより、液体付着部材11に吐出された液体Lを除去する。
【0052】
テープ貼り付け部材100が電極基体2の搬送方向上流側に、液体除去部材12が電極基体2の搬送方向下流側に設けられた例について説明したが、テープ貼り付け部材100が電極基体2の搬送方向下流側に、液体除去部材12が電極基体2の搬送方向上流側に設けられてもよく、それぞれが電極基体2の搬送方向上流側または搬送方向下流側に設けられてもよい。
【0053】
次に、電極基体2と液体付着部材11との位置関係について説明する。
【0054】
ここで、図5は電極基体2と液体付着部材11との位置関係を示す図である。通常、電極基体2と液体付着部材11との隙間tが小さい場合、液体付着部材11上に付着した液体Lが毛管現象により引き込まれ、電極基体2の裏面に液体付着部材11上に付着した液体Lが付着してしまう。このように、電極基体2の裏面に液体Lが付着すると、搬送機構3を構成するベルト3aや周辺の部品を汚してしまうことになる。
【0055】
そこで、本実施形態においては、電極基体2における液体付着部材に接する面が有する辺のうちで、液体付着部材11を基準に最も上方に位置する辺と液体付着部材11との距離、すなわち、電極基体2の端部より液体付着部材11に垂直に下した距離(隙間の距離:図中t)の中で最も長い距離は、30μm以上とする。このようにすることで、毛管現象によって液体付着部材11上に付着した液体Lが電極基体2の裏面に回り込むことを防ぐことができる。
【0056】
このように本実施形態によれば、フチ無し印刷の際に、電極基体2に吐出された液体Lを液体付着部材11に付着させ、その後、液体除去部材12によって液体付着部材11の液体Lを除去する。これにより、フチ無し印刷の際に、搬送機構3を構成するベルト3aに液体Lを付着させることなく印刷することができる。
【0057】
なお、電極印刷装置1の制御装置は、液体吐出ヘッド4,7は、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面において、液体付着部材11が設けられていない領域には液体Lを吐出しないように、制御するようにしてもよい。このようにすることで、液体Lが液体付着部材11からはみ出ないので、搬送機構3の搬送面や電極印刷装置1を汚すことはなくなる。
【0058】
なお、本実施形態においては、液体吐出ヘッド4,7からインク(液体L)を吐出して電極基体2上にインク層または活物質層を形成するようにしたが、これに限るものではなく、液体吐出ヘッドから絶縁性材料を含む液体Lを吐出して絶縁層を形成するようにしてもよい。
【0059】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0060】
第2の実施の形態は、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面と平行かつ搬送方向Xと直交する方向の両方の端部(電極基体2の外に液体Lが吐出される位置)を覆うように液体付着部材11を設けた点が、第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0061】
ここで、図6は第2の実施の形態にかかる電極印刷装置1に設けられたインク除去機構を示す平面図、図7は電極印刷装置1に設けられたインク除去機構の断面を搬送方向下流側から見た状態を示す正面図である。
【0062】
図6および図7に示すように、液体付着部材11は、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面と平行かつ搬送方向Xと直交する方向の両方の端部(電極基体2の外に液体Lが吐出される位置)を覆うように設けられる。したがって、液体付着部材11の一部は、電極基体2の端部と搬送機構3を構成するベルト3aとに挟まれることになる。これにより、電極基体2は、柔軟性を有することを条件として、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面に対して、搬送方向Xと直交する方向の両方の端部で傾斜することになる。
【0063】
このように非浸透性材料で形成した液体付着部材11を電極基体2の搬送面の両方の端部(電極基体2の外に液体Lが吐出される位置)を覆うように設けることにより、液体吐出ヘッド4,7から電極基体2の外に吐出された液体Lが液体付着部材11に付着するため、搬送機構3を構成するベルト3aにおける電極基体2の搬送面に電極基体2の外に吐出された液体Lが付着することを防ぐことができる。
【0064】
なお、本実施形態においても、電極基体2における液体付着部材に接する面が有する辺のうちで液体付着部材11を基準に最も上方に位置する辺と液体付着部材11との距離、すなわち、電極基体2の端部より液体付着部材11に垂直に下した距離(隙間の距離)の中で最も長い距離は、30μm以上とする。このようにすることで、毛管現象によって液体付着部材11上に付着した液体Lが電極基体2の裏面に回り込むことを防ぐことができる。
【0065】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0066】
第3の実施の形態は、電極印刷装置1を備える電極形成装置である点が、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なるものとなっている。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態および第2の実施の形態異なる箇所について説明する。
【0067】
ここで、図8は第3の実施の形態にかかる電極形成装置50を模式的に示す図である。図8に示すように、電極形成装置50は、電極印刷装置1の後段に、得られた薄膜電極をプレスする手段としてのプレスロール、または、薄膜電極を切り分けるスリット刃やレーザなどのカット機構などの、後処理機構20を備える。
【0068】
以上本発明の好ましい実施の形態や実施例について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態や実施例に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態や実施例等に記載した技術事項を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0069】
例えば、上記実施例では、本発明の上記効果を奏する薄膜電極をリチウムイオン2次電池に適用した場合について詳述したが、これに限らず、上記した蓄電デバイスである2次電池や、燃料電池のような発電デバイスなどにも応用ないし準用可能である。
【0070】
本発明の実施の形態に適宜記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 液体吐出装置
2 基体
3 搬送部
4,7 吐出部
11 液体付着部材
12 除去部
20 後処理機構
50 電極形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2006-264172号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8