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特開2023-112508インク、及びインクジェット記録装置
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  • 特開-インク、及びインクジェット記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112508
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】インク、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20230804BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230804BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C09D11/38
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014342
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】堀江 舜介
(72)【発明者】
【氏名】小飯塚 祐介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】寺井 希
(72)【発明者】
【氏名】萩原 健太
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FD20
2C056HA46
2H186AB12
2H186BA11
2H186DA12
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB57
4J039AE04
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC35
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA41
4J039EA42
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】定着性と吐出安定性に優れたインクの提供
【解決手段】有機溶剤及び色材を含むインクであって、縦軸を前記インクの25℃における粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下であることを特徴とするインク。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤及び色材を含むインクであって、
縦軸を前記インクの25℃における粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下であることを特徴とするインク。
【請求項2】
前記有機溶剤が、25℃における粘度が150mPa・s未満である低粘度有機溶剤及び25℃における粘度が150mPa・s以上である高粘度有機溶剤を含有し、
前記低粘度有機溶剤の含有量(質量%)Aと、前記高粘度有機溶剤の含有量(質量%)Bとの比(A/B)が、1以上2以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記高粘度有機溶剤の水酸基数が2以上3以下である、請求項1から2のいずれかに記載のインク。
【請求項4】
前記インクが樹脂を含み、
前記樹脂の含有量が、前記インクに対して9質量%以上11質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のインク。
【請求項5】
前記高粘度有機溶剤の沸点が240℃以上260℃以下である、請求項1から4のいずれかに記載のインク。
【請求項6】
前記低粘度有機溶剤の沸点が200℃以上240℃以下である、請求項1から5のいずれかに記載のインク。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のインクを収容したインク収容部と、
前記インクを被印刷物に対して吐出する吐出ヘッドと、
前記被印刷物を加熱する加熱手段と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有し、デジタル信号の出力機器として広く普及している。このようなインクジェットプリンタで使用されるインクとしては、例えば、溶媒として有機溶剤を用いた溶剤系インク、重合性モノマーを主成分とする紫外線硬化型インクなどが広く用いられている。
しかし、前記溶剤系インクは、有機溶剤の蒸発による環境への影響が懸念され、前記紫外線硬化型インクは、安全性の面から使用する重合性モノマーの選択肢が限られるという問題がある。
そこで、環境負荷が少ない水性インクを含むインクセットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、インクジェット記録装置において、高解像度・高生産性の画像印字を行う際には、印字の時間あたりに吐出される液滴数を増やす必要があるため、インクジェットヘッドからインク液滴を吐出する頻度が多くする必要がある。しかし、吐出する頻度が多くなることでヘッド内のインクは振動し熱を持ち、インク粘度の低下が起きる。粘度の低下がインクジェットヘッド内部で形成されるメニスカスを不安定にし、インク滴の不吐出や吐出滴の速度ばらつきに繋がるという問題がある。加えて、印刷時のメディア乾燥によりヘッド表面が加熱されることでもヘッド内インク粘度が低下し、吐出が不安定となる恐れがある。したがって、メディアの乾燥温度の上限に制限がかかり、印刷できるメディア幅が狭くなるという問題がある。一方で、前記粘度の低下を考慮しインクを高粘度で保つために高粘度溶剤の組成量を増やすと、インクの乾燥性が低下しメディアへの定着性が弱くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、定着性と吐出安定性に優れたインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインクは、有機溶剤を含むインクであって、
縦軸を前記インクの粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、定着性と吐出安定性に優れたインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明のインクを用いた印刷装置の一例を説明する概略図である。
図2図2は、本発明のインクを用いた印刷装置のメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(インク)
本発明のインクは、有機溶剤を含み、水、色材、及び樹脂を含むことが好ましく、更に必要に応じて添加剤等のその他の成分を含むことができる。
本発明のインクは、縦軸を前記インクの25℃における粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下である。
【0009】
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、縦軸を前記インクの粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下とすると、インクジェット印刷時のインク温度上昇に伴う粘度変化が小さくなり、吐出されるインク滴の分離を抑えインクジェットヘッド内部のインク液メニスカスが安定化するため、インクの定着性と吐出安定性に優れることを知見した。
【0010】
本発明のインクは、縦軸を前記インクの粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下であり、1.00×10以上2.05×10以下がより好ましい。前記傾きaが1.00×10以上であると、インクの定着性が安定化し、2.10×10以下であと、インクジェット印刷時のインク温度上昇に伴う粘度変化が小さくなる。
【0011】
前記インクの粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用して測定することができる。
前記粘度の測定条件としては、25℃、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間の条件で測定可能である。
【0012】
<有機溶剤>
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃における粘度が150mPa・s未満である低粘度有機溶剤及び25℃における粘度が150mPa・s以上である高粘度有機溶剤を含有することが好ましい。これにより、前記インクにおける、縦軸を前記インクの粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下とすることができる。
【0013】
-低粘度有機溶剤-
前記低粘度有機溶剤は、25℃における粘度が150mPa・s未満である有機溶剤である。
前記低粘度有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコール(粘度:41mPa・s)などが挙げられる。
【0014】
-高粘度有機溶剤-
前記高粘度有機溶剤は、25℃における粘度が150mPa・s以上である有機溶剤である。
前記高粘度有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン(粘度:1,500mPa・s)などが挙げられる。
【0015】
前記有機溶剤の粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用して測定することができる。
前記粘度の測定条件としては、25℃、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間の条件で測定可能である。
【0016】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0017】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0018】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0019】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0021】
<樹脂>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系ウレタン樹脂が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0023】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、9質量%以上11質量%以下がより好ましい。
【0024】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0025】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0026】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化1】
一般式(F-1)
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。 この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、
【0028】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0029】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0030】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0031】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0032】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0033】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0034】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0035】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0036】
<記録媒体>
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【0037】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0038】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0039】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0040】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0041】
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0042】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0043】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
<ブラック顔料分散体の調製例>
下記[ブラック顔料分散体の材料]をプレミックスした後に、ディスクタイプのビーズミル(KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール、シンマルエンタープライゼス社製)を用いて7時間循環分散を行い、ブラック顔料分散液を得た。
[ブラック顔料分散体の材料]
・C.I.ピグメントブラック7:15質量%
・アニオン性界面活性剤(商品名:パイオニンA-51-B、竹本油脂株式会社製):2質量%
・イオン交換水:83質量%
【0046】
<ウレタン樹脂エマルジョンの調製例1>
撹拌器、還流冷却管、及び温度計を備えた窒素置換された反応容器中に、ポリライトOD-X-2420(ポリエステルポリオール、DIC株式会社製)1,500gと、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220gと、N-メチルピロリドン(NMP)1,347gとを混合し、60℃で加熱してDMPAを溶解させた。
次いで、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、及び触媒としてのジブチルスズジラウリレート2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られたイソシアネート末端ウレタンポリマーを80℃まで冷却した後にトリエチルアミン149gを添加して混合し、そこから4,340gを抜き出して、撹拌しながら水5,400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次いで、氷1,500g、及び35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去して樹脂エマルジョンを得た。
得られた樹脂エマルジョンをペイントコンディショナー(50~1,425rpmの範囲で速度調節可能、レッドデビル社製)で分散処理し、固形分濃度が34.0質量%のウレタン樹脂エマルションAを得た。
【0047】
<ウレタン樹脂エマルジョンの調製例2>
撹拌器、窒素ガス導入管、及び温度計を備えた窒素置換された反応容器中に、ポリエステルポリオール(商品名:ポリライトOD-X-2251、DIC株式会社製、平均分子量2,000)200.4gと、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.7gと、イソホロンジイソシアネート48.0gと、有機溶剤としてのメチルエチルケトン77.1gと、触媒としてのDMTDL(ジブチルスズジラウレート)0.06gとを混合し、4時間反応させた。その後、希釈溶剤としてのメチルエチルケトン30.7gを加え、平均分子量が20,000から60,000の範囲に達した時点で、メタノール1.4gを加えることで前記反応を終了させて、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
得られたウレタン樹脂の有機溶剤溶液に、48質量%の水酸化カリウム水溶液を13.4gと、水715.3gとを加えて十分に撹拌した後にエージング及び脱溶剤をして、固形分濃度が20.0質量%のウレタン樹脂エマルションBを得た。
【0048】
(実施例1)
インクの材料としての前記ブラック顔料分散体18.7質量%、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール0.3質量%、グリセリン1.2質量%、イソプレングリコール14.0質量%、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール14.0質量%、フッ素系界面活性剤(商品名:FS-300、DuPont社製)0.8質量%、消泡剤(商品名:サーフィノールAD01、日信化学工業株式会社製)、高純水13.1質量%を混合して混合液を得た後に、得られた混合液を0.5μmポリプロピレンフィルターで濾過してインク1を得た。
得られたインク1について、以下に示す方法によって、インク1の25℃における粘度を測定し、縦軸をインク1の25℃における粘度(mPa・s)とし、横軸をインク1の絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaを算出したところ2.01×10であった。
【0049】
<インクの粘度の測定>
前記インク1の25℃における粘度としては、回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用して測定した。
前記粘度の測定条件としては、25℃、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間の条件で測定した。
【0050】
(実施例2及び比較例1~4)
実施例1において、インクの材料を下記表1に示す材料に変更した以外は、実施例1と同様にしてインク2~6を得た。また、得られたインクについて、実施例1と同様の方法で、各インクの25℃における粘度を測定し、縦軸をインク1の25℃における粘度(mPa・s)とし、横軸をインク1の絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaを算出した。測定結果を下記表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
得られたインク1~6について、「定着性」、「リガメント長」及び「連続吐出安定性」を評価した。評価結果を表2に示す。
【0053】
<定着性>
EV2500(株式会社リコー製)を用いて、被印刷物(商品名:キャノン写真用紙・光沢 ゴールド、Canon社製)に各インクを、600×600dpiの条件で印字し画像を形成した。画像を形成してから一時間放置した後に、学振試験機(装置名:染色物摩擦堅牢度試験機、インテック社製)を用いて前記画像に対して、荷重200gf及び擦過回数25回の条件で金巾を擦過させた。金巾に転写した画像の画像濃度(OD)を、xRite(PANTONE製)を用いて測定し、以下の評価基準に基づき定着性を評価した。評価基準では、△以上が実用可能である。
[評価基準]
○:0.15未満
△:0.15以上0.28未満
×:0.28以上
【0054】
<リガメント長>
EV2500(株式会社リコー製)を用いて、各インクの吐出を行い、EV2500のノズル面から主滴が2mm落下した地点における、主滴が通過してからサテライト滴の後端が通過するまでに経過した時間を測定し、以下の評価基準に基づきリガメント長を評価した。評価基準では、△以上が実用可能である。
[評価基準]
○:サテライト滴がない
△:サテライト滴があり、経過した時間が20μs未満
×:サテライト滴があり、経過した時間が20μs以上
【0055】
<連続吐出安定性>
EV2500(株式会社リコー製)を用いて、液滴の吐出を1時間行った時点における、液滴の吐出を継続しているノズル孔の割合を測定し、以下の評価基準に基づき連続吐出安定性を評価した。評価基準では、△以上が実用可能である。
[評価基準]
○:吐出を継続しているノズル孔の割合が100%
△:吐出を継続しているノズル孔の割合が90%以上100%未満
×:吐出を継続しているノズル孔の割合が90%未満
【0056】
【表2】
【0057】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 有機溶剤及び色材を含むインクであって、
縦軸を前記インクの25℃における粘度(mPa・s)とし、横軸を前記インクの絶対温度T(K)の逆数としたときのグラフの傾きaが、1.00×10以上2.10×10以下であることを特徴とするインクである。
<2> 前記有機溶剤が、25℃における粘度が150mPa・s未満である低粘度有機溶剤及び25℃における粘度が150mPa・s以上である高粘度有機溶剤を含有し、
前記低粘度有機溶剤の含有量(質量%)Aと、前記高粘度有機溶剤の含有量(質量%)Bとの比(A/B)が、1以上2以下である、前記<1>に記載のインクである。
<3> 前記高粘度有機溶剤の水酸基数が2以上3以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクである。
<4> 前記インクが樹脂を含み、
前記樹脂の含有量が、前記インクに対して9質量%以上11質量%以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクである。
<5> 前記高粘度有機溶剤の沸点が240℃以上260℃以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクである。
<6> 前記低粘度有機溶剤の沸点が200℃以上240℃以下である、前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクである。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクを収容したインク収容部と、
前記インクを被印刷物に対して吐出する吐出ヘッドと、
前記被印刷物を加熱する加熱手段と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0058】
前記<1>から<6>のいずれかに記載のインク、及び前記<7>に記載のインクジェット記録装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0059】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特許第6464664号公報
図1
図2