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特開2023-112611パルス長最適化装置、パルス長最適化方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112611
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】パルス長最適化装置、パルス長最適化方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/70 20130101AFI20230804BHJP
   H04B 10/291 20130101ALI20230804BHJP
【FI】
H04B10/70
H04B10/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014528
(22)【出願日】2022-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年3月1日に一般社団法人日本物理学会 第76回年次大会 予稿にて公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「超低損失ナノファイバー共振器の開発と光学的量子計算の要素技術実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】為近 彩智
(72)【発明者】
【氏名】徳永 裕己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰成
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆朗
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102MH01
5K102MH11
5K102MH21
5K102PH41
5K102RB06
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定に最適化されたパルス長の決定を支援する。
【解決手段】量子メモリを使用する量子中継において、複数の中継器から送られる光子に対する測定結果を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、前記測定情報に基づいて、前記複数の中継器において共有されるエンタングルメントの生成レートを算出するエンタングルメント生成レート算出部と、前記エンタングルメントの生成レートに基づいて、最適なパルス長を決定する最適パルス長決定部と、を備えるパルス長最適化装置である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子メモリを使用する量子中継において、複数の中継器から送られる光子に対する測定結果を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、
前記測定情報に基づいて、前記複数の中継器において共有されるエンタングルメントの生成レートを算出するエンタングルメント生成レート算出部と、
前記エンタングルメントの生成レートに基づいて、最適なパルス長を決定する最適パルス長決定部と、を備える、
パルス長最適化装置。
【請求項2】
前記エンタングルメント生成レート算出部は、タイムビン量子ビットを用いた鍵配送プロトコルを使用して、前記エンタングルメントの生成レートを算出する、
請求項1に記載のパルス長最適化装置。
【請求項3】
前記エンタングルメント生成レート算出部は、成功レート、X基底で光子を送信したときのエラーレートおよびY基底で光子を送信したときのエラーレートを算出し、算出された前記成功レート、X基底で光子を送信したときのエラーレートおよびY基底で光子を送信したときのエラーレートに基づいて、前記エンタングルメントの生成レートを算出する、
請求項1または2に記載のパルス長最適化装置。
【請求項4】
前記最適パルス長決定部は、前記エンタングルメントの生成レートとパルス長との関係性に基づいて、前記エンタングルメントの生成レートが最大となるパルス長を、前記最適なパルス長と決定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のパルス長最適化装置。
【請求項5】
コンピュータが実行するパルス長最適化方法であって、
量子メモリを使用する量子中継において、複数の中継器から送られる光子に対する測定結果を示す測定情報を取得するステップと、
前記測定情報に基づいて、前記複数の中継器において共有されるエンタングルメントの生成レートを算出するステップと、
前記エンタングルメントの生成レートに基づいて、最適なパルス長を決定するステップと、を備える、
パルス長最適化方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか1項に記載のパルス長最適化装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス長最適化装置、パルス長最適化方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
長距離量子通信のための量子中継および量子中継に使用される量子メモリが、世界中で研究されている。量子中継とは、量子メモリへの状態保存により直接伝送に比べて効率良くエンタングルメントを共有可能にするものである。
【0003】
量子中継する際、初めに中継器間で通信およびベル測定を行い、中継器間でエンタングルメント(量子もつれ)を共有する必要がある。ベル測定は、それぞれの中継器から送られてきた二つの光子に対する測定である。ベル測定にメモリなし測定を用いる方法が知られているが、両方の中継器からの光子が損失なく到着しないと成功しないという問題がある。
【0004】
そこで、非特許文献1には、測定箇所に量子メモリを持たせて、片側から損失無く到着した光子を保存しておくことで、同時に光子が損失無く通信に成功した場合でなくても二つの光子にまたがる測定を行えるようにして効率改善を行う手法が開示されている。
【0005】
遠距離の複数箇所にエンタングルメントを共有する量子中継器の部品として量子メモリを使用するためには、量子メモリを複数接続する必要がある。そこで、非特許文献2および非特許文献3には、接続箇所の光損失が少ない超低損失ナノ光ファイバ共振器に原子がトラップした共振器QED系を量子メモリに用いることが開示されている。この量子メモリへの書き込みは、光子のパルスを入れることで行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bhaskar, M.K., Riedinger, R., Machielse, B. et al. Experimental demonstration of memory-enhanced quantum communication. Nature 580, 60-64 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-2103-5
【非特許文献2】Kato S, Aoki T. Strong Coupling between a Trapped Single Atom and an All-Fiber Cavity. Physical Review Letters. 2015 8 26;115(9). 093603. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.115.093603
【非特許文献3】Kato, S., Nemet, N., Senga, K. et al. Observation of dressed states of distant atoms with delocalized photons in coupled-cavities quantum electrodynamics. Nat Commun 10, 1160 (2019). https://doi.org/10.1038/s41467-019-08975-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
共振器QED系の量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定の効率を最大化するために、最適化されたパルス長を決定したいという要望がある。しかし、従来の技術では、最適化されたパルス長を決定することは、複数の要素が関係し、計算が容易ではないという問題がある。
【0008】
開示の技術は、量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定に最適化されたパルス長の決定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術は、量子メモリを使用する量子中継において、複数の中継器から送られる光子に対する測定結果を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、前記測定情報に基づいて、前記複数の中継器において共有されるエンタングルメントの生成レートを算出するエンタングルメント生成レート算出部と、前記エンタングルメントの生成レートに基づいて、最適なパルス長を決定する最適パルス長決定部と、を備えるパルス長最適化装置である。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定に最適化されたパルス長の決定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】量子メモリの構成の一例を示す図である。
図2】量子中継におけるベル測定について説明するための図である。
図3】パルス長最適化装置の機能構成の一例を示す図である。
図4】パルス長最適化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】エラー確率の算出方法について説明するための図である。
図6】エラー確率の算出結果の一例を示す図である。
図7】エンタングルメント生成レートとパルス長の関係の一例を示す図である。
図8】コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0013】
なお、本実施の形態の参考技術等に関連する参考文献の番号と文献名を、本実施の形態の最後にまとめて記載した。下記の説明において関連する参考文献の番号を"[1]"等のように示している。
【0014】
(本実施の形態の概要)
本実施の形態に係るパルス長最適化装置は、量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定による測定結果に基づいて、エンタングルメント生成レートを算出し、最適なパルス長を示す情報を出力する。これによって、量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定に最適化されたパルス長の決定を支援する。
【0015】
(量子メモリの構成)
図1は、量子メモリの構成の一例を示す図である。本実施の形態に係る量子メモリ10は、接続箇所の光損失が少ない超低損失ナノ光ファイバ共振器に、原子がトラップされた共振器QED系を含む。
【0016】
具体的には、量子メモリ10は、状態|u〉で反射率0、状態|g〉で反射率1となる物理系を、超低損失ナノ光ファイバ共振器と原子で作製されたものである。
【0017】
(量子中継におけるベル測定の概要)
図2は、量子中継におけるベル測定について説明するための図である。量子中継におけるベル測定を行うための測定システム1は、測定器2と、第一中継器3と、第二中継器4とを備える。
【0018】
測定器2は、第一中継器3と第二中継器4との間の量子中継におけるベル測定を行う機器である。測定器2は、量子メモリ10-2を備える。このように、測定箇所に量子メモリを持たせて、片側から損失無く到着した光子を保存しておくことで、同時に光子が損失無く通信に成功した場合でなくても二つの光子にまたがる測定を行うことができる。
【0019】
第一中継器3は量子メモリ10-3を備える。第二中継器4は、量子メモリ10-4を備える。量子メモリ10-2、量子メモリ10-3および量子メモリ10-4は、図1に示した量子メモリ10と同様に、状態|u〉で反射率0、状態|g〉で反射率1となる物理系を、超低損失ナノ光ファイバ共振器と原子で作製されたものである。
【0020】
次に、図2に示されるベル測定におけるパルス長の最適化を支援する方法について説明する。
【0021】
(パルス長最適化装置の機能構成)
図3は、パルス長最適化装置の機能構成の一例を示す図である。パルス長最適化装置20は、測定情報取得部21と、エンタングルメント生成レート算出部22と、最適パルス長決定部23と、出力部24と、を備える。
【0022】
測定情報取得部21は、測定情報11を取得する。測定情報11は、図2に示される測定器2によって測定された結果を示す情報である。測定情報11は、例えば、m,m,m等を含む。ここで、mは、第一中継器3の光子を測定した値である。mは、第二中継器4の光子を測定した値である。mは、測定器2の量子メモリ10-2から読み出した値である。
【0023】
エンタングルメント生成レート算出部22は、測定情報11に基づいて、エンタングルメント生成レートを算出する。具体的には、エンタングルメント生成レート算出部22は、エンタングルメントの生成レートを、[1]に示される鍵レート算出のための式1によって算出する。
【0024】
G=R×[1-h(e)-h(e)]・・・(式1)
【0025】
ここで、Gは、鍵レートすなわち蒸留後に得られるエンタングルメントの生成レートである。Rは成功レートである。eおよびeは、それぞれX基底、Y基底で光子を送信したときのエラーレートである。h(x)は、二値エントロピーを表している。
【0026】
また、エンタングルメント生成レート算出部22は、鍵レートを算出するためのプロトコルとして、[2]に示されるタイムビン量子ビットを用いた鍵配送プロトコルを使用してもよい。
【0027】
エンタングルメント生成レート算出部22は、成功レートRのうち、パルス長が寄与する値として、メモリ書き込み成功のヘラルド確率とメモリへの操作レートとを考慮する。ここで、メモリ書き込み成功のヘラルド確率は、原子の状態が|g〉のときの反射率と、原子の状態が|u〉のときの反射率との平均値である。
【0028】
また、本実施の形態において想定されるタイムビン量子ビットの測定では、書き込みと読み出しの操作で計5パルスが必要である。そこで、5パルスの間は次の通信を行うことができないため、メモリへの操作レートは5パルスの長さの逆数としてもよい。
【0029】
さらに、エンタングルメント生成レート算出部22は、光子のパルス長が短いために測定者の量子メモリで意図した反射率が得られないことによるエラーと、メモリ時間の原子の位相緩和によるエラーとを考慮してエラー確率を決定してもよい。これらのエラーの考慮については後述する。
【0030】
最適パルス長決定部23は、エンタングルメントの生成レートとパルス長との関係性に基づいて、エンタングルメントの生成レートが最大となるパルス長を、最適値と決定する。エンタングルメントの生成レートとパルス長との関係性の例については後述する。
【0031】
出力部24は、決定されたパルス長の最適値を示す最適パルス長情報12を出力する。測定器2は、出力される最適パルス長情報12に基づくパルス長を使用して、量子中継のためのベル測定を行うことができる。
【0032】
(パルス長最適化装置の動作概要)
次に、パルス長最適化装置の動作について、図面を参照して説明する。
【0033】
図4は、パルス長最適化処理の流れの一例を示すフローチャートである。測定情報取得部21は、測定情報11を取得する(ステップS11)。測定情報11は、図2に示される測定器2によって測定された結果を示す情報である。
【0034】
次に、エンタングルメント生成レート算出部22は、測定情報11に基づいて、エンタングルメント生成レートを算出する(ステップS12)。最適パルス長決定部23は、算出されたエンタングルメント生成レートに基づいて、最適なパルス長を決定する(ステップS13)。出力部24は、決定された最適なパルス長を示す最適パルス長情報を出力する(ステップS14)。
【0035】
次に、図4のステップS12において、エンタングルメント生成レート算出部22がエンタングルメント生成レートの算出のために考慮されるエラー確率について説明する。
【0036】
図5は、エラー確率の算出方法について説明するための図である。図5は、一例として、第一中継器3および第二中継器4がY基底で情報を送るときの流れを示している。ここで、αは、位相反転エラーの確率である。sは、m=1となる確率である。mは、第一中継器3の光子を測定した値である。mは、第二中継器4の光子を測定した値である。mは、測定器2の量子メモリ10-2から読み出した値である。エンタングルメント生成レート算出部22は、図5に示すように、m、mおよびmを含む測定情報11に基づいて、α、sを算出する。
【0037】
図6は、エラー確率の算出結果の一例を示す図である。例えば、第一中継器3および第二中継器4がともにY基底でビット0、つまりタイムビン量子ビットの位相をπ/2で送ったとする。このとき、エラー確率の算出結果は図6に示す通りとなる。
【0038】
すなわち、エンタングルメント生成レート算出部22は、Y基底で送ったときのエラーレートを、式2によって算出する。
【0039】
=((1-α)s+α(1-s)+α)/2・・・(式2)
【0040】
同様に、エンタングルメント生成レート算出部22は、X基底で送ったときのエラーレートを、式3によって算出する。
【0041】
=α・・・(式3)
【0042】
エンタングルメント生成レート算出部22は、前述の式1によって、これらの値からエンタングルメント生成レートを算出する。
【0043】
図7は、エンタングルメント生成レートとパルス長の関係の一例を示す図である。図4に示されるステップS13において、最適パルス長決定部23は、図7のように算出されたエンタングルメント生成レートとパルス長の関係に基づいて、エンタングルメント生成レートを最大とするパルス長(図7の場合、約0.51μs)を決定する。
【0044】
(パルス長最適化装置のハードウェア構成例)
パルス長最適化装置20は、例えば、コンピュータに、本実施の形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現可能である。なお、この「コンピュータ」は、物理マシンであってもよいし、クラウド上の仮想マシンであってもよい。仮想マシンを使用する場合、ここで説明する「ハードウェア」は仮想的なハードウェアである。
【0045】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0046】
図8は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図8のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0047】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0048】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、当該装置に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。なお、上記コンピュータは、CPU1004の代わりにGPU(Graphics Processing Unit)またはTPU(Tensor processing unit)を備えていても良く、CPU1004に加えて、GPUまたはTPUを備えていても良い。その場合、例えば特殊な演算が必要な処理をGPUまたはTPUが実行し、その他の処理をCPU1004が実行する、というように処理を分担して実行しても良い。
【0049】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態に係るパルス長最適化装置20によれば、量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定による測定結果に基づいて、エンタングルメント生成レートを算出し、最適なパルス長を示す情報を出力する。これによって、量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定に最適化されたパルス長の決定を支援することができる。
【0050】
[参考文献]
[1] van Loock, P., Alt, W., Becher, C., Benson, O., Boche, H., Deppe, C., Eschner, J., Hofling, S., Meschede, D., Michler, P., Schmidt, F. and Weinfurter, H. (2020), Extending Quantum Links: Modules for Fiber‐ and Memory‐Based Quantum Repeaters. Adv. Quantum Technol., 3: 1900141. https://doi.org/10.1002/qute.201900141
[2] Bhaskar, M.K., Riedinger, R., Machielse, B. et al. Experimental demonstration of memory-enhanced quantum communication. Nature 580, 60-64 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-2103-5
【0051】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記の各項に記載したパルス長最適化装置、パルス長最適化方法およびプログラムが記載されている。
(第1項)
量子メモリを使用する量子中継において、複数の中継器から送られる光子に対する測定結果を示す測定情報を取得する測定情報取得部と、
前記測定情報に基づいて、前記複数の中継器において共有されるエンタングルメントの生成レートを算出するエンタングルメント生成レート算出部と、
前記エンタングルメントの生成レートに基づいて、最適なパルス長を決定する最適パルス長決定部と、を備える、
パルス長最適化装置。
(第2項)
前記エンタングルメント生成レート算出部は、タイムビン量子ビットを用いた鍵配送プロトコルを使用して、前記エンタングルメントの生成レートを算出する、
第1項に記載のパルス長最適化装置。
(第3項)
前記エンタングルメント生成レート算出部は、成功レート、X基底で光子を送信したときのエラーレートおよびY基底で光子を送信したときのエラーレートを算出し、算出された前記成功レート、X基底で光子を送信したときのエラーレートおよびY基底で光子を送信したときのエラーレートに基づいて、前記エンタングルメントの生成レートを算出する、
第1項または第2項に記載のパルス長最適化装置。
(第4項)
前記最適パルス長決定部は、前記エンタングルメントの生成レートとパルス長との関係性に基づいて、前記エンタングルメントの生成レートが最大となるパルス長を、前記最適なパルス長と決定する、
第1項から第3項のいずれか1項に記載のパルス長最適化装置。
(第5項)
コンピュータが実行するパルス長最適化方法であって、
量子メモリを使用する量子中継において、複数の中継器から送られる光子に対する測定結果を示す測定情報を取得するステップと、
前記測定情報に基づいて、前記複数の中継器において共有されるエンタングルメントの生成レートを算出するステップと、
前記エンタングルメントの生成レートに基づいて、最適なパルス長を決定するステップと、を備える、
パルス長最適化方法。
(第6項)
コンピュータを、第1項から第4項のいずれか1項に記載のパルス長最適化装置における各部として機能させるためのプログラム。
【0052】
上記構成のいずれによっても、量子メモリを用いた量子中継におけるベル測定に最適化されたパルス長の決定を支援することを可能とする技術が提供される。第2項によれば、タイムビン量子ビットを用いた鍵配送プロトコルを使用して、エンタングルメントの生成レートを算出することができる。第3項によれば、エラーレートを考慮したエンタングルメントの生成レートを算出することができる。第4項によれば、エンタングルメントの生成レートとパルス長との関係性に基づいて、最適なパルス長を決定することができる。
【0053】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 測定システム
2 測定器
3 第一中継器
4 第二中継器
10 量子メモリ
11 測定情報
12 最適パルス長情報
20 パルス長最適化装置
21 測定情報取得部
22 エンタングルメント生成レート算出部
23 最適パルス長決定部
24 出力部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8