(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112612
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230804BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014529
(22)【出願日】2022-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】高塚 章郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB27
2C056EC31
2C056EC41
2C056EC42
2C056EC54
2C056EC79
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】液体消費量を抑えることができる液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】記録媒体たる用紙の搬送方向の先端部分たる先端余白部および後端部分たる後端余白部の少なくとも一方にフラッシングを行い、フラッシングにより形成されたフラッシングパターンを画像検出手段たるインラインセンサにより読み取る。読み取ったフラッシングパターンに白スジなどの画像異常に基づいて、不良ノズルの増加を検出し、不良ノズルが増加しているときは、不良ノズルを特定する不良ノズル特定制御を実行する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配列され、記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記記録媒体に形成された画像を検出する画像検出手段と、
前記記録媒体の搬送方向の先端部分および後端部分の少なくとも一方にフラッシングを行い、前記フラッシングにより前記記録媒体に形成されたフラッシングパターンを前記画像検出手段により検出し、前記画像検出手段が検出したフラッシングパターンに基づいて、不良ノズル特定制御を実行するか否かを判断する判断手段とを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体を吐出する装置において、
前記フラッシングを行うときの液体吐出を、印刷動作のときの液体吐出と異ならせたことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体を吐出する装置において、
前記フラッシングを行うときの前記ノズルから吐出される液体の体積を、印刷動作のときの液体吐出の体積よりも大きくしたことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液体を吐出する装置において、
前記フラッシングを行うときの前記ノズルから吐出される液体の吐出速度を、印刷動作のときの液体の吐出速度よりも速くしたことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項5】
請求項2乃至4いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
ノズルを一つ以上飛ばして、前記フラッシングパターンで使用するノズルを設定することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体を吐出する装置において、
一つ飛ばしで、前記フラッシングパターンで使用するノズルを設定し、
前記記録媒体の前記先端部分にフラッシングを行うノズルと、前記記録媒体の前記後端部分にフラッシングを行うノズルとを互いに異ならせたことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記不良ノズル特定制御により特定された不良ノズルに基づいて、記録媒体に形成する印刷画像を補正する画像補正手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体を吐出する装置において、
前記判断手段は、不良ノズル特定制御の実行後から、前記フラッシングパターンの異常箇所が増えた場合、不良ノズル特定制御を実行する判断を行うことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のノズルが配列され、記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、ノズルの近傍に滞留している増粘インクを吐出するためのフラッシング(空吐出、パージともいう)を行う液体を吐出する装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記液体を吐出する装置として、次のようなものが記載されている。すなわち、液体吐出ヘッドの液体吐出位置に給送装置から新たに搬送されてきた記録媒体の搬送方向先端部分である先端余白部に、フラッシングを行う。そして、フラッシングを行ってできたフラッシングパターンたるアブソリュート・パターンに引き続いて、先端余白部に不良ノズルを特定するためのテストパターンを形成し、画像検出手段たるインラインセンサによりテストパターンを検出して不良ノズルを特定する液体を吐出する装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、液体吐出位置に給送装置から新たに記録媒体が搬送されるたびに、フラシングパターンと不良ノズルを特定するためのテストパターンとが記録媒体の先端部分に形成されるため、液体消費が多いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、複数のノズルが配列され、記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記記録媒体に形成された画像を検出する画像検出手段と、前記記録媒体の搬送方向の先端部分および後端部分の少なくとも一方にフラッシングを行い、前記フラッシングにより前記記録媒体に形成されたフラッシングパターンを前記画像検出手段により検出し、前記画像検出手段が検出したフラッシングパターンに基づいて、不良ノズル特定制御を実行するか否かを判断する判断手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体消費量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成を示す模式図。
【
図3】第一インラインセンサと、第二インラインセンサの配置について説明する図。
【
図4】不良ノズル特定の制御に関する制御ブロック図。
【
図5】連続印刷動作時に用紙Pに形成されるフラッシングパターンを示す図。
【
図6】フラッシングパターンのK色のパターンの拡大図。
【
図7】(a)は、使用するノズルに不良が発生していない場合のフラッシングパターンの読取画像の画素値を示す図であり、(b)は、使用するノズルに吐出不良が発生していた場合のフラッシングパターンの読取画像の画素値を示す図。
【
図8】不良ノズル特定用のテストパターンが印刷された用紙の一部を示す図。
【
図9】ノズルチェックラインの主走査方向の位置検出について説明する図。
【
図11】連続印刷動作の不良ノズル特定の全体のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
[全体説明]
図1は、本実施形態に係る「液体を吐出する装置」としてのインクジェット記録装置であるプリンタ1の概略構成を示す模式図である。
プリンタ1は、主に、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されている。
【0010】
プリンタ1においては、給紙部100から給紙される用紙P(媒体、シート材及び記録材である)に対し、画像形成部200で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、用紙P上に付着したインクを乾燥部300において乾燥させた後、用紙Pを排紙部400から排紙する。
【0011】
[給紙部]
給紙部100は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ110と、給紙トレイ110から用紙Pを一枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、用紙Pを画像形成部200へ送り込むレジストローラ対130とから構成されている。
【0012】
給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、画像形成部200へ給紙される。
【0013】
なお、本実施形態において、給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0014】
[画像形成部]
画像形成部200は、主に、受取胴201と、用紙搬送ドラム210(搬送部材)と、インク吐出部220と、受渡胴202とから構成されている。
図2は、画像形成部200の構成を示す模式図である。
受取胴201は、給紙された用紙P(媒体)を受け取り、下流側に搬送する部材である。用紙搬送ドラム210は、受取胴201によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する円筒形状の部材である。インク吐出部220は、用紙搬送ドラム210によって搬送される用紙Pに向けてインクを吐出する機構である。受渡胴202は、用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す部材である。
【0015】
給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受取胴201の表面に設けられた受取用紙グリッパ201aによって先端が把持され、受取胴201の表面移動に伴って搬送される。受取胴201により搬送された用紙Pは、用紙搬送ドラム210との対向位置で用紙搬送ドラム210へ受け渡される。
【0016】
用紙搬送ドラム210の表面にも搬送用紙グリッパ210aが設けられており、用紙搬送ドラム210へ受け渡された用紙Pの先端が搬送用紙グリッパ210aによって把持される。また、用紙搬送ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって用紙搬送ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。
【0017】
受取胴201から用紙搬送ドラム210へ受け渡された用紙Pは、搬送用紙グリッパ210aによって先端が把持されると共に、吸い込み気流によって用紙搬送ドラム210の表面に吸着して、用紙搬送ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
【0018】
本実施形態のインク吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の四色のインクを吐出して画像を形成するものであり、インクごとに個別の液体吐出ヘッド230(230C,230M,230Y,230K)を備えている。四つの液体吐出ヘッド230は、吐出するインクの色が異なる点以外は同様の構成を備えているため、以下の説明では吐出するインクの色を示す「C」、「M」、「Y」、「K」等の添え字は適宜省略して説明する。
【0019】
液体吐出ヘッド230は、吐出孔から液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0020】
インク吐出部220の四つの液体吐出ヘッド230は、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pがインク吐出部220との対向領域を通過する際に、四つの液体吐出ヘッド230から各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。
【0021】
なお、本実施形態において、画像形成部200は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0022】
[乾燥部]
乾燥部300は、主に、画像形成部200で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための乾燥機構301と、画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構302とから構成されている。
【0023】
画像形成部200から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構302に受け取られた後、乾燥機構301を通過するように搬送され、排紙部400へ受け渡される。乾燥機構301を通過する際、用紙P上のインクには乾燥処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着すると共に、用紙Pのカールが抑制される。
【0024】
[排紙部]
排紙部400は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ410から構成されている。乾燥部300から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。
【0025】
なお、本実施形態において、排紙部400は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0026】
[その他の機能部]
本実施形態のプリンタ1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部300と排紙部400との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0027】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。
【0028】
また、後処理部としては、例えば、画像形成部200で画像が形成された用紙Pを反転させて再び画像形成部200へ送って用紙Pの両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理や、画像が形成された複数枚の用紙Pを綴じる処理などが挙げられる。しかし、後処理の内容についても特に制限はない。
【0029】
本実施形態では、液体を吐出する装置を、インクジェット記録装置であるプリンタ1の例で説明している。プリンタ1は、シート材である用紙Pの被乾燥面に向けて液体であるインクを吐出する液体吐出ヘッド230を備える。
【0030】
なお、本実施形態においては、複数の液体吐出ヘッドを用紙幅方向(搬送方向と直交する方向)に並べることで、長尺な液体吐出ヘッド(ラインヘッド)としている。特筆しない場合は、「液体吐出ヘッド」とは「ラインヘッド」を意味する。
【0031】
本実施形態の個々の液体吐出ヘッド230は、用紙Pの幅方向にわたる長さ(主走査方向長さ)もったライン型の液体吐出ヘッドであり、用紙Pに対して個々の液体吐出ヘッド230からインクを吐出する。
【0032】
本実施形態において、個々の液体吐出ヘッド230は、用紙搬送ドラム210の回転軸を中心にして放射状に個別に配置している。
【0033】
インク吐出部220よりも用紙Pの搬送方向下流側には、画像検出手段としてのスキャナユニット10が用紙搬送ドラム210に対向するように設けられている。スキャナユニット10は、第一インラインセンサ10aと第二インラインセンサ10bとを有している。
図3に示すように、第一インラインセンサ10aは、主走査方向(用紙の幅方向)一端側に配置され、第二インラインセンサ10bは、主走査方向他端側に配置されている。
【0034】
本実施形態では、第一インラインセンサ10aと第二インラインセンサ10bを副走査方向(用紙の搬送方向)の異なる位置に配置している。そして、第一インラインセンサ10aの主走査方向他端側と、第二インラインセンサ10bの主走査方向一端側とが重なるように配置されている(オーバーラップ領域)。これにより、第一インラインセンサ10aと第二インラインセンサ10bとで主走査方向の全域で切れ間なく用紙に形成された画像を読み取ることができる。
【0035】
図4は、本実施形態の不良ノズル特定の制御に関する制御ブロック図である。
制御手段であり、判断手段である制御部11は、CPU、RAM、ROMなどから構成されている。制御部11には、スキャナユニット10、液体吐出ヘッド230、画像補正手段たる画像補正部12、記憶部13、操作パネル14などが接続されている。記憶部13は、フラッシュメモリ、HDDなどの不揮発性記憶手段で構成され、不良ノズル特定制御により特定された不良ノズル情報、液体吐出ヘッドを駆動するための駆動波形などが記憶されている。記憶部13に記憶されている駆動波形としては、用紙Pに画像を印刷するときに用いる印刷用駆動波形、フラッシング(空吐出、パージともいう)を行うときに用いるフラッシング用駆動波形などが記憶されている。画像補正部12は、記憶部13に記憶されている不良ノズル情報に基づいて入力された画像データを補正するものである。
【0036】
制御部11のROMには、不良ノズルの有無の検出を行い、不良ノズル特定制御を行うか否かを判断する判断プログラムや、不良ノズル特定制御を行う制御プログラム等が格納されており、その制御プログラムは、CPUで読み取られ実行される。また、制御部11のROMには、記憶部13に記憶されている駆動波形に基づいて、液体吐出ヘッド230の液体吐出制御を行う制御プログラムも格納されており、CPUで読み取られ実行される。
【0037】
本実施形態の不良ノズル検出制御は、連続印刷中の用紙Pの先端余白部と後端余白部とにフラッシングを行って形成されたフラッシングパターンをスキャナユニット10で読み取って、不良ノズルの発生の有無を検出する。不良ノズル特定制御は、用紙に不良ノズルを特定するためのテストパターンを形成し、テストパターンをスキャナユニット10で読み取って、不良ノズルの特定を行う。
【0038】
図5は、連続印刷動作時に用紙Pに形成されるフラッシングパターンを示す図である。
図5に示すように、用紙の印刷画像が形成される印刷画像部21に対して用紙搬送方向先端側の領域である先端部分としての先端余白部に第一フラッシングパターン20aが形成される。また、印刷画像部21に対して用紙搬送方向後端側の領域である後端部分としての後端余白部に第二フラッシングパターン20bが形成される。各フラッシングパターン20a,20bは、K、C,M、Yの4色のパターンからなっている。
【0039】
各フラッシングパターン20a,20bは、印刷用駆動波形とは異なるフラッシング駆動波形で液体吐出ヘッド230の液体吐出を制御して形成されたものである。フラッシング駆動波形は、印刷用駆動波形よりも吐出速度が速くなるような駆動波形である。または、フラッシング駆動波形は、印刷用駆動波形よりも吐出するインク体積が大きくなるような駆動波形である。また、フラッシング駆動波形を、印刷用駆動波形よりも吐出速度が速く、かつ、印刷用駆動波形よりも吐出するインク体積が大きくなるような駆動波形としてもよい。フラッシング駆動波形を、上記のような駆動波形とすることで、ノズル内の増粘インクを良好に排出することができる。
【0040】
図6は、フラッシングパターンのK色のパターンの拡大図である。
なお、以下においては、K色について説明するが、他の色(C,M,Y)についても同様である。
図6に示すように、フラッシングパターンのK色のパターンは、副走査方向(用紙搬送方向)に延びる複数の線画像が、主走査方向並んだパターンである。また、K色のパターンは、使用するノズルを一つ置きにして形成されたもので、全てのノズルを使用した場合の主走査方向の解像度が1200dpiだとすると、このパターンの解像度は、600dpiとなる。後端余白部に形成する第二フラッシングパターン20bで使用するノズルは、先端余白部の第一フラッシングパターン20aの形成時に使用されていないノズルである。これにより、すべてのノズルに対してフラッシングを行うことができる。
【0041】
上記では、使用するノズルを1つ間引いてフラッシングパターンを形成しているが、間引くノズルは2つ以上であってもよい。例えば、使用するノズルを4つ以上間引く場合は、連続印刷動作時の2枚の用紙の先端余白部および後端余白部のフラッシングパターンの形成に使用するノズルを互いに異ならせる。これにより、すべてのノズルに対してフラッシングを行うことができる。
【0042】
このように、用紙の先端余白部および後端余白部に形成したフラッシングパターンをスキャナユニット10に読み取って、吐出不良が発生しているか否かを検出する。
図7(a)は、使用するノズルに不良が発生していない場合のフラッシングパターンの読取画像の画素値を示しており、
図7(b)は、使用するノズルに吐出不良が発生している場合のフラッシングパターンの読取画像の画素値を示している。
【0043】
図7(a)に示すように、使用するノズルに吐出不良が発生していない場合、スキャナユニット10で読み取られた読取画像は、主走査方向において、ほぼ同一の画素値となる。
【0044】
一方、使用するノズルに吐出不良が発生している場合、吐出不良が発生している不良ノズルからは、インクが吐出されないため、フラッシングパターンに白スジが発生する。その結果、スキャナユニット10で読み取られた読取画像に主走査方向において、画素値が高い箇所が生じる。そのため、制御部11は、フラッシングパターンから画素値が閾値を超える箇所があるか否かを検出し、画素値が閾値を越える画素があった場合は、吐出不良が発生している不良ノズルがあると判定する。
【0045】
本実施形態では、フラッシングパターン20a,20bは、フラッシング駆動波形を用いて形成するため、印刷画像を形成するときは、吐出速度が速かったり、吐出するインク体積が大きかったりする。よって、フラッシングパターン20a,20bの副走査方向に延びる線画像が太くなる。そのため、フラッシングパターン20a,20bをすべてのノズルで形成すると、隣合う線画像同士が重なり合い、不良ノズルが発生しても、フラッシングパターンに白スジが発生しないおそれがある。
【0046】
これに対し、本実施形態では、使用するノズルを1つ間引いてフラッシングパターンを形成することで、線画像同士が重なることがなく、不良ノズルが発生したときは、白スジとなって、フラッシングパターンに異常が生じる。これにより、フラッシングパターンから不良ノズルが有ることを良好に検出することができる。
【0047】
しかし、
図5に示すフラッシングパターンからは、不良ノズルが有るか否かは判断可能であるが、どのノズルに吐出不良が発生しているのかは特定できない。これは、スキャナユニット10の主走査方向の解像度が低いことから、スキャナユニット10でフラシングパターンを読み取った画像から白スジの位置を精度よく特定するのが困難である。また、フラッシングパターンは、主走査方向に線画像が狭い間隔で並べられ、線画像が太いフラッシングパターン20a,20bであるため、線画像が隣の線画像と合一化するおそれがある。また、線画像の間隔が狭いため、低解像度のスキャナユニット10で読み取った画像からでは、線画像を1本、1本認識できないこともある。そのため、フラシングパターンの線画像に基づいて、読み取り画像の画素とノズル番号とを対応づけるのは困難である。よって、不良ノズルの特定に関しては、連続印刷動作を中断して、不良ノズル特定制御を実施する。不良ノズル特定制御は、用紙に
図8に示すような線画像の間隔を十分に開けたテストパターンを、印刷時の駆動波形で形成し、そのテストパターンをスキャナユニット10で読み取って、不良ノズルを特定する。
【0048】
図8は、不良ノズル特定用のテストパターンが印刷された用紙の一部を示す図である。
図8に示すように、不良ノズル特定用のテストパターンが用紙に形成される。テストパターンは、印刷用駆動波形で液体吐出ヘッド230の液体吐出を制御して形成される。不良ノズル特定用テストパターンは、スタートマーク32と、エンドマーク31と、ノズルチェックパターン35とを有している。
【0049】
エンドマーク31a,31bは、用紙の先端部分の主走査方向両側に形成されている。スタートマーク32は、用紙の主走査方向中央の第一インラインセンサ10aと第二インラインセンサ10bとのオーバーラップ領域に形成されている。スタートマーク32は、エンドマークよりも用紙搬送方向上流側に一段下がった位置に形成されている。また、スタートマーク32は、一段目のチェックライン群34aの主走査方向中央のノズルラインと同位置に形成される。図中左端のエンドマーク31aは、ノズル列における主走査方向一端のノズルの主走査方向の位置に対応する位置に形成されている。一方、図中右端のエンドマーク31bは、ノズル列における主走査方向他端のノズルの主走査方向の位置に対応する位置に形成されている。
【0050】
スタートマーク32のよりも用紙搬送方向上流側に、不良ノズルを特定するためのノズルチェックパターン35が形成されている。ノズルチェックパターンは、複数のノズルチェックライン33が主走査方向に所定の間隔を開けて形成された複数のチェックライン群34a、34b、34c・・・・で構成されている。ノズルチェックライン33は、一つのノズルからインクを所定時間吐出して形成される副走査方向に所定の長さを有する線画像である。
【0051】
各チェックライン群34a,34b,34c・・・のノズルチェックラインは、使用するノズルをn個置きにして形成されたものであり、かつ、各チェックライン群34a,34b,34c・・・で使用するノズルを互いに異ならせている。具体的には、ノズル列の主走査方向の一端のノズル(図中左端に対応するノズル)のノズル番号を1、ノズル数をNとすると、用紙搬送方向最下流の1段目のチェックライン群34aの使用するノズルは、1,(1+n),(1+2n)・・・・,(N-(n-1))である。2段目のチェックライン群34bの使用するノズルは、(2+n),(2+2n)・・・,(N-(n-2))である。そして、最終段(n段目)のチェックライン群で使用するノズルは、n,2n・・・,Nである。
【0052】
用紙に形成された不良ノズル特定用のテストパターンは、スキャナユニット10の各インラインセンサ10a,10bにより読み取られる。スタートマーク32に対して図中左側のノズルチェックライン33は、第二インラインセンサ10bで読み取った読取画像に基づいて検出が行われる。一方、スタートマーク32に対して図中右側のノズルチェックライン33は、第一インラインセンサ10aで読み取った読取画像に基づいて検出が行われる。
【0053】
図9は、ノズルチェックライン33の主走査方向の位置検出について説明する図である。
図9は、スタートマーク32に対して図中右側のノズルチェックライン33の主走査方向の位置検出について説明するが、スタートマーク32に対して図中左側についても、同様である。
まず、制御部11は、インラインセンサにより読み取った読取画像から、スタートマーク32の主走査方向の位置と、エンドマーク31bの主走査方向の位置とを検出する。次に、検出したスタートマーク32の主走査方向の位置とエンドマークの主走査方向の位置とから、ノズルチェックライン検出範囲を設定する。次に、一段目のチェックライン群34aについて、スタートマーク32の主走査方向の位置を基準にして、各ノズルチェックライン33の主走査方向位置を検出する。具体的には、制御部は、主走査方向で一ピクセルずつ画素値が、閾値よりも大きいか否かを判定し、画素値が閾値よりも大きい場合は、その画素の主走査方向の位置をノズルチェックライン33の主走査方向の位置と判断する。なお、主走査方向各画素の画素値は、副走査方向における複数個の画素の画素値の平均値を使用する。このような、ノズルチェックラインの位置の検出を、全ての段のチェックライン群34b、34c・・・34nについて行う。
【0054】
図10は、不良ノズル特定のフローチャートである。
まず、制御部11は、上述したように、スタートマーク32の主走査方向の位置とエンドマーク31bの主走査方向の位置とを検出して、ノズルチェックライン33の検出範囲を設定する(S1~S2)。次に、制御部11は、スタートマーク32を基準として、
図9に示したように各段のチェックライン群のノズルチェックライン位置の検出を行う(S3)。
【0055】
次に、一段目のチェックライン群34aについて、ノズルチェックライン33の抜けや、ノズルチェックラインに曲がりの有無を検出する(S4)。ノズルチェックラインに曲がりの有無は、特開2020-146947号に記載されている処理により検出する。
【0056】
そして、ノズルチェックライン33の抜けや、ノズルチェックラインに曲がりの有無の検出を、全段のチェックライン群について行ったら(S5のYES)、不良ノズル特定処理を終了する。
【0057】
なお、フラッシングパターンの白スジが発生した箇所付近のノズルについてのみ、ノズルチェックラインを形成して不良ノズルか否かの判定を行ってもよい。また、フラッシングパターンの白スジが発生した箇所付近のノズルについてのみ、不良ノズルか否かの判定を行う場合は、テストパターンの副走査方向長さが短くできる。そのため、連続印刷動作を中断せずに、画像を印刷する用紙の先端余白部にテストパターンを形成してもよい。
【0058】
制御部11は、上記不良ノズル特定処理により特定された不良ノズルのノズル番号と、特定した不良ノズルの個数とを記憶部13に記憶する。画像補正部12は、記憶部13に記憶されている不良ノズルのノズル番号に基づいて、その不良ノズル用いないようにディザパターンを変更するなどの画像補正を行い、不良ノズルの周囲のノズルを用いて不良ノズルの補完を行う。
【0059】
図11は、連続印刷動作の不良ノズル特定の全体のフロー図である。
まず、制御部11は、印刷画像が形成される用紙の先端余白部および後半余白部にフラッシングを行い、
図5に示したフラッシングパターン20a、20bを形成する(S11)。このように、印刷画像を用紙に形成する都度、用紙の先端余白部および後端余白部にフラッシングを行うことで、良好に印刷画像を形成することができる。なお、用紙のフラッシングパターンが形成された部分は、印刷後にカットされる。
【0060】
次に、制御部11は、用紙の先端余白部および後端余白部に形成したフラッシングパターンをインラインセンサ10a,10bで読み取る(S12)。次に、制御部11は、インラインセンサ10a,10bで読み取ったフラッシングパターンの白スジの個数に基づいて、不良ノズルの個数が前回の不良ノズル特定制御から増加しているか否かを検査する(S13)。
【0061】
制御部11は、不良ノズルの数が増加していると判定したとき(S14のYes)は、連続印刷動作を一時停止して、不良ノズル特定制御を実施する。不良ノズル特定制御が実施されると、用紙に
図8に示した不良ノズル特定用のテストパターンを印刷し(S15)、用紙に印刷されたテストパターンをインラインセンサ10a,10bで読み取る(S16)。次に、制御部11は、
図10のフローを用いて説明したように、不良ノズルの特定を行う(S17)。
【0062】
次に、制御部11は、連続印刷動作の不良ノズル特定により、新たに特定された不良ノズルの番号を記憶部13に記憶して、不良ノズルを更新する(S18)。次に、画像補正部12は、前回までの不良ノズル特定制御で特定された不良ノズルの番号と、新たに特定された不良ノズル番号とに基づいて、新たに特定された不良ノズルが、画像補正によって、不良ノズルの周囲のノズルを用いて補完可能か否かを判定する(S19)。画像補正部12が画像補正によって不良ノズルの周囲のノズルを用いて補完できないと判定したときは、連続印刷動作を停止(S20)する。そして、液体吐出ヘッドをクリーニングするヘッドクリーニングを実行し不良ノズルの回復を図る(S21)。
【0063】
一方、画像補正によって不良ノズルの周囲のノズルを用いて補完可能である場合(S19のYes)は、連続印刷を再開する(S22のYes)。また、フラッシングパターンの異常画像部である白スジの個数が増加しておらず、不良ノズルの数が増加しないとき(S14のYes)は、連続印刷を続ける(S22のYes)。
【0064】
このように、本実施形態では、フラッシングパターンの異常が増えたときにのみ、不良ノズル特定制御を実施する。これにより、例えば、所定枚数毎など定期的に不良ノズル特定制御を実施するものに比べて、不良ノズルが新たに発生した時点で、不良ノズル特定制御を実施することができる。その結果、良好な画像を維持することができる。また、無駄な不良ノズル特定制御が実施されなくなり、定期的に不良ノズル特定制御を実施するものに比べて、損紙の発生を抑制することができ、かつ、インクの消費を抑えることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、不良ノズルが新たに発生したか否かを検出するためのパターンをフラッシングパターンとしている。これにより、フラッシングとは別に、不良ノズルが新たに発生したか否かを検出するためのパターンを形成するものに比べてインクの消費を抑えることができる。また、用紙の先端余白部や後端余白部にフラッシングを行った後に、用紙の先端余白部や後端余白部に不良ノズルが新たに発生したか否かを検出するためのパターンを形成するものに比べて、次の利点を得ることができる。すなわち、先端余白部、後端余白部を狭くすることができ、カット紙の印刷画像を形成する範囲を広くできるという利点である。
【0066】
本実施形態において、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子や薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0067】
本実施形態では、複数の液体吐出ヘッドを用紙幅方向(搬送方向と直交する方向)に並べることで、長尺な液体吐出ヘッド(ラインヘッド)とし、液体吐出ヘッドは装置本体に対して移動しない構成となっている。液体吐出ヘッドとしては、他の部品と共に「液体吐出ユニット」を形成し、装置本体に対して移動しながら印刷する構成としてもよい。
【0068】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0069】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、供給循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0070】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0071】
「液体を吐出する装置」としては、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)等がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0072】
「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。「液体が付着可能なもの」の形状としては、用紙Pのようなシート状に限らず、液体が付着するものであればどのような形状でもよい。「液体が付着可能なもの」としては、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。
【0073】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0074】
また、本実施形態のプリンタ1は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する「液体を吐出する装置」である。相対的に移動する装置の具体例としては、本実施形態のように液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置や、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置などが含まれる。「液体を吐出する装置」としては、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置に限定するものではない。
【0075】
「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で、用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて、原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【0076】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
複数のノズルが配列され、用紙などの記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッド230と、記録媒体に形成された画像を検出するインラインセンサ10a,10bなどの画像検出手段と、記録媒体の先端余白部などの搬送方向の先端部分および後端余白部などの後端部分の少なくとも一方にフラッシングを行い、フラッシングにより記録媒体に形成されたフラッシングパターン20a,20bを画像検出手段により検出し、画像検出手段が検出したフラッシングパターンの異常に基づいて、不良ノズル特定制御を実行するか否かを判断する制御部11などの判断手段とを備える。
ノズル内の増粘インクが吐出されるように液体吐出の駆動が制御されるフラッシングで液体が吐出しない吐出不良が生じている不良ノズルがあると、フラシング動作により形成されたフラシングパターンに白スジ等の異常が発生する。従って、フラッシングパターンの異常から、不良ノズルの有無を検出することができる。不良ノズルが有ると判明した場合、その不良ノズルを特定するためには、次の理由により、不良ノズルの特定を精度よく行える特定のテストパターンを記録媒体に形成する不良ノズル特定制御が必要である。すなわち、画像検出手段の解像度が低い等により画像検出手段が検出した画像の主走査方向の各画素とノズルの位置とを対応付けるのは困難であり、画像検出手段が検出したフラッシングパターンの白スジの位置から不良ノズルの特定を行うのは困難であるからである。
態様1は、例えば、通常の印刷動作時は、記録媒体の先端余白部などの搬送方向の先端部分および後端余白部などの後端部分の少なくとも一方にフラッシングを行い、フラッシングパターンのみを形成する。そして、フラッシングパターンの異常から不良ノズルが発生しているおそれがあると判断されたとき、不良ノズル特定制御を実行する。これにより、フラッシングパターンに異常がないときには、不良ノズル特定制御を省略でき、不良ノズルを特定するためのテストパターンの記録媒体への形成を省略ができる。これにより、給送装置から新たな記録媒体が液体吐出ヘッドの液体吐出位置に搬送されるたびに、フラッシングパターンとテストパターンとを形成する特許文献1に記載の装置に比べて、液体の消費を抑えることができる。
また、通常は、記録媒体の先端部部分または後端部分にフラッシングパターンのみを形成するようにでき、先端部分または後端部分にフラッシングパターンとテストパターンの両方が形成されるものに比べて、先端部分または後端部分のパターンを形成するための領域を狭く設定することができる。
【0077】
(態様2)
態様1において、フラッシングを行うときの液体吐出を、印刷動作のときの液体吐出と異ならせた。
これによれば、フラッシングを行うときの液体吐出が、印刷動作のときの液体吐出と同一の場合に比べて、良好にノズル内の増粘インクを吐出することができる。
【0078】
(態様3)
態様2において、フラッシングを行うときのノズルから吐出される液体の体積を、印刷動作のときの液体吐出の体積よりも大きくした。
これによれば、良好にノズル内の増粘インクを吐出することができる。
【0079】
(態様4)
態様2または3において、フラッシングを行うときのノズルから吐出される液体の吐出速度を、印刷動作のときの液体の吐出速度よりも速くした。
これによれば、良好にノズル内の増粘インクを吐出することができる。
【0080】
(態様5)
態様2乃至4いずれかにおいて、ノズルを一つ以上飛ばして、フラッシングパターンで使用するノズルを設定する。
これによれば、実施形態で説明したように、フラッシングを行うときの液体吐出を、印刷動作のときの液体吐出と異ならせて、良好にノズル内の増粘インクを吐出するようにすることで、フラッシングによりノズルから吐出された液体で形成された線画像などの画像が、印刷動作でノズルから吐出された液体で形成される画像よりも太くなる。その結果、隣のノズルからら吐出された液体で形成される画像と重なり、不良ノズルが発生しても、フラッシングパターンに白スジなどの異常が現れないおそれがある。
そこで、態様5では、ノズルを一つ以上飛ばして、フラッシングパターンで使用するノズルを設定することで、不良ノズルが発生したときに、フラッシングパターンに白スジなどの異常を良好に発生させることができる。これにより、フラッシングパターンから不良ノズルの発生の有無を検出することができる。
【0081】
(態様6)
態様5において、一つ飛ばしで、フラッシングパターンで使用するノズルを設定し、記録媒体の先端余白部などの先端部分にフラッシングを行うノズルと、記録媒体の後端余白部などの後端部分にフラッシングを行うノズルとを互いに異ならせた。
これによれば、一枚の記録媒体の通紙で、すべてのノズルについてフラッシングを行うとともに、すべてのノズルについて、ノズル不良の有無の検出を行うことができる。
【0082】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、不良ノズル特定制御により特定された不良ノズルに基づいて、記録媒体に形成する印刷画像を補正する画像補正部12などの画像補正手段を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、画像補正部12などの画像補正手段により、印刷画像の補正を行って、不良ノズルの周囲のノズルを用いて不良ノズルを補完することで不良ノズルによる異常画像の発生を抑制することができる。
【0083】
(態様8)
態様7において、制御部11などの判断手段は、不良ノズル特定制御の実行後から、フラッシングパターンの異常箇所が増えた場合、不良ノズル特定制御を実行する判断を行う。
これによれば、フラッシングパターンの異常箇所が増えて、新たなノズル不良が発生したときに、不良ノズル特定制御を実行することができる。これにより、適切なタイミングでテストパターンが形成され、無駄な液体の消費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :プリンタ
10 :スキャナユニット
10a :第一インラインセンサ
10b :第二インラインセンサ
11 :制御部
12 :画像補正部
13 :記憶部
14 :操作パネル
20a :第一フラッシングパターン
20b :第二フラッシングパターン
21 :印刷画像部
31 :エンドマーク
32 :スタートマーク
33 :ノズルチェックライン
34 :チェックライン群
35 :ノズルチェックパターン
230 :液体吐出ヘッド
500 :制御部
P :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】